(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126960
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ハンディタイプ操作機器用カバー
(51)【国際特許分類】
H05K 5/02 20060101AFI20220824BHJP
【FI】
H05K5/02 J
H05K5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024836
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】309013336
【氏名又は名称】日清紡テキスタイル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 朋木
【テーマコード(参考)】
4E360
【Fターム(参考)】
4E360AB42
4E360BA01
4E360BA15
4E360GA53
4E360GB99
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーにおいて、洗浄工程を不要とし、ハンディタイプ操作機器全体を覆うことができ、かつ、良好なスイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性を有するハンディタイプ操作機器用カバーを低コストで提供する。
【解決手段】ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーは、抗菌処理および/または抗ウイルス処理された不織布から成り、防透け指数を80未満とする。不織布は、表生地がスパンレース不織布、裏生地がスパンボンド不織布から成る2層構造であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーであって、前記ハンディタイプ操作機器用カバーは抗菌処理および/または抗ウイルス処理された不織布から成り、防透け指数が80未満であることを特徴とするハンディタイプ操作機器用カバー。
【請求項2】
前記不織布は2層構造であり、表生地がスパンレース不織布、裏生地がスパンボンド不織布であることを特徴とする請求項1に記載のハンディタイプ操作機器用カバー。
【請求項3】
前記ハンディタイプ操作機器用カバーは封筒状であり、開口部側に面ファスナーまたは両面テープを具備することを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のハンディタイプ操作機器用カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
ハンディタイプ操作機器として、特許文献1のような患者が呼出操作をするためのナースコール子機、特許文献2のような介護用ベッドなどベッドの昇降や角度調整に用いられる電動アクチュエータを操作するベッド用リモコン、特許文献3のようなホイストのスイッチボックス等が知られている。
【0003】
このようなハンディタイプ操作機器は操作者によって素手で使用されることがあり、ハンディタイプ操作機器の筐体に汚れや雑菌が付着することが懸念される。
【0004】
特に医療現場で使用されるナースコール子機においては、入院患者の入れ替わりにより、一つのナースコール子機が複数の患者によって使いまわされることがあり、患者によっては、ナースコール子機に直接触れることに抵抗を持たれることがあった。
【0005】
このような問題を解決するために、ナースコール子機などのハンディタイプ操作機器を軟質素材により形成されたカバーで覆う技術が知られている。
【0006】
このように、ナースコール子機などのハンディタイプ操作機器の筐体を軟質素材のカバーで覆い、このカバーを洗浄したり、交換したりすることで、ハンディタイプ操作機器の筐体そのものに汚れや雑菌が付着することを防止することができるようにするとともに、ハンディタイプ操作機器の使いまわしを患者に抵抗を持たせずに実施することができる。
【0007】
しかし、軟質素材により形成されたカバーを使用する場合、導入コストがかかる他、定期的なカバーの洗浄が必要であるため、洗浄作業の工数が大きな負担になるという問題があった。
【0008】
また、軟質素材により形成されたカバーはボタン部分を覆っていないことがあり、汚れや雑菌の付着予防効果も十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008-43579号公報
【特許文献2】特開2002-345903号公報
【特許文献3】特開2001-293046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ナースコール子機、ベッド用リモコン、ホイストのスイッチボックスに類するハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーにおいて、洗浄工程を不要とし、ハンディタイプ操作機器全体を覆うことができ、かつ、良好なスイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性を有するハンディタイプ操作機器用カバーを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ハンディタイプ操作機器用カバーを不織布製とし、かつ、防透け指数を特定の範囲とすることにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成した。
【0012】
本発明は、ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーであって、以下の技術を基礎とするものである。
【0013】
(1)ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーであって、前記ハンディタイプ操作機器用カバーは抗菌処理および/または抗ウイルス処理された不織布から成り、防透け指数が80未満であるハンディタイプ操作機器用カバー。
【0014】
(2)前記不織布は2層構造であり、表生地がスパンレース不織布、裏生地がスパンボンド不織布である(1)のハンディタイプ操作機器用カバー。
【0015】
(3)前記ハンディタイプ操作機器用カバーは封筒状であり、開口部側に面ファスナーまたは両面テープを具備する(1)または(2)のハンディタイプ操作機器用カバー。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーにおいて、洗浄工程を不要とし、ハンディタイプ操作機器全体を覆うことができ、かつ、良好なスイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性を有するハンディタイプ操作機器用カバーを低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の1つの実施形態によるハンディタイプ操作機器用カバーの概略面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、ハンディタイプ操作機器の筐体を覆うハンディタイプ操作機器用カバーであって、前記ハンディタイプ操作機器用カバーは抗菌処理および/または抗ウイルス処理された不織布から成り、防透け指数が80未満であることを特徴とする。
【0019】
ハンディタイプ操作機器用カバーを低コストの不織布製とし、使い捨てで使用することにより、軟質素材により形成されたカバーを使用するときに生じる洗浄工程の工数を削減することができる。
【0020】
また、カバーを抗菌処理および/または抗ウイルス処理された不織布製とすることで、ハンディタイプ操作機器全体を覆うことができ、十分な汚れや雑菌等の付着予防効果を得ることができる。
【0021】
抗菌処理に使用する抗菌剤としては第4級アンモニウム塩系、銀イオン系の公知の抗菌剤を使用することができ、抗ウイルス処理に使用する抗ウイルス剤としてはジデシルジメチルアンモニウムクロライド系、ポリヘキサメチレンビグアナイド系、塩化ベンザルコニウム系の公知の抗ウイルス剤を使用することができる。処理方法としては含侵加工のような方法を採用できる。
【0022】
さらに、不織布製のハンディタイプ操作機器用カバーの防透け指数を80未満とすることにより、操作機器のスイッチ類の視認性が良好となり、スイッチの誤操作を防止することができる。
【0023】
なお本発明において、防透け指数はJIS L 1923 「繊維製品の防透け性評価方法」により算出した数値である。
【0024】
不織布としては、コットン、レーヨン、ポリエステルを素材として成るスパンレース不織布や、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレンを素材として成るスパンボンド不織布を使用することができる。
【0025】
不織布はスパンボンド不織布、スパンレース不織布のいずれかを単独で1層構造として使用してもよいが、2層構造とし、カバーの表側をスパンレース不織布、裏側をスパンボンド不織布とすることが好ましい。
【0026】
カバーの表側をスパンレース不織布とすることにより表面の風合いが向上し、裏側をスパンボンド不織布とすることによりカバーを操作機器に装着する際、操作機器に対する滑りがよくなり装着性がより向上する。
【0027】
また、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルを素材として成るスパンボンド不織布を使用することにより、不織布を貼り合わせる際に融着加工機を使用することができる。
【0028】
融着加工機を使用することでカバーの耐久性が向上し、生産設備の自動化が可能となり生産性が向上する。
【0029】
本発明の不織布製のハンディタイプ操作機器用カバーは操作機器と略同形状としてもよいが、封筒状とすることが生産性の点で好ましい。また、開口側近傍に面ファスナーまたは両面テープを装着し、開口部を折りたたみ、面ファスナーまたは両面テープで止めることによりカバーの脱落を防止できる。
【実施例0030】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0031】
[実施例1~6・比較例1のハンディタイプ操作機器用カバーの製造]
以下の条件で実施例1~6、比較例1のハンディタイプ操作機器用カバーを製造した。
【0032】
(実施例1)
生地:スパンレース不織布(5PRM2030(50%ポリプロピレン、50%レーヨン、30g/m2))の1層構造
防透け指数:70
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:2枚の生地を封筒状に縫製
【0033】
(実施例2)
生地:スパンボンド不織布(50%ポリエチレン、50%ポリエステル、20g/m2)の1層構造
防透け指数:65
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:融着加工機にて2枚の生地を封筒状に融着(融着温度:130℃)
【0034】
(実施例3)
生地:表側、裏側ともスパンレース不織布(5PRM2030(50%ポリプロピレン、50%レーヨン、30g/m2))の2層構造
防透け指数:79
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:2枚の生地を封筒状に縫製
【0035】
(実施例4)
生地:表側、裏側ともスパンボンド不織布(ポリプロピレン、20g/m2)の2層構造
防透け指数:75
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:融着加工機にて2枚の生地を封筒状に融着(融着温度:130℃)
【0036】
(実施例5)
生地:表側がスパンレース不織布(5PRM2030(50%ポリプロピレン、50%レーヨン、30g/m2))、裏側がスパンボンド不織布(ポリプロピレン、20g/m2)の2層構造
防透け指数:70
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:融着加工機にて2枚の生地を封筒状に融着(融着温度:130℃)
【0037】
(実施例6)
生地:表側がスパンレース不織布(5PRM2040(50%ポリプロピレン、50%レーヨン、40g/m2))、裏側がスパンボンド不織布(ポリプロピレン、20g/m2)の2層構造
防透け指数:79
抗菌処理:日華化学株式会社製抗菌・抗ウイルス剤ニッカノンRBで表面処理
製造方法:融着加工機にて2枚の生地を封筒状に融着(融着温度:130℃)
【0038】
(比較例1)
生地:表側がスパンレース不織布(5PRM2050(50%ポリプロピレン、50%レーヨン、50g/m2))、裏側がスパンボンド不織布(ポリプロピレン、20g/m2)の2層構造
防透け指数:85
抗菌処理:無し
製造方法:融着加工機にて2枚の生地を封筒状に融着(融着温度:130℃)
【0039】
得られた実施例1~6、比較例1のハンディタイプ操作機器用カバーについてスイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性を次の評価方法、評価基準により評価した。評価結果を1に示す。
【0040】
<スイッチ類の視認性>
評価方法:目視にて確認
良:スイッチがよく見える
可:スイッチが見えにくいが問題なく使用できる
不可:スイッチが見えない
【0041】
<耐久性>
評価方法:装着後14日(交換する頻度の時間)後の形状変化
良:変化無し
可:タテヨコ厚み長さの形状変化が+10%以下でまだ装着可能なレベル
不可:タテヨコ厚み長さの形状変化が+10%以上
【0042】
<装着性>
評価方法:装着のしやすさ
良:引っ掛かりが無くスムーズに装着できる
可:引っ掛かりがあるが破れずに問題なく装着できる
不可:引っ掛かりがあり装着時に破れるおそれがある
【0043】
<表面の風合い>
評価方法:触感
良:肌触りが良好
可:問題なく使用できるレベル
不可:ざらつきやぬめり感があり不快
【0044】
<抗菌性>
評価方法:黄色ブドウ球菌による抗菌性能(JIS L 1902:2008)
良:抗菌活性値3.0以上
可:抗菌活性値2.2以上3未満
不可:抗菌活性値2.2未満
【0045】
<生産性>
評価方法:生産設備自動化の可否
良:生産設備をすべて自動化できる
可:生産設備を一部自動化できる
不可:生産はすべて手作業
【0046】
【0047】
【0048】
表1、表2より、本発明の条件を満足するハンディタイプ操作機器用カバーが、スイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性が良好であることが見てとれる。
本発明によれば、ハンディタイプ操作機器用カバーにおいて、洗浄工程を不要とし、ハンディタイプ操作機器全体を覆うことができ、かつ、良好なスイッチ類の視認性、耐久性、装着性、表面の風合い、抗菌性、生産性を有するハンディタイプ操作機器用カバーを低コストで提供することができ、きわめて実用的価値の高いものである。