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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126493
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】流体圧アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F15B15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024598
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】503094070
【氏名又は名称】ピー・エス・シー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝美
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081AA32
3H081BB01
3H081BB14
3H081CC25
3H081CC27
3H081DD02
3H081DD22
3H081DD37
3H081DD38
3H081EE22
3H081EE30
3H081FF26
3H081HH04
(57)【要約】
【課題】出力軸を進退させるだけでなく、回転させることもでき、バネ体にサージングが生じることも抑制できる流体圧アクチュエータを提供すること。
【解決手段】流体圧アクチュエータ1が、圧力室9a,9bに供給する流体量を変えることで圧力室9a,9bの体積を変動させて出力軸5をスリーブ10に対してX方向に進退させる出力軸進退駆動部30、出力軸5のR方向外側に出力軸5と略同軸に回転可能に配置される回転部53、及び出力軸5のR方向外側に出力軸5と略同軸にR方向に伸縮可能に配置され、出力軸5に固定される前側端部71と回転部53に固定される後側端部72とを有して回転部53が回転駆動されると出力軸5を周方向に回転させるバネ体70を備える。流体圧アクチュエータ1は、バネ体70のピッチが不等ピッチであることと、バネ体70が制振性を有する材料で構成されていることのうちの少なくとも一方を満足する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1受圧面を有する出力軸と、
前記出力軸を軸方向に移動可能に支持する内周面部、及び前記第1受圧面と相俟って圧力室の少なくとも一部を画定する第2受圧面を有するスリーブと、
前記圧力室に供給する流体量を変えることで前記圧力室の体積を変動させて前記出力軸を前記スリーブに対して前記軸方向に進退させる出力軸進退駆動部と、
前記出力軸の径方向の外側に前記出力軸と略同軸に回転可能に配置される回転部と、
前記出力軸の前記径方向の外側に前記出力軸と略同軸に前記軸方向に伸縮可能に配置され、前記出力軸に固定される一方側端部、及び前記回転部に固定される他方側端部を有して、前記回転部が回転駆動されると前記出力軸を周方向に回転させるバネ体と、を備え、
前記バネ体のピッチが不等ピッチであることと、前記バネ体が制振性を有する材料で構成されることのうちの少なくとも一方を充足する、流体圧アクチュエータ。
【請求項2】
前記バネ体のピッチが不等ピッチであり、
前記バネ体の両端側のピッチが、前記バネ体の中央側のピッチよりも短くなっている、請求項1に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項3】
前記バネ体のピッチが不等ピッチであり、
前記バネ体が、スリットが設けられた円筒体で構成される、請求項1又は2に記載の流体圧アクチュエータ。
【請求項4】
前記バネ体が、Mn-20Cu-5Ni-2Fe(M2052合金)からなる請求項1から3のいずれか1つに記載の流体圧アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体圧に基づいて出力軸をスリーブに対して軸方向に進退させる流体圧アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体圧アクチュエータとしては、特許文献1に記載されているものがある。この流体圧アクチュエータは、スリーブと、流体圧に基づいてスリーブに対して進退する出力軸を備える。また、この流体圧アクチュエータは、出力軸と略同軸に配置されて出力軸の軸周りに回転可能な回転部と、出力軸に固定される一方端部及び回転部に固定される他方端部を有して回転部の回転動力を出力軸に伝達するバネ体を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5812826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記流体圧アクチュエータは、出力軸を進退させるだけでなく、出力軸を回転させることができる。したがって、出力軸の先端側に固定した被固定体の軸方向位置を精密に調整できるだけでなく、被固定体の周方向位置も精密に調整できて、被固定体の位置決めの自由度を格段に大きくすることができる。
【0005】
本願発明者は、上記構成の流体圧アクチュエータに関してデータを収集するための試験を重ねる過程で、バネ体の固有振動に近い振動数成分を有する外力がバネ体に作用した場合、バネ体が小刻みに振動するサージングが生じる虞があって、被固定体の軸方向位置を高精度に位置決めできなくなる虞があることを初めて突き止めて発見した。
【0006】
そこで、本開示の目的は、出力軸を進退させるだけでなく、回転させることもでき、しかも、バネ体にサージングが生じることを抑制できる流体圧アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係る流体圧アクチュエータは、少なくとも1つの第1受圧面を有する出力軸と、前記出力軸を軸方向に移動可能に支持する内周面部、及び前記第1受圧面と相俟って圧力室の少なくとも一部を画定する第2受圧面を有するスリーブと、前記圧力室に供給する流体量を変えることで前記圧力室の体積を変動させて前記出力軸を前記スリーブに対して前記軸方向に進退させる出力軸進退駆動部と、前記出力軸の径方向の外側に前記出力軸と略同軸に回転可能に配置される回転部と、前記出力軸の前記径方向の外側に前記出力軸と略同軸に前記軸方向に伸縮可能に配置され、前記出力軸に固定される一方側端部、及び前記回転部に固定される他方側端部を有して、前記回転部が回転駆動されると前記出力軸を周方向に回転させるバネ体と、を備え、前記バネ体のピッチが不等ピッチであることと、前記バネ体が制振性を有する材料で構成されることのうちの少なくとも一方を充足する。
【0008】
上述のように、本願発明者は、バネ体の固有振動に近い振動数成分を有する外力がバネ体に作用した場合、バネ体が小刻みに振動するサージングが生じる虞があり、被固定体の軸方向位置を高精度に位置決めできなくなる虞があることを初めて発見した。
【0009】
係る背景において、本願発明者は、バネ体のピッチを不等ピッチにすることと、バネ体を制振性を有する材料で構成することの少なくとも一方を行えば、如何なる外力がバネ体に印加されてもバネ体にサージングが生じにくくなることを発見した。
【0010】
したがって、本開示によれば、バネ体のピッチが不等ピッチであることと、バネ体が制振性を有する材料で構成されていることのうちの少なくとも一方を充足するので、バネ体にサージングが生じることを抑制できる。よって、如何なる外力がバネ体に印加されても、出力軸の高精度の軸方向の位置決めと、出力軸の高精度の周方向の位置決めとを共に実行し易くなる。
【0011】
本開示において、前記バネ体のピッチが不等ピッチでもよく、前記バネ体の両端側のピッチが、前記バネ体の中央側のピッチよりも短くなっていてもよい。
【0012】
本願発明者は、バネ体のピッチが不等ピッチであって、しかも、バネ体の両端側のピッチが、バネ体の中央側のピッチよりも短くなっていると、バネ体で出力軸に回転動力を伝える構成において、サージングを抑制する効果を高くできることを発見した。したがって、本構成によれば、サージングを効果的に抑制でき、出力軸の軸方向の位置決めと周方向の位置決めを更に高精度で行うことができる。
【0013】
本開示において、前記バネ体のピッチが不等ピッチでもよく、前記バネ体が、スリットが設けられた円筒体で構成されてもよい。
【0014】
本構成によれば、円筒体に不等ピッチのスリットを設けるだけで所望のバネ体を高精度かつ容易に作製できる。より詳しくは、本開示の流体圧アクチュエータで用いるバネ体は、サージングを効果的に抑制すると共に回転動力を効率的に出力軸に伝達するため、軸方向のばね定数が低くて流体圧アクチュエータのバネ体以外の部分に軸方向の反力を付与しにくく、かつ、捩じり剛性が高くてバネ体に付与された回転動力を出力軸に効率的に伝達できると好ましい。そのような背景において、本構成によれば、円筒体に設ける不等ピッチのスリットの数、ピッチ、幅、深さ等を調整するだけで、軸方向のばね定数が低くて、捩じり剛性が高い幅広の所望のバネ体を高精度かつ容易に作製し易い。よって、本構成を採用すれば、サージングを効率的に抑制できて出力軸の高精度の軸方向の位置決めを行うことができ、出力軸の周方向の位置決めも高精度に行うことができる流体圧アクチュエータを作製し易い。
【0015】
本開示において、前記バネ体が、Mn-20Cu-5Ni-2Fe(M2052合金)からなってもよい。なお、Mn-20Cu-5Ni-2Feにおいて、数字は組成の原子%を表わしている)。
【0016】
本願発明者は、出力軸を進退させるだけでなく出力軸を回転させる流体圧アクチュエータにおいて、バネ体を、数多の制振材料の中で、上記マンガンを主成分とする制振合金で作製すれば顕著なサージング抑制効果を獲得できることを多数の試験により確認した。また、バネ体を不等ピッチのバネ体で構成すると共に上記マンガンを主成分とする制振合金で作製すれば、出力軸を進退させるだけでなく出力軸を回転させる流体圧アクチュエータにおいて、バネ体のサージングを略防止できることを確認した。したがって、本構成によれば、バネ体のサージングを更に効果的に抑制でき、出力軸の軸方向の位置決めと周方向の位置決めを更に高精度で行うことができる。なお、M2052合金は、特許第2849698号で開示されていて、数多の制振材料の中の1つの制振材料である。ここで、本願発明者は、M2052合金が本開示の流体圧アクチュエータにおいて他の制振材料との比較においてサージングの抑制効果が顕著である理由について、M2052合金が有する顕著な双晶作用で低い周波数から高い周波数までの高範囲に渡る振動を効率的に減衰させることができたためであると推察している。
【発明の効果】
【0017】
本開示に係る流体圧アクチュエータによれば、出力軸を進退させるだけでなく、回転させることもでき、しかも、バネ体にサージングが生じることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本開示の第1実施形態に係る流体圧アクチュエータの軸方向の模式断面図である。
図2図1のA-A線模式断面図の一部であり、上記流体圧アクチュエータのサーボ弁が回転部を回動させる動作を説明するための模式断面図である。
図3】上記流体圧アクチュエータのバネ体を示す斜視図である
図4】変形例のサーボ弁における図2に対応する模式断面図である。
図5】変形例のバネ体の斜視図である。
図6】本開示の第2実施形態に係る流体圧アクチュエータの軸方向の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本開示に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。また、以下の実施例では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。また、本明細書で、「略」という文言を用いた場合、「大雑把に言って」という文言と同じ意味合いで用いており、「略~」という要件は、人がだいたい~のように見えれば満たされる。例を挙げれば、略円形という要件は、人がだいたい円形に見えれば満たされる。
【0020】
また、以下では、流体圧アクチュエータとして、気体を用いる気体圧アクチュエータを述べるが、気体以外の液体を用いる油圧アクチュエータ、水圧アクチュエータであってもよい。また、流体として用いる気体としては、一般的な空気、乾燥空気の他、窒素、アルゴン等の不活性ガス、その他のガスであってもよい。また、以下の説明及び図面において、X方向は、出力軸5,105の軸方向を示し、θ方向は、出力軸5,105の周方向を示し、R方向は、出力軸5,105の径方向を示す。X方向、θ方向、及びR方向は、互いに直交する。また、以下の説明では、流体圧アクチュエータ1,101において、出力軸5,105において材料や電子部品(例えば、チップ等)を固定するX方向側を、X方向前側と言及し、その逆側を、X方向後側と言及する。また、以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0021】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る流体圧アクチュエータ1の軸方向の模式断面図である。この流体圧アクチュエータ1は、材料試験機であり、例えば、出力軸5のX方向前側の先端面に固定した材料を、捩じりながら引っ張るために用いられ、材料の耐性を検査するため等に用いられる。図1に示すように、流体圧アクチュエータ1は、出力軸5、スリーブ10、出力軸進退駆動部30、回転駆動部50、バネ体70、回転角度検出センサ75、及び軸方向変位センサ80を備える。
【0022】
出力軸5は、外径の大きな大径軸部5aと、大径軸部5aよりも小径であって大径軸部5aに接続され、X方向に延伸する小径軸部5bを含む。後で詳述するが、バネ体70は、小径軸部5bのR方向外方側に配置され、回転角度検出センサ75は、スリーブ10に対する小径軸部5bの回転角(θ方向の変位)を検出し、軸方向変位センサ80は、スリーブ10に対する小径軸部5bのX方向変位を検出する。なお、第1実施形態では、小径軸部5bが、大径軸部5aにナット6を用いてねじ止めされるが、大径軸部5aと小径軸部5bは、一体に構成されてもよく、出力軸5は、小径軸部5bを有さなくてもよい。
【0023】
大径軸部5aは、断面形状が円形の円筒形状を有し、小径軸部5bは、断面形状が円形の円柱形状を有する。出力軸5は、フランジ部5cを更に有する。フランジ部5cは、大径軸部5aからR方向に突出する環状突出部であり、フランジ部5cのR方向の先端面は、円筒外周面7になっている。後で詳述するが、フランジ部5cのX方向両側の円環状の端面8a,8bは、第1受圧面であり、出力軸進退駆動部30から供給された空気の圧力を受けるようになっている。
【0024】
スリーブ10は、大径軸部5aの外周部をX方向に摺動可能に支持する第1内周面部10aを有する共に、フランジ部5cの円筒外周面7をX方向に摺動可能に支持する第2内周面部10bを有する。第2内周面部10bは、円環状の端面10c,10dを介して第1内周面部10aに接続され、第2内周面部10bのX方向長さは、フランジ部5cのX方向長さよりも長くなっている。スリーブ10の円環状の端面10c,10dは、フランジ部5cのX方向両側の端面8a,8bと略同一のR方向寸法を有し、フランジ部5cの端面8a,8bにX方向に対向する。後で詳述するが、スリーブ10の円環状の端面10c,10dは、第2受圧面であり、出力軸進退駆動部30からの空気が充填される圧力室9a,9bの一部を画定する。
【0025】
出力軸進退駆動部30は、サーボ弁31と、スリーブ10に設けられた第1通路32aと、第2通路32bを有する。第1通路32aは、サーボ弁31の第1吐出吸引口(図示しない)と第2内周面部10bのX方向前側の端部とを連通し、第2通路32bは、サーボ弁31の第2吐出吸引口(図示しない)と第2内周面部10bのX方向後側の端部とを連通する。第2内周面部10bのX方向長さが、フランジ部5cのX方向長さよりも長くなっているので、少なくともフランジ部5cのX方向の片側に、スリーブ10の第2内周面部10b、スリーブ10の円環状の端面10c,10d、大径軸部5a、及びフランジ部5cのX方向両側の端面8a,8bで囲まれるスペースが形成される。このスペースは、圧力室9a,9bになっている。
【0026】
出力軸進退駆動部30は、次のように出力軸5を進退させる。詳しくは、出力軸進退駆動部30のサーボ弁31は、第1吐出吸引口が空気を吐出する時には第2吐出吸引口が空気を吸引するように動作し、また逆に、第1吐出吸引口が空気を吸引する時には第2吐出吸引口が空気を吐出するように動作する。このことから、第1通路32aから第2内周面部10bのX方向前側の端部に空気が供給される時にはフランジ部5cよりもX方向前側に位置する第1圧力室9aの体積が徐々に大きくなって、出力軸5が後側に後退し、その逆に、第2通路32bから第2内周面部10bのX方向後側の端部に空気が供給される時にはフランジ部5cよりもX方向後側に位置する第2圧力室9bの体積が徐々に大きくなって、出力軸5が前側に前進する。
【0027】
なお、流体圧アクチュエータ1は、第1通路32aから分岐して第1内周面部10aにおいて第1圧力室9aよりもX方向前側に位置する部分に開口する第3通路32cと、第3通路32cの第1内周面部10a側の開口よりもX方向後側に位置する開口を有して、第1内周面部10aと外部とを連通する第4通路32dを有する。また、流体圧アクチュエータ1は、第2通路32bから分岐して第1内周面部10aにおいて第2圧力室9bよりもX方向後側に位置する部分に開口する第5通路32eと、第5通路32eの第1内周面部10a側の開口よりもX方向前側に位置する開口を有して、第1内周面部10aと外部とを連通する第6通路32fを有する。
【0028】
第1吐出吸引口が空気を吐出すると共に第2吐出吸引口が空気を吸引する時には、空気が、矢印a1に示す方向に、第3通路32c、第1圧力室9aよりもX方向前側に位置する第1内周面部10aと大径軸部5aとの間、第4通路32dの順に流れると共に、矢印a2に示す方向に、第6通路32f、第2圧力室9bよりもX方向後側に位置する第1内周面部10aと大径軸部5aとの間、第5通路32eの順に流れる。このため、第1圧力室9aよりもX方向前側及び第2圧力室9bよりもX方向後側の両方で、第1内周面部10aと大径軸部5aとの間に静圧軸受を生成できる。
【0029】
また、逆に、第1吐出吸引口が空気を吸引すると共に第2吐出吸引口が空気を吐出する時には、空気が、矢印b1に示す方向に、第4通路32d、第1圧力室9aよりもX方向前側に位置する第1内周面部10aと大径軸部5aとの間、第3通路32cの順に流れると共に、矢印b2に示す方向に、第5通路32e、第2圧力室9bよりもX方向後側に位置する第1内周面部10aと大径軸部5aとの間、第6通路32fの順に流れる。このため、この場合においても、第1圧力室9aよりもX方向前側及び第2圧力室9bよりもX方向後側の両方で、第1内周面部10aと大径軸部5aとの間に静圧軸受を生成できる。よって、出力軸5がX方向に進退する時に、大径軸部5aを静圧軸受によって第1内周面部10aに接触することなく第1内周面部10aに対して進退自在に支持できる。
【0030】
なお、第1実施形態では、出力軸5がX方向に進退する時に、大径軸部5aを第1内周面部10aに対して静圧軸受で進退自在に支持したが、出力軸5がX方向に進退する時に、大径軸部5aを第1内周面部10aに対してすべり軸受で進退自在に支持してもよく、又は、出力軸5がX方向に進退する時に、大径軸部5aを第1内周面部10aに対して軸受で支持しなくてもよい。
【0031】
回転駆動部50は、ロータリーアクチュエータを構成するサーボ弁51を有する。図2は、図1のA-A線模式断面図の一部であり、サーボ弁51が回転部53を回動させる動作を説明するための模式断面図である。図2に示すように、サーボ弁51は、円筒状のケース52、及び円筒状の回転部53を有する。円筒状のケース52の軸中心は、円筒状の回転部53の軸中心に略一致し、ケース52の円筒内周面52aは、間隔をおいて回転部53の円筒外周面53aにR方向に対向する。
【0032】
サーボ弁51は、更に、円筒内周面52aからR方向内方に突出して回転部53の円筒外周面53aに僅かな隙間を介してR方向に対向する突出部54を有すると共に、回転部53の円筒外周面53aからR方向内方に突出して円筒内周面52aに僅かな隙間を介してR方向に対向するベーン55を有する。本構成により、ケース52内には、突出部54及びベーン55を境に2つの圧力室56a,56bが形成される。サーボ弁51は、空気を吐出又は吸引する吐出吸引口57a,57bを更に有する。吐出吸引口57a,57bは、ケース52内のX方向に略直交する壁部58における突出部54のθ方向両側の根元に設けられる。
【0033】
図2の紙面において突出部54の右側に位置する吐出吸引口57aから空気を吐出すると共に突出部54の左側に位置する吐出吸引口57bから空気を吸引することで、図2の紙面においてベーン55を時計回りに回動させることができ、その結果、図2の紙面において回転部53を時計回りに回動させることができる。また、逆に、吐出吸引口57bから空気を吐出すると共に吐出吸引口57aから空気を吸引することで、図2の紙面においてベーン55を反時計回りに回動させることができ、その結果、図2の紙面において回転部53を反時計回りに回動させることができる。
【0034】
図1を再度参照して、回転部53は、小径軸部5bのR方向外方側に位置し、小径軸部5bと略同軸に配置される。回転部53の外周面は、ベーン55のX方向の前後で転がり軸受59a,59bでスリーブ10の内周面に回転自在に支持される。また、流体圧アクチュエータ1は、ベーン55のX方向の前後に、回転部53の外周面とスリーブ10の内周面との間の隙間をシールするOリング60a,60bを備える。Oリング60a,60bは、圧力室56a,56b(図2参照)の高い気密性を実現して、ベーン55を円滑に回動させるために設けられる。
【0035】
バネ体70は、前側端部71、後側端部72、及びバネ部73を有する。前側端部71は、大径軸部5aのX方向後側の端面に間隔をおいて配置される複数のピン77でピン止めされる。また、後側端部72は、回転部53のX方向後側にR方向内方に突出するように設けられる環状のフランジ部65に間隔をおいて配置される複数のボルト79でねじ止めされる。また、バネ部73は、前側端部71と前側端部71との間に設けられて前側端部71と前側端部71を連結する。なお、第1実施形態では、バネ体70のX方向の両端部を、ピン止めやボルト締めで出力軸5や回転部53に固定した。しかし、バネ体70のX方向の両端部は、如何なる構造で、出力軸や回転部に固定してもよく、ねじ止めやピン止めの他、接着剤による接着、溶着、又はカシメ等を用いて、出力軸や回転部に固定してもよい。
【0036】
バネ体70は、制振金属で作製され、例えば、黒鉛鋳鉄、アルミニウム、若しくは亜鉛合金等の制振合金で構成される。バネ体70を制振合金で構成する場合、バネ体70は、複合型、強磁性型、転位型、又は双晶型のいずれの型の制振合金で構成されてもよい。又は、バネ体70は、プラスチックをはさんだ制振鋼板(サンドイッチ鋼板)等で構成されてもよい。バネ体70は、如何なる制振金属で構成されてもよいが、特に、原子重量%で、マンガンが略73%を占め、銅が略20%を占め、ニッケルが略5%を占め、鉄が略2%を占める制振合金で構成されると好ましい。換言すると、バネ体70は、Mn-20Cu-5Ni-2Fe(M2052合金)で構成されると好ましい。
【0037】
図3は、バネ体70を示す斜視図である。図3に示すように、バネ体70は、スリット78が設けられた円筒体76で構成され、バネ部73のピッチが、不等ピッチになっている。詳しくは、バネ部73のX方向の両端部73a,73bのピッチは、バネ部73の両端部73a,73bを連結するX方向の中央部73cのピッチよりも小さくなっている。バネ部73は、X方向の略中心を通過すると共にX方向に略直交する仮想平面に対して略面対称になっている。バネ部73の両端部73a,73bのばね定数は、中央部73cのばね定数よりも大きくなっている。
【0038】
再度、図1を参照して、回転角度検出センサ75は、スリーブ10に対する小径軸部5bの回転角(θ方向の変位)を検出する。回転角度検出センサ75は、スリーブ10に対する小径軸部5bの回転角を検出できる如何なるセンサで構成されてもよい。回転角度検出センサ75は、例えば、ディジタル式のロータリーエンコーダで構成されてもよく、θ方向にN局とS局が交互に配置されると共に小径軸部5bの円筒外周面に外嵌されて固定された円環状のパルサリングと、磁気検出部とを含んでもよい。又は、回転角度検出センサ75は、光学検出式の回転角検出センサで構成されてもよく、又は電磁誘導式の回転角検出センサ(レゾルバ)等で構成されてもよい。
【0039】
軸方向変位センサ80は、スリーブ10に対する小径軸部5bのX方向変位を検出する。軸方向変位センサ80は、スリーブ10に対する小径軸部5bのX方向変位を検出できる如何なるセンサで構成されてもよい。軸方向変位センサ80は、例えば、ディジタル式のリニアエンコーダで構成され、N局とS局が直線上に交互に配置されると共に小径軸部5bに固定されるリニアスケールと、スリーブ10の内周面に固定される磁気検出部とを含んでもよい。又は、軸方向変位センサ80は、軟磁性体のプローブとトランス巻線とを含む差動変圧器方式の位置検出センサで構成されてもよく、光学検出式の位置検出センサで構成されてもよく、又は容量検出式の位置検出センサ等で構成されてもよい。
【0040】
流体圧アクチュエータ1は、外部に配置される制御装置85によって制御される。制御装置85は、コンピュータ、例えば、マイクロコンピュータによって好適に構成され、制御部86と、記憶部87を含む。制御部86、すなわち、プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。また、記憶部87は、ハードディスクドライブ(HDD)や、半導体メモリ等で構成され、半導体メモリは、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリや、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリで構成される。記憶部87は、一つのみの記憶媒体で構成されてもよく、複数の異なる記憶媒体で構成されてもよい。CPUは、記憶部87に予め記憶された流体圧アクチュエータ1の制御プログラム等を読み出して実行する。また、不揮発性メモリは、制御プロラムや所定の閾値等を予め記憶する。また、揮発性メモリは、読み出した制御プログラムや処理データを一時的に記憶する。
【0041】
制御部86は、軸方向変位算出部86a、回転角算出部86b、進退駆動制御部86c、及び回転駆動制御部86dを含む。軸方向変位算出部86aは、軸方向変位センサ80からの信号に基づいてスリーブ10に対する出力軸5の軸方向の変位を算出し、回転角算出部86bは、回転角度検出センサ75からの信号に基づいてスリーブ10に対する出力軸5の回転角を算出する。
【0042】
進退駆動制御部86cは、軸方向変位算出部86aが算出したスリーブ10に対する出力軸5のX方向の変位に基づいて出力軸進退駆動部30を制御し、スリーブ10に対する出力軸5のX方向の変位を高精度に制御する。回転部53がスリーブ10に対してX方向に静止し、バネ体70の後側端部72が回転部53に固定されているので、スリーブ10に対する出力軸5のX方向の変位が特定できると、バネ体70の自然長に対するX方向前側への伸長寸法Δxを特定できる。よって、出力軸進退駆動部30のサーボ弁31から第1及び第2圧力室9a,9bに供給される空気が出力軸5に付与するX方向前側の力をF(S)とし、バネ体70のばね係数をkとすると、出力軸5に付与されるX方向前側の外力は、F(S)-k×Δxとなる。進退駆動制御部86cは、その外力に基づいて所望の出力軸5のX方向位置を実現するF(S)を逆算し、そのF(S)を実現するようにサーボ弁31の第1及び第2吐出吸引口から吐出又は吸引する空気量を制御する。
【0043】
回転駆動制御部86dは、回転角算出部86bが算出したスリーブ10に対する出力軸5の回転角に基づいて回転駆動部50を制御し、スリーブ10に対する出力軸5の回転角を高精度に制御する。詳しくは、バネ体70の後側端部が回転部53に固定されているので、スリーブ10に対する出力軸5の回転角を特定できると、スリーブ10に対する回転部53の回転角に基づいてバネ体70のθ方向の捩じり度合いを特定でき、バネ体70が出力軸5に付与するトルクT(S)(θ方向の力)を特定できる。回転駆動制御部86dは、回転駆動部50のサーボ弁51を制御してスリーブ10に対する回転部53の回転角を制御することで、上記トルクT(S)を高精度に調整して、スリーブ10に対する出力軸5の回転角を高精度に制御する。
【0044】
以上、流体圧アクチュエータ1は、少なくとも1つの円環状の端面8a,8b(第1受圧面)を有する出力軸5と、出力軸5をX方向に移動可能に支持する内周面部10a,10b、及び上記端面8a,8bと相俟って第1及び第2圧力室9a,9bの少なくとも一部を画定する円環状の端面10c,10d(第2受圧面)を有するスリーブ10を備える。また、流体圧アクチュエータ1は、第1及び第2圧力室9a,9bに供給する流体量を変えることで第1及び第2圧力室9a,9bの体積を変動させて出力軸5をスリーブ10に対してX方向に進退させる出力軸進退駆動部30と、出力軸5のR方向外側に出力軸5と略同軸に回転可能に配置される回転部53を備える。また、流体圧アクチュエータ1は、出力軸5のR方向外側に出力軸5と略同軸にR方向に伸縮可能に配置され、出力軸5に固定される前側端部71(一方側端部)、及び回転部53に固定される後側端部72(他方側端部)を有して、回転部53が回転駆動されると出力軸5をθ方向に回転させるバネ体70を備える。また、流体圧アクチュエータ1は、バネ体70のピッチが不等ピッチであることと、バネ体70が制振性を有する材料で構成されていることのうちの少なくとも一方を充足する。
【0045】
本願発明者は、制振金属で構成されなくて不等ピッチでもないバネ体を用いた流体圧アクチュエータに関してデータを収集するための多数の試験を実行する過程で、バネ体の固有振動に近い振動数成分を有する外力がバネ体に作用した場合、バネ体が小刻みに振動するサージングが生じる虞があり、被固定体(例えば、材料や電子部品)のX方向位置を高精度に位置決めできなくなる虞があることを、初めて発見して突き止めた。
【0046】
また、本願発明者は、更に、バネ体のピッチを不等ピッチにすることと、バネ体を制振性を有する材料で構成することの少なくとも一方を行えば、如何なる外力がバネ体に印加されてもバネ体にサージングが生じにくくなることを確認した。
【0047】
したがって、本開示によれば、バネ体70のピッチが不等ピッチであり、バネ体70が制振性を有する材料で構成されているので、バネ体70にサージングが生じることを抑制できる。よって、如何なる外力がバネ体70に印加されても、出力軸5の高精度のX方向の位置決めと、出力軸5の高精度のθ方向の位置決めとを共に実行し易い。
【0048】
また、バネ体70のピッチが不等ピッチでもよく、バネ体70の両端側のピッチが、バネ体の中央側のピッチよりも短くなっていてもよい。
【0049】
本願発明者は、バネ体70のピッチが不等ピッチであって、しかも、バネ体70の両端側のピッチが、バネ体の中央側のピッチよりも短くなっていると、バネ体70で出力軸5に回転動力を伝える構成において、サージングを抑制する効果を高くできることを発見した。したがって、本構成によれば、バネ体70のサージングを効果的に抑制でき、出力軸5の軸方向の位置決めと周方向の位置決めを更に高精度で行うことができる。
【0050】
なお、本願発明者は、バネ体70のピッチが不等ピッチであって、バネ体70の両端側のピッチがバネ体の中央側のピッチよりも短くなっている場合に、バネ体70のサージングを効果的に抑制できる理由を次のように推察している。
【0051】
詳しくは、バネ体70の固有振動数をf1とし、バネ体70のばね係数をkとするとき、f1∝k1/2となることが知られている。ここで、バネ体70の固有振動数f1が、外力によって引き起こされるバネ体70の強制振動の振動数f2に一致すると、共振が発生してバネ体70がサージングを引き起こすと考えられるが、バネ体70のピッチが不等ピッチである場合、バネ体70の両端部のばね係数と、バネ体70の中央部のばね係数が異なるため、バネ体70の両端部とバネ体70の中央部が異なる振動を行って、バネ体70の両端部とバネ体70の中央部がバネ体70全体の共振を打ち消すように振動し易い。また、バネ体70の中央部のばね係数が、バネ体70の両端部のばね係数よりも小さい場合、バネ体70の両端部の振動数がバネ体70の中央部の振動数よりも小さくなるので、バネ体70の振動がバネ体70の前側端部71に接続される出力軸5に伝わりにくい。よって、本願発明者は、バネ体70のピッチが不等ピッチであって、しかも、バネ体70の両端側のピッチがバネ体70の中央側のピッチよりも短くなっている場合に、バネ体70のサージングを効果的に抑制できると推察している。
【0052】
また、バネ体70のピッチが不等ピッチでもよく、バネ体70が、スリット78が設けられた円筒体76で構成されてもよい。
【0053】
本構成によれば、円筒体76に不等ピッチのスリットを設けるだけで所望のバネ体70を高精度かつ容易に作製できる。より詳しくは、本開示の流体圧アクチュエータ1で用いるバネ体70は、サージングを効果的に抑制すると共に回転動力を効率的に出力軸に伝達するため、軸方向のばね定数が低くて流体圧アクチュエータ1のバネ体70以外の部分に軸方向の反力を付与しにくく、かつ、捩じり剛性が高くてバネ体70に付与された回転動力を出力軸5に効率的に伝達できると好ましい。そのような背景において、本構成によれば、円筒体76に設ける不等ピッチのスリットの数、ピッチ、幅、深さ等を調整するだけで、軸方向のばね定数が低くて、捩じり剛性が高い幅広の所望のバネ体70を高精度かつ容易に作製し易い。よって、本構成を採用すれば、サージングを効率的に抑制できて出力軸の高精度の軸方向の位置決めを行うことができ、出力軸5の周方向の位置決めも高精度に行うことができる流体圧アクチュエータ1を作製し易い。
【0054】
また、バネ体70が、Mn-20Cu-5Ni-2Fe(M2052合金)からなってもよく、バネ体70が、原子重量%で、マンガンが略73%を占め、銅が略20%を占め、ニッケルが略5%を占め、鉄が略2%を占める制振合金で構成されてもよい。
【0055】
本願発明者は、出力軸5を進退させるだけでなく出力軸5を回転させる流体圧アクチュエータにおいて、バネ体70を、数多の制振材料の中で、上記マンガンを主成分とする制振合金で作製すれば顕著なサージング抑制効果を獲得できることを多数の試験により確認した。また、第1実施形態のように、バネ体70を不等ピッチのバネ体で構成すると共に上記マンガンを主成分とする制振合金で作製すれば、出力軸5を進退させるだけでなく出力軸5を回転させる流体圧アクチュエータ1において、バネ体70のサージングを略防止できることを確認した。したがって、本構成によれば、バネ体70のサージングを更に効果的に抑制でき、出力軸5のX方向の位置決めとθ方向の位置決めを更に高精度で行うことができる。なお、本願発明者は、M2052合金が本開示の流体圧アクチュエータ1において他の制振材料との比較においてサージングの抑制効果が顕著である理由について、M2052合金が有する顕著な双晶作用で低い周波数から高い周波数までの高範囲に渡る振動を効率的に減衰させることができたためであると推察している。
【0056】
なお、第1実施形態では、回転駆動部50が、1つのみのベーン55を有するサーボ弁51を含む場合について説明した。しかし、回転駆動部は、2以上のベーンを有するサーボ弁を含んでもよい。例えば、図4、すなわち、変形例のサーボ弁151における図2に対応する模式断面図に示すように、回転駆動部150のサーボ弁151は、円筒状のケース152、円筒状の回転部153、2つの突出部154a,154b、2つのベーン155a,155b、及び4つの吐出吸引口157a~157dを有してもよい。2つの突出部154a,154bは、同一直線上に延在して、回転部153にR方向に対向し、2つのベーン155a,155bも、同一直線上に延在して、円筒状のケース152にR方向に対向する。また、吐出吸引口157aと吐出吸引口157dは、同じタイミングで同じ動作(空気の吐出又は吸引)をし、吐出吸引口157bと吐出吸引口157cは、同じタイミングで同じ動作かつ吐出吸引口157a,157dと反対の動作(空気の吸引又は吐出)をする。
【0057】
図4に示す2つのベーン155a,155bを有するサーボ弁151を採用すると、回転部153が回動可能な角度は、図2に示す回転駆動部50よりも小さくなるが、回転部153に付与可能なトルクを図2に示す回転駆動部50の略2倍にでき、出力軸5に大きなトルクを付与し易くなる。なお、回転駆動部は、サーボ弁の代わりにモータを有してもよい。そして、モータの出力軸に固定した歯車と回転部の円筒外周面に固定した歯車とを噛合することで、モータの回転動力を回転部に伝達して、回転部を回動させてもよい。
【0058】
また、バネ体70をスリット78が設けられた円筒体76で構成すると共に、バネ体70の両端側のピッチがバネ体の中央側のピッチよりも短くなっている場合について説明した。しかし、図5、すなわち、変形例のバネ体90の斜視図に示すように、バネ体90を、コイルバネで構成すると共に、バネ体90の両端側91,92のピッチがバネ体90の中央側93のピッチよりも短くなっていてもよい。
【0059】
又は、本開示の流体圧アクチュエータは、両端側のピッチが中央側のピッチよりも短くなっていない如何なる不等ピッチのバネ体を採用してもよい。例えば、本開示の流体圧アクチュエータは、両端側のピッチが中央側のピッチよりも長いバネ体を採用してもよい。又は、本開示の流体圧アクチュエータは、バネ体のX方向の中央よりも前側のピッチが同一であると共に、バネ体のX方向の中央よりも後側のピッチも同一であり、前側のピッチが後側のピッチと異なるバネ体を採用してもよい。
【0060】
また、バネ体70が、制振金属で構成されると共に、バネ体70のピッチが不等ピッチである場合について説明したが、本開示の流体圧アクチュエータが備えるバネ体は、制振金属で構成される一方、バネ体のピッチが不等ピッチでなくてもよい。又は、本開示の流体圧アクチュエータが備えるバネ体は、制振金属で構成されない一方、バネ体のピッチが不等ピッチとなっていてもよい。
【0061】
(第2実施形態)
図6は、本開示の第2実施形態に係る流体圧アクチュエータ101の軸方向の模式断面図である。なお、第2実施形態の流体圧アクチュエータ101では、第1実施形態の流体圧アクチュエータ1と同様の作用効果及び変形例についての説明を省略する。第2実施形態の流体圧アクチュエータ101は、電子部品、例えば、チップを、基板上で溶融状態となっている配線の所定箇所に所定の姿勢で押し付けてマウントするチップマウンターとして利用できる。
【0062】
図6に示すように、流体圧アクチュエータ101は、出力軸105、スリーブ110、出力軸進退駆動部130、回転駆動部150、バネ体170、回転角度検出センサ175、軸方向変位センサ180、及び制御装置185を備える。
【0063】
流体圧アクチュエータ101では、第1圧力室109aをX方向前側に設けているのに対し、第2圧力室109bをバネ体170の周辺領域(バネ体170の内部スペースも含む)に設けている。また、バネ体170の前側端部171を、ねじ161を締め込むことでX方向前側に移動するワッシャ162で出力軸105のX方向端面に押圧することで出力軸105に取り付け、バネ体170の後側端部172を、後側端部172の円筒内周面に設けた雌ねじを回転部153の円筒外周面の前側端部に設けた雄ねじに締め込むことで、回転部153に取り付けている。
【0064】
流体圧アクチュエータ101は、制御装置185を備える点が、制御装置85が外部に位置する流体圧アクチュエータ1と異なる。流体圧アクチュエータ101は、X方向前側の先端部にコレット190を有する。また、流体圧アクチュエータ101は、外部の真空ポンプ195に繋がると共にコレット190のX方向前側の端面に開口する通路181を出力軸105の内部に有する。本構成によれば、真空ポンプ195の真空引きを行うことで、流体圧アクチュエータ1のコレット190に電子部品を吸着でき、真空ポンプ195の真空引きを停止することで電子部品をコレット190から引き離すことができる。
【0065】
なお、流体圧アクチュエータ101においても、出力軸進退駆動部130のサーボ弁131を用いて空気を矢印c,dに示す方向、又は、その逆の方向に流動させることで、出力軸105とスリーブ110の間に静圧軸受を生成するようにしている。また、流体圧アクチュエータ101では、出力軸105が、大径軸部105a、大径軸部105aよりも小径の小径軸部105b、及び棒状部105cを有し、大径軸部105aと小径軸部105bを棒状部105cで連結している。棒状部105cの一部(大部分)は、バネ体170の内部スペースを通過する。棒状部105cの軸中心は、バネ体170の軸中心に略一致する。
【0066】
第2実施形態の流体圧アクチュエータ101でも、バネ体170のピッチが不等ピッチであり、バネ体170が、スリットが設けられた円筒体で構成されている。また、バネ体170が、制振金属、例えば、原子重量%で、マンガンが略73%を占め、銅が略20%を占め、ニッケルが略5%を占め、鉄が略2%を占める制振合金等で構成されている。このことから、チップマウンターとして利用できる流体圧アクチュエータ101でも、動作中にバネ体170がサージングを引き起こすことを略防止でき、出力軸105の高精度のX方向の位置決めと、出力軸105の高精度の周方向の位置決めを実現できる。
【符号の説明】
【0067】
1,101 流体圧アクチュエータ、 5,105 出力軸、 5a,105a 大径軸部、 5b,105b 小径軸部、 5c フランジ部、 6 ナット、 7 円筒外周面、 8a,8b 端面、 9a,9b,109a,109b 圧力室、 10,110 スリーブ、 10a,10b 内周面部、 10c,10d 端面、 30,130 出力軸進退駆動部、 31,131 出力軸進退駆動部のサーボ弁、 32a 第1通路、 32b 第2通路、 32c 第3通路、 32d 第4通路、 32e 第5通路、 32f 第6通路、 50,150 回転駆動部、 51,151 回転駆動部のサーボ弁、 52,152 ケース、 52a 円筒内周面、 53,153 回転部、 53a 円筒外周面、 54,154a,154b 突出部、 55,155a,155b ベーン、 56a 圧力室、 57a,57b,157a,157b,157c,157d 吐出吸引口、 58 壁部、 59a,59b 転がり軸受、 60a,60b Oリング、 65 フランジ部、 70,90,170 バネ体、 71 前側端部、 72 後側端部、 73 バネ部、 73a,73b バネ部の両端部、 73c バネ部の中央部、 75,175 回転角度検出センサ、 76 円筒体、 77 ピン、 78 スリット、 80,180 軸方向変位センサ、 85,185 制御装置、 86 制御部、 86a 軸方向変位算出部、 86b 回転角算出部、 86c 進退駆動制御部、 86d 回転駆動制御部、 87 記憶部、 105c 棒状部、 162 ワッシャ、 190 コレット、 195 真空ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6