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  • 特開-改修工事方法 図1
  • 特開-改修工事方法 図2
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  • 特開-改修工事方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126916
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】改修工事方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
E04G23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024759
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】相樂 敏男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 稔
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 智昭
(72)【発明者】
【氏名】椎葉 千晶
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176BB27
2E176BB36
(57)【要約】
【課題】地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法において、既存床版部分を下方から支持する支保工の設置を簡略化又は省略して、作業効率の向上や谷側の環境保護を行うことができる技術を提供する。
【解決手段】既存基礎部分2,3と既存床版部分1との境界部に当該既存床版部分1に対して定着されるコンクリート製の新設カウンターウェイト部分5を構築した上で、既存床版部分1に対して既存基礎部分2,3を切り離す。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法であって、
前記既存基礎部分と前記既存床版部分との境界部に当該既存床版部分に対して定着されるコンクリート製の新設カウンターウェイト部分を構築した上で、前記既存床版部分に対して前記既存基礎部分を切り離すことを特徴とする改修工事方法。
【請求項2】
前記既存建築物には、前記既存基礎部分から前記既存床版部分に延びる複数の既存基礎梁が並設されており、
前記新設カウンターウェイト部分を前記既存基礎梁間の領域に構築することを特徴とする請求項1に記載の改修工事方法。
【請求項3】
前記既存基礎梁に設けたアンカーを前記新設カウンターウェイト部分に埋設させる形態で、当該新設カウンターウェイト部分を前記既存基礎梁に定着させることを特徴とする請求項2に記載の改修工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤上の既存基礎部分から斜面地などの谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物(例えば、特許文献1を参照。)に対して、既存床版部分を残したままで既存基礎部分を解体撤去する改修工事を実施して、例えば撤去された既存基礎部分の跡地に新たな建築物を建造する場合がある。このような改修工事では、既存基礎部分に対して切り離された既存床版部分が谷側へ崩落することを防ぐ必要があり、その方法としては、既存床版部分を下方から支持する支保工を設置する方法が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-002557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、既存床版部分を下方から支持する支保工は、その既存床版部分が張り出される斜面地などの谷側に設置する必要があり、そのような支保工の設置作業は、高所で重機が必要な比較的煩雑な作業となる。また、既存床版部分が張り出される谷側の斜面地が河川の護岸である場合には、その護岸を保護するために支保工の設置が制限される場合がある。
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法において、既存床版部分を下方から支持する支保工の設置を簡略化又は省略して、作業効率の向上や谷側の環境保護を行うことができる技術を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1特徴構成は、地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法であって、
前記既存基礎部分と前記既存床版部分との境界部に当該既存床版部分に対して定着されるコンクリート製の新設カウンターウェイト部分を構築した上で、前記既存床版部分に対して前記既存基礎部分を切り離すことを特徴とする点にある。
【0006】
本構成によれば、谷側に張り出された既存床版部分に対して地盤上の既存基礎部分を切り離す前に、それらの境界部の地盤上に新設カウンターウェイト部分を既存床版部分に対して定着させた状態で構築するので、既存基礎部分を切り離した後においては、既存床版部分を、谷側へ張り出された状態を保ったまま、その基端部側に定着された地盤上の新設カウンターウェイト部分により支持することができる。
従って、本発明により、地盤上の既存基礎部分から谷側に張り出された状態で既存床版部分が突出形成された既存建築物に対して、前記既存床版部分を残したままで前記既存基礎部分を解体撤去する改修工事方法において、既存床版部分を下方から支持する支保工の設置を簡略化又は省略して、作業効率の向上や谷側の環境保護を行うことができる技術を提供することができる。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記既存建築物には、前記既存基礎部分から前記既存床版部分に延びる複数の既存基礎梁が並設されており、
前記新設カウンターウェイト部分を前記既存基礎梁間の領域に構築することを特徴とする点にある。
【0008】
本構成によれば、既存基礎部分から既存床版部分に延びる複数の既存基礎梁が並設されている場合には、それら既存基礎梁を避けて、既存基礎梁間の領域に新設カウンターウェイト部分を構築することができる。
【0009】
本発明の第3特徴構成は、前記既存基礎梁に設けたアンカーを前記新設カウンターウェイト部分に埋設させる形態で、当該新設カウンターウェイト部分を前記既存基礎梁に定着させることを特徴とする点にある。
【0010】
本構成によれば、既存基礎梁に設けたアンカーを新設カウンターウェイト部分に埋設させて、当該新設カウンターウェイトを既存基礎梁に定着させることで、既存床版部分にアンカーを設けることなく、既存基礎梁を介して安定した状態で新設アンカーウェイトを既存床版部分に対して定着させることができる。よって、既存基礎部分を既存基礎梁から切り離した後において、新設カウンターウェイトが定着される既存基礎梁により安定して既存床版部分を支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本改修工事方法の実行前の状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
図2】本改修工事方法の第1工程実行時の状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
図3】本改修工事方法の第2工程実行時の状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
図4】本改修工事方法の第3工程実行時の状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
図5】本改修工事方法の実行後の状態を示す縦断面図(a)及び平面図(b)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る改修工事方法の実施形態について図面に基づいて説明する。
本実施形態の改修工事方法(以下、「本改修工事方法」と呼ぶ。)は、図1に示すように、地盤G上の既存基礎部分2,3から谷V側に張り出された状態で既存床版部分1が突出形成された既存建築物20に対して、非撤去範囲L内の既存床版部分1を残したままで撤去範囲D内の既存基礎部分2,3を解体撤去する方法であって、既存床版部分1を下方から支持する支保工の設置を簡略化又は省略して、作業効率の向上や谷V側の環境保護を行うことができるものとして構成されている。
尚、本実施形態において、既存建築物20の既存床版部分1は、地盤G上から河川の護岸などの谷V側へ跳ね出された河川跳ね出しバルコニーとして構成されており、その上には、本改修工事方法の実行時には撤去されるが、仕上舗装部分10や手摺11などが設けられている。
【0013】
本改修工事方法は、図2図4に状態を示す各工程を順次実行するものとして構成されており、それら各工程の詳細について以下に説明を加える。
【0014】
(第1工程)
第1工程では、図2に示すように、既存基礎部分2,3と既存床版部分1との境界部に当該既存床版部分1に対して定着されるコンクリート製の新設カウンターウェイト部分5が構築される。
【0015】
本実施形態では、既存基礎部分2,3は、地盤G上に設置された既存フーチング基礎2と、その既存フーチング基礎2に片持ち支持されて谷V側の既存床版部分1に延びる既存基礎梁3とを、谷Vに沿う方向(図2(b)の上下方向)に複数並設配置して構成されている。
そして、新設カウンターウェイト部分5は、この既存基礎梁3を避けて、既存基礎梁3間の領域に構築される。即ち、図2(b)に示すように、谷Vに沿う方向に沿って並設された既存基礎梁3間の領域の地盤Gが掘削されて、その掘削された領域にコンクリートを打設して、新設カウンターウェイト部分5が構築される。
【0016】
更に、新設カウンターウェイト部分5のコンクリートの打設に先立って、既存基礎梁3の側面には、新設カウンターウェイト部分5の構築領域に突出する形態で、後施工アンカー6が設けられる。そして、この後施工アンカー6を新設カウンターウェイト部分5のコンクリートに埋設させる形態で、新設カウンターウェイト部分5が既存基礎梁3に定着される。このことで、新設カウンターウェイト部分5は、既存床版部分1に対し、既存基礎梁3を介して間接的に定着されることになる。
【0017】
(第2工程)
上記第1工程の実行後に実行される第2工程では、図3に示すように、既存床版部分1に対して既存基礎部分2,3が切り離される。
即ち、新設カウンターウェイト部分5の谷V側とは反対側の側面に沿う既存基礎梁3の一部である切断対象部分3aを、穿孔機やハンマードリルなどを用いたコア抜き工法により解体することで、地盤G側で新設カウンターウェイト部分5が定着されて当該新設カウンターウェイト部分5から谷V側に張り出された状態となった既存床版部分1に対して、既存フーチング基礎2及びそれに接続された既存基礎梁3が切り離される。そして、切り離した後においては、既存床版部分1は、谷V側へ張り出された状態を保ったまま、その基端部側に定着された地盤G上の新設カウンターウェイト部分5により片持ち支持されることになる。
【0018】
(第3工程)
上記第2工程の実行後に実行される第3工程では、図4に示すように、既存床版部分1に対して切り離された既存基礎部分2,3が解体撤去される。そして、この撤去後の地盤G上には、図5に示すように、整地、地盤改良、掘削、基礎工事を適宜実施して、新築建築物30を構築することができる。
【0019】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0020】
(1)上記実施形態では、本発明に係る改修工事方法を、地盤G上から河川の護岸などの谷V側へ跳ね出された河川跳ね出しバルコニーとして構成された既存床版部分1を有する既存建築物20に対して実施した例を説明したが、この構成は本発明を限定するものではなく、別の用途で地盤G上から谷V側へ張り出された既存床版部分1を有する既存建築物に対しても適用可能である。
【0021】
(2)上記実施形態では、既存基礎梁3間の領域に新設カウンターウェイト部分5を構築したが、新設カウンターウェイト部分を別の領域に構築しても構わない。
また、上記実施形態では、新設カウンターウェイト部分5を、既存床版部分1に対し、既存基礎梁3を介して間接的に定着させたが、既存床版部分1に対して直接的又は間接的に新設カウンターウェイト部分を定着させるのであれば、新設カウンターウェイト部分を既存基礎梁3とは別の部位に定着させても構わない。
【符号の説明】
【0022】
1 既存床版部分
2 既存フーチング基礎(既存基礎部分)
3 既存基礎梁(既存基礎部分)
5 新設カウンターウェイト部分
6 後施工アンカー(アンカー)
20 既存建築物
G 地盤
V 谷
図1
図2
図3
図4
図5