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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126722
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】創傷治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/02 20060101AFI20220823BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61F 13/06 20060101ALI20220823BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20220823BHJP
   A61F 13/08 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61M27/00
A61F13/00 305
A61F13/02 310D
A61F13/02 340
A61F13/06 B
A61F13/10 S
A61F13/10 D
A61F13/10 B
A61F13/08
A61F13/02 310M
A61F13/10 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022094905
(22)【出願日】2022-06-13
(62)【分割の表示】P 2020091866の分割
【原出願日】2013-03-05
(31)【優先権主張番号】12002332.0
(32)【優先日】2012-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514227232
【氏名又は名称】ローマン ウント ラウシェル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリリッチュ, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ダナイ, フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】シュタインレヒナー, エリク
(72)【発明者】
【氏名】カインツ, ソニヤ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】減圧療法中に創傷の過剰乾燥や浸軟もなく、治癒を確実に促進することのできる創傷治療装置、創傷治療装置用の被覆部材を提供する。
【解決手段】創傷周囲皮膚に固定可能で創傷を含む密閉創傷空間を実現するのに役立つ被覆部材60と、創傷空間内に陰圧を発生することのできる吸込接続部と、を備えた創傷治療装置であって、被覆部材が少なくとも一部で水蒸気透過性である創傷治療装置に関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷周囲皮膚に固定可能で前記創傷を含む密閉創傷空間を実現するのに役立つ被覆部材と前記創傷空間内に陰圧を発生することのできる吸込接続部とを備えた創傷治療装置において、前記被覆部材が少なくとも一部で水蒸気透過性であることを特徴とする創傷治療装置。
【請求項2】
前記被覆部材の水蒸気透過率が少なくとも一部で300 g/m2/24 h以上、特に500 g/m2/24
h以上、特別好ましくは750 g/m2/24 hであることを特徴とする請求項1記載の創傷治療
装置。
【請求項3】
前記被覆部材の水蒸気透過率が10000 g/m2/24 h未満、特に5000 g/m2/24 h未満、特別
好ましくは3000 g/m2/24 h以下であることを特徴とする請求項1または2記載の創傷治療装置。
【請求項4】
前記被覆部材が厚さ0.5~200μm、特に1~100μmの主に透明な被覆フィルムを有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項5】
前記被覆部材の引裂き時の伸びが100%以上であることを特徴とする請求項1~4のい
ずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項6】
前記被覆部材の静摩擦係数(ASTM 1894-08)が0.8~1.5であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項7】
前記被覆部材の滑り摩擦係数(ASTM 1894-08)が0.7~1.2であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項8】
前記被覆部材がポリウレタン重合体、特に芳香族ポリウレタン重合体を有することを特徴とする請求項1~7のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項9】
創傷床と前記被覆部材との間の創傷空間を充填すべく設計された充填材と、主に前記吸込接続部の前記充填材に向き合う側に、前記充填材から吸引されるべき滲出液を前記吸込接続部の少なくとも1つの吸引孔に導くドレナージ層が設けられていることとを特徴とす
る請求項1~8のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項10】
前記創傷周囲皮膚に前記被覆部材を付着させて固着する付着固着手段が前記被覆部材に付設されていることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項11】
前記固着手段が個別の付着フィルム、特にポリウレタンフィルムを有し、前記フィルムでもって前記創傷被覆材は前記創傷に当接後、前記創傷周囲皮膚を基準に固定可能であることを特徴とする請求項10記載の創傷治療装置。
【請求項12】
前記被覆部材は人間の四肢を導入可能なフィルムチューブを有することを特徴とする請求項1~11のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項13】
前記フィルムチューブは一方の軸線方向末端を閉鎖され、特に空気密に閉鎖されてストッキング状形成物を形成することを特徴とする請求項12記載の創傷治療装置。
【請求項14】
前記創傷に当接後に前記創傷から剥がすことのできる支持部材、特に支持フィルムが前記被覆部材に付設されていることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項記載の創傷
治療装置。
【請求項15】
前記吸込接続部は、使用時に前記創傷空間に向き合う吸引孔と、主に接続管として実施されて前記吸引孔と吸引チューブとの間に結合部を実現する結合部材とを有することを特徴とする請求項1~14のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項16】
前記吸引孔が前記吸込接続部のフランジ状当接領域に穿設されており、前記当接領域は、主に前記吸引孔を取り囲みかつ主に付着剤を装備した固着領域を有し、前記固着領域でもって前記吸込接続部は前記被覆部材の前記創傷空間から離れた方の周面に貼り付けることができることを特徴とする請求項15記載の創傷治療装置。
【請求項17】
前記フィルムチューブは周方向で完全に閉鎖されており、かつ前記吸引孔に向き合う開口部を得るために主に前記創傷に当接後に切り開かれ、前記開口部は使用時主に前記吸込接続部の前記固着領域によって取り囲まれることを特徴とする請求項12~16のいずれか1項記載の創傷治療装置。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項記載の創傷治療装置内で使用される被覆部材において、主に3000 g/m2/24 hの水蒸気透過率を有する水蒸気透過性ポリウレタンフィルムを特徴とする被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷周囲皮膚に固定可能で創傷を含む密閉創傷空間を実現するのに役立つ被覆部材と創傷空間内に陰圧を発生することのできる吸込接続部とを備えた創傷治療装置、そしてこのような創傷治療装置用の被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
このような創傷治療装置は特にいわゆる減圧療法の枠内で利用される。特に慢性創傷の治癒はこれらの創傷に陰圧を印加することによって促進できることが判明した。さらにその際有利であると実証されたのは、充填材としての多孔質フォームまたはガーゼで創傷が覆われもしくは充填され、創傷と場合によっては充填材とを含む密閉創傷空間を生成するために創傷が覆われ、被覆部材の創傷もしくは充填材から離れた方の側に吸込接続部が取り付けられ、陰圧を発生すべく設計された吸込部材がこの吸込接続部を介して創傷空間と結合できることである。別の装置では吸込接続部のフランジが被覆部材によって覆われ、または被覆材の孔を取り囲むポケット内に受容される。吸込接続部は例えば、一方で吸込接続部の例えば接続管の態様に実施される結合部材と、他方で吸込部材に接続可能なチューブとを装備しておくことができる。被覆部材は例えば、創傷隣接皮膚面に空気密に当接されるフィルム状材料として実施しておくことができる。
【0003】
減圧療法の枠内で利用可能な創傷治療装置が例えば特許文献1に述べられている。この
公報の開示内容は、減圧療法の枠内で利用可能なフォーム形成剤と吸込部材との詳細に関してここで明確に参照することによって本明細書に取り入れられる。
【0004】
特許文献2には滲出液の管理を改善するために充填材と創傷床との間に介装すべき接触
層が述べられており、この接触層は充填材と創傷床との間にドレナージ空間を形成する。この公報の開示内容は、ドレナージ空間を形成する接触層もしくは創傷被覆材の詳細に関して本明細書に明確に取り入れられる。
【0005】
減圧療法の枠内で利用可能な吸込接続部はチューブを介して吸込部材と結合することができ、これらの吸込接続部は例えば特許文献3、特許文献4、特許文献5に述べられている
。吸込接続部の創傷に向き合う周面の領域で流れを案内するのに役立つ突起を備えた吸込ヘッドと称される吸込接続部は特許文献6に述べられている。さらに、円板状皿体の態様
で充填材に当接される当接面を備えた吸込接続部が特許文献7に明示されている。特許文
献8に述べられた吸込接続部では、充填材に向き合う周面に腹部によって限定された通路
が形成されており、これらの通路を通して創傷滲出液が吸引孔の方向に導かれるとされている。
【0006】
特許文献9には減圧療法の枠内で利用可能な創傷治療装置が述べられており、この創傷
治療装置は人体の四肢に被着可能な不透過性チューブと、創傷とチューブとの間に配置される穿孔体とを有する。穿孔体でもって不透過性チューブと創傷床との間に空間が創成され、この空間内で、不透過性チューブに密封当接可能なチューブ接続部を介して陰圧を発生することができる。特許文献10に述べられた創傷治療装置はプラスチック材料から成る囲いとこの囲い内に含まれた流体吸収材とを備えている。この公報に述べられた創傷治療装置は創傷の保護を想定しており、チューブ接続部が欠落しているので減圧療法で利用するのに適していない。先行刊行されていない出願番号11001737.3の欧州特許出願に、請求項1の前文に記載された創傷治療装置が述べられている。この出願の開示内容は吸込接続
部の特徴に関してここで明確に参照することによって本明細書に取り入れられる。従来の創傷治療装置を利用すると多くの場合過剰乾燥が観察され、時として減圧療法中に創傷の
浸軟も観察される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0 620 720号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10 2009 019 646号明細書
【特許文献3】国際公開第03/073970号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2008/014358号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2009/124548号パンフレット
【特許文献6】欧州特許第1 018 967号明細書
【特許文献7】欧州特許第1 088 569号明細書
【特許文献8】国際公開第2010/008167号パンフレット
【特許文献9】国際公開第2010/011148号パンフレット
【特許文献10】欧州特許第1 162 932号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
先行技術におけるこうした諸問題に鑑み、本発明の課題は、減圧療法を利用して創傷の治癒を確実に促進することのできる創傷治療装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によればこの課題は、被覆部材が少なくとも一部で水蒸気透過性であることを実質特徴とした公知創傷治療装置の改良によって解決される。
【0010】
本発明の出発点となる熟慮によれば、空気密かつ水密な創傷空間を生成しなければならず、この創傷空間が付加的になお耐菌性、生体親和性で皮膚に優しくなければならないという減圧療法用創傷被覆材に基本的に求められる諸要件は、気密性の損なわれるのを甘受して被覆部材が水蒸気透過性に形成されるとき、過度に損なわれることがない。水蒸気透過性によって、一方で周囲から創傷空間内への水分の輸送によって創傷の過剰乾燥の防止と、しかし他方で被覆材を通した過剰水分の排出によって創傷浸軟の防止も可能となる。水蒸気透過性被覆部材を利用することによって創傷領域もしくは創傷空間内に治癒促進的環境を生じることができる。さらに創傷被覆材の水蒸気透過性によって、被覆部材が固定される創傷周囲皮膚は損傷する可能性がなお低減されもする。
【0011】
創傷空間内に所望の環境を生じることを特別確実に行うことができるのは、被覆部材の水蒸気透過率が少なくとも一部で300 g/m2/24 h以上、特に500 g/m2/24 h以上、特別好ましくは750 g/m2/24 hであるときである。
【0012】
創傷の過剰乾燥を避ける意味で被覆部材の水蒸気透過率は望ましくは10000 g/m2/24 h
未満、特に5000 g/m2/24 h未満、特別好ましくは3000 g/m2/24 h以下である。水蒸気透過率のデータはDIN EN ISO 13726-2による測定に関係している。
【0013】
創傷が関節の領域にあるなら、被覆部材が十分に変形可能であることにも留意しなければならない。このことを確保できるのは、被覆部材が厚さ0.5~200μm、特に1~100μmの可撓性被覆フィルムを有するときである。創傷治療装置を取り去ることなく創傷を観察する意味で、透明な被覆フィルムを利用すると好ましいことが実証された。本発明の特別好ましい1実施形態では被覆部材がポリウレタン重合体、特に芳香族ポリウレタン重合体を
有する。
【0014】
公知の創傷治療装置に関連して上で既に述べたように、創傷床と被覆部材との間で創傷
に充填するように設計された充填材が設けられており、主に吸込接続部の充填材に向き合う側に、充填材から吸引すべき滲出液を吸込接続部の少なくとも1つの吸引孔内に導くド
レナージ層が設けられていると好ましいと実証された。このような吸込接続部が設けられていると、吸込接続部の充填材に向き合う周面に通路形成突起が必要でなく、円板状皿体の態様の吸込面拡張部も必要でない。むしろ、吸込接続部の充填材に向き合う周面がフランジ状に平らに実施され、吸引孔が穿設されると十分である。なぜならば、接続部の特別な性情によってだけでなく、接続部と充填材との間に配置されるドレナージ層によっても、充填材からの創傷滲出液の導入が引き起こされるからである。吸込接続部のドレナージ層に当接される当接面が平らで、すなわち、通路を限定する腹部の態様に実施される突起にしろ、特許文献7の円板状皿体におけるような環状突起の態様に実施される突起にしろ
、突起なしであると、突出する構造体がドレナージ層に押し込まれることは防止され、こうしてドレナージ層の確実な機能は確保される。
【0015】
ここで補足的になお指摘しておくなら、水蒸気透過性被覆部材の使用は創傷空間内に所望の環境を創成するのに利用できるだけでなく、不透過性被覆部材において観察される皮膚損傷を排除できるので、創傷周囲皮膚を保護するのにも利用できる。
【0016】
本発明に係る創傷治療装置の被覆部材は創傷周囲皮膚に固定可能でなければならない。このため被覆部材自体が付着性コーティングを備えていることができる。しかし、場合によってはチューブ状の非コーティング被覆フィルムの態様で個別の付着フィルム、特に付着性ポリウレタンフィルムが被覆部材に付設され、創傷に当接後にこの付着フィルムで創傷被覆材を創傷周囲皮膚に固定できるとき、本発明に係る被覆部材の当接は容易となる。この付着フィルムはフィルムテープとすることができる。本発明の枠内で付着フィルムとして特に商品名Suprasorb Fとして提供販売される本出願人の付着フィルムを利用するこ
とができる。これに関連して、被覆部材の水蒸気透過率は付着性コーティングによって著しく損なわれることにも留意しなければならない。水蒸気透過率は非コーティング被覆部材の3分の1未満に減退することがある。
【0017】
本発明に係る創傷治療装置は特別有利には、四肢、例えば足、踝、下腿、腕、手の創傷を処置するのに適している。その際被覆部材はこれらの四肢を導入可能な水蒸気透過性フィルムチューブを有することができる。チューブ状被覆部材は四肢に被着され、創傷を基準に、被覆部材で創傷を密封して覆うように位置決めされる。引き続き被覆部材は付着フィルムで創傷隣接皮膚に固着することができる。このため付着フィルムは巻取体から繰り出され、片面がチューブ付着し、反対面が皮膚に付着するようにチューブの一方の末端に巻き付けられる。
【0018】
フィルムチューブが一方の軸線方向末端を特に空気密に閉鎖されてストッキング状形成物を形成するとき、被覆部材の当接は容易とすることができる。この閉鎖は溶接(超音波溶接、熱溶接、高周波溶接)または接着(例えばポリウレタン接着剤、ホットメルト接着剤および/または接着テープ)によって行うことができる。その場合、被覆部材はなお片面を粘着性フィルム包帯で密封しておかねばならないだけである。
【0019】
被覆部材を容易に当接させる意味で被覆部材は望ましくはASTM 1894-08により測定した滑り摩擦係数が0.7~1.2の範囲内である。その際、ASTM 1894-08により測定した静摩擦係数が0.8~1.5、特別好ましくは1~1.25であるとき、被覆部材の十分な保持は達成するこ
とができる。これに関連してさらに、被覆部材の引裂き時の伸びが100%超であると望ま
しいと実証された。
【0020】
創傷を有する四肢に対する被覆部材の当接をさらに容易にできるのは、創傷に当接後に創傷から剥がすことのできる支持部材、特に支持フィルムが、しばしばごく薄い被覆部材
に付設されているときである。場合によって被覆部材に付設される支持フィルムは透明ポリエステルまたは多層材料(例えば、両面をポリエチレンでコーティングしたポリエステルコア)から製造し、積層プロセスによってフィルム状被覆部材に固着しておくことができる。創傷を負った四肢を被覆部材に導入後、そして粘着性フィルム包帯で密封する前に、成功裡の療法経過を確保するために支持フィルムは引き剥がさねばならない。
【0021】
本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部は、使用時に創傷空間に向き合う吸引孔と、主に接続管として実施されて吸引孔と吸引チューブとの間に結合部を実現する結合部材とを有する。この接続管は吸込接続部の創傷空間から離れた方の側に配置されている。吸引孔は吸込接続部のフランジ状当接領域に穿設することができる。当接領域は、主に吸引孔を取り囲みかつ主に付着剤を装備した固着領域を有する。この固着領域で吸込接続部は被覆部材の創傷空間から離れた方の周面に貼り付けることができる。選択的に、当接領域は少なくとも部分的に被覆部材で覆っておくこともできる。
【0022】
本発明に係る創傷治療装置のフィルムチューブは、接続管に接続されるべき吸引チューブと創傷空間との間に結合部を実現するために、準備された開口部を有することができる。しかしながらこれは創傷領域で被覆部材を正確な位置で当接させることを困難とする。それゆえに本発明の枠内で特別好ましくは、フィルムチューブは周方向で完全に閉鎖されており、単に少なくとも1つの軸線方向穴を有し、この穴を通して四肢はチューブに導入
することができ、吸込接続部の吸引孔に付設される開口部は創傷に当接後にはじめてフィルムチューブに設けられ、このためフィルムチューブは例えば切り開くことができ、開口部は使用時に望ましくは吸込接続部の固着領域によって取り囲まれる。
【0023】
本発明の枠内で特別な利点をもって利用可能な吸込接続部を以下で詳しく説明する。
【0024】
本発明に係る創傷治療装置を特別容易に応用する意味で望ましいと実証されたのは、場合によって設けられるドレナージ層が当接面に固着され、特に当接面に貼り付けられ、溶接され、当接面に鋏んで留められおよび/または縫合されていることである。その場合、吸込接続部とドレナージ層とから成る装置全体は充填材もしくは被覆部材の所望箇所でそっくり位置決めすることができる。
【0025】
本発明により実施された被覆部材に関連して既に説明したように、減圧療法において陰圧の発生と同時に創傷領域に空気を連続的に流入させると治癒過程がさらに改善されることが判明した。それゆえに本発明の特別好ましい1実施形態において創傷治療装置が有す
る吸込接続部は、滲出液の吸引に用いられる吸引孔の他に、特に吸込接続部のフランジ状当接領域に配置されかつ創傷の通気に役立つ1つの通気孔をなお有する。この通気孔によ
って可能となる創傷領域への連続的空気流入は、吸込部材と吸引孔との結合時に制御下の連続的圧力低下を引き起こす。これにより、特に水蒸気透過性被覆部材の利用と合わせて滲出液の除去はさらに改善することができる。その場合、滲出液の吸引に用いられるポンプが一層高い流量と改善された吸込作用とを生じる。ポンプは一層頻繁に作動し、一層多くを吸引する。
【0026】
創傷の汚染を避けるために、望ましくは通気孔に抗菌フィルタが付設されており、この抗菌フィルタは通気孔内に配置しておくことができ、または通気孔を覆うことができる。このフィルタは望ましくは疎水性であり、所望の濾過作用を得るために細孔寸法が0.001
、特に0.005、好ましくは0.02、特別好ましくは0.1~5マイクロメートルである。細孔寸
法が0.001マイクロメートル未満であると、所望の通気が損なわれる。細孔寸法が5マイクロメートルを超えると抗菌作用は殆ど達成されない。フィルタの材料は特にポリテトラフルオロエチレンを含むことができる。フィルタの細孔寸法を選択することによって創傷領域で空気流量に影響を及ぼすこともでき、細孔を縮小すると空気流入が減少する。
【0027】
通気孔を補足してまたはそれに代えて、創傷治療装置は吸引孔に向き合うマルチルーメンチューブを有することもでき、このマルチルーメンチューブは特に3つのルーメンを含
むことができ、そのうち1つのルーメンのみが滲出液の吸引に利用され、別の1つのルーメンは制御下の空気供給に利用され、第3ルーメンは創傷で圧力を直接測定するのに利用さ
れる。マルチルーメンチューブを用いることで吸込作用は改善することができ、吸込接続部が構造変更を必要とすることはない。しかしながら吸込作用は付加的通気孔を用いるとなお一層改善される。結合部材として役立つ接続管がマルチルーメンチューブに一致した数のルーメンを有するとき、さらなる改善は達成可能である。
【0028】
本発明に係る創傷治療装置を取り去ることなく創傷を最適に治療する意味で望ましいと実証されたのは、吸込接続部が、吸引孔を補足して、創傷治療製品を供給すべく設計されかつ主に当接領域に穿設された1つの供給孔もなお有し、本発明の特別好ましい1実施形態において吸込接続部の当接面から離れた方の側に、供給孔と供給チューブとの間に結合部を実現する例えば他の接続管等の他の結合部材を供給孔に付設しておくことができることである。供給孔を介して例えば、場合によっては薬剤、消毒剤等を有する洗浄溶液を創傷領域に持ち込むことができる。供給孔は吸引孔と同様にドレナージ層で覆っておくことができる。しかしながら本発明の枠内で特別好ましくは、創傷領域への洗浄溶液の拡散を改善するために供給孔はドレナージ層で覆われていない。
【0029】
滲出液の管理をさらに改善するために本発明に係る創傷治療装置は、創傷床と充填材との間に配置されて創傷側ドレナージを引き起こす接触層を有することができる。
【0030】
本発明の枠内で特別有利であると実証されたのは、ドレナージ層および/または接触層が特許文献2による創傷被覆材に相応して2つの概ね平行に延びる帯状要素を有し、帯状要素の間にドレナージ空間が形成されており、帯状要素に対してほぼ垂直に延びる深さ方向におけるドレナージ空間の深さがドレナージ空間内に受容された滲出液に対する毛管作用を保証することである。このためドレナージ空間の深さは5 mm以下、そして0.5 mm以上とすることができる。帯状要素はそれぞれ望ましくはドレナージ空間内への体液の流れ込みを可能とする1つの孔を有し、少なくとも1つの孔は、一方の帯状要素から出発して他方の帯状要素の反対側の内周面の方向へと延びてドレナージ空間に注ぐ通路によって形成されており、この通路の通路壁は帯状要素と一体に実施され、特に帯状要素の穿孔によって形成されている。
【0031】
特別際立った毛管作用の意味で好ましいと実証されたのは、深さ方向に垂直に延びる平面において通路の横断面が帯状要素から出発して反対側の他方の周面の方向で、特にドレナージ空間内への体液の浸入を促進する毛管作用を得るために狭まることである。少なくとも一方の帯状要素は主に網目状に配置される多数の孔を有することができ、隣接する孔の間隔は15 mm以下、主に5 mm以下、特に3 mm以下であり、一方の帯状要素に配置される
孔の出口は深さ方向に沿った投影において他方の帯状要素内に配置される孔の出口の間に配置されており、少なくとも1つの通路は深さ方向においてドレナージ空間の全深さの50
%以上にわたって延びている。
【0032】
孔を形成する通路の通路壁は深さ方向と平行に延びる切断面において少なくとも一部で弧状に実施され、帯状要素の周面へと連続的に移行している。本発明により利用可能な接触層および/またはドレナージ層のその他の特徴は特許文献2に明示されており、その開
示内容はここで明確に参照することによって本明細書に取り入れられる。
【0033】
ドレナージ層が吸込接続部の当接面を部分的にのみ覆い、主に少なくとも吸引孔とフィルタが覆われており、ドレナージ層を取り囲む固着領域が吸込接続部の当接面に設けられ
ているとき、吸込接続部はこの固着領域でもって被覆部材に貼り付けることができる。このため吸込接続部の固着領域は好適な接着剤を備えておくことができる。選択的に接着剤の代わりに例えば両面接着テープを用いることもできる。接着剤(例えばアクリレート、シリコーン、ポリウレタン)は部分的に(例えばリング内に)、小穴状に、または全面的に被着しておくことができる。接着テープも部分的に(例えばリング内に)、または全面的に被着しておくことができる。さらに両面接着テープは両面に同じ接着剤(例えばアクリレート、シリコーン、ポリウレタン)を塗被しておくことができ、または2つの面は2つの異なる接着剤を(特に、当接面12と接触した上面はシリコーン接着剤を、下面はアクリレート接着剤を)塗被しておくことができる。接着剤も接着テープも剥離可能な保護層を備えておくことができる。
【0034】
ドレナージ層が吸込接続部の当接面を完全に覆っている場合、例えばフィルム状に実施される被覆部材は吸込接続部の当接面から離れた方の固着領域に貼り付けておくことができ、この固着領域は吸込接続部の例えば接続管の態様に実施される結合部材を取り囲む。
【0035】
減圧療法で利用される公知の創傷治療装置におけると同様に、本発明に係る創傷治療装置の充填材は多孔質フォームまたはガーゼを有することができる。
【0036】
本発明に係る創傷治療装置の上記説明から読み取ることができるように、本発明に係る創傷治療装置内で使用される本発明に係る被覆部材は、水蒸気透過率が主に300 g/m2/24 h以上であり、ポリウレタンフィルムとして、特に人間の四肢寸法に適合した寸法のフィ
ルムチューブとして実施しておくことができることを実質特徴としている。本発明に係る被覆部材のポリウレタンフィルムは主に水密、生体親和性であり、厚さが0.5~200μm、
特に1~100μmである。水蒸気透過率は望ましくは2000 g/m2/24 h未満、特に1500 g/m2/24 h未満である。本発明に係る被覆部材の引裂き時の伸びは100%超とすることができ、静摩擦係数は0.8~1.5、滑り摩擦係数は望ましくは0.7~1.2である。本発明に係る創傷治療装置は以下の如く用いることができる。
【0037】
四肢に所在する創傷は陰圧療法用包帯を通常どおり当接後に、もしくは充填材を創傷の表面に当接後もしくは内部に挿入後に、チューブ状被覆フィルムに包み込まれ、フィルムは創傷領域全体を覆い、チューブ状被覆フィルムは創傷の縁部から張り出す。望ましくは、フィルムはその可撓性を考慮してぴったりもしくは隙間なく創傷空間に当接するように寸法設計されている。チューブ状フィルムの長さは切断して創傷寸法に適合させることができる。チューブ状フィルムはエンドレスチューブとして納入し、現場で切断して仕上げることもできる。こうして充填材と被覆フィルムとによって覆われたフィルムは、例えばLohmann & Rauscher GmbH社の商品名Suprasorb Fとして市販されている粘着性フィルム包帯によってその2つの軸線方向末端が創傷周囲皮膚と密封結合される。このためフィルム
包帯は、片面が被覆フィルムに付着し、反対面が皮膚に付着するように当接される。本発明の枠内で水蒸気透過性被覆部材を利用することによって、粘着性フィルム包帯による創傷領域の完全密封は避けられる。そのことで創傷治癒が促進される。被覆フィルムは創傷を基準に位置決めする前、そして位置決め中、支持フィルムに取り付けておくことができる。支持フィルムは創傷を負った四肢の導入後、そして粘着性フィルム包帯による密封前に、成功裡の療法経過を保証するために引き剥がさねばならない。被覆部材として利用されるフィルムチューブがその軸線方向末端の一方を例えば溶接または接着によって閉鎖されてストッキング状形成物を予め形成するなら、フィルムチューブは一方の軸線方向末端のみが創傷周囲皮膚と密封結合される。
【0038】
以下で本発明は図面を参考に説明される。明細書のなで詳しく強調されていないが発明上重要なすべての詳細に関して図面を参照するよう明確に指示される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す。
図2】第2実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す。
図3】第3実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す
図4図3による吸込接続部を備えて実施された創傷治療装置を示す。
図5】第4実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す。
図6図5による吸込接続部を備えた創傷治療装置を示す。
図7】第5実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す。
図8図7による吸込接続部を備えた創傷治療装置を示す。
図9】第6実施形態による本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部を示す。
図10-a】本発明に係る創傷治療装置用の本発明に係る被覆部材の実施形態を示す。
図10-b】本発明に係る創傷治療装置用の本発明に係る被覆部材の実施形態を示す。
図10-c】本発明に係る創傷治療装置用の本発明に係る被覆部材の実施形態を示す。
図11】本発明に係る創傷治療装置の応用例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1a)には本発明に係る創傷治療装置の吸込接続部10を下から見た図、図1b)には図1a)
による吸込接続部10を上から見た図、そして図1c)には本発明に係る吸込接続部10の断面
図がそれぞれ示してある。
【0041】
図1に示す吸込接続部10がフランジ状当接領域11を有し、この当接領域は突起なしの平
坦な円板状当接面12を備えている。この当接面12に吸引孔14が穿設されている。やはり円形の吸引孔14は当接面12の中心に配置されている。吸引孔14が結合部材20に注ぐ。この結合部材は接続管の態様に実施されており、当接面12に垂直に向けられた滲出液流れの90°方向転換を引き起こし、この流れは方向転換後に当接面12とほぼ平行に向けられている。接続管20は吸引孔14から離れた方のその末端に内径を拡張された接続領域22を有し、この接続領域に吸引チューブ30が空気密に導入可能である。接続管20を頼りに吸引流れを方向転換することによって、当接面12と平行な方向に吸引チューブ30を向けることが可能となる。これにより吸込接続部10およびこれと結合された吸引チューブ30を患者の身体にほぼ支障なく当接させることが可能となる。
【0042】
図1c)に示す実施形態では吸引チューブ30は、その内周面が接続管20の接続領域22に隣
接する内面領域と一直線に並び、こうして創傷滲出液に対する流れ抵抗が最小となるように寸法設計されている。
【0043】
図2a)による実施形態では、当接面12の吸引孔14を含む中央領域は創傷滲出液を吸引孔14へと導くべく設計されたドレナージ層40によって覆われている。ドレナージ層40は当接
面12に貼り付けられており、当接面12の固着領域16によって環状に取り囲まれる。
【0044】
図2b)による実施形態では当接面12がドレナージ層40によって完全に覆われている。吸
込接続部10の当接面12から離れた方の周面には接続管20を取り囲む固着領域16‘が設けられており、この固着領域は固着領域16と同様に接着層を備えておくことができ、この接着層は本発明に係る創傷治療装置内で吸込接続部10を利用する前、剥離可能な保護層によって覆っておくことができる。
【0045】
図3による吸込接続部が図1図2による吸込接続部と相違しているのは実質的に、当接
領域11が吸引孔14を補足してなお1つの通気孔80も有し、この通気孔を通して制御下に創
傷に通気し、こうして滲出液の排出を改善する意味で創傷領域内の流れ条件を改善できることによってである。通気孔80は吸引孔14よりも大きな直径を有する。通気孔80を当接領域11内で取り囲む縁部は段差を有することができ、この段差は図4図5によれば抗菌フィルタ82用載置面として利用することができる。これにより通気孔80の領域で流れ抵抗が強まるが、しかしながらこれは通気孔80の直径を調整することによって再び補償することができる。
【0046】
本発明の枠内でフィルタ82の流れ抵抗は空気の流れを制御するのに利用することができる。流れ抵抗はフィルタ細孔を縮小することによって強まる。この制御は通気と同時に陰圧の発生を促進する。通気孔80が過度に大きく選択されるなら、陰圧はフィルタを利用することなくして発生することができない。通気孔80は水蒸気透過性被覆フィルム60の(平面図で)上に配置しておくこともできる。大切なのは創傷に空気が供給されることである。このため、空気が円滑に通気孔80へと流れることがでるように被覆フィルム60に穴を多少ずらして設けると望ましいことがある。
【0047】
抗菌フィルタ82は図面に示した実施形態においてポリテトラフルオロエチレンで形成されており、細孔寸法が0.001、特に0.005、好ましくは0.02、特別好ましくは0.1~5マイクロメートルの範囲内である。図6a図6bによる創傷治療装置においてフィルタはドレナージ層40によって覆われる。図4を基に説明したように、図3による吸込接続部は図1による
吸込接続部と同様に、被覆フィルム60に貼り付けられているように取り付けることができる。
【0048】
図5による実施形態が図3による実施形態と相違しているのは実質的に、吸引チューブがトリプルルーメンチューブ32として実現されていることによってであり、図6に概略示唆
したように中央の最大ルーメン34は創傷領域に陰圧を発生するのに利用され、小さなルーメン36は創傷の通気に利用することができ、一層小さなルーメン38は創傷領域内での圧力測定を想定されている。接続領域22はやはりルーメン32、34、36に対応したルーメン24、26、28を有する。
【0049】
図5図6による実施形態は、滲出液の管理をさらに改善できるようにするために通気ルーメン26の他になお1つの通気孔80も有する。
【0050】
図7による実施形態が図3による実施形態と相違しているのは実質的に、吸引孔14および通気孔80を補足して吸込接続部10の当接領域11になお1つの供給孔100も設けられており、供給孔100を他のチューブ130と結合する他の接続管110がこの供給孔に付設されているこ
とによってである。チューブ130と他の接続管110と供給孔100とを介して創傷治療剤、例
えば場合によって薬剤、消毒剤等々とも混合された洗浄溶液は創傷領域に持ち込むことができる。図7による実施形態は、供給孔100が通気にも利用できるので、個別の通気孔80を用いることなく利用することもできる。しかしながら滲出液を良好に管理する意味で特別望ましいと実証されたのは、通気孔80も供給孔100も吸込接続部10の当接領域11で吸引孔14の横に設けられていることである。
【0051】
図8に認めることができるように、洗浄溶液は他のチューブ130と他の接続管110とを介
して当該調量要素114を頼りに創傷領域に持ち込むことができる。その際特別望ましいと
実証されたのは、供給孔100がドレナージ層40によって覆われるのでなく、供給される洗
浄溶液による影響を受けることなく創傷滲出液の吸引をこうして保証し、供給された洗浄溶液が直ちに再び吸引されるのを防止することである。
【0052】
図9による実施形態が図7を基に説明した実施形態と相違しているのは、図5による実施
に匹敵する実施および機能のトリプルルーメンチューブ132が利用されていることによっ
てである。このため図9による実施は創傷滲出液の吸引と創傷領域の通気と圧力測定とを
行うトリプルルーメンチューブと、通気孔80と、供給孔100とを有する。これにより最適
な創傷管理は保証することができる。
【0053】
図3図9を基に説明した実施形態は、図1図2を基に説明した実施形態とは異なり、円形状とは異なる形状、つまり例えば菱形形状の当接領域を有する。菱形の角は丸められている。この菱形形状によって、吸引孔と通気孔と供給孔とを一直線上に配置することを可能とする縦軸が用意される。
【0054】
図10a)に示す被覆部材は、正円柱外被形状とすることのできるフィルムチューブ200の
態様に実施されている。図10a)に示したフィルムチューブの両方の末端210、212は、チューブをそっくり四肢に被着できるように開口して実施されている。図10b)による本発明に係る被覆部材が図10a)による被覆部材と相違しているのは実質的に、中空チューブ200の
上側末端210‘が閉鎖されていることによってである。
【0055】
図10c)による実施形態では、フィルムチューブとして実施される被覆部材が円錐台外被形状に、つまり円錐状に拡張可能である。その際一方の末端、例えば上側末端310は閉鎖
しておくことができ、他方の例えば下側の末端312は開口して形成しておくことができる
。特別好ましくは、横断面の小さい方の末端が閉鎖されている。その場合フィルムチューブは例えばストッキングの方式で足に装着し、または場合によっては手袋の方式で手に装着することができる。
【0056】
図11には本発明に係る創傷治療装置のさまざまな応用例が示してある。図11a)は膝関節領域での応用を示す。認めることができるように、被覆部材は図10c)または図10a)に示した被覆部材の態様で両側が開口したチューブ状に実施されており、相反する末端が粘着剤を頼りに周囲皮膚に固着されている。
【0057】
図11b)による応用例では創傷治療装置が踝に当接されている。この例において被覆部材は、利用者のふくらはぎ領域で周囲皮膚に固着される閉鎖フィルムチューブの方式に実施されている。
【0058】
最後に図11c)に示す応用例では創傷治療装置が患者の前腕に当接されている。この例では被覆部材が両側の開口したフィルムチューブとして実施されており、フィルムチューブは図10c)の図示に相応して円錐状に実施され、両方の反対側縁部が周囲皮膚に付着させて固着されている。
【0059】
本発明は、図面を基に説明した実施形態に限定されていない。特に、場合によって支持フィルムに被着しておくこともできるチューブ状被覆フィルムの利用が想定されており、被覆フィルムを創傷に当接後に支持フィルムは被覆フィルムから剥がすことができる。その際望ましくは周方向で完全に閉鎖されたチューブフィルムが利用され、このチューブフィルムは少なくとも一方の軸線方向末端にのみ1つの孔を有し、吸込接続部を介して滲出
液を導出するのに必要なチューブフィルムの孔はチューブフィルムを創傷に当接後に形成される。このためチューブフィルムは例えば適切な箇所で切り開くことができる。ポリウレタンフィルムの他に、別の皮膚適合性で水蒸気透過性のフィルムを利用することもできる。重要なのは、被覆部材が実質的に空気密、水密に密閉創傷空間を限定し、耐菌性で好適な水蒸気透過率を有し、生体親和性で皮膚に優しく、切断可能であり、場合によっては付加的支持フィルムを利用して容易に応用できることである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-a】
図10-b】
図10-c】
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-07-06
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
抗菌フィルタ82は図面に示した実施形態においてポリテトラフルオロエチレンで形成されており、細孔寸法が0.001、特に0.005、好ましくは0.02、特別好ましくは0.1~5マイクロメートルの範囲内である。図4による創傷治療装置においてフィルタはドレナージ層40によって覆われる。図4を基に説明したように、図3による吸込接続部は図1による吸込接続部と同様に、被覆フィルム60に貼り付けられているように取り付けることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
図5による実施形態が図3による実施形態と相違しているのは実質的に、吸引チューブがトリプルルーメンチューブ32として実現されていることによってであり、図6に概略示唆したように中央の最大ルーメン34は創傷領域に陰圧を発生するのに利用され、小さなルーメン36は創傷の通気に利用することができ、一層小さなルーメン38は創傷領域内での圧力測定を想定されている。接続領域22はやはりルーメン343638に対応したルーメン24、26、28を有する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷周囲皮膚に固定可能で前記創傷を含む密閉創傷空間を実現するのに役立つ被覆部材と前記創傷空間内に陰圧を発生することのできる吸込接続部とを備えた創傷治療装置において、前記被覆部材が少なくとも一部で水蒸気透過性であることを特徴とする創傷治療装置。
【手続補正5】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図6
【補正方法】変更
【補正の内容】
図6
【外国語明細書】