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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126911
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】屋根構造及び屋根材
(51)【国際特許分類】
   E04D 3/365 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
E04D3/365 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024752
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】特許業務法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】分部 孝彦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS02
2E108AZ01
2E108BB04
2E108BN05
2E108BN06
2E108CC02
2E108CC03
2E108DD05
2E108DF20
2E108EE01
2E108FF01
2E108GG09
(57)【要約】
【課題】優れた防水性を有する屋根構造及び屋根材を提供する。
【解決手段】屋根構造1は、水下側屋根材2Aと、水下側屋根材2Aの水上側に配置された水上側屋根材2Bとを備える。水下側屋根材2Aは、水下側屋根材本体20と、水下側屋根材本体20の水上側端から表面側に向かって延出した立上部24とを有する。水上側屋根材2Bは、水上側屋根材本体20と、水上側屋根材本体20の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部22とを有する。立下部22は、立上部24の水下側に位置する。立上部24は、立上部24における他の部分244よりも水下側に向かって突出した突出部240を有する。他の部分244と立下部22との間に隙間14が形成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水下側屋根材と、
前記水下側屋根材の水上側に配置された水上側屋根材とを備え、
前記水下側屋根材は、
水下側屋根材本体と、
前記水下側屋根材本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部とを有し、
前記水上側屋根材は、
水上側屋根材本体と、
前記水上側屋根材本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部とを有し、
前記立下部は、前記立上部の水下側に位置し、
前記立上部は、
前記立上部における他の部分よりも水下側に向かって突出し、前記立下部までの距離が前記他の部分と比べて短い突出部を有し、
前記他の部分と前記立下部との間に隙間が形成された、
屋根構造。
【請求項2】
前記水下側屋根材本体は、
前記水下側屋根材本体の両側端部にそれぞれ形成され、表面側に向かって突出した一対の水下側屋根材本体嵌合部を有し、
前記水上側屋根材は、
前記立下部の下端から水下側に向かって延出した段下部を有し、
前記段下部が、前記水下側屋根材本体の上に重なり、
前記段下部は、
前記段下部の両側端部にそれぞれ形成された一対の水下側嵌合部を有し、
前記一対の水下側嵌合部が、前記一対の水下側屋根材本体嵌合部にそれぞれ嵌合した、
請求項1に記載の屋根構造。
【請求項3】
前記水下側屋根材は、
前記立上部の上端から水上側に向かって延出した段上部を有し、
前記水上側屋根材本体が、前記段上部の上に重なり、
前記段上部は、
前記段上部の両側端部にそれぞれ形成された一対の水上側嵌合部を有し、
前記水上側屋根材本体は、
前記水上側屋根材本体の両側端部にそれぞれ形成された一対の水上側屋根材本体嵌合部を有し、
前記一対の水上側屋根材本体嵌合部が、前記一対の水上側嵌合部にそれぞれ嵌合した、
請求項1又は請求項2に記載の屋根構造。
【請求項4】
前記水下側屋根材は、
前記段上部の後端から表面側に向かって延出した第2の立上部を更に有した、
請求項3に記載の屋根構造。
【請求項5】
本体と、
前記本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部と、
前記本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部とを備え、
前記立上部は、
前記立上部における他の部分よりも水下側に向かって突出し、水上側の他の屋根材が備える、前記立下部と同一形状の立下部が前記立上部の水下側に位置した状態において、前記他の屋根材が備える前記立下部までの距離が前記他の部分と比べて短くなる突出部を有した、
屋根材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屋根構造及び屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、山部と谷部が幅方向に交互に配列された波形形状の屋根板材が開示されている。この屋根板材は、水下側の端部を既に配設された他の屋根板材の水上側の端部に重ね合わせることで、他の屋根板材につなぎ合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-39248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した屋根板材にあっては、流れ方向において隣接する二つの屋根板材の間を雨水が通過する可能性があり、防水性が高くない。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされており、優れた防水性を有する屋根構造及び屋根材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る屋根構造は、水下側屋根材と、前記水下側屋根材の水上側に配置された水上側屋根材とを備える。前記水下側屋根材は、水下側屋根材本体と、前記水下側屋根材本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部とを有する。前記水上側屋根材は、水上側屋根材本体と、前記水上側屋根材本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部とを有する。前記立下部は、前記立上部の水下側に位置する。前記立上部は、前記立上部における他の部分よりも水下側に向かって突出し、前記立下部までの距離が前記他の部分と比べて短い突出部を有する。前記他の部分と前記立下部との間に隙間が形成される。
【0007】
本開示の一態様に係る屋根材は、本体と、前記本体の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部と、前記本体の水上側端から表面側に向かって延出した立上部とを備える。前記立上部は、前記立上部における他の部分よりも水下側に向かって突出し、水上側の他の屋根材が備える、前記立下部と同一形状の立下部が前記立上部の水下側に位置した状態において、前記他の屋根材が備える前記立下部までの距離が前記他の部分と比べて短くなる突出部を有する。
【発明の効果】
【0008】
前記一態様の屋根構造及び屋根材は、建築物の防水性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、一実施形態の屋根構造を示す斜視図である。
図2図2は、同上の屋根構造において流れ方向に並ぶ二つの屋根材を示した斜視図である。
図3図3は、図2のX3-X3矢視断面図である。
図4図4は、図1のX4-X4矢視断面図である。
図5図5は、同上の屋根構造が備える、第1番水下側屋根材、第1番水上側屋根材及び第2番水下側屋根材を示した斜視図である。
図6図6は、他例の屋根構造における図4に対応する断面図である。
図7図7は、更に他例の屋根構造における図4に対応する断面図である。
図8図8は、更に他例の屋根構造における図4に対応する断面図である。
図9図9は、更に他例の屋根材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)実施形態
本開示は、屋根構造及び屋根材に関し、詳しくは、流れ方向において隣接する屋根材を備えた屋根構造及びこの屋根構造に用いられる屋根材に関する。
【0011】
図1に本実施形態の屋根構造1を示す。なお、本実施形態の屋根構造1が適用される建築物は、住宅建築物、非住宅建築物又は複合建築物のいずれであってもよい。住宅建築物は、例えば、戸建住宅又は共同住宅等である。非住宅建築物は、例えば、店舗、倉庫、工場又は集会場等である。複合建築物は、住宅の用途に用いられる部分と、非住宅の用途に用いられる部分とを有した建築物である。
【0012】
屋根構造1は、屋根下地10と、複数の屋根材2とを備えている。屋根下地10は、複数の屋根材2の下地である。屋根下地10は、例えば、野地板11と、野地板11の上面に敷かれた下葺き材12とを有する。この場合、下葺き材12の上面は、屋根下地10の上面である。なお、屋根下地10は下葺き材12を有さなくてもよい。また、屋根下地10は野地板11を有するものに限定されず、例えば、複数の横架材等で構成されてもよい。また、屋根材2をリフォームに用いる場合、屋根下地10は、既設の屋根材で構成されてもよい。
【0013】
屋根下地10の上には、複数の屋根材2が、流れ方向及び横方向において並んだ状態で葺かれている。なお、本開示において「流れ方向」とは、屋根構造1が形成する屋根面において雨水が流れる方向であって、屋根面の勾配方向と平行でかつ水下側に向かう方向である。ここで、「屋根面」とは、屋根構造1によって形成される屋根の上面のうちの一面であって、一定の勾配を有する。例えば、屋根構造1が片流れ屋根を形成する場合、屋根構造1は、屋根面を一つだけ有する。例えば、屋根構造1が切妻屋根を形成する場合、屋根構造1は、二つの屋根面を有する。なお、屋根構造1は、三つ以上の屋根面を有してもよい。また、本開示において「横方向」とは、流れ方向と直交する水平方向を意味する。
【0014】
各屋根材2は、一枚の金属板を曲げ加工することで形成されており、例えば、プレス加工によって成型される。各屋根材2を構成する金属板は、例えば、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等である。
【0015】
各屋根材2は、形状及び大きさが略同じである。各屋根材2は、流れ方向の寸法が横方向の寸法よりも長尺に成型された部材であり、長手方向を有している。以下、屋根材2の流れ方向に沿った方向を「長手方向」という。
【0016】
各屋根材2は、例えば、長手方向の寸法が2m以上4m以下であり、一つの屋根面において、長手方向に複数並んだ状態で施工される。なお、各屋根材2の長手方向の寸法は、限定されない。
【0017】
流れ方向において隣接する二つの屋根材2にあっては、水上側に位置する屋根材2の水下側の端部が、水下側に位置する屋根材2の水上側の端部の上に重なっている。横方向に隣接する二つの屋根材2にあっては、一方の屋根材2における他方の屋根材2側の端部が、他方の屋根材2における一方の屋根材2側の端部の上に重なっている。
【0018】
図2に示すように、各屋根材2は、水下側の端部に形成された水下側段部26と、水上側の端部に形成された水上側段部27とを有している。屋根材2は、本体20、立下部22、段下部23、立上部24及び段上部25を有している。本体20、立下部22、段下部23、立上部24及び段上部25は、一体に形成されている。
【0019】
本体20は、屋根材2における水下側の端部と水上側の端部との間の部分を構成している。本体20の横方向の両端は、屋根材2の横方向の両端である。立下部22は、本体20の水下側端から裏面側に向かって延出している。なお、本開示における「裏面側」は、屋根下地10側を意味し、裏面と直交する方向だけでなく、裏面とは直交しない方向も含まれる。
【0020】
立下部22は、本体20の水下側端の全長にわたって形成されている。段下部23は、立下部22の下端から水下側に向かって延出している。段下部23は、立下部22の下端の全長にわたって形成されている。段下部23は、屋根材2の水下側の端部を構成している。
【0021】
立上部24は、本体20の水上側端から表面側に向かって延出している。なお、本開示における「表面側」は、屋根下地10とは反対側を意味し、表面と直交する方向だけでなく、表面とは直交しない方向も含まれる。
【0022】
立上部24は、本体20の水上側端の全長にわたって形成されている。段上部25は、立上部24の上端から水上側に向かって延出している。段上部25は、立上部24の上端の全長にわたって形成されている。段上部25は、屋根材2の水上側の端部を構成している。
【0023】
水下側段部26は、本体20の水下側の端部、立下部22及び段下部23で構成されている。水上側段部27は、本体20の水上側の端部、立上部24及び段上部25で構成されている。段下部23の水下側端は、屋根材2の水下側端である。段上部25の水上側端は、屋根材2の水上側端である。
【0024】
本体20、段下部23及び段上部25の各々は、長手方向と直交する断面形状が、長手方向の全長にわたって略同じである。ただし、本体20の長手方向において後述する切欠部30,40が形成された部分は、他の部分と断面形状が異なっている。
【0025】
各屋根材2は、例えば、立下部22と段下部23とでなす水下側の角部と、立上部24と段上部25とでなす水上側の角部とが、それぞれ水下側の屋根材2及び屋根下地10の上に接した状態で、又は屋根下地10の上に接した状態で、屋根下地10上に載置される。
【0026】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、段下部23及び本体20の水下側の端部は、それぞれ、他の屋根材2の本体20及び段上部25の上に重なる。また、立下部22は、他の屋根材2の立上部24の水下側に位置し、他の屋根材2の立上部24に対向する。
【0027】
立上部24は、水上側に隣接する他の屋根材2の立下部22が水上側に移動することを規制する。屋根材2を施工する作業者は、立下部22を、水下側に施工された屋根材2の立上部24の水下側に配置することで、屋根材2の位置合わせを行うことができる。また、立上部24は、本体20の表面に沿って水上側に逆流した雨水を堰き止める。このため、建築物の防水性が高まる。
【0028】
各屋根材2は、横方向の中間部分を構成する中間部28を備えている。中間部28は、本体20の横方向の中間部分を構成する本体中間部200と、段下部23の横方向の中間部分を構成する段下部中間部230と、段上部25の横方向の中間部分を構成する段上部中間部250とを有している。
【0029】
本体中間部200、段下部中間部230及び段上部中間部250の各々は、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが互いに同じである。このため、以下では、本体中間部200について詳述し、段下部中間部230及び段上部中間部250については、本体中間部200と共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
本体中間部200は、横方向に離間した一対の平板部分201,202と、一対の平板部分201,202の間に位置する突条部分203とを有している。一対の平板部分201,202の各々は、屋根下地10の上面に沿った平板状に形成されている。
【0031】
本体中間部200の突条部分203は、長手方向において本体中間部200の全長にわたって形成されている。突条部分203は、本体中間部200の他部(一対の平板部分201,202)よりも表面側に突出している。突条部分203の長手方向と直交する断面形状は、表面側に突出するように曲がった山形である。本体中間部200の一対の平板部分201,202は、突条部分203の下端部から横方向の外側に向かって延出している。
【0032】
段下部23及び段上部25の各々の突条部分203は、横方向において本体中間部200の突条部分203と同位置に形成されている。段下部23の突条部分203は、本体中間部200の突条部分203の水下側に位置し、段上部25の突条部分203は、本体中間部200の突条部分203の水上側に位置している。
【0033】
屋根材2の中間部28は、本体中間部200の突条部分203、段下部23の突条部分203及び段上部25の突条部分203により構成された中間嵌合部280を有している。中間嵌合部280は、屋根材2の長手方向の全長にわたっている。
【0034】
図2に示すように、各屋根材2は、横方向の両側の端部にそれぞれ形成された一対の嵌合部3,4を備えている。以下、一対の嵌合部3,4のうち、屋根材2の横方向の一端部に形成された嵌合部3を一方嵌合部3といい、屋根材2の横方向の他端部(一方嵌合部3とは反対側の端部)に形成された嵌合部4を他方嵌合部4という。また、本開示では、図1及び図2に示すように、横方向と平行で、かつ、他方嵌合部4から一方嵌合部3に向かう方向を一方といい、横方向と平行で、かつ、一方嵌合部3から他方嵌合部4に向かう方向を他方という。
【0035】
一対の嵌合部3,4(一方嵌合部3及び他方嵌合部4)は、一対の本体嵌合部204、一対の水下側嵌合部231及び一対の水上側嵌合部251を有している。一対の本体嵌合部204は、それぞれ、本体20の横方向の両側の端部にそれぞれ形成されており、表面側に向かって突出している。一対の本体嵌合部204の各々は、長手方向において本体20の全長にわたって形成されている。
【0036】
一対の水下側嵌合部231は、段下部23の横方向の両側の端部にそれぞれ形成されており、表面側に向かって突出している。一対の水下側嵌合部231の各々は、長手方向において段下部23の全長にわたって形成されている。
【0037】
一対の水上側嵌合部251は、段上部25の横方向の両側の端部にそれぞれ形成されており、表面側に向かって突出している。一対の水上側嵌合部251の各々は、長手方向において段上部25の全長にわたって形成されている。
【0038】
以下、本体20の一方の端部に形成された本体嵌合部204を一方本体嵌合部205といい、本体20の他方に端部に形成された本体嵌合部204を他方本体嵌合部206という。また、段下部23の一方の端部に形成された水下側嵌合部231を一方水下側嵌合部231Aといい、段下部23の他方の端部に形成された水下側嵌合部231を他方水下側嵌合部231Bという。また、段上部25の一方の端部に形成された水上側嵌合部251を一方水上側嵌合部251Aといい、段上部25の他方の端部に形成された水上側嵌合部251を他方水上側嵌合部251Bという。
【0039】
一方水下側嵌合部231Aは一方本体嵌合部205の水下側に位置し、一方水上側嵌合部251Aは一方本体嵌合部205の水上側に位置している。一方嵌合部3を構成する、一方本体嵌合部205、一方水下側嵌合部231A及び一方水上側嵌合部251Aは、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが互いに同じである。このため、以下では、一方本体嵌合部205について詳述し、一方水下側嵌合部231A及び一方水上側嵌合部251Aについては、一方本体嵌合部205と共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0040】
一方本体嵌合部205の長手方向と直交する断面形状は、表面側に突出するように曲がった山形である。図3に示すように、一方本体嵌合部205は、天井部207及び一対の側壁部208,209を有している。天井部207は、本体20の平板部分201,202と略平行な平板状に形成されている。天井部207の上面は、一方本体嵌合部205の上面である。
【0041】
一対の側壁部208,209は、天井部207における横方向の両端部からそれぞれ裏面側に向かって延出している。一対の側壁部208,209の各々は、下端に近い部分ほど一方本体嵌合部205の横方向における外側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜している。以下、一対の側壁部208,209のうち、一方に位置する側壁部208を一方側壁部208といい、他方に位置する側壁部209を他方側壁部209という。
【0042】
一方側壁部208の下縁部213は、横方向の外側に向かって延びており、本体20の平板部分201と略平行である。下縁部213の外側端は、自由端である。他方側壁部209の下端部は、本体20の平板部分201につながっている。他方側壁部209は、平板部分201に対する傾斜角度が、一方側壁部208よりも大きい。
【0043】
図2に示すように、他方水下側嵌合部231Bは他方本体嵌合部206の水下側に位置し、他方水上側嵌合部251Bは他方本体嵌合部206の水上側に位置している。他方本体嵌合部206、他方水下側嵌合部231B及び他方水上側嵌合部251Bは、長手方向と直交する断面の形状及び大きさが互いに同じである。このため、以下では、他方本体嵌合部206について詳述し、他方水下側嵌合部231B及び他方水上側嵌合部251Bについては、他方本体嵌合部206と共通する要素に同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0044】
図3に示すように、他方本体嵌合部206の長手方向と直交する断面形状は、表面側に突出するように曲がった山形である。他方本体嵌合部206は、天井部分210及び一対の側壁部分211,212を有している。天井部分210は、本体20の平板部分201,202と略平行な平板状に形成されている。天井部分210の上面は、他方本体嵌合部206の上面である。
【0045】
一対の側壁部分211,212は、天井部分210における横方向の両端部からそれぞれ裏面側に向かって延出している。一対の側壁部分211,212の各々は、下端に近い部分ほど他方本体嵌合部206の横方向における外側に位置するように、鉛直方向に対して傾斜している。以下、一対の側壁部分211,212のうち、一方に位置する側壁部分211を一方側壁部分211といい、他方に位置する側壁部分212を他方側壁部分212という。
【0046】
一方側壁部分211の下端部は、本体20の平板部分202につながっている。他方側壁部212の平板部分202に対する傾斜角度は、一方本体嵌合部205の平板部分201に対する傾斜角度よりも小さい。他方側壁部分212の下端は、自由端である。ただし、他方側壁部分212の下端部は、横方向の外側に向かって延びた後、裏面側において横方向の内側に折り返されている。
【0047】
屋根材2の水下側に他の屋根材2が施工されている場合、図2に示す段下部23の突条部分203及び本体中間部200の突条部分203の水下側の端部は、それぞれ、他の屋根材2の本体中間部200の突条部分203の水上側の端部及び段上部25の突条部分203に被さった状態で嵌合する。また、一方水下側嵌合部231A及び一方本体嵌合部205の水下側の端部は、それぞれ、他の屋根材2の一方本体嵌合部205の水上側の端部及び一方水上側嵌合部251Aに被さった状態で嵌合する。これにより、屋根材2は、他の屋根材2に対する横方向の移動が規制される。
【0048】
屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、図4に示すように、他方嵌合部4は、他の屋根材2の一方嵌合部3に被さった状態で嵌合し、他の屋根材2の一方嵌合部3の表面を覆い隠す。この場合、他方嵌合部4は、他方本体嵌合部206、他方水下側嵌合部231B及び他方水上側嵌合部251B(図2参照)が、それぞれ、他の屋根材2の一方本体嵌合部205、一方水下側嵌合部231A及び一方水上側嵌合部251Aに被さった状態で嵌合する。
【0049】
一方嵌合部3及び他方嵌合部4は、屋根下地10に固定される固定部分である。図4に示すように、横方向に隣接する屋根材2は、他方の屋根材2の一方嵌合部3と、この一方嵌合部3に嵌合する一方の屋根材2の他方嵌合部4とが、これら一方嵌合部3及び他方嵌合部4を上下方向に貫通した固定具13によって屋根下地10に固定されている。固定具13は、例えば、釘又はねじ等である。
【0050】
なお、一方嵌合部3及び他方嵌合部4において固定具13が貫通する部分は、雨水が浸入しないようにシールされることが好ましい。また、一方嵌合部3及び他方嵌合部4は、本体20、段下部23及び段上部25に対応する部分の全てが、一又は複数個所を固定具13によって屋根下地10に固定されてもよい。また、一方嵌合部3及び他方嵌合部4は、本体20、段下部23及び段上部25の中から選択された一つ又は二つに対応する部分だけが、一又は複数個所を固定具13によって屋根下地10に固定されてもよい。また、固定具13が通される前の一方嵌合部3及び他方嵌合部4には、固定具13を通すための固定具用孔が予め形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0051】
屋根材2の他方に他の屋根材2が施工されている場合、他方嵌合部4の他方側壁部分212と他の屋根材2の他方側壁部209との間には、他方嵌合部4の一方側壁部分211と他の屋根材2の一方側壁部208との間に形成される隙間よりも大きな隙間15が形成される。この隙間15は、他方側壁部分212と他の屋根材2の他方側壁部209との間に至った雨水が、毛細管現象によって上昇することを抑制する。このため、他方側壁部分212と他の屋根材2の他方側壁部209との間に至った雨水が、固定具13が貫通した他の屋根材2の一方嵌合部3の天井部207上に至ったり、他の屋根材2の一方嵌合部3を乗り越えたりすることが抑制され、建築物の防水性が高まる。また、他方嵌合部4の他方側壁部分212の下端部において折り返された部分は、他の屋根材2の平板部分201、段下部中間部230及び段上部中間部250(図2参照)の上面に接し、この上面に沿って雨水が他の屋根材2の一方嵌合部3側に流れることを抑制する。
【0052】
図2に示すように、各屋根材2の立上部24は、複数の突出部240を有している。立上部24は、複数の突出部240として、横方向において離間した一対の突出部240を有している。一対の突出部240は、立上部24において一方嵌合部3と中間嵌合部280との間に位置する部分と、立上部24において他方嵌合部4と中間嵌合部280との間に位置する部分との各々に形成されている。各突出部240は、立上部24の上下方向の全長にわたって形成されている。各突出部240の下端は、本体20の対応する平板部分201,202につながっている。
【0053】
各突出部240は、水下側に向かって突出するように曲がっており、例えば、立上部24を構成する金属板の一部を曲げることで形成される。各突出部240は、先端壁部241及び一対の側壁部242,243を有している。先端壁部241は、突出部240の先端部(水下側の端部)を構成している。先端壁部241は、長手方向と略直交し、かつ、立上部24における一対の突出部240以外の部分と平行な平板状に形成されている。先端壁部241は、本体20の対応する平板部分201,202から表面側に向かって延出している。
【0054】
一対の側壁部242,243は、先端壁部241における横方向の両側端部から水上側に向かって延出している。各側壁部242,243は、水上側に近い部分ほど突出部240の横方向における外側に位置するように長手方向に対して傾斜した平板状に形成されている。各側壁部242,243の水上側の端部は、立上部24における一対の突出部240以外の部分につながっている。
【0055】
屋根材2の水上側に他の屋根材2が施工されている場合、各突出部240の先端壁部241は、他の屋根材2の立下部22の水上側の面に接する、又はこの面の近傍に配置される。この場合、各突出部240の先端壁部241から他の屋根材2の立下部22までの距離は、立上部24において一対の突出部240以外の部分である他の部分244から他の屋根材2の立下部22までの距離よりも短くなる。このため、他の部分244と、水上側に隣接する他の屋根材2の立下部22との間には、隙間14(図1参照)が形成される。すなわち、流れ方向に隣り合う二つの屋根材2のうち、水下側に位置する屋根材2を水下側屋根材2Aとし、水上側に位置する屋根材2を水上側屋根材2Bとしたとき、水下側屋根材2Aの立上部24の他の部分244と、水上側屋根材2Bの立下部22との間には、隙間14が形成される。本実施形態では、各突出部240の横方向における両側に隙間14が形成される。これら隙間14は、立上部24と、水上側に隣接する他の屋根材2の立下部22との間に至った雨水が、毛細管現象によって上昇することを抑制する。このため、立上部24の水下側の雨水が段上部25上に上がることが抑制され、建築物の防水性が高まる。
【0056】
なお、各突出部240の形状は、限定されない。例えば、突出部240の各側壁部242,243は、長手方向と平行な平板状に形成されてもよい。また、突出部240は、例えば、水下側に突出するように湾曲した弧状に形成されてもよい。また、各突出部240は、立上部24の上下方向の一部にのみ形成されてもよい。例えば、突出部240は、立上部24の下端部にのみ、上端部にのみ、あるいは上下方向の中間部にのみ形成されてもよい。
【0057】
また、立上部24が有する突出部240の数は限定されず、立上部24は突出部240を一つだけ有してもよいし、三つ以上有してもよい。
【0058】
本実施形態の屋根構造1は、屋根材2として、第1屋根材2aと、第2屋根材2bとの2種類の屋根材2を備えている。図2において水下側に位置する屋根材2が第1屋根材2aであり、図2において水上側に位置する屋根材2が第2屋根材2bである。
【0059】
第1屋根材2aは、複数の屋根材2のうち、最も水下側に位置する屋根材2であり、屋根面の軒側の端部を構成する。第2屋根材2bは、水下側に他の屋根材2が施工される屋根材2であり、屋根面における軒側の端部以外の部分を構成する。すなわち、第2屋根材2bは、第1屋根材2aの水上側又は他の第2屋根材2bの水上側に施工される。
【0060】
第1屋根材2aの他方嵌合部4の水上側の端部における他方の半部には、切欠部40が形成されている。第1屋根材2aの他方嵌合部4の水上側の端部は、横方向において切欠部40と隣接する一方の半部だけで構成されている。切欠部40は、他方本体嵌合部206の水上側の端部から他方水上側嵌合部251Bの水上側端まで連続している。以下、切欠部40を水上側切欠部40という。
【0061】
第2屋根材2bは、一方嵌合部3の水下側の端部に切欠部30が形成されていることだけが第1屋根材2aと異なる。第2屋根材2bの一方嵌合部3の水下側の端部における一方の半部には、切欠部30が形成されている。すなわち、第2屋根材2bの一方嵌合部3の水下側の端部は、横方向において切欠部30と隣接する他方の半部だけで構成されている。切欠部30は、一方本体嵌合部205の水下側の端部から一方水下側嵌合部231Aの水下側端まで連続している。以下、切欠部30を水下側切欠部30という。
【0062】
本実施形態の第2屋根材2bには、第1屋根材2aと同様に水上側切欠部40が形成されているが、例えば、第2屋根材2bが屋根面において最も水上側に位置する屋根材2である場合等には、第2屋根材2bには水上側切欠部40は形成されなくてもよい。
【0063】
流れ方向に並ぶ複数の屋根材2は、水下側に位置する屋根材2から順に施工される。すなわち、流れ方向に隣接する屋根材2は、水下側の屋根材2が施工された後、水上側の屋根材2が施工される。横方向に並ぶ複数の屋根材2は、他方(一方嵌合部3とは反対側)に位置する屋根材2から順に施工される。すなわち、横方向に隣接する屋根材2は、他方の屋根材2が施工された後、一方の屋根材2が施工される。
【0064】
次に複数の屋根材2の施工方法の一例について説明する。なお、以下では、図1に示すように、第1屋根材2aの水上側に第2屋根材2bが一枚だけ施工される場合について説明するが、第1屋根材2aの水上側には、流れ方向に並ぶ第2屋根材2bが2枚以上施工されてもよい。また、以下の説明では、図1に示すように、横方向に並んだ状態で施工された複数の第1屋根材2aを、最も他方に位置する第1屋根材2aから順に数えて、第1番水下側屋根材2a1、第2番水下側屋根材2a2、第3番水下側屋根材・・・という。また、屋根面において横方向に並んだ状態で施工された複数の第2屋根材2bを、最も他方に位置する第2屋根材2bから順に数えて、第1番水上側屋根材2b1、第2番水上側屋根材2b2、第3番水上側屋根材・・・という。
【0065】
まず作業者は、第1番水下側屋根材2a1を、屋根下地10上に載置する。次に作業者は、図2に示すように、第1番水上側屋根材2b1の水下側の端部が第1番水下側屋根材2a1の水上側の端部に重なるように、第1番水上側屋根材2b1を屋根下地10上に載置する。このとき、作業者は、第1番水上側屋根材2b1の段下部23の突条部分203及び本体中間部200の突条部分203の水下側の端部を、それぞれ、第1番水下側屋根材2a1の本体中間部200の突条部分203の水上側の端部及び段上部25の突条部分203に被せて嵌合する。また、第1番水上側屋根材2b1の一方水下側嵌合部231A及び一方本体嵌合部205の水下側の端部を、それぞれ、第1番水下側屋根材2a1の一方本体嵌合部205の水上側の端部及び一方水上側嵌合部251Aに被せて嵌合する。この場合、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3における水上側の端部の上には、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3において水下側切欠部30が形成された水下側の端部が重なるため、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3における水上側の端部は、他方の半部だけが第1番水上側屋根材2b1によって覆われ、一方の半部は露出する。
【0066】
次に作業者は、図5に示すように、第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部4を第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3に被せた状態で嵌合し、第2番水下側屋根材2a2を屋根下地10上に載置する。このとき第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部4における水上側の端部は、第1番水上側屋根材2b1の水下側切欠部30を通して、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3の水上側の端部における一方の半部の上に重なる。この後、作業者は、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3と、この一方嵌合部3に嵌合した第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部3とを、固定具13で屋根下地10に固定する。
【0067】
次に作業者は、図1に示す第2番水上側屋根材2b2を、その水下側の端部が第2番水下側屋根材2a2の水上側の端部に重なるように屋根下地10上に載置する。このとき、作業者は、第2番水上側屋根材2b2の段下部23の突条部分203及び本体中間部200の突条部分203の水下側の端部を、それぞれ、第2番水下側屋根材2a2の本体中間部200の突条部分203の水上側の端部及び段上部25の突条部分203に被せて嵌合する。また、第2番水上側屋根材2b2の一方水下側嵌合部231A及び一方本体嵌合部205(図2参照)の水下側の端部を、それぞれ、第2番水下側屋根材2a2の一方本体嵌合部205の水上側の端部及び一方水上側嵌合部251A(図2参照)に被せて嵌合する。また、第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部4(図2参照)を、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3(図2参照)に被せた状態で嵌合する。
【0068】
このとき、第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部4における水下側の端部は、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3(図5参照)における水下側の端部及びこれに隣接する、第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部4(図5)における水上側の端部の上に重なる。すなわち、第1番水下側屋根材2a1、第1番水上側屋根材2b1、第2番水下側屋根材2a1及び第2番水上側屋根材2b2において、第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部4の水下側の端部に対応する部分にあっては、以下に示す第1層、第2層及び第3層を有する3層構造となる。第1層は、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3における水上側の端部で構成される。第2層は、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3における水下側の端部及びこれに隣接する第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部4における水上側の端部で構成され、第1層の上に重なる。第3層は、第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部4における水下側の端部で構成され、第2層の上に重なる。
【0069】
この後、作業者は、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3と、この一方嵌合部3に嵌合した第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部3とを、固定具13で屋根下地10に固定する。この場合、第1番水上側屋根材2b1の一方嵌合部3及び第2番水上側屋根材2b2の他方嵌合部3は、流れ方向の複数箇所が固定具13によって屋根下地10に固定される。なお、この作業は、第1番水下側屋根材2a1の一方嵌合部3と、この一方嵌合部3に嵌合した第2番水下側屋根材2a2の他方嵌合部3とを、固定具13で屋根下地10に固定する前に行われてもよい。
【0070】
以後作業者は、第2番水下側屋根材2a2及び第2番水上側屋根材2b2と同様に、第3番水下側屋根材、第3番水上側屋根材、第4番水下側屋根材、第4番水上側屋根材・・・を順に施工し、これにより複数の屋根材2の施工を完了する。
【0071】
なお、本実施形態の屋根材2が施工される順序は、限定されない。すなわち、上述した屋根材2の施工では、屋根材2が、第1番水下側屋根材2a1、第1番水上側屋根材2b1、第2番水下側屋根材2a2、第2番水上側屋根材2b2、第3番水下側屋根材、第3番水上側屋根材・・・の順に施工されたが、例えば、第1番水下側屋根材2a1、第2番水下側屋根材2a2、第3番水下側屋根材、第1番水上側屋根材2b1、第2番水上側屋根材2b2、第3番水上側屋根材の順に施工されてもよい。
【0072】
また、本実施形態の屋根構造1は、第1屋根材2aと、第2屋根材2bとの2種類の屋根材2を備えているが、屋根材2として、一種類の屋根材2のみを備えてもよいし、3種類以上の屋根材2を備えてもよい。前者の場合、屋根構造1は、例えば、第1屋根材2aの一種類のみ、又は第2屋根材2bの1種類のみを有してもよい。すなわち、各屋根材2には、第2屋根材2bが有する水下側切欠部30が形成されてもよいし、形成されなくてもよい。
【0073】
また、屋根材2の一方嵌合部3及び他方嵌合部4の形状は、変更可能である。図6に示す変形例の屋根材2における一方嵌合部3の他方側壁部209には、一方嵌合部3の長手方向の全長にわたって上部が下部よりも一方に位置するように段差がある。この他方側壁部209と、他の屋根材2の他方側壁部212との間にも、雨水の毛細管現象による上昇を抑制するための隙間15が形成されている。
【0074】
また、図7及び図8に示すように、屋根材2の一方嵌合部3が有する一方側壁部208の下縁部213は、ねじ又は釘等の固定具16によって屋根下地10に固定されてもよい。このように一方嵌合部3の下縁部213が屋根下地10に固定されると、一方嵌合部3の変形が抑制される。
【0075】
図8に示す変形例の屋根材2では、下縁部213に表面側に向かって突出した突条214が形成されており、下縁部213は突条214よりも横方向の外側部分が固定具16によって屋根下地10に固定されている。このため、平板部分201上の雨水が一方嵌合部3を乗り越えて下縁部213に至ったとしても、この雨水は突条214に沿って水下側に排出される。このため、下縁部213において固定具16が貫通した部分に雨水が至ることが抑制される。
【0076】
また、上記実施形態の各屋根材2は、図9に示すように、段上部25の各平板部分201,202の水上側端から表面側に向かって延出した第2の立上部252を更に備えてもよい。図9に示す例では、段上部25の各平板部分201,202が、表裏方向において水上側端に近い部分ほど本体20の平板部分201,202に近づくように傾斜している。各第2の立上部252は、対応する平板部分201,202の水上側端の全長にわたって形成されている。この場合、段上部25の各平板部分201,202の上面に沿って水上側に流れる雨水が、第2の立上部252によって堰き止められ、建築物の防水性が高まる。
【0077】
また、この他、上記実施形態の屋根構造1及び屋根材2の各要素の形状、大きさ及び材質並びに屋根構造1及び屋根材2の施工方法等は、適宜変更可能である。
【0078】
(2)態様
以上説明した実施形態から明らかなように、第1の態様の屋根構造1は、以下に示す構成を有する。屋根構造1は、水下側屋根材2Aと、水下側屋根材2Aの水上側に配置された水上側屋根材2Bとを備える。水下側屋根材2Aは、水下側屋根材本体(水下側屋根材2Aの本体)20と、水下側屋根材本体20の水上側端から表面側に向かって延出した立上部24とを有する。水上側屋根材2Bは、水上側屋根材本体(水上側屋根材2Bの本体)20と、水上側屋根材本体20の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部22とを有する。立下部22は、立上部24の水下側に位置する。立上部24は、立上部24における他の部分244よりも水下側に向かって突出し、立下部22までの距離が他の部分244と比べて短い突出部240を有する。他の部分244と立下部22との間に隙間14が形成される。
【0079】
この態様によれば、水下側屋根材2Aの立上部24と、水上側屋根材2Bの立下部22との間に至った雨水が毛細管現象によって上昇することが、隙間14によって抑制される。このため、水下側屋根材本体20上の雨水が立上部24を乗り越えて水上側に流れることが抑制され、建築物の防水性が高まる。
【0080】
第2の態様の屋根構造1は、第1の態様との組み合わせにより実現され得る。第2の態様は、以下に示す構成を有する。水下側屋根材本体20は、水下側屋根材本体20の両側端部にそれぞれ形成され、表面側に向かって突出した一対の水下側屋根材本体嵌合部(水下側屋根材2Aの本体嵌合部)204を有する。水上側屋根材2Bは、立下部22の下端から水下側に向かって延出した段下部23を有する。段下部23が、水下側屋根材本体20の上に重なる。段下部23は、段下部23の両側端部にそれぞれ形成された一対の水下側嵌合部231を有する。一対の水下側嵌合部231が、一対の水下側屋根材本体嵌合部204にそれぞれ嵌合する。
【0081】
この態様によれば、段下部23が水下側屋根材本体20の上に重なることで、水下側屋根材本体20上の雨水が水上側に流れることが抑制され、建築物の防水性が一層高まる。また、一対の水下側嵌合部231が一対の水下側屋根材本体嵌合部204に嵌合することで、水下側屋根材2Aと水上側屋根材2Bとを強固につなぐことができる。
【0082】
第3の態様の屋根構造1は、第1又は第2の態様との組み合わせにより実現され得る。第3の態様は、以下に示す構成を有する。水下側屋根材2Aは、立上部24の上端から水上側に向かって延出した段上部25を有する。水上側屋根材本体(水上側屋根材2Bの本体)20が、段上部25の上に重なる。段上部25は、段上部25の両側端部にそれぞれ形成された一対の水上側嵌合部251を有する。水上側屋根材本体20は、水上側屋根材本体20の両側端部にそれぞれ形成された一対の水上側屋根材本体嵌合部(水上側屋根材2Bの本体嵌合部)204を有する。一対の水上側屋根材本体嵌合部204が、一対の水上側嵌合部251にそれぞれ嵌合する。
【0083】
この態様によれば、一対の水上側屋根材本体嵌合部204が、一対の水上側嵌合部251に嵌合することで、水下側屋根材2Aと水上側屋根材2Bとを強固につなぐことができる。
【0084】
第4の態様の屋根構造1は、第3の態様との組み合わせにより実現され得る。第4の態様の水下側屋根材2Aは、段上部25の後端から表面側に向かって延出した第2の立上部252を更に有する。
【0085】
この態様によれば、段上部25の上面に沿って水上側に流れる雨水を第2の立上部252よって堰き止めることができ、建築物の防水性が一層高まる。
【0086】
第5の態様の屋根材2は、以下に示す構成を有する。屋根材2は、本体20と、本体20の水下側端から裏面側に向かって延出した立下部22と、本体20の水上側端から表面側に向かって延出した立上部24とを備える。立上部24は、立上部24における他の部分244よりも水下側に向かって突出し、水上側の他の屋根材2が備える、立下部22と同一形状の立下部22が立上部24の水下側に位置した状態において、前記他の屋根材2が備える立下部22までの距離が他の部分244と比べて短くなる突出部240を有する。
【0087】
この態様によれば、立上部24に突出部240が形成されたことにより、屋根材2を施工したときに、立上部24の他の部分244と、水上側の他の屋根材2の立下部22との間に、隙間14が形成される。このため、立上部24と、水上側の他の屋根材2の立下部22との間に至った雨水が毛細管現象によって上昇することが、隙間14によって抑制される。したがって、本体20上の雨水が立上部24を乗り越えて水上側に流れることが抑制され、建築物の防水性が高まる。
【符号の説明】
【0088】
1 屋根構造
14 隙間
2 屋根材
2A 水下側屋根材
2B 水上側屋根材
20 本体(水下側屋根材本体、水上側屋根材本体)
204 本体嵌合部(水下側屋根材本体嵌合部、水上側屋根材本体嵌合部)
22 立下部
23 段下部
231 水下側嵌合部
24 立上部
244 他の部分
25 段上部
251 水上側嵌合部
252 第2の立上部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9