(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126566
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ポリマー、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/00 20060101AFI20220823BHJP
C08F 12/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C08F8/00
C08F12/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021040174
(22)【出願日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2021024599
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000221797
【氏名又は名称】東邦化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】永木 愛一郎
(72)【発明者】
【氏名】玉木 孝
(72)【発明者】
【氏名】古澤 真維
(72)【発明者】
【氏名】米倉 裕哉
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AB02Q
4J100AB08P
4J100AB09P
4J100CA03
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA47
4J100HA61
4J100HC08
4J100HC83
4J100HD07
4J100HE05
4J100HF01
(57)【要約】
【課題】効率よく、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーを製造する方法
【解決手段】ハロゲン化スチレン類モノマーを、下記一般式(1)で表される開始剤の存在下で、マイクロリアクターを用いてアニオン重合させるアニオン重合工程、及び前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する修飾工程を含むポリマーの製造方法(ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化スチレン類モノマーを、下記一般式(1)で表される開始剤の存在下で、マイクロリアクターを用いてアニオン重合させるアニオン重合工程、及び
前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する修飾工程を含むポリマーの製造方法。
【化1】
ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である。
【請求項2】
前記アリール基がフェニル基である、請求項1に記載のポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)中、R1及びR2の一方が、炭素数1~10のアルキル基である、請求項1から2のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で表される開始剤が、sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させて得られる、請求項1から3のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項5】
さらに、前記アニオン重合工程において、前記ハロゲン化スチレン類モノマーをアニオン重合させて得られたポリマーに対し、モノマーを重合させる工程を含み、
前記モノマーが、スチレン、又はスチレン誘導体である、請求項1から4のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項6】
前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、鈴木カップリング反応、宮浦ホウ素化反応、及びリチオ化反応の少なくともいずれかにより、同一の又は異なる官能基で置換することを含む、請求項1から5のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項7】
前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、ヒドロキシ基で置換することを含む、請求項6に記載のポリマーの製造方法。
【請求項8】
前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、宮浦ホウ素化反応によりホウ素含有基で置換し、置換した前記ホウ素含有基を酸化剤によりヒドロキシ基に置換することを含む、請求項6に記載のポリマーの製造方法。
【請求項9】
前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーをマイクロリアクターを用いて修飾することを含む、請求項1から8のいずれかに記載のポリマーの製造方法。
【請求項10】
下記一般式(3)又は(4)のいずれかで表され、分子量分布が1.4以下であるポリマー。
【化2】
ただし、前記一般式(3)中、m及びnは重合度を表し、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアスタチン原子のいずれかであり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基であり;aは、1~5の整数である。Y基を有しないスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
ただし、前記一般式(4)中、m及びnは重合度を表し、それぞれ1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基である。ベンズアルデヒド基を有するスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化7】
【化8】
【化9】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化学合成の分野において、マイクロリアクターと呼ばれる微小容器を用いた化学反応が研究されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
マイクロリアクターは、複数の液体を混合可能な流路と、前記流路に連通し、前記流路に液体を導入する導入路とを備える微小容器であり、マイクロリアクターの前記導入路を通じて供給された複数の液体は、前記流路で合流することにより、混合され、反応が生じる。
【0003】
マイクロリアクターを用いた反応では、精密な滞留時間の制御、精密な温度制御、高速混合が可能となると考えられており、従来実施されているバッチ方式の反応と比較して転化率や選択性の向上が期待され、高効率な生産方法として注目されている。
【0004】
一方、アニオン重合は反応速度が速く、スチレン系のポリマーを合成する際の強力なツールである。しかしながら、官能基で修飾されたスチレンの重合はその官能基の反応性により大きく制限されることなどから、十分な研究が行われていない。
これまでに、sec-BuLiを開始剤として用いたハロゲン化スチレンのアニオン重合が報告されているが(例えば、非特許文献3参照)、高い転化率であり、かつ、狭分散なハロゲン化スチレンポリマーは得られておらず、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーも得られていない。
【0005】
したがって、効率よく、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーを製造する方法は未だ提供されておらず、その速やかな提供が強く求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Chimia 2002 56:636
【非特許文献2】Tetrahedron) 2002 58:4735-4757
【非特許文献3】Polymer Preprints 2018 67 1B17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、効率よく、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ハロゲン化スチレン類モノマーを、下記一般式(1)で表される開始剤の存在下で、マイクロリアクターを用いてアニオン重合させるアニオン重合工程、及び前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する修飾工程を含むポリマーの製造方法(ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である)により、効率よく、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーを製造する方法が提供できることを知見した。
【化1】
【0009】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> ハロゲン化スチレン類モノマーを、下記一般式(1)で表される開始剤の存在下で、マイクロリアクターを用いてアニオン重合させるアニオン重合工程、及び前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する修飾工程を含むポリマーの製造方法(ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である)である。
【化2】
<2> 下記一般式(3)又は(4)のいずれかで表され、分子量分布が1.4以下であるポリマーである。
【化3】
ただし、前記一般式(3)中、m及びnは重合度を表し、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアスタチン原子のいずれかであり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基であり;aは、1~5の整数である。Y基を有しないスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
ただし、前記一般式(4)中、m及びnは重合度を表し、それぞれ1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基である。ベンズアルデヒド基を有するスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化8】
【化9】
【化10】
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、効率よく、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーを製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の製造方法の一例に用いるフローマイクロリアクターの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の製造方法の一例に用いるフローマイクロリアクターの概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の製造方法の一例に用いるフローマイクロリアクターの概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の製造方法の一例に用いるフローマイクロリアクターの概略図である。
【
図5】
図5は、製造例1で使用したマイクロリアクターシステムの概略図である。
【
図6】
図6は、製造例1で得られたポリ-p-ブロモスチレンのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図7】
図7は、製造例2で使用したマイクロリアクターシステムの概略図である。
【
図8】
図8は、製造例2で得られたポリ-p-クロロスチレンのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図9】
図9は、実施例1で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図10】
図10は、実施例2-1で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図11】
図11は、実施例2-2で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図12】
図12は、実施例3で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図13】
図13は、実施例4で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図14】
図14は、実施例5で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図15】
図15は、実施例6で使用したマイクロリアクターシステムの概略図である。
【
図16】
図16は、実施例6-1で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図17】
図17は、実施例6-2で得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルである。
【
図18】
図18は、実施例6-3で得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルである。
【
図19】
図19は、実施例6-4で得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルである。
【
図20】
図20は、実施例6-5で得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルである。
【
図21】
図21は、実施例6-6で得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルである。
【
図22】
図22は、実施例7で使用したマイクロリアクターシステムの概略図である。
【
図23】
図23は、実施例7で得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ポリマーの製造方法)
前記ポリマーの製造方法は、アニオン重合工程、及び修飾工程を含み、さらに、その他の工程を含むことができる。
【0013】
<アニオン重合工程>
前記アニオン重合工程は、ハロゲン化スチレン類モノマーを、開始剤の存在下で、フローマイクロリアクターを用いてアニオン重合させる工程である。
【0014】
-ハロゲン化スチレン類モノマー-
前記ハロゲン化スチレン類モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(2)で表されるモノマー(ただし、R
3は、水素原子、又はメチル基であり;R
4は、水素原子、塩素原子、炭素数1~4のアルキル基、又はトリメチルシリル基であり;Xは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチンなどのハロゲン原子であり;aは、1~5の整数である)などが挙げられる。
【化11】
【0015】
前記一般式(2)で表されるモノマーの中でも、前記Xが塩素原子又は臭素原子であるモノマーが好ましい。前記Xが塩素原子又は臭素原子であるモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2-ブロモスチレン(o-ブロモスチレン)、3-ブロモスチレン(m-ブロモスチレン)、4-ブロモスチレン(p-ブロモスチレン)、ジブロモスチレン、トリブロモスチレン、2-クロロスチレン(o-クロロスチレン)、3-クロロスチレン(m-クロロスチレン)、4-クロロスチレン(p-クロロスチレン)、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンが好ましく、2-ブロモスチレン(o-ブロモスチレン)、3-ブロモスチレン(m-ブロモスチレン)、4-ブロモスチレン(p-ブロモスチレン)、2-クロロスチレン(o-クロロスチレン)、3-クロロスチレン(m-クロロスチレン)、4-クロロスチレン(p-クロロスチレン)がさらに好ましい。
【0016】
-開始剤-
前記開始剤は、下記一般式(1)で表される。
【化12】
【0017】
前記一般式(1)中、「s-Bu」はsec-ブチル基を表し、「Li」はリチウム基を表す。
【0018】
前記一般式(1)中、R1及びR2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である。
これらの中でも、反応性のソフト化を抑えて開始反応を一律にすることにより、狭分散なポリマーが得られる点で、前記一般式(1)中、R1及びR2の一方が、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0019】
前記炭素数1~10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~2のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0020】
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェニル基、トリル基、o-キシリル基などが挙げられる。
これらの中でも、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、フェニル基が好ましい。
【0021】
前記一般式(1)で表される化合物としては、例えば、下記構造式(1)で表される化合物(DPHLi)、下記構造式(2)で表される化合物(2PHLi)、下記構造式(3)で表される化合物(3POLi)などが挙げられる。
これらの中でも、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、下記構造式(2)で表される化合物(2PHLi)が好ましい。
【化13】
【化14】
【化15】
【0022】
--開始剤の製造方法--
前記開始剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させる方法などが挙げられる。前記開始剤は、フローマイクロリアクターを用いて製造してもよい。
【0023】
前記アルキルアリール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルキルベンゼン化合物などが挙げられる。
【0024】
前記アルキルベンゼン化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、2-メチルスチレン(o-メチルスチレン)、3-メチルスチレン(m-メチルスチレン)、4-メチルスチレン(p-メチルスチレン)、1,5-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン等のメチルスチレン化合物、α-エチルスチレン、β-エチルスチレン、2-エチルスチレン(o-エチルスチレン)、3-エチルスチレン(m-エチルスチレン)、4-エチルスチレン(p-エチルスチレン)、1,5-ジエチルスチレン、2,4-ジエチルスチレン等のエチルスチレン化合物、1,2-ジビニルベンゼン(o-ジビニルベンゼン)、1,3-ジビニルベンゼン(m-ジビニルベンゼン)、1,4-ジビニルベンゼン(p-ジビニルベンゼン)、1,2-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン(o-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン)、1,3-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン(m-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン)、1,4-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン(p-ビス(1-メチルエテニル)ベンゼン)、1,2,3-トリス(1-メチルエテニル)ベンゼン、1,2,4-トリス(1-メチルエテニル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-メチルエテニル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0025】
これらの中でも、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、メチルスチレン化合物又はエチルスチレン化合物が好ましく、メチルスチレン化合物がより好ましく、α-メチルスチレンがさらに好ましい。
【0026】
前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物との反応温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、15℃以上が特に好ましい。
【0027】
前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物との反応温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
【0028】
前記sec-BuLiに対する、前記アルキルアリール化合物の量の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、1.0モル当量以上が好ましく、1.1モル当量以上がより好ましく、1.2モル当量以上がさらに好ましく、1.3モル当量以上が特に好ましく、1.4モル当量以上が最も好ましい。
【0029】
前記sec-BuLiに対する、前記アルキルアリール化合物の量の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、2.0モル当量以下が好ましく、1.9モル当量以下がより好ましく、1.8モル当量以下がさらに好ましく、1.7モル当量以下が特に好ましく、1.6モル当量以下が最も好ましい。
【0030】
前記ハロゲン化スチレン類モノマーと、前記開始剤との反応温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、-60℃以上が好ましく、-55℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましく、-45℃以上が特に好ましい。
【0031】
前記ハロゲン化スチレン類モノマーと、前記開始剤との反応温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よく高い転化率であり、かつ、狭分散なポリマーが得られる点から、-20℃以下が好ましく、-25℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましく、-35℃以下が特に好ましい。
【0032】
-マイクロリアクター-
前記マイクロリアクターとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、混合手段と、流通路とを備え、更に必要に応じてその他の手段を備えるマイクロリアクター(以下、「フローマイクロリアクター」と称することがある)などが挙げられる。
前記混合手段と前記流通路とは、一体型であってもよいし、別体型であってもよい。
【0033】
前記混合手段は、2種以上の液体を混合可能な手段である。
前記流通路は、液体を流通可能な管である。前記流通路は、少なくとも1つの前記混合手段と接続される。
【0034】
前記フローマイクロリアクターを用いることで、安定性の低い化合物について、生成から次の反応までの滞留時間を短時間にし、副反応を抑制することができる。
また、前記フローマイクロリアクターは、冷却効率が優れるため、発熱反応における発熱による副反応を抑制することができる。
【0035】
--一体型のフローマイクロリアクター--
前記一体型のフローマイクロリアクターの前記混合手段及び前記流通路としては、基板型のマイクロミキサーなどが挙げられる。
【0036】
前記基板型のマイクロミキサーは、内部又は表面に通路が形成された基板からなり、マイクロチャンネルと称される場合がある。
前記基板型のマイクロミキサーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、国際公開第96/30113号パンフレットに記載される混合のための微細な流路を有するミキサー;文献「“マイクロリアクターズ”三章、W.Ehrfeld、V.Hessel、H.Lowe著、Wiley-VCH社刊」に記載されるミキサーなどが挙げられる。
【0037】
前記基板型のマイクロミキサーは、前記混合手段及び前記流通路が、複数の液体を混合可能な微小な流路により構成されている。
【0038】
前記基板型のマイクロミキサーには、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐した構成が好ましい。
【0039】
前記導入路の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、混合を所望する複数の液体を別々の導入路から導入し、流路で合流させて混合することが好ましい。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0040】
--別体型のフローマイクロリアクター--
前記別体型のフローマイクロリアクターは、混合手段と、流通路とが接続してなる。
【0041】
前記混合手段としては、2種以上の液体を混合可能な限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、管継手型のマイクロミキサーなどが挙げられる。
【0042】
前記管継手型のマイクロミキサーは、内部に形成された流路を備え、必要に応じて前記内部に形成された流路と、前記流通路とを接続する接続部材を備える。前記接続部材における接続方式としては、特に制限はなく、公知の接続方式の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ねじ込み式、ユニオン式、突合わせ溶接式、差込み溶接式、ソケット溶接式、フランジ式、食込み式、フレア式、メカニカル式などが挙げられる。
【0043】
前記管継手型のマイクロミキサーの内部には、前記流路以外に、前記流路に連通し、前記流路に複数の液体を導入する導入路が形成されていることが好ましい。即ち、前記導入路の数に応じて、前記流路の上流側が分岐された構成が好ましい。前記導入路の数が2つである場合には、前記管継手型のマイクロミキサーとして、例えば、T字型やY字型を用いることができ、前記導入路の数が3つである場合には、例えば、十字型を用いることができる。なお、1つの液体を予め流路に仕込んでおき、それ以外の液体を導入路により導入する構成としてもよい。
【0044】
前記管継手型のマイクロミキサーの材質としては、特に制限はなく、耐熱性、耐圧性、耐溶剤性、及び加工容易性などの要求に応じて、適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、チタン、銅、ニッケル、アルミニウム、シリコン、及びテフロン(登録商標)、PFA(パーフルオロアルコキシ樹脂)などのフッ素樹脂、TFAA(トリフルオロアセトアミド)などが挙げられる。
【0045】
前記管継手型のマイクロミキサーとしては、市販品を利用することができ、例えば、山武社製YM-1型ミキサー、YM-2型ミキサー;島津GLC社製ミキシングティー及びティー(T字コネクタ);東レエンジニアリング開発品マイクロ・ハイ・ミキサー;スウェージロック社製ユニオンティー、株式会社三幸精機工業製T字型マイクロミキサーなどが挙げられる。
【0046】
前記混合手段内での2以上の原料物質の混合方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、層流による混合、乱流による混合などが挙げられる。中でも、より効率的に反応制御や除熱を行える点で、層流による混合(静的混合)が好ましい。
【0047】
なお、前記混合手段内の流路は微小であるため、混合手段に導入された複数の液体同士はおのずと層流支配の流れとなりやすく、流れに直交する方向に拡散して混合される。層流による混合において、さらに、流路内に分岐点及び合流点を設けることで、流れる液体の層流断面を分割するような構成とし、混合速度を高める構成としてもよい。
また、前記混合手段の流路において、乱流による混合(動的混合)を行う場合には、流量や流路の形状(接液部分の3次元形状や流路の屈曲などの形状、壁面の粗さ、など)を調整することによって、層流から乱流へと変化させることができる。前記乱流による混合は、前記層流による混合と比べて、混合効率がよく混合速度が速いという利点を有する。
【0048】
ここで、前記混合手段内の前記流路の内径が小さい方が、分子の拡散距離を短くできるので、混合に要する時間を短縮させて混合効率を向上させることができる。さらに、前記流路の内径が小さい方が、体積に対する表面積の比が大きくなり、例えば、反応熱の除熱などの、液体の温度制御を容易に行うことができる。
一方で、前記流路の内径が小さ過ぎると、液体を流す時の圧力損失が増加するとともに、送液に使用するポンプとして特別な高耐圧のものが必要となるため、製造コストが高くなることがある。また、送液流量が制限されることにより、前記マイクロミキサーの構造も制限されることがある。
【0049】
前記混合手段内の前記流路の内径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~4mmが好ましく、100μm~3mmがより好ましく、250μm~2mmが更に好ましく、500μm~1mmが特に好ましい。
前記内径が50μm未満であると、圧力損失が増大することがある。前記内径が4mmを超えると、単位体積当たりの表面積が小さくなり、その結果、迅速な混合や反応熱の除熱が困難になることがある。一方、前記内径が前記特に好ましい範囲であると、より迅速に混合でき、より効率的に反応熱を除熱できる点で有利である。
より具体的には、前記混合手段の内部に形成される流路の内径としては、50μm~1,000μmが好ましく、100μm~800μmがより好ましく、250μm~500μmが更に好ましい。
【0050】
前記流路の断面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100μm2~16mm2が好ましく、1,000μm2~4.0mm2がより好ましく、10,000μm2~2.1mm2が更に好ましく、190,000μm2~1mm2が特に好ましい。
【0051】
前記流路の断面形状としては、特に限定はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、矩形、半円形、三角形などが挙げられる。
【0052】
前記流通路は、少なくとも1つの前記混合手段と接続され、液体を流通可能な管であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、その内径、外径、長さ、材質などの構成は、所望する反応に応じて適宜選択することができる。
【0053】
前記流通路は、例えば、原料物質を混合手段に供給する際に使用される。
また、前記流通路は、例えば、前記混合手段によって混合された2種以上の物質の反応生成物を、次の混合手段に供給する際に使用される。なお、この際、前記流通路内では反応が継続して起きていてもよい。
【0054】
前記流通路としては、市販品を利用することができ、例えば、ジーエルサイエンス株式会社製のステンレスチューブ(外径1/16インチ(1.58mm)、内径250μm、500μm及び1,000μmから選択可能、チューブ長さは使用者により調整可能)などが挙げられる。
【0055】
前記流通路の材質としては、特に制限はなく、前記混合手段の材質として例示したものを、好適に利用することができる。
【0056】
前記流通路の内径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50μm~4mmが好ましく、100μm~3mmがより好ましく、250μm~2mmが更に好ましく、500μm~1mmが特に好ましい。
より具体的には、前記流通路の内径としては、50μm~1,000μmが好ましく、100μm~800μmがより好ましく、250μm~500μmが更に好ましい。
【0057】
前記混合手段の下流に連結される前記流通路の内径としては、50μm~4mmが好ましく、100μm~2mmがより好ましく、500μm~1mmが更に好ましい。
【0058】
原材料を供給する流通路における液の流量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1.0ml/min~20ml/minであってもよいし、2.0ml/min~15ml/minであってもよいし、3.0ml/min~10ml/minであってもよい。
【0059】
反応液が流通する流通路における前記反応液の滞留時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.001sec~10secなどが挙げられる。
【0060】
前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させるマイクロミキサーと、前記アニオン重合させるマイクロミキサーとの間の長さの下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、100cm以上が好ましく、150cm以上がより好ましく、170cm以上がさらに好ましく、190cm以上が特に好ましい。
前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させるマイクロミキサーと、前記アニオン重合させるマイクロミキサーとの間の長さの上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300cm以下が好ましく、280cm以下がより好ましく、250cm以下がさらに好ましく、230cm以下が特に好ましい。
【0061】
--その他の手段--
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、送液手段、温度調節手段などが挙げられる。
【0062】
前記送液手段としては、各種原料物質を、前記フローマイクロリアクターの前記流通路に供給できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポンプなどが挙げられる。
【0063】
前記ポンプとしては、特に制限はなく、工業的に使用されうるものから適宜選択することができるが、送液時に脈動を生じないものが好ましく、例えば、プランジャーポンプ、ギアーポンプ、ロータリーポンプ、ダイヤフラムポンプなどが挙げられる。
【0064】
前記温度調節手段としては、前記フローマイクロリアクターの前記混合手段、及び前記流路の温度を調節できる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0065】
<修飾工程>
前記修飾工程は、前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する工程である。
前記修飾としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の、同一の又は異なる官能基による置換が挙げられる。
前記修飾工程は、フローマイクロリアクターを用いて行ってもよい。
【0066】
前記置換の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鈴木カップリング反応による置換、宮浦ホウ素化反応による置換、及びリチオ化反応による置換などが挙げられる。
【0067】
前記鈴木カップリング反応とは、ハロゲン化アリールと有機ホウ素化合物とを、パラジウム触媒及び塩基などの求核種の作用によりクロスカップリングさせる化学反応である。
【0068】
前記鈴木カップリング反応の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アニオン重合工程で得られたポリマー、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアルデヒド、Pd(dppf)Cl2、及びK2CO3をTHF/H2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で還流する方法、前記アニオン重合工程で得られたポリマー、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、Pd(dppf)Cl2、及びK2CO3をTHF/H2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で還流する方法、前記アニオン重合工程で得られたポリマー、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-ビニルフェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン、Pd(dppf)Cl2、及びK2CO3をTHF/H2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で還流する方法などが挙げられる。
【0069】
前記還流の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一晩の還流などが挙げられる。
前記還流の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温などが挙げられる。
【0070】
前記鈴木カップリング反応において、スチレン誘導体に対する重合阻害剤を添加することができる。
前記重合阻害剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、4-tert-ブチルピロカテコールなどが挙げられる。
【0071】
前記宮浦ホウ素化反応とは、ハロゲン化アリールとビスピナコラートジボロンとを、パラジウム触媒下でカップリングさせる化学反応である。
【0072】
前記宮浦ホウ素化反応の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アニオン重合工程で得られたポリマー、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、Xphos、ビス(ピナコラート)ジボロン、及びKOAcを1,4-ジオキサンに溶解し、Ar雰囲気下で還流する方法などが挙げられる。
【0073】
前記還流の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一晩の還流などが挙げられる。
前記還流の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温などが挙げられる。
【0074】
前記リチオ化反応とは、ハロゲン化アリールとアルキルリチウム化合物とのハロゲン-金属交換反応である。
【0075】
前記リチオ化反応の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液とを混合する方法などが挙げられる。前記リチオ化反応は、フローマイクロリアクターを用いて行ってもよい。
【0076】
前記BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液を混合する温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、-60℃以上が好ましく、-55℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましく、-45℃以上が特に好ましい。
【0077】
前記BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液を混合する温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、-20℃以下が好ましく、-25℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましく、-35℃以下が特に好ましい。
【0078】
前記異なる官能基による置換としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多段階修飾(多段階置換)などが挙げられる。
前記多段階修飾としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、宮浦ホウ素化反応後のポリマーのボリル基のヒドロキシ基などによる置換、リチオ化反応後のポリマーの官能基化、リチオ化反応後のポリマーの官能基化後の鈴木カップリング反応による置換などが挙げられる。
【0079】
前記宮浦ホウ素化反応後のポリマーのボリル基のヒドロキシ基による置換の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記宮浦ホウ素化反応後のポリマー及びK3PO4をTHFに溶解し、Oxone(登録商標)水溶液などの酸化剤を滴下し、混合物を撹拌する方法などが挙げられる。
【0080】
前記撹拌の時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1時間などが挙げられる。
前記還流の温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温などが挙げられる。
【0081】
前記リチオ化反応後のポリマーの官能基化の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記リチオ化反応における、前記BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液との混合物へ、求電子試薬溶液を導入する方法などが挙げられる。前記リチオ化反応後のポリマーの官能基化は、フローマイクロリアクターを用いて行ってもよい。
【0082】
前記求電子試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、重水、MeOH、CD3OD、2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン等のホウ素化合物、DMF等のカルボニル化合物、クロロギ酸メチル等のエステル化合物、TMSCl(クロロトリメチルシラン)等のケイ素化合物、ハロゲン化アルキル、ニトリル化合物、エポキシ化合物などが挙げられる。
【0083】
前記BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液を混合し、この混合物へ求電子試薬溶液を導入する際の温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、-60℃以上が好ましく、-55℃以上がより好ましく、-50℃以上がさらに好ましく、-45℃以上が特に好ましい。
【0084】
前記BuLi溶液と前記アニオン重合工程で得られたポリマー溶液を混合し、この混合物へ求電子試薬溶液を導入する際の温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、-20℃以下が好ましく、-25℃以下がより好ましく、-30℃以下がさらに好ましく、-35℃以下が特に好ましい。
【0085】
前記求電子試薬溶液を導入後に通過させるマイクロチューブリアクターの温度の下限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上がさらに好ましく、15℃以上が特に好ましい。
【0086】
前記求電子試薬溶液を導入後に通過させるマイクロチューブリアクターの温度の上限値としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、効率よくポリマーが得られる点から、40℃以下が好ましく、35℃以下がより好ましく、30℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
【0087】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記アニオン重合工程前の開始剤の製造工程、前記アニオン重合工程後のモノマー重合工程、などが挙げられる。
【0088】
-アニオン重合工程前の開始剤の製造工程-
前記アニオン重合工程前の開始剤の製造工程は、前記アニオン重合工程前に、前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させる工程である。
前記sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させる工程は、上述の開始剤の製造方法の記載のとおりである。
【0089】
-アニオン重合工程後のモノマー重合工程-
前記アニオン重合工程後のモノマー重合工程は、前記アニオン重合工程において、前記ハロゲン化スチレン類モノマーをアニオン重合させて得られたポリマーに対し、モノマーを重合させる工程である。
【0090】
前記モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スチレン、スチレン誘導体などが挙げられる。
【0091】
(ポリマー)
前記ポリマーは、上述のポリマーの製造方法により製造できる。
前記ポリマーは、狭分散なハロゲン化スチレンポリマー由来の修飾ポリマーである。
【0092】
前記ポリマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(3)又は(4)のいずれかで表されるポリマーなどが挙げられる。
【0093】
【化16】
ただし、前記一般式(3)中、m及びnは重合度を表し、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である。Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアスタチン原子のいずれかである。Yは、鈴木カップリング反応により導入される基、宮浦ホウ素化反応により導入される基、又はブロモ基をリチオ化した後に反応させる求電子試薬によって導入される官能基であり、例えば、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基などが挙げられる。aは、1~5の整数である。Y基を有しないスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化17】
【化18】
【化19】
【0094】
前記一般式(3)におけるmは、0以上の整数である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、鈴木カップリング反応で合成する場合は、鈴木カップリング反応で使用するボロン酸、ボロン酸エステル、ボレート塩などのボロン酸化合物の当量の増減により、宮浦ホウ素化反応で合成する場合は、宮浦ホウ素化反応で使用するジボラン化合物の当量の増減により、リチオ化反応により合成する場合は、リチオ化反応で使用するリチウム試薬の当量により調節できる。
【0095】
前記一般式(3)におけるnは、1以上の整数である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましく、20以上が特に好ましく、25以上が最も好ましい。
多段階修飾により合成する場合のm及びnは、原料とするポリマー(前段階のポリマー)の組成に依存する。
【0096】
前記一般式(3)におけるR5及びR6は、一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、R5及びR6の一方が、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~2のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フェニル基、トリル基、又はo-キシリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0097】
前記一般式(3)におけるXは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアスタチン原子のいずれかである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塩素原子、又は臭素原子が好ましい。
【0098】
前記一般式(3)において、前記Y基を有しないスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよいとは、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である場合、前記一般式(3)で表されるポリマーは、1の下記一般式(5)で表される構造単位、0以上の整数の下記一般式(6)で表される構造単位、及び1以上の整数の下記一般式(7)で表される構造単位を有するポリマーであり、前記一般式(6)で表される構造単位と前記一般式(7)で表される構造単位の結合順序は順不同であり、前記一般式(3)で表されるポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよいことを意味する。なお、前記一般式(3)で表されるポリマーは、一端側に一般式(5)で表される構造単位を有し、他端側に水素原子を有する。
【0099】
【0100】
【化23】
ただし、前記一般式(4)中、m及びnは重合度を表し、それぞれ1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である。Yは、ブロモ基をリチオ化した後に反応させる求電子試薬によって導入される官能基であり、例えば、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基などが挙げられる。ベンズアルデヒド基を有するスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化24】
【化25】
【化26】
【0101】
前記一般式(4)で表されるポリマーは、一般式(3)で表される化合物のうち、ポリブロモスチレンの一部をリチオ化及び官能基化したブロックコポリマーを原料として合成することができる。前記一般式(4)におけるm及びnは、原料とする前記ブロックコポリマーの組成(重合度)に依存する。
【0102】
前記一般式(4)におけるnは、1以上の整数である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5以上が好ましく、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましく、20以上が特に好ましく、25以上が最も好ましい。
【0103】
前記一般式(4)におけるR5及びR6は、一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、R5及びR6の一方が、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
前記炭素数1~10のアルキル基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、炭素数1~8のアルキル基が好ましく、炭素数1~6のアルキル基がより好ましく、炭素数1~4のアルキル基がさらに好ましく、炭素数1~2のアルキル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
前記アリール基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、フェニル基、トリル基、又はo-キシリル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0104】
前記一般式(4)において、前記ベンズアルデヒド基を有するスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよいとは、m及びnはそれぞれ1以上の整数である場合、前記一般式(4)で表されるポリマーは、1の下記一般式(5)で表される構造単位、1以上の整数の下記一般式(8)で表される構造単位、及び1以上の整数の下記一般式(9)で表される構造単位を有するポリマーであり、前記一般式(8)で表される構造単位と前記一般式(9)で表される構造単位の結合順序は順不同であり、前記一般式(4)で表されるポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよいことを意味する。なお、前記一般式(4)で表されるポリマーは、一端側に一般式(5)で表される構造単位を有し、他端側に水素原子を有する。
【0105】
【0106】
前記ポリマーの分子量分布(多分散度指数(PDI):Mw/Mn)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1.8以下が好ましく、1.5以下がより好ましく、1.4以下がさらに好ましく、1.35以下がよりさらに好ましく、1.3以下が特に好ましく、1.25以下が最も好ましく、1.2以下が特に最も好ましい。
前記ポリマーの分子量分布(多分散度指数(PDI):Mw/Mn)は、前記狭分散なハロゲン化スチレンポリマーの分子量分布(多分散度指数(PDI):Mw/Mn)と同等である。
前記分子量分布は、以下のGPC分析により測定する。
【0107】
-GPC分析-
Shodex LF-604カラムを搭載したSHIMADZU Prominenceを使用して、40℃のTHF(富士フイルム和光純薬株式会社製)で実施する。反射指数(RI)は、Shodex RI-504で記録する。前記分子量分布(多分散度指数(PDI):Mw/Mn)は、市販のポリスチレンから得られた検量線によって決定する。GPC分析の前に、溶液をMillex-HN(Merck、0.45μm)でろ過する。
【0108】
(ハロゲン化スチレン類モノマー重合用開始剤)
前記ハロゲン化スチレン類モノマー重合用開始剤は、上述の開始剤のとおりである。
【0109】
(ハロゲン化スチレン類モノマー重合用開始剤の製造方法)
前記ハロゲン化スチレン類モノマー重合用開始剤の製造方法は、上述の開始剤の製造方法のとおりである。
【0110】
ここで、前記ポリマーの製造方法に好適に使用されるフローマイクロリアクター及びそれを用いたポリマーの製造方法の一例を図を用いて説明する。
【0111】
図1は、フローマイクロリアクターの一例を示す模式図である。
図1に示すフローマイクロリアクターは、2つの混合手段と、5つの流通路とを備える。
流通路P1は、混合手段M1に接続されている。
流通路P2は、混合手段M1に接続されている。
流通路P3は、混合手段M2に接続されている。
流通路R1は、混合手段M1、及び混合手段M2に接続されている。流通路R1は、反応部でもある。
流通路R2は、混合手段M2に接続されている。流通路R2は、反応部でもある。
【0112】
流通路P1から混合手段M1に、前記一般式(1)で表される開始剤が供給される。流通路P2から混合手段M1に、ハロゲン化スチレン類モノマーが供給される。そうすると、混合手段M1において、前記一般式(1)で表される開始剤と、前記ハロゲン化スチレン類モノマーとが混合され、得られた液中では、前記一般式(1)で表される開始剤をアニオン重合開始剤として用いた、前記ハロゲン化スチレン類モノマーのリビングアニオン重合が開始され、リビングポリマーを生成する。
重合反応中の液は、例えば、重合しつつ、反応部でもある流通路R1を流れる。得られたポリマーは、リビングポリマーである。そのため、活性な末端を停止させるために、停止剤(例えば、メタノール)を含有する溶液を流通路P3内に流通させ、混合手段M2で前記ポリマー溶液と混合して、停止反応を行う。
【0113】
図2は、フローマイクロリアクターの一例を示す模式図である。
図2に示すフローマイクロリアクターは、3つの混合手段と、7つの流通路とを備える。
流通路P1は、混合手段M1に接続されている。
流通路P2は、混合手段M1に接続されている。
流通路P3は、混合手段M2に接続されている。
流通路P4は、混合手段M3に接続されている。
流通路R1は、混合手段M1、及び混合手段M2に接続されている。流通路R1は、反応部でもある。
流通路R2は、混合手段M2、及び混合手段M3に接続されている。流通路R2は、反応部でもある。
流通路R3は、混合手段M3に接続されている。流通路R3は、反応部でもある。
【0114】
流通路P1から混合手段M1に、アルキルアリール化合物が供給される。流通路P2から混合手段M1に、sec-BuLiが供給される。そうすると、混合手段M1において、アルキルアリール化合物と、sec-BuLiとが混合され、得られた液中では、付加反応が開始され、前記一般式(1)で表される開始剤が生成する。反応中の液は、反応しつつ、反応部でもある流通路R1を流れる。
流通路R1を流れる、前記一般式(1)で表される開始剤を含有する液は、混合手段M2に導入される。混合手段M2において、前記液は、流通路P3から供給されたハロゲン化スチレン類モノマーと混合され、得られた液中では、前記一般式(1)で表される開始剤をアニオン重合開始剤として用いた、前記ハロゲン化スチレン類モノマーのリビングアニオン重合が開始され、リビングポリマーを生成する。
重合反応中の液は、例えば、重合しつつ、反応部でもある流通路R2を流れる。得られたポリマーは、リビングポリマーである。そのため、活性な末端を停止させるために、停止剤(例えば、メタノール)を含有する溶液を流通路P4内に流通させ、混合手段M3で前記ポリマー溶液と混合して、停止反応を行う。
【0115】
図3は、フローマイクロリアクターの一例を示す模式図である。
図3に示すフローマイクロリアクターは、4つの混合手段と、9つの流通路とを備える。
流通路P1は、混合手段M1に接続されている。
流通路P2は、混合手段M1に接続されている。
流通路P3は、混合手段M2に接続されている。
流通路P4は、混合手段M3に接続されている。
流通路P5は、混合手段M4に接続されている。
流通路R1は、混合手段M1、及び混合手段M2に接続されている。流通路R1は、反応部でもある。
流通路R2は、混合手段M2、及び混合手段M3に接続されている。流通路R2は、反応部でもある。
流通路R3は、混合手段M3、及び混合手段M4に接続されている。流通路R3は、反応部でもある。
流通路R4は、混合手段M4に接続されている。流通路R4は、反応部でもある。
【0116】
流通路P1から混合手段M1に、アルキルアリール化合物が供給される。流通路P2から混合手段M1に、sec-BuLiが供給される。そうすると、混合手段M1において、アルキルアリール化合物と、sec-BuLiとが混合され、得られた液中では、付加反応が開始され、前記一般式(1)で表される開始剤が生成する。反応中の液は、反応しつつ、反応部でもある流通路R1を流れる。
流通路R1を流れる、前記一般式(1)で表される開始剤を含有する液は、混合手段M2に導入される。混合手段M2において、前記液は、流通路P3から供給されたハロゲン化スチレン類モノマーと混合され、得られた液中では、前記一般式(1)で表される開始剤をアニオン重合開始剤として用いた、前記ハロゲン化スチレン類モノマーのリビングアニオン重合が開始され、リビングポリマーを生成する。
重合反応中の液は、例えば、重合しつつ、反応部でもある流通路R2を流れる。流通路R2を流れる、前記リビングポリマーを含有する液は、混合手段M3に導入される。混合手段M3において、前記液は、流通路P4から供給されたスチレン、又はスチレン誘導体と混合され、得られた液中では、前記リビングポリマーの成長末端に、スチレン、又はスチレン誘導体のリビングアニオン重合が開始され、リビングポリマーを生成する。重合反応中の液は、例えば、重合しつつ、反応部でもある流通路R3を流れる。得られたポリマーは、リビングポリマーである。そのため、活性な末端を停止させるために、停止剤(例えば、メタノール)を含有する溶液を流通路P5内に流通させ、混合手段M4で前記ポリマー溶液と混合して、停止反応を行う。
【0117】
図4は、フローマイクロリアクターの一例を示す模式図である。
図4に示すフローマイクロリアクターは、3つの混合手段と、7つの流通路とを備える。
流通路P1は、混合手段M1に接続されている。
流通路P2は、混合手段M1に接続されている。
流通路P3は、混合手段M2に接続されている。
流通路P4は、混合手段M3に接続されている。
流通路R1は、混合手段M1、及び混合手段M2に接続されている。流通路R1は、反応部でもある。
流通路R2は、混合手段M2、及び混合手段M3に接続されている。流通路R2は、反応部でもある。
流通路R3は、混合手段M3に接続されている。流通路R3は、反応部でもある。
【0118】
流通路P1から混合手段M1に、BuLi溶液が供給される。流通路P2から混合手段M1に、THF溶液が供給される。そうすると、混合手段M1において、BuLi溶液と、THF溶液とが混合され、流通路R1を流れる。
流通路R1を流れるBuLi溶液は、混合手段M2に導入される。混合手段M2において、前記BuLi溶液と、流通路P3から供給されたハロゲン化スチレンポリマー溶液とが混合され、ハロゲン化スチレンポリマーがリチオ化される。
反応中の液は、反応部でもある流通路R2を流れる。そこへ求電子試薬溶液を含有する溶液を流通路P4内に流通させ、混合手段M3で前記ポリマー溶液と混合して、官能基化を行う。
【実施例0119】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0120】
(製造例1 ブロモスチレンポリマーの製造)
図5に示した、V型マイクロミキサー(M1:株式会社三幸精機工業製)、2つのT型マイクロミキサー(M2及びM3:株式会社三幸精機工業製)、マイクロチューブリアクター(R1、R1”、R2、及びR3:GL Sciences社製)、1つのPTFEチューブ(R1’:ISIS Co、Ltd社製)、100cmの予冷ユニット(P1、P2、P3、及びP4:GL Sciences社製)から構成される統合フローマイクロリアクターシステムを使用した。
【0121】
P1、P2、M1、R1から構成されるフローリアクターを20℃で冷却し、P3、P4、M2、M3、R1”、R2、及びR3から構成されるフローリアクターを-40℃で冷却した。
異なる温度の冷却槽内のステンレス製反応器は、PTFEチューブ(R1’)で接続した。
α-メチルスチレン溶液(0.12M THF溶液、流速:5.625mL/min;sec-BuLiに対して1.5モル当量)とsec-BuLiの溶液(0.2M ヘキサン溶液、流速:2.25mL/min)をM1(φ=250μm)に、シリンジポンプにより導入し、混合物(開始剤溶液)をR1(内径1000μm、100cm、tR1=6.0s)に通した。
前記開始剤溶液をR1’(内径1000μm、12.5cm、tR1’=0.75s)及びR1”(内径1000μm、87.5cm、tR1’’=5.2s)に通し、-40℃に冷却した。
【0122】
次に、前記開始剤溶液とp-ブロモスチレン溶液(0.75M THF溶液、流速:12.0mL/min)をM2(φ=500μm)に混合し、混合物をR2(内径1000μm、100cm、t
R2=2.1s)に通した。
得られた溶液をM3(φ=500μm)に導入し、そこへMeOH溶液(0.15M THF溶液、流速:4.5mL/min)を導入し、混合物をR3(内径1000μm、100cm、t
R3=1.7s)に通した。
定常状態に達した後、製品溶液のアリコートを10秒間収集し、アリコートを飽和NH
4Cl水溶液及びブラインで処理した。前記溶液をTHFで希釈した後、GCの内部標準としてn-テトラデカンを加えた。ろ過後、前記溶液をGC及びGPCにより分析した。結果を表1に示した。
得られたポリ-p-ブロモスチレンのMALDI-TOFMSスペクトルを
図6に示した。
【0123】
-GC分析-
Restek Rtx-200カラムを搭載したSHIMAZU GC-2014を使用して実施し、各化合物はFIDによって検出した。
α-メチルスチレン及びp-ブロモスチレンの転換率は、GC分析においてピークが検出されなかったため100%とした。
スチレンの存在量については、内部標準としてn-テトラデカンを含むスチレン溶液を用いて作成した検量線を用いて算出した。
【0124】
-GPC分析-
Shodex LF-604カラムを搭載したSHIMADZU Prominenceを使用して、40℃のTHF(富士フイルム和光純薬株式会社製)で実施した。反射指数(RI)は、Shodex RI-504で記録した。Mnは、市販のポリスチレンから得られた検量線によって決定した。GPC分析の前に、溶液をMillex-HN(Merck、0.45μm)でろ過した。
【0125】
-MALDI-TOFMS-
Bruker Daltonics社のultrafleXtreme MALDI-TOF mass spectrometerを使用して質量分析を実施した。ポリマーはTHFに溶解してプレートに塗布し、マトリックスとしてDCTBを使用した。また、ナトリウム塩又は銀塩を適宜添加剤として使用した。
【0126】
【0127】
(製造例2 クロロスチレンポリマーの製造)
図7に示した、V型マイクロミキサー(M1:株式会社三幸精機工業製)、2つのT型マイクロミキサー(M2及びM3:株式会社三幸精機工業製)、マイクロチューブリアクター(R1、R1”、R2、及びR3:GL Sciences社製)、1つのPTFEチューブ(R1’:ISIS Co、Ltd社製)、100cmの予冷ユニット(P1、P2、P3、及びP4:GL Sciences社製)から構成される統合フローマイクロリアクターシステムを使用した。
【0128】
P1、P2、M1、R1から構成されるフローリアクターを20℃で冷却し、P3、P4、M2、M3、R1”、R2、及びR3から構成されるフローリアクターを-40℃で冷却した。
異なる温度の冷却槽内のステンレス製反応器は、PTFEチューブ(R1’)で接続した。
α-メチルスチレン溶液(0.12M THF溶液、流速:5.625mL/min;sec-BuLiに対して1.5モル当量)とsec-BuLiの溶液(0.2M ヘキサン溶液、流速:2.25mL/min)をM1(φ=250μm)に、シリンジポンプにより導入し、混合物(開始剤溶液)をR1(内径1000μm、100cm、tR1=6.0s)に通した。
前記開始剤溶液をR1’(内径1000μm、12.5cm、tR1’=0.75s)及びR1”(内径1000μm、87.5cm、tR1’’=5.2s)に通し、-40℃に冷却した。
【0129】
次に、前記開始剤溶液とp-クロロスチレン溶液(0.75M THF溶液、流速:12.0mL/min)をM2(φ=500μm)に混合し、混合物をR2(内径1000μm、100cm、t
R2=2.1s)に通した。
得られた溶液をM3(φ=500μm)に導入し、そこへMeOH溶液(0.15M THF溶液、流速:4.5mL/min)を導入し、混合物をR3(内径1000μm、100cm、t
R3=1.7s)に通した。
定常状態に達した後、製品溶液のアリコートを2分30秒間収集した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させた。最終的に、3.3gのポリ-p-クロロスチレンが得られた。
得られたポリ-p-クロロスチレン(Mn=3388Da、PDI=1.12)のMALDI-TOFMSスペクトルを
図8に示した。
【0130】
(実施例1 宮浦ホウ素化反応によるポリ-p-ブロモスチレンへのボリル基(Bpin)の導入)
以下のスキームに示すとおり、製造例1と同様の操作で得られたポリ-p-ブロモスチレン(71mg、Mn=4106Da、PDI=1.20)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(18mg、0.020mmol)、Xphos(36mg、0.076mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(141mg、0.55mmol)、及びKOAc(106mg、1.1mmol)を1.8mLの1,4-ジオキサンに溶解し、Ar雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させ、60mgの修飾ポリマーを得た(Mn=7338Da、PDI=1.20)。
【化30】
【0131】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図9に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図9のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が230であることより、ポリ-p-ブロモスチレンへボリル基が導入できたことが分かった。
【0132】
(実施例2-1 宮浦ホウ素化反応によるポリ-p-クロロスチレンへのボリル基(Bpin)の導入)
以下のスキームに示すとおり、製造例2で得られたポリ-p-クロロスチレン(49mg、Mn=3388Da、PDI=1.12)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(14mg、0.015mmol)、Xphos(33mg、0.070mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(133mg、0.53mmol)、及びKOAc(93mg、0.95mmol)を1.7mLの1,4-ジオキサンに溶解し、Ar雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させ、27mgの修飾ポリマーを得た(Mn=7599Da、PDI=1.15)。
【化31】
【0133】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図10に示した。
図8のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が138であり、
図10のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が230であることより、ポリ-p-クロロスチレンへボリル基が導入できたことが分かった。
【0134】
(実施例2-2 ポリ-p-ヒドロキシスチレンの合成 多段階修飾)
以下のスキームに示すとおり、実施例2-1で得られたポリ-p-Bpinスチレン(19mg、Mn=7599Da、PDI=1.15)及びK
3PO
4(103mg、0.48mmol)をTHF(4.2mL)に溶解し、H
2O(2.5ml)中のOxone(登録商標)(84mg、0.14mmol)を滴下した。混合物を室温で1時間撹拌した。次に、溶液をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。ポリマーをGPC(THF)で精製し、16mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6961Da、PDI=1.14)。
【化32】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図11に示した。
図8のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が230であり、
図11のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が120であることより、ボリル基がヒドロキシ基に置換できたことが分かった。
【0135】
(実施例3 鈴木カップリング反応によるポリ-p-ブロモスチレンへのアルデヒド基を有するフェニル基の導入)
以下のスキームに示すとおり、製造例1で得られたポリ-p-ブロモスチレン(202mg、Mn=3471Da、PDI=1.15)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアルデヒド(491mg、2.1mmol)、Pd(dppf)Cl
2(80mg、0.11mmol)、及びK
2CO
3(443mg、3.2mmol)を10mLのTHF/H
2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させ、238mgの修飾ポリマーを得た(Mn=4304Da、PDI=1.11)。
【化33】
【0136】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図12に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図12のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が208であることより、ポリ-p-ブロモスチレンへアルデヒド基を有するフェニル基が導入できたことが分かった。
【0137】
(実施例4 鈴木カップリング反応によるポリ-p-ブロモスチレンへのエポキシ基を有するフェニル基の導入)
以下のスキームに示すとおり、製造例1で得られたポリ-p-ブロモスチレン(49mg、Mn=4106Da、PDI=1.20)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-(オキシラン-2-イルメトキシ)フェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(147mg、0.53mmol)、Pd(dppf)Cl
2(18mg、0.025mmol)、及びK
2CO
3(104mg、0.75mmol)を2.6mLのTHF/H
2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒および貧溶媒としてTHFおよびMeOHで再沈殿させ、75mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6029Da、PDI=1.20)。
【化34】
【0138】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図13に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図13のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が252であることより、ポリ-p-ブロモスチレンへエポキシ基が導入できたことが分かった。
【0139】
(実施例5 鈴木カップリング反応によるポリ-p-ブロモスチレンへのビニル基を有するフェニル基の導入)
以下のスキームに示すとおり、製造例1で得られたポリ-p-ブロモスチレン(52mg、Mn=4106Da、PDI=1.20)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4-ビニルフェニル)-1,3,2-ジオキサボロラン(126mg、0.55mmol)、Pd(dppf)Cl
2(19mg、0.026mmol)、及びK
2CO
3(107mg、0.77mmol)を2.6mLのTHF/H
2O(9:1)に溶解し、スチレン誘導体に対する重合阻害剤として少量の4-tert-ブチルピロカテコールを加えた。次に、溶液をAr雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させ、92mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6102Da、PDI=1.33)。
【化35】
【0140】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図14に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図14のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が206であることより、ポリ-p-ブロモスチレンへビニル基を有するフェニル基が導入できたことが分かった。
【0141】
(実施例6 フローリアクターを用いたポリ-p-ブロモスチレンのリチオ化及び官能基化)
図15に示した、2つのT型マイクロミキサー(M1、M3:株式会社三幸精機工業製)、1つのV型マイクロミキサー(M2:株式会社三幸精機工業製)、マイクロチューブリアクター(R1、R2、及びR3:GL Sciences社製)、及び100cmの予冷ユニット(P1、P2、P3、及びP4:GL Sciences社製)から構成される統合フローマイクロリアクターシステムを使用した。
【0142】
P1、P2、P3、P4、M1、M2、M3、R1、及びR2から構成されるフローリアクターを-40℃のアセトン-ドライアイスバスで冷却し、R3から構成されるフローリアクターを20℃のウォーターバスで冷却した。
nBuLi溶液(1.58M ヘキサン溶液、市販、流速:0.755mL/min)とTHF溶液(流速:0.745mL/min)をM1(φ=250μm)に、シリンジポンプにより導入し、混合物をR1(25cm)に通した。
BuLi溶液とポリ-p-ブロモスチレン溶液(MALDI-TOFMS測定から推定されたBr基の数に基づく、0.01M THF溶液、流量:12.0mL/min)をM2(φ=500μm)で混合し、混合物をR2(100cm)に通した。
得られた溶液をM3(φ=500μm)に導入し、そこへ、下記の実施例6-1から実施例6-6に記載の求電子試薬溶液(1.2M THF溶液、流速:2.0mL/min)を導入し、混合物をR3(100cm)に通した。
定常状態に達した後、得られた溶液を2mLの飽和NH4Cl水溶液を含むバイアルに60秒間収集した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾されたポリマーを再沈殿させた。
【0143】
(実施例6-1 H化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬としてMeOHを使用し、THF及びMeOHをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、12.7mgの修飾ポリマーを得た(Mn=4255、PDI=1.15)。
【0144】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図16に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図16のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が104であることより、ポリ-p-ブロモスチレンの臭素が水素原子に置換できたことが分かった。
【0145】
(実施例6-2 D化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬としてCD3ODを使用し、THF及びMeOHをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、13mgの修飾ポリマーを得た(Mn=3764Da、PDI=1.18)。
【0146】
得られた修飾ポリマーのMALDI-TOFMSスペクトルを
図17に示した。
図6のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が183であり、
図17のMALDI-TOFMSスペクトルのピーク間隔が105であることより、ポリ-p-ブロモスチレンの臭素が重水素に置換できたことが分かった。
【0147】
(実施例6-3 ボリル化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬として2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロランを使用し、THF及びMeOHをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、16mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6623Da、PDI=1.15)。
【0148】
得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルを
図18に示した。
図18において、1.5ppm付近の大きなピークがピナコールボリル基由来のピークである。
図18の結果より、ポリ-p-ブロモスチレンへピナコールボリル基が導入できたことが分かった。
【0149】
(実施例6-4 ホルミル化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬としてDMFを使用し、THF及びヘキサンをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、18mgの修飾ポリマーを得た(Mn=4534Da、PD=1.20)。
【0150】
得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルを
図19に示した。
図19において、10ppm付近にあるピークがアルデヒド基由来のピークである。
図19の結果より、ポリ-p-ブロモスチレンへアルデヒド基が導入できたことが分かった。
(実施例6-5 エステル化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬としてクロロギ酸メチルを使用し、THF及びMeOHをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、15mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6439Da、PDI=1.39)。
【0151】
得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルを
図20に示した。
図20において、4ppm付近にあるピークがメチルエステル由来のピークである。
図20の結果より、ポリ-p-ブロモスチレンへメチルエステルが導入できたことが分かった。
【0152】
(実施例6-6 TMS化)
ポリ-p-ブロモスチレン(Mn=4106Da、PDI=1.20)と、求電子試薬としてTMSClを使用し、THF及びMeOHをそれぞれ良溶媒及び貧溶媒として再沈殿させ、18mgの修飾ポリマーを得た(Mn=5597Da、PDI=1.16)。
【0153】
得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルを
図21に示した。
図21において、0.3ppm付近のピークがTMSのメチル基由来のピークである。
図21の結果より、ポリ-p-ブロモスチレンへトリメチルシリル基が導入できたことが分かった。
【0154】
(実施例7 フローリアクターを用いたポリ-p-ブロモスチレンの一部リチオ化及び官能基化、並びにそれに続く鈴木カップリングによるブロックコポリマーの合成)
図22に示した、2つのT型マイクロミキサー(M1、M3:株式会社三幸精機工業製)、1つのV型マイクロミキサー(M2:株式会社三幸精機工業製)、マイクロチューブリアクター(R1、R2、及びR3:GL Sciences社製)、及び100cmの予冷ユニット(P1、P2、P3、及びP4:GL Sciences社製)から構成される統合フローマイクロリアクターシステムを使用した。
【0155】
(実施例7-1 フローリアクターを用いたポリ-p-ブロモスチレンの一部リチオ化及びTMS化)
P1、P2、P3、P4、M1、M2、M3、R1、及びR2から構成されるフローリアクターを-40℃のアセトン-ドライアイスバスで冷却し、R3から構成されるフローリアクターを20℃のウォーターバスで冷却した。
nBuLi溶液(1.58M ヘキサン溶液、市販、流速:0.151mL/min)とTHF溶液(流速:1.349mL/min)をM1(φ=250μm)に、シリンジポンプにより導入し、混合物をR1(25cm)に通した。
BuLi溶液とポリ-p-ブロモスチレン溶液(MALDI-TOFMS測定から推定されたBr基の数に基づく、0.01M THF溶液、流量:12.0mL/min、Mn=4106Da、PDI=1.20)をM2(φ=500μm)で混合し、混合物をR2(100cm)に通した
得られた溶液をM3(φ=500μm)に導入し、そこへ、TMSCl溶液(1.2M THF溶液、流速:2.0mL/min)を導入し、混合物をR3(100cm)に通した。
定常状態に達した後、得られた溶液を2mLの飽和NH4Cl水溶液を含むバイアルに120秒間収集した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾されたポリマーを再沈殿させた。
【0156】
(実施例 7-2 鈴木カップリング)
以下のスキームに示すとおり、実施例7-1で得られた全量の修飾ポリマー、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンズアルデヒド(121mg、0.52mmol)、Pd(dppf)Cl
2(18mg、0.024mmol)、及びK
2CO
3(124mg、0.90mmol)を2.6mLのTHF/H
2O(9:1)に溶解し、Ar雰囲気下で一晩還流した。混合物をブラインで洗浄し、有機相を減圧下で除去した。次に、修飾ポリマーを、それぞれ良溶媒及び貧溶媒としてTHF及びMeOHで再沈殿させ、39mgの修飾ポリマーを得た(Mn=6383Da、PDI=1.14)。
【化36】
【0157】
得られた修飾ポリマーの
1H-NMRスペクトルを
図23に示した。
図23において、10ppm付近のピークがアルデヒド基由来のピークであり、0.3ppm付近のピークがTMSのメチル基由来のピークである。
図23の結果より、ポリ-p-ブロモスチレンからランダムコポリマーが合成できたことが分かった。
【0158】
合成されたポリマーの同定法としては質量分析が最も正確である。ポリハロスチレンにおいてハロゲンの変換率が100%程度と十分に高ければ、質量分析においてポリマーを構成するユニットの質量の間隔で一つの分布を持ったピーク群が得られる。例えば、鈴木カップリングによるベンズアルデヒドの導入の場合、結果として得られたポリマーのMALDI-TOFMSではピーク間隔が208m/zの間隔でピークが分布している。
リチオ化を行った後の官能基化では、メタノール及び重メタノールを用いたH化及びD化において完全ではないものの、ピークが比較的シャープに観測されており、MALDI-TOFMSによる同定が可能であった。
リチオ化を行った後のTMS化、ボリル化、ホルミル化、及びエステル化においては、リチオ化は十分な変換率で進行しているものの、官能基化が十分進行しなかったため質量分析による同定は行えなかった。一方、1H-NMRスペクトルにおいてTMS基、ピナコールボリル基、アルデヒド基、及びメチルエステル基由来の特徴的なピークが観測されており、原料では見られなかったそれらのピークの出現を基に官能基化が行えていると判断できた。
【0159】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> ハロゲン化スチレン類モノマーを、下記一般式(1)で表される開始剤の存在下で、マイクロリアクターを用いてアニオン重合させるアニオン重合工程、及び前記アニオン重合工程で得られたポリマーを修飾する修飾工程を含むポリマーの製造方法である。
ただし、前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基である。
【化37】
<2> 前記アリール基がフェニル基である、前記<1>に記載のポリマーの製造方法である。
<3> 前記一般式(1)中、R
1及びR
2の一方が、炭素数1~10のアルキル基である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<4> 前記一般式(1)で表される開始剤が、sec-BuLiと、アルキルアリール化合物とを反応させて得られる、前記<1>から<3>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<5> さらに、前記アニオン重合工程において、前記ハロゲン化スチレン類モノマーをアニオン重合させて得られたポリマーに対し、モノマーを重合させる工程を含み、前記モノマーが、スチレン、又はスチレン誘導体である、前記<1>から<4>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<6> 前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、鈴木カップリング反応、宮浦ホウ素化反応、及びリチオ化反応の少なくともいずれかにより、同一の又は異なる官能基で置換することを含む、前記<1>から<5>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<7> 前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、ヒドロキシ基で置換することを含む、前記<6>に記載のポリマーの製造方法である。
<8> 前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーにおけるハロゲン原子の少なくとも一部を、宮浦ホウ素化反応によりホウ素含有基で置換し、置換した前記ホウ素含有基を酸化剤によりヒドロキシ基に置換することを含む、前記<6>に記載のポリマーの製造方法である。
<9> 前記修飾工程における修飾が、前記ポリマーをマイクロリアクターを用いて修飾することを含む、前記<1>から<8>のいずれかに記載のポリマーの製造方法である。
<10> 下記一般式(3)又は(4)のいずれかで表され、分子量分布が1.4以下であるポリマーである。
【化38】
ただし、前記一般式(3)中、m及びnは重合度を表し、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はアスタチン原子のいずれかであり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基であり;aは、1~5の整数である。Y基を有しないスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
ただし、前記一般式(4)中、m及びnは重合度を表し、それぞれ1以上の整数である。R
5及びR
6の一方がアリール基であり、他方がアリール基、又は炭素数1~10のアルキル基であり;Yは、水素原子、重水素原子、アルデヒド基、ボリル基、ヒドロキシ基、アセトキシ基、トリメチルシリル基、又は下記構造式(4)から(6)のいずれかで表される基である。ベンズアルデヒド基を有するスチレン構造単位とY基を有するスチレン構造単位の結合順序は順不同であり、前記ポリマーは、ランダムポリマーであってもブロックポリマーであってもよい。
【化43】
【化44】
【化45】