(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126368
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】設備位置特定装置及び設備位置特定システム
(51)【国際特許分類】
G01H 9/00 20060101AFI20220823BHJP
G01D 5/353 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G01H9/00 E
G01D5/353 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024397
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】和田 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】及川 大輝
(72)【発明者】
【氏名】前田 悠
(72)【発明者】
【氏名】島原 広季
【テーマコード(参考)】
2F103
2G064
【Fターム(参考)】
2F103BA37
2F103BA43
2F103EC09
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BC12
2G064CC02
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置及び設備位置特定システムを提供する。
【解決手段】光ファイバケーブル3が敷設された通信経路上のマンホールの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと光ファイバケーブル3の端部から該光ファイバケーブル3の振動を測定した振動データを入力とし、音声データと振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部11と、相関係数が閾値以上である振動データの距離を、打撃音を生じさせた上記の端部からの距離の位置に特定する位置特定部12とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと前記光ファイバケーブルの端部から該光ファイバケーブルの振動を測定した振動データを入力とし、前記音声データと前記振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部と、
前記相関係数が閾値以上である前記振動データの距離を、前記打撃音を生じさせた前記端部からの距離の位置に特定する位置特定部と
を備える設備位置特定装置。
【請求項2】
前記相関係数計算部は、
前記端部からの距離ごとの前記振動データと、時間とパワーの関係を表す前記音声データとの前記相関係数を計算する
請求項1に記載の設備位置特定装置。
【請求項3】
前記位置特定部は、
前記相関係数の移動平均と、前記相関係数とを比較して前記位置を特定する
請求項1又は2に記載の設備位置特定装置。
【請求項4】
フィルタ部を備え、
該フィルタ部は、前記相関係数計算部へ入力する前記音声データから前記振動データに影響を与える特定の周波数の前記音声データを抽出する
請求項1乃至3の何れかに記載の設備位置特定装置。
【請求項5】
光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの位置を特定する設備位置特定システムであって、
前記マンホールの蓋に作業者が打撃を加えた場合の前記光ファイバケーブルからの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器と、
前記打撃を加えた場合に生じる振動データを記録する振動レコーダと、
前記散乱光の時間変化データと、前記振動データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である前記時間変化データの距離を、前記打撃を加えた前記端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置と
を備える設備位置特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバケーブルが敷設された通信経路上の設備の位置を特定する設備位置特定装置及び設備位置特定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホール内での作業が必要な場合、通信設備が収容された通信事業者のビル(通信ビル)からマンホールの位置を正確に特定する必要がある。
【0003】
従来から、光ファイバケーブルの長手方向で発生する事象を特定するのに機械学習を用いる方法が知られている。また、OTDR((Optical Time Domain Reflectometer:光振動センサ)又は光干渉計を用いてマンホールの位置を特定する技術が例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、マンホールの蓋に対して作業者が打撃を加えたときの光ファイバケーブルからの散乱光の時間変化波形を測定し、打撃による振動発生を散乱光の大きさのしきい値により判定することで打撃位置(設備位置)を特定する。特許文献1には、打撃による振動と散乱光の時間変化とのSNR(Signal to Noise Rasio)を改善する目的で、事前に指定した打撃(周波数及びタイミングが既知)を加えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、機械学習を用いる方法は、測定パラメータに応じた検出モデルの作成や、そのために多量の学習用データの準備が必要であり、ハイスペックな計算機が必要である。また、特許文献1に開示された技術では、事前に指定した打撃を加えてもマンホールの上の外乱(車及び人の通行等)と打撃による振動との区別が難しい場合には検出精度が良くないという課題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置及び設備位置特定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る設備位置特定装置は、光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと前記光ファイバケーブルの端部から該光ファイバケーブルの振動を測定した振動データを入力とし、前記音声データと前記振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部と、前記相関係数が閾値以上である前記振動データの距離を、前記打撃音を生じさせた前記端部からの距離の位置に特定する位置特定部とを備えることを要旨とする。
【0009】
本発明に係る設備位置特定システムは、光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの位置を特定する設備位置特定システムであって、前記マンホールの蓋に作業者が打撃を加えた場合の前記光ファイバケーブルからの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器と、前記打撃を加えた場合に生じる振動データを記録する振動レコーダと、前記散乱光の時間変化データと、前記振動データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である前記時間変化データの距離を、前記打撃を加えた前記端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置とを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置及び設備位置特定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る設備位置特定装置を用いる対象の光ファイバケーブルが敷設された通信経路の例を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す設備位置特定装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図4】光振動センサで測定した測定データの1例を示す図である。
【
図5】
図3に示す音声データを加工した1例を示す図である。
【
図6】
図2に示す相関係数計算部で計算した相関係数の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る設備位置特定システムの機能構成例を示すブロック図である。
【
図8】
図2に示す設備位置特定装置の動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。複数の図面中同一のものに
は同じ参照符号を付し、説明は繰り返さない。
【0013】
(通信経路)
図1は、光ファイバケーブルが敷設された通信経路の例を模式的に示す図である。
図1に示す通信経路100は、通信事業者の通信設備が配置された通信ビル1と利用者2の間を光ファイバケーブル3で接続させる。利用者2は、個人の家、工場、及び事業所等の何れか、若しくは異なる通信ビルでもよい。
【0014】
なお、
図1は、通信経路100のほぼ全てが地下に埋設される例を示すが、通信経路100の一部は、地上の架線区間で構成される場合もある。
図1中のM1,M2はマンホールである。以降、マンホールの位置を特定する必要が無い場合は、マンホールMと表記する。実際の通信経路100上のマンホールMの数は多数である。
【0015】
マンホールM1,M2の内部には、光ファイバケーブルの接続部を収納するクロージャ(図示せず)が配置される。地下に埋設された通信経路100の保守点検は、マンホールM1,M2内のクロージャを開けて行われる。
【0016】
光ファイバケーブルの長さは、接続部などの余長等の長さで地図上の距離に比べて大きく異なる。また、通信経路100は、分岐や接続等が随時変更される。したがって、光振動センサを用いた測定によって、通信ビル1からの光ファイバケーブル3の問題のある箇所が分かってもマンホールの位置を特定することは困難となることがある。
【0017】
そこで、本実施形態に係る設備位置特定装置10は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと、光振動センサで測定した振動データの2つを用いてマンホールMの位置を特定する。音声データはレコーダで録音する。振動データは、光ファイバケーブル3の端部に配置した光振動センサ(図示せず)で測定する。
【0018】
(設備位置特定装置)
図2は、本実施形態に係る設備位置特定装置10の機能構成例を示すブロック図である。設備位置特定装置10は、相関係数計算部11、位置特定部12、制御部13、及び通信インターフェース14を備える。
図1において、本実施形態の説明に直接必要の無い操作部及び表示部等の表記は省略している。
【0019】
設備位置特定装置10は、例えば、ROM、RAM、CPU等からなるコンピュータで実現することができる。その場合、各機能構成部の処理内容はプログラムによって記述される。
【0020】
通信インターフェース14は、設備位置特定装置10と、図示を省略しているネットワークを介して通信ビル1内の光ファイバケーブル3の端部に配置された光振動センサとを接続する。また、設備位置特定装置10と、作業者が携帯するレコーダとを接続する。
【0021】
制御部13は、設備位置特定装置10の図示を省略している操作部及び表示部等の動作を制御する。また、相関係数計算部11と位置特定部12の連携を制御する。
【0022】
相関係数計算部11は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの蓋を叩く打撃音を録音した音声データと光ファイバケーブル3の端部から該光ファイバケーブル3の振動を測定した振動データを入力とし、音声データと振動データの相関を表す相関係数を計算する。
【0023】
位置特定部12は、相関係数が閾値以上である振動データの距離を、打撃音を生じさせた光ファイバケーブル3の端部からの距離の位置に特定する。
【0024】
以上説明したように本実施形態に係る設備位置特定装置10は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと光ファイバケーブル3の端部から該光ファイバケーブル3の振動を測定した振動データを入力とし、音声データと振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部11と、相関係数が閾値以上である振動データの距離を、打撃音を生じさせた光ファイバケーブル3の端部からの距離の位置に特定する位置特定部12とを備える。これにより、ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置10を提供することができる。
【0025】
また、設備位置特定装置10は、作業者がマンホールMの蓋を実際に叩いた音声データを用いるので、振動データの雑音との区別が容易である。また、叩き方を変化させても検出精度が悪化しない。また、機械学習のような大きな計算機パワーが不要である。また、従来技術のように事前に指定した打撃でなくても設備位置を特定する検出精度を向上させることができる。
【0026】
(実験系)
設備位置特定装置10の動作を確認する目的で実験を行った。実験を行った通信経路100(実験系)は、通信ビル1から1.3Kmの地点に一か所マンホールMが設置された1.5Kmの地中区間と、6.6Kmの架線区間とから成る通信経路とした。通信ビル1と反対側の光ファイバケーブル3の端部は終端させた。
【0027】
光振動センサは、通信ビル1内の光ファイバケーブル3の端部に配置した。そして、光ファイバケーブル3の端部に光パルスを入射させた。
【0028】
作業者は、通信ビル1から1.3Kmの位置にあるマンホールの蓋を打撃し、発生した打撃音をレコーダで録音した。
【0029】
(音声データ)
図3は、音声データの例を示す図であり、(a)は、レコーダで録音した生の音声データ、(b)は(a)を加工した音声データを示す。
【0030】
図3(a)の横軸は時間(秒)、縦軸は振幅である。約1.1秒、約2.4秒、約3.7秒、約5秒の比較的大きな振幅は、作業者がマンホールMの蓋を打撃した4つの打撃音を示す。また、15秒前後の振幅は作業者の声である。
【0031】
図3(b)横軸は時間(秒)、縦軸は周波数(Hz)である。
図3(b)に示す波形は、
図3(a)の振幅波形に含まれる周波数成分を表している。周波数成分は、
図3(a)に示す波形を周波数分析することで得られる。8.2KHz付近の信号はセミの声である。
【0032】
(振動データ)
光振動センサは、光ファイバケーブル3の端部から入射した光パルスの反射光強度の変化の周波数と、入射光が戻って来る時間を測定することでケーブルの振動点の周波数と距離を特定することができる。
【0033】
図4は、上記の実験系で測定した振動データを示す。
図4の横軸は距離、縦軸は時間である。なお、縦軸の時間の単位は行番号(Row number)であり、実験に用いた光振動センサ固有の単位である。
【0034】
図4に示すように、1.3Km地点に作業者がマンホールMの蓋を打撃した4つの打撃音に対応する振動が確認できる。1.5Km~約8.0Kmの範囲は架線区間であり、風等によるケーブルの振動が確認できる。また、約8.2Km付近には4つの打撃音の反射に対応する振動が確認できる。
【0035】
(音声データの加工)
図5は、レコーダで録音した音声データの振幅をパワーに変換したものである。
図5の横軸は時間(秒)、縦軸はパワーである。
【0036】
図5に示すように、音声データの振幅をパワーに変換してもよい。打撃音の発生時刻をより明確にすることができる。
【0037】
また、レコーダで録音した音声データには、
図3(b)に示したように雑音が含まれる。よって、フィルタ部を備え、該フィルタ部は、相関係数計算部11へ入力する音声データから振動データに影響を与える特定の周波数の音声データを抽出するようにしてもよい。
【0038】
フィルタ部(図示せず)は、通信インターフェース14と相関係数計算部11との間に設けるとよい。フィルタ部を設けることで、音声データのSN比を向上させることができる。その結果、設備の位置を特定する精度を高めることができる。音声データ(振動データ)に影響を与える特定の周波数が複数ある場合は複数のフィルタを組み合わせてもよい。
【0039】
(相関係数)
図6は、相関係数計算部11で計算した相関係数の例を示す図である。上記の実験系で示した音声データと振動データを用いた。
【0040】
音声データ(
図3(a))から、信号強度と時間の関係を表すデータAを作成する。データAには、
図3(a)に示した生の音声データをそのまま用いてもよい。
【0041】
振動データ(
図4)から、振動強度と距離の関係を表すデータBを作成する。この際、データAとBの測定時間の範囲と分解能を揃える。相関係数計算部11は、通信ビル1からの距離ごとの振動データと、時間とパワーの関係を表す音声データとの相関係数を計算する。相関係数の計算方法は周知である。
【0042】
図6に示すように、約1.3Kmと約8.2Km付近の相関係数は、他の部分より二倍以上高い相関を有していることが分かる。位置特定部12は、相関係数が閾値以上である振動データの距離を、通信ビル1からの距離に特定する。この例の場合の閾値は、例えば相関係数=0.3である。
【0043】
閾値を0.3とした場合、通信ビル1から約1.3Kmの位置のマンホールMの蓋を、作業者が叩いたことが分かる。
【0044】
このように、相関係数計算部11は、通信ビル1からの距離ごとの振動データと、時間とパワーの関係を表す音声データとの相関係数を計算する。これにより、マンホール(設備)の位置を正確に特定することができる。なお、設備の位置を特定する位置特定部12は、相関係数の移動平均と、上記の相関係数とを比較して位置を特定してもよい。位置特定の精度を向上させることができる。
【0045】
(設備位置特定システム)
上記の設備位置特定装置10は、複数の機器及び装置で構成されるようにシステム化してもよい。
【0046】
図7は、本実施形態に係る設備位置特定システムの機能構成例を示すブロック図である。
図7に示す設備位置特定システム200は、光測定器20、振動レコーダ30、ネットワーク40、及び設備位置特定装置10を備える。なお、
図7に示す例は、設備位置特定装置10が作業現場4に配置された場合を示す。
【0047】
光測定器20は、上記の光振動センサである。光測定器20は、通信ビル1内の光ファイバケーブル3の端部に接続される。
【0048】
振動レコーダは、上記の音声データを録音するレコーダであり、マンホールMを叩く作業者の居る作業現場4に配置される。レコーダは、マンホールMの蓋を叩く打撃音の音声を録音するもので無くても構わない。レコーダは、マンホールの蓋を叩く際に生じる振動を記録するものでもよい。
【0049】
ネットワーク40は、例えばインターネットである。
【0050】
設備位置特定装置10は、参照符号から明らかなように上記の設備位置特定装置そのものである。設備位置特定装置10は、ネットワーク40を介して散乱光の時間変化データを取得する。
【0051】
このように本実施形態に係る設備位置特定システム200は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの位置を特定する設備位置特定システムであって、マンホールMの蓋に作業者が打撃を加えた場合の光ファイバケーブル3からの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器20と、打撃を加えた場合に生じる振動データを記録する振動レコーダ30と、散乱光の時間変化データと、振動データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である時間変化データの距離を、打撃を加えた上記の端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置10とを備える。
【0052】
これにより設備位置特定装置10のみを用いた場合と同じ作用効果が得られる。つまり、作業現場4に配置された設備位置特定装置10から遠隔の光測定器20と連携するようにしてもよい。作業現場4からの光測定器20の操作は、設備位置特定装置10図示を省略している操作部を介して容易に行うことができる。
【0053】
なお、設備位置特定装置10は作業現場4になくてもよい。設備位置特定装置10は、作業現場4に配置された振動レコーダ30と通信ビル1内に配置された光測定器20のそれぞれと、ネットワーク40を介して接続するようにしてもよい。つまり、設備位置特定装置10を配置する場所は、作業現場4に限られない。
【0054】
(設備位置特定方法)
図8は、設備位置特定装置10の動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【0055】
通信経路100を保守点検する作業者は、現場のマンホールMを例えばハンマーで叩いて生じる打撃音の音声データをレコーダ等で録音する(ステップS1)。
【0056】
通信ビル1内の光ファイバケーブル3の端部に配置された光振動センサは、光ファイバケーブルに光パルスを入射して振動データを取得する(ステップS2)。
【0057】
相関係数計算部11は、上記の音声データと振動データを入力とし、音声データと振動データとの相関を表す相関係数を計算する(ステップS3)。振動データは、インターネット回線を介した通信で取得してもよい。または、同時に測定した音声データと振動データを、その後、相関係数計算部11に入力してもよい。
【0058】
位置特定部12は、相関係数計算部11で計算した相関係数が閾値以上である振動データの距離を、通信ビル1からの距離に特定する(ステップS4)。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る設備位置特定装置10によれば、ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置を提供することができる。つまり、音声データと振動データの相関係数を計算する簡単な処理で設備位置を特定することができる。作業者がマンホールMの蓋を実際に叩いた音声データを用いるので、振動データの雑音との区別が容易である。また、叩き方を変化させても検出精度が悪化しない。また、従来技術のように事前に指定した打撃でなくても設備位置を特定する検出精度を向上させることができる。
【0060】
なお、上記の実験系は一例であり、実際の通信経路上のマンホールMの数は多数である。マンホールMの数が多数であっても設備位置特定装置10によれば、マンホールMの位置を特定することができる。
【0061】
また、マンホールの蓋を叩く打撃音を録音した音声データは、光振動センサで測定した振動データに代えてもよい。つまり、通信ビル1と作業現場の二か所に光振動センサを配置してもよい。
【0062】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0063】
1:通信ビル
2:利用者
3:光ファイバケーブル
10:設備位置特定装置
11:相関係数計算部
12:位置特定部
13:制御部
14:通信インターフェース
20:光測定器
30:振動レコーダ
40:ネットワーク
100:通信経路
200:設備位置特定システム
M1,M2:マンホール
【手続補正書】
【提出日】2022-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明に係る設備位置特定装置は、光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと前記光ファイバケーブルの端部から該光ファイバケーブルの光振動を測定した光振動データを入力とし、前記音声データと前記光振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部と、前記相関係数が閾値以上である前記光振動データの距離を、前記打撃音を生じさせた前記端部からの距離の位置に特定する位置特定部とを備えることを要旨とする。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る設備位置特定システムは、光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの位置を特定する設備位置特定システムであって、前記マンホールの蓋に作業者が打撃を加えた場合の前記光ファイバケーブルからの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器と、前記打撃を加えた場合に生じる音声データを記録するレコーダと、前記散乱光の時間変化データと、前記音声データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である前記時間変化データの距離を、前記打撃を加えた前記端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置とを備えることを要旨とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
そこで、本実施形態に係る設備位置特定装置10は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと、光振動センサで測定した光振動データ(以下、「振動データ」という)の2つを用いてマンホールMの位置を特定する。音声データはレコーダで録音する。振動データは、光ファイバケーブル3の端部に配置した光振動センサ(図示せず)で測定する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
また、設備位置特定装置10は、作業者がマンホールMの蓋を実際に叩いた音声データを用いてマンホールMの位置を特定するので、音声データに雑音が含まれる場合でも区別することが容易である。また、叩き方を変化させても検出精度が悪化しない。また、機械学習のような大きな計算機パワーが不要である。また、従来技術のように事前に指定した打撃でなくても設備位置を特定する検出精度を向上させることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
(振動データ)
光振動センサ(例えば、前述したOTDR)は、光ファイバケーブル3の端部から入射した光パルスの反射光強度の変化と、入射光が戻って来る時間を測定することでケーブルの振動点の周波数と距離を特定することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
フィルタ部(図示せず)は、通信インターフェース14と相関係数計算部11との間に設けるとよい。フィルタ部を設けることで、音声データのSN比を向上させることができる。その結果、設備の位置を特定する精度を高めることができる。音声データに影響を与える特定の周波数が複数ある場合は複数のフィルタを組み合わせてもよい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
図7は、本実施形態に係る設備位置特定システムの機能構成例を示すブロック図である。
図7に示す設備位置特定システム200は、光測定器20
、レコーダ30、ネットワーク40、及び設備位置特定装置10を備える。なお、
図7に示す例は、設備位置特定装置10が作業現場4に配置された場合を示す。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
レコーダ30は、上記の音声データを録音するレコーダであり、マンホールMを叩く作業者の居る作業現場4に配置される。レコーダ30は、マンホールMの蓋を叩く打撃音の音声を録音するもので無くても構わない。レコーダ30は、マンホールの蓋を叩く際に生じる振動を記録するものでもよい。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
このように本実施形態に係る設備位置特定システム200は、光ファイバケーブル3が敷設された通信経路100上のマンホールMの位置を特定する設備位置特定システムであって、マンホールMの蓋に作業者が打撃を加えた場合の光ファイバケーブル3からの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器20と、打撃を加えた場合に生じる音声データを記録するレコーダ30と、散乱光の時間変化データと、音声データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である時間変化データの距離を、打撃を加えた上記の端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置10とを備える。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
なお、設備位置特定装置10は作業現場4になくてもよい。設備位置特定装置10は、作業現場4に配置されたレコーダ30と通信ビル1内に配置された光測定器20のそれぞれと、ネットワーク40を介して接続するようにしてもよい。つまり、設備位置特定装置10を配置する場所は、作業現場4に限られない。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る設備位置特定装置10によれば、ハイスペックな計算機が不要で検出精度の良い設備位置特定装置を提供することができる。つまり、音声データと振動データの相関係数を計算する簡単な処理で設備位置を特定することができる。作業者がマンホールMの蓋を実際に叩いた音声データを用いてマンホールMの位置を特定するので、音声データに雑音が含まれている場合でも区別することが容易である。また、叩き方を変化させても検出精度が悪化しない。また、従来技術のように事前に指定した打撃でなくても設備位置を特定する検出精度を向上させることができる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
1:通信ビル
2:利用者
3:光ファイバケーブル
10:設備位置特定装置
11:相関係数計算部
12:位置特定部
13:制御部
14:通信インターフェース
20:光測定器
30:レコーダ
40:ネットワーク
100:通信経路
200:設備位置特定システム
M1,M2:マンホール
【手続補正13】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの蓋を作業者が叩く打撃音を録音した音声データと前記光ファイバケーブルの端部から該光ファイバケーブルの光振動を測定した光振動データを入力とし、前記音声データと前記光振動データとの相関を表す相関係数を計算する相関係数計算部と、
前記相関係数が閾値以上である前記光振動データの距離を、前記打撃音を生じさせた前記端部からの距離の位置に特定する位置特定部と
を備える設備位置特定装置。
【請求項2】
前記相関係数計算部は、
前記端部からの距離ごとの前記光振動データと、時間とパワーの関係を表す前記音声データとの前記相関係数を計算する
請求項1に記載の設備位置特定装置。
【請求項3】
前記位置特定部は、
前記相関係数の移動平均と、前記相関係数とを比較して前記位置を特定する
請求項1又は2に記載の設備位置特定装置。
【請求項4】
フィルタ部を備え、
該フィルタ部は、前記相関係数計算部へ入力する前記音声データから前記光振動データに影響を与える特定の周波数の前記音声データを抽出する
請求項1乃至3の何れかに記載の設備位置特定装置。
【請求項5】
光ファイバケーブルが敷設された通信経路上のマンホールの位置を特定する設備位置特定システムであって、
前記マンホールの蓋に作業者が打撃を加えた場合の前記光ファイバケーブルからの散乱光の時間変化データを前記光ファイバケーブルの端部から測定する光測定器と、
前記打撃を加えた場合に生じる音声データを記録するレコーダと、
前記散乱光の時間変化データと、前記音声データとの相関を表す相関係数を計算し、該相関係数が閾値以上である前記時間変化データの距離を、前記打撃を加えた前記端部からの距離の位置に特定する設備位置特定装置と
を備える設備位置特定システム。
【手続補正14】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】