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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126592
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】クロスフロー・ファン
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/09 20060101AFI20220823BHJP
   F16C 32/04 20060101ALI20220823BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20220823BHJP
   F04D 17/04 20060101ALI20220823BHJP
   F04D 29/058 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H02K7/09
F16C32/04 A
H02K7/14 A
F04D17/04 G
F04D29/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022011431
(22)【出願日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】21157946.1
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】511081820
【氏名又は名称】レヴィトロニクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル シュタイナート
(72)【発明者】
【氏名】トマス ホレンシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァナ バガリック
【テーマコード(参考)】
3H130
3J102
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB54
3H130AC11
3H130BA13E
3H130BA24E
3H130BA97E
3H130DA02Z
3H130DB10Z
3H130DF00Z
3J102AA01
3J102BA03
3J102BA17
3J102CA05
3J102CA08
3J102CA10
3J102CA13
3J102CA20
3J102DA03
3J102DA09
3J102DA11
3J102DA28
3J102DB05
3J102GA18
3J102GA20
5H607AA04
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC05
5H607DD03
5H607FF05
5H607GG01
5H607GG20
5H607GG21
(57)【要約】
【課題】インペラの非接触磁気浮上及び非接触駆動を可能にするクロスフロー・ファンを提供すること。
【解決手段】円筒形インペラ2で流体流れを生成するクロスフロー・ファンにおいて、第1の磁気的有効コア31を第1の端部21に設け、第2の磁気的有効コア32を第2の端部22に設け、複数の羽根8のそれぞれを第1の磁気的有効コア31と第2の磁気的有効コア32との間に配置し、軸受駆動固定子として設計され且つ第1の電磁回転駆動部として第1の磁気的有効コア31と相互作用する第1の固定子41を設け、少なくとも軸受固定子として設計された第2の固定子42を設け、それによりインペラ2を第1及び第2の固定子41、42で接触なく磁気駆動及び磁気浮上可能なクロスフロー・ファンが提供される。第1の固定子41は、第1の磁気的有効コア31に取り囲まれるように第1の磁気的有効コア31内に配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の端部(21)から第2の端部(22)まで軸方向(A)に延びる円筒形インペラ(2)によって流体流れを生成するためのクロスフロー・ファンであって、
環状に設計された第1の磁気的有効コア(31)が前記第1の端部(21)に設けられ、且つ、環状に設計された第2の磁気的有効コア(32)が前記第2の端部(22)に設けられ、
複数の羽根(8)が設けられて、前記羽根(8)のそれぞれが、前記軸方向(A)に関して前記第1の磁気的有効コア(31)と前記第2の磁気的有効コア(32)との間に配置され、
軸受駆動固定子として設計された第1の固定子(41)であって、第1の電磁回転駆動部として前記第1の磁気的有効コア(31)と相互作用する第1の固定子(41)が設けられ、
少なくとも軸受固定子として設計された第2の固定子(42)が設けられ、それにより前記第2の磁気的有効コア(32)は、前記第2の固定子(42)に対して接触なしで磁気的に浮上させられることができ、また
前記インペラ(2)は、前記第1及び前記第2の固定子(41、42)によって接触なしで磁気的に駆動させることができ、且つ前記第1の固定子(41)及び前記第2の固定子(42)に対して接触なしで磁気的に浮上させられることができる
クロスフロー・ファンにおいて、
前記第1の固定子(41)は、前記第1の磁気的有効コア(31)が前記第1の固定子(41)を取り囲むように、前記第1の磁気的有効コア(31)内に配置されることを特徴とする、クロスフロー・ファン。
【請求項2】
前記第2の固定子(42)は、前記第2の磁気的有効コア(32)にトルクを与えるために、第2の電磁回転駆動部として前記第2の磁気的有効コア(32)と相互作用することができる軸受駆動固定子として設計され、また前記第2の固定子(42)は、前記第2の磁気的有効コア(32)が前記第2の固定子(42)を取り囲むように、前記第2の磁気的有効コア(32)内に配置される、請求項1に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項3】
前記第1の固定子(41)は、低透磁性材料の第1の固定子ハウジング(91)内に封入され、また前記第2の固定子(42)は、低透磁性材料の第2の固定子ハウジング(92)内に封入される、請求項1又は2に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項4】
前記それぞれの固定子(41、42)を制御又は調整するための制御装置(6)が、各固定子ハウジング(91、92)に設けられる、請求項1から3までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項5】
各固定子ハウジング(91、92)が、第1のハウジング部分(93)と第2のハウジング部分(94)とを有し、前記第1のハウジング部分(93)は前記インペラ(2)内に配置されて、前記インペラ(2)の前記磁気的有効コア(31、32)のうちの1つによって取り囲まれ、また前記第2のハウジング部分(94)は、少なくとも前記磁気的有効コア(31、32)の外径と同じ大きさの外径を有する、請求項4に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項6】
各制御装置(6)が、前記第2のハウジング部分(94)のうちの1つに配置される、請求項4又は5に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項7】
前記インペラ(2)はシャフトなしで設計される、請求項1から6までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項8】
各固定子(41、42)が複数のコイル・コア(5)を有し、各コイル・コア(5)が半径方向に延び、且つただ1つの集中巻線(53)を担持する、請求項1から7までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項9】
各固定子(41)のコイル・コア(5)の数が、厳密に3つ、又は厳密に4つ、又は厳密に5つ、又は厳密に6つである、請求項7に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項10】
前記インペラ(2)の各磁気的有効コア(31、32)が、複数の永久磁石(311)を有する、請求項1から9までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項11】
各永久磁石(311)がリング・セグメントとして設計され、各磁気的有効コア(31、32)の前記永久磁石(311)が互いに補完してリングを形成する、請求項10に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項12】
各永久磁石(311)が半径方向に磁化され、円周方向に互いに隣接して配置される永久磁石(311)は、それぞれ反対向きに磁化されている、請求項10又は11に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項13】
各磁気的有効コア(31、32)の永久磁石(311)の数が、厳密に4個、又は厳密に8個、又は厳密に10個、又は厳密に12個である、請求項10から12までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項14】
熱保護層(96)が、前記固定子(41、42)と前記制御装置(6)の間で、各固定子ハウジング(91、92)内に設けられる、請求項4から13までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【請求項15】
各固定子(41、42)が、冷却可能であるように設計される、請求項1から14までのいずれか一項に記載のクロスフロー・ファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の前提部分による、流体流れを生成するためのクロスフロー・ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
横流ファンとも呼ばれるクロスフロー・ファンは、第1の端部から第2の端部まで軸方向に延在する円筒形インペラを有する。多くの場合ローラとも呼ばれるインペラは、外周に沿って配置される複数の羽根(ベーン)を有し、それぞれの羽根は第1の端部から第2の端部まで延在する。吸引される流体、通常、空気などのガスは、インペラの全長に沿って吸引され、回転するインペラに流れ込み、次いで、インペラの全長に沿って均一に吹き出される。クロスフロー・ファンは、吸引された流体を長いインペラによって広い領域にわたって均等に分布させることができるという利点を有する。クロスフロー・ファンはコンパクトであり、したがって、場所を取らず、頑強で、耐久性があり、静かである。
【0003】
クロスフロー・ファンの応用範囲は非常に広い。それは、空調システムなどの非常に単純な用途から、エキシマ・レーザにおけるガス循環などの非常に厳しい用途にわたる。そのようなガス放電レーザは、たとえば、小さい集積回路を製造するために、又は、マイクロチップの製造のために半導体産業で使用されるリソグラフィ装置において使用される。しかしながら、エキシマ・レーザは、完全に異なる分野、たとえば、眼科においても使用される。エキシマ・レーザは、レーザ・ガスを循環させる内部ファンを必要とする。ここで、レーザ・パルスの生成のために必要とされる活性ガスが、十分なレーザ出力を保証するために放電極の間で常に更新されることは非常に重要である。この目的のために、ガスの非常に高い流量が必要であり、それが、今日、ガス循環のためにエキシマ・レーザにおいてクロスフロー・ファンを使用することが一般的である理由であり、ファンは、非常に高い回転速度で動作される。別の課題は、エキシマ・レーザのガスが通常、非常に攻撃的であり、非常に困難な化学的環境を示すことである。さらにまた、ガスの不純物をできるだけ防ぐことが重要である。
【0004】
しかしながら、化学的に攻撃的な流体に関するそのような高い要求又は運搬される流体の純度に対する高い要求は、エキシマ・レーザだけでなく、半導体産業、製薬産業、又はバイオテクノロジにおける他の用途において存在する。
【0005】
したがって、クロスフロー・ファンに関して、可能であればインペラの機械的軸受をなくし、磁力又は電磁力を使用する接触なしでインペラを駆動及び浮上させることが知られている。一方で、この非接触の浮上により、機械的軸受の場合に、たとえば、摩耗によって生じる不純物に対して、運搬される流体を保護することが可能である。他方で、運搬される流体による接触に対して、浮上及び駆動装置の特定の構成要素を完全に保護することも可能である。
【0006】
これらのクロスフロー・ファンの場合、通常、少なくとも2つの磁気軸受が設けられ、その間にインペラが配置される。その場合、インペラは、たとえば、軸方向に延在する中央に配置されたシャフトを有し、シャフトの各端部は、磁気軸受内に支持される。磁気軸受の場合、受動的な磁気軸受と能動的な磁気軸受とが基本的に区別される。受動的な磁気的軸受又は安定化は、制御又は調整することができない。それは、通常、磁気抵抗力に基づく。よって、受動的な磁気的軸受又は安定化は、外部からのエネルギ供給なしで動作する。能動的な磁気軸受は、制御することができる軸受である。能動的な磁気軸受の場合、支持されるべき本体の位置は、たとえば、電磁場を与えることにより、能動的に影響又は調整されることができる。
【0007】
クロスフロー・ファンのインペラの駆動及び浮上のための特にコンパクトな設計は、クロスフロー・ファンの電磁回転駆動部が無軸受モータの原理に従って設計されるという事実によって可能になる。今のところ、無軸受モータは、その機能に関する詳細な説明はもはや不要なほどに、当業者には十分に知られている。無軸受モータの固定子は、回転子を、動作状態において軸方向に接触なしで磁気的に駆動させる、すなわち、回転させることができ、且つ、固定子に対する接触なしに磁気的に浮上させることができる軸受駆動固定子として設計される。軸方向は、回転子の望ましい回転軸によって定義される。
【0008】
無軸受モータという用語は、回転子が接触なしで磁気的に浮上され、別個の磁気軸受が設けられないという事実を表す。固定子は、電気駆動部の固定子でもあり、磁気浮上の固定子でもある。固定子は、磁気回転場を生成させることができる巻線を有し、この磁気回転場は、一方では、回転子の回転をもたらすトルクを回転子に与え、他方では、回転子の半径方向位置、すなわち、軸方向Aに垂直な半径方向平面における回転子の位置を、能動的に制御又は調整することができるように、自由に調節可能である横方向力を回転子に与える。
【0009】
軸受駆動固定子において軸受ユニットと駆動ユニットとを区別することができないということが、無軸受モータの原理の本質的側面である。たとえば、駆動部の固定子及び磁気浮上の固定子が組み合わされて構造ユニットを形成する、電磁駆動及び軸受装置が知られている。ここで、固定子は、1つ又は複数の軸受ユニット及び駆動ユニットを有し、駆動ユニットは、たとえば、2つの軸受ユニットの間に配置することができる。よって、そのような装置は、駆動ユニットから分離することができ、専ら磁気軸受のために使用される軸受ユニットを示す。しかしながら、そのような装置は、ここでは駆動機能とは別に回転子の軸受を実現する別個の軸受ユニットが実際に存在するので、本出願の意味での無軸受モータとして理解されるべきではない。本出願の意味での無軸受モータの場合、固定子を軸受ユニットと駆動ユニットとに分けることはできない。それがまさに、無軸受モータにその名前を与える特性である。
【0010】
米国特許第6,404,794号から、インペラが無軸受モータの原理に従って駆動及び支持されるクロスフロー・ファンが知られている。そこでは、クロスフロー・ファンを有するエキシマ・レーザが提案されている。クロスフロー・ファンのインペラは、インペラの中心を通って軸方向に延在するシャフトを有する。シャフトの2つの端部の少なくとも一方に、無軸受モータの原理に従って設計される回転子-固定子機構が設けられる。2つの端部の他方は磁気軸受によって支持される、又は、代替形態として、無軸受モータの原理に従って設計される回転子-固定子機構がこの他端にも設けられる。各回転子-固定子機構は、シャフトに固定的に接続された磁性材料の回転子と、それぞれの回転子のまわりに配置された静止固定子とを有する。静止固定子は、合計24個のコイル・コアを有し、そのそれぞれは、半径方向内向きに延在する。電磁場を生成するためのコイルは、コイル・コアのそれぞれのまわりに配置される、各コイル・コアは、2つの別個のコイルを支持する。これらのコイルの一部は、回転子を駆動するために回転子にトルクを与える4極回転場を生成する、3相4極(極対数2)巻線系を形成する。コイルの他の部分は、回転2極制御場が生成される、3相2極(極対数1)巻線系を形成する。ここで、巻線は、分布巻として、すなわち、いずれの場合にも、いくつかの固定子歯上を延在する巻線として設計される。4極回転場と2極制御場との相互作用により、回転子は、固定子における接触なしに磁気的に浮上することができ、自由に調節可能である横方向力は、回転子の半径方向位置を調整することができる半径方向に生成することができる。このように、回転子は、回転のために接触なしで駆動させることができ、固定子における接触なしに磁気的に浮上させることができる。
【0011】
クロスフロー・ファンにおける回転子の磁気軸受がその価値を示してきたが、特に、非常に高い性能を維持しながらの、クロスフロー・ファンの最もコンパクトで可能なデザインに関して、依然として、改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,404,794号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、当技術分野のこの状況から始まり、本発明の目的は、無軸受モータの原理に従って設計され、したがって、非接触の磁気浮上及びインペラの非接触の駆動を可能にする、非常にコンパクトで、同時に強力なクロスフロー・ファンを提案することである。特に、クロスフロー・ファンは、化学的に攻撃的又は困難な環境条件、たとえば、半導体産業、特に、エキシマ・レーザにおいて多い環境条件で使用するために設計できるようにもしなければならない。さらに、クロスフロー・ファンを、運搬される流体の純度に対する非常に高い要求のある、たとえば、製薬産業又はバイオテクノロジにおける用途のために使用することもできるように、運搬される流体中の不純物はできるだけ避けるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的に対処する本発明の主題は、独立特許請求項の構成によって特徴づけられる。
【0015】
したがって、本発明によると、第1の端部から第2の端部まで軸方向に延在する円筒形インペラによって流体流れを生成するためのクロスフロー・ファンが提案され、環状に設計された第1の磁気的有効コアが第1の端部に設けられ、且つ、環状に設計された第2の磁気的有効コアが第2の端部に設けられ、複数の羽根が設けられて、その羽根のそれぞれが、軸方向に関して、第1の磁気的有効コアと第2の磁気的有効コアとの間に配置され、軸受駆動固定子として設計され、且つ、第1の電磁回転駆動部として第1の磁気的有効コアと相互作用する、第1の固定子が設けられ、少なくとも軸受固定子として設計された第2の固定子が設けられ、それにより、第2の磁気的有効コアを、第2の固定子に対して接触なしで磁気的に浮上させることができ、インペラ(2)を、第1及び第2の固定子によって接触なしで磁気的に駆動させることができ、且つ、第1の固定子及び第2の固定子に対して接触なしで磁気的に浮上させることができ、第1の固定子は、第1の磁気的有効コアが第1の固定子を囲むように、第1の磁気的有効コア内に配置される。
【0016】
好ましくは、流体流れはガス流、たとえば、空気流又はエキシマ・レーザのレーザ・ガスの流れである。
【0017】
クロスフロー・ファンの非常にコンパクトな設計を可能にするために、ファンの第1の電磁回転駆動部は、無軸受モータの原理に従って、加えて、半径方向に内側の固定子とともに設計される。これは、第1の電磁回転駆動部が、第1の磁気的有効コアが第1の固定子のまわりの半径方向外側に配置されるように、外部回転子として設計されることを意味する。これは、第1の固定子をインペラの内部に配置することができるという大きい利点を有し、その第1の端部に、第1の磁気的有効コアが設けられる。これは、クロスフロー・ファンの非常にコンパクトな設計を可能にする、それは、インペラの両方の軸方向端部において、その場合に駆動及び支持されるシャフトを引き出すことがもはや必要でないためである。さらに、クロスフロー・ファンは、完全非接触の浮上、インペラの非接触駆動、非常に高い回転速度の可能性、並びに摩擦及び摩耗からの解放などの、無軸受モータのすべての利点を提供する。
【0018】
インペラの第2の端部に設けられ、且つ、接触なしで第2の磁気的有効コアを磁気的に浮上させるために、第2の磁気的有効コアと相互作用する、第2の固定子は、それ自体が知られている伝統的な磁気軸受の固定子であってもよい。その場合、第2の磁気的有効コアは、第2の固定子とともに、インペラの非接触の浮上のための磁気軸受を形成する。第2の固定子は、第2の磁気的有効コアが第2の固定子を囲むように、インペラの半径方向内側に配置されてもよい。当然のことながら、第2の固定子が第2の磁気的有効コアを囲むように、第2の固定子がインペラのまわりで半径方向外側に配置されることも可能である。
【0019】
特に好ましい実施例によると、第2の固定子は、第2の磁気的有効コアにトルクを与えるために、第2の電磁回転駆動部として第2の磁気的有効コアと相互作用することができる軸受駆動固定子としても設計され、第2の固定子は好ましくは、第2の磁気的有効コアが第2の固定子を囲むように、第2の磁気的有効コア内に配置される。
【0020】
この実施例は、クロスフロー・ファンの非常に特にコンパクトな設計を可能にする。第1及び第2の電磁回転駆動部はそれぞれ、第1の磁気的有効コアが第1の固定子のまわりで半径方向外側に配置され、第2の磁気的有効コアが第2の固定子のまわりで半径方向外側に配置されるように、外部回転子として設計される。これは、両方の固定子をインペラの内部に配置することができるという大きい利点を有し、その各端部に、2つの磁気的有効コアのうちの1つが、各場合において設けられる。軸受駆動固定子として設計された固定子が各場合においてインペラの両端部に設けられるので、インペラを駆動するために非常に高いトルクを生成させることができる。
【0021】
しかしながら、用途に応じて、それぞれ軸受固定子及び駆動固定子として設計される2つの固定子を有する本実施例において、インペラの回転を駆動するために、第1の固定子及び第2の固定子の両方でトルクを生成することが必ずしも必要ではない。たとえば、第1の固定子のみで第1の磁気的有効コアに作用するトルクを生成すること、及び、インペラの回転を駆動するトルクを生成しないように第2の固定子を動作させることも可能である。
【0022】
本実施例において、第1及び第2の固定子は、インペラを動作状態において軸方向に接触なしで磁気的に駆動させる、すなわち、回転させることができ、且つ、2つの固定子に対する接触なしに磁気的に浮上させることができる軸受駆動固定子としてそれぞれ設計される。軸方向は、インペラの望ましい回転軸によって定義される。
【0023】
したがって、本出願の枠組内では、無軸受モータという用語は、インペラの第1及び第2の磁気的有効コアが、インペラ全体が接触なしで磁気的に浮上されるように、接触なしで磁気的にそれぞれ浮上され、別個の磁気軸受が設けられないことを意味する。第1の固定子は、且つ、任意選択的に第2の固定子も、それぞれ、電磁回転駆動部の固定子でもあり、磁気浮上の固定子でもある。各固定子は、磁気回転場を生成させることができる巻線を有し、この磁気回転場は、一方では、インペラのそれぞれの磁気的に能動的なコアにトルクを与えて、インペラの回転をもたらし、他方では、インペラの半径方向位置、すなわち、軸方向に垂直な半径方向平面におけるインペラの位置を、能動的に制御又は調整することができるように、自由に調節可能である横方向力をそれぞれの磁気的に能動的なコアに与える。よって、インペラの少なくとも3つの自由度は、能動的に調整することができる。軸方向におけるインペラの偏りに関して、インペラは、磁気抵抗力により、受動的に磁気的に安定化することができる、すなわち、制御することはできない。残りの2つの自由度、すなわち、軸方向に垂直な半径方向平面に対する傾きに関して、インペラは好ましくは、能動的に磁気的に浮上又は安定化される。
【0024】
すでに述べたように、回転のためにインペラを駆動する任意のトルクを生成しないような方法で、2つの固定子のうちの1つを動作させること、又は、第1の固定子のみ軸受駆動固定子として設計して、駆動機能を実行しないインペラの他端部に通常の磁気軸受を提供することも可能である。これは、その2つの端部のうちの1つのみでインペラを駆動すること、並びに、その端部の両方でインペラを駆動することが可能であることを意味する。両方の固定子がそれぞれ軸受駆動固定子として設計される場合、その端部の一方又は両方でのみ任意選択的にインペラを駆動することも可能である、それは、本実施例の場合、インペラがその2つの端部のうちの1つのみ又は両端部で回転のために駆動されるかどうかは、単に固定子の制御の問題であるためである。
【0025】
好ましくは、第1の固定子は低透磁性(low-permeable)材料の第1の固定子ハウジング内に封入され、第2の固定子は低透磁性材料の第2の固定子ハウジング内に封入される。さらにまた、第1及び第2の磁気的有効コアは、それぞれの磁気的有効コアを完全に取り囲む被覆内にそれぞれ配置することが可能であり、また、好ましい。これらの被覆も好ましくは、低透磁性材料から作られ、その低透磁性材料は、固定子ハウジングが作られる材料と同じであってもよく、又は、同じでなくてもよい。
【0026】
特に好ましい実施例において、第1の磁気的有効コア及び第2の磁気的有効コアの両方、並びに、各固定子は、完全に、好ましくは密閉的に、取り囲まれる。このようにして、インペラの磁気的有効コア並びに固定子、特に、たとえば、固定子の巻線又は固定子のコイル・コアは、特に、クロスフロー・ファンが、腐食性ガス、蒸気、又は他の腐食性若しくは酸性の流体と接触することになってもよい化学的に攻撃的な環境、たとえば、エキシマ・レーザ内においても、確実に保護される。
【0027】
インペラの磁気的有効コア及び固定子は、フッ素、塩素、又は酸の蒸気などの攻撃的なガスに対しても確実に保護される。磁気的有効コア及び/又は固定子を完全に取り囲むことによって、クロスフロー・ファンは、たとえ攻撃的な環境においても、著しく高い耐蝕性及び相当に長い耐用年数を有する。
【0028】
この好ましい実施例によると、インペラの各磁気的有効コアは、それぞれの被覆に完全に取り囲まれる。各固定子は、低透磁性材料、すなわち、低い透磁率(磁気伝導率)のみを有する材料から作られたそれぞれの固定子ハウジング内に封入される。この低透磁性材料は、たとえば、プラスチック、金属、又はセラミックとすることができる。本出願の枠組内では、そのような材料は、一般的にそうであるように、その透磁性数(比透磁率)が1(真空の透磁性数)からわずかにしか又は少しも逸脱しない低透磁性であると理解される。いかなる場合においても、低透磁性材料は、1.1未満の透磁性数を有する。
【0029】
インペラの磁気的有効コア並びに固定子の完全な被覆に起因して、磁気的有効コアの被覆及び固定子ハウジングの壁はどちらも、それぞれの磁気的有効コアとそれぞれの固定子との間の磁気空隙内に配置されなければならない。半径方向に関して、これは、インペラ及び固定子の磁気的に相互作用する部品間に大きな間隔を必要とする、すなわち、磁気的有効コア及び関連する固定子の磁気回路における磁気空隙は、いずれの場合にも大きい。驚くべきことに、この大きな磁気空隙にもかかわらず、インペラの確実且つ安定した浮上が固定子に対して可能である。
【0030】
好ましくは、磁気的有効コアの被覆及び固定子ハウジングは、プラスチックから、又は、セラミック若しくはセラミック材料から、又は、金属から、又は、チタン-アルミニウム合金、特に、Ti6Al-4V/Ti6、若しくは、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの、電気伝導率の低い耐蝕性金属合金から構成される。被覆及び/又は固定子ハウジングが金属材料から作られる場合、この金属材料は好ましくは、特に、被覆及び固定子ハウジングの渦電流損を低い維持するために、電気伝導率の低い金属材料である。特に、被覆及び固定子ハウジングは異なる材料から構成することも可能である。よって、たとえば、被覆は、第1のプラスチック、又は第1のセラミック材料、又は第1の金属材料から構成されてもよく、一方、固定子ハウジングは、第2のプラスチック、又は第2のセラミック材料、又は第2の金属材料から構成される。ここで、第1及び第2のプラスチックは同じプラスチックであってもよく、又は、第1及び第2のプラスチックは異なるプラスチックである。第1及び第2のセラミック材料は同一であってもよく又は異なってもよく、第1及び第2の金属材料は同一であってもよく又は異なってもよい。金属材料の場合、耐蝕性であり、電気伝導率の低いそれらの金属合金が、特に好ましい。
【0031】
用途に応じて、特に耐性のある材料、たとえば、耐蝕性の合金又は金属又はプラスチックから羽根を製造することがさらに好ましい。これは、磁気的有効コアの被覆のために使用される材料とすることもできる。
【0032】
それぞれの固定子を制御又は調整するために、制御装置が各固定子ハウジングに設けられることは、特に好ましい方策である。それぞれの固定子ハウジングに制御装置を配置するこの方策は、特にコンパクトで場所を取らない設計を可能にし、それによって、同時に、制御装置は、固定子ハウジングによって見事に保護される。特に、電磁場を生成するためのパワー・エレクトロニクス、インペラの駆動及び浮上のための調整装置、並びに、必要であれば、センサ又は評価ユニットを有することができる制御装置は、固定子ハウジングに一体化される又は内蔵される。よって、それぞれの固定子ハウジングは、外部からエネルギのみ供給する必要があり、必要であれば、たとえば、クロスフロー・ファンを始動又は停止させるために、又は、回転速度を調節するために、信号が供給される。この目的のために、それぞれの固定子ハウジングに電気エネルギを提供する供給ラインを設けることができる。
【0033】
好ましくは、各固定子ハウジングは、第1のハウジング部分と第2のハウジング部分とを有し、第1のハウジング部分は、インペラ内に配置されて、インペラの磁気的有効コアのうちの1つによって囲まれ、第2のハウジング部分は、磁気的有効コアの外径と少なくとも同じ大きさの外径を有する。特に、第1のハウジング部分及び第2のハウジング部分はそれぞれ、円筒状に設計され、第1のハウジング部分は、第2のハウジング部分より小さい外径を有する。よって、それぞれの固定子は、第1のハウジング部分に配置することができ、その第1のハウジング部分は、その後、ファンの関連する磁気的有効コアに挿入される。その場合、たとえば、第2のハウジング部分は、第2のハウジング部分のための止め具を形成するファン・ハウジングに当接することができ、そのため、固定子ハウジングは明確な位置にある。
【0034】
さらにまた、各制御装置が第2のハウジング部分のうちの1つに配置されることが好ましい。この方策のために、第1のハウジング部分に配置される固定子と第2のハウジング部分に配置される制御装置との間に空間的分離がある。この空間的分離は、特に熱の観点から非常に有利である、それは、動作状態において、制御装置及び特にその電子部品は、たとえば、回転駆動部の動作によって生成される、又は、固定子ハウジングの第1のハウジング部分に流体によって導入される熱又は温度にほとんどさらされないためである。たとえば、エキシマ・レーザでは、運搬されるガスの温度は、最大200℃又はさらに高い可能性がある。電磁回転駆動部及び、特に、固定子は一般に、制御装置より高い温度にさらされる可能性があるので、固定子及び制御装置の空間的間隔は特に有利である。
【0035】
特に好ましくは、インペラは、シャフトなしで設計される。通常、軸方向にインペラの中央を通って延在し、シャフトの2つの端部を軸受又は駆動装置によって受けることができるように、その両端部においてインペラを越えて突出する、知られているクロスフロー・ファンに設けられるインペラのシャフトは、本発明によるクロスフロー・ファンではもはや必要ではなく、そのため、そのようなシャフトは省くことができる。これは、特に構造設計に関して、大幅な簡略化を意味する。さらにまた、1つ又は複数の流れ案内要素を、流体流れを案内するために、インペラ内部に簡単な方法で配置することができ、それは、たとえば、バッフル・プレートである。
【0036】
好ましい実施例によると、各固定子は、それぞれが半径方向に延在する複数のコイル・コアを有し、各コイル・コアは厳密に1つの集中巻線を担持する。集中巻線は、電磁回転場を生成する働きをする。コイル・コアは、固定子歯とも呼ばれる。
【0037】
特に好ましくは、各固定子のコイル・コアの数は、厳密に3つ、又は厳密に4つ、又は厳密に5つ、又は厳密に6つである。
【0038】
インペラの各磁気的有効コアが複数の永久磁石を有することは、さらなる好ましい方策である。
【0039】
ここで、インペラの各磁気的有効コアが、切れ目がないように設計されて、軟磁性材料から作られる環状のリフラックスを有することは特に好ましく、各永久磁石は、リフラックスの半径方向内側に配置される。この実施例により、磁気浮上の非常に良好なトルク及び非常に良好な剛性を実現することができる。
【0040】
特に、実践的な観点から、各永久磁石はリング・セグメントとして設計されることが好ましく、各磁気的有効コアの永久磁石は、リングを形成するために互いを補完する。
【0041】
好ましくは、各永久磁石は半径方向に磁化され、円周方向に互いに隣接して配置される永久磁石は、それぞれ反対方向に磁化される。
【0042】
特に、各磁気的有効コアの永久磁石の数が、厳密に4個、又は厳密に8個、又は厳密に10個、又は厳密に12個であるそのような実施例は好ましい。
【0043】
制御装置を熱影響からさらに保護するために、固定子と制御装置との間の各固定子ハウジング内に熱保護層を提供することは有利である可能性がある。
【0044】
熱負荷の低減に関して、各固定子が冷却可能であるように設計されることは有利である可能性がある。たとえば、これは、巻線も配置されるコイル・コア間に冷却ラインを設けることによって実現することができ、それを通って、水などの流体冷却媒体は流れることができる。
【0045】
本発明のさらなる有利な方策及び実施例は、従属請求項よりもたらされる。
【0046】
以下において、本発明は、実施例及び図面に基づいて、さらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】本発明によるクロスフロー・ファンの第1の実施例の斜視図である(ファン・ハウジングなし)。
図2図1からの実施例による軸方向の断面であり、それによって、ファン・ハウジングは、図1の切断線II-IIに沿ってさらに示されている。
図3図2に類似の図における第1の電磁回転駆動部の拡大図である。
図4図3の切断線IV-IVに沿った、軸方向に垂直な第1の電磁回転駆動部の断面図である。
図5】第1の磁気的有効コアの断面であり、それによって、断面は半径方向に作られる。
図6】浮上及び駆動の原理を説明する3つの説明図である。
図7】軸方向Aに対して垂直な断面における、第1又は第2の電磁回転駆動部の概略断面図である。
図8図7と同様の図であるが、第1又は第2の電磁回転駆動部の実施例の異なる変形形態のための図である。
図9図7と同様の図であるが、第1又は第2の電磁回転駆動部の実施例の異なる変形形態のための図である。
図10図7と同様の図であるが、第1又は第2の電磁回転駆動部の実施例の異なる変形形態のための図である。
図11図7と同様の図であるが、第1又は第2の電磁回転駆動部の実施例の異なる変形形態のための図である。
図12図7と同様の図であるが、第1又は第2の電磁回転駆動部の実施例の異なる変形形態のための図である。
図13】斜視図における第1の実施例の変形形態である。
図14】軸方向に垂直なインペラを通る断面における図13からの変形形態の断面図である。
図15】本発明によるクロスフロー・ファンの第2の実施例の概略図である。
図16】第2の実施例の浮上及び駆動原理を説明するための4つの図である。
図17】本発明によるクロスフロー・ファンの第3の実施例の概略図である。
図18】本発明によるクロスフロー・ファンの第4の実施例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、参照符号1により全体が指定された、本発明によるクロスフロー・ファンの第1の実施例を斜視図で示す。より良い理解のために、図2は、軸方向Aに沿った断面におけるこの実施例の断面図をさらに示し、図1に表されていないファン・ハウジング10が図2に追加的に表されている。
【0049】
クロスフロー・ファン1は、時には、ローラとしても示される円筒形インペラ2を有する。インペラ2は、第1の端部21から第2の端部22まで軸方向Aに延在し、軸方向Aを中心に回転するように設計されている。軸方向Aは、インペラが動作状態で回転する望ましい回転軸によって定義される。これは、インペラ2の円柱軸と一致する。
【0050】
軸方向に垂直な方向は、半径方向と表す。
【0051】
環状に設計された第1の磁気的有効コア31(図2)は、インペラ2の第1の端部21に設けられる。環状に設計された第2の磁気的有効コア32は、インペラ2の第2の端部に設けられる。さらにまた、インペラ2は複数の羽根8を有し、その羽根のそれぞれは、軸方向Aに関して、2つの端部21、22の間に配置され、第1の磁気的有効コア31の被覆313から、軸方向Aに、且つ、所望の回転軸と平行に、第2の磁気的有効コア32の被覆313まで延在する。各々の羽根8は、第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32に、耐トルク的に接続される。
【0052】
従来のクロスフロー・ファンから知られているように、羽根8は、運搬される流体、通常はガスが、吸込側の羽根8の間でインペラ2の内部に吸引され、圧力側の羽根8の間でインペラ2の内部から排出されるように、インペラ2の外周に沿って間隔をあけて配置される。
【0053】
インペラ2は、それ自体知られている方法で設計することができるファン・ハウジング10(図2)内に配置される。ファン・ハウジング10は通常、運搬される流体がインペラ2の全長に沿ってインペラ2の内部に吸引される吸入領域20と、運搬される流体がインペラ2の全長に沿ってインペラ2の内部から排出される排出領域30とを有する。インペラ2の長さは、軸方向Aにおけるその伸長を指す。
【0054】
クロスフロー・ファン1は、軸受駆動固定子として設計され、且つ、第1の電磁回転駆動部として第1の磁気的有効コア31と相互作用する、第1の固定子41をさらに有する。この場合、第1の電磁回転駆動部は外部回転子として設計される、すなわち、動作状態において回転しない部分、すなわち、第1の固定子41は、動作状態において回転する部分、すなわち、第1の磁気的有効コア31の内部に配置され、第1の磁気的有効コア31が第1の固定子41を囲む。
【0055】
クロスフロー・ファン1は、少なくとも軸受固定子として設計された第2の固定子42をさらに有し、それにより、第2の磁気的有効コア32を、第2の固定子42に対して接触なしで磁気的に浮上させることができる。
【0056】
ここで説明される第1の実施例において、第2の固定子42は、軸受駆動固定子としても設計され、第2の電磁回転駆動部として第2の磁気的有効コア32と相互作用することができる。この場合、第2の電磁回転駆動部は外部回転子として設計される、すなわち、動作状態において回転しない部分、すなわち、第2の固定子42は、動作状態において回転する部分、すなわち、第2の磁気的有効コア32の内部に配置され、第2の磁気的有効コア32が第2の固定子42を囲む。
【0057】
よって、第1の固定子41及び第2の固定子42はそれぞれ、第1の固定子41が第1の磁気的有効コア31によって囲まれ、且つ、第2の固定子42が第2の磁気的有効コア32によって囲まれるように、インペラ2の内部に配置される。第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32が羽根8を介して耐トルク的に互いに接続されるので、インペラ2は、動作状態において、内部に配置された固定子41、42のまわりを回転する。
【0058】
第1の電磁回転駆動部及び第2の電磁回転駆動部はどちらも、無軸受モータの原理に従って設計され、接触なしで磁気的に駆動されることができ且つコイルなしで設計された第1及び第2の磁気的有効コア31又は32と、磁気的有効コア31又は32を動作状態において望ましい回転軸のまわりで接触なしで磁気的に駆動させることができ且つ固定子41又は42に対する接触なしに磁気的に浮上させることができる軸受駆動固定子として設計された第1の固定子41又は第2の固定子42とを有する。
【0059】
インペラ2が動作状態で回転する望ましい回転軸は、インペラ2が、固定子41、42に対して中心且つ非傾斜位置にあるときに回転する回転軸である。その場合、インペラ2は、両方の固定子41、42の半径方向に対してセンタリングされる。望ましい回転軸は通常、2つの固定子41及び42の中心軸と一致する。2つの固定子41及び42は、それらの中心軸が互いに一直線に並ぶように配置される、すなわち、それらは軸方向Aの同じ軸上に位置する。各固定子41、42に関して、半径方向平面は、望ましい回転軸又は軸方向Aに垂直な平面を示し、この平面は、固定子41、42の磁気中心平面である。各固定子41、42に関して、半径方向平面は、そのz軸が軸方向Aに延在するデカルト座標系のx-y平面を画定する。第1の固定子41の半径方向平面は、第2の固定子42の半径方向平面と平行である。
【0060】
特に好ましくは、第1の磁気的有効コア31及び第1の固定子41を有する第1の電磁回転駆動部と、第2の磁気的有効コア32及び第2の固定子42を有する第2の電磁回転駆動部とは、少なくとも略同様に設計される。したがって、電磁回転駆動部の以下の説明において、特に、図3図4、及び図5の説明においては、理解には十分であるので、主に第1の電磁回転駆動部のみ参照される。これらの説明は、第1の電磁回転駆動部に基づく一例として与えられ、同じ方法で、又は、類似的に同じ方法で、第2の電磁回転駆動部に適用されることが理解される。
【0061】
しかしながら、2つの電磁回転駆動部は少なくとも略同一であるように設計されるが、それらをクロスフロー・ファン1の動作状態において、同一の方法で動作させる必要はないことが強調されなければならない。よって、たとえば、2つの電磁回転駆動部のうちの一方のみによってインペラ2の回転を駆動するトルクを生成し、インペラ2の非接触の磁気浮上のための浮上力を生成するためにのみ、2つの電磁回転駆動部の他方を使用することが可能であり、トルクは、インペラ2の回転を駆動する2つの端部21、22のうちの1つのみで生成される。当然のことながら、インペラ2の回転を駆動するトルクが2つの電磁回転駆動部のそれぞれで生成されることも可能であり、その回転を駆動するトルクは、両端部21、22で、インペラ2に作用する。この場合、インペラ2を駆動するために2つの端部21、22で伝えられるトルクの量は、等しくてもよく又は異なってもよいことが理解される。
【0062】
より良い理解のために、図3は、図2に類似した表現で、第1の電磁回転駆動部の拡大図を示す。図4は、図3の切断線IV-IVに沿った、軸方向Aに垂直な第1の電磁回転駆動部の断面を示す。図4の断面は、第1の固定子41の半径方向平面、すなわち、第1の固定子41の磁気中心平面において、軸方向Aに垂直に作られる。図5は、第1の磁気的有効コア31の断面を示し、断面は半径方向に作られる。
【0063】
クロスフロー・ファン1のインペラ2は、2つの磁気的有効コア31及び32を有し、その一方がインペラ2の第1の端部21に配置され、他方がインペラ2の第2の端部22に配置される。インペラ2はコイルなしで設計される、すなわち、巻線は、インペラ2上に、特に、インペラ2の磁気的有効コア31、32上に設けられない。回転子2の第1及び第2の磁気的有効コア31及び32は、トルク生成ために、且つ、磁気浮上力の生成のために、第1の固定子41及び第2の固定子42と磁気的に相互作用するインペラ2のそれらの領域を指す。各磁気的有効コア31、32は、環状に設計されて、第1の固定子41又は第2の固定子42のまわりに配置される。
【0064】
図3及び図4に、第1の磁気的有効コア31及び第1の固定子41を有する第1の電磁回転駆動部が示される。図5に、半径方向における第1の磁気的有効コア31の断面が示される。第1の磁気的有効コア31は、環状ディスク又は円柱状リングの形態で設計される。第1の磁気的有効コア31は、環状の半径方向外側に配置されたリフラックス312と、たとえば、永久磁石リングとして設計されてもよい少なくとも1つの永久磁石311とを有する。当然のことながら、たとえば、リング・セグメントとしてそれぞれが設計される、複数の永久磁石311が設けられることも可能でもある。ここで説明される実施例において、特に図4を参照すると、合計4つの永久磁石311が設けられ、それらは、リングを形成するために、全体として互いを補完する。円周方向に見ると、4つの永久磁石311はすべて等しい長さであり、各永久磁石311は、永久磁石リング全体の1/4を形成する。各永久磁石311は、図4及び図5において参照符号のない矢印で示されるように、半径方向又は直径方向に磁化される。ここで、円周方向に隣接する永久磁石311は、いずれの場合にも反対方向に極性を与えられる、すなわち、半径又は直径方向に内向きに極性を与えられた永久磁石311及び半径又は直径方向に外向きに極性を与えられた永久磁石311が、いずれの場合にも隣接する。よって、ここでは、第1の磁気的有効コア31は、4極、すなわち、磁極対数2を有して設計される。
【0065】
高磁性の、つまり高い保磁力を有する、これらの強磁性材料又はフェリ磁性材料は、通常は永久磁石と呼ばれる。保磁力は、材料を消磁するのに必要とされる磁界強度である。本出願の枠組内では、永久磁石は、保磁力、より正確には10,000A/m超になる磁気分極の保磁力を有する材料として理解される。インペラ2の磁気的有効コア31、32のすべての永久磁石311は好ましくは、ネオジミウム-鉄-ボロン(NdFeB:neodymium-iron-boron)合金、又はサマリウム-コバルト(SmCo:samarium-cobalt)合金から構成される。
【0066】
第1の磁気的有効コア31は、すべての永久磁石311のまわりで半径方向外側に配置された環状のリフラックス312をさらに有する。リフラックス312は、すべての永久磁石311を包囲し、軟磁性材料から構成されるが、それは、リフラックス312は磁束を誘導する働きをするためである。
【0067】
インペラ2の各磁気的有効コア31、32に関して、各磁気的有効コア31、32が封入されるように、完全に、好ましくは密閉的に、それぞれの磁気的有効コア31、32を包囲する、それぞれの被覆313が設けられる。被覆313は好ましくは、金属又は耐蝕性金属合金又はセラミック又はセラミック材料又はプラスチックから作られる。被覆313が金属材料から作られる場合、被覆313は好ましく、特に、渦電流損をできるだけ低く維持するために、低い電気伝導率を有する。特に、高い耐蝕性を有する好適な合金は、たとえば、チタン-アルミニウム合金、特に、Ti6Al-4V/Ti6、又はニッケル-クロム-モリブデン合金である。好適な金属は、たとえば、タンタルである。
【0068】
たとえば、被覆313を作るために、各磁気的有効コア31、32は、製造プロセス、プラスチック若しくはセラミックで成形することができる、又は、金属材料でコーティングすることができる。しかしながら、それぞれの磁気的有効コア31、32が挿入される環状凹部をプラスチック、セラミック、又は金属材料、特に、耐蝕性の、非強磁性の、又は、わずかに弱強磁性且つ不十分な導電性の金属材料から作られる被覆313に最初に設けることも可能である。その後、環状凹部は、プラスチック又はセラミック又は金属材料から適切に形づくられたカバーで閉じられ、次いで、カバーは、たとえば、溶接法によって被覆313の残りの部分に接合される。その後、インペラ2の各々の磁気的有効コア31、32は密閉的に封入される。
【0069】
各固定子41、42は、複数の、ここでは厳密に6つのコイル・コア5を有し、そのそれぞれは、半径方向に延在し、星形に配置される。各コイル・コア5は、棒の形態に設計され、それぞれの固定子41、42の中心に配置された中心磁極片51から半径方向外向きに延在し、各コイル・コア5が全体的に略T形状の外観を有するように丸みのある磁極シュー52で終端する。すべての磁極シュー52の半径方向外側境界表面はみな、中心磁極片51の長手軸による同軸である円柱上に位置する。
【0070】
インペラ2の磁気駆動及び磁気浮上に必要な電磁回転場を生成するために、コイル・コア5は巻線を担持する。たとえば、ここで説明される第1の実施例において、巻線は、厳密に1つの集中巻線が個別のコイル53として各コイル・コア5に巻回されるように設計される。動作状態において、それらの電磁回転場は、これらのコイル53で生成され、この電磁回転場により、インペラ2にトルクがもたらされ、また、この電磁回転場により、インペラ2の半径方向位置、すなわち、軸方向Aに垂直な半径方向平面におけるそれぞれの固定子41、42の位置が能動的に制御又は調整することができるように、自由に調節可能である横方向力が半径方向においてそれぞれの磁気的有効コア31、32に与えることができる。
【0071】
各固定子41、42の中心磁極片51及びコイル・コア5の両方、並びに、各磁気的有効コア31、32のリフラックス312は、それらは、磁束を誘導するためのフラックス誘導要素として働くので、それぞれ軟磁性材料から作られる。適切な軟磁性材料は、たとえば、強磁性体又は強磁性材料であり、すなわち、特に、鉄、ニッケル-鉄、又はケイ素-鉄である。ここで、特に、各固定子41、42に対しては、固定子シートスタックとしての設計が好ましく、その場合、コイル・コア5及び中心磁極片51は、金属薄板で設計され、すなわち、それらは、積み重ねられたいくつかの薄い要素から構成される。各磁気的有効コア31、32のリフラックス312は、金属薄板で設計することもできる。金属薄板設計の代替形態として、電気的に絶縁され且つ圧縮された金属粒子から構成される軟磁性複合材料もまた、磁気的有効コア31、32及び/又は固定子41、42のために使用することができる。特に、SMC(Soft Magnetic Composite、軟磁性複合材料)とも表されるこれらの軟磁性複合材料は、電気絶縁層で被覆された鉄粉粒子から構成することができる。これらのSMCはその後、粉末冶金法によって所望の形状に形成される。
【0072】
すでに述べたように、第1及び第2の磁気的有効コア31、32及び第1及び第2の固定子41、42による第1及び第2の電磁回転駆動部は、無軸受モータの原理に従って設計され、この場合、それぞれの磁気的有効コア31、32は、接触なしで磁気的に駆動され、且つ、それぞれの固定子41、42に対する接触なしで磁気的に浮上され、別体の又は分離可能な磁気軸受は設けられない。浮上機能及び駆動機能はそれぞれ、同一の固定子41又は42で実現され、この場合、固定子41又は42を軸受ユニットと駆動ユニットとに分けることは不可能である。駆動機能及び浮上機能は、互いに分離することができない。「無軸受モータ」という用語は、別体の磁気軸受又は磁気軸受ユニットがインペラのために設けられないので、そのような回転駆動部に対して確立されるようになっている。これらの特に効率的な無軸受モータは、「非接触」構想を実現すると同時に、それらの極めてコンパクトな設計により、特に特徴づけられる。
【0073】
よって、無軸受モータは、動作状態で回転する磁気的有効コア31、32が固定子41、42に対して浮上される電磁回転駆動部であり、別体の磁気軸受又は磁気軸受ユニットは設けられない。この目的のために、それぞれの固定子41、42は、電気駆動部の固定子41、42でもあり磁気浮上の固定子41、42でもある、軸受駆動固定子として設計される。軸受駆動固定子41、42のコイル53は、回転磁場を生成するために使用することができ、この回転磁場は、一方では、磁気的有効コア31、32にトルクを与えて、その回転を生じさせ、他方では、磁気的有効コア31、32の半径方向位置、すなわち、それぞれの固定子41、42の半径方向平面における磁気的有効コア31、32の位置を、能動的に制御又は調整することができるように、自由に調節可能である横方向力を磁気的有効コア31、32に与える。無軸受モータの基本原理は、今のところ、当業者に十分に知られているが、無軸受モータの原理の特別な実現は、本発明によるクロスフロー・ファン1のために好ましく、それは、さらに詳細に説明される。
【0074】
ここで説明される第1の実施例において、それぞれの磁気的有効コア31、32の3つの自由度、すなわち、半径方向平面(2つの自由度)の磁気的有効コア31、32の位置及び軸方向Aのまわりでの磁気的有効コア31、32の回転は、能動的に制御又は調整することができる。望ましい回転軸の方向における磁気的有効コア31、32の軸方向の偏りに関して、それぞれの磁気的有効コア31、32は、磁気抵抗力により、受動的に磁気的に、安定化又は浮上される、すなわち、それは制御することができない。したがって、インペラ2の半径方向浮上は、機能に関して能動的な磁気的半径軸受に対応し、軸方向軸受は、機能に関して受動的な軸方向磁気軸受に対応する。
【0075】
無軸受モータの場合、古典的な磁気軸受とは対照的に、モータの磁気浮上及び駆動は、電磁回転場によって実現される。通常、無軸受モータでは、磁気的な駆動及び浮上機能は、駆動場及び制御場と通常呼ばれる2つの磁気回転場の重ね合わせによって作り出される。固定子41又は42の巻線又はコイル5によって生成されるこれらの2つの回転場は、通常、1だけ異なる磁極対数を有する。たとえば、駆動場が磁極対数pを有する場合、制御場は、磁極対数p+1又はp-1を有する。この場合、半径方向平面においてそれぞれの磁気的有効コア31、32に作用する接線方向力が、駆動場によって生成され、軸方向Aのまわりでの回転を生じさせるトルクをもたらす。駆動場及び制御場の重ね合わせにより、半径方向平面においてそれぞれの磁気的有効コア31、32にかかる自由に調節可能である横方向力を生成することも、可能であり、この横方向力により、半径方向平面におけるそれぞれの磁気的有効コア31、32の位置を調整することができる。よって、コイル53によって生成される電磁束を、回転の駆動のみを提供する(電)磁束と、磁気浮上のみを実現する(電)磁束とに分けることは不可能である。
【0076】
駆動場及び制御場を生成するために、一方では、2つの異なる巻線系、すなわち、駆動場を生成するための巻線系と制御場を生成するための巻線系を使用することが可能である。駆動場を生成するためのコイルは、通常、駆動コイルと呼ばれ、制御場を生成するためのコイルは、制御コイルと呼ばれる。これらのコイルに印加される電流は、駆動電流又は制御電流と呼ばれる。他方では、ここで説明される実施例のように、単一の巻線系のみで駆動及び浮上機能を作り出すことも可能であり、そのため、駆動コイルと制御コイルとの区別がない。これは、制御装置6によりその都度判定される駆動電流の値及び制御電流の値が、計算、たとえば、ソフトウェアを用いた計算によって追加される又は重ねられ、そして得られる全電流がそれぞれのコイル53に印加されるような方法で、実現することができる。この場合、当然のことながら、制御コイルと駆動コイルとを区別することは、もはや不可能である。ここで説明される実施例において、最後に述べた変形形態が実現され、すなわち、第1及び第2の固定子41、42において駆動コイルと制御コイルとが区別されないが、いずれの場合にも1つだけの巻線系が存在し、その6つのコイル53において、駆動及び制御電流の計算された合計が印加される。しかしながら、2つの電磁回転駆動部により、本発明によるクロスフロー・ファン1を設計することも、当然のことながら可能であり、2つの別々の巻線系は、第1の固定子41及び第2の固定子42に設けられる、すなわち、それぞれ、別々の駆動コイル及び別々の制御コイルを有する。
【0077】
本発明によるクロスフロー・ファン1に好ましい、無軸受モータの原理の特定の実施例が、以下でさらに詳細に説明される。すでに述べたように、集中巻線53のみが、軸受駆動固定子41及び42のそれぞれに設けられ、厳密に1つの集中巻線53が各コイル・コア5上に設けられる。いくつかのコイル・コア上に延在する分布巻とは対照的に、集中巻線53は、厳密に1つのコイル・コア5上に設けられる。
【0078】
たとえば、上述の米国特許第6,404,794号に開示されるような、分布巻による無軸受モータの概念とは対照的に、好ましいように、ここで提案される集中巻線53による概念は、大幅に増加した出力密度及びさらに一層コンパクトな設計を可能にするという実質的な利点を有する。集中巻線53の概念により、コイル・コア5の数又はコイル・コア5間の溝を大幅に減少させることができ、それは、製造に関するかなりの利点でもある。
【0079】
よって、ここで説明される好ましい実施例において、各固定子41、42は、いずれの場合にも、集中巻線53を有して設計され、各コイル・コア5は、厳密に1つの巻線(又は、コイル)53を担持する。これらは、浮上力の生成及びトルク形成の両方を同時に実行する同じ集中巻線53である。よって、集中巻線53は、浮上力及びトルクを生成するための、組み合わされた巻線を表す。これは、一方では浮上力の生成のための、他方ではトルクの形成のための、別々の巻線系が存在しないことを意味する。この実施例により、集中巻線53の数は大幅に減少させることができる。
【0080】
浮上及び駆動の原理を説明するために、図6は、各場合における3つの異なる説明図で、磁極シュー52を有するコイル・コア5及びコイル・コア5上に配置された集中巻線53、並びに、第1の磁気的有効コア31の詳細を示す。それぞれがスナップショットを表す3つの説明図は、第1の磁気的有効コア31が磁極シュー52に対して配置される相対回転位置が異なる。左の説明図では、反対方向に且つ半径方向に極性を与えられた2つの周方向に隣接する永久磁石311間の境界が、磁極シュー52の反対側のちょうど中央にある。中央の説明図では、永久磁石311のうちの1つは、磁極シュー52の反対側の中央に配置されている。右の説明図では、2つの隣接する永久磁石311間の境界が必ずしも磁極シュー52の中心の反対側になく、永久磁石311のうちの1つが磁極シュー52に関する中心位置にない任意の中間位置が示されている。
【0081】
図6において、参照符号のない矢印は再び、それぞれの永久磁石311の磁化を示し、電流ラインIは、集中巻線53を通る電流を示す。
【0082】
左の説明図において、第1の磁気的有効コア31は、2つの永久磁石311に作用する半径方向力成分がちょうど互いに相殺する、すなわち、打ち消し、一方、2つの接線方向力成分は、全体として、接線方向に向けられる力FTが第1の磁気的有効コア31に作用するように合計されるように磁極シューに対して向けられる。中央の説明図において、永久磁石に作用する、結果として得られる力は、半径方向に向けられた力FRである。右の説明図に表される一般的な向きにおいて、力Fが第1の磁気的有効コア31に作用し、その力Fは、接線方向に向けられたゼロではない接線方向力成分FTと、半径方向に向けられたゼロではない半径方向力成分FRとの両方を有する。
【0083】
接線方向力成分FTは、第1の磁気的有効コア31にトルクをもたらす。力は、半径方向平面におけるその位置を変更又は調整するために、半径方向力成分FRを介して第1の磁気的有効コア31に加えることができ、すでに述べたように、半径方向平面は、第1の固定子41におけるデカルト座標系のx-y平面を表し、そのz軸は軸方向Aに延在する。
【0084】
第1の磁気的有効コア31が磁極シュー52に対して配置される回転位置は、回転角によって説明することができる。図6が示すように、半径方向力成分FR又は接線方向力成分FTが生成されない各コイル・コア5又は磁極シュー52の回転角が存在する。第1の磁気的有効コア31上の磁極シュー52の力効果の方向、すなわち、図6の力Fの方向は、自由に選択することもできないが、回転角に依存する。トルクは接線方向力成分FTによってのみ生成することができるので、所定の磁極シュー52がトルクに寄与することができない回転角が存在する(たとえば、図6の中央の説明図を参照)。したがって、いくつかの磁極シュー52が、トルク形成に関与しなければならない。
【0085】
同じことは、一般に半径方向平面におけるx-成分及びy-成分から構成される、第1の磁気的有効コア31に作用する浮上力の生成にも当てはまる。各磁極シュー52に関して、たとえば、ゼロではないx-成分で力を生成することが不可能である回転角が存在する。所定の大きさ及び方向の浮上力を生成するために、複数の磁極シュー52の相互作用が必要である。
【0086】
したがって、第1の電磁回転駆動部に関して(当然のことながら、存在する場合、第2の電磁回転駆動部に関しても)、自由に選択可能な方向及び強さを有するトルク並びに浮上力を、各回転角に対して、すなわち、第1の固定子41に対する第1の磁気的有効コア31の各回転位置に対して、生成することができるような実施例が好ましい。この方策により、安定した回転速度及び位置制御を実現することができる。
【0087】
この要件を満たす1つの可能な実施例が、図4に示される実施例であり、この実施例では、第1の磁気的有効コア31は厳密に4つの永久磁石311を有し、第1の固定子41は、厳密に6つの磁極シュー52とともに、厳密に6つのコイル・コア5を有し、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0088】
この配置は、図7に再び概略的に示され、磁極シュー52の明確な表現は、より良好な概観のために省かれている。被覆313も図7では表されていない。第1の固定子41の6つのコイル・コア5によって担持される6つの集中巻線53は、識別可能とするために、図7の参照符号L1~L6で指定される、すなわち、図7のL1~L6で示される巻線のそれぞれは、集中巻線53のうちの1つである。それぞれの集中巻線L1~L6に供給される電流は、i1~i6で指定される。これは、i1が集中巻線L1に供給される電流を示し、i2が集中巻線L2に注入される電流を示すなどのことを意味する。各集中巻線L1~L6は、電気位相を形成する。
【0089】
図7に示される実施例において、任意の回転角に関して、すなわち、第1の固定子41に対する第1の磁気的有効コア31の任意の回転位置に関して、任意の方向及び大きさの浮上力、並びに、任意の大きさの定トルクを生成することができる制御は可能である。
【0090】
集中巻線L1~L6を制御するために、制御装置6に設けられるパワー・エレクトロニクスは、たとえば、6つの半ブリッジ、すなわち、各集中巻線L1~L6に対して1つの半ブリッジを有する。各半ブリッジのために2つの回路遮断機が必要とされるので、合計12個の回路遮断機が、各電磁回転駆動部に対して設けられる。好ましくは、集中巻線L1~L6のそれぞれのうちの3つは、浮動スター・ポイントで3相系を形成するために接続される。たとえば、集中巻線L1、L3、及びL5は、3相系を形成するために接続され、集中巻線L2、L4、及びL6は、三相系を形成するために接続される。
【0091】
電流i1~i6は好ましくは、以下のスキームに従って調整される。駆動所望電流
【数1】

は、速度制御アルゴリズムによって予め定められる。これは、第1の固定子41に対する第1の磁気的有効コア31の回転位置を示す回転角θとともに、以下の成分を有する固定子有向性三相系に変換される。
【数2】

【数3】
【0092】
同様に、磁気的有効コア31の能動的な磁気浮上に必要とされる浮上電流
【数4】

及び、位置制御アルゴリズムによって予め定められる浮上力方向φは、以下の固定子有向性三相系に変換される。
【数5】
【0093】
集中巻線53、すなわち、L1~L6が、磁気浮上に必要な浮上力及び駆動に必要なトルクの両方を生成するので、浮上及び駆動電流は、重畳させて、それぞれの集中巻線L1~L6に供給される、集中巻線L1~L6に対する以下の電流i1~i6としなければならない。
=iD,1+iB,1
=iD,2-iB,3
=iD,3+iB,2
=iD,1-iB,1
=iD,2+iB,3
=iD,3-iB,2
【0094】
この制御により、所望の浮上力、その方向がφによって定義され、次いで、所望のトルクが現在の回転角θで生成される。
【0095】
ここで説明された実施例では、第1の固定子41又は第2の固定子42がいずれの場合にも厳密に6つのコイル・コア5を有し、そのそれぞれが厳密に1つの集中巻線53すなわちL1~L6を担持し、且つ、第1の磁気的有効コア31又は第2の磁気的有効コア32がいずれの場合にも磁極対数2を有するように、第1の磁気的有効コア31又は第2の磁気的有効コア32がいずれの場合にも4つの永久磁石311を有してさらに設計されるが、この実施例の他に、他の変形形態も存在し、好ましい変形形態のいくつかが、図8図12に概略図で示されている。図8図12の表現はいずれの場合にも、図7の表現に対応する、すなわち、被覆313は、図8図12においても示されない。すべての変形形態は、第1の固定子41及び第1の磁気的有効コア31を有する第1の電磁回転駆動部のために、並びに、第2の固定子42及び第2の磁気コア32を有する第2の電磁回転駆動部のために、使用することができる。電磁回転駆動部がインペラ2の各端部21、22に設けられる場合、この第1の電磁回転駆動部及び第2の電磁回転駆動部は好ましくは、少なくとも、第1及び第2の固定子41並びに第1及び第2の磁気的有効コア31及び32に対するのと同様に設計される。
【0096】
さらにまた、図8~12のすべての変形形態は、いずれの場合にも厳密に1つの集中巻線53が各コイル・コア5上に設けられる、各永久磁石311がリング・セグメントとしていずれの場合にも設計される、各磁気的有効コア31又は32の永久磁石311がいずれの場合にもリングを形成するために互いを補完する、各永久磁石311が半径方向に磁化され、円周方向に互いに隣接して配置される永久磁石311がそれぞれ反対方向に磁化される、という共通点を有する。それぞれの磁化は再び、参照符号なしの矢印で表される。さらに、各磁気的有効コア31又は32に関して、この磁気的有効コア31又は32のすべての永久磁石311は、それぞれの磁気コア31又は32の円周方向に見られるのと同じ長さを有するように設計される。
【0097】
図8は、第1又は第2の磁気的有効コア31又は32が、6つの永久磁石311を有し、6極、すなわち、磁極対数3を有して設計される変形形態を示す。第1又は第2の固定子41又は42は、厳密に4つのコイル・コア5を有して設計され、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0098】
図9は、第1又は第2の磁気的有効コア31又は32が、12個の永久磁石311を有し、12極、すなわち、磁極対数6を有して設計される変形形態を示す。第1又は第2の固定子41又は42は、厳密に4つのコイル・コア5を有して設計され、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0099】
図10は、第1又は第2の磁気的有効コア31又は32が、8つの永久磁石311を有し、8極、すなわち、対磁極数4を有して設計される変形形態を示す。第1又は第2の固定子41又は42は、厳密に5つのコイル・コア5を有して設計され、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0100】
図11は、第1又は第2の磁気的有効コア31又は32が、10個の永久磁石311を有し、10極、すなわち、対磁極数5を有して設計される変形形態を示す。第1又は第2の固定子41又は42は、厳密に6つのコイル・コア5を有して設計され、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0101】
図12は、第1又は第2の磁気的有効コア31又は32が、16個の永久磁石311を有し、16極、すなわち、対磁極数8を有して設計される変形形態を示す。第1又は第2の固定子41又は42は、厳密に6つのコイル・コア5を有して設計され、厳密に1つの集中巻線53は、各コイル・コア5上に配置される。
【0102】
たとえば、無軸受モータとして設計される回転駆動部の磁気的有効コア31、32の位置、制御、供給、及び調整を判定するためのセンサ・システムは、当業者には十分に知られており、ここではさらなる説明は必要ない。いくつかのセンサ7は、例示的な形質を有して図4に描かれている。
【0103】
本発明によるクロスフロー・ファン1の第1の実施例において、好ましくは、第1及び第2の磁気的有効コア31、32が、それぞれの被覆313によって完全に包囲されるだけでなく、さらに、第1の固定子41及び第2の固定子42はそれぞれ、第1の固定子ハウジング91及び第2の固定子ハウジング92内に封入され、各固定子ハウジング91、92は低透磁性材料から構成される。好ましくは、この低透磁性材料は、プラスチック、又はセラミック、又は金属材料、特に、チタン-アルミニウム合金、特に、Ti6Al-4V/Ti6、若しくは、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの、電気伝導率の低い耐蝕性金属合金である。
【0104】
好ましくは、磁気的有効コア31、32の被覆313及び固定子ハウジング91、92は、プラスチックから、又は、セラミック若しくはセラミック材料から、又は、金属から、又は、たとえば、チタン-アルミニウム合金、特に、Ti6Al-4V/Ti6、若しくは、ニッケル-クロム-モリブデン合金などの、電気伝導率の低い耐蝕性金属合金から作られる。被覆313及び/又は固定子ハウジングが金属材料から作られる場合、この金属材料は好ましくは、特に、結果として被覆313及び固定子ハウジング91、92の渦電流損を小さく維持するために、電気伝導率の低い金属材料である。特に、被覆313及び固定子ハウジング91、92は異なる材料から作ることも可能である。よって、たとえば、被覆313は、第1のプラスチック、又は第1のセラミック材料、又は第1の金属材料から作ることができ、一方、固定子ハウジング91、92は、第2のプラスチック、又は第2のセラミック材料、又は第2の金属材料から作られる。この場合、第1及び第2のプラスチックは同じプラスチックであってもよく、又は、第1及び第2のプラスチックは異なるプラスチックであってもよい。第1及び第2のセラミック材料は同一であってもよく又は異なってもよく、第1及び第2の金属材料は同一であってもよく又は異なってもよい。金属材料の中では、耐蝕性であり、電気伝導率の低いそのような金属合金が、特に好ましい。
【0105】
低透磁性材料は、より低い透磁率(磁気伝導率)のみを有する材料である。本出願の枠組内では、透磁性数(比透磁率)が1(真空の透磁性数)からわずかにしか又は少しも逸脱しない材料は、一般的にそうであるように、低透磁性であると理解される。いかなる場合においても、低透磁性材料は、1.1未満の透磁性数を有する。したがって、低透磁性材料は、たとえば、コイル・コア5が作られる強磁性材料よりかなり低い磁気伝導率を有する。第1のプラスチック及び/又は第2のプラスチックは、たとえば、以下のプラスチックのうちの1つとすることができる。ポリエチレン(PE:Polyethylene)、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)、超低密度ポリエチレン(ULDPE:Ultra Low Density Polyethylene)、エチレン酢酸ビニル(EVA:Ethylene Vinyl Acetate)、ポリエチレン・テレフタレート(PET:Polyethylene Terephthalate)、ポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)、ポリプロピレン(PP:Polypropylene)、ポリウレタン(PU:Polyurethane)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF:Polyvinylidene Fluoride)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)、ポリアクリル、ポリカーボネート(PC:Polycarbonates)、又はシリコーン。多くの用途のために、Teflonの商標名で知られている材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)、及びペルフルオロアルコキシ・ポリマー(PFA:perfluoroalkoxy polymers)もまた、第1及び/又は第2のプラスチックとして好適である。
【0106】
好ましくは、これらのプラスチックのうちの1つが、磁気的有効コア31、32を密閉的に封入するための第1のプラスチックとして使用され、これらのプラスチックのうちの1つが、固定子41、42を密閉的に封入する固定子ハウジングのための第2のプラスチックとして使用される。理解には十分であるので、以下では第1のプラスチックと第2のプラスチックとのさらなる区別はなされない。
【0107】
インペラ2の各羽根8が封入されて、好ましくは密閉的に、完全に包囲されることも可能である。しかしながら、特に耐性のある材料から、たとえば、金属材料又はプラスチックから羽根8を製造することも可能である。
【0108】
すべての上述のプラスチック又は金属又はセラミック材料は低透磁性であるので、すなわち、それらは磁束を十分に伝導しないので、半径方向において、一方では第1又は第2の磁気的有効コア31、32との間に、他方では第1又は第2の固定子41、42のコイル・コア5の磁極シュー52との間に配置される被覆313及び固定子ハウジング91又は92は、磁気的有効コア31又は32と固定子41又は42との間の磁気空隙によるものとすべきである。よって、磁気的有効コア31又は32と固定子41又は42との間の磁気空隙は、磁気的有効コア31又は32と固定子41又は42のコイル・コア5の磁極シュー52との間の半径方向における距離と等しい。したがって、磁気的有効コア31、32の密閉的封入及び固定子41、42の密閉的封入は、他の無軸受モータと比較して大きな磁気空隙をもたらす。磁気的有効コア31、32が中心に配置されたときの磁気空隙の幅は、たとえば、4mmであるか、さらに大きいことすらある。
【0109】
2つの固定子ハウジング91及び92は、少なくとも略同様に設計される。したがって、第1の固定子ハウジング91のみ、以下で言及し、説明は、同じ又は類似的に同じ方法で、第2の固定子ハウジング92に適用される。
【0110】
第1の固定子ハウジング91は、軸方向Aに隣接して配置される第1のハウジング部分93及び第2のハウジング部分94を有し、第1のハウジング部分93はインペラ2の内側に配置され、第2のハウジング部分94はインペラ2の外側に配置される。各ハウジング部分93、94は円筒形状を有し、第2のハウジング部分94の外径は、第1のハウジング部分93の外径より大きい。よって、全体として、したがって、第1の固定子ハウジング91は、長い縁を中心としてLの字を回転させたときに作り出される空間を包囲する。
【0111】
第1のハウジング部分93の外径は、インペラ2の第1の磁気的有効コア31の内径より小さく、第1のハウジング部分93は、軸方向Aにインペラ2に挿入することができる。第1の電磁回転駆動部の第1の固定子41は、第1の固定子ハウジング91の第1のハウジング部分93内に配置され、第1の固定子ハウジング91がインペラ2内に挿入されたときに、第1の固定子41はインペラ2の第1の磁気的有効コア31によって取り囲まれる。結果として、外部回転子のための回転駆動部の配置は通常通りであり、第1の固定子41は、第1の磁気的有効コア31の半径方向内側に配置される。
【0112】
第1の固定子ハウジング91の第2のハウジング部分94の外径は、第1の磁気的有効コア31の外径と少なくとも同じ大きさであるように寸法決めされ、そのため、第2のハウジング部分94は、インペラ2に挿入することができない。その場合、たとえば、第2のハウジング部分94は、第1の固定子ハウジング91が明確な位置にあるように第2のハウジング部分94のための止め具を形成するファン・ハウジング10(図3)に当接することができる。
【0113】
第1の固定子41のための制御装置6は、第1の固定子ハウジング91の第2のハウジング部分94内に配置される。類似の方法において、第2の固定子42のための制御装置6は、第2の固定子ハウジング92の第2のハウジング部分94内に設けられる。第1の固定子41のための、又は、第2の固定子42のための2つの制御装置6は、互いに独立して動作することができる。よって、たとえば、第1の固定子41のための制御装置6は、第1の固定子41に対する第1の磁気的有効コア31の半径方向位置を調整し、独立して、第2の固定子42のための制御装置6は、第2の固定子42に対する第2の磁気的有効コア32の半径方向位置を調整することができる。クロスフロー・ファン1は、2つの制御装置6によって駆動及び調整される。各制御装置6は、それぞれの固定子41又は42のコイル53のための電流が生成されるパワー・エレクトロニクス、並びに、インペラ2の駆動部及びそれぞれの磁気的有効コア31、32の半径方向位置を調整又は制御する調整及び制御装置を有する。パワー・エレクトロニクスは好ましくは、プリント回路基板(PCB:printed circuit board)として設計される。さらにまた、制御装置6は、さまざまなセンサ7、並びに、センサ7によって供給される信号を処理するための評価ユニットを有することができる。制御装置6全体もそれぞれの固定子ハウジング41又は42内に配置されるという事実により、クロスフロー・ファン1の非常にコンパクトで場所を取らない設計がもたらされる。さらに、制御装置6は、化学的に攻撃的な周囲条件、並びに、密閉的に封止された固定子ハウジング41又は42内の塵及び汚染に対しても保護される。
【0114】
さらにまた、ケーブルのためのフィードスルー95が、各固定子ハウジング91、92に設けられ、そのケーブルを介して、制御装置6に電力が供給される。さらにまた、ケーブルは、制御装置6への又は制御装置6からの、アナログ又はデジタル信号の伝送のために使用することができる。この目的のために、各制御装置6のケーブルは、たとえば、電圧源に、及び、通信インタフェースに接続される。
【0115】
よって、第1及び第2の磁気的有効コア31、32並びに第1及び第2の固定子41、42の両方と、2つの制御装置6とが密閉的に封入されるので、クロスフロー・ファン1は、半導体産業に見られるような問題をはらむ環境での使用に完全に適している。ここで、腐食性蒸気、ガス、さらには腐食性物質が存在することがあり、それらは、従来のクロスフロー・ファンには、ほんの短い動作時間の後に、かなり損傷を与える可能性がある。特に、本発明によるクロスフロー・ファン1は、エキシマ・レーザ、及び、一般的なレーザ技術での使用に好適である。無軸受の概念、並びに、固定子41、42、制御装置6、及び磁気的有効コア31、32の密閉的封入により、クロスフロー・ファン1は、たとえば、製薬産業又はバイオテクノロジにおける、高純度環境での使用又は高純度ガスの運搬にも特に好適である。
【0116】
いずれの場合にも第2のハウジング部分94のうちの1つに制御装置6を配置することは、第1のハウジング部分93に配置される固定子41、42と第2のハウジング部分94に配置される制御装置6との間の空間的分離という利点をさらに有する。空間的分離により、制御装置6は、固定子41、42によって生成される熱にほとんどさらされない。この熱は、たとえば、回転駆動部の動作によって、特に、固定子41、42のコイル53を通る電流流れによって、渦電流損によって、及びヒステリシス損によって生成される。熱が運搬される流体によって固定子ハウジング91、92の第1のハウジング部分93に導入されることもある。たとえば、エキシマ・レーザでは、運搬されるガスの温度は、最大200℃又はさらに高い可能性がある。概して、電磁回転駆動部及び、特に、固定子41、42がその電子部品を有する制御装置6より高い温度にさらされる可能性があるので、固定子41、42及び制御装置6の空間的間隔は特に有利である。
【0117】
特に、制御装置6を過度の加熱からより適切に保護するために、各固定子ハウジング91、92内に、固定子41、42と制御装置6との間に配置される熱保護層96(図3)を設けることは有利であることがある。
【0118】
さらに有利な方策として、冷却可能な各固定子41、42を設計することが可能である。たとえば、これは、コイル・コア5の間、すなわち、コイル53も走る場所に冷却ライン97(図4)を設けることによって実現することができ、その冷却ライン97を通って、流体熱伝達媒体、たとえば、水又は空気が循環し、それらは、コイル53で生成された熱又は他の熱を少なくとも部分的に吸収及び除去する。熱伝達媒体は、フィードスルー95を通して供給及び除去することができる。当然のことながら、第1及び第2の固定子ハウジング91、92は、外部から冷却することもできる。
【0119】
本発明によるクロスフロー・ファン1のさらなる利点は、インペラ2をシャフトなしで設計できるということである。知られているクロスフロー・ファンに設けられるシャフトは、インペラを通って軸方向に延在し、インペラの中央において中心に配置され、それによって、シャフトは両方の軸端においてインペラから出て、軸方向に関してインペラを越えて突出するが、本発明によるクロスフロー・ファン1ではもはや必要ではなく、そのようなシャフトは省くことができる。これは、特に、構造設計に関して、相当の簡略化を意味し、インペラ2内部に追加の自由空間を提供する。
【0120】
インペラ2内部にシャフトがないことにより、1つ又は複数の流れガイド要素を、流体流れを案内するために、非常に簡単な方法でインペラ2内部に配置することができるという利点をさらにもたらされる。そのような変形形態が図13に示されている。図13の表現は、図1の表現に実質的に対応する。図13は、第1の実施例の変形形態の概略図を示し、インペラ2は、より良好な理解のために図13には示されていない。本変形形態において、バッフル・プレート25は、インペラ2内部に設けられ、第1の固定子ハウジング91から第2の固定子ハウジング92まで軸方向Aに延在する。バッフル・プレート25は、いずれの場合にも、取り外し可能な接続要素251によって、それぞれの固定子ハウジング91、92に固定される。それぞれの固定子ハウジング91又は92への接続は好ましくは、バッフル・プレート25を簡単な方法で挿入又は除去できるように、簡単に取り外し可能である。この目的のために、各接続要素251は、たとえば、それぞれの固定子ハウジング91、92内の凹部に係合できるように設計することができる。
【0121】
より良い理解のために、図14は、軸方向Aに垂直な断面における、バッフル・プレート25を有する本変形形態の断面をさらに示す。図14において、インペラ2は、その内部に配置されたバッフル・プレート25を有して表されている。さらにまた、ファン・ハウジング10、並びに、運搬される流体がインペラ2の全長にわたってインペラ2の内部に吸引される吸入領域20、及び、運搬される流体がインペラ2の全長にわたってインペラ2の内部から排出される排出領域30も表されている。図14から分かるように、インペラ2の内部から排出領域30に、できるだけ滑らかに流体流れの向きを変えるために、バッフル25は、軸方向Aに対して垂直に湾曲して設計される。
【0122】
概略図において、図15は、本発明によるクロスフロー・ファン1の第2の実施例を示す。第2の実施例の以下の説明においては、第1の実施例及びその変形形態との違いのみが、さらに詳細に論じられる。その他の点では、第1の実施例及びその変形形態に対する説明は、第2の実施例に同じ方法で又は類似的に同じ方法で当てはまる。第2の実施例において、同じ部品又は機能の同じ部品は、第1の実施例と同じ参照符号で示される。
【0123】
第2の実施例において、第1の固定子41及び第2の固定子42はまた、いずれの場合にも、軸受駆動固定子として設計され、第1の固定子41は、無軸受モータの原理に従って動作する電磁回転駆動部として、第1の磁気的有効コア31と相互作用し、第2の固定子42は、無軸受モータの原理に従って動作する電磁回転駆動部として、第2の磁気的有効コア32と相互作用することができる。
【0124】
両方の電磁回転駆動部は、それぞれの固定子41、42の特に場所を取らない設計で設計される。各固定子41、42は、いずれの場合にも、厳密に3つだけのコイル・コア5を有し、厳密に1つの集中巻線53(図16)が各コイル・コア5上に設けられ、各固定子41、42は、厳密に3つの集中巻線53を有する。より良好な概観の理由から、集中巻線53は図15に示されていない。さらにまた、インペラ2は、図15にのみ示されている。
【0125】
より良好な概観の理由から、且つ、理解には十分であるので、被覆313及び2つの磁気的有効コア31、32の環状の磁気リフラックス312、並びに、2つの固定子ハウジング91、92は、図15に示されていない。
【0126】
第2の実施例において、いずれの場合にも、6つの永久磁石311が、第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32に設けられ、それらは、リングを形成するために、全体として互いを補完する。円周方向に見ると、6つの永久磁石311はすべて等しい長さである。各永久磁石311は、図15及び図16において参照符号のない矢印で示されるように、半径方向に磁化される。この場合、円周方向に隣接する永久磁石311は、いずれの場合にも反対方向に極性を与えられる、すなわち、半径方向内向きに極性を与えられた永久磁石311及び半径方向外向きに極性を与えられた永久磁石311は、いずれの場合にも隣接する。よって、第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32はそれぞれ、6極、すなわち、磁極対数3を有して設計される。
【0127】
特に図15で分かるように、第2の実施例において、別の同様に設計された磁気コア31及び32が、ゼロとは異なる角度αだけ互いに対して回転されて、インペラ2上に配置される。この角度αは、円周方向に測定された永久磁石311の半分の長さに対応し、そのため、360°を永久磁石311の数の2倍で割った商で与えられる。したがって、本実施例では、角度αは30°である。
【0128】
浮上及び駆動原理のより良好な理解のために、図16は、4つの異なる説明図E、B、C、Dにおける第1の固定子41及び第1の磁気的有効コア31を示す(同じことは、当然、第2の固定子42及び第2の磁気的有効コア32にも当てはまる)。それぞれがスナップショットを表す4つの説明図は、第1の磁気的有効コア31が第1の固定子41に対して配置される相対回転位置が異なる。それぞれの集中巻線53を通る電流の流れは、それぞれの集中巻線53における点記号及び十字記号によって示される。集中巻線53のうちの1つのこれらの記号の二重化(説明図B参照)は、単一の記号のみ存在する集中巻線よりも強い、この集中巻線53の電流を記号で表す。記号がない(説明図D参照)ことは、電流が現在この集中巻線53を流れていないことを意味する。
【0129】
たとえば、トルクの生成のために、図16の説明図Eに示されるように、3つの集中巻線53はすべて、同じ巻き方向で等しい量の電流が加えられる。その場合、トルクTは、力FTから生じ、第1の磁気的有効コア31の回転を駆動する。浮上力FLを形成するために、各集中巻線53のための電流の方向及び大きさは、軸受力の所望の全体的な方向及び所望の大きさが生じるように調節しなければならない。これは、図16の説明図B及びDに例示され、一方の場合、3つの集中巻線53のうちの1つを流れる電流が、他の2つの集中巻線53を通る電流よりも強く(説明図B)、他方の場合、集中巻線53のうちの1つには電流が流れていない(説明図D)。
【0130】
浮上力FLは、接線方向力FT及び半径方向力FRから生じさせることができるので、第1の固定子41と第1の磁気的有効コア31との間の任意の相対回転位置のために、任意の大きさ及び方向の軸受力FLを生成することが可能である。
【0131】
しかしながら、たとえば、図16の説明図Cの場合のように、第1の磁気的有効コア31に作用するトルクTを生成することが不可能である、第1の磁気的有効コア31と第1の固定子41との間の相対回転位置が存在することも分かる。
【0132】
よって、第1の電磁回転駆動部は、非接触の磁気浮上に関して完全浮上機能を有するが、駆動に関して、第1の固定子41に対する第1の磁気的有効コア31の相対回転位置が、第1の磁気的有効コア31に作用するトルクTを第1の固定子41で生成することができないような位置である、デテント位置が存在する。そのようなデテント位置から第1の電磁回転駆動部を開始することは可能でないであろう。
【0133】
この理由のために、第2の磁気的有効コア32は、第1の磁気的有効コア31に対してゼロとは異なる角度α(ここでは30°)まで回転されて、インペラ2上に配置される。第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32がインペラ2を介して耐トルク的に互いに接続されるので、第1の磁気的有効コア31及び第2の磁気的有効コア32が、それぞれの磁気的有効コア31又は32にトルクを与えることができない、それらの固定子41又は42に対する回転位置に、同時に位置することは不可能である。第1及び第2の磁気的有効コア31、32の相対的にねじれた配置により、2つの磁気的有効コア31、32のうちの少なくとも1つは、クロスフロー・ファン1のインペラ2が任意の回転位置から開始することができるように、ゼロとは異なるトルクTをその上に与えることができる、関連する固定子41、42に対する回転位置に常に位置する。2つの固定子41及び42は、互いに対して回転しないように取り付けられる。
【0134】
当然のことながら、2つの磁気的有効コア31、32を互いに対して回転させないことも可能である、すなわち、ゼロと等しい角度αを選択し、且つ、(軸方向Aのまわりの回転に関して)30°の角度で互いに対して回転する2つの固定子41、42を配置することも可能である。
【0135】
小さい空間の要求に加えて、第2の実施例は、2つの電磁回転駆動部の制御及び調整をそれぞれ、非常に簡単に、労力をかけずに実現することができるというさらなる利点を有する。2つの電磁回転駆動部のそれぞれのためには、4つの半ブリッジのみ必要である。2つの固定子41、42のそれぞれにおいて、3つの集中巻線53のそれぞれは、いずれの場合にも、1つの相を表す。これらの3つの相は、固定子41、42のそれぞれにおいて、各集中巻線53の電流を、同じ固定子41又は42の他の2つの集中巻線53の電流とは独立して調節又は調整することができるように、ロード可能なスター・ポイントにおいて接続される。スター・ポイントへ(又は、スター・ポイントから)流れる電流も調整される。よって、4つの電流を各電磁回転駆動部で調整することになり、そのため、4つの半ブリッジが必要である。よって、各電磁回転駆動部のために8つの回路遮断機が必要である。
【0136】
図17は、本発明によるクロスフロー・ファン1の第3の実施例を非常に概略的な表現で示す。図18は、本発明によるクロスフロー・ファン1の第4の実施例を非常に概略的な表現で示す。第3及び第4の実施例の以下の説明において、第1及び第2の実施例及びそれらの変形形態との違いのみが、さらに詳細に論じられる。その他の点では、第1及び第2の実施例及びそれらの変形形態に対する説明も、同じ方法で、又は、類似的に同じ方法で、第3及び第4の実施例に適用される。第3及び第4の実施例において、同じ部品又は機能の同じ部品は、前述の実施例と同じ参照符号で示される。
【0137】
一方の第3及び第4の実施例と他方の第1の2つの実施例との実質的な差異は、第3及び第4の実施例では、第2の固定子42は軸受固定子としてのみ設計され、よって、駆動機能を実行することができないことである。よって、第2の固定子42は、第2の磁気的有効コア32を磁気的に浮上させるために、浮上力のみ与えることができるが、第2の軸受固定子42は、インペラ2を駆動することに寄与するトルクを生成することはできない。よって、第3及び第4の実施例では、第1の電磁回転駆動部として第1の磁気的有効コア31と相互作用する第1の固定子41のみが、軸方向Aのまわりに回転させるためにインペラ2を駆動するトルクを提供することができる。
【0138】
第2の固定子42は、磁気軸受としてのみ、第2の磁気的有効コア32と相互作用し、それにより、第2の固定子42に対してインペラ2の第2の端部22を磁気的に浮上させる。特に、第2の固定子42及び第2の磁気的有効コア32は、従来技術において知られており、第2の磁気的有効コアを浮上させるために好適な任意の磁気軸受のように設計されてもよい。好ましくは、第2の固定子32は、定常、すなわち、非回転磁場でのみ、第2の磁気的有効コア32を磁気的に浮上させるように設計される。
【0139】
図17に示される第3の実施例において、第2の固定子42は、インペラ2の半径方向内側に配置される。第2の固定子42のための制御装置6は好ましくは、インペラ2の外側に配置される第2の固定子ハウジング92の一部に配置される。
【0140】
図18に示される第4の実施例において、第2の固定子42は、第2の磁気的有効コア32のまわりで半径方向外側に配置される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【外国語明細書】