(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126625
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】アルカリ洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
C11D 3/04 20060101AFI20220823BHJP
C11D 3/34 20060101ALI20220823BHJP
C11D 3/43 20060101ALI20220823BHJP
C11D 3/20 20060101ALI20220823BHJP
C11D 1/68 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C11D3/04
C11D3/34
C11D3/43
C11D3/20
C11D1/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022024159
(22)【出願日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2021024220
(32)【優先日】2021-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 良
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AB19
4H003AB31
4H003AC05
4H003AC13
4H003BA12
4H003DA05
4H003DA12
4H003DA17
4H003DB02
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB04
4H003EB05
4H003EB06
4H003EB22
4H003EB36
4H003ED02
4H003ED28
4H003ED29
4H003FA04
(57)【要約】
【課題】本発明は、ベタベタした油汚れや、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対して高い洗浄効果を有し、かつ貯蔵安定性に優れる洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、所定のベンゼンスルホン酸又はその塩、陰イオン界面活性剤、所定の非イオン性界面活性剤、ならびにグリコールエーテル系溶剤を有効成分として含んでなる液体洗浄剤組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(a)~(f)を含有するアルカリ洗浄剤組成物:
(a)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、
(b)炭素数1~3のアルキル基が1~3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩から選択される1種以上、
(c)陰イオン界面活性剤、
(d)下記一般式(1)、(2)で表される化合物から選ばれる非イオン性界面活性剤
R1-O-(G1)n・・・(1)
(式中、R1は炭素数6~16のアルキル基を示し、G1は炭素数5~6の糖残基を示し、nは平均縮合度1~3の数を示す。)
R2a-CO-NR2b-(G2)n・・・(2)
(式中、式(2)においてR2aは炭素数7~17のアルキル基、又はアルケニル基を示し、R2bは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を示し、G2は炭素数5~6の糖残基を示し、nは平均縮合度1~3の数を示す。)、
(e)グリコールエーテル系溶剤を1~15質量%、
(f)水。
【請求項2】
前記(b)に記載のベンゼンスルホン酸又はその塩が、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びそれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記成分(a)と(c)の合計量が2~35質量%であり、前記成分(b)と(d)の合計量が1.0~15質量%であり、かつ{(a)+(c)}/{(b)+(d)}の質量比が1~20である、請求項1又は2に記載のアルカリ洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄性能、及び貯蔵安定性に優れるアルカリ洗浄剤組成物に関するものである。特に、本発明は硬表面に付着した変性し、こびり付いた油汚れや焦げ付き汚れ、ならびにベタベタした油汚れに対して優れた洗浄性能を有する液体アルカリ洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食用油等を利用して調理を行う台所や厨房、床や調理加工器具等の硬表面には、ベタベタした油汚れや、加熱され酸化により変性して粘性が上昇した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れが付着する。
【0003】
従来、このような油汚れに対しては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ成分と、各種界面活性剤、ならびに溶剤の併用による洗浄が有効であることが知られている(特許文献1-3)。
【0004】
一方、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対する洗浄力を高めるために、洗浄剤組成物に多量のアルカリ成分や溶剤を含めると、当該組成物の貯蔵安定性が損なわれる場合や、高いアルカリ成分濃度によりベタベタした油汚れの膨潤を生じ洗浄力が著しく低下する場合があった。また、ベタベタした油汚れに対する洗浄力を高めるために、洗浄剤組成物に多量の各種界面活性剤や溶剤を含めると、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対する洗浄力が低下する場合があった。
【0005】
このような課題に対して、特許文献4では、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ成分に加えて、さらにアミンオキサイド及びアルキルポリグルコシドを配合することによって、焦付き汚れと油汚れの双方に洗浄効果があり、かつ安定性に優れた液体洗浄剤組成物が得られることが開示されている。
【0006】
しかしながら、当該分野においては依然として、ベタベタした油汚れや、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対して高い洗浄効果を有し、かつ貯蔵安定性に優れる洗浄剤組成物の開発・提供が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第1876313号
【特許文献2】特開平08-311487号
【特許文献3】特許第4082576号
【特許文献4】特許第5579761号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、ベタベタした油汚れや、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対して高い洗浄効果を有し、かつ貯蔵安定性に優れる洗浄剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をおこなった結果、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、所定のベンゼンスルホン酸又はその塩、陰イオン界面活性剤、所定の非イオン性界面活性剤、ならびにグリコールエーテル系溶剤を有効成分として含んでなる液体アルカリ洗浄剤組成物が、ベタベタした油汚れや、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対して高い洗浄効果を有すると共に、優れた貯蔵安定性を有することを見出した。
【0010】
本発明はこれらの知見に基づくものであり、以下の発明を包含する。
[1] 下記の成分(a)~(f)を含有するアルカリ洗浄剤組成物:
(a)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム、
(b)炭素数1~3のアルキル基が1~3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩から選択される1種以上、
(c)陰イオン界面活性剤、
(d)下記一般式(1)、(2)で表される化合物から選ばれる非イオン性界面活性剤
R1-O-(G1)n・・・(1)
(式中、R1は炭素数6~16のアルキル基を示し、G1は炭素数5~6の糖残基を示し、nは平均縮合度1~3の数を示す。)
R2a-CO-NR2b-(G2)n・・・(2)
(式中、式(2)においてR2aは炭素数7~17のアルキル基、又はアルケニル基を示し、R2bは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を示し、G2は炭素数5~6の糖残基を示し、nは平均縮合度1~3の数を示す。)、
(e)グリコールエーテル系溶剤を1~15質量%、
(f)水。
[2] 前記(b)に記載のベンゼンスルホン酸又はその塩が、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、及びそれらのアルカリ金属塩からなる群から選択される1種以上である、[1]のアルカリ洗浄剤組成物。
[3] 前記成分(a)と(c)の合計量が2~35質量%であり、前記成分(b)と(d)の合計量が1.0~15質量%であり、かつ{(a)+(c)}/{(b)+(d)}の質量比が1~20である、[1]又は[2]のアルカリ洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベタベタした油汚れや、変性した油のこびり付き汚れや焦げ付き汚れに対して高い洗浄効果を有し、かつ貯蔵安定性に優れる洗浄剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明はアルカリ洗浄剤組成物に関するものであり、以下の(a)~(f)の成分を含有することを特徴とする。
【0013】
(a)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム
本発明で用いられる(a)水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウム(以下、「成分(a)」と記載する場合がある)は、いずれかを単独で用いてもよいし、両方を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
成分(a)は、本発明の組成物中に0.1~15質量%、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~15質量%、さらに好ましくは2~10質量%、特に好ましくは5~10質量%(例えば、6~10質量%、7~10質量%等)の割合で配合することができる。0.1質量%未満では、様々な油汚れに対する洗浄性能や貯蔵安定性が十分でない場合があり、一方、15質量%を超えると、他の成分とのバランスがくずれ所望の効果が得られない場合がある。特に好ましくは、成分(a)は、成分(c)との下記合計量、ならびに成分(b)、(c)、(d)との下記質量比の関係を満たす量にて配合する。なお、本明細書中、各成分の量の記載は、本発明の組成物の量を100質量%とする、質量%の量にて示す。
【0015】
(b)ベンゼンスルホン酸又はその塩
本発明で用いられる(b)ベンゼンスルホン酸又はその塩(以下、「成分(b)」と記載する場合がある)としては、炭素数1~3のアルキル基が1~3個置換したベンゼンスルホン酸又はその塩が挙げられる。このようなベンゼンスルホン酸としては、クメンスルホン酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸が挙げられる。「塩」としては、特に限定されないが、金属塩、アミン塩、アルカノールアミン塩、アンモニウム塩が挙げられ、好ましくはナトリウム等のアルカリ金属塩である。成分(b)は単独の成分であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。特に、他の成分とのバランス、貯蔵安定性、洗浄性能の点から、p-トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムが好ましい。
【0016】
成分(b)は、本発明の組成物中に0.01~5質量%、好ましくは0.05~2質量%、より好ましくは0.1~2質量%、特に好ましくは0.5~2質量%の割合で配合することができる。0.01質量%未満では、貯蔵安定性が十分でない場合があり、一方、5質量%を超えると、他の成分とのバランスがくずれ所望の効果が得られない場合がある。特に好ましくは、成分(b)は、成分(a)との下記合計量、ならびに成分(a)、(b)、(d)との下記質量比の関係を満たす量にて配合する。
【0017】
(c)陰イオン界面活性剤
本発明で用いられる(c)陰イオン界面活性剤(以下、「成分(c)」と記載する場合がある)としては、液体洗浄剤組成物において一般的に用いられる陰イオン界面活性剤を用いることができ、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、脂肪酸塩、ならびにそれらのオキシエチレン(EO)付加物から誘導されたもの(例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノアルキル、ジアルキル、セスキアルキルリン酸塩等)が挙げられるが、これらに限定はされない。「塩」としては、特に限定されないが、ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属塩や、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩が好ましい。成分(c)は単独の成分であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。特に、他の成分とのバランス、貯蔵安定性、洗浄性能の点から、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩が好ましく、特に、アルキルベンゼンスルホン酸塩とアルキルエーテル硫酸塩との組合せが好ましい。
【0018】
成分(c)は、本発明の組成物中に0.5~20質量%、好ましくは、1~15質量%、より好ましくは1.5~15質量%、特に好ましくは3.5~15質量%の割合で配合することができる。0.5質量%未満では、様々な油汚れに対する洗浄性能や貯蔵安定性が十分でない場合があり、一方、20質量%を超えると、他の成分とのバランスがくずれ所望の効果が得られない場合がある。特に好ましくは、成分(c)は、成分(a)との下記合計量、ならびに成分(a)、(b)、(d)との下記質量比の関係を満たす量にて配合する。
【0019】
(d)非イオン性界面活性剤
本発明で用いられる(d)非イオン性界面活性剤(以下、「成分(d)」と記載する場合がある)としては、一般式(1):R1-O-(G1)n[式中、「R1」は炭素数6~16のアルキル基を示し、「G1」は炭素数5~6の糖残基を示し、「n」は平均縮合度1~3の数を示し、「O」は酸素原子、「-」は共有結合をそれぞれ示す。]で表される非イオン界面活性剤化合物が挙げられる。上記一般式(1)で表される成分(d)の例としては、上記所定の構成を有するアルキルグルコシドが挙げられ、例えば、ヘキシルポリグルコシド、ヘプチルポリグルコシド、イソヘプチルポリグルコシド、オクチルポリグルコシド、2-エチルヘキシルポリグルコシド、ノニルポリグルコシド、イソノニルポリグルコシド、デシルポリグルコシド、ドデシルポリグルコシド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0020】
また、本発明で用いられる成分(d)としては、一般式(2):R2a-CO-NR2b-(G2)n[式中、「R2a」は炭素数7~17のアルキル基、又はアルケニル基を示し、R2bは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のヒドロキシアルキル基を示す。「G2」は炭素数5~6の糖残基を示し、「n」は平均縮合度1~3の数を示し、「C」は炭素原子、「O」は酸素原子、「N」は窒素原子、「-」は共有結合をそれぞれ示す。]で表される非イオン界面活性剤化合物が挙げられる。上記一般式(2)で表される成分(d)の例としては、上記所定の構成を有するアルキルグルカミドが挙げられ、例えば、デシルグルカミド、ドデシルグルカミド、ミリスチルグルカミド等が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0021】
本発明で用いられる成分(d)は、上記化合物より選択される、単独の成分であってもよいし、あるいは二種以上の成分の組み合わせであってもよい。
【0022】
成分(d)は、本発明の組成物中に0.5~10質量%、好ましくは、1~10質量%、より好ましくは1~5質量%(例えば、1.5~5質量%、2~5質量%)、特に好ましくは2.5~5質量%の割合で配合することができる。0.5質量%未満では、様々な油汚れに対する洗浄性能や貯蔵安定性が十分でない場合があり、一方、10質量%を超えると、十分な洗浄性能が得られない場合がある。特に好ましくは、成分(d)は、成分(b)との下記合計量、ならびに成分(a)、(b)、(c)との下記質量比の関係を満たす量にて配合する。
【0023】
特に好ましくは、本発明のアルカリ洗浄剤組成物において前記成分の配合量は、成分(a)と成分(c)の合計量が、2~35質量%、好ましくは2~30質量%、より好ましくは2.5~25質量%(例えば、5~25質量%、8~25質量%、10~25質量%)、特に好ましくは13.5~25質量%であり、成分(b)と(d)の合計量が、1.0~15質量%、好ましくは1.0~10質量%、より好ましくは1.0~7質量%(例えば、2~7質量%)、特に好ましくは3~7質量%であり、かつ{(a)+(c)}/{(b)+(d)}の質量比が1~20、好ましくは1~15、より好ましくは1~10(例えば、2~10質量%、3~10質量%)、さらに好ましくは3.5~6、特に好ましくは3.5~4.5となる範囲より選択することができる。本発明の組成物における、成分(a)、(b)、(c)、(d)の配合量が、上記範囲にあることによって、様々な油汚れに対して高い洗浄効果を有し、かつ貯蔵安定性に優れるアルカリ洗浄剤組成物を得ることができる。
【0024】
(e)グリコールエーテル系溶剤
本発明で用いられるグリコールエーテル系溶剤としては、液体洗浄剤組成物において一般的に用いられるものを用いることができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール等が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は単独の成分であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。特に、他の成分とのバランス、貯蔵安定性、洗浄性能の点から、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0025】
グリコールエーテル系溶剤は、本発明の組成物中に1~15質量%、好ましくは、2~10質量%、より好ましくは3~10質量%、特に好ましくは5~10質量%の割合で配合することができる。1質量%未満では、様々な油汚れに対する洗浄性能や貯蔵安定性が十分でない場合があり、一方、15質量%を超えると、他の成分とのバランスがくずれ所望の効果が得られない場合がある。
【0026】
(f)水
本発明で用いられる「水」としては、水道水、軟水、硬水、純水、蒸留水、イオン交換水などが挙げられる。これらは、単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、経済性、貯蔵安定性の点から、水道水、イオン交換水が好ましく用いられる。
【0027】
なお、本発明の組成物中の「水」は、本発明の組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、外から加えられる水との総和であり、任意成分も含めて組成物全体が100質量%となるようにバランスとして配合される。
【0028】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は上記成分(a)~(f)に加えて、所望の性能に影響を与えない範囲において、金属イオン封鎖剤、pH調整剤(クエン酸等の有機酸)、色素、香料、染料、殺菌剤、酵素、界面活性剤、洗浄ビルダー、粘度調製剤(減粘剤、増粘剤)、金属腐食抑制剤、酸化防止剤などの任意成分を適宜、配合できる。
【0029】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、各成分が液体である場合には撹拌・混合することにより、また固形成分を含む場合には水にまず溶解後、他の液体成分を添加し撹拌・混合することにより一般的に製造することができ、製造手順は特に制限されず、組成物の組成に応じて、各成分の添加順序、溶解順序、ならびに(必要に応じて)加温/冷却の調整を適宜選択・調整することができる。
【0030】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、被洗浄物を洗浄できる限り、例えば、2倍~200倍、3倍~150倍、5倍~100倍等に適宜希釈して用いてもよい。希釈は水を用いて行うことができる。
【0031】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物を用いた被洗浄物の洗浄は、以下の方法により行うことができる。
(1)本発明のアルカリ洗浄剤組成物はワイプ、不織布、スポンジ、モップ、ブラシ等に含浸させて洗浄材とすることができ、これらを被洗浄物に対してふき取り作業、もしくは擦り取り作業を行うことにより、洗浄を行うことができる。被洗浄物としては、変性した、及び/又はこびり付いた油汚れ、焦げ付き汚れ、ならびに、ベタベタした油汚れからなる群から選択される一以上の汚れが付着した硬表面が挙げられ、例えば、食品工場、喫茶店、レストラン、ホテル、居酒屋、学校(学校給食)、病院、介護施設、セントラルキッチン、スーパーのバックヤード等における調理台、調理加工器具、食器、床、壁、タイル、ガラス、換気扇壁等の硬表面を有するもの等があげられる。また、本発明のアルカリ洗浄剤組成物は上記以外の汚れが付着する硬表面に対しても使用することができ、当該汚れを洗浄するために用いることができる。
【0032】
(2)本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、上記のほか、適宜の方法により使用することができる。例えばスプレー等により被洗浄物の表面に噴霧し、直ちに、あるいは所定時間後、概ね1~10分間程度放置し、適宜、水ですすいだ後に、乾燥させる。具体的には、本発明のアルカリ洗浄剤組成物を内填した専用のディスペンサーを用いて、使用時毎に、約6~12mL/m2の割合で被洗浄物の表面に噴霧することにより行うことができる。
被洗浄物は、上記のもの等があげられる。
【0033】
本発明のアルカリ洗浄剤組成物は、プラスチック容器、ポンプ付き容器、パウチ、チューブ等に充填されて提供される。また、1回毎に使用される相当量で、個包装し、携帯性をもたせて提供することもできる。
【実施例0034】
以下、本発明のアルカリ洗浄剤組成物について、実施例と比較例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
下記表1-1、表1-2に示す組成にて、実施例1~5及び比較例1~5のアルカリ洗浄剤組成物を調製し、その洗浄力、及び貯蔵安定性について下記の試験方法及び評価基準にて評価した。なお、表中、各成分の量は、有効純分100%に換算し、得られる組成物の量を100質量%とする、質量%の量にて示したものである。
【0036】
〔洗浄力〕
<こびり付いた油汚れ>
(試験方法)
(1)ステンレス板(26mm×76mm)に牛脂を30%含有した焼肉のたれを均一に塗り広げ、180℃で加熱した後、室温まで冷ましたものをテストピースとした。
(2)テストピースを約2mLのアルカリ洗浄剤組成物に10分間浸漬し、その後取り出し、水で15秒間濯いだ後乾燥させた。
(3)乾燥後、洗浄前後の目視による汚れの残存度から洗浄性を判定した。
(評価基準)
目視による汚れの残存度から洗浄性を、以下のとおり判定した。
◎:目視による汚れの残存度が30%未満
〇:目視による汚れの残存度が30%以上50%未満
×:目視による汚れの残存度が50%以上
【0037】
<ベトベトした油汚れ>
(試験方法)
(1)ステンレス板(26mm×76mm)に大豆油を均一に塗り広げ、室温で静置し乾燥したものをテストピースとした。
(2)テストピースを約2mLのアルカリ洗浄剤組成物に10分間浸漬し、その後取り出し、水で15秒間濯いだ後乾燥させた。
(3)乾燥後、洗浄前後の目視による汚れの残存度から洗浄性を判定した。
(評価基準)
目視による汚れの残存度から洗浄性を、以下のとおり判定した。
◎:目視による汚れの残存度が25%未満
〇:目視による汚れの残存度が25%以上50%未満
×:目視による汚れの残存度が50%以上
【0038】
<貯蔵安定性>
調製されたアルカリ洗浄剤組成物を50℃で保管し、分離、沈殿、ゲル化等の状態変化の有無を目視で確認した。
(評価基準)
◎:2週間以上にわたって、分離、沈殿、ゲル化等の状態変化を生じなかった
○:1週間超、2週間未満の間、分離、沈殿、ゲル化等の状態変化を生じなかった
×:1週間以内に、分離、沈殿、ゲル化等の状態変化を生じた
【0039】
〔成分〕
下記表1-1、表1-2及び表2-1、表2-2において用いた成分は、下記のとおりである。
〔(a)成分〕
・水酸化ナトリウム
・水酸化カリウム
【0040】
〔(b)成分〕
・キシレンスルホン酸ナトリウム
・クメンスルホン酸ナトリウム
【0041】
〔(c)成分〕
・アルキルベンゼンスルホン酸塩:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
・アルキルエーテル硫酸塩:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(エチレンオキサイド3モル付加物)
【0042】
〔(d)成分〕
・アルキルグルコシド:C8~10アルキルポリグルコシド
・アルキルグルカミド:C12~14アルキルグルカミド
【0043】
〔(e)成分〕
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・トリエチレングリコールジメチルエーテル
・グリセリン
・プロピレングリコール
【0044】
〔(f)成分〕
・水:イオン交換水
【0045】
【0046】
【0047】
上記の結果から、実施例1~5は変性した油のこびり付いた油汚れ、及びベトベトした油汚れのいずれに対しても優れた洗浄力を有し、また、優れた貯蔵安定性を有することが確認された。
【0048】
一方、比較例1は、実施例1を4倍希釈場合の例であり、成分(b)と(d)の合計量が0.7質量%と低く、実施例とは異なり、変性した油のこびり付いた油汚れに対して十分な洗浄力が得られないことが確認された。
【0049】
比較例2は、成分(b)のベンゼンスルホン酸塩を含有しない場合の例であり、実施例とは異なり、十分な貯蔵安定性が得られないことが確認された。
【0050】
比較例3は、成分(c)の陰イオン界面活性剤を含有しない場合の例であり、実施例とは異なり、いずれの油汚れに対しても十分な洗浄力が得られず、また十分な貯蔵安定性も得られないことが確認された。
【0051】
比較例4は、成分(d)の非イオン性界面活性剤を含有しない場合の例であり、成分(b)と(d)の合計量が0.5質量%と低く、また{(a)+(c)}/{(b)+(d)}の質量比が21.8と高く、実施例とは異なり、変性した油のこびり付いた油汚れに対して十分な洗浄力が得られず、また十分な貯蔵安定性も得られないことが確認された。
【0052】
比較例5は、成分(e)のグリコールエーテル系溶剤を含有しない場合の例であり、実施例とは異なり、変性した油のこびり付いた油汚れに対して十分な洗浄力が得られず、また十分な貯蔵安定性も得られないことが確認された。
【0053】
下記表2-1、表2-2に示す組成にて実施例6~11、ならびに下記表3-1、表3-2に示す組成にて比較例6~12のアルカリ洗浄剤組成物を調製し、その洗浄力、及び貯蔵安定性について、上記の試験方法及び評価基準にて評価した。なお、表中、各成分の量は、有効純分100%に換算し、得られる組成物の量を100質量%とする、質量%の量にて示したものである。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
上記の結果から、実施例6~11は変性した油のこびり付いた油汚れ、及びベトベトした油汚れのいずれに対しても優れた洗浄力を有し、また、優れた貯蔵安定性を有することが確認された。
【0059】
一方、比較例6は、成分(a)の水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムを含有しない場合の例であり、実施例とは異なり、変性した油のこびり付いた油汚れに対して十分な洗浄力が得られないことが確認された。
【0060】
比較例7は、成分(a)の水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムの量が30質量%と高く、実施例とは異なり、十分な貯蔵安定性が得られないことが確認された。
【0061】
比較例8は、{(a)+(c)}/{(b)+(d)}の質量比が0.8と低く、実施例とは異なり、変性した油のこびり付いた油汚れに対して十分な洗浄力が得られないことが確認された。
【0062】
比較例9は、成分(a)と(c)の合計量が1.5質量%と低く、実施例とは異なり、いずれの油汚れに対しても十分な洗浄力が得られないことが確認された。
【0063】
比較例10は、成分(c)の陰イオン界面活性剤の量が32質量%と高く、また成分(a)と(c)の合計量が39質量%と高く、実施例とは異なり、十分な貯蔵安定性が得られないことが確認された。
【0064】
比較例11は、成分(e)のグリコールエーテル系溶剤を含有しない場合(グリセリンを使用した)の例であり、実施例とは異なり、十分な貯蔵安定性が得られないことが確認された。
【0065】
比較例12は、成分(e)のグリコールエーテル系溶剤を含有しない場合(プロピレングリコールを使用した)の例であり、実施例とは異なり、十分な貯蔵安定性が得られないことが確認された。
【0066】
以上の結果より、(a)~(e)成分の組み合わせを有効成分として含むアルカリ洗浄剤組成物は、変性した油のこびり付いた油汚れ、及びベトベトした油汚れのいずれに対する洗浄力、及び貯蔵安定性のいずれの項目においても、優れた特性を示すことが確認された。