(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126503
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ハニカム構造体の製造方法及び電気加熱式担体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B28B 11/24 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
B28B11/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024617
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】徳田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】野呂 貴志
【テーマコード(参考)】
4G055
【Fターム(参考)】
4G055AA08
4G055AB03
4G055AC10
4G055BA12
(57)【要約】
【課題】ハニカム成形体のキレやヨレの発生、及び、乾燥収縮率のばらつきを抑制することが可能なハニカム構造体の製造方法及び電気加熱式担体の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックス原料を含有する成形原料を押出成形して、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びて流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム成形体を作製する成形工程と、ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する乾燥工程と、ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程と、を備え、乾燥工程は、ハニカム成形体を2~200MHzの周波数にて誘電乾燥することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を30~85%にする第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程の後、水分飛散率を30~85%にしたハニカム成形体を熱風乾燥する第2の乾燥工程を備える、ハニカム構造体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックス原料を含有する成形原料を押出成形して、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びて流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム成形体を作製する成形工程と、
前記ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する乾燥工程と、
前記ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程と、
を備え、
前記乾燥工程は、
前記ハニカム成形体を2~200MHzの周波数にて誘電乾燥することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を30~85%にする第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記水分飛散率を30~85%にしたハニカム成形体を熱風乾燥する第2の乾燥工程を備える、ハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の乾燥工程における前記誘電乾燥の周波数が10~150MHzである、請求項1に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
前記誘電乾燥後の前記ハニカム成形体の水分飛散率が45~85%である、請求項1または2に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1の乾燥工程において、乾燥雰囲気における相対湿度を30~100%に制御する、請求項1~3のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記ハニカム成形体にカバー部材を被せて、前記ハニカム成形体の飛散水分によって前記カバー部材内の相対湿度を上げることで、前記第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度を制御する、請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記ハニカム成形体の周囲に湿潤蒸気を供給することで、前記第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度を制御する、請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記誘電乾燥で使用する平行平板電極の電極間距離を制御することで、前記誘電乾燥後の前記ハニカム成形体の水分飛散率を制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記ハニカム成形体の搬送速度を制御することで、前記誘電乾燥後の前記ハニカム成形体の水分飛散率を制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記成形工程において作製する前記ハニカム成形体のセルの流路方向の長さを制御することで、前記誘電乾燥後の前記ハニカム成形体の水分飛散率を制御する、請求項1~6のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極部形成原料を塗布し、乾燥させて、前記ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上において、前記セルの流路方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極部を形成して、未焼成電極部付きハニカム乾燥体を作製する工程と、
前記未焼成電極部付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極部を有するハニカム構造体を作製する工程と、
を更に備えた、請求項1~9のいずれか一項に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法で製造されたハニカム構造体の前記一対の電極部のそれぞれに、金属電極を電気的に接続する工程を備えた、電気加熱式担体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体の製造方法及び電気加熱式担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジン始動直後の排気ガス浄化性能の低下を改善するため、電気加熱触媒(EHC)が提案されている。EHCは、例えば、導電性セラミックスからなる柱状のハニカム構造体に金属電極を接続し、通電によりハニカム構造体自体を発熱させることで、エンジン始動前に触媒の活性温度まで昇温できるようにしたものである。
【0003】
EHCに用いられる導電性ハニカム構造体は、その製造方法において、ハニカム成形体を乾燥する工程を有している。しかしながら、ハニカム成形体の乾燥時には、ハニカム成形体にキレやヨレが発生する問題、ハニカム成形体内またはハニカム成形体間の温度分布ムラの発生による品質ばらつきの問題、乾燥処理に時間がかかり製造効率が低下する問題などが報告されており、従来、種々の問題に応じたハニカム成形体の乾燥方法が提案されている。
【0004】
特許文献1には、発熱部が金属とセラミックの複合材料から構成され、耐クラック性に優れた通電発熱用ハニカム体の製造方法において、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥機で乾燥し、更に熱風乾燥機で完全に乾燥させた後、焼成する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ハニカム成形体の乾燥時にクラックの発生を抑制し、均一に効率良く乾燥させることを目的として、セラミックス材料を主原料として形成された未焼成のセラミックス成形体に、誘電乾燥を行った後に、マイクロ波乾燥を行う工程を有するセラミックス成形体の乾燥方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ハニカム成形体の曲がりや断面形状の変形を抑制するために、ハニカム成形体の乾燥について、所定の出力に制御したマイクロ波乾燥工程の後に熱風乾燥工程を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5261256号公報
【特許文献2】特開2009-226633号公報
【特許文献3】特開2003-285312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハニカム成形体の乾燥にマイクロ波乾燥を用いると、ハニカム成形体の含有水分が多く成形体サイズが大きい場合、中心部までマイクロ波が浸透し難くなる。そのため、中心部の乾燥が遅れ、ハニカム成形体全体を均一な速度で乾燥することが困難となり、ハニカム成形体にキレやヨレの発生が生じるおそれがある。また、ハニカム成形体の乾燥収縮率のばらつきによって品質が低下する場合があり、改善の余地があるものである。
【0009】
また、ハニカム構造体の材料として、炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックス原料があるが、当該セラミックス原料で作製されたハニカム成形体の乾燥を誘電乾燥のみで行うと、炭化珪素の誘電率が水の誘電率よりも高いため、乾燥が進むにつれてハニカム成形体内の温度ムラが大きくなり、また過乾燥となり、その結果、乾燥収縮率のばらつきが生じるおそれがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、ハニカム成形体のキレやヨレの発生、及び、乾燥収縮率のばらつきを抑制することが可能なハニカム構造体の製造方法及び電気加熱式担体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、以下の本発明によって解決されるものであり、本発明は以下のように特定される。
(1)炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックス原料を含有する成形原料を押出成形して、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びて流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する柱状のハニカム成形体を作製する成形工程と、
前記ハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する乾燥工程と、
前記ハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製する焼成工程と、
を備え、
前記乾燥工程は、
前記ハニカム成形体を2~200MHzの周波数にて誘電乾燥することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を30~85%にする第1の乾燥工程と、
前記第1の乾燥工程の後、前記水分飛散率を30~85%にしたハニカム成形体を熱風乾燥する第2の乾燥工程を備える、ハニカム構造体の製造方法。
(2)前記ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極部形成原料を塗布し、乾燥させて、前記ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、前記外周壁の外面上において、前記セルの流路方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極部を形成して、未焼成電極部付きハニカム乾燥体を作製する工程と、
前記未焼成電極部付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極部を有するハニカム構造体を作製する工程と、
を更に備えた、(1)に記載のハニカム構造体の製造方法。
(3)(2)に記載の方法で製造されたハニカム構造体の前記一対の電極部のそれぞれに、金属電極を電気的に接続する工程を備えた、電気加熱式担体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハニカム成形体のキレやヨレの発生、及び、乾燥収縮率のばらつきを抑制することが可能なハニカム構造体の製造方法及び電気加熱式担体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態におけるハニカム構造体の外観模式図である。
【
図2】本発明の実施形態における電気加熱式担体のセルの延伸方向に垂直な断面模式図である。
【
図3】本発明の実施形態における誘電乾燥装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0015】
(1.ハニカム構造体)
図1は、本発明の実施形態におけるハニカム構造体10の外観模式図である。ハニカム構造体10は、柱状ハニカム構造部11と、電極部13a、13bとを備えている。なお、電極部13a、13bは、備えていなくてもよい。
【0016】
(1-1.柱状ハニカム構造部)
柱状ハニカム構造部11は、外周壁12と、外周壁12の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びて流路を形成する複数のセル18を区画形成する隔壁19とを有する。
【0017】
柱状ハニカム構造部11の外形は柱状である限り特に限定されず、例えば、端面が円形の柱状(円柱形状)、端面がオーバル形状の柱状、端面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。また、柱状ハニカム構造部11の大きさは、耐熱性を高める(外周壁の周方向に入るクラックを抑制する)という理由により、端面の面積が2000~20000mm2であることが好ましく、5000~15000mm2であることが更に好ましい。
【0018】
柱状ハニカム構造部11の材質は、炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックスである。炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするセラミックスは、耐熱性と導電性を両立する材料である。柱状ハニカム構造部11の材質が、炭化珪素-金属珪素複合材を主成分とするものであるというときは、柱状ハニカム構造部11が、炭化珪素-金属珪素複合材(合計質量)を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。ここで、炭化珪素-金属珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての金属珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、金属珪素によって結合されていることが好ましい。
【0019】
柱状ハニカム構造部11に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、柱状ハニカム構造部11に含有される「結合材としての金属珪素の質量」との合計に対する、柱状ハニカム構造部11に含有される「結合材としての金属珪素の質量」の比率が、10~40質量%であることが好ましく、15~35質量%であることが更に好ましい。
【0020】
セル18の延伸方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、構造強度及び加熱均一性を両立させやすいという観点から、四角形及び六角形が好ましい。
【0021】
セル18を区画形成する隔壁19の厚みは、0.1~0.3mmであることが好ましく、0.15~0.25mmであることがより好ましい。本発明において、隔壁19の厚みは、セル18の延伸方向に垂直な断面において、隣接するセル18の重心同士を結ぶ線分のうち、隔壁19を通過する部分の長さとして定義される。
【0022】
柱状ハニカム構造部11は、セル18の流路方向に垂直な断面において、セル密度が40~150セル/cm2であることが好ましく、70~100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排気ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度は、外周壁12部分を除く柱状ハニカム構造部11の一つの底面部分の面積でセル数を除して得られる値である。
【0023】
柱状ハニカム構造部11の外周壁12を設けることは、柱状ハニカム構造部11の構造強度を確保し、また、セル18を流れる流体が外周壁12から漏洩するのを抑制する観点で有用である。具体的には、外周壁12の厚みは好ましくは0.05mm以上であり、より好ましくは0.10mm以上、更により好ましくは0.15mm以上である。但し、外周壁12を厚くしすぎると高強度になりすぎてしまい、隔壁19との強度バランスが崩れて耐熱衝撃性が低下すること、及び熱容量が増加することで外周壁の内周側と外周側とで温度差が発生し、耐熱衝撃性が低下することから、外周壁12の厚みは好ましくは1.0mm以下であり、より好ましくは0.7mm以下であり、更により好ましくは0.5mm以下である。ここで、外周壁12の厚みは、厚みを測定しようとする外周壁12の箇所をセルの延伸方向に垂直な断面で観察したときに、当該測定箇所における外周壁12の接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0024】
柱状ハニカム構造部11の隔壁19の平均細孔径は、2~15μmであることが好ましく、4~8μmであることが更に好ましい。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0025】
隔壁19は多孔質としてもよい。多孔質とする場合、隔壁19の気孔率は、35~60%であることが好ましく、35~45%であることが更に好ましい。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0026】
柱状ハニカム構造部11は、セラミックス製であり、導電性を有することが好ましい。導電性の柱状ハニカム構造部11が通電してジュール熱により発熱可能である限り、当該セラミックスの電気抵抗率については特に制限はないが、0.1~200Ωcmであることが好ましく、1~200Ωcmがより好ましい。本発明において、柱状ハニカム構造部11の電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0027】
(1-2.電極部)
本発明の実施形態に係るハニカム構造体10は、柱状ハニカム構造部11の中心軸を挟んで、外周壁12の外面上において、セル18の流路方向に帯状に延びるように、一対の電極部13a、13bが設けられている。一対の電極部13a、13bがこのように設けられていることで、ハニカム構造体の均一発熱性を高めることができる。電極部13a、13bは、ハニカム構造体の両底面間の80%以上の長さに亘って、好ましくは90%以上の長さに亘って、より好ましくは全長に亘って延びていることが、電極部13a、13bの軸方向へ電流が広がりやすいという観点から望ましい。なお、電極部13a、13bは設けなくてもよい。
【0028】
電極部13a、13bの厚みは、0.01~5mmであることが好ましく、0.01~3mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより均一発熱性を高めることができ、耐熱衝撃性を確保することができる。電極部13a、13bの厚みは、厚みを測定しようとする箇所をセル18の延伸方向に垂直な断面で観察したときに、電極部13a、13bの外面の当該測定箇所における接線に対する法線方向の厚みとして定義される。
【0029】
電極部13a、13bの電気抵抗率を柱状ハニカム構造部11の電気抵抗率より低くすることにより、電極部13a、13bに優先的に電気が流れやすくなり、通電時に電気がセル18の流路方向及び周方向に広がりやすくなる。電極部13a、13bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造部11の電気抵抗率の1/10以下であることが好ましく、1/20以下であることがより好ましく、1/30以下であることが更により好ましい。但し、両者の電気抵抗率の差が大きくなりすぎると、対向する電極部の端部間に電流が集中して柱状ハニカム構造部11の発熱が偏ることから、電極部13a、13bの電気抵抗率は、柱状ハニカム構造部11の電気抵抗率の1/200以上であることが好ましく、1/150以上であることがより好ましく、1/100以上であることが更により好ましい。本発明において、電極部13a、13bの電気抵抗率は、四端子法により25℃で測定した値とする。
【0030】
電極部13a、13bの材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)の具体例としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。
【0031】
(2.電気加熱式担体)
図2は、本発明の実施形態における電気加熱式担体30のセルの延伸方向に垂直な断面模式図である。電気加熱式担体30は、ハニカム構造体10と、ハニカム構造体10の電極部13a、13bに電気的に接続された金属電極33a、33bとを備えている。
【0032】
(2-1.金属電極)
金属電極33a、33bは、ハニカム構造体10の電極部13a、13b上に設けられている。金属電極33a、33bは、一方の金属電極33aが、他方の金属電極33bに対して、柱状ハニカム構造部11の中心軸を挟んで対向するように配設される一対の金属電極であってもよい。金属電極33a、33bは、電極部13a、13bを介して電圧を印加すると通電してジュール熱により柱状ハニカム構造部11を発熱させることが可能である。このため、電気加熱式担体30はヒーターとしても好適に用いることができる。印加する電圧は12~900Vが好ましく、48~600Vが更に好ましいが、印加する電圧は適宜変更可能である。
【0033】
金属電極33a、33bの材質としては、金属であれば特段の制約はなく、単体金属及び合金等を採用することもできるが、耐食性、電気抵抗率及び線膨張率の観点から例えば、Cr、Fe、Co、Ni及びTiよりなる群から選択される少なくとも一種を含む合金とすることが好ましく、ステンレス鋼及びFe-Ni合金がより好ましい。金属電極33a、33bの形状及び大きさは、特に限定されず、電気加熱式担体30の大きさや通電性能等に応じて、適宜設計することができる。
【0034】
電気加熱式担体30に触媒を担持することにより、電気加熱式担体30を触媒体として使用することができる。ハニカム構造体10の複数のセル18の流路には、例えば、自動車排気ガス等の流体を流すことができる。触媒としては、例えば、貴金属系触媒又はこれら以外の触媒が挙げられる。貴金属系触媒としては、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)といった貴金属をアルミナ細孔表面に担持し、セリア、ジルコニア等の助触媒を含む三元触媒や酸化触媒、又は、アルカリ土類金属と白金を窒素酸化物(NOx)の吸蔵成分として含むNOx吸蔵還元触媒(LNT触媒)が例示される。貴金属を用いない触媒として、銅置換又は鉄置換ゼオライトを含むNOx選択還元触媒(SCR触媒)等が例示される。また、これらの触媒からなる群から選択される2種以上の触媒を用いてもよい。なお、触媒の担持方法についても特に制限はなく、従来、ハニカム構造体に触媒を担持する担持方法に準じて行うことができる。
【0035】
(3.ハニカム構造体の製造方法)
次に、本発明の実施形態に係るハニカム構造体10の製造方法について説明する。
本発明の実施形態に係るハニカム構造体10の製造方法は、ハニカム成形体を作製する成形工程と、ハニカム乾燥体を作製する乾燥工程と、ハニカム焼成体を作製する焼成工程と、を備える。
【0036】
(成形工程)
成形工程では、まず、導電性のセラミックス原料を含有する成形原料を準備する。成形原料は、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10~40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3~50μmが好ましく、3~40μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2~35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0037】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0~10.0質量部であることが好ましい。
【0038】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20~60質量部であることが好ましい。
【0039】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1~2.0質量部であることが好ましい。
【0040】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5~10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10~30μmであることが好ましい。造孔材の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。造孔材が吸水性樹脂の場合には、造孔材の平均粒子径は吸水後の平均粒子径を指す。
【0041】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形して柱状のハニカム成形体を作製する。ハニカム成形体は、外周壁と、外周壁の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びて流路を形成する複数のセルを区画形成する隔壁と、を有する。
【0042】
(乾燥工程)
次に、得られたハニカム成形体を乾燥してハニカム乾燥体を作製する。乾燥工程は、ハニカム成形体を2~200MHzの周波数にて誘電乾燥することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を30~85%にする第1の乾燥工程と、第1の乾燥工程の後、水分飛散率を30~85%にしたハニカム成形体を熱風乾燥する第2の乾燥工程とを備える。
【0043】
誘電乾燥は、
図3に示すような誘電乾燥装置40を用いて行う。誘電乾燥装置40は、一対の平行平板電極41a、41bと、一対の平行平板電極41a、41bに電気的に接続され、電極間に高周波を加える高周波電源43とを備える。誘電乾燥法は、当該一対の平行平板電極41a、41b間にハニカム成形体42を置き、電極間に高周波電流を通電させることで、磁石のように分極した分子がゆり動かされ、分子衝突や回転による内部発熱により、ハニカム成形体42を加熱することで乾燥させる方法である。
【0044】
EHCに用いるハニカム構造体は、一般に、導電性を有し、隔壁が薄い設計となっている。このような構成のハニカム構造体の製造において、ハニカム成形体をマイクロ波乾燥すると、ハニカム成形体にキレやヨレが発生するおそれがある。これに対し、誘電乾燥法によれば、柱状のハニカム成形体の中心側と外周側とで、水分飛散率に差が生じ難いため、当該ハニカム成形体の中心側と外周側との間の含水率差を縮小させることができる。その結果、収縮による内部応力差が生じ難く、乾燥工程におけるキレやヨレの発生を抑制することができる。しかしながら、ハニカム成形体の乾燥を誘電乾燥のみで行うと、ハニカム成形体の材料の一部を構成する炭化珪素の誘電率が高いため、ハニカム成形体内の温度ムラが大きくなり、また過乾燥となり、その結果、品質のばらつきが生じるおそれがある。そこで、本発明の実施形態において、ハニカム成形体の乾燥は、まず、誘電乾燥によってハニカム成形体を所定の水分飛散率に制御した後、続いてハニカム成形体を熱風乾燥している。このような構成によれば、第1の乾燥工程で誘電乾燥によって所定の水分飛散率までハニカム成形体を乾燥(粗乾燥)させ、続いて第2の乾燥工程で熱風乾燥(本乾燥)を行うため、ハニカム成形体内の温度ムラの発生や過乾燥を抑制することができ、その結果、ハニカム成形体の乾燥収縮率、外径、セル構造、気孔率、抵抗率などの品質のばらつきを抑制することができる。
【0045】
第1の乾燥工程では、2~200MHzの周波数にて誘電乾燥を行う。当該周波数が2MHz以上であると、乾燥温度にムラが生じることを抑制することができ、供給電力が増加し、乾燥効率(単位時間内での水分飛散)を向上させることができる。また、当該周波数が200MHz以下であると、周波数が高すぎて成形体の表面付近のみが加熱されて乾燥温度にムラが生じることを抑制することができる。第1の乾燥工程における誘電乾燥の周波数は、10~150MHzであることが好ましく、30~120MHzであることがより好ましい。
【0046】
第1の乾燥工程では、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を30~85%に制御している。誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率が30%未満であると、誘電乾燥による乾燥が十分ではないため、その後の熱風乾燥工程において、ハニカム成形体にキレやヨレが発生しやすくなる。誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率が85%超であると、誘電乾燥による乾燥が過剰であるため、その後の熱風乾燥工程において発火するおそれがある。第1の乾燥工程における誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率は、45~85%であるのが好ましく、55~75%であるのがより好ましい。
【0047】
第1の乾燥工程におけるハニカム成形体の水分飛散率の制御は、以下の(1)~(3)のいずれか一種または二種以上によって行うことができる。
(1)誘電乾燥装置の平行平板電極の電極間距離の制御
図3に示すような誘電乾燥装置40の、平行平板電極41a、41bの電極間距離を制御することにより、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を制御することができる。具体的には、平行平板電極41a、41bの電極間距離を短くすることで、ハニカム成形体の水分飛散率を大きくすることができる。また、平行平板電極41a、41bの電極間距離を長くすることで、ハニカム成形体の水分飛散率を小さくすることができる。平行平板電極41a、41bの電極間距離は、特に限定されず、所望の水分飛散率によって適宜設計することができるが、例えば60~400mmとしてもよく、100~300mmとしてもよい。
【0048】
(2)ハニカム成形体の搬送速度の制御
第1の乾燥工程におけるハニカム成形体の搬送速度を制御することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を制御することができる。具体的には、ハニカム成形体の搬送速度を低くすると、搬送時間が長くなり、水分飛散率を大きくすることができる。また、ハニカム成形体の搬送速度を高くすると、搬送時間が短くなり、水分飛散率を抑えることができる。ハニカム成形体の搬送速度は、特に限定されず、所望の水分飛散率によって適宜設計することができるが、例えば100~600mm/minとしてもよく、150~300mm/minとしてもよい。
【0049】
(3)ハニカム成形体のセルの流路方向の長さの制御
成形工程において作製するハニカム成形体のセルの流路方向の長さを制御することで、誘電乾燥後のハニカム成形体の水分飛散率を制御することができる。具体的には、ハニカム成形体のセルの流路方向の長さを大きくすると、ハニカム成形体が高周波電源からの高周波を受けやすくなり、水分飛散率を大きくすることができる。また、ハニカム成形体のセルの流路方向の長さを小さくすると、ハニカム成形体が高周波電源からの高周波を受け難くなり、水分飛散率を小さくすることができる。ハニカム成形体のセルの流路方向の長さは、特に限定されず、製造するハニカム構造体のセルの流路方向の長さによって適宜設計されるが、例えば、50~200cmとしてもよく、170~190cmとしてもよい。
【0050】
第1の乾燥工程の乾燥雰囲気(誘電乾燥の乾燥雰囲気)における相対湿度を30~100%に制御することが好ましい。第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度が30%以上であると、ハニカム成形体内のバインダのゲル化によってハニカム成形体の強度が増し、変形を抑制することができる。第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度は60~100%であることがより好ましく、80~100%であることが更により好ましい。
【0051】
第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度は、例えば、ハニカム成形体にカバー部材を被せて、ハニカム成形体の飛散水分によってカバー部材内の相対湿度を上げることで制御することができる。また、更に、カバー部材内に蒸気を供給することで、カバー部材内の相対湿度を上げてもよい。カバー部材は、ハニカム成形体に被せてハニカム成形体の全体を覆うことができるものであれば特に限定されず、例えば、カップ、箱、シート等を用いることができる。カバー部材の材質としては、ハニカム成形体の飛散水分が適度に外側へ逃げないようにするために非透湿性を有することが好ましく、さらに、ワークに及ぶ電界が変化しないように電気絶縁性を有することが好ましい。また、低コストであること、誘電乾燥機内で放電現象が発生した際にも燃え広がらないように難燃性であることも好ましい。このような観点から、カバー部材の材質は、樹脂が好ましく、特にテフロン(登録商標)、塩ビ、または、ポリプロピレン等の材料が好ましい。
【0052】
また、第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度は、ハニカム成形体の周囲に湿潤蒸気を供給することで制御してもよい。例えば、ハニカム成形体の乾燥に用いる設備内に湿潤蒸気を導入することで、ハニカム成形体の周囲に湿潤蒸気が供給され、これによって乾燥雰囲気の相対湿度を制御することができる。
【0053】
第2の乾燥工程において、熱風乾燥で用いる熱風の温度を100~150℃とすることが好ましい。熱風の温度が100℃以上であると、ハニカム成形体の乾燥における最後の仕上げの時間を短くすることができる。熱風の温度が150℃以下であると、ハニカム成形体に含まれる水以外の有機バインダ等の蒸発を抑制し、ハニカム成形体の変形や、有機バインダ等の燃焼を抑制することができる。
【0054】
乾燥工程は、上述の第1の乾燥工程、及び、第1の乾燥工程の直後に行われる第2の乾燥工程の他に、第2の乾燥工程の後に、ハニカム乾燥体のセル内に意図的に熱風を通過させる通風乾燥による乾燥、輻射熱による乾燥などを行ってもよい。第2の乾燥工程の後に、通風乾燥することにより、効率的に乾燥が行えるため、ハニカム成形体のキレやヨレの発生、及び、乾燥収縮率のばらつきをより良好に抑制しつつ、短いリードタイムで絶乾燥を完了することができる。
【0055】
(焼成工程)
次に、得られたハニカム乾燥体を焼成してハニカム焼成体を作製する。焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。
【0056】
ハニカム焼成体は、このままハニカム構造体としてもよい。また、電極部を有するハニカム構造体の製造方法としては、まず、ハニカム乾燥体の側面に、セラミックス原料を含有する電極部形成原料を塗布し、乾燥させて、ハニカム乾燥体の中心軸を挟んで、外周壁の外面上において、セルの流路方向に帯状に延びるように一対の未焼成電極部を形成して、未焼成電極部付きハニカム乾燥体を作製する。次に、未焼成電極部付きハニカム乾燥体を焼成して一対の電極部を有するハニカム焼成体を作製する。これにより、電極部を有するハニカム構造体が得られる。
【0057】
電極部形成原料は、電極部の要求特性に応じて配合した原料粉(金属粉末、及び/又は、セラミックス粉末等)に各種添加剤を適宜添加して混練することで形成することができる。電極部を積層構造とする場合、第一の電極部用のペースト中の金属粉末の平均粒子径に比べて、第二の電極部用のペースト中の金属粉末の平均粒子径を大きくすることにより、金属端子と電極部の接合強度が向上する傾向にある。金属粉末の平均粒子径はレーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0058】
電極部形成原料を調合する方法、及び電極部形成原料をハニカム乾燥体に塗布する方法については、公知のハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができるが、電極部をハニカム構造部に比べて低い電気抵抗率にするために、ハニカム構造部よりも金属の含有比率を高める、または、金属粒子の粒径を小さくすることができる。
【0059】
未焼成電極部付きハニカム乾燥体を焼成する前に、未焼成電極部付きハニカム乾燥体を乾燥してもよい。未焼成電極部付きハニカム乾燥体の焼成条件としては、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400~1500℃で、1~20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200~1350℃で、1~10時間、酸化処理を行うことが好ましい。脱脂及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。電極部は、ハニカム乾燥体への形成ではなく、ハニカム焼成体を作製した後に、電極部形成原料をハニカム焼成体に塗布し、それを乾燥、焼成させることで形成してもよい。
【0060】
(4.電気加熱式担体の製造方法)
本発明の実施形態に係る電気加熱式担体30の製造方法は一実施形態において、ハニカム構造体10の一対の電極部のそれぞれに、金属電極を電気的に接続する。接続方法としては、例えば、レーザー溶接、溶射、超音波溶接などが挙げられる。より具体的には、柱状ハニカム構造部11の中心軸を挟んで、電極部の表面上において、一対の金属電極を設ける。このようにして、本発明の実施形態に係る電気加熱式担体30が得られる。このような構成によれば、電気加熱式担体のハニカム構造体内が所望の電気抵抗率分布に制御されているため、排気ガスを浄化する際のエネルギーを低減する、または、発熱分布の偏りを抑制し均一に発熱させること等の所望の効果を有する電気加熱式担体を製造することができる。
【0061】
(5.排気ガス浄化装置)
上述した本発明の実施形態に係る電気加熱式担体30は、排気ガス浄化装置に用いることができる。当該排気ガス浄化装置は、電気加熱式担体30と、電気加熱式担体30を保持する金属製の筒状部材とを有する。排気ガス浄化装置において、電気加熱式担体30は、エンジンからの排気ガスを流すための排気ガス流路の途中に設置される。
【実施例0062】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0063】
<試験例1>
(1.坏土の作製)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合してセラミックス原料を調製した。そして、セラミックス原料に、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とした。そして、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部とした。造孔材の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部とした。水の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部とした。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は20μmであった。炭化珪素粉末、金属珪素粉末及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で粒度の頻度分布を測定したときの、体積基準による算術平均径を指す。
【0064】
(2.ハニカム成形体の作製)
得られた円柱状の坏土を、口金構造を有する押出成形機を用いて成形し、セルの流路方向に垂直な断面における各セル形状が六角形である円柱状のハニカム成形体を得た。ハニカム成形体の長さは180mmであり、端面の直径は86mmであった。
【0065】
(3.ハニカム乾燥体の作製及び評価)
得られた、成形体に対し、表1に記載の水準1~9のいずれかで乾燥を行うことで、ハニカム乾燥体を作製した。水準1~4、7~9の誘電乾燥は電極高さ200mm、搬送速度を180mm/minとすることで、水分の飛散率を制御した。水準6の第1の乾燥工程における熱風乾燥で用いる熱風の温度は120℃とした。
第2の乾燥工程での熱風乾燥で用いる熱風の温度は120℃とした。
次に、水準1~9のそれぞれの乾燥によって得られたハニカム乾燥体を目視観察し、キレ、ヨレの程度を以下のように判別した。
A:キレ、ヨレは、見られない。
B:キレ、ヨレは、セルとその隣接するセルの距離が、その設計値を100としたとき、50以上かつ70未満、あるいは130以上かつ150未満となるセルが1つ以上存在する。
C:キレ、ヨレは、セルとその隣接するセルの距離が、その設計値を100としたとき、50未満、あるいは150以上となるセルが1つ以上存在する。あるいは、隔壁あるいは外周壁が切断された箇所が1つ以上存在する。
【0066】
【0067】
(4.ハニカム焼成体の作製)
ハニカム乾燥体をAr雰囲気にて1400℃で3時間焼成し、柱状ハニカム構造体とした。
【0068】
(5.考察)
水準1、2、4、7~9の乾燥方法は、本発明の実施例に相当し、水準3、5、6の乾燥方法は、本発明の比較例に相当するものである。
水準1、2、4、7~9の乾燥方法では、ハニカム成形体のキレ及びヨレの発生が抑制されていた。なお、水準2の乾燥方法は、水準1の乾燥方法と比較すると、第1の乾燥工程における相対湿度が少なく、バインダの硬化が水準1より進まず、ハニカム成形体にキレ及びヨレが少し発生したものと推測される。また、水準7の乾燥方法は、水準1の乾燥方法と比較すると、第1の乾燥工程における周波数が低く、ハニカム内での温度ムラが水準1より大きくなり、ハニカム成形体にキレ及びヨレが少し発生したものと推測される。
水準5、6の乾燥方法では、ハニカム成形体の外周からの水分飛散により乾燥ムラが発生し、ヨレが発生した。
水準3の乾燥方法では、誘電乾燥での乾燥が不十分なため、水準5の乾燥方法と同様のキレが発現した。
前記ハニカム成形体にカバー部材を被せて、前記ハニカム成形体の飛散水分によって前記カバー部材内の相対湿度を上げることで、前記第1の乾燥工程の乾燥雰囲気における相対湿度を制御する、請求項4に記載のハニカム構造体の製造方法。