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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126415
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】異常監視システム及び成型装置
(51)【国際特許分類】
   B30B 15/28 20060101AFI20220823BHJP
   B21J 13/02 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
B30B15/28 K
B21J13/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024471
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 範男
【テーマコード(参考)】
4E087
4E089
【Fターム(参考)】
4E087EA15
4E087GA09
4E087GB01
4E089GA02
4E089GB03
4E089GC10
(57)【要約】
【課題】成型装置の軸受等の部品に異常が生じているか否かを容易かつ的確に監視することが可能な異常監視システム及び成型装置を提供する。
【解決手段】異常監視システム1及び成型装置10は、成型装置10の複数の部品27A、27Bにそれぞれ対応し、複数の部品27A、27Bに異常が生じていない場合には成型装置10の稼働に応じて互いに同じように変化する状態をそれぞれ有する複数の構成要素30A、30Bについて、構成要素30A、30Bの状態を表すパラメータTA、TBをそれぞれ測定する測定装置35A、35Bと、測定装置35A、35Bによって測定されたパラメータTA、TBの差ΔTに基づいて、複数の構成要素30A、30Bに対応する成型装置10の複数の部品27A、27Bの異常を監視する監視装置40と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型装置の複数の部品にそれぞれ対応し、前記複数の部品に異常が生じていない場合には前記成型装置の稼働に応じて互いに同じように変化する状態をそれぞれ有する複数の構成要素について、前記構成要素の前記状態を表すパラメータをそれぞれ測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された前記パラメータの差に基づいて、前記複数の構成要素に対応する前記成型装置の前記複数の部品の異常を監視する監視装置と、
を備える、
異常監視システム。
【請求項2】
前記監視装置は、前記複数の構成要素の前記状態を表すパラメータの差が閾値以上か否かに基づいて当該構成要素に対応する前記成型装置の部品に異常が生じているか否かを判定して前記部品の異常を監視する、
請求項1に記載の異常監視システム。
【請求項3】
前記監視装置は、前記複数の構成要素の前記状態を表すパラメータの変化率の差が閾値以上か否かに基づいて当該構成要素に対応する前記成型装置の部品に異常が生じているか否かを判定して前記部品の異常を監視する、
請求項1又は請求項2に記載の異常監視システム。
【請求項4】
前記成型装置の部品が軸受であり、前記構成要素が前記軸受の潤滑油であり、前記状態を表すパラメータが前記潤滑油の温度であり、前記測定装置が温度計である、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の異常監視システム。
【請求項5】
前記潤滑油の温度として、前記軸受の部分の潤滑油の温度を用いる、
請求項4に記載の異常監視システム。
【請求項6】
前記軸受に前記潤滑油を供給する供給管と、前記軸受から前記潤滑油を排出する排出管と、を備え、
前記潤滑油の温度として、前記排出管内の潤滑油の温度から前記供給管内の潤滑油の温度を差し引いた前記軸受における前記潤滑油の温度上昇分を用いる、
請求項4又は請求項5に記載の異常監視システム。
【請求項7】
前記監視装置は、前記成型装置の部品に異常が生じていると判定した場合に、当該部品に異常が生じている旨を報知する、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の異常監視システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の異常監視システムを備える成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常監視システム及び成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、成型装置(プレス装置や射出成型装置等を含む。)において軸受部等に潤滑不良による焼き付きやかじりなどの不具合が生じると、比較的大きな部品を交換しなければならなくなり、費用がかかったり、交換までの間、当該装置を使えないなど種々の問題が生じる場合がある。
そこで、このような不具合の原因となる焼き付き等を防止するために、従来から、軸受等の温度や温度の上昇率を監視することが行われていた。また、例えば、特許文献1では、軸受等の摺動部の温度上昇率の変化率を監視し、その変化率が正の場合に当該摺動部を異常状態として検出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3291240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、軸受等に焼き付きなどがなくても、成型装置の起動時には、軸受等の摺動部の温度上昇率の変化率が正になり得る。
また、従来のように軸受等の温度や温度の上昇率を監視して異常が生じているか否かを判断するように構成する場合、軸受等の温度等は、季節や、朝晩か日中か(すなわち時刻)によって軸受等の温度が変わり、また、成型装置の周囲の温度や、成型装置の生産条件(サイクルタイム等)によっても変わる。
【0005】
そして、軸受等の部品に異常が生じているか否かを部品の温度等で判断する場合、温度等に閾値を設けて温度等が閾値を超えているか否かで判断される場合が多いが、上記のように季節や1日の気温変化、周囲の温度、成型装置の生産条件等の全てを加味して閾値をそれらの関数等として設定することは容易ではない。
また、そのような関数としての閾値で異常が生じているか否かを必ずしも正確に判断できるとは言い難い。
【0006】
本発明は、上記の点を鑑みてなされたものであり、成型装置の軸受等の部品の異常を容易かつ的確に監視することが可能な異常監視システム及び成型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る異常監視システム及び成型装置は、
成型装置の複数の部品にそれぞれ対応し、前記複数の部品に異常が生じていない場合には前記成型装置の稼働に応じて互いに同じように変化する状態をそれぞれ有する複数の構成要素について、前記構成要素の前記状態を表すパラメータをそれぞれ測定する測定装置と、
前記測定装置によって測定された前記パラメータの差に基づいて、前記複数の構成要素に対応する前記成型装置の前記複数の部品の異常を監視する監視装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成型装置の軸受等の部品の異常を容易かつ的確に監視することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る成型装置の構成例を表す図である。
図2】(a)軸受に異常が生じていない場合の潤滑油の温度の変化の例を表すグラフであり、(b)成型装置の周囲の温度が低い場合等の潤滑油の温度の変化の例を表すグラフである。
図3】(a)軸受に異常が生じている場合の潤滑油の温度の変化の例を表すグラフであり、(b)成型装置の周囲の温度が低い場合等の潤滑油の温度の変化の例を表すグラフである。
図4】2つの軸受の温度のうちの一方が他方に比べてもともと所定値だけ大きくなるように変化する例を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る異常監視システム及び成型装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、本実施形態に係る成型装置が鍛造プレス装置(フライホイール付きの鍛造プレス装置)である場合を例示して説明するが、成型装置がプレス装置や射出成型装置等のどのようなタイプの成型装置であっても本発明を適用し得る。
【0011】
図1は、本実施形態に係る成型装置の構成例を表す図である。
成型装置10は、ベッド11、アップライト12、クラウン13、ベッドハードプレート15、スライド17、駆動部20等を備えている。
【0012】
ベッド11、アップライト12及びクラウン13は、成型装置10のフレームを構成している。そして、ベッド11、アップライト12及びクラウン13の内部にはタイロッド14aが挿入され、タイロッドナット14bにより締め付けられることで、互いに締結されている。
ベッドハードプレート15は、ベッド11上に固定され、その上部には下金型16が固定されている。
【0013】
スライド17は、アップライト12に設けられたスライドガイド19により、上下方向に移動可能に支持されている。
また、スライド17の下部には上金型18が固定されている。そして、スライド17が下降することで、上金型18と下金型16とが近接し、これらの間で図示しない被成型物が鍛造成型されるようになっている。なお、スライド17が移動する方向(プレス方向)は上下方向に限定されず、特に制限されない。
【0014】
駆動部20は、スライド17を移動させるための機構であり、モータ21、フライホイール22、クラッチ23、伝動軸24、減速機25、エキセン軸26、コネクティングロッド(コンロッド)28等を備えて構成されている。
【0015】
モータ21は、クラウン13などのフレームの一端側に固定されている。モータ21の動力はベルト21aを介してフライホイール22に伝達され、フライホイール22を回転させる。
フライホイール22は、回転可能に支持され、回転エネルギーを蓄積する。
【0016】
クラッチ23は、フライホイール22の近傍に配置されており、伝動軸24の軸方向の一端側に固定されている。そして、フライホイール22と伝動軸24とを連結したり連結を解除して伝動軸24の回転駆動を行う。
伝動軸24は、回転中心軸Ax周りに回転して、フライホイール22の回転運動を、フレームの他端側に設けられた減速機25に伝達する。
減速機25は、伝動軸24の回転運動を減速してエキセン軸26に伝達する。
【0017】
エキセン軸26は、軸受(エキセン軸主軸受)27を介してクラウン13やアップライト12等のフレームに回転可能に支持されている。
エキセン軸26は、回転中心軸Axに沿って貫通する中空部を有しており、この中空部内に、エキセン軸26に対して回転自在に、かつ、エキセン軸26の回転中心軸と同軸となるように伝動軸24が配設されている。
【0018】
コネクティングロッド28は、エキセン軸26の偏心部に、エキセン軸26の回転中心軸Axに直交する向きに取り付けられており、下端にスライド17が取り付けられている。
そして、エキセン軸26の回転運動を直線運動に変換してスライド17に伝達することで、スライド17を上下方向(プレス方向)に移動させるようになっている。
【0019】
次に、本実施形態に係る異常監視システムについて説明する。
異常監視システム1は、成型装置10の複数の部品にそれぞれ対応し、複数の部品に異常が生じていない場合には成型装置10の稼働に応じて互いに同じように変化する状態をそれぞれ有する複数の構成要素について、構成要素の状態を表すパラメータをそれぞれ測定する測定装置と、測定装置によって測定されたパラメータの差に基づいて、複数の構成要素に対応する成型装置10の複数の部品の異常を監視する監視装置40と、を備えている。
【0020】
監視装置40は、コンピュータや専用装置等で構成されている。携帯情報端末等のポータブルなものであってもよい。
また、成型装置10の構成要素は、成型装置10の部品であってもよいが、後述する潤滑油のように、必ずしも成型装置10の部品でなくてもよい。
さらに、構成要素に対応する成型装置10の部品とは、構成要素が成型装置10の部品である場合は部品そのもののことであり、構成要素が成型装置10の部品ではない場合は、当該構成要素が用いられる対象の部品のことである。
【0021】
以下では、成型装置10の部品がエキセン軸26の軸受27であり、構成要素が軸受27の潤滑油であり、状態を表すパラメータが潤滑油の温度Tであり、測定装置が温度計である場合を例示して説明する。
なお、以下では、減速機25に近い側の軸受27を軸受27Aと呼び、フライホイール22に近い側の軸受27を軸受27Bと呼ぶものとする。また、軸受27A、27Bに関係するものの符号にそれぞれAやBを付して区別して表す。
【0022】
図1に示すように、成型装置10には、各軸受27A、27Bに潤滑油30A、30Bを供給するための供給管31A、31Bと、各軸受27A、27Bから潤滑油30A、30Bを排出するための排出管32A、32Bがそれぞれ設けられている。
そして、潤滑油30A、30Bはそれぞれ供給管31A、31Bを通って各軸受27A、27Bに供給され、各軸受27A、27Bをそれぞれ潤滑した後、排出管32A、32Bを通って排出される。
【0023】
供給管31A、31Bには、それらの内部を流通する潤滑油30A、30Bの温度TinA、TinBを測定する測定装置としての温度計33A、33Bがそれぞれ取り付けられている。
また、排出管32A、32Bには、それらの内部を流通する潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBを測定する測定装置としての温度計34A、34Bがそれぞれ取り付けられている。
【0024】
また、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30B(すなわち軸受27A、27Bとエキセン軸26との間に存在する潤滑油30A、30B)の温度TA、TBを測定する測定装置としての温度計35A、35Bがそれぞれ取り付けられている。
そして、これらの温度計は、監視装置40の指示に従ってそれぞれ温度を測定すると、測定した温度を監視装置40にそれぞれ送信するようになっている。
【0025】
なお、図1では、温度計34Aのみが監視装置40に接続されているように記載されているが、実際には、上記の各温度計が監視装置40に接続されている。
また、温度計は、供給管31A、31Bや排出管32A、32B、軸受27A、27Bの部分の全てに取り付けられている必要はなく、必要な箇所に取り付けられていればよい。
【0026】
一方、例えば、エキセン軸26の軸受27Aの潤滑油30Aの温度TAと軸受27Bの潤滑油30Bの温度TBは、軸受27A、27Bに異常が生じていない場合には、図2(a)に示すように、成型装置10の稼働に応じて同じように変化する。
また、成型装置10の周囲の温度が低かったり成型装置10におけるサイクルタイムが長い場合でも、軸受27A、27Bに異常が生じていなければ、図2(b)に示すように、温度TA、TBは図2(a)の場合に比べてともに低くなるが、成型装置10の稼働に応じて同じように変化する。
【0027】
なお、図2(a)、(b)では、温度TA、TBが、成型装置10が稼働を開始し(図中のON参照)、エキセン軸26が回転中心軸Ax周りに回転し始めてからの経過時間tに従って変化する(この場合は上昇する)場合が例示されている。
また、図示を省略するが、軸受27Aが平衡状態になり、潤滑油30Aの温度TAが一定になれば、軸受27Bも同じように平衡状態になり、潤滑油30Bの温度TBが一定になる。
【0028】
また、このようにエキセン軸26の軸受27Aの潤滑油30Aと軸受27Bの潤滑油30Bの温度が同じように変化する現象(一定になる場合を含む。)は、軸受27A、27Bに異常が生じていなければ、供給管31A、31B内の潤滑油30A、30Bの温度TinA、TinBや排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBについても同様に生じる。
【0029】
このように、エキセン軸26の軸受27Aの潤滑油30Aと軸受27Bの潤滑油30Bは、軸受27A、27Bに異常が生じていなければ、成型装置10の稼働に応じて互いに同じように温度が変化する。
逆に言えば、エキセン軸26の軸受27Aの潤滑油30Aの温度TA等と、軸受27Bの潤滑油30Bの温度TB等との間に有意な差が生じている場合には、潤滑油30A、30B(構成要素)に対応する軸受27A、27B(部品)に異常が生じていると判定することができる。
【0030】
本実施形態に係る異常監視システム1では、このように、成型装置10の軸受27A、27Bに異常が生じていない場合には成型装置10の稼働に応じて互いに同じように状態が変化する潤滑油30A、30B(潤滑油30A、30Bはそれぞれ軸受27A、27Bに対応している。)について、それぞれ潤滑油30A、30Bの温度を測定し、測定された潤滑油30A、30Bの温度等に有意な差が生じているか否かに応じて軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを判定して軸受27A、27Bの異常を監視するようになっている。
以下、潤滑油30A、30B(構成要素)の温度(状態を表すパラメータ)に基づいて軸受27A、27B(部品)に異常が生じているか否かを判定する手法について、いくつかの構成例を挙げて説明する。
【0031】
なお、監視装置40は、軸受27A、27B等の成型装置10の部品に異常が生じていると判定した場合に、当該部品に異常が生じている旨を、表示画面41(図1参照)に表示したり、スピーカ42から音声を発生させたり、ポータブルの監視装置40を振動させるなどしてユーザに報知するように構成することが可能である。
このように構成すれば、ユーザが、異常が生じている部品の交換等を行うことが可能となり、部品に焼き付き等の大きな故障が生じることを防止することが可能となる。
【0032】
[構成例1]
監視装置40は、複数の構成要素の状態を表すパラメータの差が閾値以上か否かによって当該構成要素に対応する成型装置10の部品に異常が生じているか否かを判定して部品の異常を監視するように構成することが可能である。
すなわち、上記の例の場合、監視装置40は、潤滑油30A、30Bの温度の差が閾値以上か否かによって潤滑油30A、30Bに対応するエキセン軸26の軸受27A又は軸受27Bに異常が生じているか否かを判定して軸受27A、27Bの異常を監視するように構成することが可能である。
【0033】
[構成例1-1]
例えば、潤滑油30A、30Bの温度として、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30B(すなわち軸受27A、27Bとエキセン軸26との間に存在する潤滑油30A、30B)の温度TA、TBを用いることができる。
この場合、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBを測定した温度計35A、35Bから温度TA、TBの情報が送信されてくるごとに、それらの差
ΔT=TA-TB …(1)
を算出する。
【0034】
軸受27A、27Bのいずれにも異常が生じていなければ、図2(a)、(b)に示したように潤滑油30A、30Bの温度TA、TBは成型装置10の稼働に応じて同じように変化するため、それらの差ΔTの絶対値は0又は小さな正の値になる。
その際、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体は、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等によって図2(a)、(b)に示したように高くなったり低くなったりするが、成型装置10の稼働に応じて互いに同じように変化する。
【0035】
そのため、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くても低くてもそれらの差ΔTの絶対値は0又は小さな正の値になる。
このように、上記のように軸受27A、27Bの潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの差ΔT(=TA-TB)に着目すると、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等に関係なく、軸受27A、27Bのいずれにも異常が生じていない限り差ΔTの絶対値が0又は小さな正の値になるという特徴がある。
【0036】
一方、例えば、軸受27Bに異常が生じていると、図3(a)に示すように軸受27Aの潤滑油30Aの温度TAに比べて、軸受27Bの潤滑油30Bの温度TBが成型装置10の稼働に応じて大きく上昇するように変化する。
そのため、それらの差ΔT(=TA-TB)の絶対値は大きな正の値になる。
【0037】
そして、この場合も、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等によって図3(a)、(b)に示すように潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くなったり低くなったりするが、例えば軸受27Bに異常が生じていれば、軸受27Aの潤滑油30Aの温度TAに比べて軸受27Bの潤滑油30Bの温度TBが成型装置10の稼働に応じて大きく上昇するように変化することに変わりはない。
【0038】
そのため、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くても低くてもそれらの差ΔTを算出すると、軸受27A、27Bのいずれか一方に異常が生じていれば、差ΔTの絶対値は大きな正の値になる。
このように、上記のように軸受27A、27Bの潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの差ΔT(=TA-TB)に着目すると、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等に関係なく、軸受27A、27Bのいずれか一方に異常が生じていれば差ΔTの絶対値が大きな正の値になるという特徴がある。
【0039】
そのため、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの差ΔT(=TA-TB)の絶対値が閾値ΔTth以上か否かによって潤滑油30A、30Bに対応するエキセン軸26の軸受27A又は軸受27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0040】
軸受27に異常が生じると、通常、潤滑油30の温度Tが高くなるため、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの差ΔTの絶対値が閾値ΔTth以上であり、軸受27A又は軸受27Bのいずれか一方に異常が生じていると判定した場合には、温度Tが高い方の軸受27で異常が生じていると判定するように構成することができる。
【0041】
なお、閾値ΔTthは、軸受27に異常が生じている場合と異常が生じていない場合を適切に切り分けられる値に設定される。
また、図4に例示するように、成型装置10の構造や使用環境等によって軸受27A、27Bの温度TA、TBの一方が他方に比べてもともと所定値αだけ大きくなるように変化する場合がある。
【0042】
また、成型装置10が稼働を開始(図中のON参照)してからの経過時間tの経過に従って所定値αが変化する場合(すなわち所定値αが経過時間tの関数で表される場合)もある。
しかし、このように軸受27A、27Bに異常が生じていないにもかかわらず、軸受27A、27Bの温度TA、TBの間に所定値αだけ差があるために軸受27A、27Bのいずれかで異常が生じていると誤判定しないようにする必要がある。
【0043】
そこで、このような場合には、例えば、図4に破線で示すように、低い方の温度T(図4の例では温度TA)に予め求めておいた所定値αを加算した値T+αと高い方の温度T(図4の例では温度TB)との差ΔTを算出し、算出した差ΔTが閾値ΔTth以上か否かを判定するように構成することも可能である。
このように構成すれば、軸受27A、27Bに異常がなくても軸受27A、27Bの温度TA、TBの一方が他方に比べて所定値αだけ大きくなるように変化する場合に、軸受27A、27Bで異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0044】
[構成例1-2]
また、潤滑油30A、30Bの温度として、上記のように軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30B(すなわち軸受27A、27Bとエキセン軸26との間に存在する潤滑油30A、30B)の温度TA、TBを用いる代わりに、温度計34A、34Bによって測定された排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBを用いるように構成することも可能である。
【0045】
この場合、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBは、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBを反映しているため、温度ToutA、ToutBの差
ΔTout=ToutA-ToutB …(2)
を算出して上記の差ΔTの代わりに用いることができる。
そして、上記の構成例1-1と同様にして、差ΔToutが閾値ΔTout_th以上か否かによって、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0046】
[構成例1-3]
さらに、潤滑油30A、30Bの温度として、上記のように排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBを用いる代わりに、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBから供給管31A、31B内の潤滑油30A、30Bの温度TinA、TinBをそれぞれ差し引いた軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBを用いるように構成することも可能である。
【0047】
この場合、温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBは、軸受27A、27Bの部分で温められた潤滑油30A、30Bの温度上昇分に相当するものであるため、温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBを算出することで、軸受27A、27Bの部分で潤滑油30A、30Bがどの程度温められたか(すなわち異常な温められ方をしているか否か)を的確に知ることができる。
【0048】
そのため、軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBの差
ΔTout-in=(ToutA-TinA)-(ToutB-TinB)…(3)
を算出して上記の差ΔTや差ΔToutの代わりに用い、差ΔTout-inが閾値ΔTout-in_th以上か否かを判定することによって、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0049】
なお、前述した軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体(構成例1-1の場合)や、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutB自体(構成例1-2の場合)、あるいは軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinB自体(構成例1-3の場合)の値を監視し、その値が許容値を超えた場合に、監視装置40が軸受27A若しくは軸受27B又はその両方に異常が生じている旨をユーザに報知するように構成することも可能である。
このように構成すれば、より確実に軸受27A、27Bの異常をユーザに知らせることが可能となる。
【0050】
[構成例2]
一方、監視装置40は、複数の構成要素の状態を表すパラメータの差の代わりに、複数の構成要素の状態を表すパラメータの変化率の差が閾値以上か否かによって当該構成要素に対応する成型装置10の部品に異常が生じているか否かを判定して部品の異常を監視するように構成することも可能である。
すなわち、上記の例の場合、監視装置40は、潤滑油30A、30Bの温度の変化率(上昇率)の差が閾値以上か否かによって潤滑油30A、30Bに対応するエキセン軸26の軸受27A又は軸受27Bに異常が生じているか否かを判定して軸受27A、27Bの異常を監視するように構成することが可能である。
【0051】
[構成例2-1]
例えば、上記の構成例1-1において、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30B(すなわち軸受27A、27Bとエキセン軸26との間に存在する潤滑油30A、30B)の温度TA、TBそのものの代わりに、温度TA、TBの変化率dTA/dt、dTB/dtを用いるように構成することが可能である。
【0052】
すなわち、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBを測定した温度計から温度TA、TBの情報が送信されてくるごとに、それらと前回の測定タイミングで温度計35A、35Bから送信されてきたTA(TAoldという。)、TB(TBoldという。)との温度差dTA=TA-TAold、dTB=TB-TBoldを算出し、それらを測定間隔dtで割って温度の変化率dTA/dt、dTB/dtを算出する。
そして、それらの変化率同士の差
ΔdT/dt=dTA/dt-dTB/dt …(4)
を算出する。
【0053】
軸受27A、27Bのいずれにも異常が生じていなければ、図2(a)、(b)に示したように潤滑油30A、30Bの温度TA、TBは成型装置10の稼働に応じて同じように変化するため、温度の変化率の差ΔdT/dtの絶対値は0又は小さな正の値になる。
なお、温度TA、TB等のグラフにおいて温度TA、TB等の変化率dTA/dt、dTB/dt等は温度TA、TB等のグラフの接線の傾きとして表される。
【0054】
そして、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体は、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等によって図2(a)、(b)に示したように高くなったり低くなったりするが、成型装置10の稼働に応じて互いに同じように変化する。
そのため、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くても低くても温度の変化率の差ΔdT/dtの絶対値は0又は小さな正の値になる。
【0055】
このように、上記のように軸受27A、27Bの潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dtに着目すると、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等に関係なく、軸受27A、27Bのいずれにも異常が生じていない限り温度の変化率の差ΔdT/dtの絶対値が0又は小さな正の値になるという特徴がある。
【0056】
一方、例えば、軸受27Bに異常が生じていれば、図3(a)に示したように軸受27Aの潤滑油30Aの温度TAに比べて、軸受27Bの潤滑油30Bの温度TBが成型装置10の稼働に応じて大きく上昇するように変化する。
そのため、温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dt(=dTA/dt-dTB/dt)の絶対値は大きな正の値になる。
【0057】
そして、この場合も、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等によって図3(a)、(b)に示したように潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くなったり低くなったりするが、例えば軸受27Bに異常が生じていれば、軸受27Aの潤滑油30Aの温度TAに比べて軸受27Bの潤滑油30Bの温度TBが成型装置10の稼働に応じて大きく上昇するように変化することに変わりはない。
【0058】
そのため、潤滑油30A、30Bの温度TA、TB自体が高くても低くても温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dtを算出すると、軸受27A、27Bのいずれか一方に異常が生じていれば、温度の変化率の差ΔdT/dtの絶対値は大きな正の値になる。
このように、上記のように軸受27A、27Bの潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dt(=dTA/dt-dTB/dt)に着目すると、成型装置10の周囲の温度の高低や成型装置10におけるサイクルタイムの長短等に関係なく、軸受27A、27Bのいずれか一方に異常が生じていれば温度の変化率の差ΔdT/dtの絶対値が大きな正の値になるという特徴がある。
【0059】
そのため、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dt(=dTA/dt-dTB/dt)の絶対値が閾値ΔdT/dtth以上か否かによって潤滑油30A、30Bに対応するエキセン軸26の軸受27A又は軸受27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0060】
軸受27に異常が生じると、通常、潤滑油30の温度Tが高くなるため、監視装置40は、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの変化率の差ΔdT/dtの絶対値が閾値ΔdT/dtth以上であり、軸受27A又は軸受27Bのいずれか一方に異常が生じていると判定した場合には、温度Tが高い方の軸受27で異常が生じていると判定するように構成することができる。
【0061】
[構成例2-2]
また、潤滑油30A、30Bの温度として、上記のように軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30B(すなわち軸受27A、27Bとエキセン軸26との間に存在する潤滑油30A、30B)の温度TA、TBを用いる代わりに、温度計34A、34Bによって測定された排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBを用いるように構成することも可能である。
【0062】
この場合、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBは、軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBを反映しているため、温度ToutA、ToutBの変化率dToutA/dt、dToutB/dtも上記の温度TA、TBの変化率dTA/dt、dTB/dtを反映していると考えられる。
そのため、温度ToutA、ToutBの変化率dToutA/dt、dToutB/dtの差
ΔdTout/dt=dToutA/dt-dToutB/dt …(5)
を算出して上記の差ΔdT/dtの代わりに用いることができる。
そして、上記の構成例2-1と同様にして、温度の変化率の差ΔdTout/dtが閾値ΔdTout/dtth以上か否かによって、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0063】
[構成例2-3]
さらに、潤滑油30A、30Bの温度として、上記のように排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBを用いる代わりに、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBから供給管31A、31B内の潤滑油30A、30Bの温度TinA、TinBをそれぞれ差し引いた軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBを用いるように構成することも可能である。
【0064】
この場合、温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBは、軸受27A、27Bの部分で温められた潤滑油30A、30Bの温度上昇分に相当するものであるため、温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBの変化率d(ToutA-TinA)/dt、d(ToutB-TinB)/dtを算出することで、軸受27A、27Bの部分で温められた潤滑油30A、30Bの温度の変化率(すなわち異常な温められ方をしているか否か)を的確に知ることができる。
【0065】
そのため、軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBの変化率d(ToutA-TinA)/dt、d(ToutB-TinB)/dtの差
ΔdTout-in/dt=d(ToutA-TinA)/dt-d(ToutB-TinB)/dt…(6)
を算出して、温度の変化率の差ΔdTout-in/dtが閾値ΔdTout-in/dtth以上か否かを判定することによって、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを的確に判定することが可能となる。
【0066】
なお、前述した軸受27A、27Bの部分の潤滑油30A、30Bの温度TA、TBの変化率dTA/dt、dTB/dt自体(構成例2-1の場合)や、排出管32A、32B内の潤滑油30A、30Bの温度ToutA、ToutBの変化率dToutA/dt、dToutB/dt自体(構成例2-2の場合)、あるいは軸受27A、27Bにおける潤滑油30A、30Bの温度上昇分ToutA-TinA、ToutB-TinBの変化率d(ToutA-TinA)/dt、d(ToutB-TinB)/dt自体(構成例2-3の場合)の値を監視し、その値が許容値を超えた場合に、監視装置40が軸受27A若しくは軸受27B又はその両方に異常が生じている旨をユーザに報知するように構成することも可能である。
【0067】
このように構成すれば、より確実に軸受27A、27Bの異常をユーザに知らせることが可能となる。
また、上記の構成例1-1~構成例2-3を適宜組み合わせて、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かをより的確に判定することができるように構成することも可能である。
【0068】
以上のように、本実施形態に係る異常監視システム1及び成型装置10によれば、監視装置40は、成型装置10の複数の部品(例えばエキセン軸26の軸受27A、27B)にそれぞれ対応し、複数の部品に異常が生じていない場合には成型装置10の稼働に応じて互いに同じように変化する状態をそれぞれ有する複数の構成要素(例えば潤滑油30A、30B)について、それぞれ測定された構成要素の状態を表すパラメータ(例えば温度)の差に基づいて、複数の構成要素に対応する成型装置10の複数の部品(例えばエキセン軸26の軸受27A、27B)の異常を監視する。
【0069】
前述した従来のように、例えば、潤滑油30A、30B(構成要素)の温度(状態を表すパラメータ)自体に基づいて軸受27A、27B(部品)の異常を監視する場合には、季節や時刻、成型装置10の周囲の温度、成型装置10の生産条件(サイクルタイム等)等によって潤滑油30A、30Bの温度が変わるため、軸受27A、27Bに異常が生じているか否かを必ずしも正確に判断できるとは言い難かった。
【0070】
それに対し、本実施形態に係る異常監視システム1及び成型装置10では、同じように温度(状態)が変化する潤滑油30A、30B(構成要素)の温度(状態を表すパラメータ)をそれぞれ測定して得られた温度の差に基づいて軸受27A、27B(部品)の異常を監視する。
そのため、季節や時刻等によって潤滑油30A、30B自体の温度がともに上がったり下がったりしても、上記のようにそれらの差を算出することで季節や時刻等による影響が相殺される。そのため、本実施形態に係る異常監視システム1及び成型装置10によれば、季節や時刻等による影響を受けることなく軸受27A、27B(部品)に異常が生じているか否かを的確に判定して軸受27A、27B(部品)の異常を的確に監視することが可能となる。
【0071】
しかも、本実施形態に係る異常監視システム1及び成型装置10では、温度計(測定装置)で潤滑油30A、30B(構成要素)の温度(状態を表すパラメータ)をそれぞれ測定するだけで、それらの差に基づいて軸受27A、27B(部品)の異常を監視することが可能となる。
そのため、成型装置10の軸受27A、27B等の部品に異常が生じているか否かを容易に判定して軸受27A、27B(部品)の異常を容易に監視することが可能となる。
【0072】
なお、上記の実施形態では、成型装置10の部品がエキセン軸26の軸受27A、27Bであり、構成要素が軸受27A、27Bの潤滑油30A、30Bであり、状態を表すパラメータが潤滑油30A、30Bの温度TA、TBである場合について説明した。
しかし、本発明が適用される場合は、この場合に限定されない。
【0073】
例えば、図1では図示を省略したが、エキセン軸26と2本のコネクティングロッド28との間にもそれぞれ軸受があり、これらの軸受にもそれぞれ潤滑油が供給されて排出されている。
そして、これらの軸受の潤滑油も、各軸受に異常が生じていなければ成型装置10の稼働に応じて互いに同じように温度が変化するため、これらの軸受や潤滑油を上記の実施形態における軸受27A、27Bや潤滑油30A、30Bと同様に扱って、各軸受の異常を的確に監視するように構成することができる。
【0074】
また、例えば、図示を省略するが、エキセン軸等の両端部分にそれぞれ取り付けられたサーボモータでエキセン軸等を回転させるタイプの成型装置があるが、これらのサーボモータ内の各軸受も、各軸受に異常が生じていなければ成型装置10の稼働に応じて互いに同じように温度が変化する。
そのため、これらのサーボモータの各軸受や潤滑油を上記の実施形態における軸受27A、27Bや潤滑油30A、30Bと同様に扱って、各軸受の異常を監視するように構成することができる。
【0075】
さらに、上記の実施形態のように潤滑油の温度に基づいて軸受の異常を監視する代わりに、軸受自体の温度に基づいて軸受の異常を監視するように構成することも可能である。
また、部品は軸受だけに限らない。また、構成要素や部品の数は3つ以上であってもよい。
【0076】
例えば、スライド17を支持するスライドガイド19(図1参照)は前後左右のアップライト12に計4個設けられており、アップライト12に対してそれぞれ摺動する。そのため、成型装置10の稼働に応じてスライドガイド19の温度が上昇するため、スライドガイド19とアップライト12との間に潤滑油が供給される。
そして、各スライドガイド19に異常が生じていなければ成型装置10の稼働に応じて互いに同じように温度が変化する。そのため、これらの各スライドガイド19や潤滑油を上記の実施形態における軸受27A、27Bや潤滑油30A、30Bと同様に扱って、各スライドガイド19の異常を監視するように構成することができる。
【0077】
なお、この場合、測定された温度の差として、各スライドガイド19の温度(あるいはそれに対応する潤滑油の温度。以下同じ。)と4個のスライドガイド19の温度の平均値との差をそれぞれ算出するように構成することが可能である。
また、各スライドガイド19の温度と、そのスライドガイド19以外の3個のスライドガイド19の温度の平均値との差をそれぞれ算出するように構成してもよい。
【0078】
また、例えば、図示を省略するが、製品トランスファー装置を備えるプレス装置では、被成型物が固定されたり持ち上げられたりするが、その際に用いられる前後左右の4個のクランプ用ボールネジ軸受や4個のリフト用ボールネジ軸受等について上記と同様にして、それらの異常を監視するように構成することができる。
このように、本発明に係る異常監視システム1及び成型装置10によれば、成型装置10の複数の構成要素(構成要素が部品自体である場合を含む。以下同じ。)が成型装置の稼働に応じて互いに同じように温度が変化する場合には、測定された構成要素の温度の差に基づいて成型装置の各部品の異常を的確に監視することが可能となる。
【0079】
また、上記の実施形態等では、複数の構成要素の状態を表すパラメータが潤滑油や部品(軸受等)の温度である場合について説明したが、パラメータは、この他にも、例えば、成型装置10の稼働時におけるエキセン軸26の各軸受27A、27Bの振動の大きさ(例えば最大振幅や最大速度、最大加速度等)など、各部品に生じる振動等であってもよい。
この場合、例えば振動計等が測定装置ということになる。
【0080】
また、軸受27A、27Bやスライドガイド19等が摩耗すると、排出される潤滑油中に含まれる鉄分量が増加する場合がある。
そのため、例えば、複数の構成要素の状態を表すパラメータとして潤滑油中に含まれる鉄分量を用い、測定装置として例えば鉄分計(特開2003-35397号公報等参照)を用いて、複数の部品について、排出される潤滑油中に含まれる鉄分量に基づいて各部品の異常を監視するように構成することも可能である。
【0081】
また、例えば、前述した、エキセン軸等の両端部分にそれぞれ取り付けられたサーボモータでエキセン軸等を回転させるタイプの成型装置において、いずれかのサーボモータに異常が生じると、そのサーボモータを流れる電流量が増加する場合がある。
そのため、例えば、複数の構成要素の状態を表すパラメータとして各サーボモータを流れる電流量を用い、測定装置として電流計を用いて、複数のサーボモータについて、各サーボモータを流れる電流量に基づいて各サーボモータの異常を監視するように構成することも可能である。
【0082】
なお、本発明が上記の実施形態等に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。
例えば、上記の実施形態等では、状態を表すパラメータの差や状態を表すパラメータの変化率の差を用いる場合について説明したが、例えば、さらに、状態を表すパラメータの変化率の変化率(すなわちパラメータの二階微分)の差などを用いるように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 異常監視システム
10 成型装置
27A、27B 軸受(部品、軸受)
30A、30B 潤滑油(構成要素、潤滑油)
31A、31B 供給管
32A、32B 排出管
33A、33B 温度計(測定装置、温度計)
34A、34B 温度計(測定装置、温度計)
35A、35B 温度計(測定装置、温度計)
40 監視装置
TA、TB 温度(状態を表すパラメータ、軸受の部分の潤滑油の温度)
TinA、TinB 温度(状態を表すパラメータ、温度)
ToutA、ToutB 温度(状態を表すパラメータ、温度)
TinA-ToutA、TinB-ToutB 軸受における潤滑油の温度上昇分
ΔdT/dt 差
ΔdTout/dt 差
ΔdTout-in/dt 差
ΔdT/dtth 閾値
ΔdTout/dtth 閾値
ΔdTout-in/dtth 閾値
ΔT 差
ΔTout 差
ΔTout-in 差
ΔTth 閾値
ΔTout_th 閾値
ΔTout-in_th 閾値
図1
図2
図3
図4