IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 米山工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図1
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図2
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図3
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図4
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図5
  • 特開-転倒防止装置および移動式足場装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126437
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】転倒防止装置および移動式足場装置
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/04 20060101AFI20220823BHJP
   E04G 1/24 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E04G5/04 Z
E04G1/24 301B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024513
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000240547
【氏名又は名称】米山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米山 徹朗
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003CA01
2E003CB01
(57)【要約】
【課題】移動式足場の移動を円滑に行えるようにして、建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などの作業を、少ない足場資材で、工期の長期化を避けながら行えるようにする。
【解決手段】建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などを行うための移動式足場装置およびその転倒防止装置は、建築物に支持されて建築物の横幅方向に延設される線状部材から垂下し、線状部材に沿って延設する転倒防止レールと、転倒防止レールに係合した状態で転倒防止レールに沿って移動自在であり、枠組み足場に連結可能な移動係合部材とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などを行うための移動式足場装置の転倒防止装置であって、
前記建築物に支持されて前記建築物の横幅方向に延設される線状部材から垂下し、前記線状部材に沿って延設する転倒防止レールと、
前記転倒防止レールに係合した状態で前記転倒防止レールに沿って移動自在であり、枠組み足場に連結可能な移動係合部材と、
を備えることを特徴とする転倒防止装置。
【請求項2】
前記転倒防止レールは、中央に縦片部を有し該縦片部の左右に横片部を有する断面逆T字状のレールであり、
前記移動係合部材は、前記縦片部を挟んで一対設けられる上部ローラを備えると共に、前記横片部の下側に下部ローラを備え、前記上部ローラと前記下部ローラで前記横片部を挟むことを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の転倒防止装置と、
前記建築物に近接する地面に前記建築物に沿って延設されるレールと、
前記レールの上を移動する台車と、
前記台車の上に組み上げられた前記枠組み足場と、
を備えることを特徴とする移動式足場装置。
【請求項4】
前記レールは、延設方向に沿ってラックが設けられており、
前記台車は、前記レールに接して回転する車輪と、前記ラックに噛み合うピニオンを回転駆動する原動機を備えていることを特徴とする請求項3記載の移動式足場装置。
【請求項5】
前記車輪は前記レールにおけるレール材の外側に位置するフランジを有し、
前記建築物の反対側における前記レール材の内側面に前記レールの内側へ歯を向けて前記ラックを設けたことを特徴とする請求項4記載の移動式足場装置。
【請求項6】
前記原動機とブレーキが、減速機を介して前記ピニオンにつながっていることを特徴とする請求項4または5に記載の移動式足場装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に設置したレール上を移動する移動式足場装置および、移動式足場装置の転倒防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などを行う際には、建築物の周囲に建築物の高さに応じて足場(枠組み足場)を組み上げて、建築物に対する高所作業を行っている。この際に組み上げられる足場は、建築物の横幅が長い場合、横幅の全体に亘って足場を組もうとすると、多くの足場資材が必要になり、施工のコストが高くなる。これに対して、建築物の横幅に対して部分的に足場を組むと、足場資材の数は少なくてすむ。しかし、作業対象の位置を変える際に、最初の作業対象の位置で組み上げた足場を一旦撤去し、次の作業対象位置で再度足場を組み上げる必要があるので、その間に実質的な作業が止まってしまい、工期の長期化が避けられなくなる。
【0003】
このような事情に対応するために、建築物の横幅に対して部分的に組み上げられた枠組み足場を、建築物の横幅方向にそのままスライドさせる移動式足場が提案されている(下記特許文献1参照)。この移動式足場を採用すると、少ない資材で建築物の横幅方向に部分的に足場を組み、それをそのまま移動させて、作業位置を建築物の横幅方向に変えることができる。そのため、足場の撤去と再度の組み上げに必要な時間を省くことができ、施工のコストを抑えることができると共に、工期の長期化を避けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58-93138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような移動式足場は、移動中には、一旦、建築物と枠組み足場との固定を解除せざるを得ない。このため、移動中には枠組み足場が不安定にならざるを得ず、足場の移動中に強風などの影響を受けた場合であっても、枠組み足場が転倒しない対策が必要になる。
【0006】
これに対して、前述した従来の移動式足場は、建築物に沿って横方向にワイヤーを張設し、このワイヤーに枠組み足場の上側部位に突設した引っ掛けアームを引っ掛けている。また、ワイヤーは、建築物側に固定された複数のワイヤーホルダーを通すことで、建築物側に取り付けている。そして、ワイヤーホルダーには、欠円環状の部材を用い、欠円部分を開閉するレバーを設けて、枠組み足場が移動する際には、枠組み足場から突設されてワイヤーに引っ掛けられた引っ掛けアームが、前述したレバーを開けてワイヤーホルダーを通過するようにしている。
【0007】
このような従来技術によると、枠組み足場の移動中には、ワイヤーに引っ掛けられた引っ掛けアームが、ワイヤーホルダーのレバーを開けて、ワイヤーホルダーを通過することになる。しかし、その際に、レバーが開けられたワイヤーホルダーの欠円部分から、ワイヤーが外れてしまう虞がある。そして、一箇所でもワイヤーホルダーからワイヤーが外れると、ワイヤーの支持が不安定になるためワイヤーから引っ掛けアームが外れやすくなり、移動中の枠組み足場の転倒を確実に排除できなくなる問題があった。また、ワイヤーには多少の弛みが生じるため、引っ掛けアームがワイヤーホルダーの間にあるときには引っ掛けアームが枠組み足場の方向へ移動しやすく枠組み足場が倒れやすかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の問題に対処することを課題とするものである。移動式足場の移動中にワイヤーの支持が不安定になる問題を解消して、移動中の枠組み足場の転倒を確実に排除できるようにすること、安定な移動式足場を採用して、建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などの作業を、少ない足場資材で、工期の長期化を避けながら行えるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明による建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などを行うための移動式足場装置およびその転倒防止装置は、以下の構成を具備するものである。
建築物に支持されて建築物の横幅方向に延設される線状部材から垂下し、線状部材に沿って延設する転倒防止レールと、転倒防止レールに係合した状態で転倒防止レールに沿って移動自在であり、枠組み足場に連結可能な移動係合部材。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する移動式足場装置によると、移動式足場の移動中にワイヤーの支持が不安定になる問題を解消することができ、移動中の枠組み足場の転倒を確実に排除することができる。これにより、安定な移動式足場を採用して、建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などの作業を、少ない足場資材で、工期の長期化を避けながら行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】移動式足場装置の側面図である。
図2】移動式足場装置の正面図である。
図3】移動式足場装置の底面図である。
図4】移動式足場装置の下部の図である。
図5】移動式足場装置の転倒防止構造を示した説明図である。
図6】複数の移動式足場を連結した状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0013】
図1,2に示すように、移動式足場装置1は、外装・内装工事や修復・改修工事などを行う建築物Mに対して移動可能に設置され、工事時の作業足場となるものである。
【0014】
この移動式足場装置1は、作業対象の建築物Mに沿って延設され、建築物Mに近接する地面Gに設置されるレール2と、レール2上を移動する台車3と、台車3上に組み上げられた枠組み足場4と、建築物Mの上部に支持され、枠組み足場4を移動可能で転倒しないようにつなぐ転倒防止装置6を備える。
【0015】
レール2は、レールユニット21を複数接続して設置される。レールユニット21を接続することにより、平行な一対のレール材21A,21Bが接続されて、建築物Mの横幅方向(図示X方向)に延設される。図1,2,4に示すように、レールユニット21において、レール材21A,21Bは、水平且つ平行を維持するために複数の連結プレート211で一体化される。図3は移動式足場装置1を下方から見た図であるが、連結プレート211の記載を省略している。レール材21A,21Bの間隔は、移動枠31の短辺幅(図示Y方向の幅)に応じて設定され、連結プレート211で固定される。レール2は、複数のレールユニット21に分割することにより、輸送と組立を容易に行うことができる。また、レール2は、連結プレート211の下面で接地するため設置面積が大きく、接地圧を低減することができる。
【0016】
レール2には、延設方向に沿ってラック212が設けられている。ラック212は、図示の例では、建築物Mの反対側のレール材21Aの内側面に、レール2の内側へ歯を向けて設けられている。
【0017】
レール2上を移動する台車3では、移動枠31の下に車輪32が設けられている。移動枠31は、図示X方向に長辺を有し、図示Y方向に短辺を有する矩形枠である。また、台車3には、レール2上の台車3を移動させる動力機構として、駆動ユニット33と発電機34が搭載されている。駆動ユニット33は、原動機(駆動モータ)、減速機、ブレーキ(電磁ブレーキ)を一体的に構成したものであり、台車3から突出していないため障害物に干渉することがない。駆動モータと電磁ブレーキは、減速機を介してピニオン35につながっている。
【0018】
台車3を移動させる機構として、駆動ユニット33の出力軸にはピニオン35が取り付けられている。台車3のピニオン35は、ラック212のレール2の内側方向(Yの向き)に位置し、ラック212に噛み合う位置に設けられる。そして、駆動ユニット33がピニオン35を回転駆動することで、ピニオン35は、ラック212の延設方向(図示X方向)に沿って進行する。これにより、ピニオン35を取り付けた駆動ユニット33が搭載されている台車3は、レール2に沿って移動する。駆動ユニット33の回転速度を可変制御することで、台車3の移動速度は任意に調整することができる。
【0019】
また、駆動ユニット33の電磁ブレーキで制動することにより、ピニオン35の回転にブレーキがかかって移動している台車3を停止させることができる。また、足場として使用する際には、電磁ブレーキの制動により台車3がレール2の上を移動しないように固定することができる。そのため、固定用の部材を別途に設けなくても、駆動ユニット33とピニオン35、ラック212の作用により台車3および枠組み足場4を固定することができる。本実施形態の電磁ブレーキは無励磁作動形であり、台車3を移動させる際に通電し、停止させる際には通電を停止する。そして、電磁ブレーキは減速機を介してピニオン35につながっており、大きな制動トルクを発生させることができる。
【0020】
台車3の移動枠31には、矩形枠の四隅部分と長辺の中間部分に柱支持部が設けられ、その柱支持部上に縦支柱を立てることで、移動枠31上に枠組み足場4が組み上げられている。枠組み足場4には、一般的な足場資材を用いることができる。枠組み足場4が組み上げられた台車3をレール2に沿って移動させることで、枠組み足場4を建築物Mの横幅方向に沿って移動させることができる。
【0021】
車輪32は、両側面に円盤状のフランジが突出し、2つのフランジでレール材21Aまたは21Bを挟むことにより、車輪32はレール2から脱線しない。図4は、レールユニット21と、台車3の車輪32およびピニオン35を示す。レール材21Aの内側面には、レールユニット21の内側に歯を向けてラック212が取り付けられている。ラック212はレールユニット21(レール2)の内側に歯を向けているため、上方に歯を向けている場合やレールユニット21の外側に歯を向けている場合と比べて挟み込みが起こりにくい。また、低い場所への作業は台車3が乗っていないレール2の内側等を足場として行われるが、上方に歯を向けている場合と比べて作業を行いやすい。
【0022】
図4では、レール材21Aに載置される車輪32Aと、レール材21Bに載置される車輪32Bを一つずつ記載し、他の車輪32A,32Bは省略している。建築物の側におけるレール材21Bに載置される車輪32Bは、同じ大きさのフランジ321を有する。一方、建築物の反対側におけるレール材21Aに載置される車輪32Aは、外側は車輪32Bと同じ大きさのフランジ321を有し、内側は短く突出する短フランジ322を有している。短フランジ322はラック212の上部に位置し、ラック212にあたらないように短く形成されている。ラック212はピニオン35とかみ合っている。
【0023】
なお、図4に示すように、レールユニット21のレール材21A,21Bは、複数の連結プレート211により連結されている。また、レール材21A,21Bの端部は、隣接するレールユニット21と繋げるために連結凸部213を備える。連結凸部213は隣接するレールユニット21のレール材21A,21Bの下部に設けた凹部に嵌め込まれる。そして、連結プレート211に設けたネジ孔(図示せず)に接続板(図示せず)を固定して、隣の連結プレート211に固定する。
【0024】
次に、移動中の枠組み足場4の転倒防止機構について説明する。図1,2,5に示すように、建築物Mの上部には、建築物Mの横幅方向(図示X方向)に沿って、線状部材5が延設される。線状部材5は、ワイヤーなどで構成することができるが、建築物Mが横幅方向に延びる構造部分(例えば、横梁など)を備えている場合には、それを線状部材5として用いることができる。図示の例では、線状部材5は、所定間隔で複数設けられた支持部51を介して建築物Mに支持・固定されている。
【0025】
建築物Mへの支持・固定では、建築物Mに溶接された支持部51の上に線状部材5が載せられ、支持部51から線状部材5が外れないようにU字状部材が被せられる。そして、線状部材5の一端を固定し、他端をウインチ52で引くことにより、線状部材5が略直線状に張設される。転倒防止レール63は、複数箇所に設けた接続部材61を介して線状部材5から垂下する。転倒防止レール63には、移動係合部材64が移動自在に係合され、移動係合部材64は、連結部材42を介して枠組み足場4の上部に設けた係止棹41に間接的に連結可能である。連結部材42は、移動係合部材64に一端側が接続され、他端側が枠組み足場4の上部に接続される。図示の例では連結部材42は鎖である。連結部材42を鎖で形成したことにより、連結の際に長さの調節が容易であり、少ない弛みで連結することができる。しかし、鎖以外の部材により連結してもよく、移動係合部材64を係止棹41等の枠組み足場4の構造に直接的に連結してもよい。
【0026】
このような転倒防止機構によると、枠組み足場4は、転倒防止レール63に沿って移動する移動係合部材64に連結されることで、移動中にも常に建築物M側に接続している。そのため、引っ掛けアームがレバーを開けてワイヤーホルダーを通過する特許文献1とは異なり、線状部材5は、支持部51などから外れにくい。また、線状部材5に特許文献1の引っ掛けアームのような直接的に移動可能な係合部材を取り付けると、線状部材5を建築物Mに固定していない場所を係合部材が移動している際に、線状部材5が引かれて移動してしまう。そのため、固定している場所と固定していない場所で安定性が変わってしまう。転倒防止レール63は複数箇所で線状部材5に吊り下げられているため、移動係合部材64が移動の際に安定性がほぼ変わらない。
【0027】
図5に示すように、転倒防止レール63は、中央に縦片部631を有し縦片部631の左右に横片部632を有する断面逆T字状のレールである。また、図5から理解されるように、断面逆T字状のレールは2つのL字部材を貼り合わせて形成している。さらに、縦片部631の上部には、吊下板633が溶接されている。図1に示すように、吊下板633は、X方向に間隔をあけて複数箇所で縦片部631に溶接で固定される。図5に示すように、接続部材61は帯状金属板の中心をU字状に折り曲げたものであり、線状部材5に掛けて、両端部を転倒防止レール63の吊下板633に接続ビス62により取り付けている。接続ビス62は、吊下板633の孔と接続部材61の孔を合わせて押し込むことにより簡単に接合することができものであるが、接続ビス62に替えてボルトナットを用いてもよい。図示していないが、転倒防止レール63もレール2と同様に分割されており、分割されたものを接合することにより任意の長さの転倒防止レール63が形成される。
【0028】
図5の実施形態において、移動係合部材64は、転倒防止レール63の縦片部631を挟む一対の上部ローラ641を備えると共に、転倒防止レール63の横片部632の下側に下部ローラ642を備えている。そして、上部ローラ641と下部ローラ642で転倒防止レール63の横片部632を上下方向に挟んでいる。そして上部ローラ641は横片部632の端部近傍に突出する鍔を備える。この構造により、移動係合部材64は、移動中に転倒防止レール63から外れることがない。
【0029】
このような転倒防止レール63と移動係合部材64を採用することで、枠組み足場4の移動中に線状部材(ワイヤー)5からの支持が不安定になることがない。そして、常に枠組み足場4が連結した移動係合部材64が転倒防止レール63に係合した状態で枠組み足場4が移動する。これにより、移動中の枠組み足場4の転倒を確実に防止することができる。移動係合部材64は、転倒防止レール63の縦片部631を挟んで一対設けられる上部ローラ641を備えると共に、転倒防止レール63の横片部632の下側に下部ローラ642を備え、上部ローラ641と下部ローラ642で転倒防止レール63の横片部632を挟んでいる。そのため、係合が外れることが無く、且つ円滑な移動が可能になる。また、転倒防止レール63は、複数の箇所で接続部材61により断続的に線状部材5と繋がっている。そのため、線状部材5がところどころでたるんでも、転倒防止レール63は、ほぼ直線状となる。
【0030】
次に、枠組み足場4が倒れようとした際の力のかかり方について説明する。図2において、移動の最中等に枠組み足場4が建物M側に倒れようとすると、転倒防止レール63に係止した移動係合部材64が上方へ引かれる。そのため、枠組み足場4は倒れない。また、枠組み足場4が建物Mとは反対側に倒れようとすると、枠組み足場4はレール材21Aの近傍を中心として回転しようとし、転倒防止装置6は線状部材5が支持部51に接続している場所を中心として回転しようとする。そうすると、2つの回転の接続部である連結部材42は上下から引かれることになり、枠組み足場4の係止棹41を図2の左斜め上方へ引くことになる。そのため枠組み足場4は倒れない。さらに、転倒防止装置6の下部がレール材21Aを向くように斜めに設置すれば、枠組み足場4等が回転しようとする際の遊びが小さくなり、枠組み足場4は建物Mの反対側へより倒れにくくなる。
【0031】
また、実施形態では図2における建築物Mの反対側のレール材21Aの内側面にラック212が設けられている。図4において、台車3のピニオン35の回転速度が変化すると反力によりラック212から離れようとするため、車輪32AはYの向きに移動する。そして、車輪32Aの外側のフランジ321がレール材21Aの外側面に摺動してせり上がろうとする。しかし、せり上がりの力の向きは係止棹41を引き下げる力の向きであるため転倒防止装置6により抑えられ、枠組み足場4は安定して移動する。
【0032】
このような移動式足場装置1は、複数の台車3をレール2上に並べて配備することができる。この際、複数の台車3を独立して移動させることもできるが、図6に示すように、連結足場7によって、駆動ユニット33等のない台車3を連結すると、一つの台車3に設けた原動機を用いて、複数の台車3上の枠組み足場4を一体に移動させることができる。しかし、転倒防止装置6はなるべく多くの枠組み足場4に設置することが好ましい。
【0033】
以上のような特徴を有する移動式足場装置1を採用することで、安定した枠組み足場4の移動が可能になり、建築物の外装・内装工事や修復・改修工事などの作業を、少ない足場資材で、工期の長期化を避けながら行うことができる。
【0034】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1:移動式足場装置,
2:レール,21:レールユニット,21A,21B:レール材,211:連結プレート,212:ラック,213:連結凸部,
3:台車,31:移動枠,32,32A,32B:車輪,321:フランジ,322:短フランジ,33:駆動ユニット,34:発電機,35:ピニオン,
4:枠組み足場,41:係止棹,42:連結部材
5:線状部材,51:支持部,52:ウインチ
6:転倒防止装置,61:接続部材,62:接続ビス,63:転倒防止レール,631:縦片部,632:横片部,633:吊下板,64:移動係合部材,641:上部ローラ,642:下部ローラ,7:連結足場
M:建築物,G:地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6