(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126610
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】光学測定を使用したバルーンカテーテルの組織の接触の検出
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20220823BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022022678
(22)【出願日】2022-02-17
(31)【優先権主張番号】17/179,254
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK07
4C160KK13
4C160KK25
4C160KK30
4C160KK39
4C160KK65
4C160MM33
(57)【要約】
【課題】医療システムを提供すること。
【解決手段】医療システムは、カテーテルと、光源と、検出器と、サーキュレータと、プロセッサと、を備える。カテーテルは、患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うための遠位端アセンブリを含み、遠位端アセンブリは、空洞の組織と相互作用するように透過光を誘導し、組織と相互作用した戻り光を誘導するように構成された光ファイバを含む。光源は、透過光を生成するように構成されている。検出器は、戻り光を測定するように構成されている。サーキュレータは、透過光を光源から光ファイバへ結合し、戻り光を光ファイバから検出器へ結合するように構成されている。プロセッサは、検出器によって測定された戻り光に基づいて、遠位端アセンブリの組織との接触を識別し、識別された接触をユーザに示すように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療システムであって、
患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うための遠位端アセンブリを含むカテーテルであって、前記遠位端アセンブリは、前記空洞の前記組織と相互作用するように透過光を誘導し、前記組織と相互作用した戻り光を誘導するように構成された光ファイバを含む、カテーテルと、
前記透過光を生成するように構成された光源と、
前記戻り光を測定するように構成された検出器と、
前記透過光を前記光源から前記光ファイバへ結合し、前記戻り光を前記光ファイバから前記検出器へ結合するように構成されたサーキュレータと、
前記検出器によって測定された前記戻り光に基づいて、前記遠位端アセンブリの前記組織との接触を識別し、識別された前記接触をユーザに示すように構成されたプロセッサと、を備える、医療システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記戻り光の測定された強度の変化に基づいて、前記接触を識別するように構成されている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記遠位端アセンブリが前記組織と接触していない間に前記戻り光の強度の基準値を確立し、前記基準値に対する変化を識別するように構成されている、請求項2に記載の医療システム。
【請求項4】
前記ファイバの遠位端は、前記ファイバからの前記透過光を結合し、前記組織と相互作用した前記戻り光を前記ファイバに結合するように構成された、光学拡散要素及び光学回折要素のうちの一方を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項5】
前記光学回折要素は、光学格子カプラを含む、請求項4に記載の医療システム。
【請求項6】
前記ファイバの前記遠位端は、前記ファイバの不透明な終端を含む、請求項4に記載の医療システム。
【請求項7】
前記遠位端アセンブリは、拡張可能な透明膜を含む、請求項1に記載の医療システム。
【請求項8】
前記透明膜は、前記透明膜の上に配設された複数のアブレーション電極を含み、前記プロセッサは、前記組織との前記接触を識別することに基づいて、前記電極を用いて前記医療手術を行うための推奨を出力するように構成されている、請求項7に記載の医療システム。
【請求項9】
前記光源、前記検出器、及び前記サーキュレータは、前記遠位端アセンブリに取り付けられている、請求項1に記載の医療システム。
【請求項10】
前記光源は発光ダイオード(LED)である、請求項1に記載の医療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には医療用デバイスに関し、特にカテーテルと組織との間の接触を検出するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織とのカテーテルの接触を検証するための様々な技術が、特許文献において提案された。例えば、米国特許第8,025,661号は、カテーテル本体と、カテーテル本体に接続された涙形状のバルーンと、を含む、心臓アブレーション器具を記載している。器具は、カテーテル本体の中央ルーメン内で軸方向に移動可能な放射エネルギーエミッタを更に備える。放射エネルギー透過性本体は、エネルギーエミッタを取り囲み、エネルギーエミッタの周りに周方向に配設された複数の照明ファイバを含む。検出器は、接触感知素子と通信し、反射光の少なくとも1つの色成分の量を判定するように構成されている。少なくとも1つの色成分の量は、バルーンと標的組織部位との間の接触を示す。
【0003】
別の例として、米国特許第10,136,945号は、アブレーションカテーテルを提供及び使用するためのデバイス及び方法を記載している。カテーテルは、複数の電極を有する拡張可能な部材を含み、各電極は、少なくとも1つの接触センサ及び少なくとも1つの発光素子と関連付けられている。光は、アブレーションされる組織との接触センサの接触に応答して放出される。カテーテルに対して中央に配設された光センサは、発光素子から放出された光を収集し、表示のためにシステムコントローラに信号を送信する。
【0004】
米国特許第10,682,179号は、カテーテルと組織との間の接触性を知るためのアブレーション及び視覚化システム並びに方法を記載している。いくつかの実施形態では、組織アブレーションを監視するための方法であって、方法は、アブレーションカテーテルの遠位先端を、アブレーションを必要とする組織に前進させることと、組織内のNADHを励起するためにUV光で組織を照明することであって、当該組織が半径方向、軸方向、又はその両方で照明される、ことと、カテーテルの遠位先端が組織と接触しているときに、照明された組織内のNADH蛍光のレベルから判定することと、組織において損傷を形成するように、組織にアブレーションエネルギーを送達することと、を含む、方法が提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下で説明される本発明の実施形態は、カテーテルと、光源と、検出器と、サーキュレータと、プロセッサと、を備える、医療システムを提供する。カテーテルは、患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うための遠位端アセンブリを含み、遠位端アセンブリは、空洞の組織と相互作用するように透過光を誘導し、組織と相互作用した戻り光を誘導するように構成された光ファイバを含む。光源は、透過光を生成するように構成されている。検出器は、戻り光を測定するように構成されている。サーキュレータは、透過光を光源から光ファイバへ結合し、戻り光を光ファイバから検出器へ結合するように構成されている。プロセッサは、検出器によって測定された戻り光に基づいて、遠位端アセンブリの組織との接触を識別し、識別された接触をユーザに示すように構成されている。
【0006】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、戻り光の測定された強度の変化に基づいて、接触を識別するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、遠位端アセンブリが組織と接触していない間に戻り光の強度の基準値を確立し、基準値に対する変化を識別するように構成されている。
【0008】
一実施形態では、ファイバの遠位端は、ファイバからの透過光を結合し、組織と相互作用した戻り光をファイバに結合するように構成された、光学拡散要素及び光学回折要素のうちの一方を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、光学回折要素は、光学格子カプラを含む。
【0010】
他の実施形態では、ファイバの遠位端は、ファイバの不透明な終端を含む。更に他の実施形態では、遠位端アセンブリは、拡張可能な透明膜を含む。
【0011】
一実施形態では、透明膜は、透明膜の上に配設された複数のアブレーション電極を含み、プロセッサは、組織との接触を識別することに基づいて、電極を用いて医療手術を行うための推奨を出力するように構成されている。
【0012】
いくつかの実施形態では、光源、検出器、及びサーキュレータは、遠位端アセンブリに取り付けられている。
【0013】
いくつかの実施形態では、光源は、発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)である。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うために、カテーテルの遠位端アセンブリを空洞内に挿入することを含む方法が更に提供される。空洞の組織と相互作用するように、遠位端アセンブリ内の光ファイバ内に透過光が誘導される。組織と相互作用した戻り光は、同じ光ファイバを介して誘導される。検出器によって測定された戻り光に基づいて、遠位端アセンブリの組織との接触が識別され、識別された接触は、ユーザに示される。
【0015】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態による、透過性バルーンカテーテルを備える、カテーテルベースの診断及び/又はアブレーションシステムの概略絵図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、
図1の透過性バルーンカテーテル及び接触検出モジュールの概略絵図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図1のバルーンカテーテルの透明膜内部のファイバ格子カプラの概略絵図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、
図1の透過性バルーンカテーテルと接触している組織を検出するための方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
概論
心臓電気解剖学的マッピング及び/又はアブレーションなどの、体の臓器のカテーテル処置の間、カテーテルなどのプローブの遠位端に結合された拡張可能な膜の上に配設された電極が心室の壁組織などの臓器の空洞の壁組織と物理的に接触していることを確認する必要がある場合がある。
【0018】
以下に記載される本発明の実施形態は、カテーテルの遠位端アセンブリが周囲の媒介物に光を放出し、周囲の媒介物と相互作用する、臓器の空洞の壁組織によって反射及び/又は散乱された光などの光を収集する手段を含むシステムを提供する。
【0019】
開示された技術は、様々な遠位端アセンブリと共に使用することができる。例えば、遠位端アセンブリは、バルーンカテーテル及びバスケットカテーテルにおいて使用されるような拡張可能なフレームを含んでもよく、又は、バスケット、なげなわ、マルチアーム、及びチップカテーテルなどの他のフレームを含んでもよい。拡張可能なフレームの場合、遠位端アセンブリは、透過性拡張可能膜を含み得る(残りの部分の大半は、例えば、バルーンカテーテル又はバスケットカテーテルの電極によって覆われる)。
【0020】
一実施形態では、光ファイバは、拡張可能なフレーム内に設置され、発光ダイオード(LED)などの外部光源から光を伝送するために使用される。同じ光ファイバを使用して、空洞の壁組織と相互作用する戻り光を外部検出器(例えば、フォトダイオード)に搬送する。遠位端アセンブリの透過性拡張可能膜の内側に位置するファイバの遠位端は、透過光を放出し、戻り光をファイバ内に結合するように構成された、格子カプラ又はディフューザなどのカプラを備える。
【0021】
光サーキュレータは、光ファイバの近位端において結合されて、戻り光を透過光から分離する。検出器(例えば、フォトダイオード)からの測定値は、プロセッサによって分析されて、(例えば、戻り光の強度の変化を分析することによって)遠位端アセンブリと組織との間の物理的接触の発生を示す。LED、光サーキュレータ、及びフォトダイオードは、以下、「接触検出モジュール」とも呼ばれる外部ユニット内にあり得る。
【0022】
別の実施形態では、光源、検出器、及びサーキュレータは、遠位端アセンブリに取り付けられている。例えば、LED、サーキュレータ、及びフォトダイオードは、すべて、透過性拡張可能膜の内側に位置し得る。本実施形態では、電気信号は、カテーテルのシャフト内を通るケーブルによって搬送されて、LEDを駆動し、かつフォトダイオードからの測定された電気信号を、反対方向に、プロセッサに搬送する。
【0023】
いくつかの実施形態では、プロセッサは、カテーテルが血液プール内にあるが、拡張膜の組織との接触前に、戻り光の強度を最初に測定することで、強度の基準値を提供する。透明膜が組織に接触すると、戻り光の強度が基準値に対して変化するため、プロセッサは、この変化を使用して接触検出を行う。
【0024】
一実施形態では、(a)患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うための遠位端アセンブリを含むカテーテルであって、遠位端アセンブリは、空洞の組織と相互作用するように透過光を誘導し、組織と相互作用した戻り光を戻すように構成された光ファイバを含む、カテーテルと、(b)透過光を生成するように構成された光源と、(c)戻り光を測定するように構成された検出器と、(d)透過光を光源から光ファイバへ結合し、戻り光を光ファイバから検出器へ結合するように構成されたサーキュレータと、(e)検出器によって測定された戻り光に基づいて、遠位端アセンブリの組織との接触を識別し、識別された接触をユーザに示すように構成されたプロセッサと、を備える、システムが提供される。
【0025】
単一の光ファイバベースの組織の接触の検出を提供することにより、バルーンカテーテルは、より小さな直径を有することができ、シャフトのより良好な可撓性及び改善された操作性が可能になり、それ故に、いくつかの標的である体の位置への改善されたアクセスが可能になる。
【0026】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、透過性バルーンカテーテル40を備える、カテーテルベースの診断及び/又はアブレーションシステム20の概略絵図である。システム20は、カテーテル21を含み、カテーテルのシャフト22は、医師30によって、シース23を介して患者28の血管系を通って挿入される。次いで、医師は、シャフト22の遠位端22aを、患者の心臓26内の標的位置にナビゲートする。
【0027】
本明細書に記載の実施形態では、カテーテル21は、電気生理学的感知並びに/又は不可逆性エレクトロポレーション(irreversible electroporation、IRE)及び/若しくは高周波(radiofrequency、RF)アブレーションなどの任意の好適な診断及び/又は治療目的のために使用されて、心臓26の左房45におけるPV小孔51組織を電気生理学的に分離することができる。
【0028】
シャフト22の遠位端22aが標的位置に到達すると、医師30はシース23を後退させ、典型的には生理食塩水をバルーン40に圧送することによってバルーン40を拡張する。次に、医師30は、バルーン40カテーテル上に配設された電極50がPV小孔51の内壁と係合して、電極50を介して小孔51組織に対して、電気生理学的感知、並びに/又はIRE及び/若しくはRFアブレーションを印加するようにシャフト22を操作する。
【0029】
挿入
図25に見られ、
図2でより詳細に見られるように、拡張可能なバルーン40は、複数の等距離の平滑縁部の電極50を備える。バルーン40の透明膜44は、
図2に記載されるように、組織との接触の光学的検出を可能にする。バルーン40の遠位部分の平坦な形状により、電極50が遠位部分を覆う箇所においても、隣接する電極50間の距離はほぼ一定のままである。したがって、IREに使用される場合、バルーン40の構成は、電極50の平滑縁部が不要な熱効果を最小限に抑えながら、隣接する電極50間の(例えば、ほぼ均一な電界強度を有する)より効果的なエレクトロポレーションを可能にする。
【0030】
本開示の文脈においてかつ特許請求の範囲において、任意の数値又は数値の範囲に対する「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書で述べるようなその意図された目的に沿って機能することを可能とする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。
【0031】
カテーテル21の近位端は、隣接する電極50間にIREパルスを印加するように構成されたIREパルス発生器38を備えるコンソール24に接続される。電極は、カテーテル21のシャフト22内を通る電気配線によってIREパルス発生器38に接続される。コンソール24の光学的組織接触検出モジュール48は、
図2に記載されるように、バルーン40と共に使用される。
【0032】
(
図2に見られる)光ファイバは、シャフト22内を通り、近位端でモジュール48に連結される。ファイバの遠位端は、透過光を放出し、戻り光をファイバに結合する(
図2に見られる)カプラを含む。
【0033】
コンソール24は、典型的には患者28の胸の周りに配置されるカテーテル21及び外部電極49から信号を受信するための好適なフロントエンド及びインターフェース回路37を備えたプロセッサ41、典型的には汎用コンピュータを備える。この目的のために、プロセッサ41は、ケーブル39を通るワイヤによって外部電極49に接続されている。
【0034】
処置中、システム20は、その開示が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第8,456,182号に記載されているBiosense-Webster(Irvine California)によって提供される先進的電流局在化(Active Current Location(ACL))法を使用して心臓26内の電極50のそれぞれの位置を追跡することができる。
【0035】
他の実施形態では、医師30は、モジュール48により使用される波長などのパラメータのいずれかをユーザインタフェース47から修正することができる。ユーザインタフェース47は、任意の好適な種類の入力装置、とりわけ、例えば、キーボード、マウス、トラックボールを含んでもよい。
【0036】
プロセッサ41は、典型的には、モジュール48によって取得された信号を分析することなど、本明細書に記載の機能を実行するようにソフトウェアにおいてプログラムされて、膜44の組織との接触の発生を示す。ソフトウェアは、例えばネットワークを介して、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができ、あるいは代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供されるか、かつ/又は記憶することができる。
【0037】
具体的には、プロセッサ41は、
図4を含めて本明細書で開示されるような、以下で更に説明されるように、開示される工程をプロセッサ41が実施することを可能にする専用のアルゴリズムを実行する。
【0038】
光学測定値を使用したバルーンカテーテルとの組織の接触を検出
図2は、本発明の一実施形態による、
図1の透過性バルーンカテーテル40及び接触検出モジュール48の概略絵図である。以下の説明は、バルーン40を指すが、以下に記載される技術は、バスケットカテーテルなどであるが、これらに限定されない、他のタイプの拡張可能なフレームを有する任意のカテーテルに、必要な変更を加えて適用されてもよい。
【0039】
バルーン40は、膜44の表面上に配設された電極50を有する透明膜44を含む。いくつかの実施形態では、電極50は、心臓26の組織と接触して配置されると、電極50は、組織から心内電気信号を感知し、かつ/又は組織をアブレーションするように構成されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、電極50は、上記の
図1に記載されるように、IRE発生器38から受信され、かつプロセッサ41によって、かつ/又は医師30によって制御される、アブレーションパルスを組織に印加するように構成されている。
【0041】
示された実施形態では、カテーテル40は、シャフト22内を通り、バルーン40の内部体積内で光学カプラ66で終端する光ファイバ60を更に備える。カプラ66によって放出された光は、バルーン40を膨張させるために使用される生理食塩水の内部を伝播し、血液及び/又は壁組織(
図1に見られる)などの膜44の外部の媒介物と相互作用する。
【0042】
カプラ66によって放出される光は、ユニット48内の光源(例えば、LED)202によって生成され、サーキュレータ204を使用してファイバ60に送信される。戻り光は、サーキュレータ204によって光検出器206に送信される。したがって、サーキュレータを使用すれば、戻り光から入射光を分離できるため、透明膜44の壁組織との物理的接触により、戻り光の強度がわずかであっても変化の検出が可能になる。
【0043】
光検出器206によって測定された戻り光は、プロセッサ41に電気信号として搬送されて、上述のように、壁組織との膜の接触の発生を判定するために必要な分析をプロセッサが実行する。
【0044】
図2に示す構成は、例として示される。本明細書に記載の原理は、拡張可能なフレームに取り付けられた透明膜を有するバスケット型遠位端などの他のタイプのアブレーションカテーテルに対しても同様に適用され得る。いくつかの方向に放出するための波形のもの、又は光を散乱させる表面粗さを有するものなどの様々なタイプのカプラもまた使用されてもよい。
【0045】
光学格子カプラを使用するバルーンカテーテル
図3は、本発明の一実施形態による、
図1のバルーンカテーテル40の透明膜44の内部のファイバ格子カプラ366の概略絵図である。図示されるように、カプラ366は、不透明な終端部で終端するファイバ360の遠位端で光ファイバ360上にパターン化されて、反射光を最小限に抑える。
【0046】
カプラ366のパラメータを適切に選択すれば、非常に効率的になり得る。具体的には、格子のグローブ部及び長さを調整することによって、格子の結合係数を最大化することができる。このようにして、入射光強度の大きな割合(例えば、>30%)を、周囲の媒介物と相互作用するように結合することができる。
【0047】
光がカプラ366によって周囲の媒介物300に結合される方向、及び相互作用した光がそこからファイバ360に戻って結合される方向は、回折格子の方程式によって与えられる角度θmで定義される。
【0048】
【数1】
式中、n
0は、媒介物の屈折率(例えば、生理食塩水媒介物の場合、n
0は、およそ1.33である)であり、n
effは、ピーク強度波長λ
0のファイバ誘導光(例えば、630nmの赤色光)の実効屈折率(例えば、およそ1.5)であり、Λは、格子周期(例えば、数マイクロメートル)である。Λ≫λ
0を選択すると、膜の広い領域をカバーする多くの回折次数が存在することが確保される。あるいは、例えば、回折次数が少ない場合に、接触の判定が最も重要な膜の選択された外周ストリップをカバーできるように、より小さな周期Λ(例えば、Λ≧λ
0)が選択されてもよい。
【0049】
図3に示す構成は例として示される。他の実施形態は、他の方法(例えば、複数周期の格子又は粗面化)で膜44の上の光のより均一な放出を誘導することができる。
【0050】
光学測定値を使用したバルーンカテーテルとの組織の接触を検出する方法
図4は、本発明の一実施形態による、
図1の透過性バルーンカテーテル40と接触している組織を検出するための方法を概略的に示すフローチャートである。提示された実施形態によるアルゴリズムは、医師30が、例えば、電極50をACL感知電極として使用し、かつカテーテル配置工程402で、拡張されたバルーン40の膜44を小孔組織と接触させて、PV小孔51などの患者の臓器内の標的組織の位置へバルーンカテーテル40をナビゲートする場合に開始するプロセスを実行する。
【0051】
このプロセスでは、ユニット48は、(
図3に見られる)カプラ360を使用して、空洞の内側に放出される光を伝送して、透過光放出工程404で、膜44と接触する壁組織をおそらく含む周囲の媒介物と相互作用する。
【0052】
取得工程406で、ユニット48は、膜44と接触している壁組織をおそらく含む周囲の媒介物からの戻り光を取得し測定する。
【0053】
チェック工程408で、プロセッサ41は、例えば、接触を示す程度まで、戻り光の強度の変化が発生したかどうかをチェックする。
【0054】
答えが「いいえ」である場合、プロセッサは、例えば、ディスプレイ上のテキストメッセージとして、壁組織に対して行われた不十分な接触の指標を発行し(410)、プロセスは、工程402に戻る。
【0055】
答えが「はい」である場合、プロセッサは、壁組織に対して行われた十分な接触の指標を発行する(412)。任意の実施形態では、プロセッサは、バルーンがアブレーションのための位置にあるという通知を更に発行することができる(414)。
【0056】
本明細書に記載される実施形態は、主に心臓用途に対処するものであるが、本明細書に記載される方法及びシステムは、神経や耳鼻咽喉などの他の医療用途で用いることもできる。
【0057】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0058】
〔実施の態様〕
(1) 医療システムであって、
患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うための遠位端アセンブリを含むカテーテルであって、前記遠位端アセンブリは、前記空洞の前記組織と相互作用するように透過光を誘導し、前記組織と相互作用した戻り光を誘導するように構成された光ファイバを含む、カテーテルと、
前記透過光を生成するように構成された光源と、
前記戻り光を測定するように構成された検出器と、
前記透過光を前記光源から前記光ファイバへ結合し、前記戻り光を前記光ファイバから前記検出器へ結合するように構成されたサーキュレータと、
前記検出器によって測定された前記戻り光に基づいて、前記遠位端アセンブリの前記組織との接触を識別し、識別された前記接触をユーザに示すように構成されたプロセッサと、を備える、医療システム。
(2) 前記プロセッサは、前記戻り光の測定された強度の変化に基づいて、前記接触を識別するように構成されている、実施態様1に記載の医療システム。
(3) 前記プロセッサは、前記遠位端アセンブリが前記組織と接触していない間に前記戻り光の強度の基準値を確立し、前記基準値に対する変化を識別するように構成されている、実施態様2に記載の医療システム。
(4) 前記ファイバの遠位端は、前記ファイバからの前記透過光を結合し、前記組織と相互作用した前記戻り光を前記ファイバに結合するように構成された、光学拡散要素及び光学回折要素のうちの一方を含む、実施態様1に記載の医療システム。
(5) 前記光学回折要素は、光学格子カプラを含む、実施態様4に記載の医療システム。
【0059】
(6) 前記ファイバの前記遠位端は、前記ファイバの不透明な終端を含む、実施態様4に記載の医療システム。
(7) 前記遠位端アセンブリは、拡張可能な透明膜を含む、実施態様1に記載の医療システム。
(8) 前記透明膜は、前記透明膜の上に配設された複数のアブレーション電極を含み、前記プロセッサは、前記組織との前記接触を識別することに基づいて、前記電極を用いて前記医療手術を行うための推奨を出力するように構成されている、実施態様7に記載の医療システム。
(9) 前記光源、前記検出器、及び前記サーキュレータは、前記遠位端アセンブリに取り付けられている、実施態様1に記載の医療システム。
(10) 前記光源は発光ダイオード(LED)である、実施態様1に記載の医療システム。
【0060】
(11) 方法であって、
患者の臓器の空洞内の組織に対して医療手術を行うために、カテーテルの遠位端アセンブリを前記空洞内に挿入することと、
前記空洞の前記組織と相互作用するために、前記遠位端アセンブリ内の光ファイバ内の透過光を誘導することと、
前記組織と相互作用した戻り光を同じ光ファイバを介して誘導することと、
検出器によって測定された前記戻り光に基づいて、前記遠位端アセンブリの前記組織との接触を識別し、識別された前記接触をユーザに示すことと、を含む、方法。
(12) 前記接触を識別することは、前記戻り光の測定された強度の変化を識別することを含む、実施態様11に記載の方法。
(13) 光学拡散素子及び光学回折素子のうちの一方を使用して、前記ファイバの遠位端からの前記透過光を結合し、前記組織と相互作用した前記戻り光を前記ファイバの前記遠位端に結合すること、を含む、実施態様11に記載の方法。
【外国語明細書】