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特開2022-126620表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126620
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20220823BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20220823BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220823BHJP
【FI】
G01N21/952
G01N21/88 J
G06T7/00 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023677
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021024592
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】海部屋 道雄
(72)【発明者】
【氏名】岩城 秀和
【テーマコード(参考)】
2G051
5L096
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB02
2G051BB01
2G051CA03
2G051DA08
2G051EA08
2G051EA11
2G051EB05
2G051ED01
2G051ED21
5L096AA06
5L096BA03
5L096CA02
5L096DA02
5L096EA07
5L096EA12
5L096EA43
5L096FA03
5L096FA06
5L096FA51
5L096GA19
5L096GA55
5L096HA08
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】加工痕を含む金属製品の表面における欠陥の検出精度を向上可能にした表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラムを提供する。
【解決手段】金属製品の表面画像20LPの画像解析を通じて金属製品の加工痕を検出する第1検出部12と、撮影領域の延在方向に沿って表面画像20LPを複数に分割する画像処理部11と、画像処理部11が生成した第1分割画像20DPから当該第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデル13Aを用い、画像処理部11が生成した各第1分割画像20DPを欠陥候補検出モデル13Aに適用して、当該第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を検出する第2検出部13と、を備え、第1検出部12が検出した加工痕を第2検出部13が検出する欠陥候補のなかから除外して除外後の欠陥候補を金属製品の欠陥とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら前記表面を撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記金属製品の加工痕を検出する第1検出部と、
前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割する画像処理部と、
前記画像処理部が生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記画像処理部が生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出する第2検出部と、を備え、
前記第1検出部が検出した前記加工痕を前記第2検出部が検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする
表面欠陥検出装置。
【請求項2】
前記金属製品は、前記表面の回転中心を中心とした円筒部を備え、
前記表面画像は、前記撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べた画像であり、
前記画像処理部は、前記撮影領域の延在方向での分割と、前記時間軸に沿った方向での分割とを前記表面画像に施して、前記分割画像を生成する
請求項1に記載の表面欠陥検出装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記撮影領域の各部位での前記表面の回転速度が等しくなるように前記表面画像を変換した変換画像を生成し、
前記除外後の前記欠陥候補の位置を前記変換画像のなかで特定して前記除外後の前記欠陥候補の属性を前記変換画像を用いて分類する判定部をさらに備える
請求項1または2に記載の表面欠陥検出装置。
【請求項4】
前記表面画像は、前記撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べた画像であり、
前記分割画像は、第1分割画像であり、
前記画像処理部は、前記撮影領域の各部位での前記表面の回転速度が等しくなるように前記表面画像を変換した変換画像を生成すると共に、前記撮影領域の延在方向に沿って前記変換画像を複数に分割した第2分割画像を生成し、
前記時間軸に沿って並ぶ複数の評価領域を前記第2分割画像のなかに定め、各評価領域における輝度を算出し、前記第2分割画像のなかの表面塗装に異常が存在するか否かを、当該第2分割画像のなかの前記輝度の分布に基づいて判定する判定部をさらに備える
請求項1に記載の表面欠陥検出装置。
【請求項5】
線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら前記表面を撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記表面における加工痕を検出すること、
前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割すること、および、
前記表面画像から生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記表面画像から生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出すること、を含み、
前記画像解析で検出した前記加工痕を前記欠陥候補検出モデルで検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする
表面欠陥検出方法。
【請求項6】
表面欠陥検出装置を、
線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら前記表面を撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記表面における加工痕を検出し、
前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割し、
前記表面画像から生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記表面画像から生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出し、
前記画像解析で検出した前記加工痕を前記欠陥候補検出モデルで検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする手段として機能させる
表面欠陥検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製品の表面に含まれる欠陥を検出する表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
表面欠陥検出装置は、金属製品の表面画像を用いて欠陥の存否を検出する。表面欠陥検出装置の第1例は、TDIカメラの撮影画像に二値化処理や膨張および収縮処理を施して刻印の領域を特定すると共に、刻印の領域以外の撮影画像から欠陥を検出する(例えば、特許文献1参照)。表面欠陥検出装置の第2例は、単一の表面を複数の方向から撮影した各画像のそれぞれの輝度異常部に教師無し学習モデルを適用して欠陥候補を抽出すると共に、各欠陥候補に教師有り学習モデルを適用して欠陥判定を行う(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-187348号公報
【特許文献2】特開2019-32268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TDIカメラの撮影画像を一つの方向に並べた画像から刻印の領域を特定する第1例の装置では、刻印の領域以外から欠陥検出が可能である一方、欠陥検出用の画像サイズが大きいことに起因して微小欠陥の検出精度が得られがたい。他方、輝度異常部を含む複数の局所領域に撮影画像を分割する第2例の装置では、微小欠陥の検出精度を学習モデルの適用によって向上可能である一方、相互に隣り合う複数の局所領域に跨がる加工痕を欠陥として誤検出してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための表面欠陥検出装置は、線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら前記表面を撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記表面における加工痕を検出する第1検出部と、前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割する画像処理部と、前記画像処理部が生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記画像処理部が生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出する第2検出部と、を備え、前記第1検出部が検出した前記加工痕を前記第2検出部が検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする。
【0006】
上記課題を解決するための表面欠陥検出方法は、線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら前記表面を撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記表面における加工痕を検出すること、前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割すること、および、前記表面画像から生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記表面画像から生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出すること、を含み、前記画像解析で検出した前記加工痕を前記欠陥候補検出モデルで検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする。
【0007】
上記課題を解決するための表面欠陥検出プログラムは、表面欠陥検出装置を、線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら撮影した前記金属製品の表面画像を用い、当該表面画像の画像解析を通じて前記表面における加工痕を検出し、前記表面画像を前記撮影領域の延在方向で複数に分割し、前記表面画像から生成した分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルを用い、前記表面画像から生成した各分割画像を前記欠陥候補検出モデルに適用して、当該分割画像に含まれる前記欠陥候補を検出し、前記画像解析で検出した前記加工痕を前記欠陥候補検出モデルで検出する前記欠陥候補のなかから除外して除外後の前記欠陥候補を前記金属製品の欠陥とする手段として機能させる。
【0008】
金属製品の表面に形成される刻印や締結孔などの加工痕は、微小な欠陥と比べて広い範囲に形成される。上記各構成によれば、金属製品の表面を広い範囲にわたり撮影した表面画像の画像解析によって加工痕が検出される。これにより、(a)加工痕の検出に適した広範囲にわたる画像を用いて的確に加工痕を検出することができる。一方、微小な欠陥候補の検出は、表面画像よりも小さい分割画像を用い、各分割画像をモデルに適用することによって検出される。これにより、(b)欠陥候補の検出に適した狭範囲での画像を用いて的確に欠陥候補を検出することができる。そして、モデルによって検出する欠陥候補のなかから画像解析によって検出した加工痕を除外し、除外後の欠陥候補を金属製品の欠陥とするため、(c)欠陥の誤検出を抑制可能ともなる。
【0009】
なお、金属製品の表面を撮影領域に対して相対的に回転させながら撮影した表面画像は、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間で、解像度に差異を生じる。この点、撮影領域の延在方向で表面画像を複数に分割することは、単一の表面画像から、(d)回転中心に近い部分である分割画像と、(e)回転中心から遠い部分である分割画像とを生成することでもある。そして、各分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補をそれぞれ検出するように学習することは、(d)回転中心に近い位置での解像度に特化したモデルを生成するように、また(e)回転中心から遠い位置での解像度に特化したモデルを生成するように、学習器から欠陥候補検出モデルを生成することである。
【0010】
この際、表面画像において、回転方向に同種の構造が繰り返される範囲や、回転方向に同程度の濃度が繰り返される範囲を、回転中心から近いひとまとまりとしてモデルが扱うことによって、回転中心から近い範囲での欠陥の検出精度を高められる。同じく、表面画像において、回転方向に同種の構造が繰り返される範囲や、回転方向に同程度の濃度が繰り返される範囲を、回転中心から遠いひとまとまりとしてモデルが扱うことによって、回転中心から遠い範囲での欠陥の検出精度も高められる。
【0011】
結果として、分割画像から当該分割画像に含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデルであれば、専ら、解像度の差異を加味したうえで、欠陥候補を検出することができる。これにより、モデルによる欠陥候補の検出精度そのものを高めることが可能ともなる。
【0012】
上記表面欠陥検出装置において、前記金属製品は、前記表面の回転中心を中心とした円筒部を備え、前記表面画像は、前記撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べた画像であり、前記画像処理部は、前記撮影領域の延在方向での分割と、前記時間軸に沿った方向での分割とを前記表面画像に施して、前記分割画像を生成してもよい。
【0013】
なお、時間軸に沿った方向は、金属製品の表面に対して撮影範囲が回転する方向でもある。撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べることは、撮影領域の撮影画像を回転方向に沿って並べることでもある。一方、金属製品の表面に対して撮影範囲が回転するとき、回転の開始や回転の終了などの過渡状態では、金属製品の表面に対する撮影範囲の回転速度が回転の定常状態と比べて遅く、結果として、単位回転角あたりに得られる撮影画像が多くなる。そのため、回転の定常状態と過渡状態との間における解像度の乖離を抑えることを要求される場合、撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べる構成であれ、回転方向に沿って並べる構成であれ、単位回転角に1つずつ撮影画像を並べることが好ましい。
【0014】
上記表面欠陥検出装置によれば、撮影領域の延在方向、および時間軸に沿った方向の2つの方向で表面画像が分割される。表面画像を2つの方向で細分化した画像が欠陥候補の検出に用いられるため、微小な欠陥候補の検出にさらに適した狭範囲での画像から欠陥候補を検出することができる。
【0015】
また、重機、建設機械、車両などのホイールのように、円筒部を備える金属製品は、締結孔や刻印などの加工痕を円筒部の周方向に沿って備える。表面画像における円筒部の周方向は、撮影領域における時間軸に沿った方向である。時間軸に沿った方向で分割された分割画像は、円筒部の周方向に沿って細分化された加工痕の一部分を含み得る。細分化された加工痕は、微細な欠陥候補に似た形状を有しやすく、欠陥候補検出モデルによっても微細な欠陥候補として検出されやすい。この点、上述したように、細分化された加工痕であれ、ひとつながりの加工痕であれ、表面画像の画像解析によって検出された加工痕は、金属製品の欠陥から除外される。結果として、欠陥候補検出モデルによる欠陥候補の検出精度を表面画像の細分化によって高めながらも、表面画像の細分化によって生じ得る誤検出を抑制可能ともなる。
【0016】
上記表面欠陥検出装置において、前記画像処理部は、前記撮影領域の各部位での前記表面の回転速度が等しくなるように前記表面画像を変換した変換画像を生成し、前記除外後の前記欠陥候補の位置を前記変換画像のなかで特定して前記除外後の前記欠陥候補の属性を前記変換画像を用いて分類する判定部をさらに備えてもよい。
【0017】
上述したように、金属製品の表面を撮影領域に対して相対的に回転させながら撮影した表面画像では、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間で、解像度に差異を生じる。一方、撮影領域の一部での表面の回転速度が他部での回転速度と等しくなるように表面画像を変換した変換画像は、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間での解像度の差異を抑えた、実際の寸法比率に即した画像である。
【0018】
この点、上記表面欠陥検出装置によれば、欠陥の要因解析に有益な情報といえる欠陥候補の属性が、表面画像ではなく、変換画像を用いて分類される。変換画像を用いて分類された属性であれば、表面画像を用いて分類された属性と比べて、欠陥の大きさや形状などの分類の精度、ひいては欠陥の要因解析の精度を高めることが可能ともなる。
【0019】
上記表面欠陥検出装置において、前記表面画像は、前記撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べた画像であり、前記分割画像は、第1分割画像であり、前記画像処理部は、前記撮影領域の各部位での前記表面の回転速度が等しくなるように前記表面画像を変換した変換画像を生成すると共に、前記撮影領域の延在方向に沿って前記変換画像を複数に分割した第2分割画像を生成し、前記時間軸に沿って並ぶ複数の評価領域を前記第2分割画像のなかに定め、各評価領域における輝度を算出し、前記第2分割画像のなかの表面塗装に異常が存在するか否かを、当該第2分割画像のなかの前記輝度の分布に基づいて判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0020】
金属製品の表面塗装における波紋状の模様や艶斑やなどの異常は、塗膜の厚さにおけるなだらかな変化である。こうした塗装異常は、エッジや線の検出などによる画像解析では存否を判定し難く、照射される光の方向に応じて判定の精度も区々となり得る。
【0021】
この点、上記表面欠陥検出装置であれば、塗装異常の判定に用いる第2分割画像を、線状の撮影領域に対して金属製品の表面を相対的に回転させながら撮影した表面画像から生成し、かつ撮影領域の延在方向に沿って当該表面画像を複数に分割して生成する。これにより、塗装の異常判定において、(f)表面の各部位に照射させる光の方向の均一化が図られる。また、実際の寸法比率に即した画像に表面画像を変換し、塗装異常の判定に用いる第2分割画像を変換画像から生成するため、(g)表面における輝度の分布を実際の寸法比率で取得することができる。結果として、第2分割画像のなかの輝度の分布に基づいて塗装異常を判定する構成であれば、異常の存否に関わる判定精度を高めることが可能ともなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、加工痕を含む金属製品の表面における欠陥の検出精度を向上可能にした表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】表面欠陥検出装置の一実施形態の装置構成を機能的に示すブロック図。
図2】表面欠陥検出装置の一実施形態が用いる撮影装置の概要を示す構成図。
図3】撮影装置が生成した表面画像の一例を示す画像。
図4】第1検出部によって特定されたマスク領域の一例を示す画像。
図5】画像処理部によって生成された第1分割画像の一例を示す画像。
図6】第2検出部によって検出された欠陥候補の一例を示す画像。
図7】欠陥候補の第1属性の一例を示す画像。
図8】欠陥候補の第2属性の一例を示す画像。
図9】欠陥候補の第3属性の一例を示す画像。
図10】欠陥候補の第4属性の一例を示す画像。
図11】判定部が輝度の分布を判定する第2分割画像の一例を示す画像。
図12】判定部による塗装判定結果の一例を示すグラフ。
図13】表面欠陥検出装置の出力例を示す画像。
図14】表面欠陥検出装置の出力例を示す画像。
図15】変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図16】変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図17】変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図18】他の変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図19】他の変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図20】他の変更例における第2検出部の欠陥候補の再構成例を示す作用図。
図21】変更例の分割部が定める第1分割線の一例を示す画像。
図22】変更例の分割部が定める第1分割線の一例を示す画像。
図23】変更例の分割部が定める第1分割線の一例を示す画像。
図24】変更例の第2検出部が実行する欠陥候補領域の補正例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
表面欠陥検出装置、表面欠陥検出方法、および表面欠陥検出プログラムの一実施形態を説明する。
[表面欠陥検出装置の構成]
図1が示すように、表面欠陥検出装置10は、撮影装置20および表示装置30に接続される。表面欠陥検出装置10は、撮影装置20によって撮影された表面画像20LPを用いて、金属製品の表面に存在し得る欠陥を検出する。表面欠陥検出装置10は、検出された欠陥の画像や属性を表示装置30に表示させる。
【0025】
表面欠陥検出装置10は、画像処理部11、第1検出部12、第2検出部13、および判定部14を備える。表面欠陥検出装置10は、表面欠陥検出プログラムを記憶し、表面欠陥検出プログラムを実行することによって第1検出部12、第2検出部13、および判定部14として機能する。
【0026】
表面欠陥検出装置10は、中央演算処理装置(CPU)および各種のメモリを備えて、後述する各種の処理を全てソフトウェアで処理するものに限らない。例えば、表面欠陥検出装置10は、各種の処理のうち少なくとも一部の処理を実行するハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)を備えたものであってもよい。つまり、表面欠陥検出装置10は、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ(マイクロコンピュータ)、あるいは、これらの組合せ、を含む回路として構成し得る。
【0027】
画像処理部11は、撮影装置20によって撮影された表面画像20LPに画像処理を行う。画像処理部11は、加工痕を検出するための前処理を表面画像20LPに行い、前処理後の画像である検出対象画像20CPを第1検出部12に出力する。加工痕を検出するための前処理は、例えば、濃度補正処理、鮮鋭化処理、フィルター処理、2値化処理である。
【0028】
画像処理部11は、分割部11A、および変換部11Bを備える。分割部11Aは、欠陥候補を検出するための分割処理を表面画像20LPに行い、分割処理後の画像である第1分割画像20DPを第2検出部13に出力する。変換部11Bは、塗装判定処理を行うための変換処理を表面画像20LPに行い、変換処理後の画像である変換画像20XPを判定部14に出力する。
【0029】
図2が示すように、撮影装置20は、ラインスキャンカメラ21、回転ステージ22、および照明装置23を備える。ラインスキャンカメラ21は、金属製品20Mの表面に線状の撮影領域を形成する。金属製品20Mは、鋼板の曲げ、絞り加工品、鍛造品や鋳造品であり、重機、建設機械、車両などのホイールのように、円筒部を備える。回転ステージ22は、金属製品20Mの円筒部における中心軸を回転中心として、金属製品20Mを回転させる。照明装置23は、ラインスキャンカメラ21の画角外からラインスキャンカメラ21の撮影領域の全体にわたり光を照射する。
【0030】
撮影装置20は、金属製品20Mの表面をラインスキャンカメラ21の撮影領域に対して回転させながら、金属製品20Mの表面を撮影する。撮影装置20は、ラインスキャンカメラ21が生成する撮影領域の撮影画像を撮影時間の時間軸に沿って並べ、撮影画像の集合である表面画像20LPを生成する。
【0031】
時間軸に沿った方向は、金属製品20Mの表面に対して撮影範囲が回転する方向でもある。撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べることは、撮影領域の撮影画像を回転方向に沿って並べることでもある。なお、金属製品20Mの表面に対して撮影範囲が回転するとき、回転の開始や回転の終了などの過渡状態では、金属製品20Mの表面に対する撮影範囲の回転速度が回転の定常状態と比べて遅く、結果として、単位回転角あたりに得られる撮影画像が多くなる。そのため、回転の定常状態と過渡状態との間における解像度の乖離を表面画像20LPで抑えることを要求される場合、撮影領域の撮影画像を時間軸に沿って並べる構成であれ、回転方向に沿って並べる構成であれ、単位回転角に1つずつ撮影画像を並べることが好ましい。
【0032】
図3が示すように、金属製品20Mの表面を撮影領域に対して相対的に回転させながら撮影された表面画像20LPは、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間で、解像度に差異を有する。解像度は、単位面積の表面を表現するための画素の密度である。例えば、図3が示す画像は、実際の寸法比率において円形状を有するボルト孔を備えたホイールの表面画像である。ボルト孔は、図3の左右方向に沿って4つ並ぶ孔である。すなわち、回転中心に近い部分に位置するボルト孔は、時間軸に沿って解像度が高まり、表面画像20LPでは、時間軸に沿って偏平した楕円形状を有する。
【0033】
図1に戻り、分割部11Aは、表面画像20LPを、ラインスキャンカメラ21における撮影領域の延在方向、および時間軸に沿った方向の2つの方向で、表面画像20LPを分割する。分割部11Aは、撮影領域の延在方向に分割する間隔、および時間軸の方向に分割する間隔を予め記憶する。撮影領域の延在方向に分割する間隔は、例えば、金属製品20Mの表面において周方向に連続するひとまとまりの構造によって定められてもよい。例えば、金属製品20Mがホイールである場合、表面画像20LPは、インナーリムを表す画像のまとまり、センターディスクを表す画像のまとまり、ハブ取り付け部を表す画像のまとまりなどに分割される。こうした分割は、欠陥の検出精度を高めることを目的として行われる。
【0034】
分割部11Aは、表面画像20LPに分割処理を行い、全ての第1分割画像20DPを第2検出部13に出力する。例えば、図3が示すように、分割部11Aは、第1分割線20DLで区切られる17行×4列の矩形領域画像に、表面画像20LPを分割する。
【0035】
変換部11Bは、撮影領域の各部位での表面の回転速度が等しくなるように表面画像20LPを変換する。変換部11Bが生成する変換画像20XPは、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間での解像度の差異を抑えた画像である。変換画像20XPは、時間軸に沿った方向で寸法に差異が生じることを抑え、撮影領域の延在方向と時間軸に沿った方向との寸法比率が撮影領域の延在方向で等しくなるように、実際の寸法比率に即した画像である。例えば、実際の寸法比率において円形状を有するボルト孔は、回転中心の近くに位置する場合であれ、回転中心から遠くに位置する場合であれ、変換画像20XPでは、ほぼ円形状を示す。
【0036】
第1検出部12は、前処理後の表面画像20LPである検出対象画像20CPを用い、画像解析を通じて、検出対象画像20CPに含まれる加工痕を検出する。
第1検出部12は、加工痕検出モデル12Aを備える。加工痕検出モデル12Aは、例えば、加工痕の特徴を記憶した、ルールベース型のアルゴリズムによって構成される。加工痕検出モデル12Aは、例えば、対象が加工痕であると判定するための大きさ、形状、濃度などに関わる複数の条件を備える。加工痕検出モデル12Aは、検出対象画像20CPから抽出した構造の測定結果が条件を満たす対象を加工痕として判定する。加工痕の特徴の一例は、金属製品20Mにおける加工痕の大きさ、形状、検出対象画像20CPにおける濃度である。第1検出部12が行う画像解析は、例えば、エッジ検出、線検出、濃度特徴の計測、形状特徴の計測である。第1検出部12は、加工痕検出モデル12Aを用い、画像解析を通じて濃度特徴や形状特徴を計測する。第1検出部12は、計測した特徴が加工痕の特徴に該当するとき、当該計測した特徴を有する部分が加工痕であると判断する。
【0037】
金属製品20Mの表面に形成される刻印や締結孔などの加工痕は、微小な欠陥と比べて広い範囲にわたる。第1検出部12は、金属製品20Mの表面を広い範囲にわたり撮影した表面画像20LPの画像解析によって加工痕を検出する。
【0038】
第1検出部12は、検出した加工痕を囲う領域を検出対象画像20CPのなかで特定する。第1検出部12は、表面画像20LPから検出対象画像20CPを生成した変換過程を考慮し、検出した加工痕を囲う領域を表面画像20LPのなかで特定する。第1検出部12は、表面画像20LPのなかで特定した領域をマスク領域20MZに設定する。第1検出部12は、マスク領域20MZの位置や構造に関わるデータを第1検出結果12Dとして判定部14に出力する。
【0039】
図4が示すように、文字の刻印が加工痕である場合、マスク領域20MZは、例えば1つの文字の全体を囲う矩形領域である。マスク領域20MZの形状や大きさは、予め設定されてもよいし、第1検出部12が記憶する加工痕の特徴に基づいて第1検出部12が設定してもよい。
【0040】
図1に戻り、第2検出部13は、欠陥候補検出モデル13Aを備える。欠陥候補検出モデル13Aは、複数層のニューラルネットワークを備え、第1分割画像20DPを入力とした機械学習型のアルゴリズムによって構築される。欠陥候補検出モデル13Aを構築するための学習は、分割部11Aが生成した第1分割画像20DPから当該第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を出力するように実施される。欠陥候補検出モデル13Aを構築するための学習は、深層学習を含む機械学習であり、教師有り学習でもよいし、教師無し学習でもよい。
【0041】
欠陥候補検出モデル13Aが検出する欠陥候補は、刻印や締結孔などの広範囲にわたる加工痕の少なくとも一部の他に、異物、塗装剥がれ、線状疵、打痕、押込み、鋳巣、材料欠陥、加工ズレなどの微小な欠陥を含む。第2検出部13は、表面画像20LPよりも十分に小さい第1分割画像20DPを用い、各第1分割画像20DPを欠陥候補検出モデル13Aに適用して欠陥候補を検出する。各第1分割画像20DPは、微小な欠陥の検出に適した狭範囲の画像であるから、微小な欠陥を含む欠陥候補を的確に検出することができる。また、欠陥候補検出モデル13Aを用いる構成であれば、第1分割画像20DPごとの解像度の差異を加味したうえで、欠陥候補を検出することができるため、欠陥候補の検出精度そのものを高めることが可能ともなる。
【0042】
欠陥候補検出モデル13Aは、全ての第1分割画像20DPのなかで、時間軸に沿って一列に並ぶ複数の第1分割画像20DPを、一群の第1分割画像20DPとして扱ってもよい。例えば、金属製品20Mがホイールである場合、欠陥候補検出モデル13Aは、インナーリムを表す第1分割画像20DPを1つの分割画像群20Gとして扱ってもよく、センターディスクを表す第1分割画像20DPを1つの分割画像群20Gとして扱ってもよい。言い換えれば、回転方向に同種の構造が繰り返される範囲や、回転方向に同程度の濃度が繰り返される範囲をひとまとまりとして、欠陥候補検出モデル13Aは、第1分割画像20DPを扱ってもよい。これにより、欠陥候補検出モデル13Aの構築に際しては、学習の精度が高まり、ひいては欠陥候補の検出精度が高まる。
【0043】
欠陥候補検出モデル13Aを構築するための学習は、例えば、一群の第1分割画像20DPから当該一群の第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を出力するように実施されてもよい。欠陥候補検出モデル13Aは、一群の第1分割画像20DPごとのモデル、すなわち撮影領域の延在方向で分割された領域ごとに別々のモデルを備えてもよい。
【0044】
上述したように、表面画像20LPでは、回転中心に近い部分と、回転中心から遠い部分との間で、解像度に差異を生じる。例えば、図5が示すように、一群の第1分割画像20DPにおいて、回転中心に近い表面を表す分割画像群20Gと、回転中心から遠い表面を表す分割画像群20Gとの間では、解像度に差異を生じる。
【0045】
この点、撮影領域の延在方向で表面画像20LPを複数に分割することは、単一の表面画像20LPから、回転中心に近い表面を表す分割画像群20Gと、回転中心から遠い表面を表す分割画像群20Gとを生成することでもある。分割画像群20Gから当該分割画像群20Gに含まれる欠陥候補を検出するように学習することは、低い解像度に特化したモデルを構築するように、また高い解像度に特化したモデルを構築するように、学習器から欠陥候補検出モデル13Aを生成することである。
【0046】
こうした学習を経て構築された欠陥候補検出モデル13Aであれば、専ら、解像度の差異を加味したうえで、欠陥候補を検出することができる。これにより、モデルによる欠陥候補の検出精度そのものを高めることが可能ともなる。
【0047】
第2検出部13は、全ての第1分割画像20DPのなかで検出した欠陥候補のなかから、相互に隣り合う第1分割画像20DPにおいてひとまとまりとなる欠陥候補の存否を判定する。第2検出部13は、例えば、相互に隣り合う欠陥候補の間隔などに基づいてひとまとまりか否かを判定する。第2検出部13は、ひとまとまりとなる欠陥候補が存在すると判定したとき、当該ひとまとまりの欠陥候補を一群の欠陥候補として取り扱う。
【0048】
第2検出部13は、検出した欠陥候補を囲う領域、および一群の欠陥候補を囲う領域を第1分割画像20DPのなかで特定する。第2検出部13は、表面画像20LPから第1分割画像20DPを生成した変換過程を考慮し、検出した欠陥候補を囲う領域、および一群の欠陥候補を囲う領域を表面画像20LPのなかで特定する。第2検出部13は、表面画像20LPのなかで特定した領域を欠陥候補領域に設定する。第2検出部13は、欠陥候補領域に関わる位置や構造などのデータを第2検出結果13Dとして判定部14に出力する。
【0049】
図6が示すように、例えば、文字の刻印が欠陥候補として検出される場合、第2検出部13は、例えば1つの文字のなかの端部や屈曲部などの複数箇所を欠陥候補20DCとして検出する。欠陥候補20DCの形状は、区々であり、欠陥候補領域は、欠陥候補20DCに追従した形状となる。欠陥候補20DCの大きさもまた、区々ではあるが、第2検出部13は、検出できる欠陥候補20DCの大きさの下限値や上限値を設定してもよい。
【0050】
図1に戻り、判定部14は、第1検出結果12D、および第2検出結果13Dを用い、金属製品20Mの表面に欠陥が存在するか否かを判定する。判定部14は、加工痕検出モデル12Aを用いて検出した加工痕を、欠陥候補検出モデル13Aで検出した一群を含む全ての欠陥候補のなかから除外し、除外後の欠陥候補を金属製品20Mの欠陥とする。すなわち、判定部14は、マスク領域20MZに含まれる欠陥候補領域を判定対象から除外し、除外後の表面画像20LPを判定対象とする。
【0051】
ホイールなどの円筒部を備える金属製品20Mは、孔や刻印などの加工痕を円筒部の周方向に沿って備える。表面画像20LPにおける円筒部の周方向は、撮影領域における時間軸に沿った方向である。時間軸に沿った方向で分割された第1分割画像20DPは、円筒部の周方向に沿って細分化された加工痕の一部を含み得る。細分化された加工痕は、微細な欠陥候補に似た形状を有しやすく、欠陥候補検出モデル13Aによっても微細な欠陥候補として検出されやすい。
【0052】
この点、判定部14は、細分化された加工痕であれ、ひとつながりの加工痕であれ、表面画像20LPの画像解析によって検出された加工痕を、金属製品20Mの欠陥から除外することができる。結果として、欠陥候補検出モデル13Aによる欠陥候補の検出精度を表面画像20LPの細分化によって高めながらも、表面画像20LPの細分化によって生じ得る誤検出を抑制を可能とする。
【0053】
判定部14は、欠陥分類部14A、および塗装判定部14Bを備える。欠陥分類部14Aは、判定部14が欠陥であると判定した部分、すなわち加工痕が除外された後の欠陥候補を、欠陥の属性に分類する。塗装判定部14Bは、金属製品20Mの表面塗装に異常が存在するか否かを判定する。欠陥分類部14Aは、画像処理部11が出力する変換画像20XPを用いて分類を行い、塗装判定部14Bは、これもまた変換画像20XPを用いて判定を行う。
【0054】
欠陥分類部14Aは、欠陥20Dの各属性に関わる特徴を記憶する。属性は、塗装剥がれや異物などの黒点、線状疵、打痕や押込みによる粒欠陥、膨れ欠陥などである。欠陥分類部14Aは、図7、8が示すように、黒点や線状疵について、大きさ、形状、濃度に関わる特徴を記憶する。欠陥分類部14Aは、図9、10が示すように、粒欠陥や膨れ欠陥についても、大きさ、形状、濃度に関わる特徴を記憶する。
【0055】
欠陥分類部14Aは、欠陥を分類するためのルールベース型のアルゴリズムを備える。欠陥分類部14Aが備えるモデルは、例えば、属性を判定するための大きさ、形状、濃度などに関わる複数の条件を備える。欠陥分類部14Aは、除外後の欠陥候補領域から抽出した構造の測定結果が条件を満たす属性を当該欠陥候補領域に含まれる欠陥の属性とする。
【0056】
欠陥分類部14Aは、例えば、第1検出結果12Dと第2検出結果13Dとを用い、表面画像20LPから検出対象画像20CPおよび第1分割画像20DPを生成した変換過程、さらに表面画像20LPから変換画像20XPを生成した変換過程を考慮し、変換画像20XPにおける欠陥20Dの位置を特定する。欠陥分類部14Aは、変換画像20XPにおける欠陥20Dについて、変換画像20XPにおける濃度特徴や形状特徴を計測し、計測した特徴に該当する属性に当該欠陥20Dを分類する。
【0057】
欠陥20Dの要因解析に有益な情報といえる欠陥の属性は、表面画像20LPではなく、変換画像20XPを用いて分類される。実際の寸法比率に即した変換画像20XPを用いる分類であれば、表面画像20LPを用いて分類される属性と比べて、欠陥20Dの大きさや形状などの分類の精度、ひいては欠陥20Dの要因解析の精度を高めることが可能ともなる。
【0058】
塗装判定部14Bは、撮影領域の延在方向に沿って変換画像20XPを複数に分割した第2分割画像を生成する。例えば、図11が示すように、変換画像20XPは、ホイールの表面を示す円形画像であり、第2分割画像20M1,20M2,20M3は、変換画像20XPをホイールの径方向に3分割した領域を示す。
【0059】
塗装判定部14Bは、各第2分割画像20M1,20M2,20M3の位置を、金属製品20Mの表面においてほぼ等しい高さ位置を有した範囲としてもよい。例えば、第2分割画像20M1は、ホイールの表面において最も高い位置となる外周領域である。第2分割画像20M2は、ホイールの表面において中間の高さとなる中間領域である。第2分割画像20M3は、ホイールの表面において最も低い位置となる内周領域である。
【0060】
塗装判定部14Bは、各第2分割画像20M1,20M2,20M3のなかに、それぞれ時間軸に沿って並ぶ複数の評価領域を定める。例えば、塗装判定部14Bは、各第2分割画像20M1,20M2,20M3のなかに、それぞれホイールの周方向に沿って等間隔に並ぶ11個の評価領域を定める。
【0061】
塗装判定部14Bは、変換画像20XPを用い、各評価領域における輝度を算出し、各第2分割画像20M1,20M2,20M3のなかの表面塗装に異常が存在するか否かを、当該第2分割画像20M1,20M2,20M3のなかの輝度の分布に基づいて判定する。すなわち、塗装判定部14Bは、第2分割画像20M1,20M2,20M3ごとの評価領域における輝度のバラツキや偏りに基づいて塗装異常の存否を判定する。
【0062】
例えば、図12が示すように、塗装判定部14Bは、変換画像20XPを用い、第2分割画像20M1のなかの11個の評価領域における輝度を算出する。塗装判定部14Bは、算出した11個の評価領域における輝度の平均値を算出し、11個の評価領域における輝度が平均値から所定値以内であるか否かを判定する。塗装判定部14Bは、11個の評価領域における輝度が平均値から所定値以内である場合、表面塗装が正常であると判定する。塗装判定部14Bは、11個の評価領域における輝度のなかに平均値から所定値外の水準が含まれる場合、表面塗装が異常であると判定する。図12では、第2分割画像20M1が示す外周領域において、平均値から所定値以内(破線で挟まれた領域)に9個の評価領域が存在し、2個の評価領域が平均値から所定値以内に含まれないことを示す。
【0063】
[作用]
上述した表面欠陥検出装置10の作用を表面欠陥検出装置10が実行する表面欠陥方法と共に説明する。まず、表面欠陥方法の実行に先駆けて、撮影装置20は、ラインスキャンカメラ21が形成する線状の撮影領域に対して金属製品20Mの表面を相対的に回転させながら金属製品20Mの表面を撮影し、金属製品20Mの表面画像20LPを生成する。次いで、表面欠陥検出装置10の画像処理部11は、表面画像20LPから検出対象画像20CP、第1分割画像20DP、および変換画像20XPを生成する。
【0064】
表面欠陥検出装置10の第1検出部12は、ルールベース型のアルゴリズムである加工痕検出モデル12Aを用い、検出対象画像20CPの画像解析を通じて、表面における加工痕を検出する。表面欠陥検出装置10の第2検出部13は、機械学習によって得られた欠陥候補検出モデル13Aを用い、第1分割画像20DPから当該第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を検出する。そして、表面欠陥検出装置10は、欠陥候補検出モデル13Aで検出した欠陥候補のなかから画像解析で検出した加工痕を除外し、除外後の欠陥候補を金属製品20Mの欠陥20Dとして出力する。
【0065】
例えば、図13が示すように、表面欠陥検出装置10は、加工痕検出モデル12Aを用いて検出した加工痕を含むマスク領域20MZを、変換画像20XPに重ねて、表示装置30に表示させる。また、図14が示すように、表面欠陥検出装置10は、除外後の欠陥候補である欠陥20Dの領域を、変換画像20XPに重ねて、表示装置30に表示させる。
【0066】
表面欠陥検出装置10の判定部14は、変換画像20XPを用いて第2分割画像20M1,20M2,20M3を生成し、それぞれの輝度の分布に基づいて塗装異常の存否を判定する。判定部14が実行する塗装異常の存否判定は、欠陥20Dの検出に先駆けて実行されてもよく、欠陥20Dの検出と並行に実行されてもよい。表面欠陥検出装置10は、塗装異常の存否判定に関わる結果を、表示装置30に表示させる。例えば、表面欠陥検出装置10は、塗装異常が存在しないと判定したとき、塗装異常が存在しない旨のメッセージを表示装置30に表示させる。また、表面欠陥検出装置10は、塗装異常が存在すると判定したとき、塗装異常が存在すると判定した第2分割画像20M1,20M2,20M3が表す領域、および当該領域のなかの評価領域をメッセージとして表示装置30に表示させる。
【0067】
以上、上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)加工痕の検出に適した広範囲にわたる検出対象画像20CPを用いて的確に加工痕を検出することができる。また、微小な欠陥候補の検出に適した狭範囲での第1分割画像20DPを用いて的確に欠陥候補を検出することができる。そして、欠陥候補検出モデル13Aによって検出する欠陥候補のなかから、画像解析によって検出した加工痕を除外し、除外後の欠陥候補を欠陥20Dとするため、欠陥20Dの誤検出を抑制可能ともなる。
【0068】
(2)撮影領域の延在方向、および時間軸に沿った方向の2つの方向で表面画像20LPが分割される。細分化された加工痕であれ、ひとつながりの加工痕であれ、表面画像20LPの画像解析によって検出された加工痕は、金属製品20Mの欠陥から除外される。そして、第1分割画像20DPから当該第1分割画像20DPに含まれる欠陥候補を検出するように学習した欠陥候補検出モデル13Aであれば、専ら、解像度の差異を加味したうえで、欠陥候補を検出することができる。結果として、欠陥候補検出モデル13Aによる欠陥候補の検出精度を表面画像20LPの細分化によって高めながらも、表面画像20LPの細分化によって生じ得る誤検出を抑制可能ともなる。
【0069】
(3)欠陥20Dの要因解析に有益な情報といえる欠陥候補の属性が、表面画像20LPではなく、変換画像20XPを用いて分類される。変換画像20XPを用いて分類された属性であれば、表面画像20LPを用いて分類された属性と比べて、欠陥20Dの大きさや形状などの分類の精度、ひいては欠陥の要因解析の精度を高めることが可能ともなる。
【0070】
(4)撮影領域に対して金属製品20Mの表面を相対的に回転させながら撮影した表面画像20LPを用いて塗装異常の判定を行うため、表面の各部位に照射させる光の方向の均一化が図られる。
【0071】
(5)実際の寸法比率に即した変換画像20XPから評価領域の輝度を算出するため、輝度の分布に基づいて塗装異常の判定を行ううえで、判定精度を高めることが可能ともなる。
【0072】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
・第1検出部12は、マスク領域20MZに関わるデータを画像処理部11に出力してもよい。また、画像処理部11は、表面画像20LPのなかのマスク領域20MZを同マスク領域20MZの周辺濃度などで補完し、マスク領域20MZが除外された表面画像20LPから第1分割画像20DPを生成してもよい。この構成であっても、画像解析で検出した加工痕を欠陥候補検出モデルで検出する欠陥候補のなかから除外することは可能である。
【0073】
・撮影装置20は、線状の撮影領域を金属製品20Mの表面に対して回転させながら当該表面を撮影し、これによって、金属製品20Mの表面画像20LPを生成してもよい。
・撮影装置20は、線状の撮影領域を金属製品20Mの表面に設定するラインスキャンカメラ21に代えて、面状の撮影領域を金属製品20Mの表面に設定するエリアスキャンカメラを備えてもよい。画像処理部11は、ラインスキャンカメラ21によって撮影された表面画像20LPに代えて、エリアスキャンカメラによって撮影された表面画像20LPに画像処理を行ってもよい。この際、分割部11Aは、エリアスキャンカメラにおける撮像素子の並ぶ方向を、分割するための撮影領域の延在方向として、表面画像20LPを分割してもよい。
【0074】
[第2検出部13による欠陥候補の再構成]
・上述したように、第2検出部13は、全ての第1分割画像20DPのなかで検出した欠陥候補のなかから、相互に隣り合う第1分割画像20DPにおいてひとまとまりとなる欠陥候補の存否を判定する。第2検出部13は、例えば、相互に隣り合う欠陥候補の間隔などに基づいてひとまとまりか否かを判定する。第2検出部13は、ひとまとまりとなる欠陥候補が存在すると判定したとき、当該ひとまとまりの欠陥候補を一群の欠陥候補として取り扱う。
【0075】
この際、第2検出部13は、全ての第1分割画像20DPのなかで検出した欠陥候補20DCのなかから、欠陥候補20DCに関わる位置や構造に基づいて、1つの線状疵であると推定される複数の欠陥候補20DCの存否をさらに判断してもよい。これによれば、欠陥分類部14Aによる線状疵の分類精度が高まる。
【0076】
例えば、図15が示すように、第2検出部13は、線状疵と推定される欠陥候補20DCの長さの範囲、および線状疵と推定される欠陥候補20DCの幅の範囲の設定値を予め記憶する。第2検出部13は、長さと幅との設定値を参照し、欠陥候補20DCの構造と設定値とを比較することによって、線状疵と推定される欠陥候補20DCの存否を判断してもよい。あるいは、第2検出部13は、線状疵と推定される欠陥候補20DCの幅に対する長さの比の範囲の設定値を予め記憶する。第2検出部13は、幅に対する長さの比の設定値を参照し、欠陥候補20DCの構造と設定値とを比較することによって、線状疵と推定される欠陥候補20DCの存否を判断してもよい。
【0077】
また、第2検出部13は、線状疵と推定された各欠陥候補20DCについて、当該欠陥候補20DCとひとまとまりとなる他の欠陥候補20DCの存否をさらに判断してもよい。
例えば、図16が示すように、第2検出部13は、線状疵と推定された1つの欠陥候補20DCに外接する長方形を定め、当該長方形の重心を当該欠陥候補20DCの重心S1とする。第2検出部13は、ひとまとまりと推定される長方形の寸法、当該長方形が延びる方向の裕度、および、ひとまとまりと推定される重なりの大きさについて、予め設定値を記憶する。第2検出部13は、寸法の設定値を参照し、1つの欠陥候補20DCの重心S1を中心とする1つの矩形判定領域S2を定める。次に、第2検出部13は、矩形判定領域S2の延びる方向の裕度の設定値を参照し、当該裕度のなかで、線状疵と推定された他の欠陥候補20DCと矩形判定領域S2との重なりの大きさを検出する。次いで、第2検出部13は、重なりの大きさの設定値を参照し、他の欠陥候補20DCと矩形判定領域S2との重なりが設定値を超える当該他の欠陥候補20DCを、1つの欠陥候補20DCとひとまとまりとなると判断する。そして、第2検出部13は、線状疵と推定された各欠陥候補20DCと他の欠陥候補20DCとの全ての組みについて、ひとまとまりとなる他の欠陥候補20DCの存否を判断する。
【0078】
また、第2検出部13は、ひとまとまりと判断された複数の欠陥候補20DCを1つの欠陥候補20DCに再構成してもよい。
例えば、図17が示すように、第2検出部13は、ひとまとまりと判断された2つの欠陥候補20DCを、1つの欠陥候補20DCに再構成してもよい。すなわち、第2検出部13は、ひとまとまりであると判断した際の矩形判定領域S2の一部である補間領域S3によって2つの欠陥候補20DCを接続するように、2つの欠陥候補20DCを1つの欠陥候補20DCに再構成してもよい。そして、第2検出部13は、再構成した1つの欠陥候補20DCを囲う領域を、一群の欠陥候補20DCを囲う欠陥候補領域として、表面画像20LPのなかで特定してもよい。
【0079】
なお、第2検出部13は、上述した線状疵と推定されたひとまとまりの欠陥候補20DCの判断を、一群の欠陥候補を囲う領域を表面画像20LPのなかで特定する処理のなかで実行してもよい。
【0080】
・上述したように、第2検出部13は、全ての第1分割画像20DPのなかで検出した欠陥候補のなかから、相互に隣り合う第1分割画像20DPにおいてひとまとまりとなる欠陥候補の存否を判定する。第2検出部13は、表面画像20LPから第1分割画像20DPを生成した変換過程を考慮し、一群の欠陥候補20DCを囲う領域を、欠陥候補領域として、表面画像20LPのなかで特定する。これによれば、別々の第1分割画像20DPに分断された1つの欠陥20Dが欠陥分類部14Aによって1つの欠陥20Dとして分類されやすい。
【0081】
例えば、図18が示すように、相互に隣り合う2つの第1分割画像20DPに跨がる1つの欠陥20Dが存在し得る。こうした場合、図19が示すように、第1分割画像20DPごとに欠陥候補20DCを検出する第2検出部13は、以下のように欠陥候補20DCを特定し得る。すなわち、第2検出部13は、一方の第1分割画像20DPに存在する1つの欠陥候補20DCと、他方の第1分割画像20DPに存在する1つの欠陥候補20DCとが、恰も隙間S4を空けるように、1つの欠陥20Dを2つの欠陥候補20DCとして特定し得る。
【0082】
そこで、第2検出部13は、相互に隣り合う2つの欠陥候補20DCを1つの欠陥候補20DCに再構成するための、欠陥候補20DC間の距離の設定値を記憶してもよい。欠陥候補20DC間の距離の設定値は、相互に隣り合う2つの第1分割画像20DPにおいて、別々の第1分割画像20DPに特定された欠陥候補20DCがひとまとまりであると推定される距離である。欠陥候補20DC間の距離の設定値は、1つの欠陥20Dを2つの第1分割画像20DPに分断するように実施された試験等に基づいて定められてもよい。第2検出部13は、欠陥候補20DC間の距離の設定値を参照し、相互に隣り合う2つの欠陥候補20DC間の距離が設定値よりも短く、かつ各欠陥候補20DCが別々の第1分割画像20DPに検出されたとき、当該2つの欠陥候補20DCを一群の欠陥候補として取り扱ってもよい。
【0083】
また、図20が示すように、第2検出部13は、相互に隣り合う2つの欠陥候補20DCの隙間S4が外形線によって囲まれるように、1つの欠陥候補20DCを再構成してもよい。そして、第2検出部13は、再構成した1つの欠陥候補20DCを囲う領域を、一群の欠陥候補20DCを囲う欠陥候補領域として、表面画像20LPのなかで特定してもよい。
【0084】
[欠陥分類部14Aによる欠陥候補領域の再構成]
・上述したように、欠陥分類部14Aは、欠陥を分類するためのルールベース型のアルゴリズムを備える。欠陥分類部14Aが備えるモデルは、例えば、属性を判定するための大きさ、形状、濃度などに関わる複数の条件を備える。欠陥分類部14Aは、除外後の欠陥候補領域から抽出した構造の測定結果が条件を満たす属性を、当該欠陥候補領域に含まれる欠陥の属性とする。
【0085】
この際、欠陥分類部14Aは、除外後の欠陥候補領域から抽出した構造の測定結果に基づいて、1つの線状疵であると推定される複数の欠陥候補領域の存否をさらに判断してもよい。例えば、欠陥分類部14Aは、上述した欠陥候補20DCの再構成のように、除外後の欠陥候補領域を対象とした矩形判定領域S2を定めた後、当該矩形判定領域S2と重なる他の欠陥候補領域を、当該欠陥候補領域とひとまとまりであると定めてもよい。次に、欠陥分類部14Aは、上述した欠陥候補20DCの再構成のように、ひとまとまりであると定められた複数の欠陥候補領域を、矩形判定領域S2の一部で接続した1つの欠陥候補領域に再構成してもよい。そして、欠陥分類部14Aは、再構成された欠陥候補領域から抽出した構造の測定結果を用いて、欠陥の属性を特定してもよい。
【0086】
[分割部11による画像分割]
上述したように、分割部11Aは、表面画像20LPを、ラインスキャンカメラ21における撮影領域の延在方向、および時間軸に沿った方向の2つの方向で、表面画像20LPを分割する。分割部11Aは、撮影領域の延在方向に分割する間隔、および時間軸の方向に分割する間隔を予め記憶する。
【0087】
この際、金属製品20Mを基準として、ラインスキャンカメラ21の撮影が開始される位置は、金属製品20Mの周方向において、金属製品20Mごとに区々となる場合がある。また、ラインスキャンカメラ21の撮影が開始される位置を、金属製品20Mの周方向において、金属製品20Mごとに整合させることは、表面画像20LPの撮影に要する負荷を高める。結果として、金属製品20Mの周方向に等間隔を空けて形成されている加工痕などの背景の位置が、金属製品20Mの周方向に等間隔を空けて形成されている各矩形領域画像のなかで、区々となる。
【0088】
例えば、図21が示すように、前回の金属製品20Mを対象とした表面欠陥検出において、金属製品20Mの周方向に等間隔を空けて形成された小孔は、第1分割線20DLによって区切られる各矩形領域の画像のなかで、1つずつ隅に位置するとする。一方、図22が示すように、今回の金属製品20Mを対象とした表面欠陥検出において、金属製品20Mの周方向に等間隔を空けて形成された小孔は、第1分割線20DLによって区切られる各矩形領域の画像のなかで、1つずつほぼ中央に位置するとする。このように、欠陥の背景となる画像が各矩形領域のなかで区々となることは、第2検出部13における学習精度の向上を妨げると共に、第2検出部13による欠陥候補の検出精度の向上も妨げる。
【0089】
そこで、分割部11Aは、金属製品20Mの表面画像20LPのなかから、複数の金属製品20Mに共通する周期構造や特徴構造を予め検出する画像検出機能を備えてもよい。そして、分割部11Aは、撮影領域の延在方向に分割する間隔、および時間軸の方向に分割する間隔を予め記憶すると共に、表面画像20LPのなかの分割の基準となる位置を、画像検出機能による検出結果に基づいて表面画像20LPごとに変更してもよい。
【0090】
これによれば、ラインスキャンカメラ21の撮影が開始される位置が、金属製品20Mごとに区々となる場合であっても、第1分割線20DLによって区切られる各矩形領域の画像のなかの背景画像にばらつきが生じることが抑えられる。
【0091】
例えば、分割部11Aは、金属製品20Mの表面画像20LPのなかから、小孔を検出する画像検出機能を備えてもよい。そして、分割部11Aは、表面画像20LPのなかの分割の基準となる位置を、矩形領域の隅に小孔が位置するように、表面画像20LPごとに変更してもよい。これによって、図22が示す表面画像20LPが得られるとしても、図23が示すように、図21が示す表面画像20LPが得られる場合と同じように、各小孔に対し矩形領域を割り振ることが可能となる。
【0092】
[欠陥候補領域の補正]
図24が示すように、第2検出部13が備える欠陥候補検出モデル13Aは、学習結果として、欠陥候補20DCの大きさを、実際の欠陥20Dの大きさよりも大きく検出する傾向を有する場合がある。判定部14の判定に用いられる欠陥20Dの大きさが、欠陥候補20DCの大きさに基づいて定められるため、第2検出部13による上述した傾向は、欠陥検出の精度向上を妨げる。
【0093】
そこで、第2検出部13は、欠陥候補20DCの大きさを補正する補正機能を備えてもよい。例えば、欠陥候補検出モデル13Aが、欠陥候補20DCの大きさを、実際の欠陥20Dの大きさよりも大きく検出する傾向を有する場合、第2検出部13は、欠陥候補20DCの大きさを所定の割合で縮小する補正機能を備えてもよい。この際、第2検出部13は、欠陥候補20DCにおける長軸方向と短軸方向とを特定し、長軸方向と短軸方向とを別々の割合で縮小してもよい。これによって、第2検出部13による欠陥検出の精度を欠陥20Dの大きさの観点において高めることが可能ともなる。
【符号の説明】
【0094】
10…表面欠陥検出装置
11…画像処理部
11A…分割部
11B…変換部
12…第1検出部
12A…加工痕検出モデル
13…第2検出部
13A…欠陥候補検出モデル
14…判定部
14A…欠陥分類部
14B…塗装判定部
20…撮影装置
20LP…表面画像
20CP…検出対象画像
20D…欠陥
20DC…欠陥候補
20DL…第1分割線
20DP…第1分割画像
20G…第1分割画像群
20XP…変換画像
20M…金属製品
20M1,20M2,20M3…第2分割画像
20MZ…マスク領域
21…ラインスキャンカメラ
22…回転ステージ
23…照明装置
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