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特開2022-126753ガス燃料供給システム及びガス燃料供給システムを動作させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126753
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ガス燃料供給システム及びガス燃料供給システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20220823BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20220823BHJP
   B63B 25/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
F02M21/02 L
F02M21/02 U
B63H21/38 B
B63B25/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098544
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2020098064の分割
【原出願日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】PA201970440
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(71)【出願人】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】キエントルプ ニールス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】船舶の主機関及び該船舶のガス燃料消費装置に加圧ガス燃料を供給するシステム、及び、そのようなガス燃料供給システムを動作させる方法を提供する。
【解決手段】ボイルオフガス流から加圧ガス燃料流を作ることと、加圧ガス燃料流の第1の部分を消費装置に供給することと、加圧ガス燃料流の第2の部分をボイルオフガス流と熱交換し、続いて高圧液化ガス燃料流と熱交換することと、熱交換を終えた第2の部分をスロットル装置29に通して少なくとも部分的に液化し、液化した部分を貯蔵されている液化ガス燃料に加え、ガス部分をボイルオフガス流に加えることと、を含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の主機関及び該船舶のガス燃料消費装置に加圧ガス燃料を供給するシステムであって、前記システムは、
クライオジェニック条件で液化ガス燃料を貯蔵する貯蔵タンクと;
液化ガス燃料の供給を受けるための入口であって前記貯蔵タンクに接続される入口を有する高圧クライオポンプユニットと;
前記高圧クライオポンプユニットの出口に接続される第1供給管と;
高圧気化器と;
を備え、前記第1供給管は、高圧液化ガス燃料流を前記高圧気化器に導いて、前記主機関のための高圧ガス燃料流に変化させるべく、前記高圧クライオポンプユニットの出口から延伸して前記高圧気化器を通り、前記システムは更に、
前記貯蔵タンクのボイルオフガス出口をコンプレッサーユニットの入口に接続し、ボイルオフガス流を前記コンプレッサーユニットに導くボイルオフガス管と;
第1の熱交換器と;
を備え、
前記第1の熱交換器内で前記ボイルオフガス流の熱交換が行われるように、前記ボイルオフガス管は前記第1の熱交換器を通り、
前記コンプレッサーユニットは、前記ボイルオフガス流の圧力を高めて加圧ガス燃料流を作り、
前記システムは更に、
前記加圧ガス燃料流の第1の部分を、加圧ガス燃料を消費する1つ又は複数の装置に送達するために、前記コンプレッサーユニットの出口に接続される第2供給管と;
前記第1の熱交換器を流れるボイルオフガスとの熱交換のために、前記加圧ガス燃料流の第2の部分を前記第1の熱交換器に通し、続いて前記高圧気化器を流れる前記高圧液化ガス燃料流又は気化したガス燃料流との熱交換のために、前記加圧ガス燃料流の前記第2の部分を前記高圧気化器に通すように、前記コンプレッサーユニットの出口に接続される再液化管と、
を備え、
前記システムは更に、前記加圧ガス燃料流の前記第2の部分にスロットル過程を適用して該スロットル過程の冷却効果により液化するために、前記高圧気化器の下流の前記再液化管にスロットル装置を備えると共に、前記高圧気化器及び前記スロットル過程の冷却効果により生成した液化ガス燃料を収集し、再液化ガス燃料から余分なガス燃料を分離するため分離容器であって、前記スロットル装置の下流に、前記再液化管に接続される分離容器を備える、システム。
【請求項2】
前記分離容器の液体排出口を前記貯蔵タンクの入口に接続し、再液化されたガス燃料を前記貯蔵タンクに送達する、再液化ガス管と;
前記分離容器のガス排出口を前記ボイルオフガス管に接続するガス再循環路と;
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記高圧ガス燃料流を主機関に供給する前に暖めるべく、前記高圧気化器の下流の前記第1供給管にヒーターを備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
船舶の主機関に高圧ガス燃料を供給し、該船舶の加圧ガス消費装置に加圧ガス燃料流を供給する方法であって、
クライオジェニック条件で液化ガス燃料を貯蔵タンク内に貯蔵することと;
貯蔵されている前記液化ガス燃料から取り出した液化ガス燃料流を高圧ポンプへと送り込み、高圧液化ガス燃料流を作ることと;
前記高圧液化ガス燃料流を、高圧気化器内で高圧ガス燃料流へと気化することと;
前記高圧ガス燃料流を前記主機関に供給することと;
加圧ガス燃料流を作るべく、貯蔵されている前記液化ガス燃料からボイルオフガス流をコンプレッサーに導くことと;
前記コンプレッサー内のクーラーで前記ボイルオフガス流を冷やすことと;
前記加圧ガス燃料流の第1の部分を、前記コンプレッサーから、加圧ガス燃料を消費する装置に供給することと;
前記加圧ガス燃料流の第2の部分を、前記コンプレッサーから再液化菅に導くことと;
第1の熱交換器内で前記第2の部分を前記ボイルオフガス流と熱交換すること、及びそれに続いて、第2の熱交換機内で前記第2の部分を前記高圧液化ガス燃料流と熱交換することと;
前記高圧液化ガス燃料流と熱交換することに続いて、前記第2の部分をスロットル装置に通して少なくとも部分的に液化し、続いて、前記第2の部分のうちの液化した部分とガス部分とを分離容器に通して前記液化した部分と前記ガス部分とに分離し、貯蔵されている前記液化ガス燃料に前記液化した部分を加え、前記ボイルオフガス流に前記ガス部分加えること;
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関に高圧ガス燃料を供給するガス燃料供給システム、及び、当該ガス燃料供給システムを動作させる方法に関する。
【背景】
【0002】
クロスヘッド式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、例えば大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。この大型2ストロークエンジンのサイズは巨大である。サイズが巨大であることだけが理由ではないが、この大型2ストロークエンジンは、他の内燃機関とは異なる構造を有する。
【0003】
ターボ過給式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関は、旧来の船舶用ディーゼル燃料や重油の代わりに、液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)のようなガス燃料を用いることが多くなっている。ガス燃料に代わってきた理由は、主に排出物の低減であり、環境に優しい原動機を提供しようとしているからである。
【0004】
ガス燃料を使用することに向けた技術開発は、主燃料としてガス燃料を用いるターボ過給式大型2ストローク内燃機関として2つの異なるタイプを開発することにつながった。
【0005】
そのうちの1つは、直噴式というタイプのエンジンである。このタイプのエンジンでは、ガス燃料が上死点(TDC)付近で高圧で噴射され、圧縮により生じる高温により着火する。すなわち、ディーゼルサイクルに従って着火する。ガス燃料は燃焼室に噴射された瞬間に着火し、空気過剰率が低いことによるプレイグニッション(過早点火)や、空気過剰率が高いことによるミスファイヤの心配はない。ガス燃料で運転されるこの第1のタイプのターボ過給式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関にとっての効率的な圧縮比は、液体燃料を使用する従来のターボ過給式大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関の効率的な圧縮比と同様に高く、またそれより高い。典型的には、このタイプのエンジンの効率的な圧縮比は、およそ15からおよそ17であり、一方幾何学的な圧縮比はおよそ30である。上記の第1のタイプのエンジンの利点は、非常に優れた燃料効率であり、これは高い圧縮比からもたらされる。上記の第1のタイプのエンジンの別の利点は、後述の第2のタイプのエンジンよりも、プレイグニッションやミスファイヤの危険性がずっと低いことである。
【0006】
しかし、TDC付近でガス燃料を噴射するためには、燃焼室にガス燃料を噴射する燃料弁に供給されるガス燃料の圧力を、燃焼室の圧縮圧力よりもずっと高くしなければならない。実際に、燃焼室へ噴射されるガス燃料は、最低でも250barの圧力を有さねばならず、好ましくは300barは欲しいところである。ポンプステーションによって、液化ガス燃料を例えば300barまで加圧し、続いて高圧の液化燃料を高圧気化ユニットで気化して、高圧のガスの形態で主機関の燃料噴射弁に送達する。この供給システムは、従来の液体燃料のための供給システムよりも高価である。
【0007】
天然ガスのようなガス燃料は、従来の燃料に比べてエネルギー密度が非常に低い。有用なエネルギー源とするには密度を上げねばならない。これは、ガス燃料を極低温度に冷やすことによってなされる。例えば天然ガスの場合、液化天然ガス(LNG)とすることによってなされる。
【0008】
このため、ガス燃料で運転されるエンジンのためのガス燃料供給システムは、液化ガスを貯蔵しておくための断熱タンクを備える。断熱タンクによって液体状態を長期に保つ。しかし、周囲の熱流束がタンク内の温度を上昇させ、液化ガスの気化を招く。このプロセスから生じるガスは、ボイルオフガス(Boil-Off Gas; BOG)と呼ばれる。タンクからのボイルオフはガス燃料の実施的な定常流を形成する。これはタンクから除去されねばならず、何らかの対応が為されねばならない。1800000m3のLNGタンカーにとって、対処の必要があるBOGの量は、1時間あたり数トンにも達する。典型的にはおよそ3000kg/時間である。一方、このタイプのLNGタンカーの主機関が必要とするガスは、主機関のエネルギー源が全て天然ガスであると仮定すれば、およそ4000kg/時間である。
【0009】
しかし、ボイルオフガスを約300barの噴射圧力までコンプレッサーで加圧することは、技術的に非常に困難である。このためBOGを、上記の第1のタイプのターボ過給式大型2ストローク内燃機関の燃料として使用することはできない。
【0010】
BOGも、コンプレッサーを使って10~20barには加圧することはできる。そうして、この圧力で運転されるガス燃料発電機で使うことができる。船舶には、そのような発電機のセットがターボ過給式大型2ストローク内燃機関に加えて搭載されていることが多い。このような発電機は、ターボ過給式大型2ストローク内燃機関よりはずっと小さな4ストローク内燃機関であることが多く、船舶で使われる電力や熱を生成する発電機やオルタネータを駆動する。
【0011】
BOGは、低温機(cryogenerator)で再液化されることもできる。しかし、再液化には高価な機器が必要であり、かなり多くのエネルギーも消費する。
【0012】
また、緊急時には、BOGは単に燃やしてしまう。
【0013】
WO2016058611A1は、第1のタイプの大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を開示している。
【0014】
DK201670361A1も、第1のタイプの大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を開示している。またこの文献は、燃焼室への高圧噴射のための高圧ガス燃料を送達するためのガス供給システムも開示している。
【0015】
第2のタイプのエンジンは、低圧ガスエンジンと呼ばれる。このタイプのエンジンではガス燃料は掃気に混合される。第2のタイプのエンジンは、燃焼室で、ガス燃料と掃気の混合気を圧縮する。第2のタイプのエンジンにおいて、ガス燃料は、シリンダライナの途中に設けられる燃料弁から注入される。燃料は、ピストンの圧縮ストロークの途中に、燃料弁が閉じるかなり前に、注入される。ピストンは、燃焼室内でガス燃料と掃気の混合気を圧縮し、圧縮された混合気は上死点(TDC)付近で、タイミングを計って着火する手段(例えばパイロット油の噴射など)によって、着火される。この第2のタイプのエンジンの利点は、比較的低圧(例えば約15bar)で供給されるガス燃料で運転されることが可能であることである。なぜなら、ガス燃料が注入される際の燃焼室内の圧力が、比較的低いからである。このため、第2のタイプのエンジンは、増圧手段で増圧されたBOGによって運転されることができる。従って、第2のタイプのエンジンのためのガス供給システムは、第1のタイプのエンジンのためのガス供給システムよりも安価である。第1のタイプのエンジンの場合、タンクから生じるBOGの流れを処理しなければならなず、ボイラーや発電機のセットは、このBOG流の一部しか使用することができない。このため、比較的高価な再液化システムを導入して、第1のタイプのエンジンのガス供給システムで動作させなければならない。
【0016】
しかし、第2のタイプのエンジンは、燃焼室で混合気を圧縮するため、有効圧縮比が第1のタイプのエンジンに比べてかなり低い。典型的には、第1のタイプのエンジンの有効圧縮比は約15から約17の間である。これに対して第2のタイプのエンジンの有効圧縮比は、約7から約9の間である。なお、第2のタイプのエンジンの幾何学的な圧縮比はおよそ13.5である。この非常に低い、幾何学的に定められた圧縮比は、第1のタイプのエンジンに対する第2のタイプのエンジンの燃料効率を著しく低くしており、同じサイズの第1のタイプのエンジンに対して第2のタイプのエンジンの最大連続回転数が低くなる原因となっている。
【0017】
さらに第2のタイプのエンジンは、通常、信頼性の高い着火を実現するため、プリチャンバや同期点火システムを必要とする。
【0018】
第2のタイプのエンジンの更に不利な点は、ピストンの圧縮ストロークの際の空気過剰率及びバルク温度を、非常に正確に制御しなければならないことである。これは、(局所的な)低過ぎる空気過剰率及び/又は高過ぎるバルク温度によるプリイグニッションを防ぐためや、高過ぎる空気過剰率及び/又は低過ぎるバルク温度によるミスファイヤを防ぐためである。一様な混合気をもたらす適切な混合は、プリイグニッションやミスファイヤをもたらす燃焼室内の局所的な条件にとって、非常に重要である。燃焼室内のこれらの条件を制御することは、過渡運転において特に困難である。
【0019】
KR20130051539は、本願請求項1のプリアンブルに記載のエンジン及び本願請求項6に記載の方法のプリアンブルに記載の方法を開示している。
【0020】
DK201770703は、第2のタイプの大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を開示している。
【0021】
このように、主燃料としてガス燃料で運転される大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関において、第1のタイプ及び第2のタイプのエンジンの上述の弱点を解消または緩和することについての必要性が存在する。
【0022】
また、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関にガス燃料を供給するガス供給システムであって、大型2ストロークユニフロー掃気内燃機関の燃焼に用いられる高圧ガス燃料を提供するガス供給システムにおいて、ガス供給システムの上述の弱点を解消または緩和することについての必要性が存在する。
【摘要】
【0023】
本発明の目的は、上述の課題を解決するか又は少なくとも緩和する、エンジン及びガス燃料供給システム、ならびに方法を提供することである。
【0024】
上述の目的やその他の目的が、独立請求項に記載の特徴により達成される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0025】
第1の側面によれば、船舶の主機関や該船舶のガス燃料消費装置に加圧ガス燃料を供給するシステムが提供される。このシステムは、
クライオジェニック条件(cryogenic condition)で液化ガス燃料を貯蔵する貯蔵タンクと;
液化ガス燃料の供給を受けるための、前記貯蔵タンクに接続される入口を有する高圧クライオポンプユニットと;
前記高圧クライオポンプユニットの出口に接続される第1供給管と;
高圧気化器と;
を備える。
前記第1供給管は、高圧液化ガス燃料流を前記高圧気化器に導いて、前記主機関のための高圧ガス燃料流に変化させるべく、前記高圧クライオポンプユニットの出口から延伸して前記高圧気化器を通る。
前記システムは更に、
前記貯蔵タンクのボイルオフガス出口をコンプレッサーユニットの入口に接続し、ボイルオフガスの流れを前記コンプレッサーユニットに導くボイルオフガス管と;
第1の熱交換器と;
を備える。
前記第1の熱交換器内で前記ボイルオフガス流の熱交換が行われるように、前記ボイルオフガス管は前記第1の熱交換器を通り、
前記コンプレッサーユニットは、前記ボイルオフガス流の圧力を高めて加圧ガス燃料流を作る。
前記システムは更に、
前記加圧ガス燃料流の第1の部分を、加圧ガス燃料を消費する1つ又は複数の機器に送達するために、前記コンプレッサーユニットの出口に接続される第2供給管と;
前記第1の熱交換器を流れるボイルオフガスとの熱交換のために、前記加圧ガス燃料流の第2の部分を前記第1の熱交換器に通し、続いて前記高圧気化器を流れる前記高圧液化燃料流又は気化したガス燃料との熱交換のために、前記加圧ガス燃料流の前記第2の部分を前記高圧気化器に通すために、前記コンプレッサーユニットの出口に接続される再液化管と;
を備える。
【0026】
コンプレッサーから来る加圧ガス燃料流の一部を熱交換器内のボイルオフガスで冷やし、さらに前記高圧気化器内の高圧ガス燃料流で冷やすことにより、専用の複雑で高価な再液化装置を用いることなくボイルオフガスの一部を再液化することができ、また、再液化に使用するのでなければ捨てざるを得ない熱エネルギーを、再液化処理に使用することが可能となる。
【0027】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記システムは、気化ユニットの下流の前記再液化管に、例えば膨張弁(expansion valve)のような、スロットル装置を備える。これは、前記加圧ガス流の第2の部分をスロットル過程に供するためである。加圧ガス燃料流をスロットル装置に通すことにより、ガス燃料の温度及び圧力が著しく下がる。それによって、再液化される部分が増える。
【0028】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記システムは、前記高圧気化器の下流又は前記スロットルデバイスの下流に、前記再液化管に接続される分離容器を備える。これは、高圧気化器及び/又はスロットル過程の冷却効果により生成した液化ガス燃料を収集し、再液化ガス燃料から余分なガス燃料を分離するためである。
【0029】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記システムは、前記分離容器の液体排出口を前記貯蔵タンクの入口に接続する再液化ガス管を備える。これは、再液化されたガス燃料を貯蔵タンクに送達するためである。
【0030】
また、前記分離容器のガス排出口を前記ボイルオフガス館に接続するガス再循環路も備える。
【0031】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記システムは、前記気化ユニットの下流において前記第1供給管にヒーターを備える。これは、高圧ガス燃料流を主機関に供給する前に暖めるためである。
【0032】
前記第1の側面の実装形態の一例において、前記主機関は、加圧ガス燃料を消費する装置の1つである。
【0033】
第2の側面によれば、船舶の主機関に高圧ガス燃料流を供給する方法、及び、該船舶の加圧ガス消費装置に加圧ガス燃料流を供給する方法が提供される。この方法は、
クライオジェニック条件で液化ガス燃料を貯蔵することと;
貯蔵されている前記液化ガス燃料から取り出した液化ガス燃料流を高圧ポンプへと送り込み、高圧液化ガス燃料流を作ることと;
前記高圧液化ガス燃料流を、ガス燃料流へと気化することと;
前記高圧ガス燃料流を前記主機関に供給することと;
貯蔵されている前記液化ガス燃料からのボイルオフガス流をコンプレッサーに導き、加圧ガス燃料流を作ることと;
前記加圧ガス燃料流の第1の部分を、前記コンプレッサーから、加圧ガス燃料を消費する装置に供給することと;
前記加圧ガス燃料流の第2の部分を、前記コンプレッサーから、再液化菅に導くことと;
前記第2の部分を前記ボイルオフガス流と熱交換することと;
続いて、前記第2の部分を前記高圧液化ガス燃料流と熱交換することと;
を含む。
【0034】
上記の方法の利点は、上記第1の側面の装置の利点と同じである。
【0035】
前記第2の側面の実装形態の一例において、前記方法は、前記加圧ガス燃料流の少なくとも第3の部分を再液化し、これを貯蔵されている前記液化ガス燃料に加えることを含む。
【0036】
前記第2の側面の実装形態の一例において、前記方法は、前記第2の部分の残留ガスを、前記ボイルオフガス流に加えることを含む。
【0037】
前記第2の側面の実装形態の一例において、前記方法は、前記第2の部分をスロットル装置に通すことを含む。
【0038】
これらの側面及び他の側面は、以下に説明される実施例により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な側面や実施形態、実装例を詳細説明する。
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストローク機関の正面図である。
図2図1の大型2ストロークエンジン機関の側面図である。
図3図1の大型2ストローク機関の第1の略図表現である。
図4図1のエンジンのシリンダフレーム及びシリンダライナの断面図である。シリンダカバー及び排気弁が取り付けられており、TDC及びBDCにおけるピストンも描かれている。
図5】ガス交換と燃料噴射サイクルを描いたグラフである。
図6】ある実施形態に従うガス燃料供給システムの略図表現である。
図7】別の実施形態に従うガス燃料供給システムの略図表現である。
図8】別の実施形態に従うシリンダフレーム及びシリンダライナの断面図である。
【詳細説明】
【0040】
以下の詳細説明では、実施例のクロスヘッド式大型低速2ストロークターボ過給式内燃機関を参照して、内燃機関が説明される。図1図3は、ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関の実施例を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。図1は正面図、図2は側面図である。図3は、図1,2のターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この例において、エンジンは直列に4本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストローク内燃機関は通常、直列に配される4本から14本のシリンダを有する。これらのシリンダはエンジンフレーム11に担持される。またこのようなエンジンは、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための固定型のエンジンとして用いられることができる。エンジンの全出力は、例えば、1,000kWから110000kWでありうる。
【0041】
エンジンは、主燃料としてガス燃料で運転する或る運転モードにおいて、ディーゼルサイクルとオットーサイクルを組み合わせる。これは、圧縮着火であるが、空気と燃料の混合物を圧縮するからである。なおこの燃料は、ピストン10の圧縮ストロークの途中に導入される第1の量の加圧ガス燃料である。圧縮された空気-燃料の混合物は、TDC付近で第2の量の高圧ガス燃料が噴射される際に着火される。
【0042】
エンジンは、別の運転モードにおいて、ディーゼルサイクルに従って動作することができ、その場合は圧縮ストロークの途中に燃料は導入されない。このモードにおいて、全ての燃料は、TDC付近において噴射される。またこのモードにおける主燃料もガス燃料であることができる。更に別の運転モードにおいて、エンジンは、オットーサイクルに従って動作することができる。この場合、全てのガス燃料は掃気に混合され、空気-燃料の混合物が圧縮ストロークの際に圧縮される。そしてTDC付近において、タイミングを計って着火する手段が提供される。
【0043】
この実施例におけるエンジンは、2ストロークユニフロー掃気エンジンであり、シリンダライナ1の下部領域に掃気ポート18が設けられ、シリンダライナ1の頂部中央には排気弁4が配される。燃焼室は、シリンダライナ1と、シリンダカバー22と、シリンダライナ中で下死点(BDC)と上死点(TDC)との間を往復運動するピストン10とで画定される。
【0044】
掃気は、ピストンが掃気ポート18より下にある時に、掃気受け2から各シリンダ1の下端にある掃気ポート18へと導かれる。ガス燃料は、電子制御部60の制御下でガス燃料導入弁30から導入される。これは、ピストンの上昇ストロークの間であって、ピストンが燃料弁(ガス燃料導入弁)30を通過する前に行われる。燃料弁は好ましくはシリンダライナの円周に亘って等間隔に分布するように配される。また好ましくは、シリンダライナの長手方向の中央付近に配される。従って、ガス燃料の導入は、圧縮圧力が比較的低い時に行われる。つまり、ピストン10がTDCに達するときの圧縮圧力に比べればずっと低いときに行われる。
【0045】
シリンダライナ1内でピストン10は、ガス燃料と掃気の混合物を圧縮する。そしてTDC又はその近辺で、燃料噴射弁50から高圧のガス燃料が噴射される。着火は、TDC又はその近辺での燃焼室内の高い圧力により生じる高温によって、ディーゼルの原理に従って引き起こされる。着火は、少量のパイロット油(又は適当な着火液)によって補助されることもある。このパイロット油は、ガス燃料と一緒に燃料噴射弁50から噴射されるようにされる例もあるが、専用のパイロット油弁51(図示されていない)から供給されるように構成される例もある。その場合、パイロット油弁51は、シリンダカバー22に配されることが好ましい。
【0046】
なお、「TDC又はその近辺」「TDC又はその付近」とは、ガス燃料の噴射が行われる。範囲を指す。この範囲は、最も早い場合でピストンがTDC前およそ15度の時に始まり、最も遅い場合でTDC後およそ40度で終わる。
【0047】
燃焼が生じ、排気ガスが生成される。別の形態の着火システムでは、パイロット油の代わりに、又はパイロット油に加えて、プリチャンバやレーザー着火、グロープラグ(いずれも図示されていない)などを、着火を促すために使用するものもある。
【0048】
排気弁4が開くと、排気ガスは、シリンダ1に設けられる排気ダクトを通って排気ガス受け3へと流れ、さらに第1の排気管19を通ってターボ過給器5のタービン6へと進む。そこから排気ガスは、第2の排気管25を通ってエコノマイザ20へ流れ、さらに出口21から大気中へと放出される。タービン6は、シャフトを介してコンプレッサー7を駆動する。コンプレッサー9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサー7は、圧縮された掃気を、掃気受け2に繋がっている掃気管13へと送り込む。管13の掃気は、掃気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0049】
冷却された掃気は、電気モーター17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給器5のコンプレッサー7が掃気受け2に必要とされる圧力を供給することができない場合、すなわちエンジンが低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給器のコンプレッサー7が、十分に圧縮された掃気を供給することができるので、補助ブロワ16は、逆止め弁15によってバイパスされる。
【0050】
図3には、電子制御ユニットのようなコントローラ60が図示されている。コントローラ60は信号線又はその他の通信チャネルを通じて各種センサに接続されており、これらのセンサはエンジンの運転条件に関する情報をコントローラ60に伝える。コントローラ60は信号線又はその他の通信チャネルを通じて、コントローラ60によって制御される各種のエンジン構成要素にも接続される。上記のセンサの1つはクランク角センサであり、図示されている。これはクランクシャフト8の回転角をコントローラ60に伝える。コントローラ60は、燃料導入弁30、燃料噴射弁50、排気弁4を制御する。
【0051】
コントローラ60は、燃料導入弁30及び燃料噴射弁50に接続され、これらを制御する。コントローラ60は、ピストン10がBDCからTDCに向かうストロークの途中で、加圧ガス燃料の第2のソース40から燃焼室へ第1の量のガス燃料を導入するように、燃料導入弁30を動作させる。またコントローラ60は、ピストン10が上死点又はその付近にある時に、加圧ガス燃料の第1のソース35から燃焼室の少なくとも1つへ第2の量のガス燃料を噴射するように、燃料噴射弁50を動作させる。
【0052】
図4には、クロスヘッド式大型2ストロークエンジンのために設計されたシリンダライナ1が図示されている。エンジンのサイズに応じて、シリンダライナ1は様々な大きさに作られる。典型的な大きさとしては、直径が250mmから1000mmであり、それに対応する全長が1000mmから4500mmである。
【0053】
図4には、シリンダライナ1はシリンダフレーム23に載置され、シリンダライナ1の上にはシリンダカバー22が搭載されている様子が描かれている。シリンダライナ1とシリンダカバー22とは、その間からガスの漏出が生じないように連結されている。
【0054】
図4において、その下死点(BDC)と上死点(TDC)におけるピストン10の様子が破線で示されている。なおもちろん、これら2つの状態が同時に生じる訳ではなく、これら2つの状態は、クランクシャフト8の回転角で180度隔てられている。シリンダライナ1には、シリンダ潤滑孔25及びシリンダ潤滑ライン24が設けられる。これらはピストン10が潤滑ライン24を通過する際にシリンダ潤滑油を供給する。続いて(図示されていない)ピストンリングが、シリンダライナの走行面全体にシリンダ潤滑油を行き渡らせる。
【0055】
燃料弁50はシリンダカバー22に搭載される。通常、各シリンダに、2つ又は3つの燃料噴射弁50が、排気弁の周囲に同じ間隔で分布する。燃料噴射弁50は、第1の供給管36を通じて高圧ガス燃料の第1のソース35に接続しており、またパイロットライン28を通じてパイロット油のソース27に接続している。
【0056】
着火液の第3の量は、所与のエンジンサイクルの間に燃焼室に投入される全ての燃料のカロリー値の5%より少ない。好ましくは3%より少ない。
【0057】
燃料弁50は、DK178519B1に開示されるタイプのものであってもよい。このタイプの燃料弁は、十分な量の高圧ガス燃料と共に、小さな量のパイロット油を燃焼室に噴射する能力を有する。
【0058】
燃料噴射弁50による高圧ガス燃料及びパイロット油の噴射タイミングは、電子制御ユニット60によって制御される。電子制御ユニット60は、図3において破線で示される信号線を通じて燃料弁50に接続されている。
【0059】
シリンダライナ1には、燃料導入弁30が装備される。燃料導入弁30は、シリンダライナ1の内面と実質的に同じ面に位置するノズル又は導入口を有する。また燃料導入弁30の後端は、シリンダライナ1の外壁から飛び出ている。典型的には1つ又は2つ、多くても3つか4つの燃料導入弁30が、各シリンダライナ1に設けられる。これらはシリンダライナ1の円周域に等間隔に配置される。本実施例において、燃料導入弁30は、シリンダライナ1の長手方向のちょうど中央部に配されている。
【0060】
燃料噴射弁30による加圧ガス燃料の噴射タイミングは、電子制御ユニット60によって制御される。図3では、電子制御ユニット60は、概念的に示された信号線を通じて燃料導入弁30に接続されている。
【0061】
このエンジンは、1回のエンジンサイクルの間に、第1の量の加圧ガス燃料を導入すると共に、第2の量の高圧ガス燃料を噴射するように構成される。まず第1の量の加圧ガス燃料が導入され、続いて第2の量の高圧ガス燃料が、ピストンがTDCに近づく機会(これを第1の機会と称することがある)に噴射される。
【0062】
図4は、エンジンのガス燃料供給システムを、概念的及び簡略化して描いたものである。高圧ガス燃料の第1のソース35が、第1の供給管36を通じて、シリンダカバー22の各燃料噴射弁50に接続されている。また、中圧力のガス燃料の第2のソース40が、燃料供給管41を通じて、ガス燃料弁30の入口に接続されている。
【0063】
本実施例において、高圧ガス燃料の第1のソース35の圧力P1は、およそ15から45MPa(150から450bar)である。この高い圧力は、TDC付近のピーク圧力に抗してガス燃料を噴射することを可能にする。
【0064】
本実施例において、中圧力ガス燃料の第2のソース40の圧力P2は、およそ1から3MPa(10から30bar)である。P1に比べれば中くらいの圧力である。しかしこの圧力があれば、圧縮ストローク中にガス燃料が導入されることが可能である。
【0065】
図5は、クランク角(クランクシャフト8の角度)の関数として、掃気ポート18、排気弁4、燃料導入弁(GA燃料弁)30、燃料噴射弁(Gi燃料弁)のそれぞれの、開弁(開口)期間と閉弁(閉口)期間を図示したものである。このグラフを見ると、ガス燃料を導入するウィンドウは、比較的短いことが分かる。従って、燃焼室中でガス燃料を掃気に混合する時間は極めて短い。ガス燃料は極めて短いウィンドウの間に導入される。高圧ガス燃料は、TDC付近のウィンドウの間に噴射される。
【0066】
1回転中に導入されるガス燃料と噴射されるガス燃料の総量は、エンジンの負荷に影響される。燃焼室に投入されるガス燃料の総量は、圧力P2でシリンダ内に導入される第1の量のガス燃料と、圧力P2でシリンダ内に噴射される高圧ガス燃料の合計量である。ある実施例において、シリンダに投入されるガス燃料の、カロリー値でおよそ70%又は80%が、加圧ガス燃料の第2のソース40から圧力P2で導入されるガス燃料である。ある実施例において、シリンダに投入されるガス燃料の、カロリー値でおよそ70%又は80%が、高圧ガス燃料の第1のソース35から圧力P1で噴射されるガス燃料である。
【0067】
このように、上記第1の量と上記第2の量の比は調節されることができ、各ソースから利用可能な燃料の量に適合されることができる。例えば、高圧ガス燃料の第1のソース35から利用可能な高圧燃料が比較的少ない場合、エンジンは、加圧ガス燃料の第2のソース40から圧縮ストローク中にシリンダ内に導入される中圧力のガス燃料を多く用い、TDC又はその付近で噴射される高圧ガス燃料は比較的少なく用いて、運転されることができる。一方、加圧ガス燃料の第2のソース40から利用可能な中圧ガス燃料が比較的少ない場合、エンジンは、TDC又はその付近で噴射される高圧ガス燃料を多く用い、加圧ガス燃料の第2のソース40から圧縮ストローク中にシリンダ内に導入される燃料は比較的少なく用いて、運転されることができる。
【0068】
図6は、例えば図1~4に描かれるような大型2ストロークターボ過給式内燃機関にガス燃料を供給するために使用しうるガス供給システムの略図表現である。このガス供給システムは、液化ガスタンカー、すなわち液化天然ガス(LNG)や液化石油ガス(LPG)のような液化ガス燃料を大量に運搬する船舶に搭載することが可能な実施例である。
【0069】
このガス供給システムは、船舶の主機関や、当該船舶のガス燃料消費装置に、加圧ガス燃料を供給するように構成される。なお、ガス燃料消費装置には、例えば船舶で使用する熱や電気を生成するための発電機のセットや、ガス燃料で動作するボイラーなどがある。上記の発電機は、通常4ストローク内燃機関であり、船舶の主機関よりは著しく小さく、発電機やオルタネータを駆動する。特に、荷物の積み下ろしのための港に船舶が停留しているなど、船舶の主機関が停止している際にも使用される。
【0070】
このガス供給システムはまた、TDC又はその近辺でガス燃料を噴射するために、高圧ガス燃料を供給するように構成される。
【0071】
このガス供給システムは、符号40で示されてきた、加圧ガス燃料の第2のソース40、すなわち圧力P2(例えば10~30bar)でガス燃料を供給するソース40であることができる。加圧ガス燃料の第2のソース40は図6において、破線の矩形で示されている。このガス供給システムはまた、符号35で示されてきた、高圧ガス燃料の第1のソース35、すなわち高い圧力P1(例えば150~450bar)でガス燃料を供給するソース35であることができる。図6では、高圧ガス燃料の第1のソース35も、破線の矩形で示されている。
【0072】
ガス燃料供給システムは、クライオジェニック条件(cryogenic condition)で液化ガス燃料を貯蔵する1つ又は複数の貯蔵タンク26と、高圧プライオポンプ37とを有する。高圧クライオポンプユニット37の入口は、液化ガス燃料の供給を受けるために、貯蔵タンク26に接続される。高圧クライオポンプへの極低温液化ガス燃料流は、典型的には、0より少し高い圧力から10barくらいの間の圧力、例えば約5barの圧力を有し、また例えば、およそ110Kの温度を有する。
【0073】
高圧クライオポンプユニット37の出口には第1の供給管36が接続され、高圧液化ガス燃料流が高圧ポンプ37から高圧気化器38へと送られる。(気化された)高圧液化ガス燃料流は、高圧気化器38からヒーター39を通って、主機関の高圧燃料噴射システムへと送られる。高圧ガス燃料流をヒーター39に通すことは場合による。このステップは、主機関の噴射システムに届けられるガス燃料が、当該噴射システムで扱える程度の温度を有することを確実にするために、必要でありうる。そのような必要性は、噴射システムの素材や構成にも依存する。多くの噴射システムは、極低温を扱うには適しておらず、そのため高圧ガス燃料流を昇温することが必要になることが多い。
【0074】
高圧クライオポンプユニット37から排出される高圧液化燃料流は、典型的には150から450barの圧力を有する。例えば350barである。また温度は例えば、およそ119Kである。高圧気化器38から出た高圧(気化)ガス燃料流は、典型的には150から450barの圧力を有する。例えば350barである。また温度は例えば、およそ154Kである。高圧ガス燃料がヒーター39を通過すると、圧力はほぼ変化がないが、温度は例えば318Kになる。
【0075】
このように、ある実施例における高圧液化ガス燃料流は、150bar以上の圧力を有し、高圧液化ガス燃料流から、主機関に噴射されるための高圧ガス燃料流へと変換されるために、高圧気化器38を通過する。
【0076】
ボイルオフガス管42は、貯蔵タンク26のボイルオフガス出口をコンプレッサーユニットの入口に接続し、ボイルオフガス流をコンプレッサーユニット48に導く。ボイルオフガス管42には第1の熱交換器43が設けられ、コンプレッサーユニット48に送られるボイルオフガス流の温度を上げる。ある実施例において、ボイルオフガス管42内のボイルオフガスの圧力はおよそ1barである。また温度は、例えばおよそ140Kである。これが第1の熱交換器43を通過すると、例えばおよそ230Kに昇温される。
【0077】
コンプレッサーユニット48は、ボイルオフガス流の圧力を高め、加圧ガス燃料流を生成する。コンプレッサーユニット48の出口における加圧ガス燃料流の圧力は、例えばおよそ15barであり、温度は例えばおよそ318Kである。実施例によって、コンプレッサーユニット48は、シングルステージのコンプレッサーであってもよく、マルチステージのコンプレッサーユニットであってもよい。マルチステージの場合、各ステージにクーラー45が設けられてもよい。
【0078】
コンプレッサーユニット48の出口には第2の供給管41が接続され、加圧ガス燃料流の第1の部分を、加圧燃料を消費する1つ又は複数の装置に送る。この装置には例えば、圧縮ストローク中に加圧ガス燃料を導入する主機関が含まれる。またこの装置には、供給管47を通じて加圧ガス燃料が供給される、発電機のセットやボイラーが含まれてもよい。
【0079】
コンプレッサーユニット48の出口には、再液化管46も接続される。これは、第1の熱交換器43を流れるボイルオフガスとの熱交換のために、加圧ガス燃料流の第2の部分を第1の熱交換器43に通し、続いて高圧気化ユニット38を流れる高圧液化燃料流又は気化したガス燃料との熱交換のために、加圧ガス燃料流の前記第2の部分を高圧気化ユニット38に通す。熱交換器43を通過すると、加圧ガス燃料流の温度は、例えばおよそ159Kになるが、圧力はほぼ変わらず、およそ15barのままである。高圧気化器38を通過すると、加圧ガス燃料流は、気化された高圧ガス燃料流によって冷やされ、温度は例えば122Kになる。圧力はほぼ変わらず、およそ15barのままである。そして、再液化管46内の加圧ガス燃料流のほとんどは再液化される。
【0080】
高圧気化器38の下流で、再液化管46は分離容器32に接続され、高圧気化器38の冷却作用により作られた液化ガス燃料が収集される。分離容器32は、未だガス状の燃料から、再液化されたガス燃料を分離する。分離容器32の液体排出口と貯蔵タンク26の入口との間を再液化ガス管33が繋いでおり、再液化されたガス燃料を貯蔵タンク26に導いている。また、分離容器32のガス排出口とボイルオフガス管42との間をガス再循環路34が繋いでおり、残ったガス燃料が液化サイクルに改めて加われるようにされる。
【0081】
図7は、ガス燃料供給システムの別の実施例を描いたものである。とはいえこの実施例は、図6の実施形態に従うガス燃料供給システムとほとんど同一である。図7の実施例において、既に説明又は図示した構k成や特徴と同じ又は対応する構成及び特徴については、以前に使われたものと同じ符号を付している。
【0082】
この実施例では、例えば膨張弁(expansion valve)のようなスロットル装置29が、再液化管46に設けられる。スロットル装置29は気化器38と分離容器32との間に配され、加圧ガス燃料流の第2の部分にスロットル過程を加える。
【0083】
ある実施例において、スロットル装置29は膨張弁である。スロットル装置29は、更なる冷却効果を加える。この効果はジュール=トムソン効果(又はジュール=ケルビン効果、ケルビン=ジュール効果)として知られているジュール=トムソン効果は、(理想気体とは異なる)現実の気体や液体が、外部環境との熱交換がなされない状況において、弁や多孔質の栓を通過させられた時の温度変化を説明する。この過程は、スロットル過程又はジュール=トムソン過程と呼ばれる。天然ガスや石油ガスのようなガス燃料は、オリフィスを通されて絞り操作を受けると、ジュール=トムソン過程に従って膨張・冷却される。気体を冷却させるスロットル過程は、エアコンやヒートポンプ、液化装置のような冷却装置で広く利用されている。
【0084】
ガス燃料供給システムにおけるボイルオフガスの液化は、ハンプソン=リンデサイクルと同様である。(ハンプソン=リンデサイクルは、気体の液化に広く利用されている。)ハンプソン=リンデサイクルは、ジュール=トムソン効果に依拠しており、次のステップを有する。
1)加熱: コンプレッサーユニット48内でガスを圧縮することによって加熱する。つまり、加圧ガス燃料に外部エネルギーが追加される。これは、ハンプソン=リンデサイクルを走らせるために必要なものを与えるためである。
2)熱交換器43内において、後続の(そして最後の)ステージからの戻りガスによって冷却される。
3)冷却: 冷やされた環境にガスを晒すことによって行われる。高圧気化器38内で、熱(従ってエネルギー)の一部が失われる。
4)更なる冷却: ジュール=トムソン・オリフィスにガスを通すことによって行われる。熱が奪われるが、エネルギーは保存される。ただし、運動エネルギーではなく、ポテンシャルエネルギーになっている。
【0085】
これらのステップによって、ガス燃料のほとんどは再液化され、残ったガス燃料は現在のサイクルにおいて最も低温になっている。これはリサイクルされ、コンプレッサーユニット46に戻されて、熱交換器43におけるクーラントとして用いられて熱せられ、最初の段階に戻って次のサイクルが開始される。そして、コンプレッサーユニット46で再び加熱される。
【0086】
ガス供給システムは比較的シンプルであり、コンプレッサーはおよそ10~20barの圧力を提供し、貯蔵タンクから生成される全てのボイルオフガスに対応することができる。高圧気化システムは、エンジンの最大負荷時に必要とされる全燃料量の30~50%を供給することができる。
【0087】
従ってこのガス供給システムは、本来的に冗長性を有する。そしてそのため、冗長性を持たせるための別のシステムを設ける必要がなく、コストを節約することができる。
【0088】
図8は、大型2ストロークターボ過給式内燃機関の更なる実施例を描いたものである。そのガス燃料供給システムは、図1-4の実施例のガス燃料供給システムと基本的に同一である。図8の実施例において、既に説明又は図示した構成や特徴と同じ又は対応する構成及び特徴については、以前に使われたものと同じ符号を付している。図1-4の実施例と比べたこの実施例の主な違いは、シリンダカバー22にガス燃料導入弁30が搭載されていることである。この実施例では、燃料弁30,50の全てがシリンダカバー22に配される。
【0089】
多くの側面及び実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。特許請求の範囲に記載されるいくつかの要素の機能は、単一のプロセッサやコントローラ、その他のユニットによって遂行されてもよい。いくつかの事項が別々の従属請求項に記載されていても、これらを組み合わせて実施することを排除するものではなく、組み合わせて実施して利益を得ることができる。
【0090】
特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8