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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126563
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ドローン
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/10 20060101AFI20220823BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220823BHJP
   B64D 27/24 20060101ALI20220823BHJP
   B64C 13/18 20060101ALI20220823BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220823BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20220823BHJP
【FI】
G05D1/10
B64C39/02
B64D27/24
B64C13/18 D
B64C27/08
G05D1/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024724
(22)【出願日】2021-02-18
(71)【出願人】
【識別番号】502211582
【氏名又は名称】株式会社先端力学シミュレーション研究所
(71)【出願人】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100127328
【弁理士】
【氏名又は名称】八木澤 史彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 康夫
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA06
5H301CC04
5H301CC07
5H301CC09
5H301CC10
5H301DD06
5H301GG08
5H301MM04
5H301MM05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】制御装置が故障しても継続的に飛行可能なドローンを提供すること。
【解決手段】ドローン1は、第一の通信装置と第一の制御駆動装置と第一の動力発生装置を含む第一の制御装置と、第二の通信装置と第二の制御駆動装置と第二の動力発生装置を含む第二の制御装置と、を有し、第一の故障診断装置が第一の制御装置の故障を検出したときには、第一の制御装置を停止し、第二の制御装置によって飛行する制御を行い、第二の故障診断装置が第二の制御装置の故障を検出したときには、第二の制御装置を停止して第一の制御装置によって飛行する制御を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部の操縦装置からの命令信号を受信して飛行可能なドローンであって、
第一の通信装置と第一の制御駆動装置と第一の動力発生装置を含む第一の制御装置と、
前記第一の制御装置の故障を診断する第一の故障診断装置と、
第二の通信装置と第二の制御駆動装置と第二の動力発生装置を含む第二の制御装置と、
前記第二の制御装置の故障を診断する第二の故障診断装置と、
前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したときには、前記第一の制御装置を停止し、前記第二の制御装置によって飛行する制御を行い、
前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したときには、前記第二の制御装置を停止して第一の制御装置によって飛行する制御を行う、ドローン。
【請求項2】
前記第一の制御駆動装置は、第一バッテリと第一モータ駆動装置(ESC)と第一リレー装置を備え、
前記第一の制御駆動装置は、少なくとも前記第一モータ駆動装置に前記第一リレー装置を介して電力を供給し、前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したときに前記第一リレー装置を介して少なくとも前記第一モータ駆動装置への電力供給を停止し、
前記第二の制御駆動装置は、第二バッテリと第二モータ駆動装置(ESC)と第二リレー装置を備え、
前記第二の制御駆動装置は、
少なくとも前記第二モータ駆動装置に前記第二リレー装置を介して電力を供給し、前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したときに前記第二リレー装置を介して少なくとも前記第二モータ駆動装置への電力供給を停止する、
請求項1に記載のドローン。
【請求項3】
前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したとき、または、前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したとき、前記操縦装置に故障を通知する通知手段を有する、請求項1に記載のドローン。
【請求項4】
前記操縦装置からの指令に基づいて、上昇・下降・ホバリング、前進・後退、右横移動・左横移動、上下軸(Z軸)回りに右回転・左回転させるための運動制御手段と、
目標運動をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で定義する目標運動設定手段と、
現在の運動状態をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で検出する現在状態検出手段と、を有し、
前記目標運動設定手段によって定義された前記目標運動と前記現在状態検出手段によって検出された前記現在の運動状態との偏差を求め、前記偏差を小さくするように補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段を有する、請求項1に記載のドローン。
【請求項5】
前記第一の動力発生装置及び前記第二の動力発生装置は、少なくとも4つのモータを備え、
前記4つのモータは、平面視において、前記4つのモータの回転軸を結ぶと長方形または正方形である矩形を構成するように配置され、
前記矩形の対角線上に配置されたそれぞれの前記モータをFR(前方右側のモータ)、FL(前方左側のモータ)、RR(後方右側のモータ)、RL(後方左側のモータ)とし、それぞれの回転速度をnFR,nFL,nRR,nRLとするとき、前記操縦装置から前記命令信号に基づいて、上昇時には、それぞれの前記モータの回転速度をnFR=nFL=nRR=nRLの関係を維持しながらより大きくするように駆動制御し、下降時には、前記操縦装置からの前記命令信号に基づいて、nFR=nFL=nRR=nRLの関係を維持しながら回転速度をより小さくするように駆動制御し、前進時にはnFR=nFL<nRR=nRLとなる関係を維持しながらnFRとnFLをより小さくして前進速度を大きくするように駆動制御し、後退時には、nFR=nFL>nRR=nRLとなる関係を維持しながらnFR=nFLをより大きくして後進速度を大きくするように駆動制御し、右横移動時には、nFR=nRR<nFL=nRLとなる関係を維持しながらnFLとnRLをより大きく小さくして右横移動速度を大きくするように駆動制御し、左横移動時には、nFR=nRR>nFL=nRLとなる関係を維持しながらnFLとnRLをより小さくして左横移動速度を大きくするように駆動制御し、上下方向の軸(Z軸)回りを右回転させるときには、nFR=nRL<nFL=nRRとなる関係を維持しながらnFLとnRRをより大きくして右回転速度を大きくするように駆動制御し、左回転させるときには、nFR=nRL>nFL=nRRとなる関係を維持しながらnFLとnRRをより小さくして左回転速度を大きくするように駆動制御する運動制御手段と、
前記操縦装置からの前記指令信号に基づいて目標ピッチ角と目標ロール角と上下方向(Z)軸回りの目標角速度を求める目標運動設定手段と、
前記制御駆動装置内に配置された位置センサ(6軸センサ、又は6軸センサとGNSS、又はGNSS)と、
前記位置センサからの出力値から求めた現在のピッチ角とロール角と上下方向(Z)軸回りの角速度を求める現在状態検出手段と、
前記目標運動設定手段と前記現在状態検出手段とのそれぞれのデータを比較して、それぞれの偏差を求め、これらの偏差を小さくするように、ピッチ角はnFRとnFLを、ロール角は、nFLとnRLで、回転角速度は、nFLとnRRを、それぞれ補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段と、
を有する、請求項1に記載のドローン。
【請求項6】
前記第一の動力発生装置及び前記第二の動力発生装置は、それぞれ、回転軸を同一線上に配置する2つのモータを1組とする少なくとも4組の前記モータを備え、
前記4組は、平面視において、前記4組のモータの回転軸を結ぶと長方形、正方形またはひし形である矩形を構成するように配置され、
前記1組における2つの前記モータは互いに逆方向に同一の回転速度で回転するように構成され、
前記第一の制御駆動装置及び前記第二の制御駆動装置は、前記ドローンを前記矩形の対角線方向に前進・後退、横移動させるように構成されている、
請求項1に記載のドローン。
【請求項7】
前記4組をF、R、r、sLとし、前記F及び前記Rを前記矩形の一方の対角線上に配置し、前記rとsLを前記矩形の他方の対角線上に配置し、それぞれの回転数をnF,nR,nr,nsLとすると、前記制御駆動装置は、前記操縦装置からの前記命令信号に基づき、前進時には、nF<nR、後退時には、nF>nR、右移動時には、nsL>nr、左移動時には、nsL<nrの関係となるように駆動制御するように構成されている、請求項6に記載のドローン。
【請求項8】
前記操縦装置からの前記指令信号に基づいて目標ピッチ角と目標ロール角と上下方向(Z)軸回りの目標角速度を求める目標運動設定手段と、
前記制御駆動装置内に配置される位置センサ(6軸センサ、又は6軸センサとGNSS、又はGNSS)と、
前記位置センサの出力値から求めた現在のピッチ角とロール角を求める現在状態検出手段と、
前記目標運動設定手段と前記現在状態検出手段とのそれぞれのデータを比較して、それぞれの偏差を求め、これらの偏差を小さくするように、ピッチ角はnFを、ロール角はnsLを、それぞれ補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段と、
を有する請求項7に記載のドローン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに接続されたプロペラの回転によって揚力を得て飛行するドローンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型無人飛行体(「ドローン」とも呼ばれる。)の利用が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-24488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドローンは、複数のモータの回転軸にそれぞれ接続されたプロペラの回転を制御することによって、安定した飛行を実現している。ドローンは、隣り合うプロペラの回転方向を反対方向にすることによって、プロペラの回転による反力を相殺している。このため、複数のモータのうち、1台のモータにでも不具合が生じると、安定した飛行が困難になる。そこで、ドローンを構成する装置の内、1つの装置が故障したときに故障部位を特定して、その部位を使わずに制御の自由度を下げる制御則へ切り替えて飛行させることで墜落を防ぐ場合がある。この制御側を実施するためには、まず、故障をいち早く検知することが必要であり、次に故障部位を特定する必要がある。故障の検知及び故障部位の特定に長時間を要すると、例えば4つのモータのうちの1つのモータ、あるいは1つのESC(Electric Speed Controller)が故障してモータがフル回転、又は急激に回転速度を低下させると、故障した時間から姿勢が大きく傾き、その結果、失速して墜落することになる。また、4つのモータの回転速度を制御することによって姿勢を安定化させているので、回転速度を指標としてモータの故障を特定することは難しい。一方、例えば、ドローンの自律制御装置に含まれる6軸センサのようなセンサの故障検出は、6軸センサを2個設け双方のセンサの出力を比較することで故障を診断する場合があるが、故障検出時には、どちらの信号が正しいのか分からない場合があり、信頼に値しないので制御に使えない。そこで、GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を主に使う制御則への切り替えなどを実施して飛行させる場合があるが、現在位置の測位精度が低く、4つのモータを使っての精密な姿勢制御は難しい。また、6軸センサは、積分による累積演算の誤差が大きいので、GNSSの信号を用いて適宜補正するのであるが、比較するためには、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向のそれぞれの変位が必要になる。前後方向の変位はX軸方向の加速度を複数回(例えば、2回)積分して、左右方向の変位はY軸方向の加速度を複数回(例えば、2回)積分して、上下方向の変位はZ軸方向の加速度を複数回(例えば、2回)積分して求めるので、その処理に時間を要する。そこで、故障しても継続的に制御可能なドローンが望まれている。
【0005】
本発明はかかる問題の解決を試みたものであり、ドローンの制御装置に故障が生じても継続的に飛行可能なドローンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の発明は、外部の操縦装置からの命令信号を受信して飛行可能なドローンであって、第一の通信装置と第一の制御駆動装置と第一の動力発生装置を含む第一の制御装置と、前記第一の制御装置の故障を診断する第一の故障診断装置と、第二の通信装置と第二の制御駆動装置と第二の動力発生装置を含む第二の制御装置と、前記第二の制御装置の故障を診断する第二の故障診断装置と、前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したときには、前記第一の制御装置を停止し、前記第二の制御装置によって飛行する制御を行い、前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したときには、前記第二の制御装置を停止して第一の制御装置によって飛行する制御を行う、ドローンである。
【0007】
第一の発明の構成によれば、1つの制御装置が故障しても継続的に飛行可能なドローンを提供することができる。
【0008】
第二の発明は、第一の発明の構成において、前記第一の制御駆動装置は、第一バッテリと第一モータ駆動装置(ESC)と第一リレー装置を備え、前記第一の制御駆動装置は、少なくとも前記第一モータ駆動装置に前記第一リレー装置を介して電力を供給し、前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したときに前記第一リレー装置を介して少なくとも前記第一モータ駆動装置への電力供給を停止し、前記第二の制御駆動装置は、第二バッテリと第二モータ駆動装置(ESC)と第二リレー装置を備え、前記第二の制御駆動装置は、少なくとも前記第二モータ駆動装置に前記第二リレー装置を介して電力を供給し、前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したときに前記第二リレー装置を介して少なくとも前記第二モータ駆動装置への電力供給を停止する、ドローンである。
【0009】
第二の発明の構成によれば、ドローンの1つの制御装置が故障したときに確実にモータの駆動を停止できる。例えば、第一の制御装置が故障したときに制御を停止しても、モータ駆動用のトランジスタが作動しつつ故障しているとモータがフル回転状態になり、第二の制御装置による飛行を妨害することになる。この点、第二の発明の構成によれば、リレー装置により確実に故障した第一の制御装置または第二の制御装置への電力供給を確実に遮断することができる。
【0010】
第三の発明は、第一の発明の構成において、前記第一の故障診断装置が前記第一の制御装置の故障を検出したとき、または、前記第二の故障診断装置が前記第二の制御装置の故障を検出したとき、前記操縦装置に故障を通知する通知手段を有する、ドローンである。
【0011】
第三の発明の構成によれば、ドローンの故障を操縦者に知らせることができる。本発明のドローンは、例えば、第一の制御装置が故障しても継続的に飛行が可能なので、操縦者が故障に気づかない場合がある。このときには、第二の制御装置で飛行することになるが、このときは従来のドローンと同じ飛行状態になる。この状態において、第一制御装置の故障を操縦者に認知させる効果がある。
【0012】
第四の発明は、第一の発明の構成において、前記操縦装置からの指令に基づいて、上昇・下降・ホバリング、前進・後退、右横移動・左横移動、上下軸(Z軸)回りに右回転・左回転させるための運動制御手段と、目標運動をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で定義する目標運動設定手段と、現在の運動状態をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で検出する現在状態検出手段と、を有し、前記目標運動設定手段によって定義された前記目標運動と前記現在状態検出手段によって検出された前記現在の運動状態との偏差を求め、前記偏差を小さくするように補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段を有する、ドローンである。
【0013】
第四の発明の構成によれば、基本的な飛行は、センサを使わないで手動で制御し、修正を必要とする外乱に対しては、目標値をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度の3つの変数で定義して、現在状態との偏差を求めてこの偏差を小さくする方向に制御信号を修正しているので、6軸センサの信号から計算で求める際に、従来は複数回の積分を要したが、1回の積分だけで済むので計算時間が短く、検出精度も高いので、制御の遅れが少なく安定した飛行が可能である。
【0014】
第五の発明は、第一の発明の構成において、前記第一の動力発生装置及び前記第二の動力発生装置は、少なくとも4つのモータを備え、前記4つのモータは、平面視において、前記4つのモータの回転軸を結ぶと長方形または正方形である矩形を構成するように配置され、前記矩形の対角線上に配置されたそれぞれの前記モータをFR(前方右側のモータ)、FL(前方左側のモータ)、RR(後方右側のモータ)、RL(後方左側のモータ)とし、それぞれの回転速度をnFR,nFL,nRR,nRLとするとき、前記操縦装置から前記命令信号に基づいて、上昇時には、それぞれの前記モータの回転速度をnFR=nFL=nRR=nRLの関係を維持しながらより大きくするように駆動制御し、下降時には、前記操縦装置からの前記命令信号に基づいて、nFR=nFL=nRR=nRLの関係を維持しながら回転速度をより小さくするように駆動制御し、前進時にはnFR=nFL<nRR=nRLとなる関係を維持しながらnFRとnFLをより小さくして前進速度を大きくするように駆動制御し、後退時には、nFR=nFL>nRR=nRLとなる関係を維持しながらnFR=nFLをより大きくして後進速度を大きくするように駆動制御し、右横移動時には、nFR=nRR<nFL=nRLとなる関係を維持しながらnFLとnRLをより大きく小さくして右横移動速度を大きくするように駆動制御し、左横移動時には、nFR=nRR>nFL=nRLとなる関係を維持しながらnFLとnRLをより小さくして左横移動速度を大きくするように駆動制御し、上下方向の軸(Z軸)回りを右回転させるときには、nFR=nRL<nFL=nRRとなる関係を維持しながらnFLとnRRをより大きくして右回転速度を大きくするように駆動制御し、左回転させるときには、nFR=nRL>nFL=nRRとなる関係を維持しながらnFLとnRRをより小さくして左回転速度を大きくするように駆動制御する運動制御手段と、前記操縦装置からの前記指令信号に基づいて目標ピッチ角と目標ロール角と上下方向(Z)軸回りの目標角速度を求める目標運動設定手段と、前記制御駆動装置内に配置された位置センサ(6軸センサ、又は6軸センサとGNSS、又はGNSS)と、前記位置センサからの出力値から求めた現在のピッチ角とロール角と上下方向(Z)軸回りの角速度を求める現在状態検出手段と、前記目標運動設定手段と前記現在状態検出手段とのそれぞれのデータを比較して、それぞれの偏差を求め、これらの偏差を小さくするように、ピッチ角はnFRとnFLを、ロール角は、nFLとnRLで、回転角速度は、nFLとnRRを、それぞれ補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段と、を有する、ドローンである。
【0015】
第五の発明の構成によれば、前進・後退時には2つのモータのnFRとnFLを調整、右・左横移動時には2つのモータのnFLとnRLを調整、上下方向の軸(Z軸)回りを右回転・左回転させるときには2のモータのnFLとnRRを調整するのみで、常に残りの2つのモータは手動で制御されているので、4つのモータを自動制御しているドローンと対比して、位置センサの異常や検出遅れがあっても安定した飛行が可能である。
【0016】
第六の発明は、第一の発明の構成において、前記第一の動力発生装置及び前記第二の動力発生装置は、それぞれ、回転軸を同一線上に配置する2つのモータを1組とする少なくとも4組の前記モータを備え、前記4組は、平面視において、前記4組のモータの回転軸を結ぶと長方形、正方形またはひし形である矩形を構成するように配置され、前記1組における2つの前記モータは互いに逆方向に同一の回転速度で回転するように構成され、前記第一の制御駆動装置及び前記第二の制御駆動装置は、前記ドローンを前記矩形の対角線方向に前進・後退、横移動させるように構成されている、ドローンである。
【0017】
第六の発明の構成によれば、2つのモータの対角線方向に前進・後退、左右の横移動を実施するから、従来の辺方向に移動するより、進行方向に対してモータ間の距離を長く確保でき、水平方向に自分で復帰するためのモーメントを大きくでき、安定性を向上させることができる。
【0018】
第七の発明は、第六の発明の構成において、前記4組をF、R、r、sLとし、前記F及び前記Rを前記矩形の一方の対角線上に配置し、前記rとsLを前記矩形の他方の対角線上に配置し、それぞれの回転数をnF,nR,nr,nsLとすると、前記制御駆動装置は、前記操縦装置からの前記命令信号に基づき、前進時には、nF<nR、後退時には、nF>nR、右移動時には、nsL>nr、左移動時には、nsL<nrの関係となるように駆動制御するように構成されている、ドローンである。
【0019】
第七の発明の構成によれば、1組のモータの回転速度を変えることによって、前進・後退、左右の横移動が可能となるので、複雑な計算が不要になり、簡単な制御で飛行可能なドローンを提供することできる。
【0020】
第八の発明は、第七の発明の構成において、前記操縦装置からの前記指令信号に基づいて目標ピッチ角と目標ロール角と上下方向(Z)軸回りの目標角速度を求める目標運動設定手段と、前記制御駆動装置内に配置される位置センサ(6軸センサ、又は6軸センサとGNSS、又はGNSS)と、前記位置センサの出力値から求めた現在のピッチ角とロール角を求める現在状態検出手段と、前記目標運動設定手段と前記現在状態検出手段とのそれぞれのデータを比較して、それぞれの偏差を求め、これらの偏差を小さくするように、ピッチ角はnFを、ロール角はnsLを、それぞれ補正した信号を加減して修正制御する修正制御手段と、を有する請求項7に記載のドローンである。
【0021】
第八の発明の構成によれば、突風などの外乱にもモータ駆動信号を自動的に修正して対応できる。しかも、1組のモータの回転速度を変えて修正できるので、応答性の良い安定な飛行が可能になる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、1つの制御装置が故障しても継続的に飛行可能なドローンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第一の実施形態に係るドローンを示す概略斜視図である。
図2】モータ及びプロペラを示す概略側面図である。
図3】ドローンを上方から見た概略平面図である。
図4】ドローンの機能ブロック(第一の制御装置)を示す概念図である。
図5】ドローンの機能ブロック(第二の制御装置)を示す概念図である。
図6】ドローンの動作を示す概略フローチャートである。
図7】ドローンの信頼性を説明するための概念図である。
図8】ドローンの制御を示す図である。
図9】本発明の第二の実施形態に係るドローンを示す概略斜視図である。
図10】本発明の第二の実施形態に係るドローンを上方から見た概略平面図である。
図11】ドローンの制御を示す図である。
図12】修正制御の理論的根拠を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以下の説明においては、同様の構成には同じ符号を付し、その説明を省略又は簡略する。なお、当業者が適宜実施できる構成については説明を省略し、本発明の基本的な構成についてのみ説明する。
【0025】
<第一の実施形態>
図1乃至図8を参照して、第一の実施形態に係る示すドローン1を説明する。ドローン1は、外部の操縦装置(「プロポ」とも呼ばれる。)からの命令信号を受信して飛行可能なドローンである。操縦装置は、図示を省略する。
【0026】
<<ドローン1の構成>>
図1に示すように、ドローン1は、筐体10を有し、筐体10に4本のアーム12、及び、4本の着陸用の脚40が接続されている。各アーム12の筐体10と反対側の端部には、それぞれ、モータ組20、22、24及び26が接続されている。アーム12は、内側が空間となっているチューブ状の部材であって、その内側の空間にモータ組20等を構成する各モータへの電力供給や制御を行うためのケーブルが配置される。
【0027】
モータ組20は、一組のモータ20a及び20b、プロペラ20ap及びプロペラ20bpで構成される。図2に示すように、モータ20aの回転軸とモータ20bの回転軸は同一直線上に配置されている。モータ20aの回転軸は上方に突出し、その回転軸の上端部にプロペラ20apが接続される。モータ20bの回転軸は下方に突出し、回転軸の下端部にプロペラ20bpが接続される。本実施形態において、モータ20aを上方のモータとも呼び、モータ20bを下方のモータとも呼ぶ。モータ20a及び20bは、アウターローター式のブラシレスDC(Direct current)モータである。モータ組22、24及び26の構成は、モータ組20と同様である。
【0028】
図1に示すように、モータ組20において、モータ20a及び20bは、同一回転速度nFR(図3参照)において、時計回りの方向C1に回転する。モータ組22、24及び26においても、上方のモータと下方のモータは、同一の回転速度、かつ、同一方向に回転する。上方のモータ群、すなわち、モータ20a,22a,24a及び26aが第一の動力発生装置106Aを構成する(図4参照)。下方のモータ群、すなわち、モータ20b,22b,24b及び26bが第二の動力発生装置106Bを構成する(図5参照)。
【0029】
第一の動力発生装置106Aを構成する上方のモータ20a,22a,24a及び26aに着目すると、隣り合うモータは反対方向に回転する。具体的には、図1に示すように、モータ20aは時計回りの方向C1に回転し、モータ22aは反時計回りの方向C2に回転し、モータ24aは方向C2に回転し、モータ26aは方向C1に回転する。このため、モータ20a,22a,24a及び26aにおいて、隣接するモータ同士の反力は相殺される。例えば、モータ20a等が同一の回転速度で回転する場合には、モータ20a,22a,24a及び26aが全体として回転による反力は相殺され、ドローン1がZ軸を中心に回転する力は作用しない。このことは、第二の動力発生装置106Bを構成する下方のモータ20b,22b,24b及び26bについても同様である。
【0030】
また、図1に示すように、筐体10には、外部の操縦装置と通信するための通信アンテナ30A及び30B、GNSS(Global Navigation Satellite System)を構成する測位用衛星からの測位用電波を受信する測位用アンテナ32A及び32B、及び、外部の障害物を赤外線の反射によって検出するための赤外線検知装置34A及び34Bが接続されている。ドローン1は、通信アンテナ30A及び30Bによって、操縦装置からの命令信号を受信する。図4及び5に示すように、通信アンテナ30A及び30B,測位用アンテナ32A及び32B、赤外線検知装置34A及び34Bから出力された信号は、それぞれ、信号処理装置110A及び110Bによって処理される。
【0031】
図4に示すように、通信アンテナ30A、測位アンテナ32A,赤外線検知装置34A及び信号処理装置110Aによって、第一の通信装置102Aを構成する。同様に、図5に示すように、通信アンテナ30B、測位アンテナ32B,赤外線検知装置34B及び信号処理装置110Bによって、第二の通信装置102Bを構成する。
【0032】
また、図4に示すように、筐体10には、コンピュータ112A、6軸センサ114A、第一バッテリとしてのバッテリ118A、第一モータ駆動装置としてのESC120a,122a,124a及び126a、及び、第一リレー装置としてのリレー装置116Aが格納され、第一の制御駆動装置104Aを構成する。なお、図1においては、第一の制御駆動装置104Aのうち、バッテリ118Aのみを示し、他の構成は省略している。同様に、図5に示すように、筐体10には、コンピュータ112B、6軸センサ114B、第二バッテリとしてのバッテリ118B、第二モータ駆動装置としてのESC120b,122b,124b及び126b、及び、第二リレー装置としてのリレー装置116Bが格納され、第二の制御駆動装置104Bを構成する。なお、図1においては、第二の制御駆動装置104Bのうち、バッテリ118Bのみを示し、他の構成は省略している。
【0033】
図4に示すように、第一の通信装置102A、第一の制御駆動装置104A及び第一の動力発生装置106Aによって、第一の制御装置100Aが構成される。同様に、図5に示すように、第二の通信装置102B、第二の制御駆動装置104B及び第二の動力発生装置106Bによって、第二の制御装置100Bが構成される。このように、ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bの2系統の制御装置を有する。
【0034】
第一の制御駆動装置104Aに含まれる6軸センサ114A、及び、第二の制御駆動装置104Bに含まれる6軸センサ114Bは、X、Y、Z軸方向(図3参照)のそれぞれの加速度とX、Y、Z軸回りの角速度を検出する。
【0035】
コンピュータ112A及び112Bは、入力信号を演算して出力する。また、コンピュータ112Aは、第一の制御装置100Aの故障を診断するためのプログラムとCPU(Central Process Unit)の故障を検出するウォッチドッグタイマー回路を含み、第一の故障診断装置として機能する。同様に、コンピュータ112Bは、第二の制御装置100Bの故障を診断するためのプログラムとCPUの故障を検出するウォッチドッグタイマー回路を含み、第二の故障診断装置として機能する。
【0036】
バッテリ118Aは第一の制御装置100Aに電力を供給し、バッテリ118Bは第二の制御装置100Bに電力を供給する。
【0037】
リレー装置116Aは、第一の制御駆動装置104Aを構成するコンピュータ112Aからの指令信号によって、バッテリ118Aからの電力供給を実施、または、電力供給を遮断する。具体的には、コンピュータ112Aは、電力供給装置を有し、上述のウォッチドッグタイマー回路、または故障診断プログラムによって故障を検出した場合には、リレー装置116Aによって、少なくともESC120a等への電力供給を遮断する。また、コンピュータ112Aは、上述のウォッチドッグタイマー回路、または故障診断によって故障を検出しない場合には、リレー装置116Aを介して、少なくともESC120a等への電力供給を継続する。
【0038】
リレー装置116Bは、第二の制御駆動装置104Bを構成するコンピュータ112Bからの指令信号によって、バッテリ118Bからの電力供給を実施、または、電力供給を遮断する。具体的には、コンピュータ112Bは、電力供給装置を有し、上述のウォッチドッグタイマー回路、または故障診断プログラムによって故障を検出した場合には、リレー装置116Bによって、少なくともESC120b等への電力供給を遮断する。また、コンピュータ112Bは、上述のウォッチドッグタイマー回路、または故障診断プログラムによって故障を検出しない場合には、リレー装置116Bを介して、少なくともESC120b等への電力供給を継続する。
【0039】
<<ドローン1の動作>>
次に、図6等を参照して、ドローン1の動作を説明する。図6は、コンピュータ112A及び112Bの動作を示すフローチャートである。コンピュータ112A及び112Bの動作は同様なのでコンピュータ112Aの動作を説明し、コンピュータ112Bの動作の説明は省略する。
【0040】
ドローン1の電源スイッチをONに切り替えると、ON信号により開始ステップST1のスタート処理がなされる。ステップST1ではイニシャルデータの読み込みなどのコンピュータ初期設定が行われる。次にステップST2では、第一の通信装置102Aからの入力、つまり操縦装置からの操作信号や、GNSSを利用して算出されたドローン1の現在位置など基本情報が入力される。ステップST3では、第1の制御駆動装置104A内の6軸センサ114Aからの6つの出力、つまりドローン1のX軸方向の加速度、Y軸方向の加速度、Z軸方向の加速度、およびX軸回りの角速度、Y軸回りの角速度、Z軸回りの角速度が入力される。
【0041】
ステップST4では、第1の制御装置100Aのコンピュータ112Aが故障診断装置として機能し、故障診断を実施する。第一の通信装置102Aへの入力信号の遮断や異常、6軸センサ114Aからの入力信号の異常や故障、コンピュータ112Aの停止や暴走、ESC120a,122a,124a及び126aのON故障あるいはOFF故障、あるいは、モータ20a,22a,24a,または26aのロック故障や巻線の断線、あるいは、レアショートなどの故障を診断する。コンピュータ112Aが、故障が存在すると診断した場合には、リレー装置116AをOFFにして電力供給を遮断する。これによりコンピュータ112Aの暴走やESC120a等のON故障による1つのモータ20a等のフル回転を防止する。なお、故障診断後の制御については後述する。
【0042】
コンピュータ112Aは、CPU(Central Process Unit)の故障を検出して異常であれば、リレー装置116AにOFF信号を出力するウォッチドッグタイマー回路を備えている。ウォッチドッグタイマー回路からOFF信号が出力される、または、コンピュータ112AのCPUが故障と診断してOFF信号が出力されると、リレー装置116Aはバッテリ118Aからの電力を遮断して4つのモータ20a等を全て停止させるが、第2の制御装置100Bは作動しているので飛行可能である。
【0043】
ただし、ドローン1が第二の制御装置100Bのみによって飛行を継続する場合、第二の制御装置100Bが故障すると墜落する危険性がある。この点、コンピュータ112A及び112Bは、それぞれ、通知プログラムを含み、故障を検出した場合には、故障を示す故障信号を操縦装置に送信するように構成されている。すなわち、コンピュータ112A及び112Bは、通知手段として機能する。第一の制御装置100Aへの電力が遮断された場合には、第二の制御装置100Bが当該遮断を検知し、第二の通信装置102Bを構成する信号処理装置110B及び通信アンテナ30Bを介して、故障信号を操縦装置に送信し、故障を通知する。同様に、第二の制御装置100Bへの電力が遮断された場合には、第一の制御装置100Aが当該遮断を検知し、第一の通信装置102Aを構成する信号処理装置110A及び通信アンテナ30Aを介して、故障信号を操縦装置に送信し、故障を通知する。操縦装置は、故障信号を受信すると、例えば、赤色ランプの点灯、もしくはオレンジ色ランプの点滅によって、操縦者がドローン1の故障を認識可能な状態とする。
【0044】
図7は、本実施形態によるドローン1と従来のドローンの信頼度の比較を示す。通信装置と制御駆動装置と動力発生装置の信頼度をそれぞれ0.999としたときに、従来のドローン全体の信頼度は、0.997である。一方、本実施形態による構成によれば、全体の信頼度は、0.99999であり、理論的にも大幅に向上できていることが確認できた。
【0045】
ドローン1は、ステップST4において、故障が存在しないと判断した場合、ステップST5において、主制御の信号を生成する。そして、ステップST6で、補正制御の信号を生成(演算)し,ステップST5で生成した主信号に加算した信号を生成する。そして、この加算した信号をステップST7でESC120a等へ出力する。ESC120a等は、この主制御信号と補正制御信号に基づいてモータ20a等を駆動して回転速度を制御する。
【0046】
主制御は、操縦装置からの指令信号に基づいてモータ20a、22a、24a、26aへの信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*を生成する。信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*は、モータ20a等の回転速度を制御するための信号であり、「目標回転速度信号」とも呼ぶ。補正制御は、主制御信号を補正して制御するための補正信号を生成し主制御信号に加算する制御である。補正信号は、操縦装置からの指令信号により生成した目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*から目標姿勢角度と目標角速度を求め、6軸センサ114Aからの信号によりドローン1の機体の現在の姿勢角度と角速度を計算により求め、両データの差を小さくするための信号を生成する。目標姿勢角度は2軸(X軸、Y軸)回りの姿勢角度(ロール角、ピッチ角)であり、目標角速度はZ軸回りのヨー角速度である。
【0047】
次にステップST5~ST7について説明する。ステップST5について、図3及び図8を参照して説明する。図8の実線は主制御、点線は補正制御である。まず、実線の主制御について説明する。
【0048】
コンピュータ112Aは、運動制御プログラム、目標運動設定プログラム、現在状態検出プログラム、及び、修正制御プログラムを含み、運動制御手段、目標運動設定手段、現在状態検出手段、及び、修正制御手段として機能する。
【0049】
運動制御プログラムは、操縦装置からの指令に基づいて、ドローン1を上昇・下降・ホバリング、前進・後退、右横移動・左横移動、上下軸(Z軸)回りに右回転・左回転させるためのプログラムである。目標運動設定プログラムは、目標運動をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で定義するためのプログラムである。現在状態検出プログラムは、現在の運動状態をピッチ角とロール角と上下軸(Z軸)回りの角速度で検出するためのプログラムである。修正制御プログラムは、目標運動設定プログラムによって定義された目標運動と現在状態検出プログラムによって検出された現在の運動状態との偏差を求め、その偏差を小さくするように補正した信号を加減して修正制御するためのプログラムである。ドローン1は、これらのプログラムによって、以下の主制御及び補正制御を実施する。
【0050】
ドローン1は、操縦装置から、上昇指令を受信すると、第1の動力発生装置106Aを構成するモータ20a等について、目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*をnFR*=nFL*=nRR*=nRL*の関係を保って全体の目標回転速度を大きくする。これによりドローン1の機体は上昇する。
【0051】
上昇指令のときの目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*から計算した目標ピッチ角、目標ロール角、Z軸回りの目標角速度は全て0あり、位置センサS1(6軸センサ114AとGNSSによる測位)からの情報をS2で演算処理し、その演算処理によって求めた現在のピッチ角、現在のロール角、現在のZ軸回りの角速度は、全て0である場合には、第1の動力発生装置106Aを構成するモータ20a等の目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*は,そのまま、ESC120a等に入力される。これらの入力信号は、それぞれのESC120a等内部の加え合せ点S3,S4,S5及びS6に入力される。モータ20a等は、3相ブラシレスモータであり、それぞれのモータに角度センサ(ホール素子又はレゾルバ)が設けられ実際の回転角θが検出される。
【0052】
この回転角θはベクトル制御装置に入力され、回転角に応じて3相の巻線を順次通電しモータを回転制御する。また回転角θは、微分回路にて微分(dθ/dt)され求めた回転速度信号が、加え合せ点S3乃至S6にフィードバックされ、その偏差に基づいてモータはPID(Proportional-Integral-Differential)駆動される。その結果、目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*と実際のモータ回転速度nFR、nFL、nRR、nRLは等しくなるように制御される。このようにして、操縦装置からの指令に基づいて、コンピュータ112Aで生成された目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*でモータが駆動制御される。なお、本実施形態では、目標信号にモータ回転速度を用いているが、モータ電流を用いてもよい。その場合には、加え合せ点S3、S4、S5、S6へのフィードバック信号は、ベクトル制御で用いられるモータ電流信号になる。
【0053】
操縦者の意図する高さになって、ドローン1が上昇中止の指令信号を受信すると、目標回転速度信号は、nFR*=nFL*=nRR*=nRL*の状態を維持する。これがホバリングである。
【0054】
ドローン1は、操縦装置から下降の指令信号を受信すると、nFR*=nFL*=nRR*=nRL*として全体の値を小さくする。これにより、揚力が小さくなり機体が下降する。
【0055】
ドローン1は、所定の高さでホバリングしているときに、所定の制御によって、Z軸(上下方向軸)を中心に左回転する。これは、nFR*=nRL*>nFL*=nRR*という関係で目標回転速度信号を生成することにより達成される。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nFR=nRL>nFL=nRRという関係で駆動制御される。このときに、nFR、nRLで回転するモータ20a及び26aには、それぞれ、FRL、RLLという左回転させる方向の反力が作用し、nFL、nRRで回転するモータ22a、24aには、それぞれ、FLR、RRRという右回転させる方向の反力が作用する。それぞれ、FRL+RLL>FLR+RRRの関係が成り立つときに左回転のモーメントMZが発生して回転する。結局、nFR+nRL>nFL+nRRの関係が成り立てばよい。
【0056】
ドローン1が左回転中に、操縦装置から回転中止の指令信号を受信すると、目標回転速度信号をnFR*=nFL*=nRR*=nRL*のように生成し、ホバリング状態を維持するようにそれぞれのモータは駆動制御される。
【0057】
操縦装置から、Z軸(上下方向軸)を中心に右回転する指令信号を受信すると、nFR*=nRL*<nFL*=nRR*という関係で目標回転速度信号を生成して、それぞれのモータ20a等を駆動制御する。
【0058】
ドローン1が所定の高さでホバリングしているときに、操縦装置から前進の指令信号を受信すると、nFR*=nFL*<nRR*=nRL*という関係の目標回転速度信号を生成する。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nFR=nFL<nRR=nRLという関係でそれぞれのモータが駆動制御される。このときにドローン1の機体は、nFR=nFL<nRR=nRLの関係より、揚力差が機体の前後で発生し前傾姿勢になる、つまりY軸回りの反時計方向にピッチ角が発生する。このピッチ角が揚力に前進方向の分力を発生させることにより前進する。
【0059】
ドローン1が、操縦装置から前進中止の指令信号を受信すると、目標回転速度信号をnFR*=nFL*=nRR*=nRL*のように生成し、ホバリング状態を維持するようにそれぞれのモータは駆動制御される。
【0060】
ドローン1が、操縦装置から後退の指令信号を受信すると、nFR*=nFL*>nRR*=nRL*という関係で目標回転速度信号を生成する。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nFR=nFL>nRR=nRLという関係でそれぞれのモータが駆動制御される。このときにドローン1の機体は、nFR=nFL>nRR=nRLの関係より、揚力差が機体の前後で発生し後傾姿勢になる、つまりY軸回りの時計方向にピッチ角が発生する。このピッチ角が揚力に後進方向の分力を発生させることにより後進する。
【0061】
ドローン1が所定の高さでホバリングしているときに、操縦装置から左横移動の命令信号を受信すると、nFL*=nRL*<nFR*=nRR*という関係の目標回転速度信号を生成する。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nFL=nRL<nFR=nRRという関係でそれぞれのモータが駆動制御される。ドローン1の機体は、nFL=nRL<nFR=nRRの関係より、揚力差が機体の左右で発生し左下がりの傾斜姿勢になる、つまりX軸回りの時計方向にロール角が発生する。このロール角が揚力に左横移動方向の分力を発生させることにより左横移動する。
【0062】
これに対して、ドローン1が操縦装置から右横移動の命令信号を受信すると、nFL*=nRL*>nFR*=nRR*という関係の目標回転速度信号を生成する。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nFL=nRL>nFR=nRRという関係でそれぞれのモータが駆動制御される。ドローン1の機体は、nFL=nRL>nFR=nRRの関係より、揚力差が機体の左右で発生し右下がりの傾斜姿勢になる、つまりX軸回りの反時計方向にロール角が発生する。このロール角が揚力に右横移動方向の分力を発生させることにより右横移動する。
【0063】
上述のように、ドローン1は、操縦装置からの命令指令に基づいて、基本運動は主制御により、機体を上昇・下降・ホバリング、前進・後退、右横移動・左横移動させることができる。このときの目標回転速度信号は、操縦装置から受信するから、ドローン1において、時間のかかる複雑な計算や誤差の大きい積分演算を実施する必要が無い。このため、ドローン1は、応答性良く操縦者の意図に反応して飛行することができる。
【0064】
次に、ステップST6について図3及び図8を参照して説明する。ステップST6では、補正制御の信号を生成(演算)して主信号に加算する。
【0065】
操縦装置から受信する命令信号だけでは、ドローン1の制御が難しいような場面、例えば、飛行中に予期せぬ突風や不測の事態に陥ったときには、図8の点線で示される補正制御が行われる。
【0066】
ドローン1が進行方向に対して正面から突風を受けて、ピッチ角が突然大きくなると、目標ピッチ角と現在のピッチ角との間に差、つまり偏差が生じる。S9(図8参照)では、目標回転速度信号nFR*とnRL*から目標ピッチ角を求める。そして加え合せ点S10で、この目標ピッチ角と、位置センサS1から出力されるY軸回りのピッチ角速度信号を演算処理S2で積分計算して求めた現在のピッチ角との偏差を計算し、この偏差をもとにPID制御器S11でピッチ角補正信号を生成する。このピッチ角補正信号は、加え合せ点S12及びS13に入力される。これにより、ピッチ角が突然大きく、姿勢が大きく前傾すると、目標ピッチ角より現在のピッチ角が大きくなるので、偏差を小さくする方向の修正信号を生成し目標回転速度信号nFR*、nRL*に加算して、つまりnFR*、nRL*の目標値を大きく(小さく)なるように修正してピッチ角を目標に近づける。
【0067】
ドローン1が、横方向から突風を受けて、ロール角が突然大きくなると、目標ロール角と現在のロール角との間に偏差が生じる。S14では、目標回転速度信号nRR*とnRL*から目標ロール角を求める。そして加え合せ点S15で、この目標ロール角と、位置センサS1から出力されるX軸回りのロール角速度信号を演算処理S2で積分計算して求めた現在のロール角との偏差を計算し、この偏差をもとにPID制御器S16でロール角補正信号が生成される。このロール角補正信号は、加え合せ点S13及びS17に入力される。これにより、ロール角が突然大きく、左右の姿勢が大きく傾くと、目標ロール角より現在のロール角が大きくなるので、これにより発生する偏差を小さくするように、目標回転速度信号nFL*、nRL*のそれぞれに修目標正信号を加算して、つまり、nFL*、nRL*の目標値を大きく(又は小さく)なるように修正してロール角を目標に近づける。
【0068】
ドローン1が、正面、あるいは横方向から突風を受けて、機体にZ軸回りの反時計方向の角速度が発生すると、目標角速度と現在の角速度との間に偏差が生じる。S18では、目標回転速度信号nFL*とnRR*からZ軸回りの目標角速度を求める。そして加え合せ点S19で、この目標角速度と、位置センサS1から出力されるZ軸回りの角速度信号を演算処理S2で波形整形した現在の角速度との偏差を計算し、この偏差をもとにPID制御器S20で角速度補正信号が生成される。この角速度補正信号は、加え合せ点S13及びS21に入力される。これにより、Z軸回りの角速度が発生しても、目標角速度より現在の角速度が大きくなるので、これにより発生する偏差を小さくするように、目標回転速度信なるように号nFL*、nRR*を修正してそれぞれに軸回りの角速度を目標に修正信号を加算して、つまり、nFL*、nRR*の目標値を大きく(又は小さく)なるように修正してZ軸回りの角速度を目標に近づける。
【0069】
ステップST7では、ステップST6で計算して求めたモータ回転速度信号をESC22a等に出力する。これにより、モータ20a等は、目標回転速度になるように駆動制御される。
【0070】
ステップST2に戻り、ステップST2乃至ST7を、スイッチOFFの操作が入力されるまで繰り返す。本実施形態の制御によれば、操縦装置からの指令信号によりモータの駆動信号を生成してドローン1を飛行させることを基本制御(主制御)にしているので制御の遅れが少なく安定した操縦が可能になる。また障害物などの回避操作に対しても遅れなく適切に回避させることができる。
【0071】
また突風のような外乱に対しては、ピッチ角、ロール角、Z軸回りの角速度の3つの変数で制御が可能になるので、従来のような6軸の変数を必要としない。特に高い応答性が要求される外乱制御に対して必要な位置センサの変数を1/2にできるので、機体の自動修正能力を大幅に向上させることができる。
【0072】
次に、ステップST4の故障診断ステップにおける本実施形態のドローン1の動作について、説明する。ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bの故障診断が実施され、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bのいずれにも故障がないと判断した場合には、上述のステップST5(図6参照)に基づく制御を実施する。これに対して、ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bのいずれかに故障があると判断した場合には、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bの双方に故障があるか否かを判断する。
【0073】
ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bのいずれか一方に故障があると判断した場合には、故障がある第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bへの電力供給を遮断することにより、故障がない第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bの単独制御に切り替える。その後、ドローン1は、その場でホバリング状態を維持、または、帰還、あるいは、着陸する。帰還または着陸は、故障信号を受信した操縦装置からの指示によって行ってもよいし、自動的に帰還または着陸を実施するプログラムを実施するようにしてもよい。
【0074】
ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bのどちらか、または双方に故障があると判断した場合には、第一の制御装置100Aと第二の制御装置100Bのどちらか、または双方の故障原因と深刻度を調査する。深刻度の基準は、故障診断プログラムに組み込んでおく。例えば、深刻度が小さい場合には深刻度0,最大の場合には深刻度10とし、故障原因ごとに深刻度を割り当てる。例えば、コンピュータ112Aまたは112Bにおいてモータ20a等のフル回転故障がある場合には、深刻度を10とし、いずれかの6軸センサ114の故障またはモータ20a等の回転数の低下は深刻度を3とするなどである。また、このときの故障原因とその故障原因の部位はコード化されコンピュータに記憶される。このコードは適宜外部テスタなどを接続することにより表示させることができる。
【0075】
例えば、深刻度が所定基準よりも小さく、例えば、深刻度3以下であれば、その原因である部位のみを使わない制御に切り替える。つまり故障した部位が、例えば6軸センサであれば上述の修正制御を行わないで制御する。これにより単独制御に切り替えず、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bにおいて、故障のない部位、及び、深刻度が所定基準よりも小さい部位を使用して、飛行を続行することができる。
【0076】
上述のように、ドローン1は、第一の制御装置100Aと第二の制御装置100Bのいずれか一方に故障がある場合には、故障のない他方の制御装置による単独制御を行うことができる。また、ドローン1は、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bの双方に故障がある場合でも、例えば深刻度が3以下であれば単独制御に切り替えずに制御を続行することができる。
【0077】
<第二の実施形態>
図9乃至図12を参照して、第二の実施形態について説明する。第一の実施形態と共通する事項は説明を省略し、第一の実施形態と異なる事項を中心に説明する。
【0078】
図9は、第二の実施形態のドローン1Aを示す概略斜視図である。図10は、ドローン1Aを上方から視た概略平面図である。ドローン1Aは、モータ組20をF:前方配置,22をsL:左方配置,24をr:右方配置及び26をR:後方配置によって形成される四角形の対角線上を前進(X1)・後退(X2)、右横移動(Y1)・左横移動(Y2)するように駆動制御される。このような移動を四角形の辺方向の移動に対して、「対角線移動」と呼ぶ。モータ組20,22,24及び26は、それらの回転軸を結ぶと、正方形になるように配置されている。なお、本実施形態とは異なり、回転軸を結ぶと、長方形またはひし形である矩形を構成するようにしてもよい。
【0079】
図9及び図10に示すように、モータ組20において、モータ20aは時計回りの方向C1に回転し、モータ20bは反時計回りの方向C2に回転する。モータ20aとモータ20bの回転速度nF(図10参照)は同一である。このため、モータ組20において、モータ20aの回転による反力とモータ20bの回転による反力は相殺される。モータ組22、24及び26においても、上方のモータと下方のモータは、同一の回転速度、かつ、反対方向に回転する。
【0080】
次に、図11を参照して、ドローン1Aの動作を説明する。図11中の実線は主制御、点線は補正制御である。なお、第一の動力発生装置106A(図4参照)を構成するモータ20a等と、第二の動力発生装置106B(図4参照)を構成するモータ20b等の制御は、モータの回転方向は反対方向である以外は、基本的に同一である。したがって、以下、第一の動力発生装置106A(図4参照)を構成するモータ20a等について説明し、第二の動力発生装置106Bを構成するモータ20b等についての説明を省略し、必要な部分についてのみ、第二の動力発生装置106Bについても説明する。
【0081】
まず、実線の主制御について説明する。ドローン1Aは、操縦装置から上昇の命令信号を受信すると、各モータ組20、22,24及び26(図9参照)のモータ20a,22a、24a及び26aの目標の回転速度信号nF*、nR*、nr*、nsL*をnF*=nR*=nr*=nsL*の関係を保って全体の目標回転速度を大きくする。これによりモータ20a等の回転速度はnF=nR=nr=nsLを保って回転しドローン1Aを上昇させる。
【0082】
ドローン1Aが上昇指令を受信したときの目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*から計算した目標ピッチ角、目標ロール角、Z軸回りの目標角速度は全て0あり、位置センサS1からの情報をS2で演算処理し求めた現在のピッチ角、現在のロール角、現在のZ軸回りの角速度が全て0である場合には、第1の動力発生装置106A(図4参照)を構成するモータ20a等の目標回転速度信号nF*、nR*、nr*、nsL*は,そのまま、ESC120a等に入力される。同様に、これらのESC120a等は、モータ20a等の回転速度nFR、nFL、nRR、nRLを目標回転速度信号nFR*、nFL*、nRR*、nRL*と等しくなるように制御する。
【0083】
ドローン1Aは、飛行高度が操縦者の意図する高さになり、操縦装置から上昇停止の指令信号を受信すると、目標回転速度、nF*=nR*=nr*=nsL*の状態を維持することによりホバリングする。
【0084】
ドローン1Aは、下降の命令信号を受信すると、nF*=nR*=nr*=nsL*を維持して全体の値を小さくする。これにより揚力が小さくなり機体が下降する。
【0085】
ドローン1Aは、所定の高さでホバリングしているときに、操縦装置から前進の命令信号を受信すると、nF*<nR*、nr*=nsL*という関係の目標回転速度信号を生成する。このとき、ドローン1Aの機体は、nF<nR、nr=nsLの関係より、揚力差が機体の前後で発生し前傾姿勢になる、つまりY軸回りの反時計方向にピッチ角が発生する。このピッチ角が揚力に前進方向の分力を発生させることにより前進する。
【0086】
ドローン1Aは、操縦装置から後退の命令信号を受信すると、nF*>nR*、nr*=nsL*という関係で目標回転速度信号を生成する。これらの目標回転速度信号によりモータの回転速度は、nF>nR、nr=nsLという関係でそれぞれのモータが駆動制御される。このとき、ドローン1Aの機体の前後で揚力差が発生し後傾姿勢になる、つまりY軸回りの時計方向にピッチ角が発生する。このピッチ角が揚力に後進方向の分力を発生させることにより後進する。
【0087】
ドローン1Aは、所定の高さでホバリングしているときに、左横移動の命令信号を受信すると、nr*>nsL*、nF*=nR*という関係の目標回転速度信号を生成する。このとき、ドローン1Aの機体の左右で発生し揚力差により左さがりの傾斜姿勢になる、つまりX軸回りの時計方向にロール角が発生する。このロール角が揚力に左横移動方向の分力を発生させることにより左横移動する。
【0088】
逆に、ドローン1Aが、右横移動の命令信号を受信すると、nr*<nsL*、nF*=nR*という関係の目標回転速度信号を生成する。このとき、ドローン1Aの機体の左右で発生した揚力により右下がりの傾斜姿勢になる、つまりX軸回りの反時計方向にロール角が発生する。このロール角が揚力に右横移動方向の分力を発生させることにより右横移動する。
【0089】
上述のように、ドローン1Aは、操縦装置からの指令に基づいて、基本の運動は、主制御により機体を上昇・下降・ホバリング、前進・後退、右横移動・左横移動させることができる。このときの目標回転速度信号の生成は、操縦装置から受信するので、ドローン1Aにおいて、時間のかかる複雑な計算や誤差の大きい積分演算を実施する必要が無いので、応答性良く操縦者の意図通りに飛行することができる。しかも、前進・後退、右横移動・左横移動を1組のモータの回転速度を変えるのみで変更できるので、応答性の良い安定な飛行が可能となる。
【0090】
次に、図11の点線で示される補正制御について説明する。操縦装置からの命令信号に基づく飛行が難しいような場面、例えば、飛行中に予期せぬ突風や不測の事態に陥ったときには、図11の点線で示される補正制御が行われる。
【0091】
ドローン1Aが、正面から突風を受けて、ピッチ角が突然大きくなると、目標ピッチ角と現在のピッチ角との間に差、つまり偏差が生じる。S9では、目標回転速度信号nF*とnR*から目標ピッチ角を求める。そして加え合せ点S10で、この目標ピッチ角と、位置センサS1から出力されるY軸回りのピッチ角速度信号を演算処理S2で積分計算して求めた現在のピッチ角との偏差を計算し、この偏差をもとにPID制御器S11でピッチ角補正信号が生成される。このピッチ角補正信号は、加え合せ点S12に入力される。これにより、ピッチ角が突然大きく、姿勢が大きく前傾すると、目標ピッチ角より現在のピッチ角が大きくなるので、偏差を小さくする方向の修正信号を生成し目標回転速度信号nF*に加算して、つまりnF*の目標値を大きく(小さく)なるように修正してピッチ角を目標に近づける。
【0092】
ドローン1Aが横方向から突風を受けて、ロール角が突然大きくなると、目標ロール角と現在のロール角との間に偏差が生じる。S14では、目標回転速度信号nr*とnsL*から目標ロール角を求める。そして加え合せ点S15で、この目標ロール角と位置センサS1から出力されるX軸回りのロール角速度信号を演算処理S2で積分計算して求めた現在のロール角との偏差を計算し、この偏差をもとにPID制御器S16でロール角補正信号が生成される。このロール角補正信号は、加え合せ点S17に入力される。これにより、ロール角が突然大きく、左右の姿勢が大きく傾くと、目標ロール角より現在のロール角が大きくなるので、これにより発生する偏差を小さくするように、目標回転速度信号nsL*に修正信号を加算して、つまりnsL*の目標値を大きく(又は小さく)なるように修正してロール角を目標に近づける。
【0093】
本実施形態の制御によれば、操縦装置からの命令信号によりモータの駆動信号を生成して飛行させることを基本制御(主制御)にしているので制御の遅れが少なく安定した操縦が可能になる。また障害物などの回避操作に対しても遅れなく適切に回避させることができる。ドローン1Aは、対角線方向に前進・後退、左右の横移動を実施するから、従来の辺方向に移動するより、モータ間の距離を長く確保でき、水平方向に自分で復帰するためのモーメントを大きくできる効果を有する。例えば、図12に示すように、突然横風力Pが作用してモーメントMPが発生してもLが十分長ければ揚力差F1-F2を発生させる制御をしなくても姿勢を安定化できる、つまり、突風などの外乱にも構造的にタフネスを向上でき、しかも、1組のモータの回転速度を変えるのみで修正できるので、応答性の良い安定な飛行が可能になる。
【0094】
ドローン1Aの故障判断プログラムは、第一の実施形態のドローン1の故障判断プログラムと基本的には同一であるが、第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bのいずれか一方の単独制御に切り替えたときに、対角線移動を停止し、第一の実施形態のドローン1と同様の辺方向への移動に切り替えるように構成されている点が異なる。このため、ドローン1Aは、対角線移動のためのプログラムと、辺方向への移動のためのプログラムの双方をコンピュータ112A及び112Bに記憶している。
【0095】
ドローン1Aは、第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bのいずれかに故障がある場合、故障した第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bによる制御が停止され、故障していない第一の制御装置100Aまたは第二の制御装置100Bの単独制御に変更する。ドローン1Aは、第一の制御装置100A及び第二の制御装置100Bの双方に故障がある場合には、故障の深刻度が双方において、例えば3以下であれば、双方による制御で飛行を可能にし、どちらかが3を超えれば、相対的に小さい制御装置による単独制御に切り替える。そして、単独制御においては、対角線移動を停止し、辺方向への移動へ切り替える。
【0096】
なお、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、各実施形態及び変形例は、矛盾が生じない限り、適宜、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0097】
1,1A ドローン
100A 第一の制御装置
100B 第二の制御装置
102A 第一の通信装置
102B 第二の通信装置
104A 第一の制御駆動装置
104B 第二の制御駆動装置
106A 第一の動力発生装置
106B 第二の動力発生装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12