(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126670
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】鋼の塑性応答を改変することにより、鋼の摩耗を減らし、かつモーターオイル中のZDDPを除くためのモーターオイルブレンド及び方法
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20220823BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20220823BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20220823BHJP
C10M 159/24 20060101ALI20220823BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20220823BHJP
C10M 147/02 20060101ALI20220823BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20220823BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220823BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M101/02
C10M107/02
C10M159/24
C10M135/10
C10M147/02
C10N10:04
C10N30:06
C10N40:25
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022089631
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2018235512の分割
【原出願日】2016-01-28
(31)【優先権主張番号】62/287,942
(32)【優先日】2016-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/699,924
(32)【優先日】2015-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/109,172
(32)【優先日】2015-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510171472
【氏名又は名称】ベストライン・インターナショナル・リサーチ,インコーポレーテッド
(71)【出願人】
【識別番号】510171483
【氏名又は名称】ロナルド・ジェイ・スローン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ジェイ・スローン
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA07A
4H104BG06C
4H104CD02C
4H104DA02A
4H104DB07C
4H104FA02
4H104LA03
4H104PA41
(57)【要約】 (修正有)
【課題】エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンド及び関連する方法を提供する。
【解決手段】ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、またジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイル;アルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤;を含み、ZDDPは、モーターオイルの化学成分から省かれ;また、ZDTPは、モーターオイルの化学成分から省かれている、モーターオイルブレンド、及び関連する方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン部品を適切に潤滑し、且つエンジン部品の塑性応答を有利に改変することによってエンジンの摩耗を減じるための、エンジン内で使用できる、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドであって、前記モーターオイルブレンドは環境に有害なジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つ環境に有害なジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、そして
モーターオイル、
前記モーターオイルと組み合わせた、アルファ-オレフィンと水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油とを含むモーターオイル添加剤
を含み、
ZDDPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれ、
ZDTPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれ、
ZDDPが、前記モーターオイル添加剤の化学成分から省かれ、且つ
ZDTPが、前記モーターオイル添加剤の化学成分から省かれており、前記モーターオイルブレンドはZDDPもZDTPも含まれていないが、ZDDPまたはZDTPを含む組成物に匹敵する、トライボロジーで測定可能な耐摩耗性能を提供する、
モーターオイルブレンド。
【請求項2】
85体積%から95体積%の前記モーターオイル、及び
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤
をさらに含む、請求項1に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項3】
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、請求項1に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項4】
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、請求項3に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項5】
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項1に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項6】
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項5に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項7】
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、請求項1に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項8】
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、請求項1に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項9】
エンジン部品を適切に潤滑し、且つエンジン部品の塑性応答を有利に改変することによってエンジンの摩耗を減じるための、エンジン内で使用できる、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドを製造する方法であって、前記モーターオイルブレンドは、環境に有害なジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つ環境に有害なジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、前記方法は、
モーターオイルを準備すること、
前記モーターオイルの化学成分からZDDPを省くこと、
前記モーターオイルの化学成分からZDTPを省くこと、
アルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基
油を含むモーターオイル添加剤を、前記モーターオイルと組み合わせて、前記モーターオイルブレンドを生成すること、
前記モーターオイル添加剤の化学成分からZDDPを省くこと、並びに
前記モーターオイル添加剤の化学成分からZDTPを省くこと
を含み、前記モーターオイルブレンドはZDDPもZDTPも含まれていないが、ZDDPまたはZDTPを含む組成物に匹敵する、トライボロジーで測定可能な耐摩耗性能を提供する、
方法。
【請求項10】
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、及び
前記第1及び第2のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、
前記第1及び第2のブレンドを、さらなる低芳香族脂肪族溶媒とブレンドして、第3のブレンドを生成すること、並びに
前記第1、第2及び第3のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を用いずに、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を用いずに、エンジン及びエンジン部品を潤滑するための方法であって、
モーターオイルをエンジン内に導入すること、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDDPが省かれ、且つ、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDTPが省かれている、及び
重合したアルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤を前記モーターオイルと組み合わせてエンジン内に導入すること、前記モーターオイル添加剤ではZDDPがその化学成分から省かれ、且つZDTPがその化学成分から省かれている、を含み、
前記重合したアルファ-オレフィンと前記水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油基油の組合せが、前記エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変し、
前記モーターオイルブレンドはZDDPもZDTPも含まれていないが、ZDDPまたはZDTPを含む組成物に匹敵するトライボロジーで測定可能な耐摩耗性能を提供し、且つ
前記ZDDP及びZDTPを省くことの結果として、前記モーターオイルブレンドは環境に有害なZDDPまたはZDTPを環境に放出しない
方法。
【請求項21】
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤、及び85体積%から95体積%の前記モーターオイルをエンジン内に導入するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、請求項20に記載のモーターオイルブレンド。
【請求項27】
モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、請求項20に記載のモーターオイルブレンド。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年4月29日に出願された係属中の米国特許出願第14/699,924号の優先権を主張し、さらに、この出願は、2015年1月29に出願された係属中の米国特許仮出願第62/109,172号の利益を主張する。本出願は、また、2016年1月28日に出願された係属中の米国特許仮出願第62/287,942号の利益を主張する。前述の出願は、それらの全体が、参照によってここに組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明の分野は、モーターオイルにおける摩耗防止成分としてのジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)の必要性をなくすとともに、鋼間摩耗を実質的に減らすための最新技術に関する。本発明の組成物は、鋼の塑性応答を改変し、同時に、摩擦のために摩耗している表面の化学反応性に好ましい影響を与えることが示された。詳細には、米国特許仮出願第62/109,172号において詳しく述べられているトライボロジー試験に基づいた、エンジンディスクの摩耗痕の分光分析により、オイル中のZDDPに由来し得る、P、S、Mn、Znのような化学元素が検出されなかったことが明らかとなった。これは、この組成物によりZDDPの反応が妨げられ、摩耗の低減にZDDPが不要になることを示唆する。
【背景技術】
【0003】
これは、今日、いくつかの州及び国の中に、モーターオイル中のZDDPの必要性をなくすか、又は実質的に減らすための動きがあるという理由で、重要である。米国における環境保護主義者は、州と連邦政府の両方の当局に、このような禁止令を制定するように働きかけている。残念ながら、政府は、ZDDP自体の必要性をなくすと同時に、ZDDPと同じか又はより良好な摩耗防止性能の結果を有し得る、費用効率の高い代替が入手可能になるまでは、このような禁止令を出し、施行することに乗り気でない。
【0004】
実際には、現在使用されているモーターオイルへ一般的に添加されるチオリン酸亜鉛には2つの種類:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(これが、本来のZDDPである)、及び/又はジチオリン酸亜鉛(これは、多くの場合ZDTPと略される)がある。特に断らなければ、頭字語のZDDPが本開示において使用される場合、ZDDPは、ジアルキル基を含んでいてもいなくてもよいこれらのどちらも指すために使用されている。詳細には、本発明の組成物は、本来のZDDP、又はZDTPのいずれもが、これ以上モーターオイルに使用される必要性をなくす。
【0005】
自動車産業は、初期には、ずっと単純であった。エンジンベアリングは、一般にバビットと呼ばれた、スズ/銅/アンチモンの軟質合金で製造された。この合金は、化学的に比較的不活性であり、少量の異物微粒子材料を吸収する能力を有する。しかし、エンジンの馬力が増加するにつれ、バビット合金表面は、増加した荷重をこれらの表面で支えるには不適切であることが分かった。
【0006】
こうして、より堅いベアリングの必要が生じ、カドミウム/銀、カドミウム/ニッケル、及び銅/鉛の構成を有する新しい種類のベアリングが開発された。このようなベアリングは、はるかに丈夫であったが、バビットのように化学的に不活性ではなく、オイルの酸化によって生じる酸によって攻撃され得た。これらの新しいベアリングは、ベアリング材料内に、炭素、グリット及び摩耗屑などの異物材料を吸収できず、結果として、オイル濾過の改善が発達し、早すぎる摩耗を減らすために自動車に使用された。
【0007】
さらに、これらの新しいベアリングを保護するために、ベアリング腐食防止剤、摩耗防止剤及び酸抑制剤化合物が開発された。腐食性と機械的摩耗の両方に対してベアリングを保護する必要があったが、これらの化合物の多くは、両機能を果たした。硫化マッコウ鯨油、有機リン酸塩、ジチオ炭酸塩及びジチオリン酸塩などの化合物が、早すぎる摩耗を減らすために試みられた。1941年に、ルーブリゾール(Lubrizol)社は、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(これらは、依然として最も一般的に使用される形態のZDDPである)を開発し、これらの販売を開始した。
【0008】
最初、ZDDPは、ベアリング不動態化剤(金属表面の化学反応性を下げるために、金属を処理又はコーティングするものと定義される)として、0.3体積%未満の低濃度でモーターオイルに添加された。さらに、ZDDPは、際立って効果的な摩耗防止剤;カムシャフト及びバルブリフター又はタペットなどの、重荷重の鋼間摺動機構のための真の極圧(EP)添加剤であることが見出された。これらの年月の間、環境へのZDDPの影響についての何らかの懸念は、あったとしても、極わずかであった。
【0009】
何年間も、これらのZDDP添加剤は、当初の清浄剤を含まないガソリン及びディーゼルモーターオイルで始まって、現在までずっと、十分な摩耗防止の役割を果たしてきた。半世紀よりも前のディーゼルエンジンは、通常低速度で運転され、よりがっしりと組み立てられていたが、同じ摩耗の問題を示さなかった。しかし、ガソリンエンジンでは、バルブトレインは、より高いエンジン速度のために、より激しくストレスを受け、これらの添加剤は、摩耗を減らすのに重要な役割を果たしてきており、また果たし続けている。
【0010】
現在及び以前のモーターオイルは、ベアリング表面の間、及び鋼間の接触による早すぎる摩耗に対して保護する手段として、ZDDPの使用に依存している。特に環境へのZDDPの悪影響を考えると、ZDDPの必要性をなくすことができ、同時に、同じレベルの保護、それどころか一層良好な保護さえもエンジン部品にもたらす、代わりとなる添加剤を利用可能にすることは望ましいであろう。
【0011】
Ronald J. Sloanに発行され、BestLine International Research Inc.(BestLine)(これらは、本出願の発明者、及び譲受人でもある)に譲渡されたいくつかの米国及び外国特許の最初のものであった米国特許第7,745,382号において、重合したアルファ-オレフィン(PAO)と、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油と、、合成スルホネートとを含む合成潤滑剤添加剤は、より良好なエンジン潤滑を提供し、エンジンの摩耗を減らし得ること、及び、実際に、そのPAO及び基油は、自動車用途を含み、また自動車用途にとどまらない様々な多くの状況において有用な広範な潤滑剤のための最も重要な組成物であり、鋼を含め、また鋼を越える様々な多くの材料に適用された場合に最も重要な組成物であり得ることが開示された。これには、ディーゼル燃料添加剤(米国特許第8,062,388号及びそれに続くもの)、ガソリン添加剤(米国特許第7,931,704号及びそれに続くもの)、汎用潤滑剤(米国特許第8,022,020号及びそれに続くもの)、船舶用潤滑剤(米国特許第8,334,244号及びそれに続くもの)、さらにはゴルフクラブ洗浄剤(米国特許第8,071,522号及びそれに続くもの)が含まれる。
【0012】
しかし、米国特許仮出願第62/109,172号において詳しく述べられているトライボロジー試験まで、BestLineの合成潤滑剤添加剤の有効性の根底にあるトライボロジー機構は十分に理解されていなかった。この試験では、このPAO、基油及び(任意選択による)合成スルホネートの組成物が、潤滑を向上させるだけでなく、この組成物
は、調べられた鋼の塑性応答を改変すること、及び摩耗された表面の化学反応性に影響を与えることも見出されることが確認された。特に、上記のように、P、S、Mn、Znのような元素は、この組成物がZDDPと共にエンジンオイルに添加された際に検出されなかったので、これは、PAO及び基油が代わりに用いられた場合、この組成物によりZDDPの反応が妨げられ、摩耗を減らすことに対してZDDPが不要になることを意味する。
【0013】
したがって、このPAO、基油、及び任意選択による合成スルホネートの組成物を、モーターオイルに添加し、同時に、ZDDP及び/又はZDTPの全てを、これらのまさに同じモーターオイルから取り除くことが考察され得たのは、米国特許仮出願第62/109,172号に最初に開示された新しい理解があってこそであった。こうして、このPAO、基油、スルホネートの組成物を、全ての形態のZDDPを取り除くと同時にモーターオイルに添加することは、優れた潤滑によってエンジンの摩耗を減らすだけでなく、また、それが潤滑する全ての鋼元素の塑性応答を有利に改変し、同時に、重要な環境問題を解決もする。
【0014】
モーターオイルを改善し、同時に、ZDDP及びZDTPによって引き起こされる環境危害を取り除くための、この組成物の使用は、アメリカ石油協会(American Petroleum Institute(API))によって定められる、モーターオイルの5つのグループの全てに適用できる。このAPIの分類は、本開示及びそれに付随する特許請求の範囲に、参照によって組み込まれる。詳細には、http://www.api.org/~/media/files/certification/engine-oil-diesel/publications/appendix-e-rev-09-01-11.pdf?la=enの、2011年9月のAPI規格は、次にように指定する。
【0015】
「全てのベースストックは、5つの一般カテゴリーに分けられる。
a.グループIのベースストックは、90パーセント未満の飽和分、及び/又は0.03パーセントを超える硫黄を含み、表E-1に指定された試験方法を用いて、80以上で120未満の粘度指数を有する。
【0016】
b.グループIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和分、及び/又は0.03パーセント以下の硫黄を含み、表E-1に指定された試験方法を用いて、80以上で120未満の粘度指数を有する。
【0017】
c.グループIIIのベースストックは、90パーセント以上の飽和分、及び/又は0.03パーセント以下の硫黄を含み、表E-1に指定された試験方法を用いて、120以上の粘度指数を有する。
【0018】
d.グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。PAOは、入れ替えPAOが、物理的及び化学的特性において、PAO製造業者の元々の仕様に適合する限り、さらなる認定試験なしに、入れ替えできる。代替ストックにおいて、次の重要な特性は、満たされている必要がある。
【0019】
1)100℃、40℃、及び-40℃での動粘性率
2)粘度指数
3)NOACK揮発度
4)流動点
5)不飽和分
e.グループVのベースストックは、グループI、II、III、又はIVに含まれな
い他の全てのベースストックを含む。
【0020】
【発明の概要】
【0021】
鋼の塑性応答を改変するための添加剤及び関連する方法であって、添加剤は、重合したアルファオレフィン;水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油;及び任意選択で、合成スルホネートを含む、添加剤及び関連する方法。米国特許仮出願第62/109,172号及び本明細書において詳細に記載されるトライボロジー研究は、次のことを結論づける:(1)この添加剤は、添加剤なしの純粋なオイルで認められる摩耗の6%まで、炭素鋼ディスクの摩耗を著しく減らす;(2)摩擦係数のわずかにより良好な経時安定性を除いて、摩擦への添加剤の明白な影響は存在しない;(3)添加剤は、ZDDPの反応を妨げるようであり、摩耗を減らす目的では、ZDDPを不要にする。これは、添加剤が、モーターオイルにおけるZDDPに代わるものであり得ることを示唆する;及び(4)添加剤は、調べられた鋼の塑性応答を改変し、摩耗される表面の化学反応性に影響を与えることが見出された。後日行われることになるので摩擦係数を確定するための試験は行われなかったが、以前の試験は、摩擦が減ることを支持する。
【0022】
本発明は、鋼間の摩耗に対する、又はベアリングと鋼表面との間の、必要な保護を提供するために、様々な比率で添加できる合成潤滑剤添加剤、並びに、この添加剤の製造に関連する方法、及びその使用に関連する方法に関する。さらに、この添加剤は、合成、合成ブレンド及び非合成のモーターオイル(グループIからVの全てのモーターオイル)に添加できて、それらに、今日の高速及び低速ガソリン及びディーゼルモーターオイルに必要な摩耗防止による保護をもたらす。さらに、本発明は、極圧下の鋼が、金属表面の破壊なしに、塑性変形を生じるか、又は塑性変形に応答するようにする。
【0023】
当該添加剤は、重合したアルファオレフィン(PAO);水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油;及び任意選択で、合成スルホネートの使用を含む。さらに、真空蒸留された非芳香族溶媒及び液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を、任意選択で用いることができ、添加剤に特定の順序で混入される時、これは、ZDDPの金属保護能力及び利点を超えると同時に、環境に優しい代替物をもたらす最終製品を生成する。さらに、この製品は、鋼間の接触に対する保護を提供し、同時に、摩耗される金属表面の化学反応性に好ましく影響を与える。さらに、この製品は、係属中の米国特許仮出願第62/109,172号において報告された独立した試験において、極圧下に置かれた鋼の塑性応答を改変する能力を示した。
【0024】
先に示されたように、この添加剤の成分は、特定の条件下で、非常に特定の順序でブレンドされる時、モーターオイルにおける摩耗防止剤としてのZDDPの必要性に取って代わるその能力が示された潤滑剤をもたらすことになる。ブレンドすることは、長期間安定なブレンドを生じる、化合物の正確に制御された剪断、及び均質化の組合せである。特定の順序で一旦ブレンドされると、簡単な精製又は物理的分離、例えば、蒸留又は凍結は、
例えば、原油から化学反応により合成品のグループIII及びグループIVを製造する方法での合成法とならない。
【0025】
最終製品は、
・重合したアルファ-オレフィン
・水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油
・任意選択で、合成スルホネート
・任意選択で、真空蒸留された非芳香族溶媒(0.5%未満の芳香族)
・任意選択で、安定な水性分散体(disbursement)を含む液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
の組合せである。
【0026】
合成潤滑剤は、しばらく前から、成功裏に使用されている。それらは、非常に高い粘度指数、低い揮発度、優れた耐酸化性、高い熱安定性、優れた温度流動性、及び環境への低い毒性を提供する能力を有する。最終潤滑剤におけるこれらの特徴は、最新の高速及び高馬力エンジンにおいて、非常に重要である。さらに、これらの特徴は、環境に対して毒性が少なく、同時に、自動車部品に最大の保護を提供するという長期目標のためになる。
【0027】
本発明の合成潤滑剤は、試験された時、モーターオイルにZDDPを含めることによって現在得られる摩耗防止による保護をもたらし、さらに超える能力を示した。その合成潤滑剤は、自動車、ディーゼル及び船舶用モーターオイルに必要な摩耗防止を提供できるが、ZDDPの環境への影響なしに提供できる。それは、グループI、II、III、IV及びVの基油の全てとブレンドされ、有効である能力を有する。
【0028】
その好ましい実施形態として、エンジン部品を適切に潤滑し、またエンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンド、及び関連する方法であり、このブレンドは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、ジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイル;アルファ-オレフィンと、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油とを含むモーターオイル添加剤を含み、ZDDPがモーターオイルの化学成分から省かれ、ZDTPもモーターオイルの化学成分から省かれていることが、ここに開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
この添加剤の成分の各々の好ましいブレンド比が、下に示される。以下のパーセンテージ内に入る、成分のブレンドを保つことが重要である。
重合したアルファ-オレフィン(PAO):これらは、20体積%から60体積%を占めることが好ましい。これらは、約55体積%を占めることが最も好ましい。重合されていないアルファ-オレフィン(AO)もまた使用され得るが、PAOが好ましい。従来のPAOより大きな粘度指数を有する、最新のメタロセンポリ-アルファ-オレフィン(mPAO)もまた使用され得る。
【0030】
水素化異性化されている高粘度指数(VI)の、水素化精製された(HT)高度水素化分解基油:これらは、5体積%から55体積%を占めることが好ましい。これらは、7体積%から25体積%を占めることがより好ましい。これらは、約21体積%を占めること最もが好ましい。これらの基油が粘度グレード32を有することが好ましいが、必要とはされない。この基油として、飽和炭化水素、プロセスオイル及び作動油もまた使用され得る。
【0031】
合成スルホネート:これらは、任意選択の成分であるが、好ましい。使用される場合、これらは、0.05体積%から10体積%を占めることが好ましい。これらは、約3体積%を占めることが最も好ましい。これらの合成スルホネートは、200から600の全塩基価(TBN)を有することが好ましい。これらは、300TBNを有することが最も好ましい。チキソトロピー性のカルシウムスルホネートもまた使用され得る。
【0032】
真空蒸留された低粘度及び低芳香族の溶媒:多くの場合、脂肪族又はミネラルスピリットと呼ばれ、これらは任意選択の成分である。使用される場合、これらは、10体積%から40体積%を占めることが好ましい。これらは、約21.5体積%を占めることが最も好ましくい。低芳香族である範囲は、好ましくは、0.5%未満の芳香族である。これらの溶媒は、これらの化合物を含むことが「大気中でのそれらの低い反応性に起因して、オゾン生成に有意に寄与しないと予想される」として、カリフォルニア大気資源局によって定められるVOC免除資格(VOC Exemption)を有することが好ましい。想定されている低粘度は、40℃ mm2/s(ASTM D445)、並びに25℃で2.60cSt及び40℃で1.98cSt(ASTM D445)の粘度のおおよその範囲にある。
【0033】
液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE):これは、任意選択の成分である。使用される場合、これらは、0.001体積%から10体積%を占めることが好ましい。これらは、約0.45体積%を占めることが最も好ましい。PTFEは、塊状化を避けるために液状化されるべきであり、好ましくは、PTFE粒子の安定な水性分散体を、水又はオイル中に含む。オイルが使用される場合、150ソルベントニュートラル石油又はそれに近い同等の物を使用することが好ましい。
【0034】
次に、このモーターオイル添加剤を製造するために、これらの成分をブレンドするための好ましい方法を記載する。
最初に、アルファオレフィン及び基油が、如何なる分離の様子もなく、液体が、むらのない混和物になるまでブレンドされて、第1のブレンドを生じる。ブレンドすることは、撹拌機の速度に基づき、温度は、ブレンドが完了する時間の長さを決めることになる。ブレンド時間の範囲は、4から6時間まで変わり得る。各成分にとって理想的な温度は、最適なブレンドのためには、22から30℃の間である。
【0035】
さらに、真空蒸留された非芳香族溶媒及び合成スルホネートが、一緒にブレンドされて、第2のブレンドを生じる。この第2のブレンドは、ずっと小さい、高速の閉鎖ブレンダーで調製され得る。次いで、この第2のブレンドは、第1のブレンドに添加される。
【0036】
PTFEが使用される場合には、第1及び第2のブレンドが、PTFEと一緒に最後にブレンドされる。
低芳香族脂肪族溶媒が使用される場合には、第1及び第2のブレンドは、さらなる低芳香族脂肪族溶媒とブレンドされて、第3のブレンドを生じる。PTFEが使用される場合には、上記の全てが、PTFEと一緒にブレンドされる。
【0037】
約25%/75%の比のカルシウムスルホネートと脂肪族又はミネラルスピリットとが、これらが使用される場合、存在することが好ましい。
この第3のブレンド、又は合成スルホネートを欠くミネラルスピリット単独が、残りの成分と一緒に、第1のブレンドに添加され、成分がむらのない液体へと十分にブレンドされたように見えるまで、撹拌機が運転される。ブレンドに続いて、製品は、高速剪断ポンプによって、製品にむらがなくなるまで、剪断を加えられる。剪断を加えることによって、ニュートン挙動を示す安定な流動粘性が得られ、各成分の比重に実質的な違いがある場合に、保存寿命が大きく向上する。
【0038】
このプロセスで使用される好ましいブレンド装置は次の通りである。このプロセスは、製品を秤量でき、次いで、一定の流れ及び圧力を維持するように、制御バルブを通してポンプ輸送できる、いくつかのブレンド用及び貯蔵用タンクを含む。ブレンドは、製品の蒸発ロスを減らし、むき出しのスパークへの暴露を避けるために、閉鎖タンクで行われるべきである。ブレンド装置は、高速又は低速ブレンド機器の組合せによってもよい。タンクの大きさ及び体積は、ブレンドにとって決定的に重要ではない。剪断装置は、60から5200サイクル/秒の範囲を有し、3600サイクル/秒の典型的な速度を有し、オイル成分を有する製品の安定なエマルジョンを製造し、エアレーションなしに液体懸濁液及び分散体を提供できるべきである。
【0039】
次いで、このモーター添加剤は、ZDDP又はZDTPを使用することなく、グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイルと組み合わされて、エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドを与える。好ましいブレンド比は、85体積%から95体積%のモーターオイル、及び5体積%から15体積%のモーターオイル添加剤である。
【0040】
モーターオイルブレンドを作り出すために、モーターオイル及び添加剤は、一緒に合わされ、次いで、この組合せは、高速ブレンダーで単に混合され、その後、容器に入れられる。モーターオイル及び添加剤の化学的特徴を考えれば、その後、容器入りブレンドが棚に維持されている間、分離は最小限又は全くないはずである、すなわち、モーターオイルブレンドの保存寿命の長さに関わらず、ブレンドは、使用者によってエンジン内に注入される前に、均質なままであるはずである。
【0041】
好ましい使用形態ではないが、ZDDPもZDTPも含まないモーターオイルを用い、潤滑剤を入れることとは別に、それを、エンジン内に入れることができるであろう。しかし、この状況では、使用者は、85体積%から95体積%のモーターオイル、及び5体積%から15体積%のモーターオイル添加剤という最適な混合を保つために注意を払う必要があるであろう。望ましい比で既に組み合わされたブレンドを用いると、この場合、使用者は、モーターオイルと添加剤の比を、望ましい範囲内に保つことに気を付ける必要がなく、使用者が誤りを犯す可能性が排除されるので、好ましい。
【0042】
背景技術において、先に提示されたAPIによる特性を参照すると、モーターオイルと潤滑剤の組合せは全体として、ZDDP又はZDTPを含まないホストモーターオイルの粘度に応じて、次の特徴を有するであろう。1)いくつかの選ばれた温度で:100℃、動粘性率1.7から102.0;40℃、動粘性率5.4から1350;-40℃、動粘性率2,704から35,509。2)粘度指数:90から200。3)NOACK揮発度0.6から99.5。4)流動点-20までから-61℃。やはり、これらの範囲は、ホストオイルの粘度に依存する。最後に、5)PAO(又はAO又はmPAO)ベースは、PAO-2からPAO-100のPAO不飽和分粘度グレードを有するべきである。
【0043】
一般に、モーターオイルブレンドでは、PAO-2からPAO-10の範囲で十分である。しかし、ZDDP及びZDTPなどの環境に望ましくない化学物質を取り除き、それらを、本開示のアルファ-オレフィン及び基油の添加剤に置き換えることが望ましい他の潤滑用途では、この添加剤が如何に有利に塑性応答を改変し、化学反応性に影響を与えるかに関する、米国特許仮出願第62/109,172号に開示された理解を考えれば、下でさらに概略が示される、他の潤滑用途では、PAO-100までの、またそれを含む、より高い領域のアルファ-オレフィンを使用することが望ましいことが分かる。
【0044】
詳細には、アルファ-オレフィンと、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油との基本組合せは、モーターオイルにおいてだけでなく、これらに限らないが、
・ギアオイル
・オートマチックトランスミッション液
・作動液
・グリース
・タービンオイル及び液
・金属加工油
・チェーンルブ(チェーン用潤滑剤)
・コンプレッサ潤滑剤
・コンベヤー潤滑剤
・製紙機油
・型枠油
・滑り面用油
・ドリルオイル
・絞り及びスタンピングオイル
・バー(bar)オイル
・2サイクル油
・スチームオイル
を含む、他の潤滑/摩耗防止剤及び用途においても、環境に望ましくない化学物質の代わりとして使うことができることもわかり、ここに開示される。
【0045】
この広範な状況において、環境に望ましくない(これらの化学物質は、適切な潤滑を提供し、摩耗に対して保護するために不可欠であると広く考えられている)を省くことができることは、アルファ-オレフィンと、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油とのこの基本組合せが、鋼の塑性応答を改変し、摩擦のために摩耗している表面の化学反応性を変えるので、これらの環境に望ましくない化学物質は、摩耗痕の分光分析では検出されなかったという、米国特許仮出願第62/109,172号における開示から生じる。このため、本開示の非常に重要な用途は、これらのモーターオイルを広範囲に使用できること、及びその結果としてのこれらのオイルが及ぼす環境への実質的な影響のために、モーターオイルの用途であるが、塑性応答の同じ有利な改変及び化学反応性の変化は、また、他の多くの用途においても生じ得ることが理解され、これは、本開示が、これらの他の用途にも、特に、液体、潤滑剤及びオイル一般から、適切な潤滑及び摩耗防止による保護にとって不可欠であると広く見なされている、環境に望ましくない化学物質を取り除くことに、有益に適用されることを可能にする。
【0046】
これに限らないが、本出願により開示された先行技術を含めて、本開示の時点で当業者によって所有されている知識は、たとえ、当業者によって所有されていると理解される特定の知識についての明示的陳述が、簡潔さに重きを置くために、本開示から省かれているとしても、本開示の本質的な部分であると理解されており、参照によって本明細書に暗に組み込まれる。本開示において、複数の要素の組合せを含む発明が参照されていることがあるが、本発明は、1つ又は複数のこのような要素を省く又は除外する組合せを、たとえ、1つ又は複数の要素のこの省略及び除外が、本明細書において、明示的に述べられていないとしても、ある1つの要素が出願人の組合せにとって不可欠であり、省くことができないと本明細書において明示的に述べられているのでなければ、含むと見なされているともまた理解されている。否定的な特許請求の限定によって、たとえ、本明細書にこのような否定的限定の如何なる明示的陳述がないとしても、関連する先行技術から本発明を区別し得る要素を、関連する先行技術は含み得ることが、さらに理解される。本明細書において明示的に述べられた、出願人の発明の肯定的陳述と、たとえ簡潔にするため、ここに明示的に再現されていないとしても、本明細書に組み込まれる先行技術及び当業者による先行技術の知識との間で、先行技術によって支持されるこのような否定的な特許請求の限定のいずれか及び全ては、また、特定の否定的な特許請求の限定について本明細書に明示的陳述が全くないとしても、本開示及びその添付の特許請求の範囲内にあると考えられることが理解されるべきである。
【0047】
最後に、本発明の特定の好ましい特徴のみが例示され、説明されたが、多くの改変、変更及び置換が当業者には思い浮かぶであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、このような改変及び変更の全てを、本発明の真の趣旨の範囲内に入るとして、含むものとされていることが理解されるべきである。
[発明の態様A]
[1]
エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドであって、前記モーターオイルブレンドはジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、そして
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイル、
アルファ-オレフィンと、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油とを含むモーターオイル添加剤
を含み、
ZDDPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれ、且つ
ZDTPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれた
モーターオイルブレンド。
[2]
85体積%から95体積%の前記モーターオイル、及び
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤
をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[3]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[4]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、3に記載のモーターオイルブレンド。
[5]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[6]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、5に記載のモーターオイルブレンド。
[7]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[8]
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[9]
エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドを製造する方法であって、前記ブレンドは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含
まず、前記方法は、
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイルを準備すること、
前記モーターオイルの化学成分からZDDPを省くこと、
前記モーターオイルの化学成分からZDTPを省くこと、並びに
アルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤を、前記モーターオイルと組み合わせて、前記モーターオイルブレンドを生成すること
を含む方法。
[10]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、9に記載の方法。
[11]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、9に記載の方法。
[12]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、11に記載の方法。
[13]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、9に記載の方法。
[14]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、13に記載の方法。
[15]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、9に記載の方法。
[16]
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、9に記載の方法。
[17]
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、及び
前記第1及び第2のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、9に記載の方法。
[18]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、17に記載の方法。
[19]
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、
前記第1及び第2のブレンドを、さらなる低芳香族脂肪族溶媒とブレンドして、第3のブレンドを生成すること、並びに
前記第1、第2及び第3のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、9に記載の方法。
[20]
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を用いずに、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を用いずに、エンジン及びエンジン部品を潤滑するための方法であって、
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイルであって、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDDPが省かれ、且つ、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDTPが省かれている、モーターオイル、
重合したアルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤
をエンジン内に導入することを含み、これによって 前記重合したアルファ-オレフィンと前記基油の組合せが、前記エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変し、且つ
前記ZDDP及びZDTPを省くことが、環境にも有利な影響を与える
方法。
[21]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤、及び85体積%から95体積%の前記モーターオイルをエンジン内に導入するステップをさらに含む、20に記載の方法。
[22]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、20に記載の方法。
[23]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、22に記載の方法。
[24]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、20に記載の方法。
[25]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、24に記載の方法。
[26]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、20に記載のモーターオイルブレンド。
[27]
モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、20に記載のモーターオイルブレンド。
[発明の態様B]
[1]
エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドであって、前記モーターオイルブレンドはジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、そして
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイル、
アルファ-オレフィンと、水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油とを含むモーターオイル添加剤
を含み、
ZDDPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれ、
ZDTPが、前記モーターオイルの化学成分から省かれ、
ZDDPが、前記モーターオイル添加剤の化学成分から省かれ、且つ
ZDTPが、前記モーターオイル添加剤の化学成分から省かれている
モーターオイルブレンド。
[2]
85体積%から95体積%の前記モーターオイル、及び
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤
をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[3]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[4]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、3に記載のモーターオイルブレンド。
[5]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[6]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、5に記載のモーターオイルブレンド。
[7]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[8]
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、1に記載のモーターオイルブレンド。
[9]
エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変するための、環境保全性を高めたモーターオイルブレンドを製造する方法であって、前記ブレンドは、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を含まず、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を含まず、前記方法は、
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイルを準備すること、
前記モーターオイルの化学成分からZDDPを省くこと、
前記モーターオイルの化学成分からZDTPを省くこと、
アルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤を、前記モーターオイルと組み合わせて、前記モーターオイルブレンドを生成すること、
前記モーターオイル添加剤の化学成分からZDDPを省くこと、並びに
前記モーターオイル添加剤の化学成分からZDTPを省くこと
を含む方法。
[10]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、9に記載の方法。
[11]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、9に記載の方法。
[12]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、11に記載の方法。
[13]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、9に記載の方法。
[14]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含
む、13に記載の方法。
[15]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、9に記載の方法。
[16]
前記モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、9に記載の方法。
[17]
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、及び
前記第1及び第2のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、9に記載の方法。
[18]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤を、85体積%から95体積%の前記モーターオイルと組み合わせることをさらに含む、17に記載の方法。
[19]
前記アルファ-オレフィンを、前記基油とブレンドして、第1のブレンドを生成すること、
非芳香族溶媒を、合成スルホネートとブレンドして、第2のブレンドを生成すること、
前記第1及び第2のブレンドを、さらなる低芳香族脂肪族溶媒とブレンドして、第3のブレンドを生成すること、並びに
前記第1、第2及び第3のブレンドを、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とブレンドすること
をさらに含む、9に記載の方法。
[20]
ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)を用いずに、且つジチオリン酸亜鉛(ZDTP)を用いずに、エンジン及びエンジン部品を潤滑するための方法であって、
グループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVのモーターオイルからなるモーターオイルの群から選択されるモーターオイルであって、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDDPが省かれ、且つ、前記モーターオイルでは、その化学成分からZDTPが省かれている、モーターオイル、
重合したアルファ-オレフィン、及び水素化異性化され水素化精製されている高度水素化分解基油を含むモーターオイル添加剤であって、前記モーターオイル添加剤ではZDDPがその化学成分から省かれ、且つZDTPがその化学成分から省かれている、モーターオイル添加剤
をエンジン内に導入することを含み、これによって
前記重合したアルファ-オレフィンと前記基油の組合せが、前記エンジン部品を適切に潤滑し、エンジン部品の塑性応答を有利に改変し、且つ
前記ZDDP及びZDTPを省くことが、環境にも有利な影響を与える
方法。
[21]
5体積%から15体積%の前記モーターオイル添加剤、及び85体積%から95体積%の前記モーターオイルをエンジン内に導入するステップをさらに含む、20に記載の方法。
[22]
前記モーターオイル添加剤が、合成スルホネートをさらに含む、20に記載の方法。
[23]
前記合成スルホネートが、チキソトロピー性のカルシウムスルホネートを含む、22に記載の方法。
[24]
前記アルファ-オレフィンが、重合したアルファ-オレフィンを含む、20に記載の方法。
[25]
前記重合したアルファ-オレフィンが、メタロセン重合したアルファ-オレフィンを含む、24に記載の方法。
[26]
前記モーターオイル添加剤が、真空蒸留された非芳香族溶媒をさらに含む、20に記載のモーターオイルブレンド。
[27]
モーターオイル添加剤が、液状化ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)をさらに含む、20に記載のモーターオイルブレンド。
【外国語明細書】