(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012658
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ペットのアレルギー緩和用経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23K 10/30 20160101AFI20220107BHJP
A23K 20/142 20160101ALI20220107BHJP
A23K 50/40 20160101ALI20220107BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20220107BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220107BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A23K10/30
A23K20/142
A23K50/40
A61K31/198
A61P37/08
A61P43/00 171
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114656
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000204181
【氏名又は名称】太陽化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108280
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小関 誠
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
4C206
【Fターム(参考)】
2B005AA05
2B150AA06
2B150AB10
2B150AE09
2B150AE37
2B150CE02
2B150DA43
2B150DD44
2B150DD57
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA20
4C206GA22
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA72
4C206NA14
4C206ZB13
4C206ZC61
(57)【要約】
【課題】 イヌ、ネコなどのペットについて、グルテンなどによるアレルギー症状を発症させにくく、安全であると共に、ペットの問題行動の発症を有効に予防、改善、または緩和させられる経口組成物を提供すること。
【解決手段】 テアニンを含有することを特徴とするペットのエサに対するペットのアレルギー緩和用経口組成物によって達成される。このとき、アレルギー緩和用経口組成物が、テアニンとグルテンとを含有することを特徴とするペットの問題行動抑制用経口組成物であることが好ましく、グルテンが活性グルテンであることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テアニンを含有することを特徴とするペットのエサに対するペットのアレルギー緩和用経口組成物。
【請求項2】
前記アレルギーが、コムギタンパク及び卵白からなる群から選択される少なくとも一つの物質に対するものである請求項1に記載のペットのアレルギー緩和用経口組成物。
【請求項3】
テアニンとグルテンとを含有することを特徴とするペットの問題行動抑制用経口組成物。
【請求項4】
前記グルテンが、活性グルテンである請求項3に記載のペットの問題行動抑制用経口組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載のペットの問題行動抑制用経口組成物である請求項1または2に記載のアレルギー緩和用経口組成物。
【請求項6】
前記経口組成物がペットフードである請求項5に記載のアレルギー緩和用経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットのアレルギー緩和用経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームや住宅事情の変化に伴い、ペットの飼育方法は変化している。例えば、イヌに関していえば、従来は番犬または猟犬として飼育されていたが、室内で室内犬として飼育されてきている。また、ネコに関しても同様で、従来は屋外中心で飼育されていたものが、住居内を中心に飼育されるようになってきた。また、飼い主の考え方も変化しており、ペットを家族の一員として考え方も浸透してきている。ペットフードについても健康志向が高まっており、ペットの健康に優れたペットフードが望まれている。
グルテンはペットフードによく用いられる原料である。グルテンは高い結着性があるため、ペレットは顆粒等に成型する際に結着剤として用いられる。一方、犬、猫は肉食系の動物であり本来は肉を主食としていたため、穀物についての消化能力は低いためグルテンなどの消化は不十分となることがある。グルテンなどのタンパク質が消化されずに吸収されると、アレルギー反応が惹起されやすくなる。
【0003】
グルテンが原因で発症するアレルギー反応としてグルテン過敏腸疾患やセリアック病が知られており、グルテンに対し異常な免疫反応を生じることで自己の小腸粘膜にダメージを与える免疫異常反応のひとつである。小腸に障害を受けると栄養吸収に支障を生じ腹痛や下痢といった疾患を引起こすとされている。セリアック病やグルテン過敏性腸炎の治療薬や方法の一例として、特許文献1には、CD40に特異的に結合する抗CD40抗体を用いた治療方法が、特許文献2には、NR4A2遺伝子の発現を抑制するオリゴヌクレオチドを含む自己抗体依存性自己免疫疾患の治療剤が開示されている。また、特許文献3には、カンナビノイド受容体モジュレータとしてのアザビシクロ複素環を含む治療薬と治療方法が、特許文献4には、グルココルチコイド受容体、AP-1および/またはNF-κB活性の調整剤として有効な非ステロイド性化合物並びにその使用方法が、特許文献5には、外因性ビタミンK2を含む炎症調節用組成物並びに調整および使用する方法が開示されている。これらの技術は医薬品として用いられるため、食品としての応用は困難である。
【0004】
グルテンに対するアレルギー反応を避けるためグルテンフリーのペットフードも存在する。しかし、そのようなペットフードは、価格が高く品数も限られることから一般的には利用しにくい。また、ペットフードを製造するためには、ペットが食べやすくするための結着剤が必要であり、成型製の高いグルテンが用いられることは避けられない。その理由として、グルテンで成型して乾燥させたドライペットフードは半生(セミドライ)やウェットペットフードより入手や保存性が良いため利用しやすいといったメリットがあるからである。
【0005】
一方、ペットの飼育数が増加することに伴って、ペットの室内飼育のためのしつけ及び訓練の失敗や老齢に伴う新しい疾病が知られるようになってきた。例えば、室内犬については、攻撃、破壊、不適切な排泄、自分の足を何度も繰り返し舐める及び過剰な吠えなどの問題行動が知られている。また、ネコについては、不適切な排泄及びひっかきなどの問題行動が知られている。これらの問題行動を抑制する典型的な方法として、薬物療法が挙げられる。しかし、抗不安薬、ホルモン剤、トランキライザー等の投与は副作用や中毒の危険性が高かった。そこで、安全かつペットの精神状態に関係なく、有効に作用する治療方法が望まれている。
そのような治療方法の一例として、特許文献6には、テアニンを含有するペットの問題行動を抑制する組成物が記載されている。この文献には、車酔いや熱中症という問題行動の抑制に効果があるものとして、テアニンと高度不飽和脂肪酸(アラキドン酸、DHA、EPA等)及びコリンのうち一種または二種以上とを含有する組成物が開示されている。特許文献7には、カツオの卵巣から抽出した油脂を主成分として含有する経口製剤が、ペット又は家畜の問題行動を予防、緩和または改善する効果があるとの開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007-510666号公報
【特許文献2】特開2018-172327号公報
【特許文献3】特表2007-514770号公報
【特許文献4】特表2011-503081号公報
【特許文献5】特表2013-504572号公報
【特許文献6】特開2001-31566号公報
【特許文献7】特開2007-246430号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】米山光俊、高等脊椎動物における免疫制御、化学と生物 Vol.50, No.4, 2012, p.243-249
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上に述べたような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、イヌ、ネコなどのペットについて、グルテンなどによるアレルギー症状を発症させにくく、安全であると共に、ペットの問題行動の発症を有効に予防、改善、または緩和させられる経口組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するための本発明に係るペットのアレルギー緩和用経口組成物は、テアニンを含有することを特徴とする。
このとき、前記アレルギーが、コムギタンパク及び卵白からなる群から選択される少なくとも一つの物質に対するものであることが好ましい。
また、別の発明に係るペットの問題行動抑制用経口組成物は、テアニンとグルテンとを含有することを特徴とする。このとき、前記グルテンが、活性グルテンであることが好ましい。
また、上記ペットの問題行動抑制用経口組成物が、上記アレルギー緩和用経口組成物であることが好ましい。
また、前記経口組成物がペットフードであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、イヌ、ネコなどのペットについて、グルテンなどによるアレルギー症状を発症させにくく、安全であると共に、ペットの問題行動の発症を有効に予防、改善、または緩和させられる経口組成物を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】ラット血清中IgE濃度を測定した結果を示す棒グラフである。
【
図2】ラット血清中の抗小麦タンパクIgE濃度を測定した結果を示す棒グラフである。
【
図3】ラット血清中の抗卵白タンパクIgE濃度を測定した結果を示す棒グラフである。
【
図4】糞便性状を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図5】犬群番号Iについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図6】犬群番号IIについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図7】犬群番号IIIについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図8】犬群番号IVについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図9】犬の問題行動の変化に関するデータについて、統計解析を行った結果を示すグラフである。
【
図10】猫群番号Iについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図11】猫群番号IIについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図12】猫群番号IIIについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図13】猫群番号IVについて、問題行動の変化を調べた結果を示す棒グラフである。
【
図14】猫の問題行動の変化に関するデータについて、統計解析を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図表を参照しつつ説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施できる。
本発明のテアニンとは、アミノ酸の一種で水溶性の白色の結晶粉末である。テアニンを得るためには、茶葉から抽出する方法、有機合成反応させて得る方法(Chem. Pharm. Bull., 19(7), 1301-1307(1971))、グルタミンとエチルアミンの混合物にグルタミナーゼを作用させて得る方法(特公平7-55154号)、エチルアミンを含有する培地で茶の培養細胞群を培養し、培養細胞群中のテアニン蓄積量を増加させつつ培養細胞群の増殖促進を図る方法(特開平5-123166号)、エチルアミンをエチルアミン塩酸塩などのエチルアミン誘導体に置き換えて得る方法などがある。本発明に用いられるテアニンは、上記いずれの方法により得られたものを用いることができる。茶葉としては、緑茶、ウーロン茶、紅茶などが例示される。
【0013】
テアニンとしては、L体、D体、DL体のいずれも使用可能である。これらのうち、L体テアニンは、食品添加物にも認められており、経済的にも利用しやすいため、L体を用いることが好ましい。テアニンは、精製品、粗精製品、抽出エキス等でいずれの形状でも用いることができる。
グルテンとは、小麦、大麦、ライ麦、とうもろこし(コーン)などの穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種で、グルテニンとグリアジンが水を吸収して網目状につながった構造をし、粘着性と弾性を兼ね備えた物質である。グルテンの原料としては、小麦、大麦、ライ麦、とうもろこし(コーン)などの穀物から選ばれる一種もしくは複数の組合せでも良いが、入手のし易さから小麦が好ましい。グルテンは、精製したものを用いてもよい。また、小麦種子由来の蛋白質(小麦蛋白質)そのものを用いてもよい。例えば、グルテンは、小麦蛋白質中に80~90%程度含まれているので、小麦蛋白質を原料としてグルテンを得ることができる。グルテンとしては、小麦から調製されたもの、グルテン含量が多い(例えば80%以上)蛋白質、または市販のグルテン又は小麦蛋白質などを用いることができる。
【0014】
グルテンとしては、好ましくは活性グルテンを意味する。活性グルテンとは、小麦粉と水とを混捏して生地としたとき、その生地中に小麦蛋白質のチオール基がS-S結合を形成することに伴って発達する成分をいう。例えば小麦粉に水を加えて混捏して生地を作り、この生地を水洗しながら澱粉質を洗い流すことにより得られる水分を60~70質量%含む生グルテンや、これを乾燥させ粉末状にした粉末グルテンが例示される。
【0015】
活性グルテンは、例えば下記の方法により製造できる。
小麦粉に水を加えて練り、得られたドウ(dough)を水洗し、ウエットグルテン(生グルテン)を得た後、真空凍結乾燥法やフラッシュドライ法等の公知の方法により乾燥する。乾燥物を粉砕処理することで活性グルテンを得る。
上記ウエットグルテン(生グルテン)のゲル形成強度は高いほど好ましく、破断強度として、好ましくは4g/cm2以上、更に好ましくは8g/cm2以上、最も好ましくは20g/cm2以上である。
小麦粉と水とを混合するための攪拌型混合造粒機としては、攪拌・混合羽根と造粒羽根を併せ持つ混合造粒機であれば特に限定されず、例えばハイスピードミキサー(深江パウテック社製)、ハイフレックスグラル(深江パウテック社製)、グラニュレーター(奈良機械製作所社製)、バーチカル・グラニュレーター(パウレック社製)等を用いることができる。攪拌型混合造粒機の条件としては、攪拌時の槽内の内容物の品温約40℃~65℃、混合時間約5分間~30分間を例示できる。
【0016】
乾燥物を粉砕処理するための装置としては、特に限定されず、例えばカッターミル、ハンマーミル又はボールミル等の粗粉砕機;ファインインパクトミル(ホソカワミクロン社製)、スーパースクリーンミル(奈良機械製作所社製)等の微粉砕機;アトマイザー(パウレック社製)、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン社製)等の超微粉砕機;などを用いることができる。粉砕処理後、得られた粉砕物を必要に応じて篩い分けし、目的とする粒子形のものを得ても良い。粉砕処理された活性グルテンの平均粒子径は、好ましくは約30μm~200μm、より好ましくは約50μm~150μmである。
【0017】
ペットの問題行動とは、犬の場合には、威嚇、齧り、唸り、噛み、興奮などが例示され、猫の場合には、ジャレ咬み・甘咬み、爪とぎなどが例示される。
犬の威嚇とは、相手よりも自分が優位にあることや、縄張りなどを示すための行動であり、例えば歯をむき出す、低い唸り声を上げる、噛み付くなどの行動が挙げられる。
犬の齧りとは、例えば家具や家電などを齧って、傷つけ壊すなどの行動が挙げられる。
犬の唸りとは、例えば飼い主や家族、来客、他の犬に対して唸り声を上げて威嚇する行動が挙げられる。
犬の噛みとは、例えば人やものに歯を当てる行動が挙げられる。
犬の興奮とは、例えば尾を振って飛びつく、サイレン、車のクラクションなどに反応する、散歩中に喜んでリードを引っ張る、ボール遊びなどに熱中して激しく反応するなどの行動が挙げられる。
【0018】
猫のジャレ咬み・甘咬みとは、例えば猫が人の手や足にじゃれついて噛みつく、部屋の中を歩いている飼い主の足に突然飛びかかって噛みつく、本気ではなく弱い力で軽く咬みつく行為などの行動が挙げられる。
猫の爪とぎとは、飼い主が用意した爪とぎ用の場所以外で爪をとぐなどの行動で、例えば爪とぎ器を用意してもそれを使わず、柱や壁、木製や籐製の家具、皮革や布製のソファの家具、カーペットでとぐなどの行動が挙げられる。
【0019】
グルテンに対するアレルギー反応とは、グルテン不耐症であることを示し、グルテンである抗原に対し異常な免疫反応を生じることであり自己免疫疾患としてのアレルギー反応が挙げられる。グルテン不耐症又の症状には、腹痛、腹部膨満及び下痢が挙げられる。重度かつ長期に渡る場合、例えば腸管粘膜に炎症性の変化が起こるときには、栄養分の吸収障害、疲労、慢性的な下痢、体重減少、腹部膨満、貧血、出血傾向の増大、並びに消化器系のリンパ腫及び癌腫などの悪性腫瘍の危険性の増大を招くことがある。更に、グルテン不耐症と関係がある関連疾患として、疱疹状皮膚炎などが挙げられる。
【0020】
テアニンの有効量は、好ましくは1日あたり経口摂取量として、0.1~25 mg/kg体重、かつテアニンとグルテンの含量比が1:10~1:100000、更に好ましくは0.2~20 mg/kg体重、かつテアニンとグルテンの含量比が1:50~1:10000である。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、本発明の技術的範囲は、下記実施例のみに限定されるものではない。
【0021】
<実施例1> 酵素法によるテアニンの製造
0.3Mグルタミン及び1.5M塩酸エチルアミンを0.05Mホウ酸緩衝液(pH11)中、0.3Uグルタミナーゼ(市販品)存在下にて、30℃、22時間反応させ、225nmolのL-テアニンを得た。次いで、反応液をDowex 50×8、Dowex 1×2カラムクロマトグラフィー(共に室町化学工業(株)製)にかけ、これをエタノール処理することにより、反応液から目的物質を単離した。
この単離物質をアミノ酸アナライザー(日立製作所株式会社製)、ペーパークロマトグラフィーにかけ、標準物質と同じ挙動を示すことにより、当該物質がL-テアニンであることを確認した。塩酸またはグルタミナーゼで加水分解処理を行うと、1:1の割合でグルタミン酸とエチルアミンを生じた。単離物質がグルタミナーゼによって加水分解されたことから、エチルアミンがグルタミン酸のγ位に結合していたことが示された。加水分解で生じたグルタミン酸がL-体であることは、グルタミン酸デヒドロゲナーゼにより確認した。以上より、8.5gのL-テアニンを得た。
【0022】
<実施例2> テアニンの茶葉からの抽出
茶(Camellia sinensis)の葉10kgを熱水で抽出後、カチオン交換樹脂(室町化学工業(株)製Dowex HCR W-2)に通し、1N NaOHにより溶出した。溶出画分を活性炭(二村化学工業(株)製太閤活性炭SG)に通し、15%エタノールによる溶出画分をRO膜(日東電工(株)製NTR729HF)を用いて濃縮し、カラムクロマトグラフィーにて精製し、更に再結晶を行い、L-テアニン24.8gを製造した。
以下の各試験および各組成物の製造には、L-テアニン[商品名:サンテアニン、太陽化学株式会社製]を用いた。なお、本発明においては、サンテアニン以外にも上記実施例1,2で示した方法で製造・抽出されたテアニンを用いても同様の効果が得られる。
【0023】
<実施例3> 活性グルテンの製造
1) 強力2等粉(粗タンパク量14%)220gに水145gを加え、ファリノグラフ(型式:8101型;BRABENDER社製)を用いて63rpmで10分間~30分間攪拌混合し、小麦粉ドウを調製した。以下、撹拌混合時間が10分間のものを実施例3(1)、20分間のものを実施例3(2)、30分間のものを実施例3(3)とした。
2) 1)の小麦粉ドウを多量の水で洗い澱粉を洗い流し、生グルテンを得た。
3) 2)で混練した生グルテンを-20℃の冷凍庫で5時間保存した後、真空凍結乾燥機(型式:FZ-6;LABCONCO社製)を用いて、20℃、80×10-3~100×10-3mBARの条件で凍結乾燥した。
4) 得られた乾燥物をミル(製品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL;三田村理研工業社製)で粉砕処理し、活性グルテン40gを作製した。
【0024】
<実施例4> 還元処理グルテンの製造
還元処理グルテンとして、小麦由来のグルテンをピロ亜硫酸ナトリウムで還元処理したものを用いた。
1) 亜硫酸ナトリウム400gを溶解した水溶液10000gに活性グルテン[商品名:エマソフトM-1000]2000gを加え、30℃にて60分間撹拌し、生グルテンを得た。
2) 上記1)で得られた混合物を、真空凍結乾燥機(型式:FZ-6;LABCONCO社製)を用いて、20℃、80×10-3~100×10-3mBARの条件で凍結乾燥した。
3) 上記2)で得られた乾燥物をミル(製品名:ULTRA CENTRIFUGAL MILL;三田村理研工業社製)で粉砕処理し、還元処理グルテン1200gを作製した。
【0025】
<測定例1> グルテンの破断強度の評価
実施例3で製造した活性グルテン(3(1)~3(3))、および実施例4で製造した還元処理グルテンについて、生グルテンの状態において下記測定条件に基づき、ゲル強度として破断強度を測定した。得られた破断強度(g/cm2)について表1に示した。
破断強度測定条件
・プランジャー: 圧縮弾性用 Dφ10mm
・テーブルスピード:10cm/min
・感度:2kg
・レコーダー:HIOKI
・チャートスピード180mm/min.
・感度:0.5V
・サンプル形状:直径48mm×高さ30mm
【0026】
【0027】
<実施例5> グルテンフリーペットフードの製造
アマミール9kg、噴霧乾燥卵白粉末3.6kgの混合物を30℃まで上昇させて混合した後、冷凍肉および肉副産物30kgおよび水0.6kgを添加し、30分間混合した。次に、この混合物に残りの原材料、着色料、香味料、ビタミン類、ミネラル類、及び大豆タンパク質濃縮物を配合し、混合してドウを作製した。次いで、このドウをSiefer Mill(Siefer Machinenfabrik GmbH & Co.)に送り込み、排出温度300℃、圧力を100psi未満に維持した。
熱したドウ混合物を管状熱交換器を通して送り込み、約105℃にまで製品を冷却し、含水量55.1%の肉類似食品として平板にした後、サイコロ状に切断することで、グルテンフリーペットフードを製造した。
以下の各試験および各組成物の製造には、市販の乾燥グルテンフリーペットフード[商品名:ナチュラルバランス オリジナル ウルトラ グレインフリー チキン、製造者:Natural Balance, PET FOOS Inc.(原材料:チキン、豆、チキンミール、レンズ豆、鶏脂肪(ミックストコフェロールで保存)、サツマイモ、亜麻仁、エンドウ豆デンプン、ナチュラルフレーバー、乾燥卵、メンハーデンフィッシュオイル(ミックストコフェロールで保存)、ドライトマトポマス、塩、塩化カリウム、リン酸二カルシウム、タウリン、DL-メチオニン、乾燥リンゴ、乾燥クランベリー、乾燥ホウレンソウ、乾燥カボチャ、乾燥ニンジン、ミネラル類(亜鉛、硫酸亜鉛、硫酸鉄、鉄、硫酸銅、銅、硫酸マンガン、マンガン、ヨウ化カルシウム、亜セレン酸ナトリウム)、ビタミン類(ビタミンE、ナイアシン、D-パントテン酸カルシウム、ビタミンA、リボフラビン、チアミン一硝酸塩、ビタミンD3、ピリドキシン塩酸塩、葉酸、ビオチン、ビタミンB12)、L-アスコルビル-2-ポリリン酸(ビタミンC)、乳酸、クエン酸(保存料)、L-カルニチン、ユッカシジゲラエキス、ローズマリーエキス)]を用いた。
【0028】
<実施例6> テアニン添加グルテンフリーペットフードの製造
表2に示す割合で原材料を配合し、テアニン添加グルテンフリーペットフードを製造した。
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕されたペットフード10000gとL-テアニン2gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に5分間、混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン添加グルテンフリーペットフード9700gを得た。
【0029】
【0030】
<実施例7> テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードの製造
表2に示す割合で原材料を配合し、テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードを製造した。
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕されたペットフード5000g、L-テアニン2gと実施例3(3)の活性グルテン(生グルテン時の破断強度:20g/cm2)5000gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に15分間、混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード9000g(テアニン:グルテン=1:2500)を得た。
【0031】
<実施例8>テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフードの製造
表2に示す割合で原材料を配合し、テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフードを製造した。
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕された5000g、L-テアニン2gと実施例3(2)の活性グルテン(生グルテン時の破断強度:8g/cm2)5000gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に15分間混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード9010g(テアニン:グルテン=1:2500)を得た。
【0032】
<実施例9> テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードの製造
表2に示す割合で原材料を配合し、テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードを製造した。
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕されたペットフード5000g、L-テアニン2gと実施例4の還元処理グルテン(生グルテン時の破断強度:2g/cm2)5000gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に15分間混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード9400g(テアニン:グルテン=1:2500)を得た。
【0033】
<実施例10> テアニン無添加活性グルテン配合ペットフードの製造
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕されたペットフード5000gと実施例3(2)の活性グルテン(生グルテン時の破断強度:8g/cm2)5000gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に15分間混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン無添加活性グルテン配合ペットフード9020gを得た。
【0034】
<実施例11> テアニン無添加還元処理グルテン配合ペットフードの製造
市販のグルテンフリーペットフードをパワーミル(DM-150型:川越機械社製)で粉砕した。粉砕されたペットフード5000gと実施例4の還元処理グルテン(生グルテン時の破断強度:2g/cm2)5000gをハイスピードミキサー(FC-GS型:深江パウテック社製)にて2分間混合した後、水100gを添加して更に15分間混合した。この混合物をインライン式円筒造粒機(FBG150型:アーステクニカ社製)にて直径約1cmのペレット状に押出し造粒した後、棚式平行流乾燥機(棚式平行流乾燥機型:黒田工業社製)を用いて70℃にて12時間乾燥し、テアニン無添加還元処理グルテン配合ペットフード9040gを得た。
【0035】
<試験例1> グルテンフリーラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間市販グルテンフリーペットフードを自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、トリニトロベンゼン・スルホン酸(以下、TNBS:東京化成工業)を注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育した後、尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0036】
<試験例2> テアニン添加グルテンフリーラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードを自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、TNBSを注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育した後、尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0037】
<試験例3> テアニン添加活性グルテン配合ラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット体重約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間実施例8のテアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード(生グルテン時の破断強度:8g/cm2)を自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、TNBSを注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育して尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0038】
<試験例4> テアニン添加還元処理グルテン配合ラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードを自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、TNBSを注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育して尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0039】
<試験例5> テアニン無添加活性グルテン配合ラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット体重約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間実施例10のテアニン無添加活性グルテン配合ペットフード(生グルテン時の破断強度:8g/cm2)を自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、TNBSを注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育して尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0040】
<試験例6> テアニン無添加還元処理グルテン配合ラット群
グルテンに対するアレルギー反応試験としてSPF環境下で訓化飼育したSDラット約50g(オス、3週齢、チャールスリバー社)一群8匹に4週間実施例11のテアニン無添加還元処理グルテン配合ペットフードを自由摂取にて与えた。2日間の絶食後、TNBSを注腸し大腸炎を惹起させた。その後7日間同様に飼育して尾静脈より採血をし、遠心分離(1500g×10min.)にて血清を分離して得た。飼育終了時の糞便を観察した。
【0041】
<試験例7> 血清中のIgEの測定
ラット血清中のIgE量をELISA法(レビス
R IgEラットELISAキット、富士フイルムワコーシバヤギ(株))で測定した。抗体固相化96ウェルプレートを洗浄液にて洗浄した。試験例1~6のラット血清を緩衝液にて適宜希釈し、各ウェルに50μL添加して2時間室温にて静置した。
標準曲線として、標準IgE溶液(ラット)(100ng/mL)を緩衝液で希釈し、各ウェルに50μL添加し、2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液にて希釈したビオチン結合抗IgE抗体を各ウェルに50μL添加し、2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液で希釈したペルオキシダーゼ・アビジン結合物を各ウェルに50μL添加し、1時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、発色液(TMB)を50μL添加し、正確に20分間静置後、応停止液(1M H
2SO
4)を50μL添加して反応を終了させ、マイクロプレートリーダー(Bio Rad社製)で吸光度450nmにて測定した。結果を
図1に示した。
【0042】
試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群は試験例1のグルテンフリーラット群に比べ有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった(p≦0.05)。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群は試験例5の活性グルテン配合ラット群に比べ有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった(p≦0.01)。試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群は験例6の還元処理グルテン配合ラット群に比べ有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンによりアレルギーに関連する血清中のIgE抗体量の産生量が少なくなったことを示している。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群および試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群は試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群に比べ有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンとグルテンの併用によりアレルギーに関連する血清中のIgE抗体量の産生量が少なくなったことを示している。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群は試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群に比べ有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンと活性グルテンの併用はテアニンと還元処理グルテンの併用よりアレルギーに関連する血清中のIgE抗体量の産生量が少なくなったことを示している。
【0043】
以上から、テアニンはアレルゲンより誘発されるアレルギーに関連する抗体であるIgEの産生抑制効果が顕著に認められた。IgEの産生量はグルテンにより更に抑制され、還元処理グルテンに比べ活性グルテンは顕著に抑制効果が認められた。分散分析による統計解析の結果、群間において有意差(F(5,36)=20.5, p≦0.01)が認められた。
以上の結果から、テアニンと活性グルテンとの併用は、アレルギーに関連する抗体であるIgEの産生性抑制効果が顕著に認められた。
【0044】
<試験例8> 血清中の抗小麦タンパクIgEの測定
ラット血清中の抗小麦タンパクIgE量をELISA法で測定した。市販の小麦粉(薄力粉、日清製粉製)を0.1M 炭酸バッファーpH9.6に100mg/mLとなるように溶解し、96ウェルプレート(NUNC社製)に各ウェルに100μL添加して2時間室温にて静置した。小麦粉溶液を除き、洗浄液で洗浄後、小麦抗原固相化96ウェルプレートに牛血清アルブミン(Sigma社製)を緩衝液(レビス
R IgEラットELISAキット、富士フイルムワコーシバヤギ(株))で100mg/mLに溶解し、各ウェルに150μL添加して2時間室温にて静置してブロッキング処理をした。牛血清アルブミンを除いた後、小麦抗原固相化96ウェルプレートを洗浄液にて洗浄した。試験例1~6のラット血清を緩衝液にて10000倍に希釈し、各ウェルに50μL添加して2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液にて希釈したビオチン結合抗IgE抗体を各ウェルに50μL添加し2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液で希釈したペルオキシダーゼ・アビジン結合物を各ウェルに50μL添加し、1時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、発色液(TMB)を50μL添加し、正確に20分間静置後、応停止液(1M H
2SO
4)を50μL添加して反応を終了させ、マイクロプレートリーダー(Bio Rad社製)で吸光度450nmにて測定した。結果を
図2に示した。
【0045】
試験例1のグルテンフリーラット群および試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群は試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群、試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群、試験例5の活性グルテン配合ラット群および試験例6の還元処理グルテン配合ラット群に比べ有意に吸光度が低かった。試験例1のグルテンフリーラット群および試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群は飼料にグルテンが配合されていないため、抗原である小麦に反応する抗体量の産生抑制効果が顕著に認められた。試験例5の活性グルテン配合ラット群に比較し、試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群で有意に血清中のIgE抗体濃度が低かった。
【0046】
また、試験例6の還元処理グルテン配合ラット群に比較し、試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群で有意に吸光度が低かった。以上から、テアニンは、抗原である小麦に反応する抗体量の産生抑制効果を備えていることが有意に認められた。試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群に比較し、試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群で有意に吸光度が低かった。分散分析による統計解析の結果、群間において有意差(F(5,36)=96.6, p≦0.01)が認められた。以上から、テアニンと活性グルテンの併用は、テアニンと還元処理グルテンとの併用に比較し、抗原である小麦に反応する抗体量の産生を顕著に抑制することが分かった。
【0047】
<試験例9> 血清中の抗卵白タンパクIgEの測定
ラット血清中の抗卵白タンパクIgE量をELISA法で測定した。市販の卵白粉末(商品名:卵白粉末、製造者:太陽化学株式会社製)を0.1M 炭酸バッファーpH9.6に100mg/mLに溶解し、96ウェルプレート(NUNC社製)に各ウェルに100μL添加して2時間室温にて静置した。卵白粉末溶液を除き、洗浄液で洗浄後、卵白タンパク抗原固相化96ウェルプレートに牛血清アルブミン(Sigma社製)を緩衝液(レビス
R IgEラットELISAキット、富士フイルムワコーシバヤギ(株))で100mg/mLに溶解し、各ウェルに150μL添加して2時間室温にて静置してブロッキング処理をした。牛血清アルブミンを除いた後、卵白タンパク抗原固相化96ウェルプレートを洗浄液にて洗浄した。試験例1~6のラット血清を緩衝液にて10000倍に希釈し、各ウェルに50μL添加して2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液にて希釈したビオチン結合抗IgE抗体を各ウェルに50μL添加し2時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、緩衝液で希釈したペルオキシダーゼ・アビジン結合物を各ウェルに50μL添加し、1時間室温にて静置した。洗浄液にて洗浄した後、発色液(TMB)を50μL添加し、正確に20分間静置後、応停止液(1M H
2SO
4)を50μL添加して反応を終了させ、マイクロプレートリーダー(Bio Rad社製)で吸光度450nmにて測定した。結果を
図3に示した。
【0048】
試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群は試験例1のグルテンフリーラット群に比べ有意に吸光度が低かった(p≦0.05)。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群は試験例5の活性グルテン配合ラット群に比べ有意に吸光度が低かった(p≦0.01)。試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群は験例6の還元処理グルテン配合ラット群に比べ有意に吸光度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンにより抗原である卵白タンパク質に反応する抗体量の産生量が少なくなったことを示している。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群および試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群は試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群に比べ有意に吸光度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンとグルテンの併用により抗原である卵白タンパク質に反応する抗体量の産生量が少なくなったことを示している。試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群は試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群に比べ有意に吸光度が低かった(p≦0.01)。この結果は、テアニンと活性グルテンの併用はテアニンと還元処理グルテンの併用より抗原である卵白タンパク質に反応する抗体量の産生量が少なくなったことを示している。
以上から、テアニンは、抗原である卵白タンパクに反応する抗体量の産生を有意に抑制する効果を持つことが分かった。試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群に比較し、試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群で有意に吸光度が低かった。分散分析による統計解析の結果、群間において有意差(F(5,36)=23.9, p≦0.01)が認められた。以上から、テアニンと活性グルテンの併用は、抗原である卵白タンパクに反応する抗体量の産生抑制効果が顕著に認められた。
【0049】
<試験例10> 糞便性状の評価
アレルギーの症状の一つとして認められるグルテン過敏腸疾患症状として、飼育終了日の糞便性状について評価を行った。ラットの糞便を「小豆状のころころ便:0点」「小豆状の軟便:1点」「形状がない軟便:2点」「形状がない泥状:3点」「下痢便:4点」の5段階で数値化し記録した。結果を
図4に示した。
試験例2のテアニン添加グルテンフリーラット群、試験例3のテアニン添加活性グルテン配合ラット群および試験例4のテアニン添加還元処理グルテン配合ラット群は、試験例1のグルテンフリーラット群、試験例5の活性グルテン配合ラット群および試験例6の還元処理グルテン配合ラット群に比較し有意に便性状のスコアが低かった。分散分析による統計解析の結果、群間において有意差(F(5,36)=9.53, p≦0.01)が認められた。以上から、テアニンはグルテンによって誘発されるアレルギー性下痢を有意に改善する効果を示すことが分かった。
【0050】
試験例7~10の結果より、テアニンは抗アレルギー作用を示し、還元処理グルテンに比較し、活性グルテンにおいてテアニンとの併用による抗アレルギー作用が強いことが分かった。
本評価はアレルギー試験の対象としてラットを用いたが、高等脊椎動物における免疫制御のメカニズムが同等と考えられることから(非特許文献1)、同じ哺乳類である犬および猫においても同様な効果が期待できる。小麦アレルギーにより皮膚炎を発症したビーグル犬(オス、4.6歳、体重5.1kg)に実施例7のテアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードを3ヶ月間給仕したところ、皮膚の引っかき回数が少なくなったことが観察された。
【0051】
<試験例11> 問題行動の評価試験(犬)
問題行動として、威嚇、齧り、唸り、噛み、興奮、引っ張り癖といった問題行動を示す室内犬(年齢1.5~4.5歳、平均体重8.6kg、2.4~14.2kg)を用いて、これらの室内犬の問題行動抑制の試験を行った。全24頭の室内犬を6匹ずつ4群に分けて試験に供した。犬群番号I(平均体重8.7kg、4.4~12.0kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した後、続けて同様にグルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した。犬群番号II(平均体重8.7kg、5.3~12.1kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した。
【0052】
テアニンの平均摂餌量は、一日あたり4.6mg/kg体重(3.3~7.5mg/kg)であった。犬群番号III(平均体重8.8kg、2.4~14.2kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例7のテアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した。テアニンの平均摂餌量は一日あたり4.5mg/kg体重(2.8~16.7mg/kg)であった。犬群番号IV(平均体重8.3kg、3.0~13.6kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードを2週間100gを1日2回毎日給餌した。テアニンの平均摂餌量は一日あたり4.8mg/kg体重(2.9~13.3mg/kg)であった。体重8.0kg以上の個体には、市販グルテンフリーペットフード100gを1日1回間食として与えた。
試験開始2週間目と4週間目に問題行動の症状の度合いについて、飼い主が表3のように数値化し記録した。
【0053】
【0054】
犬群番号I~IVの結果について、それぞれ
図5~
図8に示した。犬群番号I~IVの威嚇、齧り、唸り、噛み、興奮、引っ張り癖に関して統計解析を行ったp値の結果を表4に示した。統計解析は試験開始2週目と4週目の問題行動の点数に関してStudent's paired t-testにより実施した。
【0055】
【0056】
図5および表4に示したように、市販グルテンフリーペットフードにおいて問題行動は改善されなかった。不適切な排泄については5%以下での有意差はあるが、問題行動がひどくなる結果であった。
図5中のデータは、平均±S.D.にて示し、「*」はp≦0.05、「**」はp≦0.01にて、有意差が認められたことを示している(
図6~
図8において同じ)。
図6および表4に示したように、実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードにおいて威嚇、唸り、噛みといった問題行動が有意に改善された。
図7および表4に示したように、実施例7のテアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードにおいて威嚇、齧り、唸り、噛み、興奮といった問題行動が有意に改善された。また、実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードおよび実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードと比較すると顕著に問題行動の改善が認められた。
図8および表4に示したように、実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードにおいて威嚇、唸り、興奮といった問題行動が有意に改善された。
実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードによる改善と同等な問題行動の改善が認められた。
【0057】
投与開始4週目と2週目の点数差に関して威嚇、齧り、唸り、噛み、興奮、引っ張り癖、不適切な排泄の問題行動について、犬群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)、犬群番号III(テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード)、犬群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)のそれぞれの群に関して、分散分析にて群間における検定を行ったところ有意差(F(3,164)=26.9, p≦0.01)が得られた。次いで、二群間においてはStudent's t-testにて統計解析を行った。統計解析の結果を
図9に示した。
【0058】
犬群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)[点数差:-0.52±0.63、平均±SD、以下同様]と犬群番号III(テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード)[点数差:-1.14±1.07]間(p≦0.01)および犬群番号III(テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード)[点数差:-1.14±1.07]と犬群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)[点数差:-0.67±0.65]間(p≦0.05)では群間有意差があったが、犬群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)[点数差-0.52±0.63]と犬群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)[点数差-0.67±0.65]間では群間有意差は認められなかった。このように、犬群番号III(テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード)群は、犬群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)および犬群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)に比較し、ペットの問題行動の顕著な改善が確認された。犬群番号III(テアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフード)群と犬群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)間で有意な差が認められた。このことは、テアニンと活性化グルテンとの併用は、テアニンと還元処理グルテンとの併用に比較し、ペット問題行動の顕著な改善が確認されたことを示している。
【0059】
<試験例12> 問題行動の評価試験(猫)
問題行動として、ジャレ咬み・甘咬み、爪とぎ、唸り、夜鳴きといった問題行動を示す室内猫(年齢1.8~5.5歳、平均体重3.2kg、1.1~5.2kg)を用いて、これらの室内猫の問題行動抑制の試験を行った。全24頭の室内猫を6匹ずつ4群に分けて試験に供した。猫群番号I(平均体重3.3kg、1.4~5.0kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した後、続けて同様に市販グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した。
猫群番号II(平均体重3.3kg、2.2~4.0kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した。テアニンの平均摂餌量は一日あたり3.7mg/kg体重(3.0~5.5mg/kg)であった。
【0060】
猫群番号III(平均体重3.2kg、1.1~5.2kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例8のテアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した。テアニンの平均摂餌量は一日あたり3.7mg/kg体重(2.3~11.0mg/kg)であった。
猫群番号IV(平均体重3.2kg、1.3~4.1kg)には、市販グルテンフリーペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した後、続けて実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードを2週間30gを1日2回毎日給餌した。テアニンの平均摂餌量は一日あたり3.8mg/kg体重(2.9~9.2mg/kg)であった。体重4.0kg以上の個体には市販グルテンフリーペットフード30gを間食として与えた。
試験開始2週間目と4週間目に問題行動の症状の度合いについて、飼い主が表3のように数値化し記録した。
【0061】
猫群番号I~IVの結果について、それぞれ
図10~
図13に示した。
猫群番号I~IVのジャレ咬み・甘咬み、爪とぎ、唸り、夜鳴きに関して統計解析を行ったp値の結果について表5に示した。統計解析は試験開始2週目と4週目の問題行動の点数に関してStudent's paired t-testにより実施した。
【0062】
【0063】
図10および表5に示したように、市販グルテンフリーペットフードにおいて問題行動は改善されなかった。
図10中のデータは、平均±S.D.にて示し、「*」はp≦0.05、「**」はp≦0.01にて、有意差が認められたことを示している(
図11~
図13において同じ)。
図11および表5に示したように、実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードにおいて爪とぎといった問題行動が有意に改善された。
図12および表5に示したように、実施例8のテアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフードにおいてジャレ咬み・甘咬み、爪とぎといった問題行動が有意に改善された。市販グルテンフリーペットフードによる改善より顕著に問題行動の改善が認められた。
図13および表5に示したように、実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードにおいてジャレ咬み・甘咬みといった問題行動が有意に改善された。また、実施例6のテアニン添加グルテンフリーペットフードによる改善より顕著に問題行動の改善が認められた。また、実施例9のテアニン添加還元処理グルテン配合ペットフードによる改善より問題行動の改善が認められた。
【0064】
投与開始4週目と2週目の点数差に関してジャレ咬み・甘咬み、爪とぎ、唸り、夜鳴きの問題行動について、猫群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)、猫群番号III(テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード)、猫群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)のそれぞれの群に関して、分散分析にて群間における検定を行ったところ有意差(F(3,92)=10.9, p≦0.01)が得られた。次いで、二群間においてはStudent's t-testにて統計解析を行った。統計解析の結果を
図14に示した。
【0065】
猫群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)[点数差-0.33±0.70、平均±SD、以下同様]と猫群番号III(テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード)[点数差-0.88±0.99]間では群間有意差(p≦0.05)があったが、猫群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)[点数差-0.33±0.70]と猫群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)[点数差-0.50±0.51]および猫群番号III(テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード)[点数差-0.88±0.99]と猫群番号IV(テアニン添加還元処理グルテン配合ペットフード)[点数差-0.50±0.51]間では群間有意差は認められなかった。このように、猫群番号III(テアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフード)群と猫群番号II(テアニン添加グルテンフリーペットフード)との間に有意な差が認められたことは、テアニンと活性化グルテンとの併用によって、ペット問題行動の顕著な改善が確認されたことを示している。
【0066】
図9および
図14より、生グルテンのゲル形成強度が高い、実施例7のテアニン添加活性グルテン配合犬用ペットフードのほうがペットの問題行動に対して顕著な改善効果が認められることが分かった。このことより、実施例8のテアニン添加活性グルテン配合猫用ペットフードに用いた生グルテンのゲル形成強度は、高いほどペットの問題行動に対して良好な結果となることが分かった。
このように本実施形態によれば、イヌ、ネコなどのペットについて、グルテンなどによるアレルギー症状を発症させにくく、安全であると共に、ペットの問題行動の発症を有効に予防、改善、または緩和させられる経口組成物を提供できた。