(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126939
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】トイレ
(51)【国際特許分類】
A47K 17/00 20060101AFI20220824BHJP
E03D 11/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A47K17/00
E03D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024804
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼地 春菜
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
【テーマコード(参考)】
2D037
2D039
【Fターム(参考)】
2D037EA00
2D039CD00
2D039DB00
2D039FA00
2D039FA02
(57)【要約】
【課題】床の殺菌が可能なトイレを提供すること。
【解決手段】トイレ1は、便器T使用するためにヒトが進入する床2が含まれる照射範囲110,120に対して、紫外線を含む光を照射する殺菌灯11,12を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を使用するためにヒトが進入する床が含まれる照射範囲に対して、紫外線を含む光を照射する殺菌灯を備える
トイレ。
【請求項2】
前記床は、照射される前記光に含まれる波長によって励起される光触媒でコーティングされている
請求項1に記載のトイレ。
【請求項3】
前記床に対するヒトの進入を検知する検知部と、
前記床にヒトが進入していない場合に前記殺菌灯から光を照射させる動作制御部と、
を備える請求項1又は2に記載のトイレ。
【請求項4】
前記検知部は、検知範囲内の赤外線に基づいてヒトを検知するセンサを含む
請求項3に記載のトイレ。
【請求項5】
前記検知部は、便器の周囲を囲う壁で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉のロック機構の動作を検知するセンサを含む
請求項4に記載のトイレ。
【請求項6】
前記検知部は、便器の周囲を囲う壁で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉の回動角度を検知するセンサを含む
請求項4又は5に記載のトイレ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トイレに関する。
【背景技術】
【0002】
便座を殺菌する光を発する殺菌灯を便座カバーに設けるトイレが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便器内の水の一部が飛沫となってトイレの床に到達することがあるため、床の殺菌が可能なトイレが求められていた。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、床の殺菌が可能なトイレを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様のトイレは、便器を使用するためにヒトが進入する床が含まれる照射範囲に対して、紫外線を含む光を照射する殺菌灯を備える。
【0007】
トイレの望ましい態様として、前記床は、照射される前記光に含まれる波長によって励起される光触媒でコーティングされている。
【0008】
トイレの望ましい態様として、前記床に対するヒトの進入を検知する検知部と、前記床にヒトが進入していない場合に前記殺菌灯から光を照射させる動作制御部と、を備える。
【0009】
トイレの望ましい態様として、前記検知部は、検知範囲内の赤外線に基づいてヒトを検知するセンサを含む。
【0010】
トイレの望ましい態様として、前記検知部は、便器の周囲を囲う壁で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉のロック機構の動作を検知するセンサを含む。
【0011】
トイレの望ましい態様として、前記検知部は、便器の周囲を囲う壁で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉の回動角度を検知するセンサを含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示のトイレによれば、床の殺菌が可能なトイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態のトイレの主要構成を示す平面図である。
【
図3】
図3は、トイレの機能的構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、変形例2のトイレの主要構成を示す平面図である。
【
図6】
図6は、変形例3のトイレの主要構成を示す平面図である。
【
図7】
図7は、扉のロック機構を利用した検知部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示に係る殺菌灯11,12を備えたトイレ1について実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示に係る殺菌灯11,12を備えたトイレ1の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0015】
(実施形態)
図1は、実施形態のトイレ1の主要構成を示す平面図である。平面図とは、トイレ1の床2を正視する図である。トイレ1は、床2、便器T、壁3、扉4、角壁6、殺菌灯11,12及び検知部20を備える。
【0016】
便器Tは、床2上に設置されている。壁3は、平面視点で、便器Tを利用するヒトの出入り口を除いた便器Tの周囲を囲う。扉4は、当該出入り口を開閉可能に設けられている。具体的には、
図1に示す扉4は、回動軸部5を回動軸として回動可能に設けられる。
図1では、当該出入り口が開放された状態における扉4の回動角度を実線で示している。また、
図1では、当該出入り口が閉じられた状態における扉4の回動角度を破線で示している。以下、単に出入り口と記載した場合、当該出入り口をさす。
【0017】
以下の説明では、当該出入り口を閉鎖する回動角度の扉4と便器Tを挟んで対向する壁3との対向方向をY方向とする。また、Y方向に直交する方向であって床2に沿う方向をX方向とする。また、壁3のうち、便器Tを挟んでX方向に対向する2つの側壁のうち一方を側壁31とし、他方を側壁32とする。また、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向とする。
【0018】
図1に示す扉4は、出入り口を閉鎖する回動角度で、角壁6とX方向に対向する。角壁6は、X方向の一端側が側壁31と当接し、他端側が出入り口を閉鎖する回動角度の扉4と対向する壁状の部材である。出入り口を閉鎖する回動角度の扉4と角壁6とは当接せず、間に隙間7が生じる。
【0019】
図1に示す殺菌灯11は、側壁31に取り付けられている。
図1に示す殺菌灯12は、側壁32に取り付けられている。殺菌灯11,12は、床2のうち便器Tを使用するためにヒトが進入する範囲が含まれる照射範囲に対して、紫外線を含む光を照射する。
図1では、殺菌灯11からの当該光の照射範囲110と、殺菌灯12からの当該光の照射範囲120と、を破線で示している。また、
図1では、便器Tを使用中のヒトの足の位置をフットポジションFとして模式的に示している。照射範囲110及び照射範囲120は、フットポジションFを内側に含む。また、
図1に示すように、照射範囲110と照射範囲120とは、フットポジションFを含む一部の範囲で重複する。また、照射範囲110と照射範囲120とは、検出部20による検知範囲200と重複する部分がある。
【0020】
検出部20は、トイレ1に対するヒトの進入を検知する。具体的には、検知部20は、
図2に示すように、例えばトイレ1の天井に固定された赤外線センサである。
図1では、検知部20がヒトの進入を検知可能な検知範囲200を破線で例示している。検知範囲200内に出入り口及びフットポジションFが含まれるようにすることで、検知部20は、出入り口を通過して便器Tを利用しようとするヒトの進入をより確実に検知できる。さらに、検知範囲200が便器Tからみて出入り口の外側に延出していることで、検知部20は、ヒトが出入り口に近づいた時点で当該ヒトを検知できる。検知部20は、トイレ1に対するヒトの進入を検知できればよく、検知範囲200の広さ及び平面視点での形状は
図1に示すものに限定されるものでなく、任意に変更可能である。
【0021】
図2は、実施形態のトイレ1の正面図である。正面図とは、出入り口側から便器Tを正視する図である。なお、
図2では、扉4、回動軸部5及び角壁6の図示を省略している。
図2では、殺菌灯11から発せられて床2における照射範囲110に照射される光及び殺菌灯12から発せられて床2における照射範囲120に照射される光を一点鎖線で示している。
【0022】
図2に示すように、殺菌灯11は、側壁31の床2側に設けられる。また、殺菌灯12は、側壁32の床2側に設けられる。すなわち、殺菌灯11及び殺菌灯12のZ方向の位置は、床2に近接している。これによって、殺菌灯11,12からの光がより強い状態で床2に照射されるようにすることができる。さらに、照射範囲110と照射範囲120とがフットポジションFを含む一部の範囲で重複することで、ヒトが進入する傾向がより強いフットポジションF付近に対してより確実に十分な強度で殺菌灯11,12からの光を照射できる。
【0023】
図2に示すように、殺菌灯11に対して床2の反対側に遮光部41が設けられている。遮光部41は、一端側が側壁31に固定され、他端側が床2側に延出する板状の部材である。遮光部41の他端側のZ方向の位置は、一端側のZ方向の位置よりも床2側である。遮光部41は、殺菌灯11からの光を遮蔽する。すなわち、遮光部41は、殺菌灯11からの光がZ方向について床2の反対側に放射されることを抑制する。また、殺菌灯12に対して床2の反対側に遮光部42が設けられている。遮光部42は、一端側が側壁32に固定され、他端側が床2側に延出する板状の部材である。遮光部42の他端側のZ方向の位置は、一端側のZ方向の位置よりも床2側である。遮光部42は、殺菌灯12からの光を遮蔽する。すなわち、遮光部42は、殺菌灯12からの光がZ方向について床2の反対側に放射されることを抑制する。遮光部41,42によって、殺菌灯11,12から発せられる光の照射範囲をより確実に床2側に限定できる。さらに、万が一、誤動作してヒトがいる状態で殺菌灯11,12が点灯していたとしても、遮光部41,42によって、殺菌灯11,12から発せられる光がヒトに向かうことを抑制できる。なお、遮光部41,42の床2側の面は、殺菌灯11,12からの光を反射しやすくなるよう反射率を高くなるように加工されていてもよい。
【0024】
殺菌灯11,12は、例えば管の内側に蛍光物質が塗布されておらず、かつ、管が石英ガラスのように紫外線を良好に透過する透光性の部材からなる蛍光灯状の光源であるが、これに限られるものでなく、具体的な形態については適宜変更可能である。例えば、当該蛍光灯状の光源は、紫外線を含む光を発する発光モジュールに置換されてもよい。当該発光モジュールは、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような発光素子を有する。当該発光素子が、紫外線を含む光を発する。
【0025】
また、殺菌灯11,12からの光の照射範囲を限定する目的で設けられる構成は、遮光部41,42に限られるものでない。例えば、殺菌灯11,12において光の射出面側に、床2側に向かって傾斜する複数の板状部材で形成されたブラインド状の構造体が設けられてもよい。当該構造体は、複数の板状部材同士の間を殺菌灯11,12からの光が通過することで、通過した光の照射方向がより床2側に限定されやすくなる。また、当該構造体に代えて、焦点が床2側に向けられたレンズのような光学部材によって殺菌灯11,12からの光を床2側に誘導してもよい。また、当該構造体と当該構造部材の両方が利用されてもよい。
【0026】
図3は、トイレ1の機能的構成を示すブロック図である。トイレ1は、制御部50を備える。制御部50は、動作制御部51、タイマー52及び計時部53を含む。動作制御部51は、検知部20によるヒトの検知の有無に基づいて、殺菌灯11,12を制御する回路である。タイマー52は、動作制御部51による殺菌灯11,12の制御に関する所定のタイミングからの経過時間を計測するタイマー回路である。計時部53は、現在時刻を計時し続ける回路である。なお、制御部50に含まれる2つ以上の構成は、1つの回路に統合されていてもよいし、各々独立した回路として設けられていてもよい。制御部50は、例えば殺菌灯11又は殺菌灯12の筐体と一体的に設けられるが、これに限られるものでなく、検知部20の出力を動作制御部51が取得でき、殺菌灯11,12が動作制御部51の制御下で動作できるよう電気的接続または無線通信による制御が成立していればよい。また、図示しないが、殺菌灯11,12、検知部20、制御部50のように動作に電力を必要とする各構成は、図示しない電力線を介して電力を供給される。
【0027】
検知範囲200内にヒトが進入していることが検知部20によって検知されている間、動作制御部51は、殺菌灯11,12を点灯させない。検知範囲200内にヒトが進入している状態が、時間経過によって解消した場合、すなわち、検知範囲200内に進入していたヒトが検知範囲200外に退出したことが検知部20によって検知される。動作制御部51は、検知範囲200内にヒトが進入している状態が解消されたとしてタイマー52のカウントを開始させる。タイマー52によるカウントが第1所定時間を超えた場合、動作制御部51は、殺菌灯11,12を点灯させる。第1所定時間は、殺菌灯11,12が点灯するまでの時間である。
【0028】
殺菌灯11,12の点灯後、動作制御部51は、殺菌灯11,12の点灯を第2所定時間継続させる。第2所定時間は、殺菌灯11,12が点灯する期間である。第2所定時間の計測は、タイマー52が第1所定時間に加えてさらに第2所定時間の期間、カウントを継続することによって行われてもよい。または動作制御部51がタイマー52を用いて第1所定時間、および第2所定時間を管理させてもよい。つまり、動作制御部51は、殺菌灯11,12の点灯を第2所定時間継続させた後、殺菌灯11,12を消灯させるとともに、タイマー52のカウント値はリセットされる。その後、動作制御部51は、再度検知範囲200内にヒトが進入するまで殺菌灯11,12の消灯を継続する。
【0029】
なお、タイマー52によるカウントが第1所定時間内に検知部20が検知範囲200内にヒトの進入を検知した場合、動作制御部51は、カウント値をリセットする。また、動作制御部51は、殺菌灯11,12が点灯中(第2所定時間内)に検知部20が検知範囲200内にヒトの進入したことを検知すると殺菌灯11,12を消灯させ、かつカウント値をリセットする。その後、検知範囲200内にヒトが進入している状態が解消されることでタイマー52のカウントを開始させる。その後にタイマー52によるカウントが第1所定時間以上継続したとき、動作制御部51が殺菌灯11,12を点灯させる点は、上述と同様である。
【0030】
さらに、動作制御部51は、計時部53によって計時される現在時刻に基づいて、殺菌灯11,12を制御してもよい。例えば、動作制御部51は、第1の時刻に殺菌灯11,12を点灯させ、第2の時刻に殺菌灯11,12を点灯させないようにしてもよい。この例においても、検知範囲200内にヒトが進入していることが検知部20によって検知されている間と、検知範囲200内にヒトが進入している状態が解消されたタイミングから第1所定時間が経過するまでの期間は、第1の時刻から第2の時刻までの間であっても、殺菌灯11,12を点灯させない。
【0031】
第1所定時間は、検知範囲200内にヒトが検知されなくなってから、検知範囲200外に退出したヒトがトイレ1から離れるのに十分な時間であることが望ましい。第1所定時間は、設定することができる。例えば、設定時間を10分とすることができるが、これに限られるものでなく、10分より短い時間であってもよいし、10分より長い時間であってもよい。
【0032】
第2所定時間は、殺菌灯11,12から発せられた光が十分に床2を殺菌できる時間以上の時間であることが望ましい。第2所定時間は、第1所定時間と同様に設定することができる。例えば設定時間を5分とすることができるが、これに限られるものでなく、5分より短い時間であってもよいし、5分より長い時間であってもよい。
【0033】
所定時間帯(第1の時刻から第2の時刻までの期間)は、ヒトがトイレ1を利用しない時間帯であることが望ましい。所定時間帯は、例えば午前3時から午前3時30分であるが、これに限られるものでなく、他の時間帯であってもよい。また、所定時間帯において第2所定時間連続して殺菌灯11,12を点灯させることができた場合、動作制御部51は、当該所定時間帯における殺菌が十分完了したものとして扱い、殺菌灯11,12を消灯させるようにしてもよい。なお、所定時間帯が日中の時間帯である場合、太陽光発電による電力を活用しやすくなる。
【0034】
また、動作制御部51は、定期的に殺菌灯11,12を第2所定時間点灯させるようにしてもよい。例えば、動作制御部51は、殺菌灯11,12を所定周期時間毎に第2所定時間点灯させるようにしてもよい。ただし、殺菌灯11,12を所定周期時間毎に第2所定時間点灯させる処理においても検知部20によるヒトの検知の有無に応じた殺菌灯11,12の点灯制御は適用される。また、動作制御部51は、殺菌灯11,12が第2所定時間点灯したことで消灯されたタイミングを起点として、タイマー52に連続消灯時間をカウントさせるようにしてもよい。そして、連続消灯時間が所定の消灯時間以上になった場合、かつ検知部20によるヒトの検知がない場合において動作制御部51は、殺菌灯11,12を第2所定時間点灯させるようにしてもよい。所定周期時間及び所定の消灯時間は、例えば1時間であるが、これに限られるものでなく、1時間より長い時間であってもよいし、1時間より短い時間であってもよい。
【0035】
つまり、いずれの理由で殺菌灯11,12が点灯された場合であっても、動作制御部51は、検知部20によって検知範囲200内にヒトが進入したことを検知すると殺菌灯11,12を消灯させる。その後、検知範囲200内にヒトが進入している状態が解消されることでタイマー52のカウントを開始させる。その後、タイマー52によるカウント値が第1所定時間経過後、動作制御部51が殺菌灯11,12を点灯させる点は、上述と同様である。
【0036】
実施形態の床2が、光触媒でコーティングされた例について説明する。光触媒は、例えば酸化チタンである。酸化チタンは、紫外線が照射されることで酸化還元作用を生じ、床2に接触している細菌、ウイルスその他の病原体を失活させる。また、酸化チタンは、紫外線が照射されることで超親水作用を併せて生じる。これによって床2上に油性の汚れが定着しにくくなることから、床2の清掃がより容易になる。
【0037】
殺菌灯11,12が照射する紫外線の波長については適宜選択可能である。例えば、実施形態において殺菌灯11,12が照射する紫外線は、近紫外線のうちUVC(波長280nm未満)と呼ばれる波長帯の紫外線であってもよい。UVCを用いることで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19:COronaVIrus Disease-19)の原因とされる重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2型(SARS-CoV-2:Severe Acute Respiratory Syndrome COronaVirus-2)の不活化を効果的に行える。紫外線のピーク波長は、210nm 以上280nm以下に含まれることが好ましい。もしくは、紫外線のピーク波長が240nm 以上280nm以下に含まれることがより好ましい。新型コロナウイルス感染症のような特定のウイルスに対して効果があるピーク波長が適宜選択されることが好ましい。
【0038】
実施形態において殺菌灯11,12が照射する紫外線を含む光の波長帯は、後述する床2のコーティングに採用される光触媒に触媒作用を生じさせる波長の光を含む波長帯であってもよい。具体的には、酸化チタンがより励起しやすい351nmをピークとする300nm~400nmの範囲の近紫外線を殺菌灯11,12から照射することで、床2をコーティングする酸化チタンによる光触媒としての作用をより確実に生じさせることができる。なお、床2には、例えば、メラミン樹脂材、硬質セメント(グラサル)等、一般的に洗面所の床材として利用されている素材が採用されてもよい。このような素材に上述の光触媒によるコーティングが施されていることが好ましい。床2の上面がこのような素材である場合、床2による光の反射を抑制しやすくなる。従って、万が一、ヒトがいる状態で殺菌灯11,12が点灯した場合でも、殺菌灯11,12から発せられる光がヒトに向かうことをより確実に抑制できる。
【0039】
また、床2をコーティングする光触媒として、酸化タングステンを採用してもよい。その場合、殺菌灯11,12からの光のうち、酸化タングステンを光触媒として励起させることができる光は、400nm~460nmの可視光波長帯を含む。従って、床2をコーティングする光触媒として酸化タングステンが採用された場合、殺菌灯11,12からの光に当該可視光波長帯を含ませることで、酸化タングステンによる酸化還元作用及び超親水作用を得られる。ただし、この場合でも、殺菌灯11,12からの光には、さらにUVC等の紫外線が含まれることが望ましい。殺菌灯11,12からの光に紫外線が含まれることで、紫外線による殺菌作用と、光触媒の酸化還元作用による殺菌と、の両方による、より確実な殺菌を図れる。
【0040】
以上、実施形態によれば、トイレ1は、便器Tを使用するためにヒトが進入する床2が含まれる照射範囲(例えば、照射範囲110,120)に対して、紫外線を含む光を照射する殺菌灯(例えば、殺菌灯11,12)を備える。これによって、床2を殺菌できる。
【0041】
また、床2が、殺菌灯(例えば、殺菌灯11,12)から照射される光に含まれる波長によって励起される光触媒でコーティングされていることで、床2をより確実に殺菌できる。
【0042】
また、トイレ1は、床2に対するヒトの進入を検知する検知部(例えば、検知部20)と、床2にヒトが進入していない場合に殺菌灯(例えば、殺菌灯11,12)から光を照射させる動作制御部51と、を備える。これによって、当該殺菌灯から光が照射される場合を床2にヒトが進入していない場合に限定できる。従って、当該殺菌灯からの光による床2の殺菌と、当該光がヒトに照射される可能性のより確実な低減とを両立できる。
【0043】
また、検知部(例えば、検知部20)は、検知範囲(例えば、検知範囲200)内の赤外線に基づいてヒトを検知するセンサを含む。これによって、床2に対するヒトの進入をより確実に検知できる。
【0044】
(変形例)
なお、本開示によるトイレの具体的形態は、
図1及び
図2を参照して説明したトイレ1の形態に限られるものでない。以下、トイレ1の一部を変更した変形例について、
図4から
図6を参照して説明する。
【0045】
(変形例1)
図4は、変形例1のトイレ1aの正面図である。トイレ1aのように、殺菌灯11,12は、便器Tに対してX方向に壁3よりも外側に位置してもよい。具体的には、
図4に示す殺菌灯11は、便器Tに対するX方向の位置が、側壁31よりも外側にある。これに伴い、遮光部41も、便器Tに対するX方向の位置が、側壁31よりも外側にある。具体的には、実施形態において一端側が側壁31に当接して他端側が側壁31よりも便器T側に延出していた遮光部41が、変形例1では、一端側の便器Tに対するX方向の位置が側壁31よりも外側に位置し、他端側が側壁31に当接する位置にある。また、
図4に示す殺菌灯12は、便器Tに対するX方向の位置が、側壁32よりも外側にある。これに伴い、遮光部42も、便器Tに対するX方向の位置が、側壁32よりも外側にある。具体的には、実施形態において一端側が側壁32に当接して他端側が側壁32よりも便器T側に延出していた遮光部42が、変形例1では、一端側の便器Tに対するX方向の位置が側壁32よりも外側に位置し、他端側が側壁32に当接する位置にある。
【0046】
以上、特筆した点を除いて、変形例1は、実施形態と同様である。変形例1によれば、殺菌灯11,12から発せられる光の照射範囲をより床2に限定しやすくなる。
【0047】
(変形例2)
図5は、変形例2のトイレ1bの主要構成を示す平面図である。トイレ1bは、実施形態のトイレ1における殺菌灯11,12に代えて殺菌灯13を備える。殺菌灯13は、扉4に取り付けられた殺菌灯である。具体的には、殺菌灯13は、出入り口を閉鎖する回動角度を取る扉4に対して、便器T側に固定されている。図示していないが、検知部20を用いて人の進入を検知することが好ましい。なお、検知部20とは異なる人の進入を検知する手段については、
図7で詳細に説明する。
【0048】
殺菌灯13は、扉4が出入り口を閉鎖する回動角度である場合に点灯して床2に光を照射するよう動作制御部51に制御される。
図5では、このように制御されて点灯した殺菌灯13からの光の照射範囲130を破線で示している。従って、変形例2のトイレ1bは、壁3の内側の床2にヒトが進入していない不使用時に扉4が出入り口を閉鎖する回動角度を取るよう設計される。具体的には、出入り口を開放する扉4の回動角度から出入り口を閉鎖する扉4の回動角度に向かうよう扉4を付勢する構成が設けられる。当該構成は、例えばオイルダンパーで扉4を付勢する図示しないドアクローザであるが、これに限られるものでなく、同様に機能するものであればよい。
【0049】
また、変形例2では、このような扉4をトイレ1bの使用に際して開けられるようにする構成がさらに設けられる。当該構成は例えば扉4を挟んで殺菌灯13の反対側に設けられる図示しないドアノブであるが、これに限られるものでなく、扉4をトイレ1bの使用に際して開けられればよく、他の構成によってもよい。以上、特筆した点を除いて、変形例2は、実施形態と同様である。
【0050】
(変形例3)
図6は、変形例3のトイレ1cの主要構成を示す平面図である。トイレ1cは、実施形態のトイレ1における扉4に代えて扉4cを備える。扉4が、出入り口の開放時にY方向について便器Tの反対側に延出するいわゆる外開きであったのに対し、扉4cは、出入り口の開放時にY方向について便器T側に延出するいわゆる内開きである。
【0051】
扉4cの回動軸は、実施形態の回動軸部5とは平面視点での位置が異なる回動軸部5cになっている。上述の回動軸部5は、X方向の位置が側壁32の位置と同じであったが、回動軸部5cは、X方向の位置が側壁32の内壁面側(側壁31側)にずれている。なお、
図6における角壁6cは、実施形態における角壁6のX方向の延出長と比較した場合に、角壁6cのX方向の延出長が異なる(相対的に短い)。実施形態の扉4と角壁6との間に隙間7が生じるのと同様、出入り口を閉鎖する回動角度の扉4cと角壁6cとの間には、隙間7が生じる。
【0052】
また、トイレ1cは、実施形態のトイレ1における殺菌灯11,12に代えて殺菌灯11,12に代えて殺菌灯14を備える。殺菌灯14は、扉4cに取り付けられた殺菌灯である。具体的には、殺菌灯14は、出入り口を閉鎖する回動角度を取る扉4cに対して、便器Tの反対側に固定されている。
【0053】
殺菌灯14は、扉4cが出入り口を閉鎖する回動角度である場合に点灯して床2に光を照射するよう動作制御部51に制御される。
図5では、このように制御されて点灯した殺菌灯14からの光の照射範囲140を破線で示している。従って、変形例3のトイレ1cは、壁3の内側の床2にヒトが進入していない不使用時に扉4cが出入り口を開放する回動角度を取るよう設計される。具体的には、出入り口を閉鎖する扉4cの回動角度から出入り口を開放する扉4cの回動角度に向かうよう扉4を付勢する構成が設けられる。当該構成は、上述のドアクローザと同じように扉4cを付勢するが、付勢方向が出入り口を閉鎖する扉4cの回動角度から出入り口を開放する扉4cの回動角度に向かう方向である構成であるが、これに限られるものでなく、同様に機能するものであればよい。以上、特筆した点を除いて、変形例3は、実施形態と同様である。
【0054】
なお、
図6及び
図7では検知部20の図示を省略しているが、変形例2及び変形例3でも実施形態と同様に検知部20が設けられている。また、殺菌灯13,14は、配置が殺菌灯11,12と異なるが、光を発するための仕組み(構造等)は、殺菌灯11,12と同様である。
【0055】
なお、ヒトを検知する検知部20の構成例として、上述の実施形態及び変形例では赤外線を利用した人感センサを例示したが、検知部20として利用可能な構成はこれに限られるものでない。例えば、その他の構成として超音波を利用した人感センサなどがあげられる。
【0056】
図7は、扉4のロック機構を利用した検知部20aの構成を示す図である。検知部20aは、回動支持部221、回動部222、回動軸部223及び受け具224を備える。
図7に示す扉4の回動角度は、間に隙間7を生じさせた状態で角壁6とX方向に対向する閉鎖時の回動角度である。
【0057】
回動支持部221は、扉4又は角壁6の一方に固定されている。
図7では、回動支持部221が扉4に固定されている例を示している。回動支持部221は、出入り口を閉鎖する回動角度を取る扉4に対して、便器T側に固定されている。
【0058】
回動部222は、回動軸部223を回動軸として回動支持部221によって回動可能に支持される。回動部222は、ロック時の回動角度と、ロック解除時の回動角度と、を切り替え可能に設けられる。ロック時の回動角度は、長手方向が扉4又は角壁6の他方側に向かってX方向に沿う回動角度である。ロック解除時の回動角度は、例えば、長手方向がZ方向に沿う回動角度である。
図7では、ロック時の回動角度である回動部222を実線で示し、ロック解除時の回動角度である回動部222を破線で示している。
【0059】
受け具224は、扉4又は角壁6の他方に固定されている。ロック時の回動角度である回動部222は、当該他方と受け具224との間に位置する。これによって、回動支持部221が固定された扉4が角壁6に対してY方向に移動不可能、すなわち、回動不可能な状態でロックされる。
図7では、受け具224が角壁6に固定されている例を示している。受け具224は、角壁6に対して、便器T側に固定されている。回動支持部221と受け具224との位置関係は逆でもよい。
【0060】
以上、扉4と角壁6との関係を例として検知部20aを説明したが、扉4は扉4cであってもよい。
【0061】
回動部222がロック時の回動角度である場合とは、すなわち、壁3の内側にヒトが進入している場合である。従って、回動部222の回動角度を検知するセンサを検知部20aに設けることで、壁3の内側にヒトが進入しているかを検知できる。当該センサは、例えば回動軸部223の回動角度を検出するロータリエンコーダと、当該ロータリエンコーダの出力に基づいて回動部222の回動角度がロック時の回動角度であるか判定する回路と、で構成できるが、これに限られるものでなく、回動部222の回動角度を検知できるものであればよい。
【0062】
また、回動部222がロック時の回動角度である場合とは、すなわち、回動部222が扉4又は角壁6の他方と受け具224との間に位置する場合である。従って、回動部222と受け具224とが当接する回動部222が当該他方と受け具224との間に位置するか否かを検知するセンサを検知部20aに設けることで、壁3の内側にヒトが進入しているかを検知できる。当該センサは、例えば当該他方と受け具224との間に位置するか否かに応じて出力が切り替わるフォトセンサであるが、これに限られるものでなく、回動部222の回動角度を検知できるものであればよい。例えば、当該センサは、回動部222と受け具224との当接を検知するものであってもよい。具体例を挙げると、回動部222と受け具224とを導電性の部材とすることで、回動部222と受け具224との導電の有無を検知する回路を当該センサとして利用できる。
【0063】
検知部20aのようにロックの有無で壁3のヒトが内側に進入しているかを検知できる構成を、検知部20と併用してもよい。具体的には、検知部20aが備えるセンサの出力は、動作制御部51に入力される。動作制御部51は、回動部222がロック時の回動角度であることを当該センサの出力が示す場合、検知範囲200内にヒトが検知されるか否かに関わらず、殺菌灯11,12を点灯させない。動作制御部51は、回動部222がロック時の回動角度でないことを当該センサの出力が示す場合、
図3を参照した説明と同様に、検知範囲200内にヒトが検知されるか否かと、第1所定時間、第2所定時間及び所定時間帯に基づいた殺菌灯11,12の制御を行う。すなわち、検知部20aが備えるセンサを利用する場合、動作制御部51は、殺菌灯11,12の照射範囲内にヒトが進入していないことの判定条件として、回動部222がロック時の回動角度でないことと、検知範囲200内にヒトが検知されないことと、の両方が成立することを条件とする。
【0064】
また、
図7に示す検知部20aは回動部222を回動させて扉4のロック状態と非ロック状態とを切り替え可能に設けられているが、検知部20aとして利用可能な扉4のロック機構の具体的態様はこれに限られるものでない。例えば、回動部222に代えて、受け具224に対してX方向に直動する可動部材を設けてもよい。この場合、回動支持部221及び回動軸部223に代えて、当該可動部材を直動可能に支持する支持部が設けられる。また、この構成のセンサは、当該可動部材のX方向の位置に基づいて、ロックが成立しているかを判定可能に設けられる。当該センサは、例えば上述のフォトセンサであってもよいし、支持部と可動部材との間に介在するリニアエンコーダを利用したものであってもよいし、支持部と可動部材との位置関係でON/OFFが切り替わるスイッチであってもよいし、回動部222と受け具224との導電の有無を検知する回路であってもよい。
【0065】
便器Tの周囲を囲う壁3で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉(例えば、扉4,4c)のロック機構の動作を検知するセンサ(例えば、検知部20aのセンサ)を利用することで、殺菌灯からの光がヒトに照射される可能性をより確実に低減できる。
【0066】
また、扉4の回動角度を検知するセンサを、検知部20と併用してもよい。この場合、当該センサの出力は、動作制御部51に入力される。実施形態、変形例1及び変形例3の場合、動作制御部51は、殺菌灯11,12の照射範囲内にヒトが進入していないことの判定条件として、扉4の回動角度が出入り口を開放する回動角度であることと、検知範囲200内にヒトが検知されないことと、の両方が成立することを条件とする。変形例2の場合、動作制御部51は、殺菌灯11,12の照射範囲内にヒトが進入していないことの判定条件として、扉4の回動角度が出入り口を閉鎖する回動角度であることと、検知範囲200内にヒトが検知されないことと、の両方が成立することを条件とする。これらの場合に、さらに上述の検知部20aのセンサを組み合わせてもよい。便器Tの周囲を囲う壁3で形成された個室内外に出入りする出入り口を開閉する扉(例えば、扉4,4c)の回動角度を検知するセンサを利用することで、殺菌灯からの光がヒトに照射される可能性をより確実に低減できる。
【0067】
また、便器Tの便座の蓋の位置を検知するセンサを、検知部20と併用してもよい。この場合、当該センサの出力は、動作制御部51に入力される。動作制御部51は、殺菌灯11,12の照射範囲内にヒトが進入していないことの判定条件として、便器Tの便座の蓋が便座を覆う閉鎖時の位置であることと、検知範囲200内にヒトが検知されないことと、の両方が成立することを条件とする。なお、便器Tの便座の蓋の位置を検知するセンサを利用する場合、ヒトが便座から離れた後に自動的に便座の蓋が便座を覆う閉鎖時の位置に移動する自動機構を備えていることが望ましい。
【0068】
また、便座の蓋が便座を覆う閉鎖時のみ便器T内で水が流れることができるようになっていることが望ましい。これによって、便器T内を流れる水が便器T外の床に散逸することによる床2の汚染をより確実に抑制できる。
【0069】
なお、複数の便器Tが設けられた公衆便所のような部屋の場合、各便器Tを囲う壁3、扉4が個別に設けられる。そして、各便器Tを囲う壁3、扉4の内側で個別に殺菌が可能となるよう、殺菌灯11,12、殺菌灯13又は殺菌灯14のような殺菌灯が設けられる。このような部屋では、当該部屋の入り口の天井に検知部20と同様の構成を設け、当該検知部20がヒトの進入を検知した場合に当該部屋内の全ての殺菌灯がいったん一定時間消灯するようにしてもよい。そして、当該検知部20がヒトの進入を検知せず、かつ、各便器Tを囲う壁3で形成された出入り口を含む検知範囲200内へのヒトの進入を検知する検知部20がヒトの進入を検知しない時間が一定時間以上経過した場合、当該壁3内に光を照射する殺菌灯が点灯を再開するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1,1a,1b,1c トイレ
2 床
3 壁
4,4c 扉
20,20a 検知部
51 動作制御部
52 タイマー
53 計時部
110,120,130,140 照射範囲
T 便器