(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126535
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】熱伝導性シートの製造方法及び熱伝導性シート
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20220823BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20220823BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20220823BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220823BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220823BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20220823BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220823BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20220823BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20220823BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
H01L23/36 D
H01L23/36 M
B29C35/02
C08L101/00
C08K3/20
C08K3/013
C08K3/38
C08L83/04
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024670
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 佑介
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 慶輔
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇磨
【テーマコード(参考)】
4F071
4F203
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5F136
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
【課題】安価な工程で、タック性を有する熱伝導性シートを得る。
【解決手段】実施形態の熱伝導性シートの製造方法は、薄板形状を有する磁性粉である第1フィラーと、薄板形状を有する熱伝導フィラーである第2フィラーと、熱伝導フィラーである第3フィラーと、をバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導性組成物を調製する工程と、熱伝導性組成物をシート状とする工程と、シート状の熱伝導性組成物に対し磁場を印可し、第1フィラーを熱伝導性組成物の厚さ方向に沿って配向させて、第2フィラーを厚さ方向に沿って配向させる工程と、熱伝導性組成物を硬化する工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板形状を有する磁性粉である第1フィラーと、薄板形状を有する熱伝導フィラーである第2フィラーと、熱伝導フィラーである第3フィラーと、をバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導性組成物を調製する工程と、
前記熱伝導性組成物をシート状とする工程と、
前記シート状の前記熱伝導性組成物に対し磁場を印可し、前記第1フィラーを前記熱伝導性組成物の厚さ方向に沿って配向させて、前記第2フィラーを前記厚さ方向に沿って配向させる工程と、
前記熱伝導性組成物を硬化する工程と、
を備えた熱伝導性シートの製造方法。
【請求項2】
前記第1フィラーと前記第2フィラーの粒径比率が3:1~1:3の範囲である、
請求項1記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項3】
前記第1フィラーと前記第2フィラーの体積比率が、3:1~1:3の範囲である、
請求項1又は請求項2記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項4】
前記第1フィラーが、鉄系合金である、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項5】
前記第1フィラーは、フェライトである、
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項6】
前記第2フィラーの熱伝導率は、10W/m・K以上である、
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項7】
前記第2フィラーは、BNフィラーである、
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項8】
前記第3フィラーの粒径は、0.2~5μmである、
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項9】
前記バインダ樹脂は、シリコーン樹脂である、
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項10】
前記熱伝導シート組成物中の前記第1フィラーの含有量が、5~30vol%である、
請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項11】
前記熱伝導シート組成物中の前記第2のフィラーの含有量が、5~30vol%である請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項12】
前記熱伝導シート組成物中の前記第3フィラーの含有量が、10~60vol%である請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の熱伝導性シートの製造方法。
【請求項13】
厚さ方向に沿って配向され、薄板形状を有する磁性粉である第1フィラーと、
前記第1フィラーに沿って配向された薄板形状を有する熱伝導フィラーである第2フィラーと、
熱伝導フィラーである第3フィラーと、
前記第1フィラー、前記第2フィラー及び前記第3フィラーを分散状態で支持するバインダ樹脂と、
を備えた熱伝導性シート。
【請求項14】
前記熱伝導性シートは、絶縁性である、
請求項13に記載の熱伝導性シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、熱伝導性シートの製造方法及び熱伝導性シートに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電子機器の更なる高性能化に伴って、半導体素子の高密度化、高実装化が進んでいる。これに伴って、電子機器を構成する電子部品から発熱する熱をさらに効率よく放熱することが重要になっている。
【0003】
半導体素子は、効率よく放熱させるために、熱伝導性シートを介して放熱ファン、放熱板等のヒートシンクに取り付けられている。熱伝導性シートとしては、シリコーンに無機フィラー等の充填材を分散含有させたものが広く使用されている。
【0004】
このような放熱部材においては、更なる熱伝導率の向上が要求されており、一般には、高熱伝導性を目的として、マトリックス内に配合されている無機フィラーの充填率を高めることにより対応している。
【0005】
しかし、無機フィラーの充填率を高めると、柔軟性が損なわれたり、粉落ちが発生したりするおそれがある。このため、無機フィラーの充填率を高めることには限界がある。
【0006】
無機フィラーとしては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、高熱伝導率を目的として、窒化ホウ素、黒鉛等の鱗片状粒子、炭素繊維等をマトリックス内に充填させることがある。これは、鱗片状粒子等の有する熱伝導率の異方性によるものである。
【0007】
例えば、炭素繊維の場合には、繊維方向に約600~1200W/mKの熱伝導率を有する。窒化ホウ素の場合には、面方向に約110W/mK、面方向に対して垂直な方向に約2W/mK程度の熱伝導率を有しており、異方性を有することが知られている。
このように炭素繊維、鱗片状粒子の面方向を熱の伝達方向であるシートの厚み方向と同じにする。即ち、炭素繊維、鱗片状粒子をシートの厚み方向に配向させることによって、熱伝導を飛躍的に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5405890号公報
【特許文献2】特開2009-94110号公報
【特許文献3】特許第6200119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、熱伝導性シートは、各種熱源と放熱部材との間の熱抵抗を下げるために、薄くて熱伝導率が高い熱伝導性シートが望まれており、熱伝導性シートには被着体に付着させる等ハンドリングの観点からタック性(粘着性)が要求される。
【0010】
しかしながら、上記従来の技術においては、熱伝導樹脂組成物の硬化物をスライスして熱伝導性シートを製造しており、スライスによって形成した熱伝導性シート表面にはタック性がないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、安価な工程で、タック性を有する熱伝導性シートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態の熱伝導性シートの製造方法は、薄板形状を有する磁性粉である第1フィラーと、薄板形状を有する熱伝導フィラーである第2フィラーと、熱伝導フィラーである第3フィラーと、をバインダ樹脂に分散させることにより熱伝導性組成物を調製する工程と、熱伝導性組成物をシート状とする工程と、シート状の熱伝導性組成物に対し磁場を印可し、第1フィラーを熱伝導性組成物の厚さ方向に沿って配向させて、第2フィラーを厚さ方向に沿って配向させる工程と、熱伝導性組成物を硬化する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
実施形態の熱伝導性シートの製造方法によれば、工程数が少なく安価にタック性を有する熱伝導性シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態の熱伝導性シートの製造フローチャートである。
【
図2】
図2は、熱伝導性組成物におけるフィラーの状態の概要説明図である。
【
図3】
図3は、シート状の熱伝導組成物におけるフィラーの状態の概要説明図(その1)である。
【
図4】
図4は、シート状の熱伝導組成物におけるフィラーの状態の概要説明図(その2)である。
【
図5】
図5は、実施例及び比較例の効果の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本技術が適用された熱伝導性シートの製造方法について、図面を参照しながら詳
細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術
の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図
面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な
寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互い
の寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
図1は、実施形態の熱伝導性シートの製造フローチャートである。
まず、薄板形状を有する磁性粉である第1フィラーF1と、薄板形状を有する熱伝導フィラーである第2フィラーF2と、熱伝導フィラーである第3フィラーF3と、をバインダ樹脂(高分子マトリックス成分)BDに分散させることにより熱伝導性組成物を調製する(ステップS11)。
【0016】
図2は、熱伝導性組成物におけるフィラーの状態の概要説明図である。
図2に示すように、熱伝導性組成物10は、バインダ樹脂BD内において、第1フィラーF1、第2フィラーF2及び第3フィラーF3が分散した状態となっている。
【0017】
この場合において、第1フィラーF1及び第2フィラーF2は、非配向状態であるので、様々な方向を向いた状態となっている。
図1においては、第1フィラーF1及び第2フィラーF2を側方から見た状態の粒子を棒状に示しており、第1フィラーF1及び第2フィラーF2を面方向から見た状態の粒子を板状に示している。
【0018】
ここで、薄板形状とは、鱗片状、扁平状、フレーク状等を意味するものであり、その厚さは、例えば、1μm以下の平板形状である。
また、第1フィラーF1としては、鱗片状磁性体粒子であり、フェライト(Fe系合金)、パーマロイ(Ni-Fe系合金)、センダスト(Al-Si-Fe系合金)等が挙げられる。
【0019】
この場合において、第1フィラーF1の熱伝導シート組成物中の含有量は、第2フィラーF2の配向を確実に行うために、5~30vol%とするのが好ましい。
また、第1フィラーとしてフェライトを用いた場合には、熱伝導性シートに絶縁性を付与することができる。
【0020】
また、第2フィラーF2としては、鱗片状窒化ホウ素(鱗片状BN)、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、膨張性黒鉛および膨張化黒鉛等の鱗片状粒子材料が挙げられる。
この場合において、第2フィラーF2の熱伝導率は、熱伝導性シートとして用いる場合に十分な熱伝導率を有する必要があるので、10W/m・K以上とするのが好ましい。
また、第2フィラーF2の熱伝導シート組成物中の含有量は、熱伝導性を十分とするため、5~30vol%とするのが好ましい。
【0021】
また、第3フィラーF3としては、酸化亜鉛粒子、アルミナ粒子、窒化アルミニウム粒子、炭化ケイ素粒子、窒化ケイ素粒子、酸化マグネシウム粒子、人造黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維等が挙げられる。
【0022】
この場合において、バインダ樹脂BD内で均一に分散して十分に熱を伝導するとともに、第1フィラーF1及び第2フィラーF2の配向を阻害しないように第3フィラーの粒径は、0.2~5μmとするのが好ましい。さらに同じ理由から第3フィラーの含有量が、10~60vol%であるのが好ましい。
【0023】
バインダ樹脂BDとしては、例えば、熱硬化性ポリマーが挙げられる。
熱硬化性ポリマーとしては、例えば、架橋ゴム、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、ポリイミドシリコーン、熱硬化型ポリフェニレンエーテル、熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
この場合において、架橋ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、塩素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレン、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ポリイソブチレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
また、これら熱硬化性ポリマーの中でも、成形加工性及び耐候性に優れるとともに、電子部品に対する密着性及び追従性の点から、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
シリコーン樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じてシリコーン樹脂の種類を適宜選択することができる。例えば、成形加工性、耐候性、密着性等を得る観点からは、シリコーン樹脂として、液状シリコーンゲルの主剤と、硬化剤とから構成されるシリコーン樹脂であることが好ましい。そのようなシリコーン樹脂としては、例えば、付加反応型液状シリコーン樹脂、過酸化物を加硫に用いる熱加硫型ミラブルタイプのシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0026】
これらのシリコーン樹脂の中でも、電子機器の放熱部材としては、電子部品の発熱面とヒートシンク面との密着性が要求されるため、付加反応型液状シリコーン樹脂が特に好ましい。この付加反応型液状シリコーン樹脂としては、例えば、ビニル基を有するポリオルガノシロキサンを主剤、Si-H基を有するポリオルガノシロキサンを硬化剤とした、2液性の付加反応型シリコーン樹脂等を用いることが好ましい。
【0027】
ここで、液状シリコーン成分は、主剤となるシリコーンA液成分と硬化剤が含まれるシリコーンB液成分を有し、シリコーンA液成分とシリコーンB液成分とが所定の割合で配合されている。
【0028】
次に熱伝導性組成物10をシート状とするに際して、バーコータ等のように熱伝導性組成物を狭いギャップ(隙間)を通過させる。これにより、薄板形状(鱗片状)の第1フィラーF1及び第2フィラーF2をシートの面方向に沿って配向させる(ステップS12)。
【0029】
図3は、シート状の熱伝導組成物におけるフィラーの状態の概要説明図(その1)である。
図3に示すように、熱伝導組成物10は、バインダ樹脂BD内において、第1フィラーF及び第2フィラーF2は、シートの面方向に沿って配向している。
【0030】
図4は、シート状の熱伝導組成物におけるフィラーの状態の概要説明図(その2)である。
続いて、シート状の熱伝導性組成物10に対し磁力線の向きが厚さ方向となるように磁場を印可し、
図4に示すように、第1フィラーF1を熱伝導性組成物の厚さ方向に沿って配向させて、第2フィラーF2を厚さ方向に沿って配向させる(ステップS13)。
これは、第1フィラーF1及び第2フィラーF2が積層された状態で配向しているため、磁性体粒子である第1フィラーF1が厚さ方向に配向するのに伴って、第2フィラーF2も物理的に厚さ方向に配向するためである。
【0031】
このため、第1フィラーF1の配向に伴って、第2フィラーF2の配向を行わせるために、物理的に第1フィラーF1の配向時の力を第2フィラーF2に確実に伝達するように、第1フィラーF1と第2フィラーF2の粒径比率は3:1~1:3の範囲とするのが好ましい。
【0032】
さらに、より確実に第1フィラーFの配向時の力を第2フィラーF2に確実に伝達するためには、第1フィラーF1の近傍に第2フィラーF2が位置している必要があるため、第1フィラーF1と第2フィラーF2のの体積比率は、3:1~1:3の範囲とするのが好ましい。
【0033】
ここで、磁場の印可方法としては、例えば、永久磁石や電磁石でシート状の熱伝導性組成物を挟むことにより行うが、これに限られるものではない。
次にシート状の熱伝導性組成物を加熱等により硬化して熱伝導性フィルム10Fとする(ステップS14)。
【0034】
この場合において、第1フィラーF1として軟磁性体を用いる場合には、磁場の印可をやめると、厚さ方向への配向が元に戻る虞があるので、磁場の印可状態でシート状の熱伝導性組成物を加熱等により硬化する。
【0035】
実施形態の熱伝導性シートの製造方法によれば、熱伝導樹脂組成物の硬化物をスライスして熱伝導性シートを製造する工程がないため、熱伝導性シートの表面にタック性を持たせることができる。
また製造工程数を低減できるので熱伝導性シートの製造コストも低減することができる。
【実施例0036】
次により具体的な実施例について説明する。
【0037】
[1]実施例
[1.1]第1実施例
[1.1.1]配合
第1実施例においては、以下の第1配合の樹脂及びフィラーを用いた。
(第1配合)
樹脂:シリコーン樹脂を35vol%配合。
第1フィラー:D50(ミディアム平均径)が70μmである鱗片状のセンダストを10vol%配合。
第2フィラー:D50が40μmである鱗片状の六方晶BNを10vol%配合
第3フィラー:D50が3μmである球状アルミナを35vol%配合
【0038】
[1.1.2]製造条件
まず上記第1配合の組成物をバーコータにより、厚さ1mmに塗布し、第1フィラー及び第2フィラーの面方向配向を行う(シート形成工程)。
続いて、永久磁石でシートを挟み磁場を印可し、第1フィラーを厚さ方向に配向し、この第1フィラーの厚さ方向の配向により、第2フィラーを厚さ方向に配向する(磁場印可工程)。
続いて、オーブンにおいて、60℃で4Hr保持し(硬化工程)、第1実施例の熱伝導シートを得た。
【0039】
[1.2]第2実施例
[1.2.1]配合
第2実施例においては、以下の第2配合の樹脂及びフィラーを用いた。
(第2配合)
樹脂:シリコーン樹脂を35vol%配合。
第1フィラー:D50(ミディアム平均径)が70μmである鱗片状のフェライトを10vol%配合。
第2フィラー:D50が40μmである鱗片状の六方晶BNを10vol%配合。
第3フィラー:D50が3μmである球状アルミナを35vol%配合。
【0040】
[1.2.2]製造条件
上記配合2の熱伝導性シート組成物をバーコーターにて1mmに塗布し、永久磁石でシートを挟み磁場配向後、オーブンにおいて60℃4Hr保持し(硬化工程)、第2実施例の熱伝導シートを得た。
【0041】
[2]比較例
次に比較例について説明する。
[2.1]第1比較例
[2.1.1]配合
第1実施例と同じ第1配合を用いた。
【0042】
[2.1.2]製造条件
まず、上記第1配合の組成物をバーコータにより、厚さ1mmに塗布した。
続いて、オーブンにおいて、60℃で4Hr保持し(硬化工程)、第1比較例の熱伝導シートを得た。
【0043】
[2.2]第2比較例
[2.2.1]配合
第1実施例と同じ第1配合を用いた。
【0044】
[2.1.2]製造条件
まず、上記第1配合の組成物をバーコータにより、厚さ1mmに塗布した。
続いて、オーブンにおいて、60℃で0.5Hr保持し、半硬化状態のグリーンシートを得た。
続いて、得られたグリーンシートを50枚積層し、60℃で4Hr保持して(硬化工程)、ブロック状の成形体を作製し、得られた成形体を積層方向とは垂直にスライスして第2比較例の熱伝導シートを得た。
【0045】
[3]実施例の効果
図5は、実施例及び比較例の説明図である。
[3.1]配向方向及びバルク熱伝導率
熱伝導性フィラーである第2フィラーの配向方向は、
図5に示すように、第1実施例、第2実施例及び第2比較例の熱伝導性シートのいずれも厚さ方向であり、半導体素子等の熱源から放熱フィン等の放熱部材に効率良く熱を伝えることができることが予測され、バルク熱伝導率も4.0[W/m・K]以上であり、実際に高熱伝導率であることがわかった。
【0046】
これらに対し、第1比較例の熱伝導性シートは、熱伝導性フィラーである第2フィラーの配向方向が面方向であり、バルク熱伝導率は、2.0[W/m・K]であり、熱伝導率が低く、実用的ではなかった。
【0047】
[3.2]プロセス数及びコスト
第1実実施例及び第2実施例のプロセス数は、
図5に示すように、それぞれ4であり、第1比較例のプロセス数は3であり、プロセス数が少ないので、製造コストは良好(○)であった。
【0048】
これに対し、第2比較例のプロセス数は、6であり、製造コストは高くなり不可(×)であった。
【0049】
[3.3]タック性
タック性に関しては、
図5に示すように、第1実施例、第2実施例及び第1実施例は、製造プロセスにおいてスライス工程を含んでいないので良好(○)であった。
【0050】
一方、ブロック状の成形体を作製し、得られた成形体をスライスして作成した第2比較例は従来例と同様に不可(×)であった。
【0051】
[3.4]絶縁性
絶縁性に関しては、
図5に示すように、絶縁性を有するフェライトを第1フィラーF1として用いている第2実施例においては、良好(○)であったが、フィラーとして絶縁性材料を用いていない第1実施例、第1比較例及び第2比較例は不可(×)であった。
【0052】
[3.5]まとめ
以上の説明のように、第1実施例及び第2実施例は、フィラーの材料に起因して絶縁性の有無の違いはあるものの、プロセス数、バルク熱伝導率、タック性及び製造コストの観点から好ましいものであった。
【0053】
一方、第1比較例は、バルク熱伝導率の観点から熱伝導シートとして好ましくなく、第2比較例は、タック性及び製造コストの観点から熱伝導シートとして好ましくなかった。