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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126927
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】エアシリンダの流体回路
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/06 20060101AFI20220824BHJP
   F15B 11/042 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
F15B11/06 Z
F15B11/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024785
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】新庄 直樹
【テーマコード(参考)】
3H089
【Fターム(参考)】
3H089AA22
3H089BB21
3H089CC01
3H089DA05
3H089DB13
3H089DB43
3H089DC09
3H089GG03
(57)【要約】
【課題】エアの給排が絞りを介して行われるエアシリンダを高速・高頻度で使用しても、エアシリンダの温度上昇を十分に抑制できるエアシリンダの流体回路を提供する。
【解決手段】排気口30A、30Bが付設された切換弁28に接続されるエアシリンダ10の流体回路において、ヘッド側圧力室22は第1配管26Aによって切換弁に接続され、ロッド側圧力室24は第2配管26Bによって切換弁に接続され、第1配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第1出力ポート近傍に第1絞り32Aが配設され、第2配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第2出力ポート近傍に第2絞り32Bが配設される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気口が付設された切換弁に接続されるエアシリンダの流体回路であって、
エアシリンダは、ピストンによって区画されるヘッド側圧力室およびロッド側圧力室を備え、ヘッド側圧力室は第1配管によって切換弁の第1出力ポートに接続され、ロッド側圧力室は第2配管によって切換弁の第2出力ポートに接続され、切換弁によってヘッド側圧力室およびロッド側圧力室に対するエアの給排が切り換えられ、第1配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第1出力ポート近傍に第1絞りが配設され、第2配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第2出力ポート近傍に第2絞りが配設されるエアシリンダの流体回路。
【請求項2】
請求項1記載のエアシリンダの流体回路において、
前記第1絞りおよび前記第2絞りは、可変絞りであるエアシリンダの流体回路。
【請求項3】
請求項1記載のエアシリンダの流体回路において、
前記第1絞りおよび前記第2絞りは、固定絞りであるエアシリンダの流体回路。
【請求項4】
請求項1記載のエアシリンダの流体回路において、
前記第1絞りおよび前記第2絞りは、メータインの絞りであるエアシリンダの流体回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞りを含むエアシリンダの流体回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エアシリンダの速度を制限するため、エアシリンダの給排ポートに固定絞り(固定オリフィス)を設ける技術が知られている。また、エアシリンダの速度を最適なものに調整できるようにするため、エアシリンダの給排ポートに可変絞り(可変オリフィス)を設ける技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エアシリンダの第1シリンダ室に圧縮空気を給排するシリンダポート部の開口部に第1スピードコントローラを設け、エアシリンダの第2シリンダ室に圧縮空気を給排するシリンダポート部の開口部に第2スピードコントローラを設けたエアシリンダが記載されている。
【0004】
ところで、給排ポートに絞りを設けたエアシリンダを高速・高頻度で作動させると、シリンダ室に熱エネルギーが多量に蓄積され、エアシリンダ各部の温度上昇が大きくなる。この場合、エアシリンダが十分な耐熱性を有していないとき、あるいは、エアシリンダの動作速度・動作頻度が想定以上に高くなったときは、エアシリンダの温度上昇によってエアシリンダに設けられているパッキン、ダンパなどのゴム部材に悪影響が及び、エアシリンダの耐久性が損なわれるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-44952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エアの給排が絞りを介して行われるエアシリンダを高速・高頻度で使用しても、エアシリンダの温度上昇を十分に抑制できるエアシリンダの流体回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るエアシリンダの流体回路は、排気口が付設された切換弁に接続されるもので、エアシリンダは、ピストンによって区画されるヘッド側圧力室およびロッド側圧力室を備え、ヘッド側圧力室は第1配管によって切換弁の第1出力ポートに接続され、ロッド側圧力室は第2配管によって切換弁の第2出力ポートに接続され、切換弁によってヘッド側圧力室およびロッド側圧力室に対するエアの給排が切り換えられる。そして、第1配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第1出力ポート近傍に第1絞りが配設され、第2配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第2出力ポート近傍に第2絞りが配設される。
【0008】
上記エアシリンダの流体回路によれば、絞りで発生する熱が蓄積されるエアの容積に第1配管の容積および第2配管の容積が含まれるので、エアの温度上昇が抑制されるほか、排気口からの排気に伴って切換弁が冷却されるので、エアシリンダの温度上昇が抑制される。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るエアシリンダの流体回路は、第1配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第1出力ポート近傍に第1絞りが配設され、第2配管と切換弁との接続箇所または切換弁の第2出力ポート近傍に第2絞りが配設されるものであるので、エアの熱容量を大きくすることができる上に、冷却効果が得られ、エアシリンダの温度上昇が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の基本概念を説明するための図である。
図2】比較例1の概念図である。
図3】比較例2の概念図である。
図4】本発明と比較例に関する測定データをまとめた表である。
図5】本発明の第1実施形態に係るエアシリンダの流体回路の外観図である。
図6図5のエアシリンダの流体回路の断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るエアシリンダの流体回路の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、本発明の基本概念を比較例1および比較例2と対照しながら説明する。本発明は、エアシリンダにエアを給排する配管と切換弁との接続箇所または切換弁の出力ポート近傍に絞り(オリフィス)を配設するものである。本発明について、比較例1および比較例2と共通する構成を含めて説明する。
【0012】
図1に示すように、エアシリンダ10は、シリンダチューブ12、ヘッドカバー14、ロッドカバー16およびピストン18を備える。ピストン18とヘッドカバー14との間に設けられたヘッド側圧力室22は、第1配管26Aによって切換弁28の第1出力ポート31Aに接続される。ピストン18とロッドカバー16との間に設けられたロッド側圧力室24は、第2配管26Bによって切換弁28の第2出力ポート31Bに接続される。切換弁28には、大気に開放される第1排気口30Aおよび第2排気口30Bが付設されている。
【0013】
切換弁28は、流体供給源38からのエアを第1配管26Aを介してヘッド側圧力室22に供給するとともにロッド側圧力室24のエアを第2配管26Bを介して大気に開放する第1位置と、流体供給源38からのエアを第2配管26Bを介してロッド側圧力室24に供給するとともにヘッド側圧力室22のエアを第1配管26Aを介して大気に開放する第2位置との間で切り換え可能に構成されている。切換弁28が第1位置に切り換えられると、ピストンロッド20が押し出され、切換弁28が第2位置に切り換えられると、ピストンロッド20が引き込まれる。
【0014】
本発明が比較例1および比較例2と共通する部分は、以上のとおりである。本発明では、第1配管26Aと切換弁28との接続箇所または切換弁28の第1出力ポート31A近傍に第1絞り32Aが配設され、第2配管26Bと切換弁28との接続箇所または切換弁28の第2出力ポート31B近傍に第2絞り32Bが配設されている。
【0015】
これに対して、比較例1では、図2に示すように、ヘッド側圧力室22が第1配管26Aと接続される箇所(ヘッド側ポート)に第1絞り34Aが配設され、ロッド側圧力室24が第2配管26Bと接続される箇所(ロッド側ポート)に第2絞り34Bが配設されている。
【0016】
また、比較例2では、図3に示すように、第1配管26Aの途中に第1絞り36Aが配設され、第2配管26Bの途中に第2絞り36Bが配設されている。比較例2において、第1絞り36Aからエアシリンダ10までの第1配管26Aの部分を「第1配管26Aの下流部分」といい、第2絞り36Bからエアシリンダ10までの第2配管26Bの部分を「第2配管26Bの下流部分」という。
【0017】
次に、比較例1における熱の発生・移動とそれに伴うエアシリンダ10の温度上昇について説明する。
【0018】
ピストンロッド20の押し出し工程では、エアが第1絞り34Aを通ってヘッド側圧力室22に充填される。エアが第1絞り34Aを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともにヘッド側圧力室22に入るほか、エアを媒体としてヘッドカバー14等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第1絞り34Aからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。上記ピストンロッド20の押し出し工程でロッド側圧力室24のエアが第2絞り34Bを通過する際にも熱が発生するが、この熱がエアシリンダ10に与える影響は少ない。
【0019】
ピストンロッド20の引き込み工程では、エアが第2絞り34Bを通ってロッド側圧力室24に充填される。エアが第2絞り34Bを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換され、この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともにロッド側圧力室24に入るほか、エアを媒体としてロッドカバー16等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第2絞り34Bからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。上記ピストンロッド20の引き込み工程でヘッド側圧力室22のエアが第1絞り34Aを通過する際にも熱が発生するが、この熱がエアシリンダ10に与える影響は少ない。
【0020】
なお、ピストンロッド20の押し出し工程でヘッド側圧力室22に入り蓄積された熱の一部は、続くピストンロッド20の引き込み工程でエアとともに第1絞り34Aから第1配管26Aに向けて放出される。また、ピストンロッド20の引き込み工程でロッド側圧力室24に入り蓄積された熱の一部は、続くピストンロッド20の押し出し工程でエアとともに第2絞り34Bから第2配管26Bに向けて放出される。
【0021】
このように、ピストンロッド20の押し出し工程と引き込み工程に伴って発生する熱は、エアシリンダ10に一定の度合いで蓄積される。ピストン18が往復運動を繰り返すと、エアシリンダ10の温度は、自然放熱を主体とするエアシリンダ10の放熱量がエアシリンダ10の受熱量と釣り合う状態になるまで上昇する。比較例1では、エアシリンダ10が非常に高温になり得る。
【0022】
次に、比較例2における熱の発生・移動とそれに伴うエアシリンダ10の温度上昇について説明する。
【0023】
ピストンロッド20の押し出し工程では、エアが第1絞り36Aを通って第1配管26Aの下流部分およびヘッド側圧力室22に充填される。エアが第1絞り36Aを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換される。この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともに第1配管26Aの下流部分およびヘッド側圧力室22に運ばれるほか、エアを媒体としてヘッドカバー14等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第1絞り36Aから第1配管26Aに伝達され、さらに第1配管26Aからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。
【0024】
ピストンロッド20の引き込み工程では、エアが第2絞り36Bを通って第2配管26Bの下流部分およびロッド側圧力室24に充填される。エアが第2絞り36Bを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換される。この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともに第2配管26Bの下流部分およびロッド側圧力室24に運ばれるほか、エアを媒体としてロッドカバー16等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第2絞り36Bから第2配管26Bに伝達され、さらに第2配管26Bからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。
【0025】
このように、ピストンロッド20の押し出し工程と引き込み工程に伴って発生する熱は、エアシリンダ10に蓄積されるだけでなく、第1配管26Aの下流部分および第2配管26Bの下流部分にも分担して蓄積される。
【0026】
ピストン18が往復運動を繰り返すと、エアシリンダ10の温度は、自然放熱を主体とするエアシリンダ10の放熱量がエアシリンダ10の受熱量と釣り合う状態になるまで上昇する。この場合、発生した熱を受け入れるエアの容積は、ヘッド側圧力室22の容積とロッド側圧力室24の容積だけでなく、第1配管26Aの下流部分の容積と第2配管26Bの下流部分の容積を加えたものとなる。したがって、比較例1に比べると、エアの熱容量が大きく、エアは比較例1の場合ほど高温にならず、エアシリンダ10も比較例1の場合ほど高温にならない。
【0027】
次に、本発明における熱の発生・移動および放熱(冷却)とそれに伴うエアシリンダ10の温度上昇について説明する。
【0028】
ピストンロッド20の押し出し工程では、エアが第1絞り32Aを通って第1配管26A全体およびヘッド側圧力室22に充填される。エアが第1絞り32Aを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換される。この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともに第1配管26Aおよびヘッド側圧力室22に運ばれるほか、エアを媒体としてヘッドカバー14等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第1絞り32Aから第1配管26Aに伝達され、さらに第1配管26Aからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。
【0029】
上記ピストンロッド20の押し出し工程では、第2配管26Bおよびロッド側圧力室24に充填されていたエアが、第2絞り32Bを通り、切換弁28に付設された第2排気口30Bから大気中に排出される。エアが第2排気口30Bから排出される際に、エアは断熱状態で急激に膨張し、その温度が低下する。このため、切換弁28が冷却され、第1絞り32Aおよび第2絞り32Bも冷却される。そして、第1配管26A、第2配管26Bおよびそれらの内部のエアが冷却される効果が得られる。なお、ピストンロッド20の押し出し工程で、第2配管26Bおよびロッド側圧力室24に充填されていたエアが第2絞り32Bを通過する際にも熱が発生するが、この熱がエアシリンダ10に影響を及ぼすことはない。
【0030】
ピストンロッド20の引き込み工程では、エアが第2絞り32Bを通って第2配管26B全体およびロッド側圧力室24に充填される。エアが第2絞り32Bを通過する際に、エアがもつエネルギーの一部が熱エネルギーに変換される。この熱は、エアの温度を上昇させながら、エアとともに第2配管26Bおよびロッド側圧力室24に運ばれるほか、エアを媒体としてロッドカバー16等エアシリンダ10の構成部品に伝達され、その温度を上昇させる。また、上記熱の一部は、熱伝導により、第2絞り32Bから第2配管26Bに伝達され、さらに第2配管26Bからエアシリンダ10の構成部品に伝達される。
【0031】
上記ピストンロッド20の引き込み工程では、第1配管26Aおよびヘッド側圧力室22に充填されていたエアが、第1絞り32Aを通り、切換弁28に付設された第1排気口30Aから大気中に排出される。エアが第1排気口30Aから排出される際に、エアは断熱状態で急激に膨張し、その温度が低下する。このため、切換弁28が冷却され、第1絞り32Aおよび第2絞り32Bも冷却される。そして、第1配管26A、第2配管26Bおよびそれらの内部のエアが冷却される効果が得られる。なお、ピストンロッド20の引き込み工程で、第1配管26Aおよびヘッド側圧力室22に充填されていたエアが第1絞り32Aを通過する際にも熱が発生するが、この熱がエアシリンダ10に影響を及ぼすことはない。
【0032】
このように、ピストンロッド20の押し出し工程と引き込み工程に伴って発生する熱は、エアシリンダ10に蓄積されるだけでなく、第1配管26A全体および第2配管26B全体にも分担して蓄積される。また、ピストンロッド20の押し出し工程と引き込み工程に伴い、切換弁28が冷却されることで、第1配管26A、第2配管26Bおよびそれらの内部のエアが冷却される効果が得られる。
【0033】
ピストン18が往復運動を繰り返すと、エアシリンダ10の温度は、エアシリンダ10の放熱量がエアシリンダ10の受熱量と釣り合う状態になるまで上昇するが、本発明の場合、発生した熱を受け入れるエアの容積は、ヘッド側圧力室22の容積とロッド側圧力室24の容積だけでなく、第1配管26A全体の容積と第2配管26B全体の容積を加えたものとなり、比較例2に比べてさらにエアの熱容量が大きい。また、第1絞り32Aおよび第2絞り32Bを切換弁28に直結させているので、第1配管26A、第2配管26Bおよびそれらの内部のエアが冷却される効果が得られる。したがって、エアは高温になり難く、エアシリンダ10の温度上昇が十分に抑制される。
【0034】
本発明、比較例1および比較例2の各エアシリンダ10の流体回路について、ピストン18を所定の周期で往復動(振動)させたとき、シリンダチューブ12、ヘッドカバー14、ロッドカバー16、切換弁28、第1絞り32A、34A、36Aおよび第2絞り32B、34B、36Bの各部位の温度がどの程度になるか、実験を行った。
【0035】
エアシリンダ10は、シリンダチューブ12の内径が10mm、ピストン18のストロークが45mmのものを使用し、第1配管26Aおよび第2配管26Bは、内径が4mm、長さが500mmのものを使用した。また、第1絞り32A、34A、36Aのオリフィス径を1.1mm、第2絞り32B、34B、36Bのオリフィス径を1.8mmとした。切換弁28のタクトについては、第1位置に切り換えてから第2位置に切り換えるまでの時間、および、第2位置に切り換えてから第1位置に切り換えるまでの時間を35msとした。
【0036】
エアシリンダ10から第1絞りまでの距離、および、エアシリンダ10から第2絞りまでの距離は、本発明の場合、第1配管26Aの長さおよび第2配管26Bの長さと同じ500mmであり、比較例1の場合、ゼロである。比較例2では、第1配管26Aのちょうど中央に第1絞り36Aを配設するとともに第2配管26Bのちょうど中央に第2絞り36Bを配設し、上記距離は250mmとなっている。
【0037】
室温25℃の下で5分間エアシリンダ10を作動させたときの各部位の温度(最高温度)を測定した。測定結果をまとめた表を図4として示す。
【0038】
比較例1では、シリンダチューブ12は100℃まで上昇し、ヘッドカバー14は111℃まで上昇し、ロッドカバー16は63℃まで上昇した。比較例2では、シリンダチューブ12は64℃まで上昇し、ヘッドカバー14は50℃まで上昇し、ロッドカバー16は46℃まで上昇した。
【0039】
これに対して、本発明では、シリンダチューブ12の温度は56℃までの上昇に留まり、ヘッドカバー14およびロッドカバー16の温度は39℃までの上昇に留まった。本発明では、エアシリンダ10の構成部品の温度上昇が十分に抑制されていることが分かる。
【0040】
なお、比較例1では、切換弁28の温度が室温よりも低い17℃となっており、切換弁28が相当程度冷却されていることが分かる。また、比較例1では、ヘッドカバー14の温度がロッドカバー16の温度を大きく上回っているが、これは、第2絞り34Bよりもオリフィス径が小さい第1絞り34Aで発生する熱の影響が大きいことを示している。
【0041】
次に、本発明に係るエアシリンダの流体回路について、複数の具体的な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0042】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るエアシリンダの流体回路40について、図5および図6を参照しながら説明する。エアシリンダの流体回路40は、エアシリンダ42、第1配管58、第2配管60、第1スピードコントローラ62(第1絞り)、第2スピードコントローラ64(第2絞り)および切換弁66を含んで構成される。
【0043】
切換弁66は、ボデイ68の内部に形成された弁孔68aにスプール弁体70が摺動可能に設けられたものである。ボデイ68には、サイレンサ付きの第1排気口72および第2排気口74が付設されている。また、ボデイ68には、図示しない流体供給源に接続される供給ポート68bと、第1スピードコントローラ62に接続される第1出力ポート68cと、第2スピードコントローラ64に接続される第2出力ポート68dとが設けられている。
【0044】
可変絞りである第1スピードコントローラ62は、内部にエア通路62cを有する弁本体62aと、該エア通路62cに挿入されるニードル弁体62bとから構成される。弁本体62aから外部に延びるニードル弁体62bの端部には摘み62dが設けられ、摘み62dを回動操作することによりエア通路62cの面積を変更することができるようになっている。弁本体62aはL字状に構成され、その一端側が切換弁66の第1出力ポート68cに接続され、他端側が第1配管58に接続される。
【0045】
可変絞りである第2スピードコントローラ64も、第1スピードコントローラ62と同様に、弁本体64aとニードル弁体64bとから構成され、弁本体64aの一端側が切換弁66の第2出力ポート68dに接続され、弁本体64aの他端側が第2配管60に接続される。
【0046】
エアシリンダ42は、シリンダチューブ44、ヘッドカバー46、ロッドカバー48、ピストン50およびピストンロッド52を備える。ピストン50とヘッドカバー46との間に設けられたヘッド側圧力室54は、第1配管58に接続され、ピストン50とロッドカバー48との間に設けられたロッド側圧力室56は、第2配管60に接続される。
【0047】
切換弁66は、スプール弁体70の摺動位置に応じて、ピストンロッド52を押し出す第1位置と、ピストンロッド52を引き込む第2位置との間で切り換え可能に構成されている。図6に示される切換弁66は、第1位置に切り換えられた状態にある。
【0048】
切換弁66が第1位置にあるとき、第1スピードコントローラ62のエア通路62cが供給ポート68bに連通するとともに、第2スピードコントローラ64のエア通路64cが第2排気口74に連通する。このとき、流体供給源からのエアが第1スピードコントローラ62を通って第1配管58およびヘッド側圧力室54に供給されるとともに、第2配管60のエアおよびロッド側圧力室56のエアが第2スピードコントローラ64を通って第2排気口74から大気中に排出される。
【0049】
切換弁66が第2位置にあるとき、第2スピードコントローラ64のエア通路64cが供給ポート68bに連通するとともに、第1スピードコントローラ62のエア通路62cが第1排気口72に連通する。このとき、流体供給源からのエアが第2スピードコントローラ64を通って第2配管60およびロッド側圧力室56に供給されるとともに、第1配管58のエアおよびヘッド側圧力室54のエアが第1スピードコントローラ62を通って第1排気口72から大気中に排出される。
【0050】
ピストンロッド52の押し出し工程でエアが第1スピードコントローラ62を通過する際に発生する熱は、エアとともに第1配管58およびヘッド側圧力室54に運ばれ、ピストンロッド52の引き込み工程でエアが第2スピードコントローラ64を通過する際に発生する熱は、エアとともに第2配管60およびロッド側圧力室56に運ばれる。すなわち、発生した熱を受け入れるエアの容積は、ヘッド側圧力室54の容積とロッド側圧力室56の容積だけでなく、第1配管58全体の容積と第2配管60全体の容積を加えたものとなり、エアの熱容量が大きい。したがって、エアは高温になり難く、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。
【0051】
また、ピストンロッド52の押し出し工程でエアが第2排気口74から排出される際に、断熱膨張によりエアの温度が下降し、ピストンロッド52の引き込み工程でエアが第1排気口72から排出される際にも、断熱膨張によりエアの温度が下降する。これにより、切換弁66が冷却され、第1スピードコントローラ62および第2スピードコントローラ64も冷却される。そして、第1配管58、第2配管60およびそれらの内部のエアが冷却される効果が得られる。したがって、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。
【0052】
本実施形態によれば、第1スピードコントローラ62および第2スピードコントローラ64で発生する熱が蓄積されるエアの容積に第1配管58の容積および第2配管60の容積が含まれるので、エアの温度上昇が抑制され、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。加えて、第1排気口72および第2排気口74からの排気に伴って切換弁66が冷却されるので、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。
【0053】
本実施形態では、第1絞りおよび第2絞りを可変絞りとしたが、これらを固定絞りとしてもよい。また、第1絞りおよび第2絞りとして、エアシリンダに流入するエアを絞る一方でエアシリンダから排出するエアは絞らない形式のもの、すなわち、メータインの絞りを採用してもよい。また、切換弁66に2つの排気口を付設したが、1つの排気口にまとめてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るエアシリンダの流体回路80について、図7を参照しながら説明する。なお、上述したエアシリンダの流体回路40と同一または同等の構成には同一の参照符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
エアシリンダの流体回路80は、エアシリンダ42、第1配管58、第2配管60、第1継手86、第2継手88および切換弁66を含んで構成される。第1継手86は、切換弁66の第1出力ポート68cを第1配管58に接続するために設けられるL字状の継手であり、第2継手88は、切換弁66の第2出力ポート68dを第2配管60に接続するために設けられるL字状の継手である。
【0056】
固定絞りである第1絞り82および第2絞り84は、切換弁66に内蔵されている。具体的には、第1絞り82は、切換弁66の第1出力ポート68cの近傍であって、ボデイ68の弁孔68aにおける所定の部位と第1出力ポート68cとの間に設けられている。また、第2絞り84は、切換弁66の第2出力ポート68dの近傍であって、ボデイ68の弁孔68aにおける所定の部位と第2出力ポート68dとの間に設けられている。
【0057】
本実施形態によれば、第1絞り82および第2絞り84で発生する熱が蓄積されるエアの容積に第1配管58の容積および第2配管60の容積が含まれるので、エアの温度上昇が抑制され、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。加えて、第1排気口72および第2排気口74からの排気に伴って第1絞り82および第2絞り84が内蔵された切換弁66が冷却されるので、エアシリンダ42の温度上昇が抑制される。
【0058】
本発明は、エアシリンダから切換弁に至る流路において最も流路面積が小さく絞り効果が高い部分を第1絞りおよび第2絞りとしたものであり、第1絞りおよび第2絞りよりも流路面積が広い別の絞りがエアシリンダから切換弁に至る流路中に設けられる場合を含む。
【0059】
本発明に係るエアシリンダの流体回路は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10、42…エアシリンダ 18、50…ピストン
22、54…ヘッド側圧力室 24、56…ロッド側圧力室
26A、58…第1配管 26B、60…第2配管
28、66…切換弁 30A、72…第1排気口(排気口)
30B、74…第2排気口(排気口)
31A、68c…第1出力ポート
31B、68d…第2出力ポート
32A…第1絞り
32B…第2絞り 40、80…エアシリンダの流体回路
62…第1スピードコントローラ(第1絞り)
64…第2スピードコントローラ(第2絞り)
82…第1絞り
84…第2絞り
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7