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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126705
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】高温部品
(51)【国際特許分類】
   C23C 26/00 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
C23C26/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022092979
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2019562316の分割
【原出願日】2018-04-19
(31)【優先権主張番号】GM107/2017
(32)【優先日】2017-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(71)【出願人】
【識別番号】390040486
【氏名又は名称】プランゼー エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】特許業務法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー-シュメールツァー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーゼマン,イングマール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】動作温度が高い部品(高温部品)及びその作製方法を提供する。
【解決手段】周期表の第4族、第5族、第6族の金属およびレニウムからなる群から選択される少なくとも1種の高融点金属又は高融点金属を少なくとも50原子%含む合金である高融点金属合金からなる基体と、基体上に備えられた放射率増加のための被膜2とを備え、被膜は実質的に、窒化タンタルおよびタングステンからなり、窒化タンタルの含有量は33重量%以上80重量%以下、タングステンの含有量は20重量%以上67重量%以下である高温部品1を提供する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射率増加のための被膜(2)を備える高融点金属又は高融点金属合金からなる高温部品(1)であって、前記被膜は実質的に、
窒化タンタル及び/又は窒化ジルコニウム;および
含有量が0~98重量%のタングステン、
からなる、高温部品(1)。
【請求項2】
前記被膜(2)は、PVD層として形成されている、請求項1に記載の高温部品(1)。
【請求項3】
前記被膜(2)は、焼結層として形成されている、請求項1記載の高温部品(1)。
【請求項4】
前記被膜(2)は、窒化タンタル粒子及び/又は窒化ジルコニウム粒子と、タングステン粒子と、の複合層として形成されている、請求項1又は3に記載の高温部品(1)。
【請求項5】
前記被膜(2)は、窒化ジルコニウム及びタングステンからなり2重量%~75重量%の窒化ジルコニウムを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項6】
前記被膜(2)は、多孔質に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項7】
前記被膜(2)は、前記高温部品(1)の外側に形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項8】
前記高温部品(1)は、高圧放電ランプ(5)の電極(3、4)として形成されている、請求項1~7いずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項9】
前記高温部品(1)は、熱導体(6)として形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項10】
前記高温部品(1)は、るつぼ(7)として形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項11】
放射率を増加させるための被膜(2)を備える高温部品(1)の製造方法であって、以下の工程:
前記高温部品(1)の基体を準備すること、
i)
前記高温部品(1)の前記基体の表面積を増大すること、
前記基体を、物理蒸着により、ZrN及び/又はTaNと任意構成成分のタングステンとを用いて被覆すること、
又は
ii)
前記基体を、粉末冶金法により、Zr含有粉末及び/又はTa含有粉末と任意構成成分のタングステンとを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中で熱処理すること、
又は
iii)
前記基体を、粉末冶金法により、ZrN及び/又はTaNと任意構成成分のタングステンとを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中及び/又はアルゴン含有雰囲気中で熱処理すること、
を含む、方法。
【請求項12】
前記サブステップi)における前記高温部品(1)の前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体のスラリー被覆により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サブステップi)における前記高温部品(1)の前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体の機械的構造化、化学的構造化、又は熱的構造化により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記サブステップii)又は前記サブステップiii)において、前記基体の前記被覆は、スラリー法により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サブステップii)又はiii)における前記熱処理は、1,400℃を超える温度で行なわれる、請求項11又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文の特徴を有する高融点金属からなる高温部品及び高温部品を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの高温用途では、熱伝達は、主に熱放射によって行なわれる。所定の温度で放出される熱放射の決定的要因は、熱伝達に関与する表面の放射の程度、即ち放射率、である。放射率は、理想的な黒体に対して物体がどの程度放射しているかを示す。
表面の放射率が高くなるほど、物体は、この表面を介してより多くの熱放射出力を与えることができる。
同様のことが、熱放射出力の吸収にも当てはまる。物体の放射率と吸収率とは比例するので、放射率が高い物体は、放射率が低い物体よりも多くの放射出力を吸収する。
【0003】
従って、放射による熱伝達が行なわれることとなる機械加工表面において、可能な限り高い放射率を選択する努力がなされている。高い放射率によって、より低い部品温度で同じ放射出力が与えられる。
このことは、灰色体への修正において、灰色体の熱放射出力をその温度の関数として示す、下記のシュテファン-ボルツマンの法則から直ちに理解することができる。
P=ε(T)・σ・T
式中、Pは、放射出力、ε(T)は、全ての波長に亘る加重平均放射率、σは、シュテファン-ボルツマン定数、Tは、ケルビン単位の温度である。
【0004】
部品の寿命の観点から、一般に、部品温度がより低いことが有利である。
【0005】
先行技術において、高温部品の放射率を増加するための様々な提案がある。
【0006】
特許文献1には、タングステンの多孔質焼結被膜を少なくとも部分的に有する熱導体が記載されている。被膜の塗布は、スラリー法により行なわれる。多孔質焼結被膜は、平滑なタングステン表面と比べて放射率の増加をもたらす。
【0007】
また、他の用途の高温部品についても、放射率を増加するための例がある。
【0008】
特許文献2には、高圧放電ランプの陽極用の樹枝状金属又は金属化合物からなる被膜が記載されており、それによって0.8を超える(放射係数によって表される)放射率の値が得られる。レニウムは、樹枝状構造を特に良好に生成できるため、この目的に特に適していると述べられている。
特許文献3は、同様のアプローチに注目しており、該特許文献によれば、細粒タングステンが高圧放電ランプの先端の周りに焼結される。
特許文献4では、高圧放電ランプ用の陽極の放射係数は、冷却溝により増加し、一実施形態では、焼結炭化タンタルにより、更に、増加する。
これらの文献によれば、放射率は、タングステンからなる被覆されていない陽極に比較して、基本的に表面積の増大によって増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/041589(A1)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1019948(A1)号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0791950号(A2)号明細書
【特許文献4】独国特許第1182743号(B)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、改良された高温部品及びその作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本課題は、請求項1の特徴を有する高温部品により及び/又は請求項10の特徴を有する方法により解決される。好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【発明の効果】
【0012】
本出願に関連して考えられる用途は、典型的には、1,000~2,500℃以上の動作温度での用途である。この用途としては、特に、照明技術(例えば、高圧放電ランプの電極)、炉技術(例えば、熱導体、内炉取付具、充電装置、るつぼ)及び医療技術(例えば、X線回転陽極)における用途が挙げられる。
【0013】
本出願において、動作温度が高い部品を高温部品と称する。
上述の高温用途については、一般に、高融点金属又は高融点金属合金が使用される。本出願に関連して、高融点金属とは、周期表の第4族(チタン、ジルコニウム、ハフニウム)、第5族(バナジウム、ニオブ、タンタル)及び第6族(クロム、モリブデン、タングステン)の金属並びにレニウムであると理解すべきである。高融点金属合金とは、少なくとも50原子%の当該元素を含む合金を意味する。これらの材料は、とりわけ、高い使用温度で優れた寸法安定性を有する。
【0014】
未処理の(blankem:裸の、被膜を備えない)金属は、一般に、非常に低い放射率を有する。
従って、室温におけるタングステンの放射率は、1,700~2,500nmの波長範囲において約0.2である。
【0015】
一般的な高温部品は、放射率を増加するための被膜を有する。この場合、被膜は、部品全体又は部品の一部のみに塗布できる。
本発明によれば、放射率を増加するための被膜は、実質的に、窒化ジルコニウム及び/又は窒化タンタルと、0~98重量%の含有量のタングステンと、から形成されている。
【0016】
ここで、「実質的に」とは、主構成成分が、窒化ジルコニウム及び/又は窒化タンタルと所望によりタングステンであることを意味する。この層は、少量の他の構成成分及び一般的な不純物を含んでいてもよい。不純物として、例えば、酸化物又は炭化物、並びに金属タンタル又は金属ジルコニウムを含んでもよい。主構成成分の、窒化ジルコニウム及び/又は窒化タンタルと任意構成成分のタングステンの割合は、98重量%超である。
【0017】
窒化ジルコニウムは、通常、化学式ZrNに相当し、窒化タンタルは、通常、化学式TaNに相当するが、他の窒化物又は窒素との準化学量論的な若しくは超化学量論的な化合物であってもよい。ただし、簡単のために、本出願では、それぞれ、ZrN又はTaNと表記する。
被膜は、ZrN及び/又はTaNのみ(場合により、上記の構成成分及び不純物を除く。)から形成されてもよい。或いは、被膜は、98重量%までのタングステンを含んでもよい。
【0018】
第1の実施形態によれば、被膜は、PVD層(物理蒸着の英語physical vapour depositionに由来)として形成されている。
この場合、被膜は、適切なスパッタリングターゲットにより物理蒸着法により基材(高温部品の表面)上に形成される。PVD層は、一般に、平滑かつ緻密であり、従って細孔を有さない。表面積を増大するために、機械的方法、化学的方法、又は熱的方法により、被膜を塗布する前に基材を構造化してもよい。
【0019】
或いは、被膜は、焼結層として形成される。焼結層とは、粉末冶金法による被膜法によって得られた層を意味する。粉末冶金被膜法の例として、スラリー塗布が挙げられる。粒子の形態で被膜材料を実際に塗布した後、塗布された層は、焼結によって固められる。焼結層は、通常、多孔質であり、粗面を有する。
【0020】
好ましくは、被膜は、窒化ジルコニウム粒子及び/又は窒化タンタル粒子とタングステン粒子とが微細に分散された複合層として形成される。複合層とは、混合物で構成され、基本構成成分がその本来の固体特性を発揮している層であると理解される。この特徴は、被膜が焼結層として形成されている場合に、特に実現可能である。
【0021】
PVD層と焼結層とは、表面テクスチャが非常に異なるため、簡単に区別できる。
【0022】
作製法に基づいて、焼結層は、好ましくは2μm~300μm、より好ましくは3μm~100μm、特に好ましくは5μm~50μm、の厚さを有する。
PVD層の場合、厚さも、また、大幅に薄くできる。PVD層の典型的な厚さは、10nm~4μmである。
被膜の厚さは、機能にとって決定的ではない。
【0023】
被膜は、好ましくは、高温部品の上側に形成される。これは、被膜が高温部品の表面に最外層を形成することを意味する。高温部品の一用途では、この位置は、放射による熱伝達に関与するように意図されている。
【0024】
その下に、追加の層が存在してもよい。
【0025】
特に好ましくは、被膜は、ZrNとタングステンとから形成され、ZrNの含有量は、重量%で、2重量%~75重量%、好ましくは3重量%~60重量%、特に好ましくは5重量%~45重量%である。
出願人の実験では、ZrNとタングステンとの混合物からなる被膜が、特に好ましい放射率値を有することが示された。驚くべきことに、ZrNとタングステンとの混合物からなる被膜は、純粋なZrN及び純粋なタングステンの被膜よりも、高い放射係数を有することが明らかとなった。
放射の最大値は、約36重量%ZrNの場合に達成された。この場合、室温で、約0.8の放射係数εを達成できた。純粋なZrNの放射係数εは、約0.5であり、未処理タングステンの放射係数は、約0.2である。従って、ZrNとタングステンとの混合物の放射係数が、これら構成成分種の純粋な形態よりも高い値を持つことを全く予想できなかった。
【0026】
更に、これにより、放射率を増加する物質、この場合はZrN、を節約できるため、特に経済的な被膜の提供が可能になる。
更に、被膜にタングステンが存在することで、被膜用の基材を形成する高融点金属に対する良好な適合性がもたらされる。
それに加えて、ZrNは、TaNよりも遥かに安価である。従って、ZrNに基づく被膜は、特に経済的な変形形態である。
【0027】
窒化物に基づく放射率向上層は、酸素のゲッター効果が望まれる用途に特に有用である。出願人は、窒化物が高温で酸素を吸収することを観察した。これにより、高温部品が酸化から保護され得る。
【0028】
被膜は、好ましくは、多孔質に形成されている。この場合、多孔質とは、被膜が、例えば、5%を超える相当な気孔率を有することを意味する。被膜の体積内に存在する細孔により、被膜の表面積も、また、純粋な幾何学的表面に比べて増大するため、放射率が更に増加する。この特徴は、特に焼結層について該当する。
【0029】
一変形形態では、高温部品の表面は、被膜の下側で構造化されているため、被膜の表面積は、純粋に幾何学的な表面に比べて増大している。これにより、放射率が更に増加する。即ち、この場合、被膜自体は、必ずしも多孔質ではない。表面積の増大は、(高温部品の)基材の構造化に起因する。これは、被膜がPVD層として形成されている場合に特に重要である。
【0030】
高温部品は、高圧放電ランプの電極として形成されていることが好ましい。電極、特に高圧放電ランプの陽極、への被膜の適用は、特に有利である。電極、特に放射率増加のために陽極上に被膜を設けることにより、電極は、より高い熱放射出力を放出できるため、寿命が延びる。言い換えれば、このように形成された電極は、動作中により多くの熱を発することができ、結果として部品温度が低下する。
【0031】
例示的な実施形態によれば、高温部品は、熱導体として形成されている。本出願の範囲では、熱処理装置における使用に見られるように、金属抵抗ヒータは、熱導体を意味する。熱導体は、金属板、棒材、撚線、束線又は金網から形成できる。平坦な熱導体、即ち、その基本形状が金属板に由来する熱導体、の場合、熱導体の動作中に炉の内部に面する熱導体の側面にのみ被膜を施すことが望ましい場合がある。
被膜は、熱導体に適用すると、熱導体がより低温で所定の熱出力を提供することができるように作用する。熱導体のより低い動作温度が好ましいのは、例えば、それによりクリープを減少させることができるためである。特に興味深いのは、被膜装置、特にMOCVD装置(英語のmetal- organic chemical vapour deposition、有機金属化学蒸着に由来)、で使用される熱導体上の放射率を増加するための被膜である。この場合、熱導体の温度が高すぎると、熱導体の基材(例えば、タングステン)が蒸発し、その結果、被膜すべき基材が汚染される。放射率がより大きい場合、熱導体は、同じ熱出力ではより低い温度で動作できるため、被膜すべき基材が汚染されるリスクが低減する。特にこの場合、ZrN及びTaNの蒸気圧がタングステンの蒸気圧に匹敵することが有益である。即ち、ZrN又はTaNに基づく被膜は、そのように装備された熱導体のより低い温度での動作を可能にし、この熱導体の温度低下という効果はより蒸気圧の高い被膜によって補償されることを要しない。全体として、動作温度が低くなると、高温部品の寿命が延びる。
【0032】
更なる例示的な実施形態によれば、高温部品は、るつぼとして形成される。高融点金属製のるつぼは、例えば、サファイア単結晶の製造において酸化アルミニウムを溶融するために使用される。この目的のために、るつぼは、高温炉内に置かれ、そこで熱導体によって放射熱を介して加熱される。熱伝達は、主に、るつぼの側面を介して行なわれ、側面は、放射熱を吸収し、溶融すべき材料に伝達する。本発明による被膜により、熱導体から放出される熱の大部分がるつぼにまとめられる。
【0033】
好ましくは、高温部品は、少なくとも98重量%までのタングステンからなる。タングステンは、関連する高温部品に特に適していることが証明されている。
【0034】
高温部品を作製するための方法についても保護が求められている。本発明によれば、高温部品を作製するための方法は、以下の工程を含む。
高温部品の基体を準備する工程、
i)
-高温部品の基体の表面積を増大すること、
-物理蒸着により、ZrN及び/又はTaNと所望量のタングステンとを用いて、基体を被膜すること、
又は
ii)
-粉末冶金法により、Zr含有粉末及び/又はTa含有粉末と所望量のタングステンとを用いて、基体を被膜すること、
-被膜した基体を窒素含有雰囲気中で熱処理すること、
又は
iii)
-粉末冶金法により、ZrN及び/又はTaNと所望量のタングステンを用いて、基体を被膜すること、
-被膜した基体を窒素含有雰囲気及び/又はアルゴン含有雰囲気中で熱処理すること。
【0035】
基体とは、被膜前の高温部品又はそれから部品が作製される半製品であると理解される。
【0036】
従って、3つの異なる方法の変形形態が提案される。
方法の変形形態i)によれば、最初に、高温部品の基体の表面が、表面積が幾何学的表面に比べて増大されるように、前処理される。この「粗面化」は、例えば、スラリー塗布によって行なうことができる。
スラリー法では、粉末状の構成成分を液体中に懸濁させる。得られる懸濁液は、通常は結合剤も含んでおり、浸漬、噴霧又は刷毛塗りなどによって部品(この場合、高温部品の基体)の被膜に用いることができる。乾燥後、被膜は、通常、焼結される。このように形成された被膜は、通常、多孔質かつ粗面である。その被膜は、タングステンとZrN及び/又はTaNとを用いる物理蒸着(PVD)による後続の被覆のための好ましい下層を形成する。スラリー塗布は、例えば、タングステン粉末に基づいてもよい。
【0037】
代替的又は追加的に、表面は、機械的方法、化学的方法、又は熱的方法により構造化されてもよい。機械的方法の例として、サンドブラストなどのブラストが挙げられる。化学的方法の例は、エッチング又は酸洗である。熱的方法の例として、レーザ構造化が挙げられる。
【0038】
その後、表面積が増大された基体上に、ZrN及び/又はTaNと必要に応じてタングステンが堆積される。被膜の供給源として、対応する組成を有するスパッタリングターゲットを使用してもよい。ターゲット組成の適切な選択により、好ましい被膜組成を調整できる。ZrNによる被膜の場合、2重量%~75重量%のZrN、好ましくは3重量%~60重量%のZrN、より好ましくは5重量%~45重量%のZrNを有する、ZrN及びタングステンのPVD被膜組成が特に有利である。
TaNの場合、タングステンとの混合物は、純粋なTaNと比較して放射率が低下し、一方でZrNの場合、タングステンとの混合物の放射率は、それぞれの純粋な構成成分種の放射率を驚くほど上回る。
【0039】
表面積の増大は、被膜材料に起因する寄与を上回る放射率の更なる増加を引き起こす。
【0040】
例えば、特定の機械的特性を得るために基材の再結晶化を回避すべき場合、この方法の変形形態(PVD経路)が有利となる可能性がある。更に、この方法の変形形態により、部品公差が厳しい部品の歪みも、また、回避できる。即ち、PVD被膜は、中程度の温度で行なわれ、被膜の熱処理工程を必要としない。
【0041】
方法の変形形態ii)によれば、基体は、最初に粉末冶金法により、Zr含有粉末及び/又はTa含有粉末と所望によるタングステンとで被膜され、次いで、窒素含有雰囲気中で熱処理を受ける。
粉末冶金法は、スラリー法であってもよい。この場合、Zr含有又はTa含有とは、粉末冶金法の粉末がジルコニウム又はタンタルを含むことを意味する。粉末は、例えば、金属ジルコニウム又は金属タンタルであってもよい。特にジルコニウムの場合、水素化物としての提供形態も有効であることがまた実証されている。Zr含有粉末又はTa含有粉末とタングステンとの混合物が好ましい。これは特にジルコニウムに当てはまる。
粉末冶金的に被覆された層は、好ましくは、焼結されるか又は予備焼結される。
このように、最初に、ジルコニウム又はタンタルを、元素で又は化合物で含む層が得られる。それに引き続く窒素含有雰囲気中での被膜された基体の熱処理工程において、Zr含有成分種又はTa含有成分種は、それぞれの窒化物に変換される。従って、放射率を増加するための窒化物の調整は、この方法の変形形態によれば、その場(in situ)で行なわれる。
窒素含有雰囲気は、窒素(N)とのガス混合物であってもよい。アンモニア(NH)もまた、窒素源として適している。
タングステンに対するZr含有粉末又はTa含有粉末の比率を調整することにより、所望の被膜組成を設定できる。既に述べたように、2重量%~75重量%のZrN、好ましくは3重量%~60重量%のZrN、より好ましくは5重量%~45重量%のZrNを有する、ZrN及びタングステンの組成が特に興味深い。
【0042】
この方法の変形形態は、例えば、窒化熱処理用の装置がいずれにしても利用可能である場合に有利となる可能性がある。
この変形形態は、装置の利用可能性に基づいて、とりわけZr含有粉末及びTa含有粉末の入手しやすさに基づいて、方法の変形形態i)又はiii)と比べて、コスト面で、有利となる可能性がある。一方、この方法は、従来のPVD法では被膜できない領域(PVD被膜による遮蔽効果)にも窒化物含有層を設けることが可能となる。
【0043】
方法の変形形態iii)によれば、ZrN及び/又はTaNと所望によるタングステンとによる基体の被覆は、粉末冶金法及びこれに引き続く被覆された基体の、窒素含有雰囲気及び/又はアルゴン含有雰囲気での、熱処理により行なわれる。粉末冶金法は、この場合も、また、スラリー法であってもよい。
被覆は、ZrN単独若しくはTaN単独、それらの混合物、又は、ZrN及び/若しくはTaNとタングステンとの混合物、のいずれかで行なうことができる。
ZrNとタングステンとの混合物、特に、2重量%~75重量%のZrN、好ましくは3重量%~60重量%のZrN、より好ましくは5重量%~45重量%のZrNを有する、ZrNとタングステンとの混合物、が特に興味深いことが明らかとなった。
【0044】
従って、この方法の変形形態では、それぞれの窒化物が粉末冶金被覆工程に直接組み込まれる。この場合、熱処理は、主に層の機械的強化に役立つ。従って、雰囲気は、必ずしも窒化性である必要はない。
窒素含有雰囲気又はアルゴン含有雰囲気中での熱処理は、1,400℃を超える温度で行なうことが好ましい。窒素含有雰囲気又はアルゴン含有雰囲気は、例えば、窒素(N)とのガス混合物であってもよい。
【0045】
この方法の変形形態は、作製が単純であることのおかげで有利である。装置及び原材料の入手可能性に応じて、この変形形態は、上述の方法の変形形態よりも安価になる可能性がある。更に、この変形形態によって、層の構成を制御できる。窒化物は、直接処理され、層の厚さ全体に亘って勾配をつけて又は均一に分布させることができる。
【0046】
個々の方法の変形形態については、以下の作製例で詳細に説明する。
作製例I:
改良された高温部品を作製するために、タングステン試料を様々な粉末混合物のスラリーで被覆した。
その目的のために、最初に、エタノール中2.8重量%のエチルセルロースの結合剤に、タングステン又はZrN粉末又はTaN粉末を55±2重量%の合計固形分含有量まで秤量して入れた。Netzsch Multimasterを使用して1,500rpmで15分間撹拌を行なった。その後、Bandelin HD 2200超音波ホモジナイザで1.5分間分散させた。
【0047】
以下の層組成について試験した。
100重量%TaN
80重量%TaN、残部がタングステン
66重量%TaN、残部がタングステン
50重量%TaN、残部がタングステン
33重量%TaN、残部がタングステン
100重量%タングステン
6重量%ZrN、残部がタングステン
9重量%ZrN、残部がタングステン
13重量%ZrN、残部がタングステン
23重量%ZrN、残部がタングステン
36重量%ZrN、残部がタングステン
50重量%ZrN、残部がタングステン
76重量%ZrN、残部がタングステン
100重量%ZrN
【0048】
ここに記載されている重量パーセントは、固体成分ZrN、TaN又はタングステンの秤量値に基づく。
36重量%ZrNの秤量値は、ジルコニウム及びタングステンに関して約1:1のモル比に相当する。
続くスプレー被覆は、15mg/cmのターゲット層質量になるように、タングステンプレート上の約20cmの距離から手動で行なった。
乾燥は、室内空気で行なわれた。
次に、乾燥した層に熱処理(アニーリング)を施した。この熱処理では、最初に有機物
(結合剤)が除去され、次に層が固化又は焼結される。
【0049】
熱処理は、それぞれ、1,900℃で1時間行なった。焼結雰囲気の影響を研究するために、焼結雰囲気を変化させた。即ち、アルゴン(Ar)、窒素(N)及び高真空下で焼結した。
【0050】
層の放射率の測定は、サーフェスオプティクス社のSolar 410反射率計を使用して室温で行なった。その場合、本発明による層を、被膜されていないタングステン表面及び先行技術から公知の放射率増加のための被膜と比較した。
いくつかの波長範囲で試験した。放射率の比較のために、1,700~2,500nmの範囲の測定結果が使用された。これは、この範囲が、物体の熱放射の評価に特に重要であるためである。
【0051】
選択した結果を表1にまとめて示す。
表1:異なる被膜の放射率の比較
【表1】
【0052】
被膜されていない未処理タングステン表面:試料番号1は、試験した1,700~2,500nmの波長範囲で0.21の平均放射率を示した。
100%タングステンスラリーにより得られた多孔質タングステン被膜(試料番号2)は、0.34の放射率を有した。
試料番号3:TaN(100重量%)では、0.90の放射率が測定された。この場合、被膜は、純粋なTaNからなり、即ち、タングステンを添加していなかった。この試料の調製では、TaNをスラリー法で塗布し、続いて、N下、1,900℃で1時間熱処理を行なった。
試料番号4は、ZrNが36重量%、残部がタングステンの被膜を有していた。ZrNとWとの粉末混合物をスラリー法により試料に塗布し、N下、1,900℃で1時間焼結した。放射率は、0.78と決定された。
【0053】
作製例II:
放射率を増加するための被膜の代替的作製は、Zr又はTaを含む焼結層の生成及びそれに続く窒化からなる。作製例では、Taスラリー層を塗布し、続いてこのTaスラリー層をNH雰囲気中で窒化した。窒化処理によって、タンタルの少なくとも一部が窒化タンタルに変換される。このように作製された試料において、多孔質Ta層に比べて放射率の増加が確認された。
同様に、ZrN層は、前もって被覆されたW-Zr被膜の窒化処理によって実現できる。
【0054】
作製例III:
放射率増加のための被膜を作製するための別の変形形態は、PVDによるZrN及び/又はTaNからなる被膜の塗布である。作製例では、表面積を増大するために、最初に、基材に従来のスラリー層が設けられた。次に、この例では、その上に、純粋なTaNをPVDにより堆積した。100重量%のTaNからなるこの被膜により、室温で0.9の放射係数εを達成できた。
【0055】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1a】様々なアニーリング処理後のTaN被膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図1b】様々なアニーリング処理後のTaN被膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図1c】様々なアニーリング処理後のTaN被膜表面の走査型電子顕微鏡写真である。
図2a】ZrN36重量%、残部タングステンで被膜した表面の様々なアニーリング処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
図2b】ZrN36重量%、残部タングステンで被膜した表面の様々なアニーリング処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
図2c】ZrN36重量%、残部タングステンで被膜した表面の様々なアニーリング処理後の走査型電子顕微鏡写真である。
図3a】破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図3b】破断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図4】様々な被膜の放射率イプシロン(ε)のグラフである。
図5】高温部品の実施例としての高圧放電ランプの概略図である。
図6】高温部品の実施例としての熱導体の図である。
図7】高温部品の実施例としてのるつぼの図である。
図8a】本発明による方法の実施例の経過の概略図である。
図8b】本発明による方法の実施例の経過の概略図である。
図8c】本発明による方法の実施例の経過の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
図1aは、窒素雰囲気下、1,900℃で1時間アニーリングされたTaN被膜表面の走査型電子顕微鏡写真を示す。被膜は、TaN粉末を使用したスラリー被覆によって実現された。
視線方向は、被膜表面に対して垂直である。
アルゴン下(図1b)及び高真空下(図1c)でのアニーリングとは対照的に、層は、窒素雰囲気中で安定であり、凹み及び平滑化は見られなかった。
アルゴン下、特に高真空下、では、酸化及び焼結による凹み及び平滑化が観察された。
放射率を増加するために、図1aのTaN表面のような多孔質表面仕上げが求められる。
様々なアニーリング処理後のTaN層の放射率εを測定すると、特に真空アニーリングの場合、窒素下でアニーリングされた試料の0.90と比べて、放射率が0.77に大きく減少することが示された。
【0058】
図2a~図2cは、図1a~図1cと同様に、ZrN36重量%、残部がタングステンを被膜した表面の、異なるアニーリング処理後の、走査型電子顕微鏡写真を示す。被膜は、ZrN粉末及びタングステン粉末のスラリー被覆によって実現された。
図2aの試料はN下で、図2bの試料はAr下で、図2cの試料は高真空下でアニーリングした。
ZrN36重量%、残部がタングステンの試料は、高真空下でアニーリングした後、顕著な凹み及び酸化を示した。放射率を増加するために、図2aにおけるような多孔質表面仕上げが求められる。
【0059】
図3aは、ZrN36重量%、残部がタングステンの被膜を有する試料の表面に対して垂直な破断面の走査型電子顕微鏡写真を示す。被膜は、ZrN粉末及びタングステン粉末のスラリー塗布によって実現された。
写真の下部には、タングステン金属板からなる基材が見られる。その上には、放射率を増加するための被膜2が見られる。被膜2の多孔性が十分に識別できる。多孔性は、放射率増加に更に寄与する。
図3bは、同じ試料の破断面の詳細をより高い拡大率で示す。そこでは、ZrNからなるマトリックス内のタングステン粒子(「W」)が識別できる。従って、これは、窒化ジルコニウム粒子及びタングステン粒子からなる複合層である。
特に有利な変形形態の(定量的微細構造分析により測定された)体積分率は、約80%ZrN及び20%Wである。
【0060】
図4は、ZrN含有量が変化するZrNに基づく様々な被膜2の放射率イプシロン(ε)を図示する。
横軸(横座標)には、ZrNの含有量(重量%)をプロットし、縦軸(縦座標)には、その結果得られる放射率イプシロン(ε)をプロットした。グラフ中の点は、それぞれの測定値を示す。0%ZrNの測定値は、未処理タングステン表面の放射率(ε=0.21)に相当し、100%ZrNの測定値は、タングステンを含まない純粋なZrN被膜の放射率(ε=0.50)に相当する。
破線は、概略的な傾向線を示す。
ZrNとタングステンとの混合物からなる被膜の放射率は、予測とは異なって、点線「εth」で示唆されるような純粋なタングステンの値と純粋なZrNの値との間の直線に沿っては推移しないことが分かる。むしろ、ZrNとタングステンとの混合物からなる被膜は、ZrN約36重量%の領域で最大値を示す。その場合、放射率は、更に低いZrNの含有量に関してあまり敏感ではない。即ち、約5重量%までのZrN含有量の場合であっても、放射率について依然として興味ある高い値を得ることができた。それに対して、40重量%を超えるZrN含有量では、放射率は、急激に低下する。グラフからわかるように、2重量%~75重量%のZrN、好ましくは3重量%~60重量%のZrN、より好ましくは5重量%~45重量%ZrN、を有するZrN及びタングステンの組成が特に興味深い。
【0061】
図5は、高圧放電ランプ5を概略的に示す。電極間-陰極4と陽極3との間-では、動作中に放電アークが形成される。陽極3は、本実施例では、高温部品1であり、放射率を増加するための本発明による被膜2が設けられている。
被膜2により、陽極3は、より高い熱放射出力を放出できるため、寿命が延びる。
同様に、陰極4又は陽極3だけではなく陰極4にも被膜2を設けることができる。
高圧放電ランプ5の例としてここに例示されているように、放射率を増加するための被膜2は、他の種類のランプにも使用できる。
【0062】
図6は、高温炉の底部ヒータとして例示的に配置されている高融点金属からなる熱導体6を示す。熱導体7は、電流を直接流すことにより加熱され、放射熱を放出することにより高温炉の内部を加熱する。
熱導体6は、本実施例では、高温部品1を形成し、放射率を増加するための本発明による被膜2が設けられている。被膜2は、熱導体6への適用において、この熱導体6がより低い温度で所定の熱出力を提供できるように作用する。これにより、熱導体6のクリープが減少し、寿命が延びる。
【0063】
図7は、高融点金属製のるつぼ7を概略的に示す。高融点金属製るつぼは、例えば、サファイア単結晶の製造において酸化アルミニウムを溶融するために使用される。この目的のために、るつぼは、高温炉内に置かれ、そこで熱導体からの放射熱を介して加熱される。熱伝達は、主にるつぼの側面で行なわれ、その側面は、放射熱を吸収し、溶融すべき材料に伝達する。るつぼ7は、本実施例では、高温部品1を形成し、放射率を増加するために本発明による被膜2が設けられている。
るつぼ7に適用している被膜2は、熱導体から放出された熱の大部分をるつぼ7にまとめるように作用する。それにより、るつぼ7は、熱導体からの熱入力に対して、より迅速に反応する。
【0064】
被膜2の適用は、本明細書に示される例に決して限定されない。被膜2は、一般に、放射による熱伝達が行なわれることとなる高温部品に有利である。
【0065】
図8a~図8cは、本発明による方法の実施例の経過を概略的に示す。
【0066】
図8aは、方法の変形形態i)の経過を示す。
【0067】
図の左半分には、高温部品1の基体が示されており、その表面積は、加工処理によって増大されている。表面積増大の措置は、放射率を増加するのに役立つ。
【0068】
上側の図によると、表面積は、スラリー層を塗布することにより増大された。この例では、タングステン粉末(「W」)を含むスラリー層の塗布を行なった。タングステンスラリーの代わりに、他の基材適合性スラリー組成物も、また、使用してよい。スラリー被覆後、粉末被膜は、焼結されるが、これは特に図示していない。
【0069】
下側の図によると、表面積の増大は、機械的構造化、化学的構造化又は熱的構造化によって行なわれた。
【0070】
実施例の両方の場合において、基材、即ち高温部品1の基体は、タングステンからなる。
【0071】
次いで、高温部品1の基体は、物理蒸着によりタングステン並びにZrN及び/又はTaNで被膜される。スパッタリングプロセスは、スパッタリングターゲット8により図の中央に概略的に示されている。ターゲット8は、層の構成成分からなっていてもよく、或いは、プロセス中に窒化物が形成されてもよい。
【0072】
その結果として、放射率増加のための被膜2を有する高温部品1は、図の右半分に示されている。PVD層の組成は、スパッタリングターゲット組成の選択により決定できる。通常、PVD層は、わずか数nm又は数μmの厚さである。
【0073】
図8bは、方法の変形形態ii)の経過を示す。
【0074】
図の左半分では、高温部品1の基体が、粉末冶金法により、Zr含有粉末及び/又はTa含有粉末並びに所望によりタングステンを含む被膜を付与されることを示している。被覆するための粉末冶金法の一例は、スラリー法である。
【0075】
中央の図は、高温部品1の被覆された基体のその後の窒素含有雰囲気下での熱処理を示す。図示された熱処理装置9内の文字「N」は、窒素含有雰囲気を象徴している。熱処理により、ジルコニウム又はタンタルは、対応する窒化物に変換され、被膜が固化される。
【0076】
図の右半分に示すように、放射率増加のための被膜2を有する高温部品1が得られる。
【0077】
図8cは、方法の変形形態iii)の経過を示す。
【0078】
左側に示されているのは、粉末冶金法によって被覆された、ZrN及び/又はTaN並びに所望によりタングステンを含む層を有する高温部品1の基体である。
【0079】
中央の図は、高温部品1の被膜された基体の窒素含有雰囲気中及び/又はアルゴン含有雰囲気中での引き続く熱処理を示す。図示された熱処理装置9内の文字「N」は、窒素含有雰囲気を象徴し、「Ar」は、アルゴン含有雰囲気を象徴する。熱処理により被膜が固化される。
【0080】
図の右半分に示すように、放射率増加のための被膜2を有する高温部品1が得られる。
【符号の説明】
【0081】
使用される参照番号のリスト:
1 高温部品
2 放射率増加のための被膜
3 陽極
4 陰極
5 高圧放電ランプ
6 熱導体
7 るつぼ
8 スパッタリングターゲット
9 熱処理装置
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
【手続補正書】
【提出日】2022-06-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表の第4族、第5族、第6族の金属およびレニウムからなる群から選択される少なくとも1種の高融点金属又は前記高融点金属を少なくとも50原子%含む合金である高融点金属合金からなる基体と、
前記基体上に備えられた放射率増加のための被膜(2)と、
を備え
前記被膜(2)は実質的に、窒化タンタルおよびタングステンからなり
前記窒化タンタルの含有量は33重量%以上80重量%以下、
前記タングステンの含有量は20重量%以上67重量%以下である
高温部品(1)。
【請求項2】
前記被膜(2)は、PVD層として形成されている、請求項1に記載の高温部品(1)。
【請求項3】
前記被膜(2)は、焼結層として形成されている、請求項1記載の高温部品(1)。
【請求項4】
前記被膜(2)は、窒化タンタル粒子と、タングステン粒子と、の複合層として形成されている、請求項1又は3に記載の高温部品(1)。
【請求項5】
前記被膜(2)は、さらに窒化ジルコニウムを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項6】
前記被膜(2)は、多孔質に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項7】
前記被膜(2)は、前記基体の外側に形成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項8】
圧放電ランプ(5)の電極(3、4)として形成されている、請求項1~7いずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項9】
導体(6)として形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項10】
つぼ(7)として形成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【請求項11】
放射率を増加させるための被膜(2)を備える高温部品(1)の製造方法であって、
周期表の第4族、第5族、第6族の金属およびレニウムからなる群から選択される少なくとも1種の高融点金属または前記高融点金属を少なくとも50原子%含む高融点金属合金からなる基体を準備すること、
i)
記基体の表面積を増大すること、
前記基体を、物理蒸着により、窒化タンタルとタングステンとを用いて被覆すること、
又は
ii)
前記基体を、粉末冶金法により、Ta含有粉末とタングステン粉末とを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中で熱処理すること、
又は
iii)
前記基体を、粉末冶金法によりTaNとタングステンとを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中及び/又はアルゴン含有雰囲気中で熱処理すること、
を含
前記窒化タンタルおよびタングステン、または、前記Ta含有粉末およびタングステン粉末は、窒化タンタルとタングステンに換算したときの窒化タンタルの含有量が33重量%以上80重量%以下、タングステンの含有量が20重量%以上67重量%以下である、方法。
【請求項12】
前記サブステップi)における前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体のスラリー被覆により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記サブステップi)における前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体の機械的構造化、化学的構造化、又は熱的構造化により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記サブステップii)又は前記サブステップiii)において、前記基体の前記被覆は、スラリー法により行なわれる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記サブステップii)又はiii)における前記熱処理は、1,400℃を超える温度で行なわれる、請求項11又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記被膜(2)は、1,700~2,500nmの波長範囲の放射率がタングステンの前記放射率よりも増大するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の高温部品(1)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
図の右半分に示すように、放射率増加のための被膜2を有する高温部品1が得られる。
(付記)
[構成1]
放射率増加のための被膜(2)を備える高融点金属又は高融点金属合金からなる高温部品(1)であって、前記被膜は実質的に、
窒化タンタル及び/又は窒化ジルコニウム;および
含有量が0~98重量%のタングステン、
からなる、高温部品(1)。
[構成2]
前記被膜(2)は、PVD層として形成されている、構成1に記載の高温部品(1)。
[構成3]
前記被膜(2)は、焼結層として形成されている、構成1記載の高温部品(1)。
[構成4]
前記被膜(2)は、窒化タンタル粒子及び/又は窒化ジルコニウム粒子と、タングステン粒子と、の複合層として形成されている、構成1又は3に記載の高温部品(1)。
[構成5]
前記被膜(2)は、窒化ジルコニウム及びタングステンからなり2重量%~75重量%の窒化ジルコニウムを有する、構成1~4のいずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成6]
前記被膜(2)は、多孔質に形成されている、構成1~5のいずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成7]
前記被膜(2)は、前記高温部品(1)の外側に形成されている、構成1~6のいずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成8]
前記高温部品(1)は、高圧放電ランプ(5)の電極(3、4)として形成されている、構成1~7いずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成9]
前記高温部品(1)は、熱導体(6)として形成されている、構成1~7のいずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成10]
前記高温部品(1)は、るつぼ(7)として形成されている、構成1~7のいずれか一つに記載の高温部品(1)。
[構成11]
放射率を増加させるための被膜(2)を備える高温部品(1)の製造方法であって、以下の工程:
前記高温部品(1)の基体を準備すること、
i)
前記高温部品(1)の前記基体の表面積を増大すること、
前記基体を、物理蒸着により、ZrN及び/又はTaNと任意構成成分のタングステンとを用いて被覆するすること、
又は
ii)
前記基体を、粉末冶金法により、Zr含有粉末及び/又はTa含有粉末と任意構成成分のタングステンとを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中で熱処理すること、
又は
iii)
前記基体を、粉末冶金法により、ZrN及び/又はTaNと任意構成成分のタングステンとを用いて被覆すること、
被覆した前記基体を窒素含有雰囲気中及び/又はアルゴン含有雰囲気中で熱処理すること、
を含む、方法。
[構成12]
前記サブステップi)における前記高温部品(1)の前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体のスラリー被覆により行なわれる、構成11に記載の方法。
[構成13]
前記サブステップi)における前記高温部品(1)の前記基体の前記表面積の前記増大は、前記基体の機械的構造化、化学的構造化、又は熱的構造化により行なわれる、構成11に記載の方法。
[構成14]
前記サブステップii)又は前記サブステップiii)において、前記基体の前記被覆は、スラリー法により行なわれる、構成11に記載の方法。
[構成15]
前記サブステップii)又はiii)における前記熱処理は、1,400℃を超える温度で行なわれる、構成11又は14に記載の方法。
【外国語明細書】