(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126593
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】自律走行をする自動車のための電気液圧式の非人力ブレーキ設備
(51)【国際特許分類】
B60T 8/40 20060101AFI20220823BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20220823BHJP
B60T 13/66 20060101ALI20220823BHJP
B60T 8/34 20060101ALI20220823BHJP
B60T 8/42 20060101ALI20220823BHJP
B60T 8/60 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B60T8/40 C
B60T8/17 B
B60T13/66 Z
B60T8/34
B60T8/42
B60T8/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022016228
(22)【出願日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】10 2021 201 536.0
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヴェー,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3D048
3D246
【Fターム(参考)】
3D048BB07
3D048CC06
3D048CC54
3D048HH18
3D048HH26
3D048HH37
3D048HH42
3D246BA05
3D246DA01
3D246GA01
3D246GB37
3D246LA02Z
3D246LA04Z
3D246LA15Z
3D246LA20Z
3D246LA33Z
3D246LA41Z
3D246LA43B
3D246LA57Z
3D246LA61Z
3D246LA62Z
3D246LA73Z
3D246MA03
3D246MA23
(57)【要約】
【課題】
本発明は、自律走行をする自動車のための電気液圧式の非人力ブレーキ設備(1)に関する。
【解決手段】
本発明は、補助ブレーキユニット(3)をフットブレーキユニット(2)に接続して、フットブレーキユニット(2)が失陥したときに車両ブレーキ設備(1)を補助ブレーキユニット(3)によって操作できるようにすることを提案する。ブレーキ液が低温で粘稠な場合にも補助ブレーキユニット(3)によってブレーキ圧を迅速に生成できるようにするために、本発明はフットブレーキユニット(2)に逆止め弁(30)を意図し、該逆止め弁よって、補助ブレーキユニット(3)のハイドロポンプ(22)がフットブレーキユニット(2)のブレーキ液備蓄容器(2)に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行をする自動車のための電気液圧式の非人力ブレーキ設備であって、ブレーキ液備蓄容器(20)を有し、少なくとも1つの液圧ホイールブレーキ(4)が接続され、かつブレーキ圧を生成するためのブレーキ圧発生器(10,15)を有するフットブレーキユニット(2)と、前記フットブレーキユニット(2)に接続された補助ブレーキユニット(3)とを備え、それにより前記フットブレーキユニット(2)が失陥したときに少なくとも1つの前記ホイールブレーキ(4)を前記補助ブレーキユニット(3)によって操作することができ、前記補助ブレーキユニット(3)は、逆止め弁(30)によって前記フットブレーキユニット(2)の前記ブレーキ液備蓄容器(20)に接続された、少なくとも1つの前記液圧ホイールブレーキ(4)を操作するためのブレーキ圧を生成するための非人力ブレーキ圧発生器(24)を有する、電気液圧式の非人力ブレーキ設備において、 前記フットブレーキユニット(2)は、少なくとも1つの前記ホイールブレーキ(4)を付勢するホイールブレーキ圧をコントロールするためのホイールブレーキ圧コントロールバルブ構造(13,14)を有することを特徴とする、電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項2】
前記逆止め弁(30)は前記フットブレーキユニット(3)に配置される、請求項1に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項3】
前記フットブレーキユニット(2)は筋力操作可能なマスタブレーキシリンダ(15)を有し、該マスタブレーキシリンダは前記逆止め弁(30)によって前記ブレーキ液備蓄容器(20)と接続されるとともに該マスタブレーキシリンダに前記補助ブレーキユニット(3)が接続され、それにより前記補助ブレーキユニット(3)の前記非人力ブレーキ圧発生器(24)が前記逆止め弁(30)により前記マスタブレーキシリンダ(15)を通過して前記フットブレーキユニット(2)の前記ブレーキ液備蓄容器(20)に接続されるようになっている、請求項1または2に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項4】
前記車両ブレーキ設備(1)は複数のブレーキ回路を有し、前記補助ブレーキユニット(3)は、前記逆止め弁(30)によって前記フットブレーキユニット(2)の前記ブレーキ液備蓄容器(20)に接続される複数の非人力ブレーキ圧発生器(24)をそれぞれ異なるブレーキ回路に有する、請求項1から3までのいずれか1項または複数項に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項5】
前記フットブレーキユニット(2)はテスト弁(21)によって前記ブレーキ液備蓄容器(20)に接続された筋力操作可能なマスタブレーキシリンダ(15)を有する、請求項1から4までのいずれか1項または複数項に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項6】
前記ブレーキ液備蓄容器(20)は複数のチャンバ(31’,31’’,31’’’)を有し、前記逆止め弁(29)は、前記ブレーキ液備蓄容器(20)の、前記テスト弁(20)と同じチャンバ(31’)に接続される、請求項5に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項7】
前記逆止め弁(30)は前記ブレーキ液備蓄容器(20)のそれぞれ異なるチャンバ(31’,31’’’)に接続される、請求項4および6に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【請求項8】
前記ブレーキ液備蓄容器(20)は複数のチャンバ(31’,31’’,31’’’)を有し、前記フットブレーキユニット(2)は非人力ブレーキ圧発生器(10)を有し、前記フットブレーキユニット(2)の前記非人力ブレーキ圧発生器(10)は前記逆止め弁(30)とは異なる前記ブレーキ液備蓄容器(20)のチャンバ(31’’)に接続される、請求項1から7までのいずれか1項または複数項に記載の電気液圧式の非人力ブレーキ設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提項の構成要件を有する、自律走行をする自動車のための電気液圧式の非人力ブレーキ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
レベル4(運転者に介入を要請することができる)およびレベル5(最高レベル。運転者を必要としない)までの自律走行のためには、車両ブレーキ設備の全面的な失陥を、運転者の介入を要することなくほぼ確実に近い確率で排除する、冗長性を有する非人力車両ブレーキ設備が必要となる。
【0003】
特許文献1は、フットブレーキユニットと、ブレーキ圧コントロールユニットとを有する電気液圧式の非人力ブレーキ設備を開示している。フットブレーキユニットは、筋力操作可能なマスタブレーキシリンダを有しており、および、電気モータによりスクリュードライブを介してシリンダの中でピストンがスライド可能であるピストン・シリンダ・ユニットを、マスタブレーキシリンダに液圧的に並列接続された非人力ブレーキ圧発生器として有している。フットブレーキユニットの上に無圧のブレーキ液備蓄容器が載置されていて、これにマスタブレーキシリンダと非人力ブレーキ圧発生器とが接続される。ブレーキ圧コントロールユニットは電磁弁を有しており、および、ホイール個別的なホイールブレーキ圧コントロールのためのハイドロポンプを各々のブレーキ回路に有している。ブレーキ圧コントロールユニットはフットブレーキユニットに接続され、液圧ホイールブレーキはブレーキ圧コントロールユニットに接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/143312A1号パンフレット
【発明の概要】
【0005】
請求項1の構成要件を有する本発明による電気液圧式の非人力ブレーキ設備は、公道でのレベル4および5までの自律走行のために意図される。レベル4は高度自動走行とも呼ばれ、車両の運転が電子システムによって恒常的に担われ、システムが走行の役割を果たせなくなった場合にのみ、運転者が介入を要請されることを意味する。レベル5は完全自動化とも呼ばれ、運転者を必要としない。
【0006】
請求項1の構成要件を有する本発明の車両ブレーキ設備は、1つまたは複数の液圧ホイールブレーキが接続されたフットブレーキユニットと、補助ブレーキユニットとを有する。ホイールブレーキは、通常、フットブレーキユニットによって操作され、このことはフットブレーキングと呼ばれる。ホイールブレーキを操作するために、フットブレーキユニットは、ブレーキ圧を生成するためのブレーキ圧発生器と、ホイールブレーキにおけるホイールブレーキ圧がコントロールされる、1つまたは複数のブレーキ圧コントロールバルブ構造とを有する。「コントロール」とは制御も意味する。ホイールブレーキ圧は各々のホイールブレーキで個別にコントロールされるのが好ましいが、ホイールブレーキ圧をホイールブレーキのグループでコントロールし、または、すべてのホイールブレーキのホイールブレーキ圧を一緒にコントロールすることもできる。1つまたは複数のホイールブレーキ圧の大きさが、およびこれに伴ってホイールブレーキのブレーキ力が、コントロールされる。さらに、1つまたは複数のブレーキ圧コントロールバルブ構造によって、スリップコントロールや、日常語でしばしば「横滑りコントロール」とも呼ばれるビークルダイナミックコントロール、オートマチックブレーキ、車間距離コントロールなども可能である。
【0007】
フットブレーキユニットは、筋力マスタブレーキシリンダまたは補助力マスタブレーキシリンダをブレーキ圧発生器として有することができ、後者は、たとえば負圧ブレーキブースタや電気機械式のブレーキブースタなどを有する筋力マスタブレーキシリンダを意味する。補助力ブレーキングは、フットブレーキユニットが失陥した場合の補助ブレーキユニットによる補助ブレーキングとは区別される。マスタブレーキシリンダの補足または代替として、フットブレーキユニットは、たとえば、ピストンをたとえば電気モータにより回転・並進・変換ギヤを介してシリンダの中でスライド可能であるピストン・シリンダ・ユニットを有することができる非人力ブレーキ圧発生器を有することができる。非人力ブレーキ圧発生器の別の選択肢は、たとえば電気モータによって駆動可能なハイドロポンプである。
【0008】
補助ブレーキユニットは、フットブレーキユニットの不具合や失陥が生じた場合にホイールブレーキを操作する役目を果たし、ブレーキ圧コントロールバルブ構造に機能性があるときに、ホイールブレーキにおけるホイールブレーキ圧をフットブレーキユニットのブレーキ圧コントロールバルブ構造によってコントロールすることができる。フットブレーキユニットの不具合や失陥が生じたときの補助ブレーキユニットによるブレーキ操作は、補助ブレーキングと呼ばれる。構造を簡素にするために、補助ブレーキユニットがブレーキ圧コントロールバルブ構造を有することは、それ自体としては意図されていなくてよいが、フットブレーキユニットと補助ブレーキユニットがいずれもブレーキ圧コントロールバルブ構造を有する本発明の実施形態も可能である。
【0009】
補助ブレーキユニットは、好ましくはフットブレーキユニットに配置される逆止め弁によってフットブレーキユニットのブレーキ液備蓄容器に接続される非人力ブレーキ圧発生器を有する。それにより、補助ブレーキングの際のブレーキ圧生成のために、補助ブレーキユニットの非人力ブレーキ圧発生器がブレーキ液をフットブレーキユニットのブレーキ液備蓄容器からフットブレーキユニットのマスタブレーキシリンダによって高い流動抵抗で吸い込まなくてよく、逆止め弁によって低い流動抵抗でフットブレーキユニットのブレーキ液備蓄容器からブレーキ液を吸い込むことができる。このことは吸込挙動を改善し、特に低い温度での粘稠なブレーキ液のもとで、補助ブレーキングの際に補助ブレーキユニットの非人力ブレーキ圧発生器による迅速なブレーキ圧生成を可能にする。
【0010】
従属請求項は、請求項1に記載の発明の好ましい実施形態と発展例を対象としている。
【0011】
フットブレーキユニットおよび/または補助ブレーキユニットはそれぞれハイドロリックブロックを有するのが好ましい。ハイドロリックブロックは多くの場合に直方体の構成部品であり、通常は金属で製作されるが、たとえばプラスチックなど他の素材でできていてもよい。ハイドロリックブロックに、車両ブレーキ設備の液圧コンポーネントのための収容部としての止まり穴が穿設される。このようなコンポーネントは電磁弁であり、その液圧部分が典型的にはハイドロリックブロックのそれぞれの収容部の中にあり、アーマチュアや磁気コイルなどの電気機械部分がハイドロリックブロックから突き出す。電磁弁の液圧部分が本来のバルブであり、すなわち、たとえば遮蔽体と、バルブシートを有するバルブハウジングである。その他の液圧コンポーネントは特にピストン・シリンダ・ユニット、ハイドロポンプ、ハイドロリックリザーバ、逆止め弁、およびポンプ駆動部の部品である。さらに、このようなハイドロリックブロックは、ブレーキ配管をホースニップルや押込みニップル(「セルフクリンチ」)と結合するための止まり穴を有する。液圧コンポーネントのための収容部を形成する止まり穴は、多くの場合に直径に段差がある。ハイドロリックブロックが穿孔されることで、液圧コンポーネントのための収容部が、車両ブレーキ設備もしくはフットブレーキユニットおよび/または補助ブレーキユニットの液圧配管図に従って互いに接続され、このことは(液圧式の)相互配管と呼ぶことができる。ハイドロリックブロックの穿孔は多くの場合にデカルト座標式であり、すなわち、それぞれの穴が互いに平行および垂直であり、かつ、直方体のハイドロリックブロックの中でハイドロリックブロックの面や稜線に対して平行および垂直である。液圧コンポーネント、場合により非人力ブレーキ圧発生器を駆動するための1つまたは複数の電気モータ、電子制御装置などが装備されて、ハイドロリックブロックがフットブレーキユニットないし補助ブレーキユニットを構成する。「装備される」とは、液圧コンポーネントがハイドロリックブロックのそれぞれの収容部の中に配置され、電気モータおよび1つまたは複数の制御装置がハイドロリックブロックの表面に配置されることを意味する。
【0012】
発明の詳細な説明と図面に開示されているすべての構成要件が、それ自体として単独で、または原則として任意の組合せとして、本発明の実施例で具体化されていてよい。1つの請求項のすべての構成要件を有するのでなく、1つまたは複数の構成要件だけを有する本発明の実施形態も原則として考えられる。
【0013】
次に、図面に示されている実施形態を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に基づく電気液圧式の非人力ブレーキ設備のフットブレーキユニットを示す圧配管図である。
【
図2】
図1に示す電気液圧式の非人力ブレーキ設備の補助ブレーキユニットを示す液圧配管図である。
【
図3】本発明に基づく電気液圧式の非人力ブレーキ設備のフットブレーキユニットを示す、
図1に対して改変された液圧配管図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面に示されている本発明による電気液圧式の非人力ブレーキ設備1は、レベル4または5までの自律走行をする自動車すなわち乗用車のために意図される。レベル4は自律走行を意味し、運転者に介入を要請することができ、最高レベルであるレベル5は、運転者の介入を要しない自律走行を意味する。
【0016】
非人力ブレーキ設備1は、フットブレーキユニット2と補助ブレーキユニット3とを有している。フットブレーキユニット2はブレーキ操作のために意図され、補助ブレーキユニット3は、フットブレーキユニット2の不具合や失陥が生じたときのブレーキ操作のために意図される。フットブレーキユニット2には、-本実施例では4つの-ブレーキ配管を介して、液圧ホイールブレーキ4が接続されている。補助ブレーキユニット3はブレーキ配管を介してフットブレーキユニット2に接続されて、ホイールブレーキ4を補助ブレーキユニット3によっても操作可能であるようになっている。フットブレーキユニット2と補助ブレーキユニット3は、たとえば乗用車のエンジンルームで異なる個所に配置されていてよい、それぞれ独自のモジュールである。補助ブレーキユニット3をフットブレーキユニット2と接続するブレーキ配管を、以下においては送り配管V1,V2および戻り配管R1,R2とも呼ぶ。
【0017】
本発明による車両ブレーキ設備1は2回路ブレーキ設備として製作され、ブレーキユニット2,3は2回路ブレーキユニットとして製作されている。それぞれ2つのホイールブレーキ4が、1つのブレーキ回路に付属する。補助ブレーキユニット3は各々のブレーキ回路で送り配管V1,V2によって、および戻り配管R1,R2によって、フットブレーキユニット2に接続されている。送り配管V1,V2と戻り配管R1,R2の接続点は、フットブレーキユニット2と補助ブレーキユニット3で一致して、符号V1,V2,R1およびR2によって表されている。
【0018】
フットブレーキユニット2はピストン・シリンダ・ユニット5を有していて、そのピストン6は電気モータ7により、回転/並進変換ドライブとしてのスピンドルドライブ8を介して、シリンダ9の中でスライド可能である。電気モータ7、スピンドルドライブ8、およびピストン・シリンダ・ユニット5は、フットブレーキングのためのブレーキ圧を生成するためのフットブレーキユニット2の非人力ブレーキ圧発生器10を構成する。フットブレーキングは通常の意図されるブレーキ操作である。非人力ブレーキ圧発生器10は、分離弁12と取込弁13の間のフットブレーキ弁11を介して、両方のブレーキ回路に接続されている。
【0019】
フットブレーキユニット2は、各々のホイールブレーキ4について取込弁13と吐出弁14を有していて、これらによってホイールブレーキ圧を各々のホイールブレーキ4で個別にコントロール可能である。それによりホイールブレーキ4のホイールブレーキ圧を、およびこれに伴ってホイールブレーキ4のブレーキ力を、通常の走行動作のときにスリップなくコントロール可能である。さらにはスリップコントロール、たとえばアンチロックコントロール、駆動スリップコントロール、日常語では横滑りコントロールとも呼ばれるビークルダイナミックコントロール、オートマチックブレーキ、車間距離コントロールなども可能である。このようなコントロールは周知であり、ここでは詳しくは説明しない。取込弁13と吐出弁14は、ホイールブレーキ圧コントロールバルブ構造13,14として把握することもできる。
【0020】
フットブレーキユニット2は非人力ブレーキ圧発生器10に加えて、筋力操作可能なマスタブレーキシリンダ15も有していて、これにホイールブレーキ4が分離弁12と取込弁13を介して接続されている。フットブレーキユニット2は各々のブレーキ回路に分離弁12を有しており、各々のホイールブレーキ4について取込弁13と吐出弁14を有している。マスタブレーキシリンダ15は、運転者動作のケースのときにフットブレーキングの際にホイールブレーキ4で調整されるべきホイールブレーキ圧についての目標値発生器としての役目を果たす。ブレーキ圧は運転者動作のときにも自律走行のときにも、非人力ブレーキ圧発生器10によって生成される。フットブレーキングのとき、マスタブレーキシリンダ15は、分離弁12が閉じることによってホイールブレーキ4から液圧的に分離される。
【0021】
前述したとおり、マスタブレーキシリンダ15は、フットブレーキユニット2の非人力ブレーキ圧発生器10によってブレーキ圧が生成される運転者動作でのフットブレーキングの際に、ホイールブレーキ圧についての目標値発生器としての役目を果たす。非人力ブレーキ圧発生器10が失陥したときには、マスタブレーキシリンダ15の操作によってブレーキ圧を生成することができる。このことは、筋力とマスタブレーキシリンダ15とによるいわゆる補助ブレーキングであり、したがって筋力ブレーキ圧発生器として把握することもできる。
【0022】
分離弁12が閉じているときにブレーキ液をマスタブレーキシリンダ15から押し除けて、マスタブレーキシリンダ15のピストンとブレーキペダル16を動かせるようにするために、フットブレーキユニット2は、シミュレータ弁18を介してマスタブレーキシリンダ15のブレーキ回路に接続されたペダルストロークシミュレータ17を有している。ペダルストロークシミュレータ17は、ばね付勢またはたとえばガス圧付勢されるピストンを有するピストン・シリンダ・ユニットである。
【0023】
本発明の説明している図示した実施形態では、分離弁12と取込弁13はそれぞれの無通電の基本位置にあるときに開く2/2ウェイ電磁弁であり、非人力ブレーキ圧発生器10のフットブレーキ弁11、吐出弁14、およびシミュレータ弁18は、それぞれの無通電の基本位置にあるときに閉じる2/2ウェイ電磁弁である。
【0024】
本発明による電気液圧式の非人力ブレーキ設備1のフットブレーキユニット2の液圧コンポーネントは、すなわち弁11,12,13,14,18、非人力ブレーキ圧発生器10、マスタブレーキシリンダ15、ペダルストロークシミュレータ17、およびその他のコンポーネント、たとえば圧力センサなどは、フットブレーキユニット2のハイドロリックブロック19の収容部に配置されており、ハイドロリックブロック19への穿孔によって、車両ブレーキ設備1またはフットブレーキユニット2の図示している液圧回路図に準じて互いに接続される。
【0025】
従来のマスタブレーキシリンダで知られるような無圧のブレーキ液備蓄容器20がハイドロリックブロック19の上に載置されており、これにマスタブレーキシリンダ15が接続されるとともに、逆止め弁28によって非人力ブレーキ圧発生器10が接続されている。両方のブレーキ回路のうちの一方に、テスト弁21がブレーキ液備蓄容器20とマスタブレーキシリンダ15との間に設けられる。テスト弁は、本実施例では、同じく無通電の基本位置にあるときに開く2/2ウェイ電磁弁である。テスト弁21には、マスタブレーキシリンダ15の方向に貫流可能な逆止め弁29が液圧的に並列接続されており、ただしこの逆止め弁は本発明のすべての実施形態で存在するわけではない。
【0026】
補助ブレーキユニット3はその両方のブレーキ回路の各々に、共通の電気モータ23により駆動可能であるハイドロポンプ22を有している。ハイドロポンプ22はピストンポンプであるが、たとえば歯車ポンプなどのこれ以外のハイドロポンプも同じく可能である。ハイドロポンプ22は、電気モータ23とともに非人力ブレーキ圧発生器24を構成する。
【0027】
補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22の吸込側は、吸込弁25およびすでに挙げたブレーキ配管を介して、すなわち補助ブレーキユニット3がフットブレーキユニット2に接続される送り配管V1,V2を介して、フットブレーキユニット2のマスタブレーキシリンダ15の両方のブレーキ回路に接続されている。補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22の圧力側は、圧力弁26および送り配管V1,V2を介して、フットブレーキユニット2のマスタブレーキシリンダ15の両方のブレーキ回路に接続されている。さらに、補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22の圧力側はブレーキ配管を介して、すなわち補助ブレーキユニット3がフットブレーキユニット2に接続される戻り配管R1,R2を介して、フットブレーキユニット2の分離弁12に接続されている。それにより、非人力ブレーキ圧発生器24を構成する補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22でのブレーキ圧の生成によって、ホイールブレーキ4の操作が可能である。ホイールブレーキ4におけるホイールブレーキ圧は、ホイールブレーキ圧コントロールバルブ構造を構成するフットブレーキユニット2の取込弁13と吐出弁14によって、これらの弁13,14とそのコントロールに機能性がある限りにおいてコントロール可能である。非人力ブレーキ圧発生器24を構成する補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22により、フットブレーキユニット2の不具合や失陥が生じた場合にブレーキ圧が生成される。このようなブレーキングは補助ブレーキングと呼ばれる。
【0028】
本発明の説明している図示した実施形態では、補助ブレーキユニット3の吸込弁25は無通電の基本位置にあるときに閉じる2/2ウェイ電磁弁として製作され、圧力弁26は無通電の基本位置にあるときに開く2/2ウェイ電磁弁として製作される。補助ブレーキングのときには吸込弁25が開き、それにより補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22が、ブレーキ液をマスタブレーキシリンダ15を通してフットブレーキユニット2のブレーキ液備蓄容器20から吸い込むことができる。さらに圧力弁26が閉じて、ホイールブレーキ4をブレーキ圧で付勢する。
【0029】
フットブレーキのときには、ホイールブレーキ4が、補助ブレーキユニット3の開いた圧力弁26と、このケースで開くべきフットブレーキユニット2のフットブレーキ弁11とによって、フットブレーキユニット2の非人力ブレーキ圧発生器10により生成されるブレーキ圧で付勢され、または、補助ブレーキユニット3の開いた圧力弁26と、フットブレーキユニット2の開いた分離弁12とによって、マスタブレーキシリンダ15により生成されるブレーキ圧で付勢される。
【0030】
補助ブレーキングの際の迅速なブレーキ圧生成のために、補助ブレーキユニット3の非人力ブレーキ圧発生器24を構成するハイドロポンプ22は、本実施例ではフットブレーキユニット2のハイドロリックブロック19に配置される逆止め弁30によって、フットブレーキユニット2のブレーキ液備蓄容器20に接続されている。
【0031】
ブレーキ液備蓄容器20と補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22との間に両方の逆止め弁30のうち一方だけを有する、本発明による電気液圧式の非人力ブレーキ設備1の実施形態も可能であり、このケースでは逆止め弁30は一次回路に存在し、および/または逆止め弁30は、テスト弁21も設けられるブレーキ回路に存在するのが好ましい。一次回路は、ペダルロッドを介してブレーキペダル16により直接的に操作されるブレーキ回路である。
【0032】
ブレーキ液備蓄容器20とマスタブレーキシリンダ15との間でテスト弁21に対して液圧的に並列につながれる逆止め弁29は、特に、補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22が両方のブレーキ回路で逆止め弁30によってフットブレーキユニット2のブレーキ液備蓄容器20と接続される場合には省略可能である。
【0033】
補助ブレーキユニット3の液圧コンポーネントは、すなわちハイドロポンプ22、弁25,26、および圧力センサなどのその他のコンポーネントは、補助ブレーキユニット3のハイドロリックブロック27に配置され、ハイドロリックブロック27の穿孔により、図示している液圧回路図に準じて互いに接続され、このことは液圧コンポーネント22,25,26の相互配管と呼ぶこともできる。
【0034】
ブレーキ液備蓄容器20は各々のブレーキ回路についてチャンバ31’、31’’’を有しており、および、フットブレーキユニット2の非人力ブレーキ圧発生器10について追加的にチャンバ31’’を有しており、すなわち、合計で3つのチャンバ31’,31’’,31’’’を有している。補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22がブレーキ液備蓄容器20に接続される逆止め弁30は、ブレーキ液備蓄容器20の、テスト弁21と同じチャンバ31’に接続されている。補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22は、および、補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22がブレーキ液備蓄容器20に接続される両方の逆止め弁30は、ブレーキ液備蓄容器20のそれぞれ異なるチャンバ31’,31’’’に接続されている。フットブレーキユニット2の非人力ブレーキ圧発生器10は独自のチャンバ31’’に接続され、すなわちブレーキ液備蓄容器20の、補助ブレーキユニット3のハイドロポンプ22とは異なるチャンバ31’’に接続される。
【0035】
図1と比較したときに
図3では、本実施例では一次回路である一方のブレーキ回路の送り配管V1が、逆止め弁30によって直接的にブレーキ液備蓄容器20に接続されるのではなく、マスタブレーキシリンダ15を通過して接続されている。それ以外の点では、
図1と
図3は合致する。
【符号の説明】
【0036】
1 非人力ブレーキ設備、車両ブレーキ設備
2 フットブレーキユニット
3 補助ブレーキユニット
4 液圧ホイールブレーキ
10,15 ブレーキ圧発生器
13,14 ホイールブレーキ圧コントロールバルブ構造
20 ブレーキ液備蓄容器
21 テスト弁
24 非人力ブレーキ圧発生器
29 逆止め弁
30 逆止め弁
31’,31’’,31’’’ チャンバ
【外国語明細書】