(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126623
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セル
(51)【国際特許分類】
H01B 1/08 20060101AFI20220823BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220823BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220823BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220823BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220823BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
H01B1/08
H01M10/0562
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/131
H01M4/136
H01M4/134
H01M4/13
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022023763
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】63/150,691
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/494,391
(32)【優先日】2021-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】512249180
【氏名又は名称】カリフォルニア大学
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111, Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーブランド シーダー
(72)【発明者】
【氏名】ビン オウヤン
(72)【発明者】
【氏名】イーヨンジィ サン
(72)【発明者】
【氏名】イーハン シャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リンカーン ジェームス ミアラ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CA02
5G301CA12
5G301CA15
5G301CA16
5G301CA26
5G301CD01
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029EJ05
5H029HJ02
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA07
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050EA12
5H050FA02
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】イオン伝導率が高く、固体電池における固体電解質として有用な固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セルを提供する。
【解決手段】 本発明による固体イオン伝導体は、下記に示す化学式1で表される化合物を有する。
(化1)
Li
4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM
1
3+x+yM
2
3-yM”
xO
12X
1
cX
2
1-c
・・・ 化学式1
(化学式1に関連する説明は、本明細書に記載されたところを参照する。)
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体イオン伝導体であって、
下記に示す化学式1で表される化合物を有することを特徴とする固体イオン伝導体。
(化1)
Li4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM1
3+x+yM2
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式1
(前記化学式1で、
M1は、aの酸化数の陽イオン元素で、aは、+2又は+3であり、
M2は、bの酸化数の陽イオン元素で、bは、+4又は+5であり、
ただし、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+5の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+4の酸化数の陽イオン元素であり、
M”は、γの酸化数の陽イオン元素であり、γはb未満であり、
X1は、(-1-δ)の酸化数の陽イオン元素であり、δは、0又は1であり、
X2は、ハロゲンであり、
0<c≦1であり、
0≦x≦1であり、
0≦y≦2であり、
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素である時、0≦y≦1である。)
【請求項2】
前記化学式1で、
M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素であり、
M1は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項3】
前記M1は、Alであることを特徴とする請求項2に記載の固体イオン伝導体。
【請求項4】
前記化学式1で、
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、Mg、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Zn、Fe、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項5】
前記化学式1で、
M2は、bが+4の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項6】
前記M2は、Siであることを特徴とする請求項5に記載の固体イオン伝導体。
【請求項7】
前記化学式1で、
M2は、bが+4の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、Nb、Ta、P、As、Sb又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項8】
前記化学式1で、
x=0であることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項9】
前記化学式1で、
0<x≦1であり、
M”は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、Be、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項10】
前記化学式1で、
δは、0であり、クラスター陰イオンX1は、-1の酸化数であることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項11】
前記X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2
-、又はこれらの組み合わせからなる擬似ハロゲンであることを特徴とする請求項10に記載の固体イオン伝導体。
【請求項12】
前記化学式1で、
δは、1であり、クラスター陰イオンX1は、-2の酸化数であり、X1はS2-、SO4
2-、又はこれらの組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項13】
前記化学式1で、
c=1であることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項14】
前記化学式1で、
cは、0<c<1であり、X2がF、Cl、Br、I、又はこれらの組み合わせであることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項15】
前記化学式1で、
M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+4の酸化数の陽イオン元素であり、固体イオン伝導体は、下記に示す化学式2で表されることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
(化2)
Li4+y+cδ+(3-γ)xM+3
3+x+yM+4
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式2
【請求項16】
前記化学式1で、
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素であり、固体イオン伝導体は、下記に示す化学式3で表されることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
(化3)
Li4+3y+cδ+(2-γ)xM+2
3+x+yM+5
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式3
【請求項17】
前記化学式1で、
M1は、Alであり、
M2は、Siであり、
xは、0であり、
yは、1であり、
X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2、S2-、SO4
2-、又はこれらの組み合わせであり、
cは、1であることを特徴とする請求項1に記載の固体イオン伝導体。
【請求項18】
リチウム化合物と、
M1前駆体と、
M2前駆体と、
X1前駆体と、
必要に応じて(optionally)、M”前駆体と、
必要に応じて、X2前駆体と、を有する混合物と、
前記混合物を処理して、下記に示す化学式1で表される化合物を有する固体イオン伝導体を製造することを特徴とする固体イオン伝導体製造方法。
(化1)
Li4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM1
3+x+yM2
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式1
(前記化学式1で、
M1は、酸化数がaであり、aは、+2又は+3である陽イオン元素であり、
M2は、酸化数がbであり、bは、+4又は+5である陽イオン元素であり、
ただし、M1は、aが酸化数+2の陽イオン元素である時、M2が、酸化数+5の陽イオン元素であり、M1は、aが酸化数+3の陽イオン元素である時、M2は、酸化数+4の陽イオン元素であり、
M”は、γの酸化数を有するカチオン元素であり、γは、b未満であり、
X1は、(-1-δ)の酸化数を有するクラスター陰イオンであり、δは、0又は1であり、
X2は、ハロゲンであり、
0<c≦1であり、
0≦x≦1であり、
0≦y≦2であり、
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素である時、0≦y≦1である。)
【請求項19】
リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属リン酸塩、又はこれらの組み合わせからなる正極活性物質層と、
前記正極活性物質層上の請求項1に記載の固体イオン伝導体と、を有することを特徴とする正極。
【請求項20】
リチウム金属、リチウム金属合金、又はこれらの組み合わせからなる負極活性物質層と、
前記負極活性物質層上の請求項1に記載の固体イオン伝導体と、を有することを特徴とする負極。
【請求項21】
リチウム二次電池用の負極であって、
前記負極は、集電体と、
前記集電体上の請求項1に記載の固体イオン伝導体と、を有する電極であることを特徴とするリチウム二次電池用負極。
【請求項22】
電気化学セルであって、
正極と、
陰極と、
正極と負極との間の電解質層と、を有し、
前記正極、前記陰極、及び前記電解質層の中で少なくとも一つが、請求項1に記載の固体イオン伝導体を有することを特徴とする電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体リチウム電池に関し、特に、イオン伝導率が高く、固体電池における固体電解質として有用な固体リチウムイオン伝導体及び固体リチウムイオン伝導体の製造方法、並びに固体リチウムイオン伝導体を含む正極、固体リチウムイオン伝導体を含む負極、及び固体リチウムイオン伝導体を含む電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
固体リチウム電池は、比エネルギーとエネルギー密度を向上させることができ、液体電解質に使用される可燃性有機溶剤に関する安全上の懸念を回避することができる。
酸化物と硫化物固体電解質が使用されている。
利用可能な硫化物は、酸化物よりもリチウム伝導率を高めることができるが、例えば、空気や水と反応して硫化水素を発生させるなど、安全上の懸念もある。
酸化物は、硫化物に対する毒性と空気中の安定性を減少させることができるが、使用可能な酸化物は伝導性が低いか、高圧陰極材料やリチウム金属と互換性がないため、適用が制限される。
したがって、イオン伝導性を向上させ、硫化物に関する毒性と安全性の懸念を回避する固体電解質が必要である、という課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記従来の固体リチウム電池における課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、イオン伝導率が高く、固体電池における固体電解質として有用な固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するためになされた本発明による固体イオン伝導体は、
下記に示す化学式1で表される化合物を有することを特徴とする。
(化1)
Li4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM1
3+x+yM2
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式1
(前記化学式1で、
M1は、aの酸化数の陽イオン元素で、aは+2又は+3であり、
M2は、bの酸化数の陽イオン元素で、bは+4又は+5であり、
ただし、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+5の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+4の酸化数の陽イオン元素であり、
M”は、γの酸化数の陽イオン元素であり、γはb未満であり、
X1は、(-1-δ)の酸化数の陽イオン元素であり、δは、0又は1であり、
X2は、ハロゲンであり、
0<c≦1であり、
0≦x≦1であり、
0≦y≦2であり
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、+5の酸化数の陽イオン元素である時、0≦y≦1である。)
【0005】
上記目的を達成するためになされた本発明による固体イオン伝導体製造方法は、
リチウム化合物と、M1前駆体と、M2前駆体と、X1前駆体と、必要に応じて、M’前駆体と、必要に応じて、X2前駆体と、を有する混合物と、前記混合物を処理して、下記に示す化学式1で表される化合物を有する固体イオン伝導体を製造することを特徴とする固体イオン伝導体製造方法。
(化1)
Li4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM1
3+x+yM2
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式1
(前記化学式1で、
M1は、酸化数がaであり、aは、+2又は+3である陽イオン元素であり、
M2は、酸化数がbであり、bは、+4又は+5である陽イオン元素であり、
ただし、M1は、aが酸化数+2の陽イオン元素である時、M2が、酸化数+5の陽イオン元素であり、M1は、aが酸化数+3の陽イオン元素である時、M2は、酸化数+4の陽イオン元素であり、
M”は、γの酸化数を有するカチオン元素であり、γはb未満であり、
X1は、(-1-δ)の酸化数を有するクラスター陰イオンであり、δは、0又は1であり、
X2は、ハロゲンであり、
0<c≦1であり、0≦x≦1であり、0≦y≦2であり、
M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素である時、0≦y≦1である。)
【0006】
上記目的を達成するためになされた本発明による正極は、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属リン酸塩、又はこれらの組み合わせからなる正極活性物質層と、前記正極活性物質層上の本発明の固体イオン伝導体と、を有することを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明による負極は、リチウム金属、リチウム金属合金、又はこれらの組み合わせからなる負極活性物質層と、前記負極活性物質層上の本発明の固体イオン伝導体と、を有することを特徴とする負極。
【0008】
上記目的を達成するためになされた本発明によるリチウム二次電池用負極は、リチウム二次電池用負極であって、前記負極は、集電体と、前記集電体上の本発明の固体イオン伝導体を含む電極であることを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明による電気化学セルは、正極と、陰極と、正極と負極との間の電解質層と、を有し、前記正極、前記陰極、及び前記電解質層の中で少なくとも一つが本発明の固体イオン伝導体を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セルによれば、イオン伝導率が高く、固体電池における固体電解質として有用であり、硫化物に関する毒性と安全性の懸念を回避する固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態による正極の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態による負極の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態によるリチウム電池の概略構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12Brのアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図5】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12Clのアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図6】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12Iのアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図7】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12BH
4のアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図8】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12SHのアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図9】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12NH
2のアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図10】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12AlH
4のアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図11】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12BF
4のアレニウス解析の結果を示す温度(K
-1)対リチウム拡散率(cm
2/s)のグラフである。
【
図12】本発明の実施形態によるリチウムイオン伝導率を300K(mS/cm)対陰イオン量(Å
3)で表したグラフである。
【
図13】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12BH
4の固体イオン伝導体の結晶構造を示す立体構造図である。
【
図14】本発明の実施形態によるLi
5Al
4Si
2O
12X(X=Cl、OH、BH
4)について算出したX線粉末回折(XRD)パターンの強度(a.u.)対回折角(2θ)のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係る固体リチウムイオン伝導体及びその製造方法並びに正極、負極、リチウム二次電池用負極、電気化学セルを実施するための形態の具体例を図面を参照しながら説明する。
【0013】
現在入手可能なリチウムイオン電池は、液体有機電解質の漏洩と可燃性により、電気自動車やグリッドベースのエネルギー貯蔵インフラへの適用が制限されているため、安全上の問題が数多くある。
この場合、ソリッドステートバッテリ(SSBs)は、これらの制限を解決するための次世代バッテリとして提案されている。
この分野の急速な発展にもかかわらず、ほとんどの固体リチウムイオン伝導体(SSLICs)は依然として実用的ではない。
また、Li7La3Zr2O12のような最先端酸化物SSLICsには希土類元素や貴金属が多く含まれており、固体電解質のコストを増加させる可能性がある。
したがって、室温イオン伝導率が高く、コストの低い元素を持つ新しい酸化物SSLICsを発見することが望ましい。
【0014】
本発明者らは、イオン伝導率が高く、固体電池における固体電解質として有用な固体イオン伝導体を発見した。
本発明の固体イオン伝導体は、ソダライト型構造を有する。
【0015】
従って、下記に示す化学式1の化合物からなる固体イオン伝導体を開示する。
(化1)
Li4+(b-a)y+cδ+(a-γ)xM1
3+x+yM2
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式1
化学式1で、M1は、aの酸化数の陽イオン元素で、aは、+2又は+3であり、
M2は、bの酸化数の陽イオン元素で、bは、+4又は+5であり、ただし、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+5の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素である時、M2は+4の酸化数の陽イオン元素であり、M”は、γの酸化数の陽イオン元素であり、γは、b未満であり、
X1は、(-1-δ)の酸化数の陽イオン元素であり、δは、0又は1であり、X2は、ハロゲンであり、0<c≦1であり、0≦x≦1であり、0≦y≦2であり、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、+5の酸化数の陽イオン元素である時、0≦y≦1である。
【0016】
化学式1で、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
M1は、Alであることが好ましい。
化学式1で、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であることが好ましい。
例えば、M1はMg、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Zn、Fe、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0017】
化学式1で、M2は、bが+4の酸化数の陽イオン元素であることが好ましい。
例えば、M2は、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
一実施形態において、M2は、Siである。
化学式1で、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素であることが好ましい。
例えば、M2は、Nb、Ta、P、As、Sb、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。
【0018】
上記のように、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、+5の酸化数の陽イオン元素であり、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、+4の酸化数の陽イオン元素である。
例えば、M1は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、又はこれらの組み合わせであり、M2は、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、又はこれらの組み合わせであり得る。
あるいは、M1は、Mg、Ca、Sr、Ba、Co、Ni、Zn、Fe、又はこれらの組み合わせであり、M2は、Nb、Ta、P、As、Sb、又はこれらの組み合わせであり得る。
一実施形態において、M1は、Alで、M2はSiである。
【0019】
一実施形態によれば、M1は、aが+3の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+4の酸化数の陽イオン元素であり、固体イオン伝導体は、下記に示す化学式2で表される固体イオン伝導体である。
(化2)
Li4+y+cδ+(3-γ)xM+3
3+x+yM+4
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式2
【0020】
一実施形態によれば、M1は、aが+2の酸化数の陽イオン元素であり、M2は、bが+5の酸化数の陽イオン元素であり、固体イオン伝導体は、下記に示す化学式3で表される固体イオン伝導体である。
(化3)
Li4+3y+cδ+(2-γ)xM+2
3+x+yM+5
3-yM”xO12X1
cX2
1-c
・・・ 化学式3
【0021】
化学式1で、x=0である。
したがって、x=0のとき、化学式1の化合物にはM”は存在しない。
化学式1で、0<c≦1である場合、M”は、γの酸化数を有する陽イオン元素であり、γは、b未満である。
例えば、bが、+5のとき、M”は、+1、+2、+3、又は+4の酸化数γを有し、bが、+4のとき、M”は、+1、+2、又は+3の酸化数γを有することができる。
一実施形態において、M”は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、Be,又はこれらの組み合わせであり得る。
Beは具体的に言及されている。
【0022】
化学式1で、X1は、酸化数(-1-δ)を有するクラスターアニオンであり、δは、0又は1である。
一実施形態では、δは、0であり、X1は、酸化数が-1である。
一実施形態では、δは1であり、X1は、酸化数が-2である。
酸化数が-1であるクラスターアニオンを擬似ハロゲンと呼ぶこともできる。
一実施形態では、X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2
-、又はこれらの組み合わせからなる擬似ハロゲンであり得る。
一実施形態では、X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、SH-、NH2
-、又はこれらの組み合わせからなる擬似ハロゲンであり得る。
一実施形態では、X1は、BH4
-、BF4
-、SH-、NH2
-、又はこれらの組み合わせからなる擬似ハロゲンであり得る。
一実施形態では、X1は、BH4
-、BF4
-、SH-、又はこれらの組み合わせからなる擬似ハロゲンであり得る。
一実施形態では、X1はSH-からなる擬似ハロゲンであり得る。
X1は、酸化数が-2のクラスターアニオンであってもよく、例えば、S2-、SO4
2-、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0023】
クラスターアニオンの含有量は、0<c≦1であることが好ましい。
一実施形態によれば、c=1である。
一実施形態では、0.01≦c≦1、0.1≦c≦1、0.1≦c≦0.9、0.1≦c≦0.75、0.1≦c≦0.5、0.1≦c≦0.25であり得る。
【0024】
c<1である時、X2は1-cである。
化学式1のX2は、ハロゲンであり、F-、Cl-、Br-、I-、又はこれらの組み合わせであり得る。
Cl-とBr-が具体的に言及されている。
一実施形態によれば、X2はCl-である。
化学式1の化合物中にハロゲンは存在しない。
【0025】
一実施形態によれば、x=0であり、化合物は、下記に示す式である。
Li4+(b-a)y+cδM1
3+yM2
3-yO12X1
cX2
1-c
ここで、M1、M2、X1、X2、a、b、c、δは、上記で定義された通りである。
例えば、M1は、酸化数+3の陽イオン元素であり、M2は、酸化数+4の陽イオン元素であり、yは、1、X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2
-、S2-、SO4
2-、又はこれらの組み合わせであり得る。cは1である。
例えば、M1は、Al、B、Ga、In、Sc、Y、Fe、Mn、Co、Ni、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Lu、又はこれらの組み合わせであり、M2は、Si、Ti、Zr、Hf、Ge、Sn、又はこれらの組み合わせである。yは1であり,X1はBH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2
-、S2-、SO4
2-またはこれらの組み合わせであり、cは1である。
例えば、M1は、Al、M2は、Si、yは、1、X1は、BH4
-、BF4
-、AlH4
-、OH-、SH-、NH2
-、S2-、SO4
2-、又はこれらの組み合わせであり、cは、1であり得る。
【0026】
一実施形態によれば、固体イオン伝導体は、「Li5Al4Si2O12BH4」、「Li5Al4O12SH」、「Li5Al4Si2O12NH2」、「Li5Al4Si2O12AlH4」、「Li5Al4Si2O12BF4」、「Li6Al3Si2BeO12(BH4)」、「Li5Al4Si2O12(BH4)0.5Cl0.5」、「Li5Al4Si2O12(NH2)0.5Cl0.5」、「Li4.5Al3Si3O12(Cl)0.5(SO4)0.5」であり得るがそれらに限定されない。
【0027】
固体イオン伝導体は、300ケルビン(K)で、1x10-4mS/cmより大きくイオン伝導度を有する。
例えば、固体イオン伝導体は、300ケルビン(K)で、1x10-4mS/cm~1x102mS/cm、1x10-4mS/cm~40mS/cm、1x10-4mS/cm~30mS/cm、1x10-4mS/cm~25mS/cm、1x10-4mS/cm~10mS/cm、1x10-4mS/cm~8mS/cm、1x10-4mS/cm~1mS/cm、又は1x10-2mS/cm~1mS/cmのイオン導電性を有することができる。
イオン伝導率は、300Kで複素インピーダンス法によって決定され、詳細は、『「J.-M.Winand」の「固体電解質におけるイオン伝導率の測定」、「Europhysics Letters、vol.8、no.5、p.447-452、1989年」』に記載のその内容を参照して、その全体を本明細書に組み込んでいる。
【0028】
一実施形態によれば、M1は、Alであり、M2は、Siであり、x=0であり、c=1であり、X1は、BH4であり、固体イオン伝導体は、化学式「Li5Al4Si2O12BH4」である。
固体イオン伝導体が、「Li5Al4Si2O12BH4」の時、イオン導電性は、1x10-4mS/cm~1x102mS/cm、1mS/cm~1x102mS/cm、又は1mS/cm~1x10mS/cmである。
【0029】
一実施形態によれば、M1は、Alであり、M2はSiであり、x=0であり、c=1であり、X1は、SHであり、固体イオン伝導体は、化学式「Li5Al4Si2O12SH」である。
固体イオン伝導体が、「Li5Al4Si2O12SH」の時、イオン導電性は、1x10-4mS/cm~1x102mS/cm、1mS/cm~1x102mS/cm、又は1mS/cm~1x30mS/cmである。
【0030】
一実施形態によれば、M1は、Alであり、M2は、Siであり、x=0であり、c=1であり、X1は、NH2であり、固体イオン伝導体は、化学式「Li5Al4Si2O12NH2」である。
固体イオン伝導体が、「Li5Al4Si2O12NH2」の時、イオン導電性は、1x10-4mS/cm~1x102mS/cm、又は1x10-2mS/cm~1mS/cmである。
【0031】
一実施形態によれば、M1は、Alであり、M2はSiであり、x=0であり、c=1であり、X1は、AlH4であり、固体イオン伝導体は、化学式「Li5Al4Si2O12AlH4」である。
固体イオン伝導体が、「Li5Al4Si2O12AlH4」の時、イオン導電性は、1x10-4mS/cm~1x102mS/cmである。
【0032】
一実施形態によれば、M1は、Alであり、M2は、Siであり、x=0であり、c=1であり、X1は、BF4であり、固体イオン伝導体は、化学式「Li5Al4Si2O12BF4」である。
固体イオン伝導体が、「Li5Al4Si2O12BF4」の時、イオン導電性は、1x10-4mS/cm~1x102mS/cm、又は1x10-2mS/cm~1mS/cmである。
【0033】
固体イオン伝導体の製造方法を開示する。
固体イオン伝導体は、湿式合成法を用いて調製することができる。
例えば、固体イオン伝導体は、リチウム化合物、M1前駆体、M2前駆体、X1前駆体、及びオプションとしてM”前駆体と、X2前駆体と、を化学量論的に接触させることにより調製し、生成物固体イオン伝導体の元素の適切な化学量を有する混合物を提供する。
【0034】
混合物を処理して、化学式1の固体イオン伝導体を得る。
例えば、リチウム前駆体は、LiNO3又はLiOHであり、M1前駆体は、M1O、M1
2O3、M1(OH)2、M1(OH)3、M1(NO3)2、M1(NO3)3であり、M2前駆体は、M2O2、M2
2O5、Li2M2O3、Li3M2O4、M2(NO3)4、M2(NO3)5であり、X1前駆体は、LiX1であり、M”前駆体(存在する場合)は、M”O、M”2O3、M”(OH)2、M”(OH)3、M”(NO3)2、M”(NO3)3であり、X2前駆体(存在する場合)は、LiX2又はLi2X2である。
【0035】
処理は、任意の適切な方法、例えば、水熱合成、溶媒熱合成、マイクロ波合成を含み得る。
水熱合成と溶媒熱合成は、水、エチレングリコール、1-ブタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、又はこれらの組み合わせのような適切な溶媒、例えば、100℃~200℃、200℃~250℃、又は250℃~300℃を使用して、固体イオン伝導体を提供するのに有効な時間を得ることができる。
例えば、0.5~20時間、2~48時間、3~180時間、0.5~2時間、0.7~1時間である。
【0036】
マイクロ波合成は、水、エチレングリコール、1-ブタノール、1-ヘキサノール、1-オクタノール、1-デカノール、又はこれらの組み合わせの任意の適切な溶媒を、例えば、100℃~200℃、200℃~250℃、又は250℃~300℃の適切な温度で使用する。
周波数2.45GHz又は915MHzのマイクロ波を10~60分間、又は1~30時間使用することが記載されています。
【0037】
開示された方法は、好ましいイオン伝導性及び安定性、例えば、1.5V(V対Li/Li+)~5V、例えば、1.75V~4.8V、2V~4.6V、又は2.5V~4.4V、対Li/Li+を有する、固体イオン伝導体を提供する。
一実施形態によれば、固体イオン伝導体は、リチウム遷移金属酸化物正極活性物質、例えば、リチウムニッケルマンガン酸化物又はリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸塩などのリチウム遷移金属リン酸塩正極活性物質と接触すると、少なくとも反応速度論的(kinetically)に安定する。
例えば、固体イオン伝導体は、リチウム金属と接触しても合金や化合物を形成しない。
【0038】
固体イオン伝導体は、
図1に概略的に示すように、正極活性物質層上に配置して、正極集電体101と、正極活性物質層102と、正極活性物質層上に固体イオン伝導体を含む保護層103とを備える。
理論的に拘束されたくないが、固体イオン伝導体からなる保護層を使用することで、正極活性物質の劣化を回避し、性能を向上させることができることが理解されている。
保護層は、例えば、スパッタリングにより正極活性物質層上に配置し、また、固体イオン伝導体からなる被覆組成物により正極活性物質層を、鋳造(casting)又は被覆して被覆組成物の溶媒を除去するために乾燥させることにより配置する。
【0039】
固体イオン伝導体は、
図2に概略的に示すように、負極を提供するために、負極上に配置し、集電体202上に配置される負極201と、負極上に固体イオン伝導体を含む保護層203とを備える。
理論的には拘束されたくないが、固体イオン伝導体で構成された保護層を使用すれば、陰活性物質の分解を避け、性能を向上させることができると理解されている。
保護層は、例えば、スパッタリングにより、あるいは固体イオン伝導体からなる被覆組成物で負極活性物質層を、鋳造(casting)又は被覆して、被覆組成物の溶媒を除去するために乾燥させることにより、負極活性物質層上に配置する。
【0040】
一実施形態では、固体イオン伝導体は、集電体上に配置されて負極を配置する。
保護層は、例えば、スパッタリングにより負極活性物質層上に配置し、また、固体イオン伝導体からなる被覆組成物を、鋳造(casting)又は被覆して被覆組成物の溶媒を除去するために乾燥させることにより配置する。
【0041】
正極、負極、及び正極と負極との間に電解質層を有する電気化学セル(例えば、リチウム電池)も開示し、正極、負極、又は電解質層の内の少なくとも一つが本発明の固体イオン伝導体を含む。
例えば、固体イオン伝導体は、リチウム電池の正極と負極との間に配置し、
図3に概略的に示すリチウム電池において固体電解質として機能する。
図3に示すリチウム電池は、正極集電体302上に正極活性物質層301を有する正極と、電解質層303と、負極集電体305上に負極活性物質層304を有する負極とを含む。
正極をカソードと呼び、負極をアノードと呼ぶこともできる。
【0042】
電解質層は、固体イオン伝導体を含む。
一実施形態では、電解質層は、正極を負極から電気的に分離するセパレータとして機能するように電気的に絶縁されている。
正極集電体にはアルミニウム又はステンレス鋼を、負極集電体には銅、ステンレス鋼、又はチタンを用いることができる。
電解質層は、固体イオン伝導体以外の固体電解質又は固体イオン伝導体に加えて、代替的又は追加的に構成され得る。
固体電解質は、例えば、酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質を含むことができる。
【0043】
酸化物固体電解質としては、例えば、Li1+x+yAlxTi2-xSiyP3-yO12(但し、0<x<2及び0≦y<3)、BaTiO3、Pb(ZraTi1-a)O3(PZT)(0≦a≦1)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZI)(0≦x<1及び0≦y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、HfO2、SrTiO3、SnO2、CeO2、Na2O、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、TiO2、SiO2、Li3PO4、LixTiy(PO4)3(0<x<2、0<y<3)、LixAlyTiz(PO4)3(0<x<2、0<y<1、及び0<z<3)、Li1+x+y(AlaGa1-a)x(TibGe1-b)2-xSiyP3-yO12(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦a≦1、及び0≦b≦1)、LixLayTiO3(0<x<2及び0<y<3)、Li2O、LiOH、Li2CO3、LiAlO2、Li2O-Al2O3-SiO2-P2O5-TiO2-GeO2、又は、Li3+xLa3M2O12(Mは、Te、Nb、Zr、0≦x≦10)が含まれ得る。
Li7La3Zr2O12(LLZO)、又は、Li3+xLa3Zr2-aMeaO12(例えば、Meが、Ga、W、Nb、Ta、Al、0≦x≦10、0≦a<2であるMeドープLLZO)などのリチウムガーネットも言及される。
上述の少なくとも1つを含む組成物を使用する。
【0044】
硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5,Li2S-P2S5-LiX(Xはハロゲン元素)、Li2S-P2S5-Li2O、Li2S-P2S5-Li2O-LiI、Li2S-SiS2、Li2S-SiS2-LiI、Li2S-SiS2-LiBr、Li2S-SiS2-LiCl、Li2S-SiS2-B2S3-LiI、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMeOq、Li2S-SiS2-P2S5-LiI、Li2S-B2S3、Li2S-P2S5-ZmSn、などが挙げられる。
m及びnは、正の数、
Zは、Ge、Zn、及びGa、
Li2S-GeS2、Li2S-SiS2-Li3PO4、Li2S-SiS2-LipMeOq、のいずれかを表します。(ここで、p及びqは正の数であり、MeはP、Si、Ge、B、Al、Ga、又はInの少なくとも1つを表す。)
Li7-xPS6-xClX(0≦x≦2)、
Li7-xPS6-xBrX(0≦x≦2)、
又はLi7-xPS6-xIX(0≦x≦2)。
【0045】
硫化物固体電解質材料の内の少なくとも硫黄(S)、リン(P)、リチウム(Li)を構成元素として含み得る。
例えば、硫化物固体電解質は、Li2S-P2S5を含む材料であり得る。
ここで、硫化物固体電解質材料として、Li2S-P2S5を含む材料を用いる場合、Li2SとP2S5(Li2S:P2S5)のモル比は、例えば50:50~90:10の範囲で選択され得る。
硫化物固体電解質は、例えばLi7-xPS6-xClX(但し、0≦x≦2)、Li7-xPS6-xBrX(但し、0≦x≦2)、Li7-xPS6-xIX(但し、0≦x≦2)、Li6PS5Cl、Li6PS5Br、Li6PS5Iなどのアルギロダイト(argyrodite)型固体電解質を含み得る。
【0046】
固体イオン伝導体からなる電解質層は、電解質層の全体積に対して、無孔率又は気孔率が0%以上25%以下であり得る。
気孔率は、例えば、電解質層の全体積に対して、0%~25%、1%~20%、5%~15%、又は7%~12%である。
電解質層の気孔率は、走査電子顕微鏡によって測定され、その詳細は当業者の技術によって測定され、その詳細は、不適切な実験なしに当業者によって決定することができる。
また、多孔性は、E.P.バレット、L.G.ジョイナー、P.P.ハレンダの「多孔質物質の細孔容積と面積分布の測定.I.窒素等温線からの計算」に記載されている窒素等温線を用いて測定することもできる(J.Am.Chem.Soc.(1951)、73、373~380)。
その詳細は不適切な実験なしに当業者によって決定される。
【0047】
電解質層は、多孔質であり、電解質層の細孔内にイオン性液体、ポリマーイオン性液体、リチウム塩と有機溶媒からなる液体電解質、又はこれらの組み合わせを配置してハイブリッド電解質を提供する。
【0048】
イオン液体(例えば溶融塩)は、
i)アンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピペリジウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、又はトリアゾリウムカチオンを含み得る。
ii)アニオンは、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、CH3SO3
-、CF3CO2
-、Cl-、Br-、I-、SO4
2-、CF3SO3
-、(FSO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-、(CF3SO2)2N-、又はこれらの組み合わせである。
例えば、イオン液体としては、N-メチル-N-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N-ブチル-N-メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチル-イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチル-イミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、又はこれらの組み合わせである。
【0049】
高分子イオン液体は、イオン液体モノマーの重合生成物であり得、高分子化合物であり得る。
ポリマーイオン液体は、
i)アンモニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピペリジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、オキサゾリウムカチオン、ピリダジニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、トリアゾリウムカチオン、又はこれらの組み合わせを含む繰り返し単位を含み得、及び
ii)アニオンは、例えば、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、CH3SO3
-、CF3CO2
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、Cl-、Br-、I-、SO4
2-、CF3SO3
-、(C2F5SO2)2N-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-、NO3
-、Al2CL7
-、(CF3SO2)3C-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、SF5CF2SO3
-、SF5CHFCF2SO3
-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(O(CF3)2C2(CF3)2O)2PO-、又はこれらの組み合わせである。
【0050】
リチウム塩と有機溶媒からなる液体電解質において、リチウム塩は、BF4
-、PF6
-、AsF6
-、SbF6
-、AlCl4
-、HSO4
-、ClO4
-、CH3SO3
-、CF3CO2
-、(CF3SO2)2N-、(FSO2)2N-、Cl-、Br-、I-、SO4
2-、CF3SO3
-、(C2F5SO2)2N-、(C2F5SO2)(CF3SO2)N-、NO3
-、Al2Cl7
-、(CF3SO2)3C-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-,(CF3)4PF2
-,(CF3)5PF-,(CF3)6P-,SF5CF2SO3
-、SF5CHFCF2SO3
-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(O(CF3)2C2(CF3)2O)2PO、又はその組み合わせである。
有機溶剤は、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸メチル、又はこれらの組み合わせからなり得る。
【0051】
電解質層は、セパレータ膜をさらに含み得る。
セパレータフィルムは、電気絶縁性であり、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、又はこれらの組み合わせからなることができる。
例えば、セパレータフィルムは、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータ等の多層セパレータであり得る。
セパレータフィルムの細孔径は、0.01μm~10μm、厚さは、5μm~20μmである。
存在する場合、液体電解質、イオン液体、又はポリマーイオン液体電解質をセパレータ膜の細孔内に配置することができる。
【0052】
一実施形態において、液体電解質又はイオン液体(例えば、溶融塩)電解質を含む他の電解質は、開示された電解質層から除外することができる。
電解質層は、任意の適当な厚さを有することができる。
固体電解質層の厚さは、1~300μm、2~100μm、又は30~60μmであり得る。
【0053】
正極は、リチウム遷移金属酸化物、リチウム遷移金属リン酸塩、又はこれらの組み合わせからなる正極活性物質層を含む。
例えば、正極活性物質は、下記のような化合物であり得る。
LiaM1
1-bM2
bD2(0.90≦a≦1.8、及び0≦b≦0.5)、
LiaE1-bM2
bO2-cDc(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、及び0≦c≦0.05)、
LiaE2-bM2
bO4-cDc(0≦b≦0.5、及び0≦c≦0.05)、
LiaNi1-b-cCobM2
cDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α≦2)、
LiaNi1-b-cCobM2
cO2-αXα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α<2)、
LiaNi1-b-cCobM2
cO2-αX2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α<2)、
LiaNi1-b-cMnbM2
cDα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α≦2)、
LiaNi1-b-cMnbM2
cO2-aXα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α<2)、
LiaNi1-b-cMnbM2
cO2-αX2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、及び0<α<2)、
LiaNibEcGdO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、及び0.001≦d≦0.1)、
LiaNibCocMndGeO2(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、及び0.001≦e≦0.1)、
LiaNiGbO2(0.90≦a≦1.8、及び0.001≦b≦0.1)、
LiaCoGbO2(0.90≦a≦1.8、及び0.001≦b≦0.1)、
LiaMnGbO2(0.90≦a≦1.8、及び0.001≦b≦0.1)、
LiaMn2GbO4(0.90≦a≦1.8、及び0.001≦b≦0.1)、
QO2、QS2、LiQS2、V2O5、LiV2O2、LiRO2、LiNiVO4、
Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2)、
Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2)、又はLiFePO4である。
上記正極活性物質M1は、Ni、Co、又はMn、
M2は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、又は希土類元素、
Dは、O、F、S、又はP、
Eは、Co、又はMn、
Xは、F、S、又はP、
Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、又はV、
Qは、Ti、Mo、又はMn、
Rは、Cr、V、Fe、Sc、又はY、
Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、又はCuである。
【0054】
正極活性物質としては、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1又は2)、LiNi1-xMnxO2x(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5及び0≦y≦0.5)、LiNi1-x-yCoxAlyO2(0≦x≦0.5及び0≦y≦0.5)、LiFePo4、TiS2、FeS2、TiS3、又はFeS3が挙げられる。
例えば、正極活性物質は、NMC811(LiNi0.8Mn0.1Co0.1O2)、NMC622(LiNi0.6Mn0.2Co0.2O2)、NMC532(LiNi0.5Mn0.3Co0.2O2)、又はNCA(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)を含み得る。
【0055】
正極活性物質層は、バインダーをさらに含み得る。
バインダーは、正極活性物質層の構成要素間の接着、及び正極活性物質層の集電体への接着を容易にすることができる。
結合剤としては、ポリアクリル酸(PAA)、ポリフッ化ビニル、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素化ゴム、それらの共重合体、又はそれらの組み合わせを含み得る。
バインダーの量は、正極活性物質の総重量に基づいて、1重量部~10重量部の範囲であり、例えば、2重量部~7重量部の範囲である。
バインダーの量が上記の範囲、例えば、1重量部から10重量部の範囲であれば、集電体に対する電極の接着力は適切に強い。
【0056】
正極活性物質層は、導電剤をさらに含み得る。
任意の適切な導電剤を使用することができる。
導電剤は、炭素、金属、又は酸化物からなり得る。
カーボンは、カーボンブラック、カーボンファイバー、グラファイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、又はこれらの組み合わせで構成される。
カーボンブラックは、アセチレンブラック、ケッチェン(Ketjen)ブラック、スーパーPカーボン、チャンネルブラック、ファーネス(furnace)ブラック、ランプブラック、サーマルブラック、又はこれらの組み合わせであり得る。
【0057】
グラファイトは、天然グラファイトか人工グラファイトであり得る。
金属は、ニッケルのような金属元素を含み、アルミニウム粉末やニッケル粉末のような繊維や粉末の形で構成され得る。
導電剤は、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの酸化物、又はポリエチレンオキシドやポリフェニレン誘導体などの導電性高分子からなり得る。
導電剤の少なくとも1つを含む組成物を使用し得る。
導電剤の量は、正極活性物質の全重量100重量部に対して、例えば、約1重量部から約10重量部まで、例えば、約2重量部から約5重量部までであり得る。
【0058】
正極活性物質層は、さらに固体イオン伝導体を含み得、固体イオン伝導体の他に固体電解質を含み得、固体イオン伝導体の他に固体電解質を含み得る。
固体電解質は、例えば、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質、又はこれらの組み合わせを含み得る。
正極活性物質層は、例えば、アルミニウム箔集電体などの基板の表面に、テープ鋳造(casting)、スラリー鋳造(casting)(スラリーコーティング)、スクリーン印刷などの任意の適切な手段を用いて配置することができる。
テープ鋳造、スラリーコーティング、スクリーン印刷の追加詳細、例えば、適切なバインダーと溶剤は、不適切な実験なしに当業者によって決定することができる。
溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドンを用いることができる。
正極活性物質層は、適当な厚さ、例えば、1~300μm、2~100μm、又は30~60μmの厚さを有し得る。
【0059】
負極は、集電体上の負極活性物質層を含む。
負極活性物質層は、炭素、非変性金属酸化物、リチウム金属、リチウム金属合金、又はこれらの組み合わせからなり得る。
炭素は、天然黒鉛又は人工黒鉛で構成され、それぞれ結晶性又は非晶質である。
アモルファス炭素の例としては、軟質炭素、硬質炭素、メソカーボン、メソフェーズピッチカーボン、焼成コークスが挙げられる。
【0060】
非遷移金属酸化物は、SnOx(0<x≦2)又はSiOx(0<x≦2)を含み得る。
負極用リチウム金属合金は、リチウムと、リチウムと合金化可能な金属、又は半金属(メタロイド)を含み得る。
リチウムと、合金化可能な金属又は半金属の例としては、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Si-Y’合金(ただし、Y’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族から第16族への元素、遷移金属又はSiを除く希土類元素)、あるいは、Sn-Y’合金(但し、Y’はアルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族から第16族への元素、遷移金属又はSnを除く希土類元素)である。
Y’は、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、又はこれらの組み合わせであり得る。
負極の集電体は、例えば、銅又はチタンである。
【0061】
負極活性物質層は、上述のようにバインダーを含み得る。
負極活性物質層は、例えば、銅又はチタン箔の集電体などの基板表面に、例えば、テープ鋳造(casting)、スラリー鋳造(casting)、スクリーン印刷などの適切な手段を用いて配置することができる。
テープ鋳造とスクリーン印刷の追加詳細、例えば適切なバインダーと溶剤は、不適切な実験なしに当業者によって決定される。
溶媒としては、例えばN-メチルピロリドンを用いることができる。
【0062】
負極活性物質層は、さらに固体イオン伝導体を含み、固体イオン伝導体の他に固体電解質を含んでいてもよいし、固体イオン伝導体の他に固体電解質を含んでいてもよい。
固体電解質は、例えば、酸化物固体電解質、硫化物固体電解質、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
負極は、負極中にリチウムが最初に存在しない「無電解」又は「無電解」タイプであり得る。
負極は、最初に集電体と固体電解質、例えば、化学式1の固体イオン伝導体から構成されており、あるいは、集電体上の酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質の少なくとも一方から構成されていてもよい。
【0063】
一実施形態では、固体イオン伝導体、固体電解質、又はその組み合わせは、集電体上に直接存在する。電池を充電することにより、集電体上にリチウムを堆積して負極活性物質層を形成する。
例えば、リチウム金属を堆積するか、集電体上にリチウム金属合金を形成する。
化学式1の固体イオン伝導体は、例えば、スパッタリング又はコーティングにより集電体上に酸化物固体電解質又は硫化物固体電解質の内の少なくとも一つを配置する。
【0064】
リチウム電池は、正極を備え、負極を備え、化学式1に従った化合物を含む固体イオン伝導体を正極と負極の間に配置することにより製造することができる。
例えば、リチウム電池は、化学式1で表される化合物からなる固体イオン伝導体を正極活性物質層にスパッタリングし、その上に負極を配置し、その構造を巻くか、折り畳み、次に、巻くか、折り畳んだ構造を円筒状又は矩形状の電池ケース又はポーチに入れてリチウム電池を提供する。
【0065】
本発明について、以下の例で詳しく説明するが、これらの例で制限されるものではない。
<例:イオン伝導度分析>
化学式1による各種化合物のイオン伝導率(ionic conductivity)は、「Vienna Ab Initio Simulation Package」を用いた「ab-initio molecular dynamics(AIMD)」計算により測定した。
計算の関連パラメータには、400eVの運動エネルギーカットオフを持つプロジェクター増強波電位、「Perdew-Burke-Ernzerhof」一般化勾配(GGA-PPBE)の交換及び相関関数、及び2フェムト秒の時間ステップを持つ200ピコ秒のシミュレーション時間が含まれる。
比較のため、Li5Al4Si2O12Br、Li5Al4Si2O12Cl、Li5Al4Si2O12Iについてもイオン伝導率を測定した。
【0066】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12Brのシミュレーション結果を
図4に示す。
活性化エネルギーは、0.211電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、7.116mS/cmである。
【0067】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12Clのシミュレーション結果を
図5に示す。
活性化エネルギーは、0.448電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、0.017mS/cmである。
【0068】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12Iのシミュレーション結果を
図6に示す。
活性化エネルギーは、0.232電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、4.067mS/cmである。
【0069】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12BH
4のシミュレーション結果を
図7に示す。
活性化エネルギーは、0.220電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、5.664mS/cmである。
【0070】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12SHのシミュレーション結果を
図8に示す。
活性化エネルギーは、0.151電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、27.1mS/cmである。
【0071】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12NH
2のシミュレーション結果を
図9に示す。
活性化エネルギーは、0.334電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、0.218mS/cmである。
【0072】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12AlH
4のシミュレーション結果を
図10に示す。
活性化エネルギーは、0.457電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、1.70x10
-2mS/cmである。
【0073】
比較例としてのLi
5Al
4Si
2O
12BF
4のシミュレーション結果を
図11に示す。
活性化エネルギーは、0.319電子ボルト(eV)であり、300Kにおけるイオン伝導率は、0.291mS/cmである。
【0074】
リチウムイオン伝導率と陰イオンの大きさ(例えば、X
1)との関係を
図12及び表1に示す。
図12と表1から、陰イオン(X
1)の大きさがある程度(例えば330Å
3)になるとイオン伝導率が増加することが分かる。
イオン伝導率は、陰イオンの大きさが増え続けるにつれて減少することが分かる。
【0075】
【0076】
これらの結果は、化学式1の化合物がリチウムイオン伝導性を向上させることを示している。
特に驚くべき結果は、ハロゲン化物をチオールで少なくとも部分的に置換することにより、25mS/cm以上の高温イオン伝導率を達成できることがわかった。
【0077】
上記化合物は、以下の方法により製造することができる。
<例1:Li5Al4Si2O12BH4>
LiOH、Al2O3、SiO2、及びLiBH4の化学量を組み合わせて混合物を得る。
混合物を水に溶かし、120℃で24時間熱処理し、水熱合成オートクレーブ反応器でLi5Al4Si2O12BH4を得る。
生成物は、CuKα放射線を利用してX線粉末回折(XRD)で分析し、XRD分析の結果、Li5Al4Si2O12BH4が製造されたことが分かった。
【0078】
図13に、Li
5Al
4Si
2O
12BH
4の模擬結晶構造を示す。
ここで、O
2-(1301)、Li
+(1302)、Si
4+(1303)、Al
3+(1304)、BH
4-(1305)の配列が見られる。
【0079】
図14に、Li
5Al
4Si
2O
12BH
4のシミュレーションXRDスペクトルを示す。
参考のために
図14にLi
4Al
3Si
3O
12ClのシミュレーションXRDスペクトルも示す。
【0080】
<例2:Li
5Al
4Si
2O
12OH>
LiOH、Al
2O
3、及びSiO
2の化学量を組み合わせて混合物を得る。
混合物を水に溶かし、石英管反応器で2.45GHzマイクロ波を利用して120℃で30分間熱処理し、Li
5Al
4Si
2O
12OHを得る。
生成物は、CuKα放射線を用いてX線粉末回折(XRD)により分析し、XRD分析により、Li
5Al
4Si
2O
12OHが製造されたことが分かった。
また、Li
5Al
4Si
2O
12OHのシミュレーションXRDスペクトルを
図14に示す。
【0081】
ここで使用される「酸化数」は、異なる元素の原子に対するすべての結合が100%イオン性であり、共有結合成分がない場合に原子が持つ仮定電荷を説明するために使用される。
「グループ」とは、国際純正応用化学連合(「IUPAC」)グループ1-18グループ分類体系による元素周期律表のグループをいう。
【0082】
尚、本発明は、上述の実施形態に限られるものではない。本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更実施することが可能である。
【符号の説明】
【0083】
101 正極集電体
102 正極活性物質層
103 保護層
201 負極
202 集電体
203 保護層
301 正極活性物質層
302 正極集電体
303 電解質層
304 負極活性物質層
305 負極集電体