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特開2022-126562恒温装置及び圧電定数d33計測方法
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  • 特開-恒温装置及び圧電定数d33計測方法 図1
  • 特開-恒温装置及び圧電定数d33計測方法 図2
  • 特開-恒温装置及び圧電定数d33計測方法 図3
  • 特開-恒温装置及び圧電定数d33計測方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126562
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】恒温装置及び圧電定数d33計測方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 23/19 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
G05D23/19 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024722
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】517106327
【氏名又は名称】リードテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【弁理士】
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】早野 修二
(72)【発明者】
【氏名】桂 澄夫
【テーマコード(参考)】
5H323
【Fターム(参考)】
5H323AA29
5H323BB11
5H323CA02
5H323CB03
5H323CB25
5H323CB44
5H323DB11
(57)【要約】
【課題】設定温度を高温にすることができ、かつ、小型化が可能な恒温装置を提供する。
【解決手段】この恒温装置1は、吸熱部21を有する冷却機2と、ヒータ3と、吸熱部21とヒータ3の間に配置され吸熱部21側からヒータ3側に風を送るファン4と、吸熱部21、ファン4及びヒータ3が内部に配置され、該内部で温度特性が計測される物品Mを保持する計測器Aの保持部AHがヒータ3の近傍に差し込まれる断熱性の箱体5と、恒温コントローラ6と、を備え、物品Mの周囲の空間の温度を測定する温度センサ7が箱体5の内部に取り付けられており、温度センサ7の測定温度に基づいて恒温コントローラ6によりヒータ3が制御されることにより物品Mの周囲の空間の温度を設定温度に保つ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸熱部を有する冷却機と、
ヒータと、
前記吸熱部と前記ヒータの間に配置され該吸熱部側から該ヒータ側に風を送るファンと、
前記吸熱部、前記ファン及び前記ヒータが内部に配置され、該内部で温度特性が計測される物品を保持する計測器の保持部が前記ヒータの近傍に差し込まれる断熱性の箱体と、
恒温コントローラと、
を備え、
前記物品の周囲の空間の温度を測定する温度センサが前記箱体の前記内部又は前記計測器の前記保持部に取り付けられており、該温度センサの測定温度に基づいて前記恒温コントローラにより前記ヒータが制御されることにより前記物品の周囲の空間の温度を設定温度に保つことを特徴とする恒温装置。
【請求項2】
請求項1に記載の恒温装置において、
保たれる全ての前記設定温度において前記冷却機は常に稼働しており前記吸熱部は常に吸熱していることを特徴とする恒温装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の恒温装置を用いて前記物品が圧電体でその圧電定数d33を計測する圧電定数d33計測方法であって、
計測中は前記恒温コントローラにより前記ファンを停止することを特徴とする圧電定数d33計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
物品の温度特性の計測のためにその温度を設定温度に保つ恒温装置及びそれを用いた圧電定数d33計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の温度特性の計測のためには、一般的に、物品を収容する断熱性の箱体を有し、物品の周囲の温度を設定温度に保つことで物品を設定温度に保つようにする恒温装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、箱体の中に循環する空気の温度調整用流路を設け、その流路で冷却手段としての開閉制御のダンパーから低温度の空気を制御して取り入れ、それから加熱手段としてのヒータで加熱することにより空気の温度調整を行い、その空気を箱体内の物品の周囲の空間に流すことにより物品を設定温度に保つようにした恒温装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-214933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、空気を冷却手段と加熱手段が設けられた温度調整用流路で温度調整してから物品の周囲の空間に流すと、恒温装置は温度調整用流路の確保のために大型化せざるを得ない。また、温度調整用流路と物品の間の温度勾配を考慮すると、設定温度が高温(例えば、125℃~150℃)の場合、加熱手段の温度をそれよりもかなり高くしなければならないので、加熱手段自体の大型化及び耐熱対策のためのその近傍の大型化によって恒温装置は更に大型化せざるを得ない。
【0006】
一方、物品が電子部品などのように小さくて単品が計測される等の場合、物品の周囲のそれほど大きくない空間を設定温度に保てばよい場合も少なくない。
【0007】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、設定温度を高温にすることができ、かつ、小型化が可能な恒温装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の恒温装置は、吸熱部を有する冷却機と、ヒータと、前記吸熱部と前記ヒータの間に配置され該吸熱部側から該ヒータ側に風を送るファンと、前記吸熱部、前記ファン及び前記ヒータが内部に配置され、該内部で温度特性が計測される物品を保持する計測器の保持部が前記ヒータの近傍に差し込まれる断熱性の箱体と、恒温コントローラと、を備え、前記物品の周囲の空間の温度を測定する温度センサが前記箱体の前記内部又は前記計測器の前記保持部に取り付けられており、該温度センサの測定温度に基づいて前記恒温コントローラにより前記ヒータが制御されることにより前記物品の周囲の空間の温度を設定温度に保つことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の恒温装置は、請求項1に記載の恒温装置において、保たれる全ての前記設定温度において前記冷却機は常に稼働しており前記吸熱部は常に吸熱していることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の圧電定数d33計測方法は、請求項1又は2に記載の恒温装置を用いて前記物品が圧電体でその圧電定数d33を計測する圧電定数d33計測方法であって、計測中は前記恒温コントローラにより前記ファンを停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る恒温装置によれば、設定温度を高温にすることができ、かつ、小型化が可能となる。また、本発明に係る圧電定数d33計測方法によれば、本発明に係る恒温装置を用いて精度の良い圧電定数d33の計測が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る恒温装置を示す概略正面図である。
図2】同上の恒温装置を示す概略平面図である。
図3】同上の恒温装置に計測器の保持部を差し込んだ状態を示す概略正面図である。
図4】同上の恒温装置の温度を変化させたときの様子を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。本発明の実施形態に係る恒温装置1は、図1及び図2に示すように、冷却機2とヒータ3とファン4と箱体5と恒温コントローラ6を備える。また、恒温装置1は、温度センサ7が箱体5の内部に取り付けられている。なお、箱体5の内部を理解し易いように、図1においては箱体5の正面側(図1における手前側)、図2においては箱体5の上面側(図2における手前側)及び恒温コントローラ6は省略している。
【0014】
冷却機2は、吸熱部21を有し、吸熱部21の周囲の空気の熱を吸収して冷やすものである。吸熱部21は、図1等に例示するものでは、吸熱する本体である吸熱ヘッド21aと、それの側面に接触して効率良く周囲の空気の熱を吸収するため又は保護のための吸熱ヘッド周辺部材21bとから構成されている。
【0015】
冷却機2は、低温の設定温度が低くできるように冷却能力を高くできるものが好ましい。冷却機2は、例えば、スターリング方式の冷却機を用いることができる。
【0016】
冷却機2は、保たれる全ての設定温度において冷却機は常に稼働しており、吸熱部21は常に吸熱している状態である。すなわち、低温の設定温度においてはもちろん、高温の設定温度においても冷却機2は常に稼働しており、吸熱部21は常に吸熱している状態である。
【0017】
冷却機2は、冷却能力が一定(つまり、冷却のパワーが一定)で調整不可能なものであってもよいし、冷却能力が調整可能なものであってもよい。後者のようにすると、後述する物品Mの温度特性が計測される空間において、高温において後述するヒータ2の加温能力が冷却機2の冷却能力を超えるように容易にできる。
【0018】
ヒータ3は、通電により発熱量を調整できるものである。ヒータ3は、その種類が特に限定されるものではないが、各種の面状ヒータを用いることができる。また、ヒータ3は、後述する物品Mの温度特性が計測される空間を適正に加温できれば、その数が特に限定されるものではない。
【0019】
ファン4は、吸熱部21とヒータ3の間に配置され、吸熱部21側からヒータ3側に風を送るものである。
【0020】
箱体5は、断熱性のものである。また、箱体5は、吸熱部21、ファン4及びヒータ3が内部に配置される。吸熱部21以外の冷却機2の大部分は、箱体5の外側になるように配置される。箱体5は、通常は、直方体状のものであり、箱体5の長手方向がファン4の軸心方向(回転軸方向)となる。ファン4は、箱体5の内壁面との間に隙間ができるように配置される。
【0021】
また、箱体5は、図3に示すように、その内部で温度特性が計測される物品Mを保持する計測器Aの保持部AHがヒータ3の近傍に差し込まれる。物品Mは、ファン4による風が直接当たる位置に保持される。箱体5は、計測器Aの保持部AHが差し込まれるための差し込み孔部51を有している。ヒータ3の近傍の空間で、物品Mの温度特性が計測される。つまり、ヒータ3の近傍の空間が、物品Mの周囲の空間となる。なお、図3では、物品Mを上下で挟む形の計測器Aを用いており、計測器Aの下側部分を符号A、上側部分を符号A’、下側の保持部AHを符号AH、上側の保持部AHを符号AH’、下側の差し込み孔部51を符号51、上側の差し込み孔部51を符号51’で示している。計測器Aの形状によっては、それらの片方だけを有するようにもできる。
【0022】
恒温コントローラ6は、後述する温度センサ7の測定温度に基づいてヒータ3を制御する。恒温コントローラ6は、また、冷却機2やファン4のオンオフなどの制御も行うことができる。
【0023】
例えば、物品Mが圧電体でその圧電定数d33を計測する場合、計測器Aの下側部分と上側部分により物品Mを加圧して電荷を発生させる。この計測中にファン4の振動が計測器Aに伝わると、計測精度が低下し易くなる。そこで、計測中は、恒温コントローラ6によりファン4をオフする(停止する)ことが好ましい。そうすると、精度の良い圧電定数d33の計測が可能となる。また、その他、恒温装置1からの振動が計測器Aに伝わるのを低減するために、恒温装置1と計測器Aを別々の台に載せ、恒温装置1(詳細には、冷却機2)の下に防振ゴムを取り付けるのが好ましい。
【0024】
温度センサ7は、物品Mの周囲の温度を測定する。そのため、温度センサ7は、箱体5の内部に取り付けられているが、計測器Aの保持部AHに取り付けられていてもよい。
【0025】
恒温装置1は、温度センサ7の測定温度に基づいて恒温コントローラ6によりヒータ3が制御されることにより物品Mの周囲の空間の温度を設定温度に保つ。
【0026】
恒温装置1の箱体5の中では、ヒータ3により物品Mの周囲の空間の空気を加温する。一方、ファン4により、吸熱部21側からヒータ3側に風が送られるため、吸熱部21により冷やされた空気は、ファン4を通って物品Mの周囲の空間の空気まで到達してそれを冷やす。こうして、物品Mの周囲の空間の空気は、ヒータ3により加温されながら冷却機2により冷却されることになり、加温と冷却のバランスで温度が決まる。
【0027】
ここで、高温において、ヒータ3の熱は、緩和されながら、冷却機2の吸熱部21まで伝わる。冷却機2は、一般に、内部の冷媒の温度に上限が有るため、吸熱部21の温度にも上限が有る。例えば、スターリング方式の冷却機は、通常、冷媒としてヘリウムガスが用いられるが、温度上昇にともなうヘリウムガスの圧力の増加による冷却機2の破損などを防止するため、温度の上限(例えば、約35℃)が設けられる。そのため、恒温装置1では、ヒータ3側の熱が吸熱部21側に伝わるのをファン4により防御し、かつ、ヒータ3から吸熱部21までの距離を適度に取ることにより、吸熱部21(特に、吸熱ヘッド21a)では十分に温度が下がるようにしている。
【0028】
恒温装置1の実験について、以下述べる。
【0029】
箱体5は、その内部空間のサイズを高さ(図1における上下方向)が40mm、幅(図1における左右方向)が240mm、奥行き(図2における上下方向)が80mmとした。冷却機2は、吸熱ヘッド周辺部材21b以外はツインバード工業株式会社製のスターリング方式の冷却機SC-UD08を用い、吸熱ヘッド周辺部材21bは金属製の円柱管状のものを用いた。冷却機2の吸熱ヘッド21aの温度の上限は、35℃とした。ファン4は、風量が0.02~0.05m/minとし、吸熱ヘッド周辺部材21bの近くに設置した。ヒータ3は、70Wの能力のもの2本を差し込み孔部51を挟んで底面に設置した。温度センサ7は、熱電対を用いた。また、仮の計測器A、A’(及びその保持部AH、AH’)と物品Mを設置した。
【0030】
図4は、物品Mの周囲の空間の温度を初期の-50℃以下の状態から設定温度を-40℃にして10分間保つようにし、それから設定温度を-20℃にして10分間保つようにし、それから設定温度を0℃にして10分間保つようにし、それから設定温度を50℃にして10分間保つようにし、それから設定温度を100℃にして10分間保つようにし、それから設定温度を150℃にして10分間保つようにしたときの様子を示すものである。曲線aは、物品Mの周囲の空間の温度であり、曲線bは、吸熱ヘッド21aの温度である。
【0031】
図4の曲線aによると、大きなオーバーシュートがなく安定した温度変化が可能なことが分かる。また、曲線bによると、物品Mの周囲の空間の温度が150℃であっても、吸熱ヘッド21aの温度は、その上限の35℃よりも十分に低いことが分かる。
【0032】
また、物品Mの周囲の空間を各設定温度に保ったときの変動は、以下の表1の通りである。
【表1】
【0033】
表1によると、この実験装置では、-40℃~150℃の設定温度範囲が可能であり、各設定温度に保つときの変動幅を設定温度±2℃或いは設定温度±3℃とできることが分かる。
【0034】
以上、本発明の実施形態に係る恒温装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 恒温装置
2 冷却機
21 吸熱部
21a 吸熱ヘッド
21b 吸熱ヘッド周辺部材
3 ヒータ
4 ファン
5 箱体
51、51’ 差し込み孔部
6 恒温コントローラ
7 温度センサ
A、A’ 計測器
AH、AH’ 計測器の保持部
M 物品
S 物品の周囲の空間
図1
図2
図3
図4