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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012679
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/00 20160101AFI20220107BHJP
【FI】
H02P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114691
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】徳永 禎斉
(72)【発明者】
【氏名】羽根田 吉富
(72)【発明者】
【氏名】中井 敬野
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】鴨山 剛之
(72)【発明者】
【氏名】弘田 徹
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB20
5H501CC04
5H501DD04
5H501HB07
5H501JJ03
5H501JJ17
5H501LL22
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でパラメータの書き換えを実現可能な制御装置を提供する。
【解決手段】制御装置200は、弁開閉時期制御装置100に要求する制御状態に応じた動作指令を行う動作指令ユニット40と、動作指令に基づいて弁開閉時期制御装置100のモータMに流れる電流を制御する駆動制御ユニット50と、動作指令ユニット40と駆動制御ユニット50との間で行われるPWM信号による情報通信に用いられる通信線61と、内燃機関の機種に応じて設定された内燃機関の固有の内燃機関用パラメータ、及び、弁開閉時期制御装置100が制御する弁の開弁時期と閉弁時期との間の作動範囲を示す弁用パラメータを記憶する記憶部51と、を備え、内燃機関用パラメータは、動作指令ユニット40から通信線61を介して、PWM信号の周波数に対応付けして伝達され、弁用パラメータは、PWM信号のオンDUTY比に対応付けして伝達される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転体、前記駆動側回転体の回転軸心と同軸心に配置され、前記内燃機関のカムシャフトと一体回転する従動側回転体、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を設定する位相設定機構、及び前記位相設定機構を駆動するモータを備えた弁開閉時期制御装置に要求する制御状態に応じた動作指令を行う動作指令ユニットと、
前記動作指令に基づいて前記モータに流れる電流を制御する駆動制御ユニットと、
前記動作指令ユニットと前記駆動制御ユニットとの間で行われるPWM信号による情報通信に用いられる通信線と、
前記駆動制御ユニットに設けられ、前記内燃機関の機種に応じて設定された前記内燃機関の固有の内燃機関用パラメータ、及び、前記弁開閉時期制御装置が制御する弁の開弁時期と閉弁時期との間の作動範囲を示す弁用パラメータを記憶する記憶部と、
を備え、
前記内燃機関用パラメータは、前記動作指令ユニットから前記通信線を介して、前記PWM信号の周波数に対応付けして伝達され、前記弁用パラメータは、前記PWM信号のオンDUTY比に対応付けして伝達される制御装置。
【請求項2】
前記内燃機関用パラメータは、前記モータの回転軸の回転方向を示す情報、前記クランクシャフト及び前記カムシャフトの夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び前記内燃機関の種類を示す情報を含む請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記駆動制御ユニットは、前記記憶部に前記内燃機関用パラメータが記憶されていない場合は、前記動作指令ユニットに前記通信線を介して、前記内燃機関用パラメータの伝達で用いた前記PWM信号の周波数とは異なる周波数であって、前記内燃機関用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達し、前記記憶部に前記弁用パラメータが記憶されていない場合は、前記動作指令ユニットに前記通信線を介して、前記内燃機関用パラメータの伝達で用いた前記PWM信号の周波数とは異なる周波数であって、前記弁用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達する請求項1又は2に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PWM信号に基づいて設定をパラメータの設定を行う制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動制御装置がデバイスを駆動する際に必要となるパラメータを、通信により他のシステムから取得する技術が利用されてきた。このような技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1-4に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には信号処理装置が記載されている。この信号処理装置は、動作定義情報及び定数パラメータを含むコンフィグ情報によって動作を書替え可能な複数の演算ユニットを備えて構成され、複数の演算ユニット同士が互いにデータ通信を行うことができるように構成されている。これらの演算ユニットは内部に複数の演算器を有し、動作定義情報を基に演算器同士の結線をスイッチで切替えて、処理内容の書替えを行う。
【0004】
特許文献2にはネットワークを介して複数のデータセンタに接続するコンフィグ比較装置が記載されている。このコンフィグ比較装置は、所定のタイミングで、少なくともネットワークを介して複数のデータセンタが有する複数のネットワーク機器のバージョン情報を取得し、バージョン情報に基づくパラメータに差異が生じている場合、差異を分類した分類結果を付加した情報を出力するように構成されている。
【0005】
特許文献3には複数の通信線間でのデータの中継を行う中継装置が記載されている。この中継装置は、送信元装置から中継装置の設定を変更する書換情報を受信し、書換情報に従って当該中継装置の設定を変更する。この書換情報はローカルネットワーク内に存在する他の中継装置に対して送信される。
【0006】
特許文献4にはコンフィグ情報管理装置が記載されている。このコンフィグ情報管理装置は、所定のネットワーク機器におけるコンフィグ情報を出力するように要求する信号を受信した場合に、ネットワーク機器に対応する識別IDに基づいて、予め識別IDに対応付けて記憶されているネットワーク機器における複数世代のコンフィグ情報から、現在設定されているコンフィグ情報を含む二世代のコンフィグ情報を抽出し、抽出された二世代のコンフィグ情報の差分を抽出する。抽出された二世代のコンフィグ情報の差分に含まれるコンフィグ情報の設定項目を、当該設定項目に対応する入力コマンドを入力するための入力モードごとに分類して出力し、出力された設定項目に対応する入力コマンドをネットワーク機器に投入するように要求する信号を受信した場合に、入力コマンドと、当該入力コマンドに対応する入力モードに遷移させるモード遷移コマンドとをネットワーク機器に対して投入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-323752号公報
【特許文献2】特開2019-149068号公報
【特許文献3】特開2016-178634号公報
【特許文献4】特開2006-303914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1-4に記載の技術は、例えば複数のスイッチやデータセンタとの通信や中継装置やルータが必要となるので、動作に必要な各種のパラメータを簡素な構成で書き換えすることができない。
【0009】
そこで、簡素な構成でパラメータの書き換えを実現可能な制御装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る制御装置の特徴構成は、内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転体、前記駆動側回転体の回転軸心と同軸心に配置され、前記内燃機関のカムシャフトと一体回転する従動側回転体、前記駆動側回転体と前記従動側回転体との相対回転位相を設定する位相設定機構、及び前記位相設定機構を駆動するモータを備えた弁開閉時期制御装置に要求する制御状態に応じた動作指令を行う動作指令ユニットと、前記動作指令に基づいて前記モータに流れる電流を制御する駆動制御ユニットと、前記動作指令ユニットと前記駆動制御ユニットとの間で行われるPWM信号による情報通信に用いられる通信線と、前記駆動制御ユニットに設けられ、前記内燃機関の機種に応じて設定された前記内燃機関の固有の内燃機関用パラメータ、及び、前記弁開閉時期制御装置が制御する弁の開弁時期と閉弁時期との間の作動範囲を示す弁用パラメータを記憶する記憶部と、を備え、前記内燃機関用パラメータは、前記動作指令ユニットから前記通信線を介して、前記PWM信号の周波数に対応付けして伝達され、前記弁用パラメータは、前記PWM信号のオンDUTY比に対応付けして伝達される点にある。
【0011】
このような特徴構成とすれば、弁開閉時期制御装置に適した内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータに基づいて当該弁開閉時期制御装置を駆動することができる。また、内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータの夫々を、PWM信号の周波数及びオンDUTY比に基づいて動作指令ユニットから駆動制御ユニットに伝達するので、簡素な構成で、且つ、多種に亘る内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータを書き換えることができる。したがって、1種類の弁開閉時期制御装置と1種類の動作指令ユニットとを設けるだけで、複数種類の内燃機関に対応することが可能となる。
【0012】
また、前記内燃機関用パラメータは、前記モータの回転軸の回転方向を示す情報、前記クランクシャフト及び前記カムシャフトの夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び前記内燃機関の種類を示す情報を含むと好適である。
【0013】
このような構成とすれば、駆動制御ユニットが弁開閉時期制御装置を適切に駆動することが可能となる。
【0014】
また、前記駆動制御ユニットは、前記記憶部に前記内燃機関用パラメータが記憶されていない場合は、前記動作指令ユニットに前記通信線を介して、前記内燃機関用パラメータの伝達で用いた前記PWM信号の周波数とは異なる周波数であって、前記内燃機関用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達し、前記記憶部に前記弁用パラメータが記憶されていない場合は、前記動作指令ユニットに前記通信線を介して、前記内燃機関用パラメータの伝達で用いた前記PWM信号の周波数とは異なる周波数であって、前記弁用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達すると好適である。
【0015】
このような構成とすれば、弁開閉時期制御装置を換装し直した場合であっても、換装し直した弁開閉時期制御装置に適した内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータを自動で駆動制御ユニットに伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】弁開閉時期制御装置の模式図である。
図2】制御装置の構成を示すブロック図である。
図3】制御装置の処理を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る制御装置は、簡素な構成で弁開閉時期制御装置の駆動に用いるパラメータ(内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータ)を伝達することが可能である。以下、本実施形態の制御装置200について説明する。
【0018】
図1は弁開閉時期制御装置100の断面図であり、図2は制御装置200の構成を示す図である。図1及び図2に示されるように、弁開閉時期制御装置100は、駆動ケース(「駆動側回転体」の一例)10、内部ロータ(「従動側回転体」の一例)20、位相設定機構30、モータMを備えて構成され、制御装置200は、動作指令ユニット40及び駆動制御ユニット50を備えて構成される。本実施形態では駆動制御ユニット50には、記憶部51、及び制御部52が設けられる。また、動作指令ユニット40と駆動制御ユニット50との間には、第1通信線(「通信線」の一例)61、及び第2通信線62(「通信線」の一例)が設けられる。これらの各機能部は、PWM信号における誤差の低減に係る処理を行うために、CPUを中核部材としてハードウェア又はソフトウェア或いはその両方で構築されている。
【0019】
駆動ケース10は、内燃機関Eのクランクシャフト1に対して同期回転する。内燃機関Eは、弁開閉時期制御装置100により開閉時期が制御される吸気バルブVaを有する。クランクシャフト1とは、内燃機関Eからの回転力を出力する出力軸にあたる。駆動ケース10の外周面には駆動プーリ11が設けられ、クランクシャフト1の出力プーリ1Sに亘ってタイミングベルト6が巻き回される。これにより、駆動ケース10がクランクシャフト1と同期回転することが可能となる。
【0020】
内部ロータ20は、駆動ケース10の回転軸心Xと同軸心に配置され、内燃機関Eの吸気カムシャフト7(本実施形態では、吸気バルブVa用のカムシャフト)と一体回転する。駆動ケース10の回転軸心Xと同軸心に配置されるとは、内部ロータ20の軸心と駆動ケース10の軸心とが一致した状態で配置されていることをいう。内部ロータ20は、駆動ケース10に内包され、連結ボルト23により吸気カムシャフト7に連結固定される。これにより、内部ロータ20が吸気カムシャフト7に連結状態で支持され、内部ロータ20の外周部位に駆動ケース10が相対回転自在に支持される。
【0021】
位相設定機構30は、駆動ケース10と内部ロータ20との相対回転位相を設定する。位相設定機構30はモータMにより駆動され、位相設定機構30は内部ロータ20と共に、駆動ケース10内に収容される。駆動ケース10は、開口部分に複数の締結ボルト25によりフロントプレート24が締結固定される。これにより、位相設定機構30と内部ロータ20との回転軸心Xに沿う方向での変位がフロントプレート24によって規制される。
【0022】
上述したように、タイミングベルト6からの駆動力により駆動ケース10及び内部ロータ20は時計回りに回転する。位相設定機構30は、モータMの駆動力に基づいて位相設定機構30を介して内部ロータ20に伝えられ、駆動ケース10に対する内部ロータ20の相対回転位相が変位される。この変位のうち、タイミングベルト6からの駆動力による回転方向(時計回り方向)と同方向へ向かう変位方向を進角方向と称し、この逆方向を遅角方向と称する。
【0023】
位相設定機構30は、内部ロータ20の内周に回転軸心Xと同軸心に形成したリングギヤ26と、内部ロータ20の内周側に偏心軸心Yと同軸心で回転自在に配置されるインナギヤ27と、インナギヤ27の内周側に配置される偏心カム体28と、フロントプレート24と、継手部Jとを備えている。偏心軸心Yは、回転軸心Xと平行する姿勢で形成されている。
【0024】
リングギヤ26は複数の内歯部26Tを有し、インナギヤ27は複数の外歯部27Tを有する。外歯部27Tの一部はリングギヤ26の内歯部26Tに咬合している。この位相設定機構30は、リングギヤ26の内歯部26Tの歯数と比較して、インナギヤ27の外歯部27Tの歯数が1歯だけ少ない遊星ギヤ減速機として構成されている。
【0025】
本実施形態では、内燃機関Eの稼動時には、クランクシャフト1と等しい速度で、出力軸Maが時計回りに駆動回転することにより、駆動ケース10と内部ロータ20との相対回転位相を維持する。また、相対回転位相を進角方向に変位させる場合には出力軸Maの回転速度を減じ、相対回転位相を遅角方向に変位させる場合には出力軸Maの回転速度を増大する制御が行われる。
【0026】
すなわち、位相設定機構30は、モータMの駆動による出力軸Maの回転に伴い、偏心カム体28が回転軸心Xを中心に回転した際には、インナギヤ27が1回転する毎に、歯数差に対応する角度だけ、インナギヤ27とリングギヤ26とを相対回転させることになる。その結果、インナギヤ27に対し継手部Jを介して一体回転する駆動ケース10と、リングギヤ26に連結ボルト23により連結する吸気カムシャフト7とを相対回転させ、バルブタイミングの調節をすることが可能となる。
【0027】
図2に示されるように、制御部52はインバータIを制御して、モータMのロータ(図示せず)の位置に基づいてコイル(図示せず)の通電状態を切り替える。ロータの位置とは、モータMのコイルに対する通電に応じて回転するロータの位置(回転角)である。制御部52は後述するインバータIをPWM制御し、コイルの通電状態を順次、切り替える。このようなPWM制御は、公知であるので説明は省略する。
【0028】
インバータIは、モータMのコイルに流れる電流を制御して、モータMを駆動する。制御部52は、モータMのコイルを流れる電流の電流値を検出し、当該電流値と後述する動作指令ユニット40からの動作指令とに基づいてフィードバック制御によりインバータIを制御する。
【0029】
動作指令ユニット40は、弁開閉時期制御装置100に要求する制御状態に応じた動作指令を行う。弁開閉時期制御装置100に要求する制御状態とは、弁開閉時期制御装置100の始動や停止等の動作に関する指令や、上記相対回転位相の指令等の制御に関する指令が含まれる。動作指令ユニット40は、このような動作指令の伝達を、動作指令ユニット40と駆動制御ユニット50との間に設けられた第1通信線61を介してPWM信号により行う。具体的には、PWM信号における1周期のオンDUTY比を弁開閉時期制御装置100に要求する制御状態の種別毎に対応付け、要求する制御状態に応じたオンDUTY比のPWM信号を、動作指令ユニット40から駆動制御ユニット50に、第1通信線61を介して伝達する。すなわち、PWM信号により情報通信が行われる。
【0030】
駆動制御ユニット50は、動作指令ユニット40からのPWM信号を受信し、当該PWM信号により示される動作指令に基づいてモータMに流れる電流を制御する。すなわち、駆動制御ユニット50は、弁開閉時期制御装置100が、PWM信号のオンDUTY比により規定される弁開閉時期制御装置100に要求する動作指令で動作するように、インバータIを制御する。
【0031】
また、動作指令ユニット40と駆動制御ユニット50との間には第2通信線62が設けられる。駆動制御ユニット50は、この第2通信線62を介して動作指令ユニット40に、弁開閉時期制御装置100の状態を示す状態情報を伝達する。弁開閉時期制御装置100の状態を示す状態情報とは、弁開閉時期制御装置100の運転状態や、相対回転位相の状態等を示す情報である。駆動制御ユニット50は、このような状態情報の伝達を、駆動制御ユニット50と動作指令ユニット40との間に設けられた第2通信線62を介してPWM信号により行う。具体的には、PWM信号における1周期のオンDUTY比を弁開閉時期制御装置100の状態の種別毎に対応付け、状態に応じたオンDUTY比のPWM信号を、駆動制御ユニット50から動作指令ユニット40に、第2通信線62を介して伝達する。
【0032】
記憶部51は、内燃機関Eの機種に応じて設定された内燃機関Eの固有の内燃機関用パラメータを記憶する。内燃機関Eの機種に応じて設定されるとは、内燃機関Eの種別毎に設定されることを意味する。内燃機関Eの固有の内燃機関用パラメータとは、内燃機関Eの種別を識別することが可能なパラメータである。
【0033】
具体的には、内燃機関用パラメータは、図1に示される、モータMの回転軸の回転方向を示す情報、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び内燃機関Eの種類を示す情報等が含まれる。
【0034】
モータMとは、上述した位相設定機構30を駆動するモータである。したがって、モータMの回転軸の回転方向を示す情報とは、位相設定機構30が回転する方向を示す情報にあたる。
【0035】
クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車とは、クランクシャフト1の回転力を吸気カムシャフト7に伝達する際の経路に設けられる歯車である。本実施形態ではクランクシャフト1に設けられる歯車は、出力プーリ1S(出力プーリ1Sの筒状部における外周面に設けられる歯車)が相当し、吸気カムシャフト7に設けられる歯車は、駆動ケース10の駆動プーリ11が相当する。したがって、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報とは、出力プーリ1Sの歯数、及び駆動ケース10の駆動プーリ11の歯数を示す情報にあたる。
【0036】
内燃機関Eの種類を示す情報とは、内燃機関Eの機種を示す情報であって、例えば内燃機関Eが搭載される車両を示す情報を含んでも良い。また、上述した駆動制御ユニット50から動作指令ユニット40への第2通信線62を介して行うPWM通信におけるPWM信号の周波数を規定する情報を含んでも良い。
【0037】
また、記憶部51は、弁開閉時期制御装置100が制御する吸気バルブVaの開弁時期と閉弁時期との間の作動範囲を示す弁用パラメータを記憶する。弁開閉時期制御装置100が制御する吸気バルブVaとは、弁開閉時期制御装置100により開閉時期が制御される内燃機関Eが有する吸気バルブVaである。開弁時期とは吸気バルブVaが開弁されるタイミングであって、閉弁時期とは吸気バルブVaが閉弁されるタイミングである。したがって、吸気バルブVaの開弁時期と閉弁時期との間の作動範囲とは、吸気バルブVaが開弁されてから、閉弁されまでの間の吸気カムシャフト7の回転範囲(回転角)にあたる。ここで、上述したように弁開閉時期制御装置100は、駆動ケース10と内部ロータ20との相対回転位相を変更可能に構成されている。また、吸気カムシャフト7はクランクシャフト1が2回転する間に1回転するが、作動範囲は、クランクシャフト1の回転を基準に規定したクランクシャフト1の角度(いわゆる、クランク角)で示される。したがって、作動範囲は、相対回転位相が最進角状態である時のクランク角と、相対回転位相が最遅角状態である時のクランク角との間の角度で示される。
【0038】
ここで、内燃機関Eを車両に初めて搭載した(例えば、製造時)際や、内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100を換装し直した際には、記憶部51に内燃機関用パラメータや弁用パラメータが記憶されていなかったり、更新する必要があったりすることがある。
【0039】
このような場合、内燃機関用パラメータは、動作指令ユニット40から第1通信線61を介して、PWM信号の周波数に対応付けして伝達される。動作指令ユニット40は、モータMの回転軸の回転方向を示す情報として、時計回りの方向であることを示す情報を伝達する場合には周波数f1〔Hz〕のPWM信号を伝達し、反時計回りの方向であることを示す情報を伝達する場合には周波数f2〔Hz〕のPWM信号を伝達する(ただし、f1とf2とは互いに異なる)。これにより、記憶部51にモータMの回転軸の回転方向を示す情報を記録することが可能となる。
【0040】
また、動作指令ユニット40は、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報を伝達する場合にも、夫々の歯車毎に、歯数に応じた周波数のPWM信号を伝達する。これにより、記憶部51にクランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報を記録することが可能となる。
【0041】
更に、動作指令ユニット40は、内燃機関Eの種類を示す情報を伝達する場合にも、内燃機関Eの種類毎に設定された周波数のPWM信号を伝達する。これにより、記憶部51に内燃機関Eの種類を示す情報を記録することが可能となる。
【0042】
一方、弁用パラメータは、PWM信号のオンDUTY比に対応付けして伝達される。動作指令ユニット40は、弁用パラメータを伝達する場合には、弁用パラメータの伝達用として予め設定された周波数のPWM信号であって、弁の作動範囲毎に設定されたオンDUTY比のPWM信号を伝達する。これにより、記憶部51に弁用パラメータを記録することが可能となる。
【0043】
上述した内燃機関Eを車両に初めて搭載する際には、記憶部51には内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータが記憶されていないことが明らかであるので、動作指令ユニット40から駆動制御ユニット50(記憶部51)に自動的に内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータを伝達するように構成することが可能である。
【0044】
一方、内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100を換装し直した際には、記憶部51に換装し直す前(換装前)の内燃機関用パラメータや弁用パラメータが記憶されていることがある。この場合、動作指令ユニット40は駆動制御ユニット50(記憶部51)に内燃機関用パラメータや弁用パラメータを伝達するべきか否かを迅速に判別することができない。そこで、駆動制御ユニット50は、換装前の内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100に応じた内燃機関用パラメータや弁用パラメータが記憶部51に記憶されている場合、すなわち、記憶部51に換装し直した後(換装後)の内燃機関用パラメータが記憶されていない場合は、動作指令ユニット40に第2通信線62(「通信線」の一例)を介して、内燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる周波数であって、内燃機関用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達する。
【0045】
換言すれば、駆動制御ユニット50は、内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100が換装し直された場合に、動作指令ユニット40に対して第2通信線62を介して、内燃燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる、予め設定された周波数を有するPWM信号であって、このPWM信号のオンDUTY比を内燃機関用パラメータが記憶部51に記憶されていないことを示すオンDUTY比に設定して出力する。動作指令ユニット40は、このPWM信号を取得すると、内燃機関用パラメータを上述した方法で駆動制御ユニット50に伝達すると良い。
【0046】
また、駆動制御ユニット50は、記憶部51に換装後の内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100に応じた弁用パラメータが記憶されていない場合は、動作指令ユニット40に第2通信線62を介して、内燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる周波数であって、弁用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達する。
【0047】
すなわち、駆動制御ユニット50は、内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100が換装し直された場合に、動作指令ユニット40に対して第2通信線62を介して、内燃燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる、予め設定された周波数を有するPWM信号であって、このPWM信号のオンDUTY比を弁用パラメータが記憶部51に記憶されていないことを示すオンDUTY比に設定して出力する。動作指令ユニット40は、このPWM信号を取得すると、弁用パラメータを上述した方法で駆動制御ユニット50に伝達すると良い。
【0048】
図3には、内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100が換装し直された際における、駆動制御ユニット50が内燃機関Eや弁開閉時期制御装置100の機種を特定できない時の制御装置200の処理を示すタイムチャートが示される。
【0049】
図3の(a)に示されるように、まず、車両のイグニションスイッチ(IG-SW)がオンされる(ステップ#1)。これに伴い、動作指令ユニット40が起動し(ステップ#2)、駆動制御ユニット50も起動する(ステップ#3)。
【0050】
駆動制御ユニット50は、起動後初期化され、記憶部51から内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータの読み出しを行う(ステップ#4)。駆動制御ユニット50は、記憶部51に燃機関用パラメータが記憶されていない場合には、機種を特定することができないことを示す機種不定信号を動作指令ユニット40に対して第2通信線62を介して送信する(ステップ#5)。この機種不定信号は、所期のPWM信号(例えば周波数:100Hz/オンDUTY比:70%)が用いられる。
【0051】
動作指令ユニット40は、駆動制御ユニット50から機種不定信号を受けると、第1通信線61を介して機種情報(内燃機関用パラメータに相当)を送信する(ステップ#6)。この機種情報の伝達も、上述したように予め設定された周波数及びオンDUTY比によるPWM信号の伝達により行われる。機種情報は内燃機関用パラメータとして記憶部51に記憶される。これにより、駆動制御ユニット50において、機種情報が確定される(ステップ#7)。
【0052】
次に、駆動制御ユニット50は、記憶部51に弁用パラメータが記憶されていない場合には、弁開閉時期制御装置100の作動範囲を特定することができないことを示す学習値不定信号を動作指令ユニット40に対して第2通信線62を介して送信する(ステップ#8)。この学習値不定信号は、所期のPWM信号(例えば周波数:100Hz/オンDUTY比:80%)が用いられる。
【0053】
動作指令ユニット40は、駆動制御ユニット50から学習値不定信号を受けると、第1通信線61を介して学習値情報(弁用パラメータに相当)を送信する(ステップ#9)。この学習値情報の伝達も、上述したように予め設定された周波数及びオンDUTY比によるPWM信号の伝達により行われる。学習値情報は弁用パラメータとして記憶部51に記憶される。これにより、駆動制御ユニット50において、弁開閉時期制御装置100の作動角(作動範囲)が確定される(ステップ#10)。
【0054】
また、作動角の確定後、駆動制御ユニット50は最遅角学習を行う(ステップ#11)。この時、動作指令ユニット40から内燃機関Eの回転数を示す回転数情報が伝達される(ステップ#12)。この回転数情報の伝達も予め設定された周波数及びオンDUTY比によるPWM信号の伝達により行われる。最遅角学習が完了すると(ステップ#13)、学習結果は記憶部51に記憶される。以上のようにして、記憶部51の内燃機関用パラメータ及び弁用パラメータが記憶され、コンフィグ処理が完了する(ステップ#14)。
【0055】
これにより、最遅角学習制御及び学習が完了する(ステップ#15)。その後は、動作指令ユニット40により通常位相制御に係る動作指令が行われ(ステップ#16)、この動作指令を受けて、駆動制御ユニット50により弁開閉時期制御装置100が通常位相制御される(ステップ#17)。
【0056】
なお、車両に搭載されている内燃機関E及び弁開閉時期制御装置100に適した内燃機関用パラメータが記憶部51に記憶されている場合には、ステップ#5及びステップ#6の処理はスキップされる。また、車両に搭載されている内燃機関E及び弁開閉時期制御装置100に適した弁用パラメータが記憶部51に記憶されている場合には、ステップ#8及びステップ#9の処理はスキップされる。更に、既に最遅角学習が完了している場合には(ステップ#11)、ステップ#12の処理を行わなくても良い。係る場合でも、記憶部51に弁開閉時期制御装置100の通常位相制御に必要な各パラメータが記憶されているので、適切に通常位相制御を行うことが可能となる。
【0057】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、内燃機関用パラメータは、モータMの回転軸の回転方向を示す情報、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び内燃機関Eの種類を示す情報を含むとして説明したが、内燃機関用パラメータは、モータMの回転軸の回転方向を示す情報、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び内燃機関Eの種類を示す情報のうち、少なくともいずれか一つを含むように構成することも可能であるし、モータMの回転軸の回転方向を示す情報、クランクシャフト1及び吸気カムシャフト7の夫々に設けられた歯車の歯数を示す情報、及び内燃機関Eの種類を示す情報とは異なる情報をさらに含むように構成しても良い。
【0058】
上記実施形態では、駆動制御ユニット50は、記憶部51に内燃機関用パラメータが記憶されていない場合は、動作指令ユニット40に第2通信線62を介して、内燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる周波数であって、内燃機関用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達するとして説明したが、駆動制御ユニット50は、記憶部51に内燃機関用パラメータが記憶されていない場合に、上記実施形態とは異なる方法で、記憶部51に内燃機関用パラメータが記憶されていないことを示す信号を伝達しても良い。
【0059】
上記実施形態では、駆動制御ユニット50は、記憶部51に弁用パラメータが記憶されていない場合は、動作指令ユニット40に第2通信線62を介して、内燃機関用パラメータの伝達で用いたPWM信号の周波数とは異なる周波数であって、弁用パラメータに対応したオンDUTY比のPWM信号を伝達するとして説明したが、駆動制御ユニット50は、記憶部51に弁用パラメータが記憶されていない場合に、上記実施形態とは異なる方法で、記憶部51に弁用パラメータが記憶されていないことを示す信号を伝達しても良い。
【0060】
上記実施形態では、通信線が第1通信線61及び第2通信線62であるとして説明したが、通信線を単一の線を用いて構成することも可能である。
【0061】
本発明は、PWM信号に基づいて設定をパラメータの設定を行う制御装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:クランクシャフト
7:吸気カムシャフト(カムシャフト)
10:駆動ケース(駆動側回転体)
20:内部ロータ(従動側回転体)
30:位相設定機構
40:動作指令ユニット
50:駆動制御ユニット
51:記憶部
61:第1通信線(通信線)
62:第2通信線(通信線)
100:弁開閉時期制御装置
200:制御装置
E:内燃機関
M:モータ
Va:吸気バルブ(弁)
X:回転軸心
図1
図2
図3