(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126803
(43)【公開日】2022-08-30
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20220823BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20220823BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B60N2/56
B60N2/90
A47C7/74 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101098
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2020126387の分割
【原出願日】2016-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2015132473
(32)【優先日】2015-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015132474
(32)【優先日】2015-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】沖村 篤
(72)【発明者】
【氏名】今野 竜海
(72)【発明者】
【氏名】西井 渉
(72)【発明者】
【氏名】中野 裕司
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 啓史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 博郁
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡易な構成でシートバックフレームにブロアを固定する。
【解決手段】乗物用シートは、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームF1と、シートバック内に配置されたブロア20と、ブロア20が固定されるブラケット40と、シートバックフレームF1の後側に設けられたカバー部材50とを備え、ブラケット40は、カバー部材50との間でシートバックフレームF1を挟み、カバー部材50に固定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、
前記シートバック内に配置されたブロアと、
前記ブロアが、前記ブロアの回転中心より上に位置する少なくとも2箇所で固定されるブラケットであって、電装部材のハーネスが固定されるハーネス固定孔を有するブラケットと、
前記シートバックフレームの後側に配置されたカバー部材と、を備え、
前記カバー部材は、前記ブロアのハーネスが固定される係合部を有することを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロアによる空調機能を有する乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートバック内にブロアが設けられ、ブロアによりシートバックの表面の空気を流動させる空調機能付きの車両用シートが知られている(特許文献1)。特許文献1の車両用シートでは、ブロアは、シートバックフレームの左右のサイドフレームに渡された架橋フレームに固定されている。そして、ブロアの吹出口に、シートバックパッド内の通気路に繋がるダクトが嵌合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
ところで、ブロアを、架橋フレームなどのシートバックフレームの一部に直接ボルトで固定する場合、シートバックフレームにナットを溶接したりするなど、固定のためだけの部品を別途用意する必要がある。すると、空調付きのシートと、空調なしのシートの両方の仕様を製造する場合、空調付きのシート用のシートバックフレームを専用品とするか、もしくは、シートバックフレームを両方の仕様で共通とするために、空調なしのシートのために、不必要に溶接ナット等を設けることになっていた。
【0005】
このような背景に鑑み、本発明は、簡易な構成でシートバックフレームにブロアを固定することができる乗物用シートを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、乗物用シートの軽量化と設計自由度の向上を図ることを目的とする。
【0007】
また、本発明は、ダクトとブロアの間での空気漏れを抑制することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、カバー部材やブラケットの組付を容易にし、ブロアに接続されるダクトを保護することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、簡易な構成で、ブロアのハーネスを固定し、保護することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、ブロアの寸法に製造誤差があっても、ブロアを容易に正規の位置に組み付けることを目的とする。
【0011】
前記課題を解決する本発明は、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバック内に配置されたブロアと、前記ブロアが固定されるブラケットと、前記シートバックフレームの後側に設けられたカバー部材とを備える乗物用シートである。
このシートにおいて、前記ブラケットは、前記カバー部材との間で前記シートバックフレームを挟み、前記カバー部材に固定されていることを特徴とする。
【0012】
このような構成によると、シートバックフレームの後側に設けられたカバー部材を利用して、ブロアが固定されるブラケットは、カバー部材との間でシートバックフレームを挟み、カバー部材に固定されているので、ブロアの固定のためだけの溶接ナット等が不要であり、簡易な構成でシートバックフレームにブロアを固定することができる。そのため、空調付きと空調なしの両方の仕様のシートを製造する場合において、シートバックフレームの共用化が容易である。
【0013】
前記した乗物用シートにおいて、前記シートバックフレームは、左右に離間して配置された一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレームの上端部同士を連結するアッパーフレームと、前記一対のサイドフレームの下端部同士を連結するロアフレームと、前記アッパーフレームと前記ロアフレームの間の中間位置で前記一対のサイドフレーム同士を連結する架橋フレームとを有し、前記ブラケットは、前記カバー部材との間で前記架橋フレームを挟み、前記カバー部材に固定されている構成とすることができる。
【0014】
前記した乗物用シートにおいて、前記ブラケットは、樹脂からなる構成とすることができる。
【0015】
ブラケットを樹脂から構成することで、軽量化を図ることができ、また、形状を自由に作れるので、設計自由度が向上する。
【0016】
前記した乗物用シートにおいて、前記ブロアの吸入口または吹出口に接続されたダクトを備え、前記ダクトは、前記ブロアに接続される一端側の第1開口と、他端側の第2開口と、前記第1開口の周囲に設けられたフランジとを有し、前記ブロアは、前記吸入口または吹出口の周囲に平面部を有し、前記フランジは、前記平面部と前記ブラケットの間に配置され、前記ブロアを前記ブラケットに固定することで、前記平面部と前記ブラケットに挟持されている構成とすることができる。
【0017】
このような構成によると、ブラケットとブロアの平面部でフランジを挟持することで、ダクトとブロアの間で空気が漏れることを抑制することができる。
【0018】
前記した乗物用シートにおいて、前記カバー部材は、前方に開口したカップ状に形成することができる。そして、この構成においては、前記カバー部材は、上部に、前記シートバックフレームの前側に係合可能な、下方へ延出する第1爪部を有することが望ましい。
【0019】
このような構成によれば、シートバックフレームの上部の前側に第1爪部を係合することで、シートバックフレームにカバー部材を仮組することができ、ブラケットをカバー部材に固定するのが容易である。
【0020】
そして、前記カバー部材は、前記第1爪部に対し後方に離間して配置され、前記第1爪部との間で前記シートバックフレームを受け入れる、下方へ延出する第2爪部を有することが望ましい。
【0021】
このような構成によれば、第1爪部と第2爪部の間にシートバックを入れるように、カバー部材をシートバックフレームに仮組みできるので、ブラケットをカバー部材に固定するのがより容易となる。
【0022】
前記した乗物用シートにおいて、前記カバー部材は、前方へ向けて突出し、前記シートバックフレームに後側から当接するリブを有することが望ましい。
【0023】
このような構成によれば、リブによりカバー部材の剛性を高くしてダクトを効果的に保護することができるとともに、カバー部材をシートバックフレームに仮組みしたときに、リブがシートバックフレームに後側から当接するので、カバー部材の前後方向の位置決めをすることができる。そのため、カバー部材の組付けが容易である。
【0024】
前記した乗物用シートにおいて、前記カバー部材には、前記ブロアのハーネスが固定される係合部が設けられていることが望ましい。
【0025】
このような構成によれば、ブロアのハーネスを、カバー部材に簡単に固定することができ、カバー部材によってハーネスを保護することができる。
【0026】
前記した乗物用シートにおいて、前記ブラケットは、前記ブロアと係合するとともに前記ブロアを固定するための締結部材が締結される第1ボス、第2ボスおよび第3ボスを有することができる。この場合、前記ブロアは、前記第1ボスと嵌合して前記ブロアの位置を決める円形の第1係合孔と、前記第2ボスと係合して長手方向に直交する方向の位置を決める、長円形の第2係合孔と、前記第3ボスと上下左右に遊びをもって係合する第3係合孔とを有することができる。
【0027】
このような構成によれば第1ボスと第1係合孔の嵌合によって、ブラケットに対するブロアの位置を決めることができるとともに、第2ボスと第2係合孔の係合によってブラケットに対するブロアの姿勢を決めることができる。また、第2係合孔が長円形であり、第3係合孔が第3ボスに対して上下左右に遊びをもって係合することにより、ブロアの各ボスの位置に製造誤差があっても、ブロアを容易に正規の位置に組み付けることができる。
【0028】
従来の車両用シートでは、平面部に設けられた吸入口または吹出口にダクトを固定しようとすると、そのままでは嵌合により固定することができないため、ダクトを固定するための爪部などを別途設ける必要があった。また、爪部にダクトを係合するのみでは、ダクトとブロアの間から空気が漏れるのを抑制するのが困難であった。
【0029】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、空気漏れを抑制しつつ、ブロアの平面部にある吸入口または吹出口にダクトを固定することを目的とする。
【0030】
前記課題を解決する本発明は、シートバックの骨格を構成するシートバックフレームと、前記シートバック内に配置されたブロアと、前記ブロアが固定されるブラケットと、前記ブロアの吸入口または吹出口に接続されたダクトとを備える乗物用シートである。この乗物用シートにおいて、前記ダクトは、前記ブロアに接続される一端側の第1開口と、他端側の第2開口と、前記第1開口の周囲に設けられたフランジとを有し、前記ブロアは、前記吸入口または吹出口の周囲に平面部を有し、前記フランジは、前記平面部と前記ブラケットの間に配置され、前記ブロアを前記ブラケットに固定することで、前記平面部と前記ブラケットに挟持されていることを特徴とする。
【0031】
このような構成によれば、ブラケットとブロアの平面部でフランジを挟持することで、フランジを平面部に密着させることができ、ダクトとブロアの間から空気が漏れるのを抑制しつつ、ブロアに特別な構成を設けることなく簡易にダクトをブロアの平面部にある吸入口または吹出口に固定することができる。
【0032】
前記した乗物用シートにおいて、前記ダクトは、柔軟性または弾性を有することが望ましい。ダクトが柔軟性または弾性を有することで、フランジと平面部の密着度が向上してダクトとブロアの間から空気が漏れることをより抑制することができる。
【0033】
前記した乗物用シートにおいて、前記ダクトは、前記第1開口の縁に前記吸入口または吹出口の内側に入り込む筒部を有することが望ましい。
【0034】
このような構成によれば、筒部が吸入口または吹出口の内側に入り込み、ダクトとブロアの間から空気が漏れることをさらに抑制することができる。
【0035】
前記した乗物用シートにおいて、前記筒部は、前記ブロアの翼部材から所定距離離間していることが望ましい。
【0036】
このような構成によれば、筒部とブロアの翼部材の干渉を防止することができる。
【0037】
前記した乗物用シートにおいて、前記ダクトは、前記ブロアに接続される、前記ブラケットの一方側に位置する第1部分と、前記第1部分から延出し、前記ブラケットの他方側に位置する第2部分と、前記第2部分から延出し、前記ブラケットの前記一方側に位置する第3部分とを有することが望ましい。
【0038】
このような構成によれば、ダクトをブラケットに仮組みした状態で、ダクトがブラケットから外れるのを抑制でき、ダクトおよびブラケットをシートバックフレームに組み付けるのが容易となる。
【0039】
前記した乗物用シートにおいて、前記第1開口と前記第2開口とは、同じ向きに開いていることが望ましい。この場合に、前記第1開口と前記第2開口は、互いに上下にずれて配置されていてもよい。このような構成によれば、狭いシートバック内において、コンパクトな構成で効率よく空気を流すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図2】
図1に示す車両用シートのシートバックパッドから上層パッドを取り除いた状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)空調機の分解斜視図と、(b)ブロアの後側の斜視図である。
【
図6】ブロア、ダクトおよびパッドの接続状態を説明する鉛直断面図である。
【
図7】空調機をシートフレームに組み付けた状態を正面から見た図である。
【
図8】ブラケットとダクトを仮組みした状態の斜視図である。
【
図9】
図6のY-Y断面に相当する、ブロア、ダクトおよびブラケットの断面図である。
【
図10】ブロア、カバー部材およびハーネスを示す斜視図である。
【
図11】カバー部材をシートフレームに仮組みした状態を前斜め下方から見た図である。
【
図12】
図6のX-X断面に相当する車両用シートの部分断面図である。
【
図13】変形例に係るシートバックの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明において、前後、左右および上下は、車両用シートSに座る乗員を基準とする。
図1に示すように、乗物用シートの一例としての車両用シートSは、車両に搭載される、空調機能を有するシートであり、シートバックS1とシートクッションS2を備えている。
【0042】
シートバックS1は、パッドP1と、パッドP1に嵌め込まれた上層パッドP2とを有している。
パッドP1は、ウレタンフォームなどから形成され、上層パッドP2が嵌め込まれる凹部100(
図2参照)が後方に凹むように形成されている。
上層パッドP2は、それぞれウレタンフォームなどから形成された第1パッド部P21および第2パッド部P22を備えて構成され、第1パッド部P21および第2パッド部P22は、表面の適宜な箇所に、空気を吸い込む通気穴H1を有している。上層パッドP2は、凹部100に嵌め込まれた状態で、パッドP1と面一になっている。
さらに、凹部100の外周のうち、第1パッド部P21の上端と左右両端に対応する部分には、表皮材(図示せず)を吊り込むための逆U字形状の吊りこみ溝120が、凹部100よりも深い深溝として形成されている。また、吊りこみ溝120の上端部からは、表皮材(図示せず)の縫合部(図示せず)が入り込んで配置される左右一対の縫合部配置溝122が左右方向斜め外側に延びるように設けられている。縫合部配置溝122は、吊りこみ溝120よりも浅い溝として形成される。
シートクッションS2も、同様にパッドP3と、パッドP3に嵌め込まれた上層パッドP4とを有し、上層パッドP4の適宜な箇所に通気穴H1を有している。上層パッドP4も、嵌め込まれた状態でパッドP3と面一になっている。
なお、
図1においては、表皮材を省略して示しており、車両用シートSは、シートバックS1のパッドP1および上層パッドP2と、シートクッションS2のパッドP3および上層パッドP4に、通気性のある表皮材をそれぞれ被せることで構成されている。
【0043】
図2に示すように、上層パッドP2を取り除くと、パッドP1の表面には、各通気穴H1から吸い込まれた空気が後述するダクト30まで流れる通気路H2が形成されている。
詳細には、凹部100は、第1パッド部P21に対応する位置に設けられた第1凹部102と、第2パッド部P22に対応する位置に設けられた第2凹部103とを含み、第1凹部102と第2凹部103が連通している。
第1凹部102は、パッドP1の中央部から下部にわたって上下に延びている。第1凹部102の内部には、上下および左右に延びる梯子形状の溝110が形成され、この梯子形状の溝110により4つの凸部104が形成されている。なお、溝110は、縦方向の溝よりも凸部104どうしの間の溝の方が浅くなっている。
さらに、第1凹部102には、溝110の上端から第1凹部102の上端まで延びる縦溝112が形成されている。第1凹部102は、第1パッド部P21を後から支持する高さを有している。
【0044】
第2凹部103は、第1凹部102の上方で左右に延びている。第2凹部103は、後述するダクト30の第2開口34と連通する貫通孔106が右下部に設けられており、貫通孔106は、パッドP1を前後に貫通している(
図6参照)。また、第2凹部103の内部には、第2凹部103の下端まで延びるT字溝114が形成されている。また、第2凹部103には、貫通孔106からT字溝114の縦溝まで延びる横溝116が左右に延びている。第2凹部103は、第2パッド部P22を後から支持する高さを有している。
【0045】
第1凹部102の梯子形状の溝110および縦溝112と、第2凹部103のT字溝114および横溝116は、第1パッド部P21および第2パッド部P22が固定された状態で通気路H2を構成する。第1パッド部P21および第2パッド部P22は、第1凹部102および第2凹部103に接着剤によって貼り付けられることで、パッドP1に固定される。
第1パッド部P21および第2パッド部P22の通気穴H1は、通気路H2上に設けられており、各通気穴H1から吸い込まれた空気が、通気路H2を通ってダクト30の第2開口34まで流れることになる。
【0046】
図3に示すように、車両用シートSの内部には、シートフレームFが内蔵されている。シートフレームFは、シートバックS1の骨格を構成するシートバックフレームF1と、シートクッションS2の骨格を構成するクッションフレームF2とを備えている。以下においては、シートバックS1の構成について説明し、シートクッションS2の説明は省略する。
【0047】
シートバックフレームF1は、プレス成形された板金からなり、部品として、左右に離間して配置された一対の板金フレーム12と、一対の板金フレーム12のそれぞれの上端に接続された、パイプ材をU字状に屈曲させてなるパイプフレーム13とを備えている。
パイプフレーム13は、板金フレーム12から真っ直ぐ上に延びるとともに、左右内側に少し傾斜する左右一対のアッパーサイドフレーム13Aを有している。左右の板金フレーム12およびアッパーサイドフレーム13Aは、左右に離間して配置された一対のサイドフレーム11である。また、パイプフレーム13は、一対のアッパーサイドフレーム13Aの上端部同士、つまり、サイドフレーム11の上端部同士を連結するアッパーフレーム13Bを有している。
また、シートバックフレームF1は、サイドフレーム11の下端部同士を連結するロアフレーム14を有している。
【0048】
シートバックS1内には、シートバックS1の通気穴H1からシートバックS1の表面付近の空気を吸い込むことで車両用シートSの空調機能を実現する空調機ACが配置されている。
【0049】
図4に示すように、シートバックフレームF1には、空調機ACを固定するための架橋フレーム15が設けられている。架橋フレーム15は、アッパーフレーム13Bとロアフレーム14の間の中間位置で、一対のサイドフレーム11同士を連結している。
架橋フレーム15には、左右に並ぶ複数の丸孔15Aと、複数の丸孔15Aの左右両側に形成された四角い掛止孔15Bが設けられている。丸孔15Aは、そのうちの2つが後述するブラケット40を固定するタッピングボルト91が挿入される部分となっている。また、掛止孔15Bは、後述するカバー部材50のフック56が係合することができるように形成されている。
【0050】
空調機ACは、ブロア20と、ブロア20と接続されたダクト30と、ブロア20が固定されるブラケット40と、シートバックフレームF1の後側に設けられ、空調機AC、特にダクト30を後側から保護するカバー部材50とを備えてなる。これらの部材は、後述するように組み合わされて、タッピングボルト91によりブラケット40が架橋フレーム15に支持され、締結部材の一例としてのタッピングボルト92によりブロア20がブラケット40に固定される。
【0051】
図5(a)に示すように、ブロア20は、シロッコファンであり、筐体21と、筐体21内に配置された翼部材22と、翼部材22を回転させるモータ26(
図9参照)とを備えている。なお、ブロア20は、シロッコファンに限らず、プロペラファンやターボファンなど他のタイプのファンを用いることができ、回転方向を逆にして、送風と吸入を切り替えることができるものであってもよい。
筐体21は、公知のように翼部材22の外側の通気路が徐々に広がるように形成されており、通気路がもっとも広がった右下の部分に右側に開放する吹出口21Bを有している。筐体21は、例えばPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの樹脂により構成することができる。
【0052】
また、筐体21は、
図5(b)に後側を示すように、後側の中央に円形の吸入口21Aを有している。そして、筐体21は、吸入口21Aの周囲に後側を向く平面部21Zを有している。さらに、
図5(a)に示すように、筐体21の外周には、外側に突出して設けられた3つの取付部23A,23B,23Cが形成されている。取付部23Aは、筐体21の左上方に突出し、取付部23Bは、筐体21の略右方に突出し、取付部23Cは、筐体21の左下方に突出している。取付部23Aには、円形の第1係合孔24Aが形成され、取付部23Bには、左右に長い長円形の第2係合孔24Bが形成され、取付部23Cには、第1係合孔24Aよりも大きい円形の第3係合孔24Cが形成されている。
【0053】
ダクト30は、
図6に示すように、ブロア20と、パッドP1内の通気路H2とを接続する部材である。通気路H2は、通気穴H1と接続している。
図5(a)に戻り、ダクト30は、左右に延在する、ブラケット40の後側に位置する左右延在部31と、左右延在部31の右端から下方に延びる上下延在部32とを備えている。
【0054】
ダクト30は、左右延在部31の左端(ダクト30の一端側)に、前方に開口する円形の第1開口33を有し、第1開口33の周囲に、上下左右に広がるフランジ35を有している。フランジ35は、前後方向において左右延在部31の前面とおよそ同じ位置に配置されている。また、第1開口33の縁には、突条部33Aが設けられている。突条部33Aは、ブロア20の吸入口21Aの内側に嵌合するように形成されている。また、突条部33Aは、ブロア20の翼部材22から径方向内側に所定距離離間している。このため、突条部33Aとブロア20の翼部材22の干渉を防止することができる。
【0055】
ダクト30は、上下延在部32の下端部(ダクト30の他端側)が前方に屈曲し(
図6参照)、その屈曲した端部に、前方に開口する四角形の第2開口34を有している。また、ダクト30は、第2開口34の周囲に、上下左右に広がるフランジ36有している。さらに、第2開口34の縁には、前方に突出する筒部34Aが設けられている。ダクト30は、ゴムなどの弾性を有する材料や、ポリ塩化ビニルシートなどの柔軟性を有する材料から構成されている。例えば、ダクト30は、オレフィン系エラストマー(TPO)をブロー成形することで製造することができる。もっとも、ダクト30の材質はこれに限らず、ポリエチレン等の樹脂や、繊維強化された樹脂などの複合材料など、弾性の有無に関わらず任意の材料を用いることができる。なお、突条部33Aは、ブロー成形後に成形体の一部をカットして第1開口33を形成した場合に、第1開口33の付近に残る切り残し部分(バリ)をそのまま残すことで設けることができる。
【0056】
第1開口33と第2開口34は、同じ向き、ここでは、ともに前方に向けて開口している。そして、第1開口33と第2開口34は、互いに上下および左右にずれて配置されている。このため、狭いシートバックS1内において、コンパクトにダクト30を配置して、効率良く空気を流すことが可能となっている。
【0057】
ブラケット40は、ポリプロピレンなどの樹脂を射出成形することなどにより製造され、左右に延びる本体部41と、本体部41の上方に配置された上部支持部42と、本体部41と上部支持部42を上部支持部42の左端部で接続する第1接続部43Aと、本体部41と上部支持部42を上部支持部42の右端部で接続する第2接続部43Bとを備えてなる。これらの本体部41、上部支持部42、第1接続部43Aおよび第2接続部43Bの間には、貫通孔44が形成されている。
【0058】
上部支持部42の前面と、第1接続部43Aの前面と、本体部41の前面のうち、ダクト30のフランジ35に対応する部分を含む所定範囲は、面一となっている。第2接続部43Bは、これらの面一な部分よりも前に位置している。
【0059】
ブラケット40には、ブロア20を取り付けるための第1ボス45A、第2ボス45Bおよび第3ボス45Cが前面から前方に突出して設けられている。各ボス45A,45B,45Cは、円筒形状を有し、前端面にタッピングボルト92が係合する穴が形成されている(符号省略)。各ボス45A,45B,45Cは、すべて同じ形状であり、それぞれ、第1係合孔24A、第2係合孔24Bおよび第3係合孔24Cに対応した位置に配置されている。
【0060】
また、ブラケット40には、各ボス45A,45B,45Cの外周面とブラケット40の前面とを繋ぐリブ(符号省略)が設けられている。各リブの前面は、前方を向き、各ボス45A,45B,45Cごとに前後方向の位置が揃っており、ブロア20の各取付部23A,23B,23Cが当接することでブロア20の前後方向の位置を決めることが可能となっている。
【0061】
また、ブラケット40は、本体部41の中央より右側の部分に前後に貫通する第1固定孔46Aを有し、本体部41の中央より左側の部分に前後に貫通する第2固定孔46Bを有し、上部支持部42の右端部に前後に貫通する第3固定孔46Cを有する。第1固定孔46A、第2固定孔46Bおよび第3固定孔46Cは、タッピングボルト91が挿通されて、ブラケット40をカバー部材50に固定するための部分である。第1固定孔46Aは、後述するボス54A(
図10参照)と嵌合して第1固定孔46Aの位置におけるブラケット40の位置を決める円形の孔となっている。第2固定孔46Bは、左右に長い長円形であり、後述するボス54B(
図10参照)が係合することで、長円の長手方向に直交する上下方向の位置を決め、ブラケット40のシートバックフレームF1に対する姿勢を決めることができるようになっている。第3固定孔46Cは、第1固定孔46Aより一回り大きい円形を有し、後述するボス54C(
図10参照)に対して上下左右に遊びをもって係合するようになっている。
【0062】
また、ブラケット40は、本体部41の上端部や、上部支持部42の上端部などに、後方へ延出する延出部47を有し、各延出部47に、ブロア20のハーネスや、その他の電装部材のハーネスを固定するためのハーネス固定孔47Aを有する。
【0063】
図7に示すように、第1係合孔24Aは、第1ボス45Aの外周と嵌合してブロア20の第1係合孔24Aにおけるブロア20の前後左右の位置を決めることができるように形成されている。第2係合孔24Bは、第2ボス45Bと係合して、第2係合孔24Bの長手方向に直交する方向、すなわち、上下方向の位置を決め、ブロア20の姿勢を決めることができるように形成されている。第3係合孔24Cは、第1係合孔24Aよりも一回り大きいので、第3ボス45Cに対して上下左右に遊びを持って係合するようになっている。このため、ブロア20の各ボス45A,45B,45Cの位置に製造誤差があっても、ブロア20を容易に正規の位置に組み付けることができる。
【0064】
図5に示すダクト30をブラケット40に組み付ける場合、上下延在部32の下端部、つまり、第2開口34側の端部をブラケット40の貫通孔44に前から後へ通した上で、フランジ35が貫通孔44の周囲に近づくまで引っ張り、
図8に示すように上下延在部32をブラケット40の右側部分の前側に回り込ませる。この状態では、
図9に示す断面図のように、フランジ35は、ブラケット40の貫通孔44の周囲の部分の前側(一方側)に位置し、左右延在部31は、フランジ35から延出してブラケット40の第2接続部43Bの後側(他方側)に位置し、上下延在部32は、左右延在部31から延出してブラケット40の前側(一方側)に位置する。すなわち、フランジ35は、第1部分の一例であり、左右延在部31は、第2部分の一例であり、上下延在部32は、第3部分の一例である。
【0065】
このように、フランジ35がブラケット40の前側に位置し、左右延在部31がブラケット40の後側に位置し、上下延在部32がブラケット40の前側に位置することで、ダクト30をブラケット40に仮組みした状態で、ダクト30がブラケット40から外れるのを抑制でき、ダクト30およびブラケット40をシートバックフレームF1に組み付けるのが容易となっている。
【0066】
図10に示すように、カバー部材50は、本体部51と、本体部51の左右中央における上端部に設けられた掛止爪部52と、リブ53A,53Bと、ボス54A,54B,54Cと、ハーネスを固定する係合部55と、フック56とを有している。
【0067】
本体部51は、左右の縁部および上縁部が前方に向かって延びることで前方に開口したカップ状に形成されている。
【0068】
掛止爪部52は、本体部51の上端から前側の下方に延出した第1爪部52Aと、第1爪部52Aに対し後方に離間して配置され、本体部51の上端部から下方へ延出する第2爪部52Bとからなる。第1爪部52Aは、シートバックフレームF1のアッパーフレーム13Bの前側に係合可能に配置されている。第2爪部52Bは、第1爪部52Aとの間でシートバックフレームF1を受け入れることができるように、第1爪部52Aに対してアッパーフレーム13Bの太さに対応した距離だけ離間している。このため、第1爪部52Aと第2爪部52Bの間にアッパーフレーム13Bを入れるようにしてカバー部材50をアッパーフレーム13Bに掛けることができるようになっている(
図6および
図11参照)。
【0069】
リブ53Aは、本体部51の前面(内面)における下部から前方に突出するように形成され、シートバックフレームF1の架橋フレーム15に後側から当接するように配置されている(
図6参照)。
リブ53Bは、本体部51の前面における左右両端部から前方に突出するように形成され、
図11に示すように、シートバックフレームF1のアッパーサイドフレーム13Aに当接するように配置されている。
【0070】
図10に示すように、ボス54A,54B,54Cは、本体部51の内面から突出する円筒形状を有している。ボス54A,54B,54Cは、ブラケット40をシートバックフレームF1に固定するためにタッピングボルト91が挿入される穴(符号省略)を前端面に有している。ボス54A,54B,54Cは、すべて同じ形状であり、それぞれ、ブラケット40の第1固定孔46A、第2固定孔46Bおよび第3固定孔46Cに対応した位置に配置されている。
【0071】
また、カバー部材50には、各ボス54A,54B,54Cの外周面と本体部51の前面とを繋ぐリブ(符号省略)が設けられており、ボス54Aおよびボス54Bは、リブ53Aとも繋がっている。
【0072】
係合部55は、本体部51の前面における上下方向の略中央部に左右に離間して4つ配置されている。各係合部55は、それぞれ、上下に離間して配置された、前方へ突出する一対の爪部からなり、一対の爪部の間は、前後に貫通している。
【0073】
フック56は、本体部51の前面から前方に突出して形成され、左右に可撓性を有するとともに、左右内側に突出する爪部(符号省略)を有している。
【0074】
カバー部材50は、一例として、ポリプロピレンなどの樹脂を射出成形することにより製造することができる。
【0075】
ブロア20を図示しない制御装置に接続するハーネスは、ブロア20から延出する第1ケーブル81と、第1ケーブル81と接続される第2ケーブル82を含んでいる。第1ケーブル81は、端部にコネクタ81Aを備える。第2ケーブル82は、端部にコネクタ81Aと接続するコネクタ82Aを備え、中間位置に係合部55のピッチに対応したピッチで4つの止め部材82Bが固定されている。第1ケーブル81は、ブロア20から右側に引き出され、コネクタ81Aは、コネクタ82Aに接続されている。そして、第2ケーブル82は、コネクタ81A側の端部から右側に延びた後、U字状に反転して左側に引き回されて、各止め部材82Bが係合部55に係合されている(図示せず)。そして、第2ケーブル82の左端部が下方へ引き回されて図示しない制御装置に接続されている。
【0076】
ブラケット40をシートバックフレームF1に組み付ける場合、まず、カバー部材50の第1爪部52Aと第2爪部52Bの間にアッパーフレーム13Bを入れるようにしてカバー部材50をアッパーフレーム13Bに掛ける。そして、カバー部材50を前方に押して、
図11に示すように、フック56を掛止孔15Bに入れて係合させる。このとき、リブ53Bがアッパーサイドフレーム13Aに当接して、
図12に示すように、リブ53Aが架橋フレーム15に当接し、カバー部材50の位置が決められてカバー部材50がシートバックフレームF1に仮組みされる。そして、ボス54A,54Bを、架橋フレーム15の2つの丸孔15Aに挿入する。さらに、タッピングボルト91を第2固定孔46Bと架橋フレーム15の丸孔15Aの一つに通し、タッピングボルト91をボス54Bの穴にねじ込むことで、ブラケット40を架橋フレーム15に固定する。すなわち、ブラケット40は、カバー部材50との間で架橋フレーム15を挟み、カバー部材50に固定され、これにより、ブラケット40は架橋フレーム15(シートバックフレームF1)に間接的に固定される。
【0077】
第1固定孔46Aの周囲とボス54Aは、
図12で示した第2固定孔46Bの周囲とボス54Bと同様の構成により固定されている。また、第3固定孔46Cの周囲は、タッピングボルト91を第3固定孔46Cに通し、タッピングボルト91をボス54Cの穴にねじ込むことでカバー部材50に固定する。
【0078】
次に、ブロア20をブラケット40に組み付ける場合、まず、
図9に示すように、ブロア20の平面部21Zをフランジ35に密着させる。そして、ブラケット40との間でフランジ35を挟持した状態で、タッピングボルト92を各取付部23A,23B,23Cの各第1係合孔24A,第2係合孔24B,第3係合孔24Cに通し、各タッピングボルト92を、第1ボス45A、第2ボス45Bおよび第3ボス45Cの穴にねじ込む。これにより、ダクト30のフランジ35は、平面部21Zとブラケット40の間に配置され、ブロア20をブラケット40に固定することで、平面部21Zとブラケット40に挟持される。
【0079】
以上のような構成の車両用シートSによれば、次のような効果を得ることができる。
ブロア20を固定するためのブラケット40は、シートバックフレームF1の後側に設けられたカバー部材50との間でシートバックフレームF1の架橋フレーム15を挟み、カバー部材50に固定されているので、ブロア20の固定のためだけにナット等を架橋フレーム15に設ける必要が無い。そのため、簡易な構成でシートバックフレームF1にブロア20を固定することができる。したがって、空調付きと空調なしの両方の仕様のシートを製造する場合において、シートバックフレームF1の共用化が容易である。
【0080】
そして、ブラケット40を樹脂から構成することで、軽量化を図ることができ、また、形状を自由に作れるので、ブラケット40の設計自由度が向上する。
【0081】
また、ブラケット40とブロア20の平面部21Zでフランジ35を挟持しているので、フランジ35を平面部21Zに密着させることができ、ダクト30とブロア20の間で空気が漏れることを抑制することができる。そのため、ブロア20に特別な構成を設けることなく簡易にダクト30をブロア20の吸入口21Aに固定することができる。そして、ダクト30が弾性を有することで、フランジ35と平面部21Zの密着度が向上してダクト30とブロア20の間から空気が漏れることをより抑制することができる。
【0082】
また、ダクト30は、突条部33Aが吸入口21Aの内側に入り込んでいるので、ダクト30とブロア20の間から空気が漏れることをさらに抑制することができる。
【0083】
そして、第1爪部52AをシートバックフレームF1のアッパーフレーム13Bに係合することで、シートバックフレームF1にカバー部材50を仮組みすることができ、特に、第1爪部52Aと第2爪部52Bの間にシートバックフレームF1を挟ませるように、カバー部材50をシートバックフレームF1に仮組みできるので、ブラケット40をカバー部材50に固定するのが容易である。
【0084】
また、リブ53A,53Bによりカバー部材50の剛性を高くしてダクト30を効果的に保護することができるとともに、カバー部材50をシートバックフレームF1に仮組みしたときに、リブ53A,53BがシートバックフレームF1に後側から当接するので、カバー部材50の前後方向の位置決めをすることができる。そのため、カバー部材50の組付が容易である。
【0085】
さらに、カバー部材50の係合部55により、ブロア20の第2ケーブル82を、カバー部材50に簡単に固定することができ、カバー部材50によって第2ケーブル82を保護することができる。このため、第2ケーブル82の断線やショートなどの不具合も抑制することができ、第2ケーブル82の組付作業性も向上する。
【0086】
また、第1ボス45Aと第1係合孔24Aの嵌合によって、ブラケット40に対するブロア20の位置を決めることができるとともに、第2ボス45Bと第2係合孔24Bの係合によってブラケット40に対するブロア20の姿勢を決めることができる。そして、第2係合孔24Bが長円形であり、第3係合孔24Cが第3ボス45Cに対して上下左右に遊びをもって係合することにより、ブロア20の各ボス45A,45B,45Cの位置に製造誤差があっても、ブロア20を容易に正規の位置に組み付けることができる。
【0087】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0088】
例えば、掛止爪部52は、カバー部材50の上端部に配置されていたが、上端部より多少下であっても、カバー部材50の重心より上の上部に配置されていれば、安定してアッパーフレーム13Bに掛けることができる。また、第2爪部52Bは無くてもよいが、第2爪部52Bを第1爪部52Aに対してアッパーフレーム13Bに対応した間隔を開けて配置することで、掛止爪部52をアッパーフレーム13Bに掛けるだけで、カバー部材50の位置を略決めることができる。
【0089】
前記実施形態においては、シートバックフレームF1の上端部にU字状に屈曲したパイプフレーム13を用いているが、プレス成形された板金からなるシートバックフレームを用いることもできる。
具体的には、
図13に示すように、シートバックフレーム130は、上部が左右方向の内側に湾曲した左右一対のサイドフレーム132と、一対のサイドフレーム132のそれぞれの上端部に接続されたアッパーフレーム134と、一対のサイドフレーム132のそれぞれの下端部に接続されたロアフレーム140とを備えている。
【0090】
アッパーフレーム134は、それぞれプレス成形された上部メンバ135と下部メンバ136からなる。上部メンバ135は、左右一対のサイドフレーム132の上端部にスポット溶接により接続される。下部メンバ136は、上部メンバ135の下方に位置し、左右一対のサイドフレーム132の側面と上部メンバ135にスポット溶接により接続される。また、上部メンバ135と下部メンバ136の間には、カバー部材50の掛止爪部52を掛けるための開口部138が設けられている。
【0091】
ロアフレーム140は、それぞれプレス成形されたメインメンバ142と補助メンバ144からなり、左右一対のサイドフレーム132の下端部にスポット溶接により接続される。
【0092】
このように構成されたシートバックフレーム130では、アッパーフレーム134とロアフレーム140の間に架橋フレーム15が設けられる。
そして、前記実施形態と同様に、ブロア20、ダクト30およびブラケット40を組み付ける場合、カバー部材50は、開口部138を通して掛止爪部52を下部メンバ136に掛けた状態で架橋フレーム15に固定され、ブラケット40は、カバー部材50との間で架橋フレーム15を挟んだ状態でカバー部材50に固定される。さらに、ブロア20とダクト30がブラケット40に固定され、ダクト30の第2開口34が、パッドP1の第2凹部103に形成された貫通孔106と接続される。
【0093】
また、前記実施形態におけるブラケット40の軽量化を図るため、ブラケット40に肉抜き用の開口部を追加することもできる。
例えば、
図14に示すように、ブラケット40は、本体部41の中央部(貫通孔44の下)に2つの開口部48Aを左右に並べて有するとともに、本体部41の右側と左側(第1固定孔46Aと第2固定孔46Bの上)に開口部48Bをそれぞれ有している。
そして、開口部48Aを形成したことによるブラケット40の剛性の低下を補うため、本体部41の中央部には、2つの開口部48Aの間と外側に3つの上下に延びる補強リブ49Aが設けられる。同様に、開口部48Bを形成したことによるブラケット40の剛性の低下を補うため、本体部41の右側には、開口部48Bに隣接して左右に延びる補強リブ49Bが、本体部41の左側には、開口部48Bに隣接して上下に延びる補強リブ49Cが設けられる。
【0094】
同様に、前記実施形態におけるカバー部材50の軽量化を図るため、カバー部材50に肉抜き用の開口部を追加することもできる。
例えば、
図15に示すように、カバー部材50は、ボス54Cの両側に2つの開口部58Aを有するとともに、フック56の外側に2つの開口部58Bを有する。
そして、開口部58Aを形成したことによるカバー部材50の剛性の低下を補うため、本体部51は、掛止爪部52の両側で各開口部58Aの上と外側に4つの上下に延びる補強リブ59Aと、2つの開口部58Aと係合部55との間で左右に延びる上下一対の補強リブ59Bが設けられる。同様に、開口部58Bを形成したことによるカバー部材50の剛性の低下を補うため、本体部51は、各開口部58Bの下に左右に延びる補強リブ59Cが設けられる。
【0095】
前記実施形態においては、シートバックに設けられる空調機について説明したが、空調機は、シートクッションに設けてもよい。この場合においても、ブロアやブラケットは、シートバックの場合と同様にシートフレームに固定することができる。ダクトをブラケットおよびブロアに固定する構造についても同様である。
【0096】
前記実施形態においては、シートバックの表面からダクトを通してブロアで吸気する空調機について説明したが、逆に、ブロアからダクトを通じてシートバックの表面から空気を吹き出す空調機に本発明を適用することもできる。この場合には、吹出口の周囲に平面部を設けて、この平面部にダクトのフランジを押し当て、フランジをブラケットとファンで挟むことで、ブロアにダクトを接続することもできる。
【0097】
前記実施形態においては、タッピングボルト91によりブラケット40をカバー部材50に固定し、タッピングボルト92によりブロア20をブラケット40に固定していたが、タッピングボルト91,92に代えて簡易な差込式のクリップを使用しても構わない。また、ブラケット40またはカバー部材50の一方に設けたボスを他方に溶着することによりブラケット40をカバー部材50に固定してもよい。
【0098】
前記実施形態においては、ブラケット40をシートフレームFに固定した後にブロア20をブラケット40に固定するように説明したが、ブロア20をブラケット40に固定した後、ブロア20とアセンブリとなったブラケット40をシートフレームFに固定してもよい。
【0099】
前記実施形態においては、ブラケット40は、シートバックフレームF1のうち、架橋フレーム15に固定されていたが、架橋フレーム15以外の部分に固定してもよい。
【0100】
前記実施形態においては、乗物用シートとして、自動車の車両用シートを例示したが、乗物用シートは、鉄道車両や、航空機、船舶などのシートであってもよい。