IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士通フロンテック株式会社の特許一覧

特開2022-126910印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法
<>
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図1
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図2
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図3
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図4
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図5
  • 特開-印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126910
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 1/00 20060101AFI20220824BHJP
   G06F 21/60 20130101ALI20220824BHJP
【FI】
G06T1/00 500B
G06F21/60 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024751
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 昌宏
【テーマコード(参考)】
5B057
【Fターム(参考)】
5B057AA20
5B057CA12
5B057CA20
5B057CB12
5B057CE09
5B057CE10
5B057DA08
5B057DC33
(57)【要約】
【課題】第三者による印影画像の推測をより一層困難にすること。
【解決手段】相互通信可能なサーバとクライアントが実行する印影画像処理システムにおいて、サーバを、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成部と、生成された複数の分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成部と、生成された複数のダミー印影画像をクライアントに送信する送信部と、を備える構成とし、クライアントを、所定の規則に基づき、サーバより受信した複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各分割印影画像を抽出する画像抽出部と、抽出された各分割印影画像から印影画像を復元する画像復元部と、を備える構成とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互通信可能なサーバとクライアントを備える印影画像処理システムにおいて、
前記サーバは、
所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成部と、
前記分割画像生成部により生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成部と、
前記ダミー画像生成部により生成された複数の前記ダミー印影画像を前記クライアントに送信する送信部と、を備え、
前記クライアントは、
前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部により抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元部と、を備える、印影画像処理システム。
【請求項2】
前記ダミー画像は、前記印影画像とは異なる文字の画像又は前記印影画像に対して所定の加工を加えた画像である、請求項1に記載の印影画像処理システム。
【請求項3】
前記サーバは、前記印影画像に対応する印章を持つ者に関連する所定の情報と前記所定の規則とを関連付けて保持する規則情報保持部を更に備え、
前記分割画像生成部は、前記所定の情報と関連付けられた前記所定の規則に従って前記分割印影画像の生成を行う、請求項1又は請求項2に記載の印影画像処理システム。
【請求項4】
前記所定の情報は、所定の機関の口座番号に含まれる少なくとも一部の数字である、請求項3に記載の印影画像処理システム。
【請求項5】
前記送信部は、前記複数のダミー印影画像を暗号化して前記クライアントに送信する、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の印影画像処理システム。
【請求項6】
所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成部と、
前記分割画像生成部により生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成部と、
前記ダミー画像生成部により生成された複数の前記ダミー印影画像をクライアントに送信する送信部と、を備える、サーバ。
【請求項7】
所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成し、生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することによってダミー印影画像を生成し、生成された複数の前記ダミー印影画像をクライアントに送信するサーバと通信する通信部と、
前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出部と、
前記画像抽出部により抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元部と、を備える、クライアント。
【請求項8】
相互通信可能なサーバとクライアントが実行する印影画像処理方法において、
前記サーバが、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成ステップと、
前記サーバが、前記分割画像生成ステップにて生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成ステップと、
前記サーバが、前記ダミー画像生成ステップにて生成された複数の前記ダミー印影画像を前記クライアントに送信する送信ステップと、
前記クライアントが、前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出ステップと、
前記クライアントが、前記画像抽出ステップにて抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元ステップと、を含む、印影画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印影画像処理システム、サーバ、クライアント及び印影画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
公共機関や金融機関等の手続において、手続者の本人確認が求められる場合がある。手続者の本人確認は、例えば身分証明書の提示や印鑑の印影の認証によって行われる。
【0003】
一例として、金融機関では、予め登録されている登録印の印影と、手続者が手続時に捺印した印章(被照合印)の印影とを照合して本人確認を行う。登録印の印影と被照合印の印影とが相違する場合は本人確認することができない。そのため、金融機関は手続を行うことができない。
【0004】
金融機関の担当者が顧客先へ出向いて手続きを行う際、担当者が持参した端末装置に登録印の印影画像を表示させ、表示させた印影画像と被照合印の印影とを目視で比較して印影を照合することがある。この場合、印影画像を端末装置に保存して金融機関の外部に持ち出すことになる。そのため、金融機関の内部で手続を行う場合と比べてセキュリティの確保により一層配慮する必要がある。
【0005】
そこで、このような状況下においてセキュリティをより一層確保すべく、印影画像を分割し、分割された各画像を所定の順序で別々に表示する印影画像処理システムが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-27264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示される印影画像処理システムでは、それぞれの分割画像は印影画像の一部しか含まない。そのため、個々の分割画像から印影画像全体を推測することは難しい。しかし、実際の印影画像の一部をそのまま現すものとなっていることから、複数の分割画像が第三者に取得された場合に印影画像が推定されることが懸念される。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、第三者による印影画像の推測をより一層困難にすることができる印影画像処理システム及び印影画像処理方法、並びにこのような印影画像処理システムに備えられるサーバ及びクライアントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る印影画像処理システムは、相互通信可能なサーバとクライアントを備えるシステムである。前記サーバは、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成部と、前記分割画像生成部により生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成部と、前記ダミー画像生成部により生成された複数の前記ダミー印影画像を前記クライアントに送信する送信部と、を備える。前記クライアントは、前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部により抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元部と、を備える。
【0010】
本発明の一実施形態に係るサーバは、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成部と、前記分割画像生成部により生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成部と、前記ダミー画像生成部により生成された複数の前記ダミー印影画像をクライアントに送信する送信部と、を備える。
【0011】
本発明の一実施形態に係るクライアントは、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成し、生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することによってダミー印影画像を生成し、生成された複数の前記ダミー印影画像をクライアントに送信するサーバと通信する通信部と、前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出部と、前記画像抽出部により抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元部と、を備える。
【0012】
本発明の一実施形態に係る印影画像処理方法は、相互通信可能なサーバとクライアントが実行する方法であり、前記サーバが、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成する分割画像生成ステップと、前記サーバが、前記分割画像生成ステップにて生成された複数の前記分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成するダミー画像生成ステップと、前記サーバが、前記ダミー画像生成ステップにて生成された複数の前記ダミー印影画像を前記クライアントに送信する送信ステップと、前記クライアントが、前記所定の規則に基づき、前記サーバより受信した前記複数のダミー印影画像のそれぞれの中から各前記分割印影画像を抽出する画像抽出ステップと、前記クライアントが、前記画像抽出ステップにて抽出された前記各分割印影画像から前記印影画像を復元する画像復元ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、第三者による印影画像の推測をより一層困難にすることができる印影画像処理システム及び印影画像処理方法、並びにこのような印影画像処理システムに備えられるサーバ及びクライアントが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る印影画像処理システムを示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るサーバのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る印影画像処理システムの機能構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態において印影画像処理システムの各部が実行する処理手順を示すシーケンス図である。
図5図4に示される処理手順の説明を補助する図である。
図6】本発明の一実施形態に係るサーバのメモリに保持された規則テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る印影画像処理システム1を示すブロック図である。図1に示されるように、印影画像処理システム1は、サーバ10、データベース20及びクライアント30を備える。
【0017】
サーバ10とデータベース20は、例えば金融機関に設置されており、金融機関のネットワークシステム内(例えばLAN:Local Area Network)で接続される。なお、本実施形態において、サーバ10とデータベース20は別々の装置として構成されるが、サーバ10とデータベース20とが単独の装置として構成されてもよい。
【0018】
また、サーバ10は、例えばVPN(Virtual Private Network)等の閉域網の通信回線(ネットワークN)を介してクライアント30と相互通信可能に接続される。
【0019】
図2は、本発明の一実施形態に係るサーバ10のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ10は、汎用のサーバであり、図2に示されるように、制御部100、通信インタフェース110、操作部120、メモリ130及びモニタ140を備える。
【0020】
なお、サーバ10は、図2に示していない他のハードウェア構成を備えていてもよい。また、サーバ10は、図2に示される全てのハードウェア構成を備えるものでなくてもよい。例えば、モニタ140を備えないサーバ10も本発明の範疇である。すなわち、サーバ10の態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0021】
制御部100は、サーバ10全体を制御するものであり、CPU(Central Processing Unit)100A、RAM(Random Access Memory)100B、ROM(Read Only Memory)100C、入出力インタフェース100D、表示制御回路100E及びこれらのポートを結ぶバスライン100F等よりなるマイクロコンピュータである。
【0022】
CPU100Aは、ROM100Cに記憶されたプログラムを読み込み、読み込まれたプログラムに従ってサーバ10を制御する。
【0023】
RAM100Bは、プログラムやデータを一時的に記憶する記憶部であり、ワークエリアを提供する。RAM100Bは、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)である。
【0024】
ROM100Cは、印影画像処理プログラムをはじめとする各種プログラムを記憶する不揮発性メモリである。ROM100Cは、例えばフラッシュメモリである。
【0025】
ROM100Cに記憶された印影画像処理プログラムは、所定の規則に従い、印影画像を複数の分割領域に分割し、各分割領域の印影画像のみを残した分割印影画像を生成し、生成された複数の分割印影画像のそれぞれをダミー画像と合成することにより、ダミー印影画像を生成し、生成された複数のダミー印影画像をクライアント30に送信するプログラムであり、詳しくは後述する。
【0026】
入出力インタフェース100Dは、通信インタフェース110及び操作部120と接続されており、通信インタフェース110及び操作部120とCPU100Aとの通信を中継する。
【0027】
通信インタフェース110は、サーバ10に接続されたデータベース20及びクライアント30と通信する。通信インタフェース110は、例えば、データベース20にアクセスして必要な情報を取得したり、クライアント30からのリクエストを受信したり、リクエストに対する応答をクライアント30に送信したりする。
【0028】
操作部120は、キーボードやマウス、タッチパネル等のユーザインタフェースであり、オペレータからの入力操作を受け付けてCPU100Aに通知する。
【0029】
メモリ130は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であり、活字辞書132、規則テーブル134を保持する。
【0030】
モニタ140は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)であり、表示制御回路100Eの制御下で駆動する。表示制御回路100Eは、例えば、GUI(Graphical User Interface)等の操作画面をモニタ140に表示させる。
【0031】
データベース20は、金融機関を利用する顧客の情報を保存する記憶装置である。データベース20には、例えば金融機関を利用する顧客の口座番号と登録印の印影画像とが関連付けて保存されている。
【0032】
クライアント30は、携帯可能なタブレット端末であり、ハードウェア構成としては図2のブロック図で示される構成を有する。そのため、クライアント30のハードウェア構成の詳細な説明については省略する。なお、サーバ10とクライアント30との通信は、通信インタフェース110と通信インタフェース310(図3参照)間で行われる。
【0033】
クライアント30は、タブレット端末に限らず、例えばノートPC(Personal Computer)やスマートフォンであってよく、また、金融機関の店舗に設置された専用端末であってもよい。すなわち、クライアント30もサーバ10と同様にその態様には自由度があり、各種の設計変更が可能である。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係る印影画像処理システム1の機能構成を示すブロック図である。図3に示されるように、サーバ10の制御部100は、印影画像取得部100a、分割画像生成部100b、ダミー画像生成部100c及び送信部100dを備える。なお、サーバ10は、図3に示していない他の機能構成を備えていてもよい。
【0035】
また、図3に示されるように、クライアント30の制御部300は、通信部300a、画像抽出部300b、画像復元部300c及び表示部300dを備える。なお、クライアント30も図3に示していない他の機能構成を備えていてもよい。
【0036】
図4は、本発明の一実施形態において印影画像処理システム1の各部が実行する処理手順を示すシーケンス図である。図5は、この処理手順の説明を補助する図である。
【0037】
例えば、クライアント30のオペレータが所定の操作画面において顧客である手続者の口座番号を入力したり口座番号一覧から手続者の口座番号を選択したりすると、図4のシーケンス図に示される処理手順が開始される。なお、入力または選択された口座番号は、クライアント30のRAMに一時的に保存される。このRAMに一時的に保存された口座番号に便宜上符号ANを付す。
【0038】
図4に示されるように、クライアント30の通信部300aは、サーバ10に対して手続者の印影画像をリクエストする(ステップS101)。このリクエストには、クライアント30のRAMに保存された手続者の口座番号ANが含まれる。
【0039】
サーバ10の印影画像取得部100aは、通信部300aより受けたリクエストに従い、データベース20にアクセスする(ステップS102)。データベース20は、リクエストに含まれる口座番号ANと関連付けられた手続者の登録印の印影画像Iを送信する(ステップS103)。これにより、印影画像取得部100aは、手続者の登録印の印影画像Iを取得する。
【0040】
サーバ10の分割画像生成部100bは、所定の規則に従い、印影画像Iを複数の分割領域D~Dに分割し(ステップS104)、各分割領域D~Dの印影画像のみを残した分割印影画像DI~DIを生成する(ステップS105)。
【0041】
ここで、図6に、規則情報保持部の一例であるメモリ130に保持された規則テーブル134の一例を示す。規則テーブル134には、所定の情報と所定の規則とが関連付けて保存されている。
【0042】
所定の情報は、印影画像Iに対応する印章を持つ手続者に関連する情報であり、例えば所定の機関(ここでは金融機関)の口座番号に含まれる少なくとも一部の数字である。本実施形態において、所定の情報は、口座番号の下一桁の数字(すなわち0~9の何れか)である。
【0043】
所定の規則は、印影画像Iを分割領域D~Dに分割する際の分割規則である。本実施形態において印影画像Iの分割数nは9である。分割規則には、分割数nが9であり且つ9つの分割領域D~Dの分割順序を定義する情報が含まれる。例えば図5に示される分割規則R0には、分割数nとして9を定義し且つこれら9つの分割領域D~Dの分割順序として、分割領域D、D、D、D、・・・、D、Dを定義する情報が含まれる。
【0044】
なお、分割領域D、D、D、D、D、D、D、D、Dは、それぞれ、印影画像I内の左上、中上(左上領域と右上領域との間)、右上、左中(左上領域と左下領域との間)、中中(中央)、右中(右上領域と右下領域との間)、左下、中下(左下領域と右下領域との間)、右下の領域として定義される。そのため、本明細書において、それぞれの領域を、左上領域D、中上領域D、右上領域D、左中領域D、中中領域D、右中領域D、左下領域D、中下領域D、右下領域Dと呼称する場合もある。
【0045】
ステップS104において、分割画像生成部100bは、規則テーブル134が保持する分割規則の中から、手続者の口座番号ANの下一桁の数字と関連付けられた分割規則を選択する。ここでは、分割規則R0が選択されるものとする。分割画像生成部100bは、選択された分割規則R0に従い、「大」の印影画像I図5のA図参照)を9つの分割領域D~D図5のB図参照)に、分割領域D、D、D、D、・・・、D、Dの順に分割する。
【0046】
ステップS105において、分割画像生成部100bは、各分割領域D~Dの印影画像のみを残した分割印影画像DI~DI図5のC図参照)を生成する。より詳細には、分割画像生成部100bは、印影画像Iを分割した分割領域D~Dのそれぞれについて、分割領域以外の領域を、例えば印影画像Iにおける背景色に基づき塗り潰し、印影画像Iと同じサイズとした画像である分割印影画像DI~DIを生成する。便宜上、背景色に基づき塗り潰された領域をブランク領域BRと記す。
【0047】
なお、分割画像生成部100bは、画像ファイルである分割印影画像DI~DIのそれぞれに対し、分割順序を示唆するファイル名を付与する。例えば、分割規則R0に従って分割領域D、D、D、D、・・・、D、Dの順に分割された場合、分割印影画像DI、DI、DI、DI、・・・、DI、DIのそれぞれに、DIV_IMG01、DIV_IMG02、DIV_IMG03、DIV_IMG04、・・・、DIV_IMG08、DIV_IMG09のファイル名が付与される。
【0048】
なお、印影画像Iの分割数nは9に限らない。分割数nが多いほど第三者が印影画像Iを推定することが難しくなる。そのため、分割数nは、10以上であってもよい。また、分割数nが少ないほど画像ファイル数が少なくなるのでデータ容量が低減する。そのため、分割数nは、2以上9未満であってもよい。
【0049】
また、所定の情報は、口座番号の下一桁の数字に限らない。分割規則が多種多様であるほど第三者が印影画像Iを推定することが難しくなる。そのため、所定の情報は、口座番号の下二桁以上(下二桁~全桁の何れか)の数字であってもよい。
【0050】
サーバ10のダミー画像生成部100cは、分割画像生成部100bにより生成された分割印影画像DI~DIのそれぞれをダミー画像と合成する。ダミー画像と合成されて画像情報が更新された画像ファイルである分割印影画像DI~DIのそれぞれを、ダミー印影画像dDI~dDIと記す。すなわち、ダミー画像生成部100cは、分割印影画像DI~DIのそれぞれをダミー画像と合成することより、ダミー印影画像dDI~dDI図5のD図参照)を生成する(ステップS106)。
【0051】
分割印影画像DI~DIに合成されるダミー画像には様々な画像が考えられる。例えば、印影画像Iとは異なる文字の画像や、印影画像Iに対して所定の加工を加えた画像がダミー画像として考えられる。
【0052】
印影画像Iとは異なる文字のダミー画像として、例えば、分割印影画像と合成した場合にも文字として成立する画像が考えられる。
【0053】
具体的には、ダミー画像生成部100cは、分割印影画像DI~DIのそれぞれに対し、活字辞書132に登録された文字画像の対応領域とのパターンマッチング(例えば分割印影画像DIの場合、分割印影画像DIと文字画像内の左上領域の画像とのパターンマッチング)を行い、活字辞書132の中から分割印影画像と同じ印影を持つ文字画像を検索する。例示として、分割領域Dにおいて分割印影画像DIと同じ印影を持つ文字「太」の画像や、分割領域Dにおいて分割印影画像DIと同じ印影を持つ文字「犬」の画像が検索される。
【0054】
なお、印影画像Iと同じ文字「大」の画像が検索されるのを避けるため、ダミー画像生成部100cは、印影画像Iに対する文字認識を行い、認識された文字「大」を対象から除外して活字辞書132に対する検索処理を行ってもよい。
【0055】
ダミー画像生成部100cは、検索された文字画像(すなわちダミー画像)をブランク領域BRに貼り付ける。これにより、ダミー印影画像が生成される。
【0056】
印影画像Iに対して所定の加工を加えた画像として、例えば、印影画像Iのサイズを変更した画像(例えば図5のD図のダミー印影画像dDI参照)や、印影画像Iに対してランダムな線を加えた画像(例えば図5のD図のダミー印影画像dDI参照)が考えられる。ダミー画像生成部100cは、このようなダミー画像をブランク領域BRに貼り付けることにより、ダミー印影画像を生成する。
【0057】
サーバ10の送信部100dは、このようにして生成された9つの画像ファイル(すなわちダミー印影画像dDI~dDI)を所定の圧縮方式(例えばMMR(Modified Modified Read)方式)で圧縮して暗号化し(ステップS107)、暗号化された9つのダミー印影画像dDI~dDIをクライアント30に送信する(ステップS108)。
【0058】
クライアント30のROMにも印影画像処理プログラムが記憶されている。クライアント30のROMに記憶された印影画像処理プログラムは、所定の規則に基づき、サーバ10より受信したダミー印影画像dDI~dDIのそれぞれの中から各分割印影画像DI~DIを抽出し、抽出された各分割印影画像DI~DIから印影画像Iを復元するプログラムである。以下に、この印影画像処理プログラムによる処理手順の詳細を説明する。
【0059】
通信部300aによりダミー印影画像dDI~dDIが受信されると、クライアント30の画像抽出部300bは、ダミー印影画像dDI~dDIを復号し、復号されたダミー印影画像dDI~dDIを解凍する(ステップS109)。
【0060】
クライアント30のメモリにも規則テーブル134と同じ内容の規則テーブル334が保持されている。クライアント30の画像抽出部300bは、規則テーブル334が保持する分割規則の中から、手続者の口座番号ANの下一桁の数字と関連付けられた分割規則(ここでは分割規則R0)を選択する。画像抽出部300bは、選択された分割規則R0に従い、解凍後のダミー印影画像dDI~dDIのそれぞれの中から各分割印影画像DI~DIを抽出する(ステップS110)。
【0061】
具体的には、画像抽出部300bは、分割規則R0に従い、例えば、ファイル名DIV_IMG01のダミー印影画像が左上領域Dに対応する画像ファイルであることを特定し、また、ファイル名DIV_IMG02のダミー印影画像が右上領域Dに対応する画像ファイルであることを特定する。画像抽出部300bは、このような特定処理を全ての画像ファイルに対して行う。この特定処理により、ファイル名DIV_IMG01、DIV_IMG02、DIV_IMG03、DIV_IMG04、・・・、DIV_IMG08、DIV_IMG09のダミー印影画像が、それぞれ、左上領域D、右上領域D、左中領域D、右中領域D、・・・、中中領域D、中上領域Dに対応する画像ファイルであることが特定される。
【0062】
画像抽出部300bは、特定処理の結果に従い、ダミー印影画像dDI~dDIのそれぞれの中から各分割印影画像DI~DIを抽出する。例えば、ダミー印影画像dDIが左上領域Dに対応することから、ダミー印影画像dDI内の左上領域Dの画像が分割印影画像DIとして抽出される(例えば図5のE図の分割印影画像DI参照)。
【0063】
クライアント30の画像復元部300cは、画像抽出部300bにより抽出された分割印影画像DI~DIを、ブランク領域BRを透明にした状態で重ね合わせる(図5のF図参照)。これにより、図5のG図に示されるように、印影画像Iが復元される。このように、ステップS111において、画像復元部300cは、各分割印影画像DI~DIから印影画像Iを復元する。
【0064】
クライアント30の表示部300dは、復元された印影画像Iをクライアント30のモニタに表示させる(ステップS112)。クライアント30のオペレータは、モニタに表示された印影画像Iと書類に捺印された被照合印の印影とを目視の比較で照合することにより、本人確認を行うことができる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、実際の印影画像Iそのものでなくダミー画像のファイル(すなわちダミー印影画像dDI~dDI)がサーバ10からクライアント30へ送信される。仮に、ネットワーク通信を盗聴した第三者が暗号化技術を解読して画像ファイルを取得した場合にも、これら画像ファイルの全てが全体としてダミー画像の情報を持つファイルとなっていることから、第三者による印影画像Iの推測は難しい。そのため、金融機関の担当者が顧客先へ出向いて手続きを行うなど、印影画像Iを金融機関の外部で取り扱う場面においても、高いセキュリティが確保される。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でのその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 :印影画像処理システム
10 :サーバ
20 :データベース
30 :クライアント
100 :制御部
100A :CPU
100B :RAM
100C :ROM
100D :入出力インタフェース
100E :表示制御回路
100F :バスライン
100a :印影画像取得部
100b :分割画像生成部
100c :ダミー画像生成部
100d :送信部
110 :通信インタフェース
120 :操作部
130 :メモリ
132 :活字辞書
134 :規則テーブル
140 :モニタ
300 :制御部
300a :通信部
300b :画像抽出部
300c :画像復元部
300d :表示部
310 :通信インタフェース
334 :規則テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6