IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッドの特許一覧 ▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126751
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ケミカルメカニカル研磨パッド
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20220823BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 621D
H01L21/304 622F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022097801
(22)【出願日】2022-06-17
(62)【分割の表示】P 2018045188の分割
【原出願日】2018-03-13
(31)【優先権主張番号】15/476,404
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】バイニャン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】フェンジィ・イエ
(72)【発明者】
【氏名】トゥ-チュン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】シェン-ファン・ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ウェン-ファン・トン
(72)【発明者】
【氏名】マーティー・ダブリュ・ディグルート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、例えば銅又はタングステンを含む半導体ウェーハー中の金属表面のような金属表面のCMP研磨方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、数平均分子量6000~15,000を有し、1分子あたり平均5~7個のヒドロキシル基を有するポリオール硬化剤及び多官能芳香族アミン硬化剤類を含む硬化剤成分との反応生成物である研磨層中の最上研磨表面を有するCMP研磨パッドを用いたCMP基材研磨を含むが、そこでは研磨層は、もし非充填の場合、室温で脱イオン(DI)水中に1週間浸漬した後、4から8重量%の吸水率を有する。この方法は、低不良率と最小度のディッシング度を有する、共平面の金属及び絶縁又は酸化物層表面を形成する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハー、磁性又は光学基材の金属表面をCMP研磨する方法であって、
研磨層に最上研磨表面を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含み、
前記研磨層が、
8.5~9.5重量%の未反応NCO基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポ リマーと;
硬化剤成分であって、
硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.3~70重量%の、6000~15,0 00の数平均分子量を有し、かつ1分子あたり平均5~7個のヒドロキシル基を有 するポリオール硬化剤、及び
硬化剤成分の固形分重量に基づいて30~39.7重量%の多官能芳香族アミン硬 化剤
を含む硬化剤成分と
の反応生成物を含み、
前記研磨層が、非充填又は更なる空孔がなければ、室温で脱イオン(DI)水に1週間浸漬した後の吸水率が4~8重量%であり、かつショアーD硬度の範囲が28~64であり、
前記最上研磨表面が前記基材の金属表面を平坦化及び研磨するように適合され、それにより低不良率と最小度のディッシングを有する共平面の金属及び絶縁又は酸化物層表面を形成する、
CMP研磨方法。
【請求項2】
前記CMP研磨が、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.6~65重量%のポリオール硬化剤を含む硬化剤成分との反応生成物を含む研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CMP研磨が、
イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、
硬化剤成分であって、
ポリオール硬化剤、及び
4,4’‐メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン)(MBOCA)、4,4’‐ メチレン‐ビス‐(3‐クロロ‐2,6‐ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジ エチルトルエンジアミン(DETDA);3,5‐ジメチルチオ‐2,4‐トルエ ンジアミン(DMTDA)、それらの異性体、又はそれらの混合物のいずれかであ る2官能性硬化剤
を含む硬化剤成分と
の反応生成物を含む研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記CMP研磨が、30~60の範囲のショアーD硬度を有する研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記CMP研磨が、35~55の範囲のショアーD硬度を有する研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CMP研磨が、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中の未反応NCO基に対する前記硬化剤成分中の反応性水素基(NHとOH基の合計として定義される)の化学量論比が0.85:1~1.15:1の範囲である反応生成物である研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
半導体ウェーハーにおける銅又はタングステン含有金属表面をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記CMP研磨が、いかなるジオールも実質的に含まない硬化剤成分の反応生成物から本質的になる研磨層を有する前記CMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記CMP研磨が、0.4~1.15の比重(SG)を有し、かつ非充填又は更なる空孔がないとき、1.1~1.2の比重(SG)を有する反応生成物である研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記CMP研磨が、ガス充填又は中空微小要素を含む研磨層を有するCMP研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハー、あるいは磁性又は光学基材の金属表面を平坦化し、それにより低不良率と最小度のディッシング(dishing)を有する金属と絶縁体層の共表面を形成する化学的・機械的研磨(ケミカルメカニカルポリッシング:CMP研磨)を含む方法、及び該方法に使用されるCMP研磨パッドに関する。より具体的には、本発明は、CMP研磨が、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと数平均分子量6000~15,000で、一分子あたり平均5~7個のヒドロキシル基を有するポリオール硬化剤60.3~70重量%を含む硬化剤成分との反応生成物であるポリウレタンを含むCMP研磨パッドにより半導体ウェーハー、メモリーあるいは光学基材を研磨すること含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子装置の製造においては、導体、半導体、及び絶縁材料の複数の層を半導体ウェーハーの表面上に付着させたり、半導体ウェーハーの表面から除去する。導体、半導体、及び絶縁材料の薄層は多くの付着技術、例えば、スパッタリングとしても知られる物理蒸着法(PVD)、化学蒸着法(CVD)、プラズマ増強化学蒸着法(PECVD)、及び電気化学めっき法、を使用して付着させることが出来る。材料層が順次付着され、除去されるにつれ、ウェーハーの最上面は非平坦になり、そのウェーハーの後続の層に効果的に付着させるためには平坦化が必要となる。したがって、それぞれの付着層は化学的機械的平坦化(ケミカルメカニカルプラナリゼーション)、あるいは化学的機械的研磨(CMP研磨)によって平坦化される。このように、CMP研磨は、望ましくない表面トポロジーならびに表面欠陥、たとえば粗面、凝集した材料、結晶格子の損傷、スクラッチ及び汚染された層または材料を除去するのに有効である。
【0003】
金属層は半導体ウェーハー上に付着され、半導体集積回路の多段階(多階層)のメタライゼーションの金属接触及び相互連結としての導体通路を形成する。金属は例えば、トレンチ(溝)、又はトラフを埋め込み、ポストフォールを埋め込み、或いはミクロ又はナノスケールの導体回路部品を含むように層として付着されてもよく、また母線や接着パッドのようなより大きな形態で付着されてもよい。しかしながら、銅のようなより軟性または延性の金属のCMP研磨では、金属はディッシングのような非平面仕上げで除去されることがあり得る。ここで用語「ディッシング」とは、CMP研磨が、CMP研磨の後、酸化物のキャビティー又はトラフのような低い範囲で、金属リセス(ここで、金属層は、平坦であるべきものが平坦でなく、基板ウェーハーのさらに低い層と共平面に残るべきはずのものが残っていない)を引き起こす現象をさす。
【0004】
前記ディッシングの問題は、半導体ウェーハーと装置が、形体の更なる微細化とメタライゼーション層がより多くなるに伴い、益々複雑になってきたために、近年より顕著になってきた。この傾向は、平坦さを維持し研磨不良を制限するために研磨消耗品(パッド及びスラリー)の改善された性能を要求する。このようなウェーハー及び装置の欠陥は、半導体装置を制御不能にするであろう導線の電気的断線又は短絡を生じさせるおそれがある。マイクロスクラッチ又はチャターマークのような研磨の欠陥を減らすための一つの手法が、より柔軟な研磨パッドを使用することであることは一般に知られている。さらに軟質の金属層の研磨はより軟質のCMP研磨パッドを使用することを必要とする。しかしながら、軟質のパッドを用いた研磨が、そのようなパッドを使用して研磨した基材の不良率を改善する一方で、そのような軟質パッドはその柔軟な性質のために、メタライズされた半導体ウェーハー表面のディッシングを増加させ得る。
【0005】
Qianらの米国特許出願公開公報第2015/0306731A1号は、ポリイソシアネートプレポリマーと平均3~10のヒドロキシル基を有する60重量%未満の高分子量ポリオール硬化剤とジオール及びジアミンから選ばれた40%を超える2官能性硬化剤との反応生成物を含むCMC研磨パッドを開示している。Qianらは延性金属及び軟質基材のCMP研磨方法を開示していない。さらにQianはメタライズされた半導体ウェーハー表面におけるディッシングの問題を解決するいかなる研磨パッドも開示していない。したがって、低減された不良率及び改善されたディッシング性能を可能にする金属CMP研磨パッドと金属CMP研磨方法の必要性が残されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[発明の記述]
本発明者らは、半導体ウェーハー又はデバイス基材の金属表面のCMP研磨をして、不良率を減少させ、かつ同時に該基材表面上の金属のディッシングを減少させることを可能にするという問題の解決を模索してきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、半導体ウェーハー、磁性または光学基材の金属表面をCMP研磨する方法は研磨層中に最上面の研磨表面を有するCMC研磨パッドを用いてその基材をCMP研磨することを含み、その研磨層は、8.5~9.5重量%、好ましくは8.95~9.25重量%の未反応NCO基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーと;6000~15,000、または、好ましくは、10,000~13,000の数平均分子量を有し、かつ一分子中あたり平均5~7個の、好ましくは6個のヒドロキシル基を有し、硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.3~70重量%、又は、好ましくは、60.5~67重量%、又は、より好ましくは、60.6~65重量%のポリオール硬化剤と;2官能性硬化剤類、好ましくは、4,4’-メチレン‐ビス(2‐クロロアニリン)(MBOCA),4,4’‐メチレン‐ビス(3‐クロロ‐2,6‐ジエチルアニリン)(MCDEA),ジエチルトルエンジアミン(DETDA),3,5‐ジメチルチオ‐2,4‐トルエンジアミン(DMTDA)、それらの異性体、又は、それらの混合物のような多官能芳香族アミン硬化剤類(該硬化剤成分の固形重量ベースで30~39.7重量%、好ましくは、33~39.5重量%、又は、より好ましくは35~39.4重量%)との反応生成物からなり、ここで研磨層は、もし非充填であるか、或いは更なる空孔がない場合、室温で脱イオン(DI)水に1週間浸漬した後に4~8%の吸水率を有し、ショアーD硬度の範囲は28~64、または好ましくは30~55、または、より好ましくは35~55であり、ここで、最上研磨表面は、基材中の金属表面を平坦化及び研磨するように適合され、それにより、低不良率と最小度のディッシングを有する共平面の金属及び絶縁又は酸化物層表面を形成する。
【0008】
本発明の方法によれば、該方法は研磨層を用いて基材をCMP研磨することを含むが、この研磨層はイソシアネート末端ウレタンプレポリマー中の未反応のNCO基に対する反応性水素基(NHとOH基の合計と定義される)の化学量論比が0.85:1~1.15:1、又は、好ましくは、1.02:1~1.08:1の範囲の反応生成物を含む。
【0009】
本発明の方法によれば、本方法は、半導体ウェーハーの銅またはタングステンを含む金属表面、好ましくはバルク銅表面、銅バリアー表面のような銅含有表面のCMP研磨を含む。
【0010】
本発明の方法によれば、該方法は、研磨層を有するCMP研磨パッドを用いたCMP研磨からなるが、この研磨層は、ポリテトラメチレングリコール(PTMEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、1,4‐ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらの混合物のようなジオールを5重量%あるいはそれ以下か、いかなるジオールをも実質的に含まない硬化剤成分の反応生成物から実質的に成る。ここで用語「いかなるジオールも実質的に含まない」は硬化剤成分がいかなるジオールについても2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下を含むことを意味する。
【0011】
本発明の方法によれば、該方法は、0.4~1.15、または、好ましくは0.6~1.1、または、より好ましくは0.7~1.0の比重を有する研磨層を有するCMC研磨パッドを用いて基材をCMP研磨することを含む。これらの方法にしたがえば、該方法は、反応生成物が、非充填であるか或いはさらなる多孔度を有さない場合に、1.0~1.3、又は、好ましくは、1.1~1.2の比重を有する研磨層を含むCMP研磨パッドを用いてCMP研磨することを含む。
【0012】
本発明の方法によれば、該方法は、たとえば、好ましくは、前記CMP研磨がその多孔度を生むポリマー微小球のような、ガス充填又は中空の微小要素を含む研磨層を有するCMP研磨パッドを用いてCMP研磨することを含む。好ましくは、そのようなガス充填又は中空の微小要素の量は、研磨層の固形重量をベースにして、0~5重量%、又はより好ましくは1.5~3重量%の範囲にある。
【0013】
本発明の方法によれば、このCMP研磨は、平盤(プラテン:platen)を有するCMP研磨装置を提供すること;研磨すべき少なくとも1つの基材を提供すること;本発明のCMP研磨パッドを提供すること;平盤にCMPパッドを取りつけること;任意選択的に、CMP研磨パッドの研磨表面と基材との界面に研磨媒体を供給すること(好ましくは、その場合、この研磨媒体が研磨スラリーおよび砥粒非含有反応性液体配合剤からなる群から選択される);そして、研磨表面と基材との間に動的接触を生じさせる(かくして、基材から少なくともある材料が除去される)こと;を含む。
【0014】
本発明の方法によれば、該方法は、本発明のCMP研磨パッドを用いるCMP研磨を含み、そして、さらに研磨表面と基材の界面に研磨媒体を供給すること;そして、例えば、基材を回転させるか、研磨層を有するCMP研磨パッドを回転させるか、或いはその両方を回転させることによって、研磨表面と基材との間に動的接触を生じさせ、それにより少なくともある材料が基材から除去されること;を含む。
【0015】
本発明の方法によれば、該方法は、本発明のCMP研磨パッドを用いたCMP研磨及び、そして、別々に或いは同時に、調整用ディスクを用いてCMP研磨パッドの研磨層を調整し、その結果CMP研磨パッドが表面微小構造を有するようになることを含む。
【0016】
本発明のもう一つの側面において、CMP研磨パッドは、8.5~9.5重量%の未反応NCO基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.3~70重量%、或いは、好ましくは60.5~67重量%、或いは、さらに好ましくは60.6~65重量%の、数平均分子量が6000~15,000、又は、好ましくは、10,000~13,000であり、1分子あたり平均5~7個、又は、好ましくは、6個のヒドロキシル基を有するポリオール硬化剤、及び硬化剤成分の固形分重量に基づいて30~39,7重量%、好ましくは33~39.5重量%、或いはより好ましくは35~39.4重量%の、好ましくは、4,4’‐メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン)(MBOCA)、4,4’‐メチレン‐ビス‐(3‐クロロ‐2,6‐ジエチルアニリン)(MCDEA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA);3,5‐ジメチルチオ‐2,4‐トルエンジアミン(DMTDA)、それらの異性体、あるいはそれらの混合物のような2官能性硬化剤のような多官能芳香族アミン硬化剤との反応生成物である研磨層を含み、この研磨層は、もし非充填か或いは更なる空孔がない場合、室温で脱イオン(DI)水に1週間浸漬した後に4~8重量%の吸水率を有し、かつ、ASTMD2240‐15(2015)によって測定されたショアーD硬度(28~64、または好ましくは30~60、より好ましくは35~55の範囲)を有し、その最上研磨面は基材の金属表面を平坦化し、かつ、研磨し、それにより、低不良率と最小度のディッシングを有する、共平面の金属及び絶縁又は酸化物層表面を形成する。
【0017】
本発明のCMP研磨パッドによれば、このCMP研磨パッドは実質的に、5重量%或いはそれ以下、又は、ポリテトラメチレングリコール(PTMEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、1,4‐ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又は、それらの混合物のようないかなるジオールも実質的に含まない硬化剤成分の反応生成物からなる。用語「いかなるジオールも実質的に含まない」とは本硬化剤成分中のジオールが2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下を含み、又は、いかなるジオールも含まないことを意味する。
【0018】
本発明のCMP研磨パッドによれば、該研磨層は、イソシアネート末端プレポリマーにおける未反応のNCO基に対する、反応生成物中の反応性水素基(NHとOH基の合計と定義される)の化学量論比が0.85:1~1.15:1、又は好ましくは、1.02:1~1.08:1の範囲である反応生成物を含む。
【0019】
本発明のCMP研磨パッドによれば、該CMP研磨パッドは、比重(SG)が0.4~1.15、又は、好ましくは、0.6~1.1、又は、より好ましくは、0.7~1.0の研磨層を有する。
【0020】
本発明のCMP研磨パッドによれば、その研磨層は、もし非充填であるか、或いは更なる空孔がない場合、1.0~1.3、又は好ましくは、1.1~1.2の比重(SG)を有する反応生成物である。
【0021】
本発明のCMP研磨パッドによれば、その研磨層は、好ましくはそのようなCMP研磨がその多孔度を生むポリマー微小球のような、ガス充填又は中空の微小要素を含む。好ましくは、そのようなガス充填又は中空の微小要素の量は、研磨層の固形重量をベースにして、0~5重量%、又はより好ましくは1.5~3重量%の範囲にある。
【0022】
別段指示されない限り、温度および圧力条件は室温および標準圧力である。ここで記載されるすべての範囲は包括的かつ組み合わせが可能である。
【0023】
別段指示されない限り、括弧を含む用語は、代替的に、括弧が存在しない場合の完全な用語及び括弧を有しないその用語並びに各選択の組み合わせを示す。すなわち、用語「(ポリ)イソシアネート」はイソシアネート、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を示す。
【0024】
全ての範囲は包括的かつ組み合わせが可能である。たとえば、用語「50~3000cPsの範囲又は100cPs以上」は、50~100cPs、50~3000cPs、及び100~3000cPsのそれぞれを含む。
【0025】
本明細書中で使用される用語「ASTM」とはASTM International,West Conshocken,PAの刊行物をいう。
【0026】
本明細書中で使用される用語「更なる空孔がない」とは、CMP研磨パッドの研磨層がそこで反応混合物に対し、1気圧(101kPa)より高い圧力のもとで窒素ガス(N)、CO2、又は空気のような、周囲の大気より高いガスの付加により形成された、ガス充填或いは、中空の微小球または気孔を含んでいないことを意味する。
【0027】
本明細書中で使用されるポリオールについての用語「数平均分子量」とは、生成物のヒドロキシル当量と1モルあたりのヒドロキシル基の平均数の積により決定される重量を意味する。ヒドロキシル当量は、与えられた製造業者の仕様において報告されているか、あるいは、次の式を用いてASTM D4274(2011)にしたがってポリオールを滴定することにより決定された、mgKOH/gにおけるヒドロキシル数から計算される。
ヒドロキシル当量=56100/ヒドロキシル基数
【0028】
本明細書中で使用される用語「ポリイソシアネート」は、保護された(ブロックされた)イソシアネート基をはじめとする3個以上のイソシアネート基を有するいかなるイソシアネート基含有分子をも意味する。
【0029】
本明細書中で使用される、本明細書及び請求の範囲中で使用される用語「研磨媒体」は粒子含有研磨溶液と、粒子を含まない研磨溶液(例えば、砥粒フリーで反応性の液体研磨溶液)を包含する。
【0030】
本明細書中で使用される用語「ポリイソシアネートプレポリマー」とは、ジアミン、ジオール、トリオール、及びポリオールのような2個以上の活性水素基を含有する活性水素含有化合物と過剰量のジイソシアネート又はポリイソシアネートとの反応生成物であるいかなるイソシアネート基含有分子をも意味する。
【0031】
本明細書中で使用される用語「ショアーD硬度」とは、ASTM D2240-15(2015)“Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness”にしたがって測定される所与の材料の硬度である。硬度は、Dプローブを備えたRex Hybrid硬度試験機(Rex Gauge Company, Inc., Buffalo Grove, IL)で計測した。六個の試料を積み重ね、硬度測定ごとに入れ替えた。
【0032】
本明細書中で使用される用語「比重」すなわちSGは、水の密度に対する所与の材料の相対的な密度をいうが、ASTM D1622(2014)にしたがって測定されるように、所与の材料の既知の体積の重量を測り、その結果を同体積の水の重量で割ることによって決定される。
【0033】
特に断りがない限り、本明細書中で使用される用語「粘度」は、間隙100μmの50mm平行プレート配置で、0.1~100rad/secの振動せん断速度スイープにセットされたレオメーターを使用して計測される、所与の温度での無溶媒形体(ニート状)(100%)の所与の材料の粘度をいう。
【0034】
特に断りがない限り、本明細書中で使用される用語「重量%NCO」は、所与のNCO基又は保護されたNCO基含有製品に関する仕様書又はMSDSで報告されている量をいう。
【0035】
本明細書中で使用される用語「重量%」は重量百分率を意味する。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、半導体ウェーハーの銅金属表面のような金属表面の平坦化に当って不良率及びディッシングを低減するCMP研磨方法と化学的機械的研磨パッドを提供する。本発明の化学的機械的研磨パッドは、低欠陥率の研磨性能と良い相関を有する物理諸特性の所望のバランスと、高速の研磨速度を維持しつつ、ダイヤモンド調整ディスクを用いながら微小構造の形成を促進する調整能力の両方を発揮する研磨層を有する。したがって、本発明の研磨層が可能にした物理諸特性のバランスは、たとえば、半導体装置の電子的な完全性を損なう可能性のある微小スクラッチを生じさせることにより、ウェーハー表面を損傷させることなく、半導体ウェーハーの研磨に効率的な速度を与える。 驚くべきことに、金属、又はメタライズした表面を含んだ基材をCMP研磨するにあたって、本発明の研磨層を有するCMP研磨パッドは、不良率を改善すると同時に、金属表面を平坦化、又は、研磨するにあたって、同等又はより良好なディッシング性能を与えることができる。
【0037】
本発明のCMP研磨パッドは、非充填の研磨層か或いは更なる空孔の無い研磨層が室温で、脱イオン(DI)水に1週間浸漬した後、4~8重量%の水分吸収量である研磨層を有する。本発明者らは、そのような異常に高い水分吸収量が、基材のディッシング低減をともなった本発明にしたがえば、金属又はメタライズされた基材の欠陥の無いCMP研磨を可能にすることを見出した。更に、このCMP研磨パッドは、従来の研磨方法を用いても本発明の方法を成功させる研磨層を有する。
【発明を実施するための形態】
【0038】
基材をCMP研磨するための本発明の方法は、好ましくは、平盤(プラテン)を有する化学的機械的研磨装置を供給すること;研磨される少なくとも1つの基材を供給すること;本発明の化学的機械的研磨パッドを供給すること;平盤上に化学的機械的研磨パッドを設置すること;任意選択的に、化学的機械的研磨パッドの研磨表面と基材との界面に研磨媒体(好ましくは、ここで、研磨媒体は研磨スラリーと砥粒なしの反応性液体配合物からなる群より選択される)を供給すること;研磨表面と基材との間に動的接触を生じること、ここでは、基材から少なくともある材料が除去されるが;そして、任意選択的に、研磨表面を研削調整剤を用いて調整することを含む。好ましくは、本発明の方法において、提供される化学的機械的研磨装置は、光源とフォトセンサー(好ましくはマルチセンサー分光器)をさらに含み;そして、提供される化学的機械的研磨パッドは終点検出ウィンドウをさらに含み;そして、その方法はさらに、光源からの光を終点検出ウィンドウに通して伝送し、基材の裏面から反射して終点検出ウィンドウを反対に通過してフォトセンサーに入射する光を分析することによって研磨終点を決定することを含む。
【0039】
本発明は、平盤を有する化学的機械的研磨装置を提供すること;たとえば銅またはタングステンの表面のような金属又はメタライズされた表面を有する少なくとも一つの基材を提供すること、本発明にしたがった化学的機械的研磨パッドを提供すること;平盤上に該化学的機械的研磨パッドを設置すること;任意選択的に、研磨表面と基材との間の界面に研磨媒体を供給すること;、研磨表面と基材との間に動的接触を生じさせて、少なくとも基材からある材料を除去することを含む、基材を研磨する方法を提供する。
【0040】
基材を研磨するための本発明の方法によれば、少なくとも一つの基材は、磁性基材、光学基材、半導体基材の少なくとも一つからなる群より選択される。
【0041】
本発明のCMP研磨方法は、研磨層の研磨表面と基材との間の動的接触を生じさせるための従来の方法で行なわれてもよいが、そこではウェーハーキャリヤー、または研磨ヘッドは、キャリヤアセンブリに取り付けられる。研磨ヘッドはウェーハーを保持し、CMP装置内でテーブル又は平盤上に取り付けられた研磨パッドの研磨層と接触する状態にウェーハーを配置する。キャリヤアセンブリはウェーハーと研磨パッドの間に制御可能な圧力を提供する。それと同時に研磨媒体(スラリー)は研磨パッド上に計量分配され、ウェーハーと研磨層の間隙に引き込まれる。研磨において、研磨パッドとウェーハーは一般に互いに対して回転する。研磨パッドがウェーハーの下で回転するとき、ウェーハーは一般に環状の研磨トラック、或いは研磨領域を掃き出し、その中でウェーハー表面は研磨層と直接対面する。ウェーハー表面は、研磨層及及び表面上の研磨媒の化学的かつ機械的作用によって研磨され、平坦化される。
【0042】
本発明は、研磨表面が、磁性基材、光学基材、及び半導体基材の少なくとも一つからなる群から選定される基材を研磨するのに適合した研磨表面を有する研磨層を含むCMP研磨パッドを提供する。すなわち研磨層はたとえば一つ以上の溝のようなマクロ構造と表面のミクロ構造の両方を含む。
【0043】
本発明のCMP研磨パッドの研磨層の研磨表面は、金属又はメタライズされた表面を有する基材の研磨に適合している。好ましくは、研磨表面は、磁性基材、光学基材、及び半導体基材の少なくとも一つから選択された基材研磨に適合している。より好ましくは、その研磨表面は半導体基材の研磨に適合している。
【0044】
CMP研磨の効率を改善するために、本発明のCMP研磨パッドの研磨層は穿孔又は溝のようなマクロ構造と米国特許第5,489,233に開示されている調整ディスクにより形成されるミクロ構造の両方を備えている。
【0045】
好ましくは、この研磨表面は、穿孔及び溝の少なくとも一つから選択されるマクロ構造を有する。穿孔は、研磨面から研磨層の厚さの途中まで又は全部に延びることが出来る。好ましくは、溝は研磨中に化学的機械的研磨パッドが回転すると、少なくとも一つの溝が、研磨される基材の表面を掃くように研磨面上に配設される。好ましくは、この研磨面はカーブした溝、直線状の溝及びそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの溝を含むマクロ構造を有する。
【0046】
好ましくは、本発明の化学的機械的研磨パッドの研磨層はその中に形成された溝パターンを含む、マクロ構造を伴う研磨表面を有する。好ましくは、溝パターンは複数の溝を含む。より好ましくは、溝パターンは溝デザインから選択される。好ましくは、溝デザインは、同心状の溝(円形又はらせん状でもよい)、カーブした溝、クロスハッチ溝(たとえばパッド表面上にX-Yグリッドとして配設)、他の規則的デザイン(たとえば六角形、三角形)、タイヤトレッド型パターン、不規則なデザイン(たとえばフラクタルパターン)及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。より好ましくは、溝デザインは、ランダム溝、同心円の溝、らせん状の溝、クロスハッチ溝、X-Yグリッド溝、六角形溝、三角形溝、フラクタル溝、及びそれらの組み合わせからなる群より選択される。もっとも好ましくは、研磨面は、その中に形成されたらせん溝パターンを有する。溝プロファイルは、好ましくはまっすぐな側壁を有する長方形から選択され、又は溝断面は「V」字形、「U」字形、鋸子状、及びそれらの組み合わせとすることもできる。
【0047】
本発明に係るCMP研磨パッドは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを提供すること;別箇に硬化剤成分を提供すること;そしてイソシアネート末端プレポリマーと硬化剤成分を組み合わせを形成するために組み合わせること;その組み合わせを反応させ反応物を生成せしめること;その生成物から研磨層を形成すること(例えば、その生成物から所望の厚みの研磨層に薄切りする);そして機械加工などにより研磨層に溝を形成すること;そして、その研磨層を有する化学的機械的研磨パッドを形成すること;を含む方法により製造することができる。
【0048】
本発明の化学的機械的研磨パッドの研磨層の形成に用いられるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、好ましくは、成分の反応生成物を含み、多官能イソシアネート及びプレポリマーポリオールを含む。
【0049】
好ましくは、多官能イソシアネートは、脂肪族多官能イソシアネート、芳香族多官能イソシアネート、及びそれらの混合物を含む群から選択される。より好ましくは、多官能イソシアネートは2,4‐トルエンジイソシアネート;2,6‐トルエンジイソシアネート;4,4’‐ジフェニルメタンジイソシアネート;ナフタレン‐1,5‐ジイソシアネート;トルイジンジイソシアネート;パラ‐フェニレンジイソシアネート;キシレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;4,4’‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート;及びそれらの混合物の群から選択されたジイソシアネートである。
【0050】
好ましくは、プレポリマーポリオールは、ジオール、ポリオール、ポリオールジオール、それらのコーポリマー、及びそれらの混合物を含む群から選択される。より好ましくは、プレポリマーポリオールはポリエーテルポリオール(たとえば、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン)グリコール);ポリカーボネートポリオール;ポリエステルポリオール;ポリカプロラクトンポリオール;及びそれらの混合物;及び、それらと、エチレングリコール;1,2‐プロピレングリコール;1,3‐プロピレングリコール;1,2‐ブタンジオール;1,3‐ブタンジオール;2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール;1,4‐ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5‐ペンタンジオール;3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール;1,6‐ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;及びトリプロピレングリコールからなる群から選択された一つ以上の低分子量ポリオールとの混合物からなる群より選択される。さらにより好ましくは、プレポリマーポリオールは、任意選択的に、エチレングリコール;1,2‐プロピレングリコール;1,3‐プロピレングリコール;1,2‐ブタンジオール;1,3‐ブタンジオール;2‐メチル‐1,3‐プロパンジオール;1,4‐ブタンジオール;ネオペンチルグリコール;1,5‐ペンタンジオール;3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオール;1,6‐ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;ジプロピレングリコール;及びトリプロピレングリコールからなる群より選択された少なくとも一つ以上の低分子量ポリオールを混合した;ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG);ポリプロピレンエーテルグリコール(PPG)類、及びポリエチレンエーテルグリコール類の少なくとも一つからなる群より選択される。最も好ましくは、プレポリマーポリオールは主成分が(すなわち、≧90重量%が)PTMEGである。
【0051】
好ましくは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは8.5~9.5重量%(より好ましくは、8.75~9.5重量%、さらにより好ましくは、8.75~9.25、もっとも好ましくは、8.95~9.25重量%)の未反応イソシアネート(NCO)濃度を有する。市販されているイソシアネート末端ウレタンプレポリマーの例としては、Imuthane(登録商標)プレポリマー(COIM USA,Incから入手可能な、たとえば、PET-80A、PET-85A、PET-90A、PET-93A、PET-95A、PET-60D、PET70D、PET75D);Adiprene(登録商標)プレポリマー(Chemturaから入手可能な、たとえば、LF800A、LF900A、LF910A、LF930A、LF931A、LF939A、LF950A、LF952A、LF600D、LF601D、LF650D、LF667 、LF700D、LF750D、LF751D、LF752D、LF753D 及びL325);Andur(商標登録)プレポリマー(Anderson Development Companyから入手可能な、たとえば、70APLF、80APLF、85APLF、90APLF、95APLF、60DPLF、70APLF、75APLF)が挙げられる。
【0052】
好ましくは、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーは、0.1重量%未満の遊離トルエンジイソシアネート(TDI)モノマー含量を有する、低遊離イソシアネート末端ウレタンプレポリマーである
【0053】
本発明のCMP研磨パッドの研磨層の形成に用いられる硬化剤成分は、ポリオール硬化剤類、及び2官能性の硬化剤のような多官能芳香族アミン硬化剤を含む。
【0054】
市販のポリオール硬化剤の例として、Specflex(商標)のポリオール類、Voranol(商標)のポリオール類、Voralux(商標)のポリオール類(The Dow Chemical Company より入手可能)を含む。 好ましいポリオール硬化剤を下の表1Aに載せる。
【0055】
【表1】
【0056】
好ましくは、2官能性硬化剤はジオール類及びジアミン類より選択される。より好ましくは、使用されるその2官能性硬化物は、第一級アミン類及び第二級アミン類からなる群より選択されるジアミン類である。更により好ましくは、使用される2官能性硬化剤は、ジエチルトルエンジアミン(DETDA);3,5‐ジメチルチオ‐2‐4‐トルエンジアミンとその異性体;3,5‐ジエチルトルエン‐2,4‐ジアミンとその異性体(例えば3、5ジエチルトルエン‐2,6‐ジアミン);4,4’‐ビス‐(sec-ブチルアミノ)‐ジフェニルメタン;1,4‐ビス‐(sec‐ブチルアミノ)‐ベンゼン;4,4’‐メチレン‐ビス‐(2-クロロアニリン);4,4’‐メチレン‐ビス‐(3‐クロロ‐2,6‐ジエチルアニリン(MCDEA);ポリテトラメチレンオキサイド-ジ‐p‐アミノベンゾエイト;N‐N’‐ジアルキルジアミノジフェニルメタン;p,p’‐メチレンジアニリン(MDA);m‐フェニレンジアミン(MPDA);4,4’‐メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン)(MBOCA);4,4’‐メチレン‐ビス‐(2,6‐ジエチルアニリン)(MDEA);4,4’‐メチレン‐ビス‐(2,3‐ジクロロアニリン)(MDCA);4,4’‐ジアミノ‐3,3’‐ジエチル‐5,5’‐ジメチルジフェニルメタン;2,2’‐,3,3’‐テトラクロロジアミノジフェニルメタン;トリメチレングリコールジ‐p‐アミノベンゾアート;及びそれらの混合物からなる群より選択される。 最も好ましくは、使用されるジアミン硬化剤は4,4’‐メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン)(MBOCA);4,4’‐メチレン‐ビス‐(3‐クロロ‐2,6‐ジエチルアニリン)(MCDEA);及びそれらの異性体からなる群より選択される。
【0057】
好ましくは、本発明のCMPパッドの研磨層の形成に用いられる中で、硬化剤成分(すなわち、高分子量のポリオール硬化剤と2官能性の硬化剤)に含まれる反応性水素基である活性水素基(すなわち、アミン(NH)基類とヒドロキシル類の合計)をイソシアネート末端ウレタンプレポリマー中の未反応のイソシアネート(NCO)基類)で割ったもの(すなわち、化学量論比)は、好ましくは0.85:1~1.15:1、(より好ましくは1.02:1~1.08:1、最も好ましくは1.04:1~1.06:1)である。
【0058】
本発明のケミカルメカニカル研磨パッドの研磨層はさらに複数の微小要素を含んでもよい。好ましくは、これら複数の微小要素は研磨層全体に均一に分散される。好ましくは、これら複数の微小要素は、封入されたガス気泡、中空コアのポリマー材料、液体充填中空コアのポリマー材料、水溶性材料及び不溶性相材料(たとえば鉱油)より選択される。さらに好ましくは、これら多数の微小要素は、研磨層全体に均一に分配された、封入されたガス気泡及び中空コアポリマー材料から選択される。好ましくは、これら複数の微小要素は150μm未満(より好ましくは50μm未満、もっとも好ましくは10~50μm)の重量平均直径を有する。好ましくは、これら複数の微小要素はポリアクリルニトリルかポリアクリルニトリル共重合体(たとえばAkzo NobelからのExpancel(登録商標)微小球)のどちらかのシェル壁を有するポリマーのマイクロバルーンを含む。好ましくは、これら複数の微小要素は多孔度(porosity)0~50体積%(好ましくは10~35体積%)で前記研磨層中に導入される。多孔度の体積%は、非充填の研磨層の比重と微小要素を含む研磨層の比重の差を非充填の研磨層の比重で割ったものである。
【0059】
本発明の前記CMP研磨パッドの研磨層は、多孔及び無孔(すなわち非充填)の両方の形状で提供される。好ましくは、本発明の化学的機械的研磨層はASTM D1622-14(2014)により計測して≧0.4g/cmの密度を示す。好ましくは、本発明の前記CMP研磨パッドの研磨層は;ASTM D1622-(2014)により計測して、0.4~1.15g/cm(より好ましくは0.7~1.0g/cm)の密度を示す。
【0060】
好ましくは、本発明の化学的機械的研磨パッドの研磨層はASTM D2240(2015)にしたがって計測して、28~64のショアーD硬度を示す。より好ましくは、本発明の化学的機械的研磨パッドの研磨層はASTM D2240(2015)により計測して30~60(最も好ましくは35~55)のショアーD硬度を示す。
【0061】
柔らかい研磨層材料は硬い研磨材料に比べて、より遅い研磨速度で基材を研磨する傾向がある。しかしながら、より柔らかい研磨層材料は、より硬い研磨層材料に比べて少ない研磨不良を生じる傾向がある。本発明のCMP研磨パッドの研磨層の形成に用いられる特異な硬化剤成分は、除去速度を低下させることなくディッシングを減らすことができる。
【0062】
好ましくは、研磨層は20~150ミルの平均厚みを有する。より好ましくは、研磨層は30~125ミルの平均厚みを有し、(さらにより好ましくは、40~120ミル;最も好ましくは、50~100ミル)の平均厚みを有する。
【0063】
好ましくは、本発明のCMP研磨パッドは研磨機の平盤にインターフェースで接続される。好ましくは、このCMP研磨パッドは、研磨機の平盤に固定されるように適合される。好ましくは、このCMP研磨パッドは平盤に感圧接着剤及び真空の少なくとも一つを用いて固定されるように適合される。
【0064】
本発明のCMP研磨パッドは、任意選択的に、さらに、少なくとも研磨層とインターフェースされる(接合される)少なくとも一つの追加層を含む。好ましくは、このCMP研磨パッドは、任意選択的に、さらに研磨層に密着する圧着可能なベース層を含む。この圧着可能なベース層は好ましくは研磨層と研磨される基材との形態を改善する。
【0065】
基材研磨操作における重要な工程は加工の終点を決定することである。終点検出のための一つの慣用の現場での方法(インサイチュー法)は、選択された波長の光に対して透過性であるウィンドウを研磨パッドに設けることを含む。研磨中、光ビームが該基材表面にウィンドウを通して当てられると、そこで光ビームは反射し、ウィンドウを反対に通過して検出器(例えば、分光光度計)まで戻る。この戻り信号に基づき、終点検出目的のために、前記基材表面の性質(例えば、その上の膜の厚さ)を求めることができる。このような光に基づいた終点法を容易にするために、本発明の化学的機械的研磨パッドは、任意選択的に、さらに終点検出ウィンドウを含む。好ましくは、この終点検出ウィンドウは前記研磨層に組み込まれた一体型のウィンドウ、及び前記化学的機械的研磨パッドに組み込まれた差し込み配置型の終点検知ウィンドウブロックを含む。当業者には、本趣旨の研磨工程に使用するための終点検出ウィンドウの構造に最適な材料を選択する方法は理解できるであろう。
【0066】
本発明の化学的機械的研磨パッドの製造方法は、8.5~9.5重量%(好ましくは、8.95~9.25重量%)の未反応NCO基を有するイソシアネート末端ウレタンプレポリマーを提供すること;そして、(i)数平均分子量6000~15,000、又は好ましくは、10,000~13,000、及び分子あたり平均5~7個、好ましくは6個のヒドロキシル基をもつ、硬化剤成分の固形重量ベースで60.3~70重量%、好ましくは、60.5~67重量%、さらに好ましくは、60.6~65重量%のポリオール硬化剤、及び(ii)硬化剤成分の固形重量ベースで30~39.7重量%、好ましくは33~39.5重量%、又はより好ましくは、35~39.4重量%の2官能性アミン硬化剤類のような多官能芳香族アミン硬化剤を含む硬化剤成分を提供すること;イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと硬化剤系を混合して混合物を形成すること;その混合物を反応させて生成物を形成すること;その生成物から研磨層を形成すること;そして、その研磨層を用いて該CMP研磨パッドを形成することを含む。
【0067】
本発明のCMP研磨パッドの製造方法は、複数の微小要素を提供すること、そして、ここでは、これら複数の微小要素は前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーと前記硬化剤成分と混合して混合物を形成するが、さらに含むこともできる。
【0068】
本発明のCMP研磨パッドの製造方法は、任意選択的に、さらに、金型類を提供すること;この金型に前記混合物を注入すること;そして、この金型内で混合物を反応させ硬化ケーキを形成すること;ここで、この硬化ケーキから前記研磨層が得られる、を含む。好ましくは、硬化ケーキを薄切りにすると、一つの硬化ケーキから多くの研磨層が得られる。任意選択的に、この方法は、薄切り作業を容易にするために加熱することをさらに含む。好ましくは、この硬化ケーキは硬化ケーキが複数の研磨層に薄切りにされる薄切り作業の間、赤外線ランプにより加熱される。
【0069】
本発明のCMP研磨パッドの製造方法は、任意選択的に、さらに、少なくとも一つの追加層を提供すること;そして、少なくとも一つの追加層と前記研磨層をインターフェース(中間層)で接続し前記化学的機械的研磨パッドを形成することを含む。好ましくは、少なくとも一つの追加層は、よく知られた技術で、たとえば接着剤(たとえば感圧接着剤、ホットメルト接着剤、触圧接着剤)を使用して、前記研磨層とインターフェースで接続する。
【0070】
本発明のCMP研磨パッドの製造方法は、任意選択的に、さらに、終点検出ウィンドウを提供すること;そして、この終点ウィンドウを前記化学的機械的研磨パッド内に組み込むことを含む。
【実施例0071】
本発明は下記の実施例において詳細に説明される。
【0072】
実施例:
下の表1は本発明の研磨層と先行技術サンプルの組成を要約したものである。
【0073】
プレポリマー1はトルエンジイソシアネート(TDI)、ポリテトラメチレングリコール(PTMEG)、及び4,4‐メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)(Chemtura, Philadelphia,PA)から製造された8.95~9.25重量%の未反応NCO基を有するAdiprene(商標)L325を含み、;MbOCAは4,4’‐メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン)であり;そして、Voranol(商標)5055HHポリオール(Dow)は1分子あたり平均6個のヒドロキシ基と数平均分子量11,400を有する。
【0074】
【表2】
【0075】
表1中の処方は、バルク硬化した研磨層材料を作るために104℃で、15.5時間の間硬化した。非充填のバルク材料(2mm厚で、38mm×38mm平方)は脱イオン(DI)水に1週間浸漬した。吸水率はそれぞれの材料の重量変化百分率により計算した。パッドの硬度はそれぞれ、乾燥と湿潤の硬度に相当する、水浸漬の前と1週間後で測定した。この湿潤の硬度は浸漬したサンプルを表面の水を除去した後に測定した。サンプルの硬度は2秒(2s)と15秒(15s)の両方で記録した。下の表2は水浸漬前と1週間水浸漬後に測定した水吸収量とショアーD硬度を要約したものである。
【0076】
【表3】
【0077】
ハードセグメント含有量は、前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマー中のイソシアネート成分と前記硬化剤成分中の多官能芳香族アミン硬化剤が主に寄与する研磨層中のハードセグメントの百分率から計算した。その残部は前記イソシアネート末端ウレタンプレポリマーとポリオール硬化剤で硬化剤成分を作る際に使用したプレポリマーポリオールを主に含む、ソフトセグメントと考えられた。
【0078】
上記表1に示された前記研磨層を評価するために、前記ポリウレタン材料を2mm(80ミル)厚の厚みに薄切し、円周方向K7パターン(同心円溝パターンで、溝ピッチ1.78mm(70ミル)、溝幅0.51mm(20ミル)、及び溝深さ0.76mm(30ミル))で溝を彫り、775mm(30.5インチ)直径の研磨層を形成し;該研磨層をその後The Dow Chemical Company,Midland,MI)から市販入手可能なSP2310(商標)sub-padに密着させた。結果のCMP研磨パッドで、300ml/minで市販のバルク銅スラリー(CSL9044C コロイダルシリカ砥粒スラリー,Fujifilm Planer Solutions,Minato,Tokyo,Japan)を用いて、銅シートとパターンウェーハーの両方を研磨した。研磨はApplied Materials Reflxion(商標)LK300mm研磨機で行なった。前記CMP研磨パッドは、Kinik I-PDA31G-3N調整ディスク(Taipei City,Taiwan,R.O.C.)を用いて2.27kg(5lbs)のダウンフォースで脱イオン(DI)水とともに30分間、平盤回転93rpm、調整ディスク回転81rpmでならし運用した。次に3枚の銅シートウェーハーと1枚の銅パターンウェーハー上で実行データーを収録する前に、このCMP研磨パッドを用いて、テトラエトキシシラン(TEOS)酸化物のダミーウェーハーの20ピースをならし研磨した。銅シートとパターンウェーハーの研磨は1.135kg(2.5psi)の研磨ダウンフォースで、定盤回転93rpm、及びウェーハー/キャリヤー回転87rpmで行った。研磨後、基材はCX-100クリーニング溶液(Wako Pure Chemical Industries,Ltd,Osaka,Japan)で洗浄した、洗浄後、不良率とディッシング性能を決定した。
【0079】
銅シートウェーハーの不良率:不良率は検出限界0.049μmでSurfscan(商標)SP2未パターンウェーハー表面検査ツール(KLA-Tencor Corporation,Milpitas,CA)を用いて決定した。1.135kg(2.5psi)のダウンフォース研磨で、研磨された銅シートウェーハーの平均スクラッチ数を下表3に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
本発明の方法は比較例1Cの方法と比較して、改善された不良率性能を有意義に証明している。
【0082】
パターンウェーハーのディッシング:パターンウェーハーの研磨中のディッシングは(銅)薄膜(フイルム)のクリアリングの終点(その研磨の終点)を検知するための終点検知(EPD)システムを用いて評価した。このEDPシステムは異なる薄膜材料が研磨にさらされた時の信号の変化を検知する。過研磨段階(ステップ)は、その終点が検知され、銅薄膜がパターンウェーハーの酸化物のトレンチ(溝)の内側以外は確実にクリアリングされた後に実行した。この過研磨段階の研磨時間は、異なったウェーハー又は異なったパッドでも類似の過研磨量を達成した、以前のEPD時間の定められた百分率でセットした。研磨後、Bruker AFM Probes(商標)ツール(Billerica,MA)を使用し、研磨されたパターンウェーハー上の異なった形体サイズでディッシングと回路配置(topography)を測定し、total-indicated-range(TIR)をそのツールのソフトウェアを用いて計算した。銅パターンウェーハー研磨から得たディッシング性能を100×100μmと50×50μmの両方の形体サイズで表4に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
表4は比較例1Cの中で本発明のポリオール硬化剤より少ない使用量で作成したCMP研磨パッドを使用して研磨した方法と比べたとき、本発明の方法によりディッシングが実質的に改善されたことを示す。本発明に従うよりも柔らかいパッドを用いて研磨する方法が、比較例1Cにあるより固いパッドを用いて研磨する方法よりも、同等か又はより良いディッシングを提供することは期待されなかった。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハーの金属表面を研磨するのに有用なCMP研磨パッドであって
上研磨表面を有する多孔の研磨を含み、
前記多孔の研磨層が、
8.5~9.5重量%の未反応NCO基を有するトルエンジイソシアネート、ポリテ トラメチレングリコール及び4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート の反応生成物であるイソシアネート末端ウレタンプレポリマーと;
硬化剤成分であって、
硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.3~70重量%の、6000~15,0 00の数平均分子量を有し、かつ1分子あたり平均5~7個のヒドロキシル基を有 するポリオール硬化剤、及び
硬化剤成分の固形分重量に基づいて30~39.7重量%の4,4’-メチレン- ビス-(2-クロロアニリン)
から本質的になる硬化剤成分と
硬化反応生成物を含み、
空孔のないCMP研磨パッドの硬化した無孔の構成が、室温で脱イオン(DI)水に1週間浸漬した後の吸水率が4~8重量%であり、かつ、最上研磨表面を有する多孔の研磨層のASTM D2240(2015)にしたがうショアーD硬度の範囲が28~64であり、
前記最上研磨表面が前記半導体ウェーハーの金属表面を平坦化及び研磨するように適合されている、
CMP研磨パッド
【請求項2】
ポリオール硬化剤の含有量が、硬化剤成分の固形分重量に基づいて60.6~65重量%である、請求項1に記載のCMP研磨パッド
【請求項3】
硬化剤がいかなるジオールも実質的に含まない請求項1に記載のCMP研磨パッド
【外国語明細書】