(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126510
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】地中障害物撤去工法
(51)【国際特許分類】
E21B 17/00 20060101AFI20220823BHJP
E21B 3/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E21B17/00
E21B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024631
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】599165968
【氏名又は名称】多摩火薬機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】児島 郁男
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129BB03
2D129EA11
(57)【要約】
【課題】地中の障害物が大きなコンクリート構造物などであっても、簡易に撤去する。
【解決手段】本工法では、地上E1において、地上E1、地中E2、障害物E3を障害物E3の大きさに応じて一又は複数の施工箇所Pに分けて、施工箇所P毎に、地上E1から地中E2を通して障害物E3に複数の孔E10を穿ち、各孔E10に非火薬破砕剤Dを装填して非火薬破砕剤Dにより障害物E3を先行破壊してから、地上E1から地中E2、障害物E3に順次、ケーシングを圧入し、ケーシング内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、このハンマーグラブでケーシング内の土砂、ガラを排出することを繰り返す。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に存在するコンクリート構造物、硬質の岩盤を含む障害物を撤去する地中障害物撤去工法であって、
地上において、地上、地中、障害物を地中の障害物の大きさに応じて一又は複数の施工箇所に分けて、施工箇所毎に、地上から地中を通して障害物に複数の孔を穿ち、前記各孔に非火薬破砕剤を装填して前記非火薬破砕剤により障害物を先行破壊してから、地上から地中、障害物に順次、ケーシングチューブを圧入し、前記ケーシングチューブ内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、前記ハンマーグラブで前記ケーシングチューブ内の土砂、ガラを排出することを繰り返す、
ことを特徴とする地中障害物撤去工法。
【請求項2】
一の又は複数の施工箇所において、地上から障害物までの掘削深度が深い場合、最初のケーシングチューブに継ぎ足してケーシングチューブを圧入し、前記各ケーシングチューブ内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、前記ハンマーグラブで前記各ケーシングチューブ内の土砂を排出することを繰り返す請求項1に記載の地中障害物撤去工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に存在するコンクリート構造物や硬質の岩盤などの障害物の撤去に用いる地中障害物撤去工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から実施されている地中障害物撤去工法として、円筒形のケーシングチューブで地上から地中を掘削しケーシングチューブ内の土砂を撤去する所謂オールケーシング工法を用いた工法が知られている。この種の工法が例えば特許文献1により開示されている。
【0003】
特許文献1はケーシング掘削工法に関するもので、この工法では、チュービング機構によりケーシングチューブを回転あるいは揺動させながら地中に押し込むとともに、クレーンに吊り下げたハンマーグラブをケーシングチューブ内に降下させてこのハンマーグラブでケーシングチューブ内の土砂を排出する。すなわち、ケーシングチューブで地中の障害物を破壊し、さらにケーシングチューブ内で障害物をハンマーグラブの打撃により破砕する。なお、ハンマーグラブで障害物が壊れない場合は、モンケンを使用し、モンケンを障害物に落として破砕する。このようにして、ケーシングチューブ内のガラをハンマーグラブでつかみ上げ撤去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、都市部の地下にトンネルを作る工事では、国道や一般道の下に、また大深度にトンネルを掘削するため、開削工法を取ることができず、シールド工法が採用される。シールド工法を用いたトンネル工事では、シールドマシンの掘進経路上にコンクリート構造物や硬質の岩盤などが存在すると、これが掘削の障害となり、掘削できない。このため、この障害物を予め撤去しておく必要がある。そこで、シールド工法を用いたトンネル工事においては、既述のようなオールケーシング工法が取り入れられている。
【0006】
しかしながら、特許文献1のケーシング掘削工法のような従来の地中障害物撤去工法では、地中の障害物が鉄筋コンクリートなどのコンクリート構造物で、しかもそれがケーシングチューブの径よりも大きい平面積を有していると、ケーシングチューブによる押し込み破壊やハンマーグラブ、モンケンなどの降下破壊では、このような障害物を破砕、破壊することができない又は極めて難しい、という問題がある。また、地中の障害物が大きな硬質の岩盤などの場合も同様である。
【0007】
本発明は、このような従来の問題を解決するものであり、この種の地中障害物撤去工法において、地中の障害物が大きなコンクリート構造物や硬質の岩盤などであっても、ケーシングチューブによる押し込みやハンマーグラブなどの降下で地中の障害物を容易かつ確実に破砕、破壊して、簡易に撤去できるようにすること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、
地中に存在するコンクリート構造物、硬質の岩盤を含む障害物を撤去する地中障害物撤去工法であって、
地上において、地上、地中、障害物を地中の障害物の大きさに応じて一又は複数の施工箇所に分けて、施工箇所毎に、地上から地中を通して障害物に複数の孔を穿ち、前記各孔に非火薬破砕剤を装填して前記非火薬破砕剤により障害物を先行破壊してから、地上から地中、障害物に順次、ケーシングチューブを圧入し、前記ケーシングチューブ内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、前記ハンマーグラブで前記ケーシングチューブ内の土砂、ガラを排出することを繰り返す、
ことを要旨とする。
また、一の又は複数の施工箇所において、地上から障害物までの掘削深度が深い場合、最初のケーシングチューブに継ぎ足してケーシングチューブを圧入し、前記各ケーシングチューブ内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、前記ハンマーグラブで前記各ケーシングチューブ内の土砂を排出することを繰り返す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地中障害物撤去工法によれば、地上において、地上、地中、障害物を障害物の大きさに応じて一又は複数の施工箇所に分けて、施工箇所毎に、地上から地中を通して障害物に複数の孔を穿ち、各孔に非火薬破砕剤を装填して非火薬破砕剤により障害物を先行破壊してから、地上から地中、障害物に順次、ケーシングチューブを圧入し、ケーシングチューブ内にハンマーグラブを降下させて打撃を加え、ハンマーグラブでケーシングチューブ内の土砂、ガラを排出することを繰り返すので、地中の障害物が大きなコンクリート構造物や硬質の岩盤などであっても、ケーシングチューブによる押し込みやハンマーグラブなどの降下で地中の障害物を容易かつ確実に破砕、破壊して、簡易に撤去することができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る地中障害物撤去工法の障害物破壊ステップの一工程を示す図
【
図2】同工法の障害物破壊ステップで必要な準備工程を示す図
【
図3】同工法の障害物破壊ステップで必要な準備工程を示す図
【
図4】同工法の障害物破壊ステップで必要な準備工程を示す図
【
図5】同工法の障害物破壊ステップの一工程を示す図
【
図6】同工法の障害物破壊ステップの一工程を示す図
【
図7】同工法の地中掘削ステップ、障害物破壊ステップを示す図
【
図8】同工法の地中掘削ステップ、障害物破壊ステップを示す図
【
図9】同工法の地中打撃ステップ、障害物破壊ステップを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、この発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
図1乃至
図9に地中障害物撤去工法を示している。
【0012】
この地中障害物撤去工法(以下、本工法という。)は、地中E2に存在するコンクリート構造物、硬質の岩盤を含む障害物E3を撤去するもので(
図5参照)、本工法では、地上E1において、地上E1、地中E2、障害物E3を地中の障害物E3の大きさに応じて一又は複数の施工箇所Pに分けて、施工箇所P毎に、地上E1から地中E2を通して障害物E3に複数の孔E10を穿ち、各孔E10に非火薬破砕剤Dを装填して非火薬破砕剤Dにより障害物E3を先行破壊してから(
図6参照)、地上E1から地中E2、障害物E3に順次、ケーシングチューブCを圧入し、ケーシングチューブC内にハンマーグラブM4を降下させて打撃を加え、ハンマーグラブM4でケーシングチューブC内の土砂、ガラを排出することを繰り返す(
図7-
図9参照)。
また、本工法では、一の又は複数の施工箇所Pにおいて、地上E1から障害物E3までの掘削深度が深い場合、最初のケーシングチューブCに継ぎ足してケーシングチューブCを圧入し、各ケーシングチューブC内にハンマーグラブM4を降下させて打撃を加え、ハンマーグラブM4で各ケーシングチューブC内の土砂を排出することを繰り返す(
図7-
図9参照)。
【0013】
本工法は、次のステップ1-7により具体化される。すなわち、
図5、
図6に示すように、本工法は、地上E1において、地上E1、地中E2、障害物E3を障害物E3の大きさに応じて一又は複数の施工箇所Pに分けて、施工箇所P毎に、非火薬破砕剤による障害物破壊ステップ1(
図1、
図5、
図6参照)と、ケーシングチューブによる地中掘削ステップ2(
図7、
図8参照)と、ハンマーグラブによる地中打撃ステップ3(
図9参照)と、ハンマーグラブによる土砂排出ステップ4(
図9参照)と、ケーシングチューブによる障害物破壊ステップ5(
図8参照)と、ハンマーグラブによる障害物破壊ステップ6(
図9参照)と、ハンマーグラブによる障害物排出ステップ7(
図9参照)と、を繰り返す。
【0014】
この場合、一の施工箇所Pの場合は、地上E1から一の施工箇所Pに一度に上記ステップ1-7を実施する。複数の施工箇所Pの場合は、中央の施工箇所Pからその周囲の施工箇所Pに向けて順次又は一端の施工箇所Pから他端の施工箇所Pに向けて順次上記ステップ1-7を実施する。
【0015】
また、この場合、一の又は複数の施工箇所Pにおいて、地上E1から障害物E3までの掘削深度が深い場合は、上記ステップ2-4を繰り返す(
図8、
図9参照)。
【0016】
(非火薬破砕剤による障害物破壊ステップ1)
このステップ1では、
図1、
図5及び
図6に示すように、地上E1から地中E2を通して障害物E3に複数の孔E10を穿ち、各孔E10に防水加工した非火薬破砕剤Dを装填して非火薬破砕剤Dを起爆させることにより地中の障害物E3を先行して破壊する。
【0017】
このステップ1においては、
図1、
図2、
図4、
図5及び
図6に示すように、削孔機M1、非火薬破砕剤D及び発破器S、装薬用の防水袋A1、索状部材A3、棒状部材A4などを用いる。この場合、
図1に示すように、削孔機M1にクローラードリルを採用する(以下、クローラードリルM1という。)。クローラードリルM1は、クローラー式の台車M10上にオペレータキャビンM11と起伏旋回可能なブームM12とを備え、ブームM12の先端部にガイドM13を介して先端にビットM141を有するロッドM142及び駆動部M143からなる削孔ユニットM14が取り付けられたもので、ロッドM142を軸方向に振動させることによって、先端のビットM141で地山に孔を掘削するようになっている。また、この場合、非火薬破砕剤D、発破器Sに一般の市販品を採用する。
図2に示すように、非火薬破砕剤Dは細長いカートリッジ型のもので、一端に点火具D10を有し、点火具D10から脚線D1が延ばされる。なお、点火具D10は瞬発、段発の2種類がある。非火薬破砕剤Dはその点火によりガス圧力を発生する。
図6に示すように、発破器Sは非火薬破砕剤Dの点火具D10を点火するためのもので、この発破器Sに非火薬破砕剤Dの脚線D1が接続される。この発破器Sの操作により非火薬破砕剤Dを起爆する。
図2に示すように、装薬用の防水袋A1にはビニール袋(以下、防水袋A1をビニール袋A1という。)及びビニールテープA2を使用する。
図4に示すように、装薬用の索状部材A3にタコ糸などの紐(以下、索状部材A3をタコ糸A3という。)を、
図5に示すように、棒状部材A4に竹棒又はビニールパイプ(以下、棒状部材A4を竹棒A4という。)を使用する。
【0018】
そして、このステップ1を上記各機器、機材を用いて次のように実施する。すなわち、
図1、
図5に示すように、地上E1から地中E2を通して障害物E3に複数の孔E10を穿つ。この場合、地上E1でクローラードリルM1を施工箇所Pまで走行させ、ブームM12の先端に装着された削孔ユニットM14で施工箇所Pを地上E1から地中E2へ鉛直方向に削孔し、障害物E3に装薬用の孔E10を形成する。これを施工箇所Pで繰り返して施工箇所Pの障害物E3に複数の孔E10を一定の間隔で順次形成していく。また、この場合、各孔E10を、各孔E10に溜まる水(地下水)Wを考慮して、非火薬破砕剤Dの径よりも少し大きめの孔径にして形成し、孔E10と非火薬破砕剤Dとの間に所定の空間(隙間)を残すようにする。
【0019】
これと同時又はこれに先行して、非火薬破砕剤Dを障害物E3の施工箇所Pで使用する数だけ準備する。一般の市販品の非火薬破砕剤Dは高耐水処理がされていないため、まず、非火薬破砕剤Dを防水加工する。この場合、
図2に示すように、高耐水対策として、非火薬破砕剤Dの表面にグリスを塗布して、この非火薬破砕剤Dをビニール袋A1に入れ、脚線D1をビニール袋A1の外に取り出して、非火薬破砕剤Dをビニール袋A1で被覆する。そして、非火薬破砕剤Dにビニール袋A1の上からビニールテープA2を隙間なく2重に巻き付けて、止水する。また、一般的な非火薬破砕剤Dは脚線D1が通常3m程しかないため、地中の障害物E3が地中深度の深い位置にあって、通常の長さの脚線D1が届かない場合は、
図3に示すように、脚線D1を延長用脚線D11を用いて延長しておく。この場合、非火薬破砕剤Dの脚線D1、延長用脚線D11のプラス側、マイナス側の各接続端部から被覆を剥いで、各接続端部をねじり結線し、この被覆のない結線部分をそれぞれプラスチック製の筒の中にグリスなどの絶縁油剤を充填されてなる絶縁性チューブTに挿入することにより絶縁(漏電防止)して、この結線部分を引張っても外れないように軽く結んでおく(張力分散)。そして、この結線部分に各絶縁性チューブTとともにビニールテープA2を巻いて固定し絶縁する。このようにして使用する数の非火薬破砕剤Dにその脚線D1と延長用脚線D11との結線部分とともに防水加工を施す。
【0020】
続いて、各非火薬破砕剤Dに、地上E1から地中E2の各孔E10を通して障害物E3の各孔E10に吊り下ろすための準備をする。この準備では、
図4に示すように、必要な長さのタコ糸A3を非火薬破砕剤Dにビニール袋A1の上から巻き付けて、非火薬破砕剤Dから延ばす。この場合、タコ糸A3を非火薬破砕剤Dの上下2箇所でビニール袋A1の上から巻き結びにして固定し、この巻き結びの部分をビニールテープA2で固定する。そして、非火薬破砕剤Dの脚線D1及び延長用脚線D11とタコ糸A3が絡まないように、各脚線D1、D11とタコ糸A3とを所定の間隔でビニールテープA2で固定しておく。この場合、各脚線D1、D11に張力が発生しないように、各脚線D1、D11に余裕を持たせて固定することが望ましい。
【0021】
このような準備をしつつ、地上E1から地中E2、障害物E3の施工箇所Pに複数の孔E10を形成したら、地上E1の施工箇所PからクローラードリルM1を移動して、
図5に示すように、各孔E10に非火薬破砕剤Dを装填する。このとき、各孔E10には地下水が入り込み、水Wが溜まるため、非火薬破砕剤Dの各孔E10への装填は水中での挿入作業となる。この場合、まず、防水加工を施した非火薬破砕剤Dを、非火薬破砕剤Dに固定したタコ糸A3を使って、地上E1から地中E2へ水面まで吊り下ろす。続いて、竹棒A4を地上E1から地中E2の孔E10に差し込み、竹棒A4の先端を地中E2の水面上の非火薬破砕剤Dの上部まで降ろす。そして、この竹棒A4で非火薬破砕剤Dを水中へゆっくり押し込み、水Wと置換しながら、障害物E3の孔E10に向けて押下する。なお、この場合、孔E10(の内周)と非火薬破砕剤D(の外周)との間に余裕がないと非火薬破砕剤Dと水Wを置換できないが、既述のとおり、孔E10を、孔E10に溜まる水Wを考慮して、非火薬破砕剤Dの径よりも少し大きめの孔径にして形成しているため、非火薬破砕剤Dと水Wを置換しながら、非火薬破砕剤Dを水中に確実に挿入することができる。また、この場合、孔E10の深さが竹棒A4の長さに比して深い場合は、適宜、竹棒A4を継ぎ足して竹棒A4の全長を延ばしながら、竹棒A4を地中E2の孔E10へ水中を地中E2の孔E10から障害物E3の孔E10へ挿入して、竹棒A4で非火薬破砕剤Dを地中E2の孔E10を通して障害物E3の孔E10へ挿入する。このようにして非火薬破砕剤Dを障害物E3の孔E10の底まで挿入し、装薬する。なお、各非火薬破砕剤Dの点火具D10に接続された各脚線D1、D11は地上E1へ延ばされる。
【0022】
そして、非火薬破砕剤Dを装薬した孔E10にタンピングを行う。タンピング材として、7号砕石、ビリと呼ばれる砕石、タンパー(水を吸って膨張するタンピング材)、現地盤を削孔したときに出る砂などを使用する。このタンピングでは、タンピング材を装薬した孔E10内に、孔E10の底に装填した非火薬破砕材Dの上から地上E1の地上面まで充填する。これにより孔E10を塞ぐ。
【0023】
このように地中の障害物E3の施工箇所P(複数の孔E10)に複数の非火薬破砕剤Dを装薬し、タンピングを行った後、
図6に示すように、地上で、各脚線D1、D11を発破器Sに結線し、発破器Sの操作により各非火薬破砕剤Dを点火して起爆する。地中で、障害物E3の施工箇所Pに装填された各非火薬破砕剤Dからガス圧力が発生し、これが障害物E3の施工箇所Pに伝播して障害物E3の施工箇所P全体に亀裂が入り、細かく破砕されて破壊される。
【0024】
(ケーシングチューブによる地中掘削ステップ2)
このステップ2では、
図7、
図8に示すように、ケーシングチューブC(以下、ケーシングチューブCを単にケーシングCという。)を回転式又は揺動式により地上E1から地中E2に圧入し、地中E2の地盤を掘削する。
【0025】
このステップ2においては、ケーシングC、回転式のマシンM2、クレーンM3などを用いる。この場合、ケーシングCは鋼製のケーシングチューブで、先端(下端)に複数の掘削ビットが取り付けられる。地上E1から地中の障害物E3まで複数のケーシングCを継ぎ足して掘削する場合は、最初に建て込むケーシングCの先端(下端)に複数の掘削ビットが取り付けられる。回転式のマシンM2は、ケーシングCの外周を把持してケーシングCを回転させながら軸方向に押し下げて、ケーシングCを地中E2に押し込む形式の周知の装置である。クレーンM3もまた、一般に知られている形式のもので、回転式のマシンM2、ケーシングC、ハンマーグラブM3を吊り下げるための複数のワイヤ及びウィンチなどが搭載される。
【0026】
そして、このステップ2を上記各機器、機材を用いて次のように実施する。すなわち、
図7、
図8に示すように、地上E1においてケーシングCを地上E1の施工箇所Pに建て込み、地上E1から地中E2を掘削する。この場合、まず、クレーンM3で回転式のマシンM2を吊り上げてこのマシンM2を地上E1の施工箇所Pにセットする。施工箇所Pに回転式のマシンM2をセットした後、続いてクレーンM3でケーシングCを吊り上げ、このケーシングCを回転式のマシンM2の真上から降ろし、このマシンM2に把持連結する。ケーシングCをマシンM2に連結したら、このマシンM2によりケーシングCを回転させ、同時に鉛直方向に押し下げて、地上E1から地中E2を掘削する。このようにしてケーシングCが地中E2に入っていくことにより地中E2が掘削されて破壊される。
【0027】
(ハンマーグラブによる地中打撃ステップ3)
このステップ3では、
図9に示すように、クレーンM3によりハンマーグラブM4を吊り下げ、ハンマーグラブM4をケーシングC内に降下させ、ケーシングC内で、ケーシングチューブによる地中掘削ステップ2で掘削された地盤に打撃を加える。
【0028】
このステップ3においては、ハンマーグラブM4を用い、ハンマーグラブM4をクレーンM3に搭載する。ハンマーグラブM4は先端に開閉式の一対の爪を備え、自重による落下によって地盤に打ち込まれ、土砂をつかみ取る形式の掘削機械で、周知のものである。
【0029】
そして、このステップ3を上記機器を用いて次のように実施する。すなわち、
図9に示すように、地上E1でクレーンM3によりハンマーグラブM4を吊り上げ、ハンマーグラブM4を先端の爪が開いた状態でケーシングCの真上から自重によりケーシングC内に降下させ、このハンマーグラブM4の打撃により、ケーシングC内の、ケーシングCにより掘削破壊された地中E2の地盤をさらに破砕破壊する。つまり、前ステップ2で、ケーシングCにより地中E2を掘削しながらケーシングCが地中E2に入るが、ケーシングCにより掘削された地中E2の土砂はケーシングC内に残る。このステップ3では、ケーシングCの真上からハンマーグラブM4を先端の爪が開いた状態でケーシングC内に落下させることで、ハンマーグラブM4をケーシングC内に残る土砂に食い込ませて、土砂をさらに細かく破砕破壊する。このようにしてハンマーグラブM4がケーシングC内の地盤の土砂に打撃が加えられることによりケーシングC内の土砂が破砕されて破壊される。
【0030】
(ハンマーグラブによる土砂排出ステップ4)
このステップ4では、ケーシングC内に降下させたハンマーグラブM4でケーシングC内の土砂を排出する。
【0031】
このステップ4においては、続けてハンマーグラブM4を用いる。
【0032】
そして、このステップ4を上記機器を用いて次のように実施する。すなわち、ハンマーグラブによる地中打撃ステップ3でハンマーグラブM4により破砕破壊されたケーシングC内に残る地盤の土砂をこのハンマーグラブM4でつかみ取って排出する。つまり、前ステップ3で、地中E2のケーシングCの真上からハンマーグラブM4がケーシングC内に落下されて、ハンマーグラブM4が先端の爪が開いた状態でケーシングC内に残る地盤の土砂に食い込まれている。このステップ4では、ケーシングC内で土砂に食い込まれたハンマーグラブM4の先端の爪を閉じ、爪内部に破砕後の土砂を取り込む。そして、クレーンM3でハンマーグラブM4を吊り上げて、ケーシングC外の所定の排土位置に降ろし、先端の爪を開いて、土砂を排出する。このようにして地中E2の施工箇所E2で発生する土砂が容易かつ円滑に取り出される。
【0033】
(ケーシングチューブによる障害物破壊ステップ5)
このステップ5では、
図7、
図8に示すように、ケーシングCを回転式又は揺動式により地中E2から障害物E3に圧入し、非火薬破砕剤による障害物破壊ステップ1により破壊された障害物E3を破壊する。
【0034】
このステップ5においては、再びケーシングC、回転式のマシンM2、クレーンM3などを用いる。
【0035】
そして、このステップ5を上記各機器、機材を用いて次のように実施する。すなわち、
図8に示すように、地中のケーシングCで障害物E3を掘削して破壊する。この場合、再び、クレーンM3で次のケーシングCを吊り上げ、このケーシングCを回転式のマシンM2の真上から降ろし、先のケーシングCに継ぎ足す。次のケーシングCを先のケーシングCに継ぎ足したら、回転式のマシンM2により次のケーシングCを回転させ、同時に鉛直方向に押し下げて、地上E1から地中E2に通し、先のケーシングCで障害物E3を掘削する。このようにしてケーシングCが障害物E3に入っていくことにより障害物E3が掘削されて破壊される。
【0036】
(ハンマーグラブによる障害物破壊ステップ6)
このステップ6では、
図9に示すように、クレーンM3によりハンマーグラブM4を吊り下げ、ハンマーグラブM4をケーシングC内に降下させ、ケーシングC内で、非火薬破砕剤、ケーシングによる各障害物破壊ステップ1、5により破壊された障害物E3を破壊する。
【0037】
このステップ6においても、再びクレーンM3、ハンマーグラブM4を用いる。
【0038】
そして、このステップ6を上記機器を用いて次のように実施する。すなわち、
図9に示すように、地上E1でクレーンM3によりハンマーグラブM4を吊り上げ、ハンマーグラブM4を先端の爪が開いた状態でケーシングCの真上から自重によりケーシングC内に降下させ、このハンマーグラブM4の打撃により、ケーシングC内の、非火薬破砕剤、ケーシングチューブによる障害物破壊ステップ1、5により破壊された地中の障害物E3をさらに破砕破壊する。つまり、前ステップ5で、ケーシングCにより地中の障害物E3を掘削しながらケーシングCが障害物E3に入るが、ケーシングCにより掘削された障害物E3のガラがケーシングC内に残る。このステップ6では、ケーシングCの真上からハンマーグラブM4を先端の爪が開いた状態でケーシングC内に落下させることで、ハンマーグラブM4がケーシングC内に残るガラに食い込み、ガラをさらに細かく破砕破壊する。このようにしてハンマーグラブM4がケーシンCグ内のガラに打撃が加えられることによりケーシングC内のガラが破砕されて破壊される。
【0039】
(ハンマーグラブによる障害物排出ステップ7)
このステップ7では、ケーシングC内に降下させたハンマーグラブM4でケーシングC内のガラを排出する。
【0040】
このステップ7においては、続けてハンマーグラブM4を用いる。
【0041】
そして、このステップ7を上記機器を用いて次のように実施する。すなわち、ハンマーグラブによる障害物破壊ステップ6でハンマーグラブM4により破砕破壊されたケーシングC内に残る障害物のガラをこのハンマーグラブM4でつかみ取って排出する。つまり、前ステップ6で、ケーシングCの真上からハンマーグラブM4が障害物E3中のケーシングC内に落下されて、ハンマーグラブM4が先端の爪が開いた状態でケーシングC内に残る障害物E3のガラに食い込んでいる。このステップ7では、ケーシングC内でガラに食い込まれたハンマーグラブM4の先端の爪を閉じ、爪内部に破砕後のガラを取り込む。そして、クレーンM3でハンマーグラブM4を吊り上げて、ケーシングC外の所定のガラ排出位置に降ろし、先端の爪を開いて、ガラを排出する。このようにして施工箇所Pの障害物E3は3度の破壊ステップ1、5、6により細かく破砕され、この破砕後のガラはハンマーグラブM4により容易かつ円滑に撤去される。
【0042】
以上により、地中の障害物E3の一施工箇所Pで障害物E3の撤去を完了する。
【0043】
以上説明したように、本工法では、地上E1において、地上E1、地中E2、障害物E3を障害物E3の大きさに応じて一又は複数の施工箇所Pに分けて、施工箇所P毎に、非火薬破砕剤による障害物破壊ステップ1と、ケーシングチューブによる地中掘削ステップ2と、ハンマーグラブによる地中打撃ステップ3と、ハンマーグラブによる土砂排出ステップ4と、ケーシングチューブによる障害物破壊ステップ5と、ハンマーグラブによる障害物破壊ステップ6と、ハンマーグラブによる障害物排出ステップ7と、を繰り返すので、地中の障害物E3が大きなコンクリート構造物や硬質の岩盤などであっても、ケーシングCによる押し込みやハンマーグラブM4の降下で地中の障害物E3を容易かつ確実に破砕、破壊することができ、障害物E3を簡易に撤去することができる。
【0044】
また、一の又は複数の施工箇所Pにおいて、地上E1から障害物E3までの掘削深度が深い場合でも、上記ステップ2-4を繰り返すことで、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0045】
本工法ではまた、地中の障害物を非火薬破砕剤を用いて膨張圧で破壊するので、火薬類に比べて低振動の破砕を行うことができ、障害物に引張り力をかけるので、二次破砕を容易にすることができる。また、地中の障害物を非火薬破砕剤により先に破壊しておき、その後に地中の障害物をケーシング、ハンマーグラブにより破壊するので、障害物を効果的に破壊することができ、従来のようなモンケンによる障害物の破砕をなくし又は少なくして、モンケンで障害物を破砕するときの大きな振動騒音をなくす又は少なくすることができ、このメリットは特に大きい。さらに、この非火薬破砕剤に段発やデッキチャージを採用することで、振動や破砕効果をよくすることができ、このようにすることで、費用対効果を高くすることができる。
【符号の説明】
【0046】
E1 地上
E2 地中
E3 障害物
E10 孔
P 施工箇所
W 水(地下水)
M1 削孔機(クローラードリル)
M10 クローラー式の台車
M11 オペレータキャビン
M12 ブーム
M13 ガイド
M14 削孔ユニット
M141 ビット
M142 ロッド
M143 駆動部
M2 回転式のマシン
M3 クレーン
M4 ハンマーグラブ
D 非火薬破砕剤
D10 点火具
D1 脚線
D11 延長用脚線
T 絶縁性チューブ
S 発破器
C ケーシングチューブ(ケーシング)
A1 防水袋(ビニール袋)
A2 ビニールテープ
A3 索状部材(タコ糸などの紐)
A4 棒状部材(竹棒、ビニールホースなど)