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特開2022-126508有料道路交通網を通行する車両群の経路情報取得システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126508
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】有料道路交通網を通行する車両群の経路情報取得システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220823BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20220823BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20220823BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20220823BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G16Y10/40
G16Y20/20
G16Y40/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024629
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】505398963
【氏名又は名称】西日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】林田 眞一
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181MC04
5H181MC06
(57)【要約】
【課題】有料道路交通網を通行する車両群の経路を効率的且つ適正に把握する。
【解決手段】経路情報取得システムでは所定の周期で(1)各車両位置情報サーバが、車両情報収集装置により収集される車両情報を車両位置情報DBに格納し(2)各車両位置情報サーバが、所定の周期の間に蓄積された車両位置情報DBに格納される車両情報を、車両情報収集装置よりも一つ上流に位置する管理エリアに属する車両管理DBに問い合わせ(3)問い合わされた車両管理データベースを管理する車両管理サーバが、当該車両管理データベース内の問い合わされた車両情報を、車両情報収集装置よりも一つ下流に位置する管理エリアに属する車両管理DBに送付し(4)問い合わされた車両情報を送付された車両管理データベースを管理する車両管理サーバが、当該車両情報に、当該車両管理DBが属する管理エリア符号を追記し、車両管理データベースに格納することを繰り返す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両位置情報データベースと、
前記複数の車両位置情報データベースのうち対応する車両位置情報データベースを管理して制御する複数の車両位置情報サーバと、
複数の車両管理データベースと、
前記複数の車両管理データベースのうち対応する車両管理データベースを管理して制御する車両管理サーバとを
ネットワークを介して備える経路情報取得システムであって、
各車両位置情報データベースは、対応する車両情報収集装置によって検知された、有料道路内を通過する車両の少なくとも車両IDを含む車両情報を格納し、
各車両管理データベースは、複数の管理エリアの各々の上流に設けられた車両情報収集装置によって検知された車両情報を集約して格納し、
各管理エリアは、前記有料道路において、ジャンクション部を含まずに一つ以上のインターチェンジを一本の経路上に含み、
前記経路情報取得システムでは、
所定の周期で、
(1)各車両位置情報サーバが、対応する車両情報収集装置により収集される車両情報を、対応する車両位置情報データベースに格納し、
(2)各車両位置情報サーバが、所定の周期の間に蓄積された対応する車両位置情報データベースに格納される車両情報を、対応する車両情報収集装置よりも一つ上流に位置する管理エリアに属する車両管理データベースに問い合わせ、
(3)問い合わされた車両管理データベースを管理する車両管理サーバが、当該車両管理データベース内の問い合わされた車両情報を、当該対応する車両情報収集装置よりも一つ下流に位置する管理エリアに属する車両管理データベースに送付し、
(4)前記問い合わされた車両情報を送付された車両管理データベースを管理する前記車両管理サーバが、当該車両情報に、当該車両管理データベースが属する管理エリアの符号を追記して、対応する車両管理データベースに格納すること
を、繰り返し実行する、経路情報取得システム。
【請求項2】
前記インターチェンジは、当該インターチェンジに流入する、若しくは、当該インターチェンジから流出する、車両の、少なくとも車両IDを含む車両情報を収集する車両ID収集装置を備え、
各車両管理データベースは、各車両管理データベースが属する管理エリア内のインターチェンジを経由して流入する車両の、前記車両ID収集装置により収集される車両情報を格納する内部データベースを含み、
前記経路情報取得システムでは、
前記(2)にて問い合わせることの代わりに、
(2-1)前記車両位置情報サーバが、所定の周期の間に蓄積された前記車両位置情報データベースに格納される車両情報を、前記車両情報収集装置の、一つ上流における管理エリアに属する車両管理データベース、当該車両管理データベースが備える内部データベース、二つ上流における管理エリアに属する車両管理データベース、更に、当該車両管理データベースが備える内部データベースに、見出されるまで、順次で問い合わせること
を実行する、請求項1に記載の経路情報取得システム。
【請求項3】
各車両管理データベースは、更に、
各車両管理データベースが属する管理エリア内のインターチェンジを経由して流出する車両の、前記車両ID収集情報により収集される車両情報を格納する外部データベースを含み、
更に、前記所定の周期で、
前記外部データベースが、流出する車両の車両情報を格納したとき、当該流出する車両の車両情報を格納したすべての車両管理データベースから、当該車両管理データベースを管理する車両管理サーバが、当該格納した車両情報を削除することを
繰り返し実行する、請求項2に記載の経路情報取得システム。
【請求項4】
更に、経路管理サーバをネットワークを介して備え、
前記経路管理サーバは、対象車両リストを備え、
前記経路情報取得システムでは、
更に、前記所定の周期で、
(A)前記経路管理サーバが、複数の管理エリアを通過する所与の経路条件を設定し、
(B)前記経路管理サーバが、前記所与の経路条件における最後から一つ上流の管理エリアにおける車両管理データベースにて、前記所与の経路条件の内、最初の管理エリアから、前記最後から一つ上流の管理エリアまでの経路についての符号情報を備える車両情報を抽出して、前記対象車両リストを作成し、
(C)前記所与の経路条件における最後の管理エリアの直ぐ上流の車両情報収集装置に対応する車両位置情報サーバが、作成された前記対象車両リストと、当該車両情報収集装置に対応する車両位置情報データベースにおける車両情報との論理積を求めて、前記所与の条件を満たす車両の車両情報である経路条件充足車両情報を作成すること、
を繰り返し実行する、請求項3に記載の経路情報取得システム。
【請求項5】
前記経路管理サーバは、更に、第1の対象リストと、第2の対象リストとを備え、
前記経路情報取得システムでは、
前記(B)にて対象車両リストを作成することの代わりに、
(B-1)前記経路管理サーバが、前記所与の経路条件における最後から一つ上流の管理エリアにおける車両管理データベースにて、前記所与の経路条件の内、最初の管理エリアから、当該管理エリアまでの経路についての符号情報を備える車両情報を抽出して、前記第1の対象リストを作成し、
(B-2)前記経路管理サーバが、前記所与の経路条件における最後から二つ上流の管理エリアにおける車両管理データベースにて、前記所与の経路条件の内、最初の管理エリアから、当該管理エリアまでの経路についての符号情報を備える車両情報を抽出して、前記第2の対象リストを作成し、
(B-3)前記経路管理サーバが、前記第1の対象リストと前記第2の対象リストとの和集合を求めて、対象車両リストを作成すること
を実行して前記対象車両リストを作成する、請求項4に記載の経路情報取得システム。
【請求項6】
前記経路情報取得システムでは、
更に、前記所定の周期で、
前記車両位置情報サーバが、前記対象車両リストの車両情報群から、前記経路条件充足車両情報の車両情報群を差し引いて、その残余により、前記所与の経路条件を満たす車両のリストを補充する、経路条件充足車両のリストに対する未検知リストを作成すること、
を繰り返し実行する、請求項4に記載の経路情報取得システム。
【請求項7】
前記経路情報取得システムでは、
更に、前記所定の周期で、
前記車両位置情報サーバが、前記第1の対象リストの車両情報群から、前記経路条件充足車両情報の車両情報群を差し引いて、その残余により、前記所与の経路条件を満たす車両のリストを補充する、経路条件充足車両のリストに対する未検知リストを作成すること、
を繰り返し実行する、請求項5に記載の経路情報取得システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有料道路交通網を通行する車両群の経路を効率的且つ適正に把握する経路情報取得システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な高速道路の出入口は、上下線を走行する車両を集約して料金所で料金徴収を行っている。したがって、料金所を通過する段階では、その車両が上り線に流入するのか、下り線に流入するのか、の判定はできない。結果として、出口の料金所で出た段階で当該車両が、上り線を通ったのか、下り線を通ったのかが確定する。また、高速道路がループ状の場合については、上下線どちらを通過したかを把握することは困難である。
【0003】
現在、高速道路網は複雑に接続し、1つの入口料金所からある出口料金所までの経路が複数あることは多くある。経路選択がドライバーを悩ませるものの一つでもある。
【0004】
渋滞や工事などにより道路の状況に応じて、柔軟に料金を変更して道路利用を動的に変化させる検討が、様々に進められている。これは、高速道路という社会資産をより多くの車両に利用してもらうためには、通常の交通情報等のようなネガティブな誘因ではなく、料金変更によるポジティブな誘因に変更して使うことが効果的だからである。
【0005】
しかしながら、通行した経路に応じて料金を変更することは、車両が出口を通過する前に経路を把握して料金計算されないと、実現不可能である。現在、ETC(Electronic Toll Collection System:電子料金収受システム)による無線通信による車両認識技術と料金課金技術があるため、本線を通行しているETC搭載車両を認識し、料金課金を実施している技術は想定可能であるが、この技術を日本全国の高速道路に展開することは、膨大な費用だけで無く、非常に複雑な計算処理が必要となるため実現することは困難な状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-87337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、有料道路交通網を通行する車両群の経路を効率的且つ適正に把握する経路情報取得システムを提示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、上記の課題を解決する経路情報取得システムに関する。
実施の形態に係る経路情報取得システムは、
複数の車両位置情報データベースと、
前記複数の車両位置情報データベースのうち対応する車両位置情報データベースを管理して制御する複数の車両位置情報サーバと、
複数の車両管理データベースと、
前記複数の車両管理データベースのうち対応する車両管理データベースを管理して制御する車両管理サーバとを
ネットワークを介して備える経路情報取得システムである。そのような経路情報取得システムでは、
各車両位置情報データベースは、対応する車両情報収集装置によって検知された、有料道路内を通過する車両の少なくとも車両IDを含む車両情報を格納し、
各車両管理データベースは、複数の管理エリアの各々の上流に設けられた車両情報収集装置によって検知された車両情報を集約して格納し、
各管理エリアは、前記有料道路において、ジャンクション部を含まずに一つ以上のインターチェンジを一本の経路上に含む。
経路情報取得システムでは、
所定の周期で、
(1)各車両位置情報サーバが、対応する車両情報収集装置により収集される車両情報を、対応する車両位置情報データベースに格納し、
(2)各車両位置情報サーバが、所定の周期の間に蓄積された対応する車両位置情報データベースに格納される車両情報を、対応する車両情報収集装置よりも一つ上流に位置する管理エリアに属する車両管理データベースに問い合わせ、
(3)問い合わされた車両管理データベースを管理する車両管理サーバが、当該車両管理データベース内の問い合わされた車両情報を、当該対応する車両情報収集装置よりも一つ下流に位置する管理エリアに属する車両管理データベースに送付し、
(4)前記問い合わされた車両情報を送付された車両管理データベースを管理する前記車両管理サーバが、当該車両情報に、当該車両管理データベースが属する管理エリアの符号を追記して、対応する車両管理データベースに格納すること
を、繰り返し実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の経路情報取得システムは、有料道路交通網を通行する車両群の経路を効率的且つ適正に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に係る経路情報取得システムの概略の構成図である。
図2】高速道路等の有料道路における現行の料金所システムの構成図である。
図3】実施の形態1に係る経路情報取得システムにおける車両管理サーバ周辺の構成を示す図である。
図4】ジャンクション部における車両情報収集装置の配置例を示す概略の平面図である。
図5】各管理エリア及び車両管理DBと、車両情報収集装置との、概略の関係の例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る経路情報取得システムのデータベース間にて相互に行われるデータ交換の周期である、タイムインターバルを示す図である。
図7】経路の例と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成例とを示す図である。
図8a図8bに対応する経路と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成とを示す図である。
図8b】例えば図7に示す構成例について、各車両管理サーバ及び車両管理DBにおけるデータ交換の処理を表すフローチャートである。
図9】経路判定に基づく通行料金割引処理を実現するための、経路情報取得システムの概略の構成図である。
図10a】経路の例と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成例とを示す図である。
図10b】経路割引処理のフローチャート(1)である。
図10c】経路割引処理のフローチャート(2)である。
図10d】経路割引処理のフローチャート(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
1.本開示に至る経緯
1.1.経路取得とその問題点
図2は、高速道路等の有料道路における現行の料金所システム14の構成図である。有料道路には多数のインターチェンジが設けられ、夫々のインターチェンジには料金所が設けられる。更に、図2に示すように、料金所12には料金所システム14が備わる。料金所システム14は、料金データ処理装置16、ETC料金所サーバ18、ETC車線サーバ20、現金管理装置28、及びナンバープレート読取装置35を備える。
【0014】
ETC車線サーバ20は、料金所レーンごとにETC処理を行うサーバであり、ETC処理部22、ETC通信部24、及び、ETCアンテナ26を含む。ETC処理部22はETCのセキュリティなど処理を行う処理部である。ETC通信部24は、ETC通信処理を行う処理部である。ETCアンテナ26は、ETCの電波処理を行うアンテナである。
【0015】
現金管理装置28は、現金払いやクレジットカード払いを管理する装置であり、現金処理部30、通行券読取部32、及び、通行券発券装置34を含む。現金処理部30は、現金払いやクレジットカード払いの処理を行う装置である。通行券読取部32は、通行券を読み取り料金表示を行う処理部である。通行券発券装置34は、通行券を発券する装置である。
【0016】
ナンバープレート読取装置35は、車両IDであるナンバープレートの車両ナンバーを読み取る装置である。
【0017】
料金所システム14は、出入り車両情報を抜き出す分岐ポイント44を介して、上位系システム36に繋がっている。上位系システム36では、中間集約装置38、決済情報集約装置40、及び、決済代行事業者装置42に繋がる。中間集約装置38は、料金所の料金データ装置を中間的にまとめる装置である。決済情報集約装置40は、各道路事業者間でETCカード情報を集約する装置である。更に、決済代行事業者装置42は、ETCカードによる支払情報を決済事業者に引き渡す装置である。
【0018】
図2に示す料金所システム14は、料金所12毎に、ETCに拠るETC料金所サーバ18及びETC車線サーバ20と、通行券に拠る現金管理装置28と、ナンバープレート読取装置35と、これらをまとめた料金データ処理装置16とで構成される。料金所システム14より上位系システム36では、料金データの精算処理(マイレージなどの一部割引処理を含む)を実施している。
【0019】
料金所システム14は、車両の入口において、入口料金所番号と日時を明らかにして車種の判定を実施し、その結果のデータを、ETCの場合はETCカードに、通行券処理の場合は通行券の磁気テープ部分に、書き込むものである。
【0020】
また、車両の出口においては、入口で書き込まれた情報に基づき、予め設定されている料金テーブルに照らし合わせて通行料金を決定する。その際に、ETCの場合は、通過した時刻等による割引処理等も合わせて考慮して料金テーブルを切り替える処理を実施している。従って、現行の通行料金の体系は、基本的に、入口と出口の料金所番号と、車種別で構成された料金テーブルのみで構成されている。各種割引等は、この料金テーブルを切り替える形で実現している。
【0021】
ところで、高速道路のような長距離かつ広範囲であり、且つ、非常に多くの出入口料金所で構成される有料道路においては、所与の経路を通行する車両、若しくは、幾つかの経路の組合せを経由する車両について料金を変更したいというニーズがある。このようにすることで、通行する車両の経路を能動的に誘導し、高速道路全体の利用効率を上げ、渋滞等の発生を抑制することが可能になり、そのような取り組みに対する必要性が、現在、高まっている。
【0022】
しかしながら、現行の高速道路の料金を計算するシステムにおいて、具体的な経路を取り入れた計算システムや計算手法は無い。なお、車両の経路を検知するためには、高速道路本線に車両を検知して情報を収集する装置、即ち、車両情報収集装置を設置する必要がある。この車両情報収集装置を全国の高速道路に大量に設置するためには非常に高額な費用が掛かる。さらに、それらが集める大量の車両情報は膨大な数量となり、大量の車両情報に含まれる車両毎の経路抽出とそれらの料金計算を実施することには、高速かつ複雑なデータベースシステムと高度な計算処理が必要である。
【0023】
これらの経路情報には高速道路の短区間利用等の情報も含まれる。高速道路の短区間利用等の情報は、必ずしも高速道路利用の効率性に資する情報ではない。
【0024】
更に、特定の経路の割引だけに特化し、一部の経路部分にのみ車両情報収集装置を設置して対応する場合、設置場所ごと、また割引手法ごとに特化するシステムが乱立することとなる。長期的には、料金システムを含む全体システムが、システム上の柔軟性及び合理性を阻害されたものになる可能性が非常に高くなる。従って、高速道路及び高速道路に接続された有料道路について、一連で対応できる経路把握手法及びシステムが、最適な経路把握手法及びシステムである。
【0025】
高速道路等の有料道路における通行料金は、料金抵抗と称されることがある。この料金抵抗は、利用者に対して利用行動を抑えたり、促進したりする効果を備える。長期に及ぶ工事や社会的イベントなどでの渋滞に対して、高速道路の通行経路を検知することは料金抵抗を制御することに繋がる。社会資産である高速道路の料金を動的に変化させることにより、災害時等における応急物資輸送や人的派遣を優先させる社会便益を、効果的に向上させることも可能である。また、高速道路の管理費用はその通行量と明確な比例関係にないことから、僅少交通量区間に対して料金抵抗を下げることも、社会便益を向上させる一つの手法である。したがって、全体の交通状況を踏まえた経路誘導を実現することは、利用者の便益性だけでなく、社会インフラコストの削減にも繋がるものでもある。
【0026】
以上を踏まえて、本願の発明者は以下に示すような、管理エリア毎に車両群を把握する経路取得のためのシステムを考案するに至った。
【0027】
1.2.管理エリアについて
高速道路を走行する車両の経路を効果的に把握し、適正なデータ量に落とし込みながら全体交通を捉えるシステムについて説明する。
【0028】
1台の車両が高速道路を利用する距離(以下、旅行距離という。)が、50km以上の長距離となることは全体の24%程度であることが知られている。つまり、走行距離が長くなるほど利用者数が減る傾向が知られている。
【0029】
経路に係る料金割引を想定した場合、その目的地までに、経路選択するところである2か所以上のジャンクション部を含む経路となる。そのため、走行距離が長くなるほど経路が増える傾向がある。
【0030】
これらのことを踏まえて、本願の発明者は、車両情報収集装置により区切られる管理エリアを想定し、その管理エリア毎に車両管理データベースを設け、その車両管理データベースにおける各車両情報に経路情報を持たせる、経路情報取得システムを考案した。
【0031】
2.実施の形態1
2.1.経路情報取得システムの構成
図1は、実施の形態1に係る経路情報取得システムの概略の構成図である。経路情報取得システムは、料金所システム14、車両情報収集装置8、車両管理データベース6、及び、車両位置情報データベース10をネットワークを介して備える。なお、以下では「データベース」を「DB」とも表すことがある。
【0032】
図2でも示すように、料金所システム14は、ETC料金所サーバ18、ETC車線サーバ20、現金管理装置28、ナンバープレート読取装置35、及び、料金データ処理装置16などで構成されるシステムである。この料金所システム14で取り扱う情報(即ち、車両情報)は、ETCのID情報やナンバープレート情報などの車両を特定できる符号(即ち、車両ID)、出入口料金所番号、流入若しくは流出時間、等の料金計算に必要な情報で構成されている。なお、現行の車両情報には、その車両の経路を示す情報は入力されていない。料金所システム14は、少なくとも車両IDを含む車両情報を収集する、ETC車線サーバ20のETC処理部22やナンバープレート読取装置35である、料金所での車両ID収集装置を備える。結果として、料金所12及び料金所システム14が設けられる夫々のインターチェンジ52(例えば、図5図7図8a、図10a、参照。)は、料金所での車両ID収集装置を備えることになる。
【0033】
料金所システム14は、料金所毎に設置され、インターチェンジ52に流入する車両情報とインターチェンジ52から流出する車両情報を管理するシステムである。
【0034】
車両管理データベース6とは、複数の料金所で構成される管理エリア2内の、車両情報を、ネットワークを介して集約して格納するデータベースである。この車両管理DB6を管理して制御するサーバを、車両管理サーバ6sと称する。車両管理サーバ6sは、通常、車両管理DB6と同じ場所に車両管理DB6に付随して設けられる。車両管理サーバ6sもネットワークを介して他のデータベースやサーバと接続する。図3は、実施の形態1に係る経路情報取得システムにおける車両管理サーバ6s周辺の構成を示す図である。
【0035】
車両管理サーバ6sにより、車両管理DB6は、隣接するDBである、車両位置情報DB10や隣の車両管理DB6と連携処理を行う。主に、隣の車両位置DB6と連携して対象となる車両情報を上流の車両管理DB6から取得する。
【0036】
内部DB6iは車両管理DB6が備えるDBであり、管理エリア2内の各料金所12から流入した車両の車両情報を収集し管理する。管理エリア2を跨ぐ車両の車両情報は管理しない。外部DB6oも車両管理DB6が備えるDBであり、管理エリア2内の各料金所等から流出した車両の車両情報を収集し管理する。
【0037】
FFアンテナ(フリーフローアンテナ:道路本線上に設置するETCアンテナ)等の車両情報収集装置8は、高速道路本線上に設置される。車両位置情報DB10は、車両情報収集装置8から、検知された、走行する車両の車両情報を収集し格納する。この車両位置情報DB10及び車両情報収集装置8を管理して制御するサーバを、車両位置情報サーバ10sと称する。車両位置情報サーバ10sは、通常、車両位置情報DB10と同じ場所に車両位置情報DB10に付随して設けられる。車両位置情報DB10もネットワークを介して他のデータベースやサーバと接続する。車両情報収集装置8については、後でも説明する。
【0038】
管理エリア2は、車両情報収集装置8により区切られ、複数の料金所12及び料金所システム14を含むエリアである。管理エリア2については、後でも説明する。
【0039】
更に、車両管理DB6は、車両管理DB[上り用]6uと車両管理DB[下り用]6dを含む。車両管理DB[上り用]6uは、車両管理DB6において上り方向を通行する車両の車両情報のみを格納するDBであり、高速道路内にいる範囲で履歴情報を管理する。車両管理DB[下り用]6dは、車両管理DB6において下り方向を通行する車両の車両情報のみを格納するDBであり、高速道路内にいる範囲で履歴を管理する。
【0040】
各料金所システム14から流入した車両の車両情報は、内部DB6iに格納され、また、各料金所システム14から流出した車両の車両情報は、外部DB6oに格納される。流入した段階の内部DB6iには、経路に関する情報はない。内部DB6i及び外部DB6oのどちらも、図2に示す分岐ポイント44から情報を分岐することで得られる情報を、夫々のDB(即ち、内部DB6iと外部DB6o)に分類することで、容易に構築され得る。分類は、入口用のETC車線サーバ20が内部DB6iと、出口用のETC車線サーバ20が外部DB6oと、夫々接続するだけで、実現できる。現金管理装置28における分類も同様である。なお、ナンバープレート読取装置35も、内部DB6i及び外部DB6oと夫々接続し得る。
【0041】
前述のように、一つの車両管理DB6の管理範囲を管理エリア2と呼び、管理エリアは、有料道路において一つ以上の連続するインターチェンジ52を一本の経路上に含んで設定される(例えば、図5図7図8a、図10a、参照。)。管理エリア2は、図3に示すように、管理番号が付与されることがある。図3では、I、II、III・・・が付与されている。
【0042】
この管理エリア2は、予め事前に設定しておくものである。管理エリア2内にジャンクション部などの経路分岐を含まないように、個々の管理エリア2が設定される。更に、一つの管理エリア2について直ぐ上流の車両情報収集装置8における経路は当該管理エリア2に繋がることが確定するように、設定される。また、管理エリア2と管理エリア2の間は、休憩施設などの車両を滞留させる施設がないように設定する。ただし、ジャンクション部と近接する休憩施設は除く。
【0043】
車両情報収集装置8は、管理エリア2と管理エリア2の間の本線上に設置され、本線を走行する車両を特定できる識別子や符号を検知する装置である。車両情報収集装置8は、例えば、ETCの車両管理IDを識別するETCフリーフローアンテナ(FFアンテナ)システムや、車両ナンバー(車両番号)を識別するナンバープレート読取装置などにより構成される、本線上の車両ID収集装置を備える。本線上の車両ID収集装置は、近傍を通過する車両の、少なくとも車両IDを含む車両情報を検知する。この車両情報収集装置8は、現在、既に利用されているものである。
【0044】
なお、車両情報収集装置8には、ジャンクション部に設置するものと、そうでないものとの2種類がある。ジャンクション部に設置するものは、車両群の経路選択を反映するものである。そうでないものは、一つの管理エリア2内の管理する車両数を制限したり、他の車両情報収集装置8の検知漏れを訂正したりするためにも用いられる。
【0045】
車両管理DB6は、管理エリア2の夫々上流側本線に設置された車両情報収集装置8で捕捉された情報を集めた車両位置DB10を走行方向別に集約したDBである。この管理エリア2間を移動した車両の車両情報には、経路情報として移動以前の管理エリア2の管理番号の後に移動後の管理エリア2の管理番号を付加して移動方向を示す符号群情報(以下、「経路情報」という。)を追加するものとする。
【0046】
図4は、道路を含むジャンクション部における車両情報収集装置8の配置例を示す概略の平面図である。夫々の方路の最終出口がまとまった場所に車両情報収集装置8を設置することで、ジャンクション部に流入した車両の方路が決定される。よって、4方路のジャンクション部で最低4カ所の車両情報収集装置8が必要であり、3方路の場合で3カ所、2方路で2カ所、車両情報収集装置8が必要である。また、これとは別に、本線どうしを結ぶランプ部と本線部1カ所とに設置する方法もある。この場合、車両の速度がより低速であるランプ部で検知することで検出精度の向上等が期待できるが、設置数が増えてしまう。
【0047】
2.2.経路情報取得システムの動作
図5は、各管理エリア2及び車両管理DB6と、車両情報収集装置8との、概略の関係の例を示す図である。AからHまでのインターチェンジ52が示されている。前述のように、車両位置情報DB10は、車両情報収集装置8からの情報を集約するデータベースである。
【0048】
以下では、これらの各DB間の情報処理について説明する。
【0049】
実施の形態1に係る経路情報取得システムでは、これらのデータベースにおいて相互に適宜データ交換を行う。このデータ交換の周期を、タイムインターバルと称する。相互のデータ交換及びタイムインターバルの例を、図6に示す。なお、図6の例では、A、B、Cのインターチェンジが一つの管理エリア2を構成し、D、E、Fのインターチェンジが一つの管理エリア2を構成し、G、H、Iのインターチェンジが一つの管理エリア2を構成している。
【0050】
また、図6に示すように、一つのタイムインターバルは、「管理エリア内部集約」の時間と、「管理エリア間調整」の時間とに分けられ、それらが相互に繰り返される。
【0051】
タイムインターバルは、各DB間、各管理エリア間調整などの、データ交換を実施する周期である。設定時間としては、高速道路のインターチェンジ間の実通行時間以下であればよい。平均インターチェンジ間7kmとすると、実通行時間は、100km/時の車両によれば4分程度(即ち、約4.2分)と想定される。都市部でのインターチェンジの設置状況を考慮すると、更に短い時間が設定され得るが、全体として同期が取れている必要がある。
【0052】
これらのDB間のデータ交換は、例えば、光伝送ネットワークを介して高速に実施される。よって、タイムインターバルは、10秒でも十分な時間である。このタイムインターバルを設定することで、常時移動している車両群を静的に捉えて処理することが可能となる。
【0053】
車両管理DB6が備える、内部DB6i及び外部DB6oは、管理エリア2内配下の料金所システム14から、車両の出入情報を収集し管理する。車両管理DB6は、流入する車両を管理する内部DB6iと流出した車両を管理する外部DB6oと連携し、データ交換できるものとする。この処理により、あるタイムインターバルにおける管理エリア内に存在する車両情報と有料道路から流出した車両情報、そして上流の管理エリアから流出し走行方向が判明した車両情報が、把握され得る。
【0054】
2.2.1.経路把握のための動作について
次に、これらのDBが連携してデータ交換及び経路情報を付与し取得する仕組みを、例を用いて説明する。図7は、経路の例と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成例とを示す図である。図5に示す図と基本的に同じ図であるが、一方向での通行だけについて、以下説明するため、車両情報収集装置8の、図5におけるカ、キ、ク、ケ、コで示されるものは、省略している。
【0055】
車両(1)が、Aインターチェンジから流入してHインターチェンジで流出するものとする。この間の、データ交換と経路情報付与について、以下「1.~13.」にて説明する。このAインターチェンジからHインターチェンジの方向を上り方向と仮定する。
なお、車両(1)の車両経路関数を「C()」とし、これに対して経路情報として管理エリア情報を順次追加する。例えば、管理エリア2_1と管理エリア2_2を経由した場合、C(1-2)と表すものとする。また、車両管理DB6は、矢印で示す進行方向用のDBを示すものとする。
【0056】
1.Aインターチェンジより流入した車両(1)の車両情報が、内部DB6i_(I)に登録される。この段階では方向は未確定であるが、経路情報C(1)が付与される。
【0057】
2.車両(1)が本線上の車両情報収集装置8_(ア)で捕捉され、車両(1)の車両情報が車両位置情報DB10_(一)に格納される。
【0058】
3.タイムインターバルの管理エリア間調整のタイミングで、車両位置情報DB10_(一)の車両(1)の車両情報を、一つ上流における車両管理DB6_(I)に問い合わせる。
【0059】
4.車両(1)の車両情報が車両管理DB6_(I)に在る場合、車両情報収集装置8_(ア)の一つ下流の車両管理DB6_(II)に、データ送付を行う。
車両(1)の車両情報が車両管理DB6_(I)に無い場合、車両管理DB6_(I)が備える内部DB6i_(I)に問い合わせ、内部DB6i_(I)に車両(1)の情報があれば、車両情報収集装置8_(ア)の一つ下流の車両管理DB6_(II)にデータ送付を行う、としてもよい。仮に、内部DB6iに対象の車両情報が無い場合には、更に上流における(即ち、二つ上流における)車両管理DB6とその備える内部DB6iまで、順次問い合わせる、としてもよい。
【0060】
5.車両(1)の情報は内部DB6i_(I)のDBから削除され、車両管理DB6_(II)に移動する。内部DB6i_(II)には車両(1)の情報は書き込まれない。
【0061】
6.車両管理DB6_(II)における車両(1)の情報では、走行方向が確定しており、車両(1)の車両情報の経路情報はC(1-2)とされる。つまり、車両(1)の車両情報に、管理エリア2_2の符号「2」が追加されて車両管理DB6_(II)にて格納される。
【0062】
7.車両(1)が本線上の車両情報収集装置8_(イ)で捕捉され、車両位置情報DB10_(二)に格納される。
【0063】
8.タイムインターバルの管理エリア間調整のタイミングで、車両位置情報DB10_(二)の車両(1)の車両情報を、車両管理DB6_(II)に問い合わせる。
【0064】
9.車両管理DB6_(II)の車両(1)の車両情報は履歴情報として管理され、更に、車両管理DB6_(III)にて格納される。車両(1)の車両情報の経路情報はC(1-2-3)とされる。
【0065】
10.車両(1)が本線上の車両情報収集装置(ウ)で捕捉され、車両位置情報DB10_(三)に格納される。
【0066】
11.タイムインターバルの管理エリア間調整のタイミングで、車両位置情報DB10_(三)の車両(1)の車両情報を、車両管理DB6_(III)に問い合わせる。
【0067】
12.車両管理DB6_(III)の車両(1)の車両情報は履歴情報として管理され、更に、車両管理DB6_(IV)にて格納される。車両(1)の車両情報の経路情報はC(1-2-3-4)とされる。
【0068】
13.車両(1)が管理エリア2_4内のHインターチェンジから流出した段階で、車両(1)の車両情報は外部DB(IV)に格納される。そして、車両管理DB6_(IV)から車両(1)の車両情報は削除され、併せて、車両管理DB6_(II)と車両管理DB6_(III)との履歴情報からも、車両(1)の車両情報は削除される。
【0069】
以上の例に示すように、車両情報収集装置8で捕捉された車両情報を元に機械的に車両管理DB6内に格納された車両の車両情報には、経路情報が付与されていくことになる。
【0070】
図8bは、例えば図7に示す例について、各車両管理サーバ6s及び車両管理DB6におけるデータ交換の処理を表すフローチャートである。図8aは、図8bに対応する経路と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成とを示す図である。ここでも、説明を簡略化するため、AインターチェンジからHインターチェンジの方向、つまり、上り方向のみを考慮する。
【0071】
図8b及び図8aに関して、まず、用語の定義・意味を説明する。
an:管理エリアの番号(nは管理番号)。
車両情報収集装置8の管理エリア番号は、上り線の下流側の管理エリアの番号で代表する。
I(an):タイムインターバル間に流入する一連の車両情報の集まり。
O(an):タイムインターバル間に流出する一連の車両情報の集まり。
S(an):履歴情報を含む車両管理DBにおける一連の車両情報の集まり。
P(m,an):車両情報収集装置8(即ち、車両位置情報DB10)における、タイムインターバル間の本線通過車両の一連の車両情報の集まり。
m:車両情報収集装置の管理番号。
【0072】
図8bに示すフローチャートは、図6に示すタイムインターバルの処理内容を示すものであり、全てのデータベースがここに示す単純なデータ交換により、管理エリアを跨ぐ車両の車両情報に、侵入する管理エリアの番号が順番に付与されていくことになる。基本的には、ある管理エリア2の下流の車両情報収集装置8で捕捉された車両情報は、その下流の管理エリア2のための車両管理DB6に、経路情報を付加した上で送られる、ということである。
【0073】
タイムインターバルがスタートし(S02)、流入する車両情報については、管理エリア内部集約の処理間では、内部DB6iにてI(an)のデータが収集される。収集されたI(an)の車両情報に経路情報としてanが付加される(S04)。
【0074】
流入する車両情報について、管理エリア間調整の処理間では、次のS06~S28の処理が実行される。
【0075】
まず、管理エリア2_anの下流の車両位置情報DB10へ、捕捉車両IDの問合せを行う。即ち、P(m,an+1)の内容を取得する(S06)。つまり、ここでは、管理エリア2_anを出て行く車両データを取得する。ただし、mは、anの下流にある、車両情報収集装置8の管理番号である。
【0076】
次に、
とし、sの経路情報に「an+1」を付加して、このsを一つ下流の管理エリア2_an+1のS(an+1)に追加する(S08)。
【0077】
なお、S08の後で、以下のS10における確認を行うことなく、次のタイムインターバルへの処理に進んでもよい(S36)。即ち、車両情報収集装置8による捕捉漏れが無いと想定して、次のタイムインターバルへの処理に進んでもよい(S36)。
【0078】
図8bに示すフローチャートでは、S08の後にて、「P(m,an+1)-s=0 ?」を確認する。即ち、P(m,an+1)の捕捉車両IDは全てS(an)に由来するものか、確認する(S10)。
【0079】
S10にて「P(m,an+1)-s=0」であるならば(S10・YES)、次のタイムインターバルへの処理に進む(S29)。
【0080】
S10にて「P(m,an+1)-s=0」で無いならば(S10・NO)、
とし、s'の経路情報にも「an+1」を付加して、このs'も、一つ下流の管理エリア2_an+1のS(an+1)に追加する(S12)。
【0081】
ここで、「P(m,an+1)-s-s'=0 ?」を確認する。即ち、P(m,an+1)の捕捉車両IDは、S(an)とI(an)とに由来するものか、確認する(S14)。
【0082】
S14にて「P(m,an+1)-s-s'=0」であるならば(S14・YES)、データ移動した内部データベースにおけるデータ、即ち、s'についての内部DB6iの当該車両情報に係るデータを削除し(S16)、次のタイムインターバルへの処理に進む(S29)。
【0083】
S14にて「P(m,an+1)-s-s'=0」で無いならば(S14・NO)、更に一つ上流の車両管理DB6のデータについて
とし、s''の経路情報にも「an+1」を付加して、このs''も、一つ下流の管理エリア2_an+1のS(an+1)に追加する(S18)。
【0084】
ここで、「P(m,an+1)-s-s'-s''=0 ?」を確認する。即ち、P(m,an+1)の捕捉車両IDは、S(an)と、I(an)と、S(an-1)とに由来するものか、確認する(S20)。
【0085】
S20にて「P(m,an+1)-s-s'-s''=0」であるならば(S20・YES)、次のタイムインターバルへの処理に進む(S29)。
【0086】
S20にて「P(m,an+1)-s-s'-s''=0」で無いならば(S20・NO)、
とし、s'''の経路情報にも「an+1」を付加して、このs'''も、一つ下流の管理エリア2_an+1のS(an+1)に追加する(S22)。
【0087】
ここで、「P(m,an+1)-s-s'-s''-s'''=0 ?」を確認する。即ち、P(m,an+1)の捕捉車両IDは、S(an)と、I(an)と、S(an-1)と、I(an-1)とに由来するものか、確認する(S24)。
【0088】
S24にて「P(m,an+1)-s-s'-s''-s'''=0」であるならば(S24・YES)、データ移動した内部データベースにおけるデータ、即ち、s'''についての内部DB6iの当該車両情報に係るデータを削除し(S26)、次のタイムインターバルへの処理に進む(S29)。
【0089】
S24にて「P(m,an+1)-s-s'-s''-s'''=0」で無いならば(S24・YES)、残りの捕捉車両IDを不明車両リストに登録する(S28)。そして、次のタイムインターバルへの処理に進む(S29)。
【0090】
続いて、流出する車両情報についてのフロー「S30~S36」を説明する。
【0091】
タイムインターバルがスタートし(S02)、流出する車両情報については、管理エリア内部集約の処理間では、外部DB6oにてO(an)のデータが収集される。O(an)の経路情報から、通過した管理エリア2毎に車両IDが分類される(S30)。
【0092】
流出する車両情報について、管理エリア間調整の処理間では、まず、分類した管理エリア2内の車両管理サーバ6sへ、O(an)の当該車両IDを送付する(S32)。続いて車両管理サーバ6sは、車両管理DB6におけるS(an)から、当該O(an)の対象車両IDデータを削除する(S34)。そして、次のタイムインターバルへの処理に進む(S36)。
【0093】
上記でも述べたが、S08の後で、S10にて「P(m,an+1)-s=0 ?」を確認しているが、この確認を行うことなく、次のタイムインターバルへの処理に進んでもよい(S36)。即ち、車両情報収集装置8による捕捉漏れが無いと想定して、S10~S26の処理が行われずに、次のタイムインターバルへの処理に進んでもよい(S36)。
【0094】
2.2.2.経路を判定し料金を割引するための処理について
続いて、実施の形態1に係る経路情報取得システムによる、経路判定に基づく通行料金割引処理について説明する。
【0095】
図9は、経路判定に基づく通行料金割引処理(以下、経路割引処理とも言う。)を実現するための、経路情報取得システムの概略の構成図である。図1に示す経路情報取得システムと比べて、更に、経路管理サーバ56と料金計算サーバ54とがネットワークを介して備わる。経路管理サーバ56は、各車両管理DB6から経路割引処理に必要な情報を収集し、該当する車両の車両情報を料金計算サーバ54に送るものである。料金計算サーバ54は、予め決められた割引等の計算用データに基づいて料金計算を行うサーバであり、この計算用データは、入口料金所番号と車種ごとに並べられたテーブル情報と、割引種別ごとに付番されたテーブル番号とで、構成されている(以下、料金情報とも言う。)。料金情報は、経路管理サーバ56を経由して、割引が適用される可能性のある全ての管理エリア2における車両管理サーバ6sに送信される。
【0096】
車両管理サーバ6sは、料金情報を配下の料金所システム14に送付し、現行の料金テーブルを、新たに配信される料金情報に切り替えて課金処理を実施させる。これらの処理は、現行のETCにおける割引処理と類似した方式を採用するため、現行の料金所システム14に対する大きい改造は必要ではない。
【0097】
次に、経路割引処理を、例を用いて説明する。図10aは、経路の例と、それに関する経路情報を取得するデータベースの構成例とを示す図である。図8aに示す図と基本的に同じ図であるが、図8aにおける車両情報収集装置8の、キ、ク、ケ、コで示されるものは省略している。
【0098】
管理エリアの(a1)-(a2)-(a3)-(a4)の経路において、(a2)-(a3)の経路内で道路工事等に起因する渋滞の発生が予想される、と仮定する。ここで、管理エリアの(a1)-(a5)-(a61)-(a4)の経路を通行した車両に対して、管理エリアの(a1)-(a2)-(a3)-(a4)を経由した車両よりも、通行料金を安価にする、という料金設定を実施することを想定する。そうすると、(a2)-(a3)を通行する車両を減らすことが可能となり、渋滞の発生確率を抑えることが可能となる。そのため、管理エリア(a1)-(a5)-(a6)-(a4)を経由する車両に対して、割引処理を実施することを、以下の「1.~6.」にて考える。ただし、説明を簡単にするために、AインターチェンジからHインターチェンジの方向のみを想定する。ここでの「管理エリアの(a1)-(a2)-(a3)-(a4)」や「管理エリアの(a1)-(a5)-(a61)-(a4)」は、経路条件の例であり、このように経路条件は、連続する複数の管理エリアを通過する。
【0099】
まず、経路管理サーバ56から、(a1)-(a5)-(a6)-(a4)のパターンの経路情報を保有する車両群を検索し、割引処理を行うため、次のとおり各車両管理サーバ6s及び車両管理DB6に指示する。
【0100】
1.管理エリア2_(a5)の車両管理DB6_(a5)に対して、(a1)-(a5)のパターンの車両情報を抽出させ、経路管理サーバ56内の割引対象データベースの一種のR(a5)に格納する。
【0101】
2.同様に、管理エリア2_(a6)の車両管理DB6_(a6)に対して、(a1)-(a5)-(a6)のパターンの車両情報を抽出させ、経路管理サーバ56内の割引対象データベースの一種のR(a6)に格納する。
【0102】
3.R(a5)とR(a6)との和集合を求めて、割引対象リストRとする。更に、割引対象リストRを、車両情報収集装置8_(ウ)を管理する車両位置情報サーバ10sに送付する。
【0103】
4.割引経路条件の最後の管理エリア2の、直ぐ上流の車両情報収集装置8_(ウ)で捕捉された、車両位置情報DB10における車両情報と、割引対象リストRとの、論理積を求めて、割引経路条件を満たす車両の車両情報である経路条件充足車両情報を作成する。割引経路条件を満たす車両(経路条件充足車両情報に属する車両)については、車両位置情報サーバ10s及び車両情報収集装置8_(ウ)が、ETCカードの割引フラグをONとする。
【0104】
5.R(a6)に登録されていて、経路条件充足車両情報に登録されていない車両群を、未検知情報リストX_(ウ)に登録する。全ての未検知情報リストXは、経路管理サーバ56内に格納される。
【0105】
6.未検知情報リストX_(ウ)を、管理エリア2_(a4)より下流側の管理エリアの全てに配信し、各料金所システム14に送るものとする。
【0106】
以上の処理により、管理エリア2_(a4)より下流側にある料金所において、ETCシステムを用いると、ETCカードの割引フラグがONになっている場合に、割引用の料金情報から料金を検索し課金処理することが可能となる。
【0107】
また、車両情報収集装置8_(ウ)で検知されなかった車両については、ETCカードの確認後に、未検知情報X_(ウ)に登録された車両情報と比較することで、割引対象車両であるか否かが、確認され得る。
【0108】
図10b、図10c、及び図10dは、経路割引処理のフローチャートである。
【0109】
図10bは、経路割引を実施するための経路条件に基づいて対象車両の車両情報を抽出してリスト化し、該当する車両情報収集装置8に送信するまでの処理を示すフローチャートである。
【0110】
図10cは、該当する車両情報収集装置8にて、即ち、経路割引条件の最終の車両情報収集装置8にて捕捉された車両情報が、リスト化された車両情報と合致した場合に、ETCカードに割引情報を書き込むまでのフローチャートである。
【0111】
図10dは、割引が適用され得る出口である料金所システムにおいて、ETCカードの割引情報を確認して割引処理を実施する処理と、経路割引条件の最終の車両情報収集装置8での収集漏れ情報と比較することで収集漏れを補正する処理とを行うフローチャートである。
【0112】
ここでも、説明を簡略化するため、AインターチェンジからHインターチェンジの方向、つまり、上り方向のみを考慮する。
【0113】
図10b、図10c、及び図10dに関して、用語の定義・意味を説明する。
an:管理エリア番号(nは管理番号)。
車両情報収集装置8の管理エリア番号は、上り線の下流側の管理エリアの番号で代表する。
S(an):履歴情報を含む車両管理DBにおける一連の車両情報の集まり。
P(m,an):車両情報収集装置8(即ち、車両位置情報DB10)における、タイムインターバル間の本線通過車両の一連の車両情報の集まり。
m:車両情報収集装置の管理番号。
K[a(1),a(2),…,a(n-2),a(n-1),a(n)]:経路割引を実施するための経路条件。即ち、管理エリアのa(1)とa(2)…とa(n)までの管理エリアを通行した車両という条件を表す。
a(n):管理エリアn番を表す。
F[a(1)],F[a(2)],…,F[a(n-2)],F[a(n-1)],F[a(n)]:割引経路検出に必要な一連の車両情報収集装置。
【0114】
図10bに示すフローチャートでは、タイムインターバルがスタートし(S50)、経路管理サーバ56は、割引経路情報があれば割引経路情報を受け付ける(S52)。割引経路情報において割引経路条件等がチェックされる(S54)。割引テーブル番号が決定され、割引経路条件と共に、料金計算サーバ54に送付される(S54)。
【0115】
割引経路条件:K[a1,a2,…,an-2,an-1,an]が、入力される(S58)。なお、以下のS60~S68の処理については、高速道路の上下線毎に実行される。
【0116】
割引経路条件における最後から一つ上流の車両管理DB6のS(an-1)へ、問い合わせを行う。S(an-1)は履歴情報を含む。S(an-1)から、K[a1,…,an-2,an-1]の経路情報を持つ車両を抽出し、R(1)に登録する(S60)。
【0117】
同様に、割引経路条件における最後から二つ上流の車両管理DB6のS(an-2)へ、問い合わせを行う。S(an-2)も履歴情報を含む。S(an-2)から、K[a1,…,an-2]の経路情報を持つ車両を抽出し、R(2)に登録する(S62)。
【0118】
R(1)とR(2)との和集合を求める。即ち、割引対象リストR=R(1)+R(2)を、作成する(S64)。なお、重複データは一方を削除する。
【0119】
なお、割引対象リストR=R(1)としてもよい。この場合R(2)(S62)は作成されなくてよい。
【0120】
経路割引が確定する、経路最終の車両情報収集装置F[an]を管理する車両位置情報サーバ10sに割引対象リストRを送付する(S66)。
【0121】
前述の車両位置情報サーバ10sにて、先ず、割引経路条件における最後の管理エリア2の直ぐ上流の車両情報収集装置8に属する車両位置情報DB10における車両情報、即ち、経路最終の車両情報収集装置F[an]と、割引対象リストRとの、論理積
を求める。これにより、割引経路条件を満たす車両の車両情報である割引経路条件充足車両情報が作成される。
続いて、
により、未検知車両リストXを求め、割引テーブル番号と併せて、割引処理を実行し得るインターチェンジ52の料金所システム14へ配信する(S68)。ここで、未検知車両リストXを求めることは、割引経路条件を満たす車両の車両情報を補充する、経路条件充足車両情報に対する補充リストを作成すること、である。よって、以下の図10cに示すフローチャートのS82にてETCカードの割引フラグをONしようと試みられたがONとはならなかった車両についても、未検知情報リストXに登録されるのが好ましい。
【0122】
図10cに示すフローチャートでは、経路割引条件の最終の車両情報収集装置8及び車両位置情報サーバ10sが、通過車両が割引対象リストRに含まれる車両であるか否か、チェックする(S80)。即ち、経路最終の車両情報収集装置F[an]と、割引対象リストRとの、論理積に該当するか、チェックしている。
【0123】
通過車両がリストRに含まれる車両であるならば(S80・YES)、その車両のETCカードの経路割引フラグをONし、更にETCカードに割引テーブル番号を書き込む(S82)。続いて、S80に戻る(S84)。
【0124】
通過車両がリストRに含まれる車両で無いならば(S80・NO)、次の通過車両のデータについてS80を繰り返す(S84)。
【0125】
つまり、図10cに示すフローチャートでは、
である車両を求めて、対象の車両のETCカードの経路割引フラグをONし更にETCカードに割引テーブル番号を書き込んでいる。
【0126】
図10dに示すフローチャートは、割引処理を実行し得る出口であるインターチェンジの料金所システム14にて追加的に行われる処理を示している。先ず、料金所システム14は、通過車両のETCカードの経路割引フラグがONであるか、チェックする(S90)。
【0127】
通過車両のETCカードの経路割引フラグがONであるならば(S90・YES)、料金所システム14は、ETCカードに書き込まれたテーブル番号の料金テーブルにより、課金処理を実施する(S92)。料金テーブルは料金計算サーバ54より得られる。続いて、S90に戻り次の車両のデータについて処理が行われる(S98)。
【0128】
通過車両のETCカードの経路割引フラグがONで無いならば(S90・NO)、料金所システム14は、通過車両の車両IDが未検知車両リストXに含まれるか、チェックする(S94)。
【0129】
通過車両の車両IDが未検知車両リストXに含まれるならば(S94・YES)、料金所システム14は、未検知車両リストXに書き込まれたテーブル番号の料金テーブルにより、課金処理を実施する(S96)。続いて、S90に戻り次の車両のデータについて処理が行われる(S98)。
【0130】
通過車両の車両IDが未検知車両リストXに含まれないならば(S94・NO)、続いて、S90に戻り次の車両のデータについて処理が行われる(S98)。
【0131】
2.3.経路判定誤差について
実施の形態1に係る経路情報取得システムにおける経路判定誤差について説明する。
【0132】
経路の判定に係る車両情報収集装置8は、FFアンテナを用いていても99%の検知率であり、約1%程度の未検知が発生している。1万台/日の交通量であれば、100台/日の未検知数が発生するということであり、その精度向上にて課題があると言える。しかしながら、実施の形態1に係る経路情報取得システムの場合、割引対象経路が連続する2カ所以上の管理エリア2で構成されるならば、割引対象車両は最低2カ所の車両情報収集装置を通過することになる。このとき、未検知率は0.01%程度となり、1万台/日の交通量であっても、未検知数は約1台程度まで低下する。
【0133】
ここで、図10a~図10dにて示した経路割引処理での修正手法について説明する。経路(a1)-(a5)-(a6)-(a4)を通過した車両は、必ず、経路情報(a1)-(a5)の情報を持つ車両であることから、R(a5)に含まれている。同様に、経路情報(a1)-(a5)-(a6)を持つ車両も、R(a6)に含まれている。この両方の情報を合わせることで、車両情報収集装置8の(エ)と(オ)の両方未検知の車両以外の車両を、把握することが可能となる。この情報と、車両情報収集装置8_(ウ)で捕捉した情報を比較することにより、車両情報収集装置8_(ウ)で捕捉された車両の99.99%の経路情報を把握し、割引するためのフラグをETCカードに書き込むことができる。
【0134】
しかしながら、車両情報収集装置8_(ウ)による未検知車両については、修正できていないことになる。これを修正することを考える。まず、R(a5)とR(a6)とを合算したデータは、見つけるべき車両の99.99%を含んだデータであるため、この情報から、車両情報収集装置8_(ウ)で検知された情報を差し引いた残りの情報に、車両情報収集装置8_(ウ)で未検知であった車両が含まれている。しかし、この未検知情報は、R(a5)を含んでいる等、無益な情報が多く存在しており、最終的に出口の料金所システム14で処理する際の検索時間を増やしてしまうことになる。
【0135】
したがって、R(a6)から、車両情報収集装置8_(ウ)で検知された情報を差し引く処理を行い、未検知車両リストX_(ウ)を求めることで、より少ない情報による、出口の料金所システム14の処理が可能となる。この場合、R(a5)を外すことで目的の車両が外れる可能性は、車両情報収集装置8の(エ)と(ウ)の両方で未検知である確率であり、0.01%以下である。
【0136】
割引処理を行う最終の車両情報収集装置以外については、管理エリアの番号は連続しているため、いずれかの車両情報収集装置8にて未検知が発生した場合でも、修正することが可能である。仮に、図5に示すような管理エリア2について「1-2-3-4」を走行した場合、車両情報収集装置8は、「ア―イ―ウ」の3基を通過するが、このうち、ア、イ、ウ、のどれかで未検知が発生しても、各車両管理DB6では、外部DB6oにより流出する車両の車両情報も管理していることから、流出情報が無ければ途中で抜けることは無いと見做せるため、検知情報を修正することが可能である。
【0137】
ゆえに、経路割引の条件の管理エリア数が増えることで、検知率は略100%となるため、未検知車両リストXの作成に当たっては、経路割引条件の最終の車両情報収集装置8が検知した車両の車両情報(即ち、車両位置情報DBに格納される車両情報)と、その前の管理エリアによる割引対象データベース(リスト)で足りる。
【0138】
図5に示すような経路において、仮に、車両情報収集装置8の(エ)、(オ)、(ウ)の情報だけで割引を実施することを想定する。この場合、管理エリア2_(1)を含む上流からの全ての車両が対象車両となるため、インターチェンジ52_(B)と、ジャンクション部50と間に、車両情報収集装置8を追加しなければ、対象車両のデータを収集することができない。また、この車両情報収集装置8で収集した車両情報において、車両情報収集装置8の(ウ)により収集される車両情報、及び、(エ)及び(オ)により収集される車両情報と、一致する車両を検索することとなるが、検索する対象車両を確定するために遡る時間が特定できず、略最大の時間まで遡って処理の対象としなければならない。
【0139】
また、これら個別の車両情報収集装置8により収集されるデータは、通過するすべての車両が対象となりデータ量は膨大となる。更に、膨大な量の車両情報から、対象となる車両だけを抽出する処理には、高速な処理装置が必要となる。結果として、一般的なETCシステムで行われている処理のように、非常に短い時間(例えば、500ミリ秒以下)で課金処理まで実施することは不可能である。
【0140】
また、このように車両情報収集装置8だけで経路割引等の処理を実現する場合、その割引条件に応じた場所に都度、車両情報収集装置8を設置する必要がある。更に、各割引条件に応じてデータ処理のためのソフトウェアも都度作成する必要があるため、システム全体として一般性・可撓性を持ち得ないことになる。つまり、割引条件等の変動に伴うシステム変更が大きくなり、結果としてシステム全体の柔軟性が乏しくなる。
【0141】
なお、車両が通行券により高速道路を利用するときには、経路情報取得システム及び料金所システム14では通行券のための処理が行われる。この場合、車両情報収集装置8においてはFFアンテナシステムではなくナンバープレート読取装置が用いられる。料金所システム14においてはETCカードでの処理は行われないが、出口の料金所におけるナンバープレート読取装置を用いて取得した車両IDにより未検知車両リストXへの情報検索が行われることになる。この通行券のための処理の場合、出口の料金所において処理時間が比較的長く取れるため、上述の情報検索処理によっても経路判定及び経路割引の処理が十分に実行され得る。
【0142】
2.4.経路情報取得システムの構築のためのコストについて
実施の形態1に係る経路情報取得システムの構築のためのコストについて説明する。
【0143】
遅くとも実交通時間のタイミングに合わせればよいことから、本開示の経路情報取得システムにおいては、車両管理DB6や車両位置情報DB10に対する処理の高速性は必要とされない。更に、本開示の経路情報取得システムにおいては、レプリケーション等のようなデータベースにおける標準的なデータ交換処理を繰り返すシンプルな構成と、適切な管理エリアを設定することにより、車両情報収集装置の数を低減し得る経済的で効率的なシステム構築が可能となる。なお、ETC関連システムを備える料金所システムにおいては、新たな料金テーブルを受け入れて切り替える機能の追加等の小規模の変更を行うことで、本開示の経路情報取得システムが実現され得る。
【0144】
実施の形態1に係る経路情報取得システムを構成する車両管理DB6、及び車両管理DB6を管理する車両管理サーバ6sのためのソフトウェアは、夫々のデータベース及びサーバに対して全て同じソフトウェアが用いられればよい。このことは、システム全体の観点から考慮すると、コスト上、安価である。また、実際に利用するデータベースソフトウエアにおいても、特に処理の高速性は要求されず、処理の具体的内容もデータベースソフトウエアとして標準的なものであり、よって、安価に構築され得る。なお、管理エリア毎にデータベースシステムが構築されることになるため、管理エリアの数と構築費用とは比例関係となる。
【0145】
管理エリアの大きさについて説明する。高速道路においては50km以上の走行は、全体の24%(但し、全国平均)である。このことを踏まえると、一つの管理エリア2の範囲を100km程度に設定すれば、ある管理エリア内に外部から流入する車両の約60%は当該管理エリア内で再び外部に流出する、ということになる。つまり、本開示の経路情報取得システムにおいては、経路の把握が必要な車両数を全体の40%まで縮小することが可能となる。
【0146】
なお、都市部では、ジャンクション部が多く構築されているため、管理エリアは小さくなる傾向があり、逆に地方部では、ジャンクション部が少ないため、管理エリアを大きく設定することが可能である。ここで、都市部では渋滞の発生が多いため、管理エリアを小さく設定することで、柔軟な割引設定が可能となる。また、地方部においては管理エリアを大きく設定しても対象として管理する車両台数は少なくなる。更に、管理エリアをより大きく設定することで、システムに係る全体の費用を減少させることができるが、一つの管理エリア内で取り扱われる情報量は増加し得る。管理エリアの設定の大きさについては、課金計算処理等の負荷などを含めて検討される必要がある。
【0147】
配信対象の料金テーブルのデータは、全ての料金所システムに配信される必要はなく、通常料金と異なる料金が課金され得るインターチェンジの料金所システムだけに配信されればよい。料金テーブルの配信についても、インターチェンジ単位ではなく、管理エリア単位で管理することで、配信そのものが単純化され得る。つまり、料金テーブルのデータは必要な管理エリアにだけ配信されるため、たとえ割引種別が増加するとしても、個々の料金所システムにおける負荷は平均化され、経路割引処理のための増加費用は小さい。料金所は非常に数が多いことから、コスト全体として大きな節減効果がある。
【0148】
なお、管理エリア2内に車両管理DB6を1基のみ設置するのでは無く、一つの管理エリア2を2分する形で車両管理DB6を2台設置することも想定され得る。このように車両管理DB6を2台設置することで、車両管理DB6のバックアップ機能を付与することができ、システムリタンダンシも向上し得る。また、車両管理DB6が2カ所に分散されることでネットワーク効率も向上し得る。
【0149】
2.5.実施の形態1に係る経路情報取得システムによる効果等について
実施の形態1に係る経路情報取得システムを採用することで、高速道路における大規模修繕等で発生する長期間の道路工事規制や、オリンピック等の大規模イベントで予想される渋滞に対して、規制関連情報や渋滞関連情報を流布するに過ぎない対応だけでなく、料金抵抗を制御する積極的な対応を、採ることが可能となる。これにより、高速道路等の有料道路の有する社会的な便益が向上すると共に、道路そのものの利用効率が高くなる。
【0150】
3.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0151】
実施の形態1に係る経路情報取得システムでは、車両の経路情報だけでなく車両の流出の情報も管理することが可能となっている。このことを用いると、通行止め等にてインターチェンジの間で乗り継ぎを余儀なくされる場合等に、後発的な課金調整を実施することなく、当該インターチェンジの料金所を通過する際の即時の課金調整処理が可能となる。
【0152】
つまり、外部DB6oに記録された流出時刻から一定時間内に再流入した車両を自動的に検知してリスト化することにより、課金調整の対象車両の即時抽出が可能となる。つまり、このリストを利用して必要な料金計算を行うことにより、出口の料金所システム14において、修正された金額での課金処理が可能となる。これにより、利用者には正確な料金表示が可能になるだけでなく、従来から実施している後発的な課金修正処理に掛かる費用が削減されることになる。
【0153】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0154】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0155】
2・・・管理エリア、
6・・・車両管理DB、
6s・・・車両管理サーバ、
6u・・・車両管理DB[上り用]、
6d・・・車両管理DB[下り用]
6o・・・外部DB、
6i・・・内部DB、
8・・・車両情報収集装置、
10・・・車両位置情報DB、
10s・・・車両位置情報サーバ、
12・・・料金所、
14・・・料金所システム、
16・・・料金データ処理装置、
18・・・ETC料金所サーバ、
20・・・ETC車線サーバ
22・・・ETC処理部、
24・・・ETC通信部、
26・・・ETCアンテナ、
28・・・現金管理装置、
30・・・現金処理部、
32・・・通行券読取部
34・・・通行券発券装置、
35・・・ナンバープレート読取装置、
36・・・上位系システム、
38・・・中間集約装置、
40・・・決済情報集約装置、
42・・・決済代行事業者装置、
44・・・分岐ポイント
50・・・ジャンクション部、
52・・・インターチェンジ、
54・・・料金計算サーバ、
56・・・経路管理サーバ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9
図10a
図10b
図10c
図10d