(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126971
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】電池、及び電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20220824BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220824BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20220824BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220824BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M2/26 A
H01M10/0587
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024853
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 匡史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛也
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM03
5H029BJ02
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029CJ22
5H029DJ05
5H029EJ01
5H043AA06
5H043BA19
5H043CA03
5H043CA12
5H043EA02
5H043EA13
5H043HA16E
5H043JA13E
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA20
5H050FA05
5H050GA07
5H050GA09
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】巻回電極体における帯状の電極の厚さを均一にし易くて、容量劣化を抑制し易い電池等を提供すること。
【解決手段】円筒形電池10は、正極11と負極がセパレータを介して巻回された巻回電極体と、正極リード20とを備える。正極11が、正極リード20が接合されたリード接合部37a,38aを含む帯状の正極集電体36を有する。正極11が、正極集電体36の厚さ方向の少なくとも一方側に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられると共に、該一方側に位置する正極リード20上に設けられる一方側第1部分41aと正極集電体36の厚さ方向の一方側面37上に設けられる一方側第2部分41bとを含む正極合剤層45を有する。
【選択図】
図3b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1極と第2極がセパレータを介して巻回された巻回電極体と、
第1極リードと、を備え、
前記第1極が、前記第1極リードが接合されたリード接合部を含む帯状の第1極集電体、及び前記第1極集電体の厚さ方向の少なくとも一方側に長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられ、前記一方側に位置する前記第1極リード上に設けられる一方側第1部分と前記第1極集電体の前記厚さ方向の一方側面上に設けられる一方側第2部分とを含む第1極合剤層を有する、電池。
【請求項2】
前記巻回電極体を収容する有底筒状の外装缶と、
前記外装缶の開口を塞ぐ封口体と、を備え、
前記第1極リードが、前記一方側面における前記長手方向の両端部以外の箇所に接合されている、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記第1極集電体の前記一方側に位置する部分に関し、
前記第1極合剤層の厚さが、前記第1極リードの厚さよりも厚く、
前記一方側第1部分の密度が、前記一方側第2部分の密度に略等しく、
前記一方側第1部分の厚さと前記第1極リードの厚さを足した厚さが、前記一方側第2部分の厚さに略等しくなっている、請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記第1極リードにおける第1極側の部分が、第1端部と第2端部に二股に分岐していて、前記第1端部が前記第1極集電体の前記一方側面に接合されると共に、前記第2端部が前記第1極集電体の前記厚さ方向の他方側面に接合され、
前記第1極合剤層が、前記第1極集電体の前記一方側に設けられる一方側合剤層と、前記第1極集電体の前記厚さ方向の他方側に設けられる他方側合剤層とを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
帯状の第1極集電体の少なくとも一方側面に第1極リードを接合し、
その後、ペースト状の第1極合剤スラリーを、前記第1極集電体の厚さ方向の一方側に、前記第1極リード上に設けられる一方側第1部分と前記一方側面上に設けられる一方側第2部分とを含むと共に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に塗布する、電池の製造方法。
【請求項6】
2つの前記第1極リードを用意し、
前記第1極合剤スラリーを塗布する前に、前記2つの第1極リードが前記一方側面の幅方向に間隔をおいて対向している状態で、前記2つの第1極リードを前記一方側面に接合し、
前記一方側第1部分は、前記2つの第1極リードのうちの一方の前記第1極リード上に設けられた前記第1極合剤スラリーの一部分と、前記2つの第1極リードのうちの他方の前記第1極リード上に設けられた前記第1極合剤スラリーの他の一部分とを含み、
前記第1極合剤スラリーを塗布した後に、前記第1極合剤スラリーが塗布された前記第1極集電体を、前記2つの第1極リードを分離するように前記幅方向における前記2つの第1極リードの間を前記長手方向に略平行にスリットする、請求項5に記載の電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻回電極体を備える電池に関する。また、本開示は、巻回電極体を備える電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻回電極体を備える電池としては、特許文献1に記載されている円筒形電池がある。この円筒形電池は、正極と負極がセパレータを介して巻回された巻回電極体、電解質、巻回電極体及び電解質を収容する有底筒状の外装缶、及び外装缶の開口部を封止する封口体を備える。正極は、帯状の正極集電体と、その両側面に設けられた正極合剤層を有する。正極合剤層は、正極集電体にペースト状の正極合剤スラリーを間欠塗布した後に圧縮することで正極集電体上に設けられる。正極の一方側面には、長手方向の中央部に正極合剤層が存在しない非塗布部が設けられる。非塗布部には、正極リードが接合される。正極リードの正極側の端部には、短絡防止のために正極リードを被覆する絶縁テープが貼付される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記円筒形電池に限らず、電極に合剤層を設けない非塗布部を設けて、その非塗布部にリードを接合する電池においては、リードを接合したり、リードを被覆する絶縁テープを貼付する非塗布部周辺領域の厚さが、他の領域よりも厚くなり易く、リードや絶縁テープを配置する箇所が、その厚み分だけ、他の箇所より圧縮された状態になる。よって、長期サイクル後に局所的なひずみを生じ、電池膨れや容量劣化の原因となることがある。
【0005】
また、特に、円筒形電池の場合、電極の厚さが不均一になって、巻回電極体における平面視の形状が真円形状から大きくずれると、巻回電極体を外装缶に円滑に挿入しにくくなる。また、電極の厚さが不均一になって、巻回電極体に均一に張力がかからない状態になると、電池完成後の充放電による正負極の反応の不均一性が増し、容量劣化が進行し易くなる。
【0006】
そこで、本開示の目的は、巻回電極体における帯状の電極の厚さを均一にし易くて、容量劣化を抑制し易い電池、及びそのような電池を製造する電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示に係る電池は、第1極と第2極がセパレータを介して巻回された巻回電極体と、第1極リードと、を備え、第1極が、第1極リードが接合されたリード接合部を含む帯状の第1極集電体、及び第1極集電体の厚さ方向の少なくとも一方側に長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられ、該一方側に位置する第1極リード上に設けられる第1部分と第1極集電体の厚さ方向の一方側面上に設けられる第2部分とを含む第1極合剤層を有する。
【0008】
また、本開示に係る電池の製造方法は、帯状の第1極集電体の少なくとも一方側面に第1極リードを接合し、その後、ペースト状の第1極合剤スラリーを、第1極集電体の厚さ方向の一方側に、第1極リード上に設けられる第1部分と一方側面上に設けられる第2部分とを含むと共に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に塗布する。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る電池によれば、巻回電極体における帯状の電極の厚さを均一にし易くて、容量劣化を抑制し易い。また、本開示に係る電池の製造方法によれば、巻回電極体における帯状の電極の厚さを均一にし易くて、容量劣化を抑制し易い電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施形態に係る円筒形電池の軸方向の断面図である。
【
図2】上記円筒形電池の巻回電極体の斜視図である。
【
図3a】正極リードが接合された帯状の正極を厚さ方向の一方側から見たときの平面図である。
【
図3b】正極リードが接合された帯状の正極を、正極リードを通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。
【
図4a】負極リードが接合された帯状の負極を厚さ方向の一方側から見たときの平面図である。
【
図4b】負極リードが接合された帯状の負極を、負極リードを通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。
【
図5】正極リードが接合された正極の製造途中の状態を厚さ方向の一方側から見たときの側面図である。
【
図6】正極リードが接合された正極の製造途中の状態を幅方向の一方側から見た時の平面図である。
【
図7】正極集電体を分離するときのスリット位置を説明する図である。
【
図8】正極に接合された正極リードに保護テープを巻き付けた状態を示す図である。
【
図9】製造した正極リードが接合された正極を、正極リードを通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。
【
図10a】厚さ方向の一方側から見た比較例の正極の側面図である。
【
図10b】幅方向の一方側から見た比較例の正極の平面図である。
【
図11】変形例の負極における
図4bに対応する断面図である。
【
図12】変形例の正極における
図3bに対応する端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示に係る電池の実施形態について詳細に説明する。なお、本開示の電池は、第1極と第2極がセパレータを介して巻回された巻回電極体(巻回形の電極体)を有する電池であれば如何なる電池でもよい。本開示の電池は、一次電池でもよく、二次電池でもよい。また、本開示の電池は、円筒形電池でもよく、角形電池でもよく、パウチ形の電池でもよい。また、本開示の電池は、水系電解質を用いた電池でもよく、非水系電解質を用いた電池でもよい。以下では、一実施形態である円筒形電池10として、非水電解質を用いた非水電解質二次電池(リチウムイオン電池)を例示するが、本開示の円筒形電池はこれに限定されない。
【0012】
以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて新たな実施形態を構築することは当初から想定されている。以下の実施形態では、図面において同一構成に同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、複数の図面には、模式図が含まれ、異なる図間において、各部材における、縦、横、高さ等の寸法比は、必ずしも一致しない。本明細書では、説明の便宜上、電池ケース15の軸方向(高さ方向)の封口体17側を「上」とし、軸方向の外装缶16の底側を「下」とする。以下で説明される構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素であり、必須の構成要素ではない。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態に係る円筒形電池10の軸方向の断面図であり、
図2は、円筒形電池10の巻回電極体14の斜視図である。
図1に示すように、円筒形電池10は、巻回電極体(巻回形の電極体)14と、非水電解質(図示せず)と、巻回電極体14及び非水電解質を収容する電池ケース15とを備える。巻回電極体14は、第1極の一例としての正極11と、第2極の一例としての負極12と、正極11及び負極12の間に介在するセパレータ13を含み、正極11と負極12がセパレータ13を介して巻回された巻回構造を有する。電池ケース15は、有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口を塞ぐ封口体17で構成される。また、円筒形電池10は、外装缶16と封口体17との間に配置される樹脂製のガスケット28を備える。
【0014】
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質塩とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、アミド類、およびこれらの2種以上の混合溶媒等を用いてもよい。非水溶媒は、これら溶媒の水素原子の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有してもよい。なお、非水電解質は液体電解質に限定されず、ゲル状ポリマー等を用いた固体電解質であってもよい。電解質塩には、LiPF6等のリチウム塩が使用される。
【0015】
図2に示すように、巻回電極体14は、長尺状の正極11と、長尺状の負極12と、長尺状の2枚のセパレータ13とを有する。また、巻回電極体14は、正極11に接合された第1極リードの一例としての正極リード20と、負極12に接合された負極リード21を有する。負極12は、リチウムの析出を抑制するために、正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、正極11より長手方向及び幅方向(短手方向)に長く形成される。また、2枚のセパレータ13は、少なくとも正極11よりも一回り大きな寸法で形成され、例えば正極11を挟むように配置される。
【0016】
正極11は、第1極集電体の一例としての正極集電体と、正極集電体の両面に形成された第1極合剤層の一例としての正極合剤層とを有する。正極集電体には、アルミニウム、アルミニウム合金など、正極11の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。正極合剤層は、正極活物質、導電剤、及び結着剤を含む。正極11は、例えば正極集電体上に正極活物質、導電剤、及び結着剤等を含む第1極合剤スラリーの一例としての正極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して正極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0017】
正極活物質は、リチウム含有金属複合酸化物を主成分として構成される。リチウム含有金属複合酸化物に含有される金属元素としては、Ni、Co、Mn、Al、B、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Cu、Zn、Ga、Sr、Zr、Nb、In、Sn、Ta、W等が挙げられる。好ましいリチウム含有金属複合酸化物の一例は、Ni、Co、Mn、Alの少なくとも1種を含有する複合酸化物である。
【0018】
正極合剤層に含まれる導電剤としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。正極合剤層に含まれる結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩等のセルロース誘導体、ポリエチレンオキシド(PEO)などが併用されてもよい。
【0019】
負極12は、負極集電体と、集電体の両面に形成された負極合剤層とを有する。負極集電体には、銅、銅合金など、負極12の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。負極合剤層は、負極活物質、及び結着剤を含む。負極12は、例えば負極集電体上に負極活物質、及び結着剤等を含む負極合剤スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた後、圧縮して負極合剤層を集電体の両面に形成することにより作製できる。
【0020】
負極活物質には、一般的に、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出する炭素材料が用いられる。好ましい炭素材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛等の天然黒鉛、塊状人造黒鉛、黒鉛化メソフェーズカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛などの黒鉛である。負極合剤層には、負極活物質として、ケイ素(Si)を含有するSi材料が含まれていてもよい。また、負極活物質には、Si以外のリチウムと合金化する金属、当該金属を含有する合金、当該金属を含有する化合物等が用いられてもよい。
【0021】
負極合剤層に含まれる結着剤には、正極11の場合と同様に、フッ素樹脂、PAN、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等を用いてもよいが、好ましくはスチレン-ブタジエンゴム(SBR)又はその変性体を用いる。負極合剤層には、例えばSBR等に加えて、CMC又はその塩、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコールなどが含まれていてもよい。
【0022】
セパレータ13には、イオン透過性及び絶縁性を有する多孔性シートが用いられる。多孔性シートの具体例としては、微多孔薄膜、織布、不織布等が挙げられる。セパレータ13の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、セルロースなどが好ましい。セパレータ13は、単層構造、積層構造のいずれでもよい。セパレータ13の表面には、耐熱層などが形成されてもよい。なお、負極12は巻回電極体14の巻き始め端を構成してもよいが、一般的にはセパレータ13が負極12の巻き始め側端を超えて延出し、セパレータ13の巻き始め側端が巻回電極体14の巻き始め端となる。
【0023】
図1及び
図2に示す例では、正極リード20は、正極集電体における巻回方向の中央部等の中間部に電気的に接続され、負極リード21は、負極集電体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続される。しかし、負極リードは、負極集電体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続されてもよい。又は、巻回電極体が2つの負極リードを有して、一方の負極リードが、負極集電体における巻回方向の巻き始め端部に電気的に接続され、他方の負極リードが、負極集電体における巻回方向の巻き終わり端部に電気的に接続されてもよい。又は、負極集電体における巻回方向の巻き終わり側端部を外装缶の内面に当接させることで、負極と外装缶を電気的に接続してもよい。
【0024】
図1に示すように、円筒形電池10は、巻回電極体14の上側に配置される絶縁板18と、巻回電極体14の下側に配置される絶縁板19を更に有する。
図1に示す例では、正極11に取り付けられた正極リード20が絶縁板18の貫通孔を通って封口体17側に延び、負極12に取り付けられた負極リード21が絶縁板19の外側を通って、外装缶16の底68側に延びる。正極リード20は封口体17の底板である端子板23の下面に溶接等で接続され、端子板23と電気的に接続された封口体17の天板である封口板27が正極端子となる。また、負極リード21は外装缶16の底68の内面に溶接等で接続され、外装缶16が負極端子となる。
【0025】
外装缶16は、有底筒状部を有する金属製容器である。外装缶16と封口体17との間が環状のガスケット28で密封されることにより、電池ケース15の内部空間が密閉される。また、ガスケット28は、外装缶16と封口体17とで挟持される挟持部32を含み、封口体17を外装缶16に対して絶縁する。つまり、ガスケット28は、電池内部の気密性を保つためのシール材の役割と、外装缶16と封口体17との短絡を防止する絶縁材としての役割を有する。
【0026】
外装缶16は、円筒外周面の高さ方向の一部に環状の溝入れ部35を有する。溝入れ部35は、例えば、円筒外周面の一部を、径方向内側にスピニング加工して径方向内方側に窪ませることで形成できる。外装缶16は、溝入れ部35を含む有底筒状部30と、環状の肩部33を有する。有底筒状部30は、巻回電極体14と非水電解質とを収容し、肩部33は、有底筒状部30の開口側の端部から径方向の内方側に折り曲げられて該内方側に延びる。肩部33は、外装缶16の上端部を内側に折り曲げて封口体17の周縁部31にかしめる際に形成される。封口体17は、そのかしめによって肩部33と溝入れ部35にガスケット28を介して挟持されて外装缶16に固定される。
【0027】
図3aは、正極リード20が接合された帯状の正極11を厚さ方向の一方側から見たときの平面図であり、
図3bは、正極リード20が接合された帯状の正極11を、正極リード20を通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。なお、
図3a及び
図3bにおいて、紙面の左側が巻き始め側である。また、
図3aにおいて斜線で示す領域は、正極合剤層45が形成されている領域である。
【0028】
図3aに示すように、正極リード20は、正極11から正極11の幅方向に延在している。
図3bに示すように、正極リード20における正極11側の部分は、第1端部20aと第2端部20bに二股に分岐している。第1端部20aは、正極集電体36の一方側面37のリード接合部37aにスポット溶接等で接合され、第2端部20bは、正極集電体36の他方側面38のリード接合部38aにスポット溶接等で接合されている。正極リード20は、正極集電体36の長手方向の両端部以外の箇所に接合されている。
【0029】
図3aに示すように、第1端部20aにおいて正極11から突出している突出部と、第2端部20bにおいて正極11から突出している突出部には、絶縁材が塗布されるか、又は、その2つの突出部が突き合わされた状態で絶縁性の保護テープ39が全周に亘って巻かれ、2つの突出部が密着した状態となる。絶縁材又は保護テープ39は、主に、正極リード20が外装缶16(
図1参照)に電気的に接続することを防止する。
【0030】
図3bに示すように、正極11は、正極集電体36の厚さ方向の一方側に長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられる一方側正極合剤層41と、正極集電体36の厚さ方向の他方側に長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられる他方側正極合剤層42とを有する。一方側正極合剤層41と、他方側正極合剤層42は、正極合剤層45を構成する。一方側正極合剤層41は、正極リード20の第1端部20a上に設けられる一方側第1部分41aと、正極集電体36の厚さ方向の一方側面37上に設けられる一方側第2部分41bとを含む。また、他方側正極合剤層42は、正極リード20の第2端部20b上に設けられる他方側第1部分42aと、正極集電体36の厚さ方向の他方側面38上に設けられる他方側第2部分42bとを含む。一方側第1部分41aと他方側第1部分42aとは、第1部分47を構成し、一方側第2部分41bと他方側第2部分42bとは、第2部分48を構成する。
【0031】
一方側正極合剤層41の厚さは、正極リード20の第1端部20aの厚さよりも厚くなっている。また、一方側正極合剤層41の一方側第1部分41aの密度は、一方側第2部分41bの密度に略等しくなっている。また、一方側第1部分41aの厚さと正極リード20の第1端部20aの厚さを足した厚さが、一方側第2部分41bの厚さに略等しくなっている。換言すると、正極集電体36の厚さ方向の一方側に位置する部分に関し、正極合剤層45の厚さは、正極リード20の厚さよりも厚くなっている。また、正極集電体36の厚さ方向の一方側に位置する部分に関し、第1部分47の密度が、第2部分48の密度に略等しくなっている。また、正極集電体36の厚さ方向の一方側に位置する部分に関し、第1部分47の厚さと正極リード20の厚さを足した厚さが、第2部分48の厚さに略等しくなっている。
【0032】
また、同様に、他方側正極合剤層42の厚さは、正極リード20の第2端部20bの厚さよりも厚くなっている。また、他方側正極合剤層42の他方側第1部分42aの密度は、他方側第2部分42bの密度に略等しくなっている。また、他方側第1部分42aの厚さと正極リード20の第2端部20bの厚さを足した厚さが、他方側第2部分42bの厚さに略等しくなっている。換言すると、正極集電体36の厚さ方向の他方側に位置する部分に関し、正極合剤層45の厚さは、正極リード20の厚さよりも厚くなっている。また、正極集電体36の厚さ方向の他方側に位置する部分に関し、第1部分47の密度が、第2部分48の密度に略等しくなっている。また、正極集電体36の厚さ方向の他方側に位置する部分に関し、第1部分47の厚さと正極リード20の厚さを足した厚さが、第2部分48の厚さに略等しくなっている。
【0033】
図4aは、負極リード21が接合された帯状の負極12を厚さ方向の一方側から見たときの平面図であり、
図4bは、負極リード21が接合された帯状の負極12を、負極リード21を通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。
図4a及び
図4bにおいて、紙面の左側が巻き始め側である。
【0034】
図4a及び
図4bに示すように、負極12は、長尺状の負極集電体51と、その両面に長手方向に部分的かつ選択的に設けられた負極合剤層52とを有する。負極50は、長手方向の巻き終わり側の端部に負極合剤層52が塗布されなくて負極集電体51が幅方向の全域に亘って露出する非塗布部57を厚さ方向の一方側面46と他方側面の両方に有する。一方側面46の非塗布部57には、負極リード21がスポット溶接等によって接合される。負極リード21は、負極集電体51の幅方向に延在している。
【0035】
次に、正極リード20が接合された正極11の製造方法について
図5~
図9を用いて説明する。なお、
図5は、正極リード20が接合された正極11の製造途中の状態を厚さ方向の一方側から見たときの側面図であり、
図6は、正極リード20が接合された正極11の製造途中の状態を長手方向の一方側から見た時の平面図である。また、
図7は、正極11を分割するときのスリット位置を説明する図であり、
図8は、正極11に接合された正極リード20に保護テープ39を巻き付けた状態を示す図である。また、
図9は、製造した正極リード20が接合された正極11を、正極リード20を通過すると共に厚さ方向と長手方向を含む平面で切断したときの断面図である。
【0036】
先ず、
図5及び
図6を参照して、スリットを行う前の正極集電体36に正極リード20を溶接する。正極リード20は、上述の二股の形状のものを2つ用い、一方の正極リード20の第1及び第2端部20a,20b、及び他方の正極リード20の第1及び第2端部20a,20bを、正極集電体36の上下表裏に溶接する。一方の正極リード20と、他方の正極リード20は、間隔をおいて正極集電体36の幅方向に対向する。
【0037】
次に、正極集電体36の厚さ方向の両側に厚みが均一となるように正極合剤層を形成する。詳しくは、長尺の正極集電体36を、図示しない駆動ロールによって巻き出すことによって、正極合剤スラリー吐出装置の吐出部(例えば、吐出ノズルで構成される)の下を、長手方向の一方側に一定速度で搬送する。この状態で、吐出部から正極集電体36に向けて正極合剤スラリーを吐出する。
【0038】
ここで、正極合剤スラリーを正極集電体36の一方側面37(他方側面)に吐出するときの正極合剤スラリーの単位時間当たりの量を、正極合剤スラリーを正極リード20に吐出するときの正極合剤スラリーの単位時間当たりの量よりも多くする。このようにして、正極集電体36に正極合剤層45(
図7参照)を形成した後の正極11の厚さが、正極リード20が存在する長手方向の位置と、正極リード20が存在しない長手方向の位置とで略同一になるようにする。この正極合剤スラリーの塗布を、正極集電体36の一方側と他方側の両側で行う。
【0039】
その後、正極合剤スラリーの乾燥及び圧縮を行い、その後、
図7に点線で示す位置、すなわち、正極集電体36の幅方向の中心を長手方向に沿ってスリットする。続いて、
図8に示すように、正極リード20において正極11から突出する部分に保護テープ39又は絶縁材を配置すると、
図9に示す、正極リード20が接合された正極11を製造できる。
【0040】
簡潔にまとめると、正極11は、次のように製造する。先ず、帯状の正極集電体36の少なくとも一方側面37に正極リード20を接合する。その後、ペースト状の正極合剤スラリーを、正極集電体36の厚さ方向の一方側に、正極リード20上に設けられる一方側第1部分41aと一方側面37上に設けられる一方側第2部分41bとを含むと共に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に塗布する。なお、正極リード20が二股形状の場合には、この作業を正極集電体36の一方側と同様に他方側でも実行する。
【0041】
また、
図5~
図9で説明した実施形態の場合には、先ず、2つの正極リード20を用意する。そして、正極合剤スラリーを塗布する前に、2つの正極リード20が一方側面37の幅方向に間隔をおいて対向している状態で、2つの正極リード20を一方側面37に接合する。なお、正極リード20が二股形状の場合には、2つの正極リード20を一方側面37と同様に他方側面38にも接合する。
【0042】
その後、正極合剤スラリーを、正極集電体36の厚さ方向の両側に長手方向に延在するように連続的かつ一体に塗布する。その塗布の後、一方側第1部分41aは、2つの正極リード20のうちの一方の正極リード20上に設けられた正極合剤スラリーの一部分と、2つの正極リード20のうちの他方の正極リード20上に設けられた正極合剤スラリーの他の一部分とを含む。正極リード20が二股形状の場合には、同様に、他方側第1部分42aは、2つの正極リード20のうちの一方の正極リード20上に設けられた正極合剤スラリーの一部分と、2つの正極リード20のうちの他方の正極リード20上に設けられた正極合剤スラリーの他の一部分とを含む。正極合剤スラリーを塗布した後に、正極合剤スラリーが塗布された正極集電体36を、2つの正極リード20を分離するように幅方向における2つの正極リード20の間を長手方向に略平行にスリットする。
【0043】
[真円度測定、及び充放電サイクル特性測定]
本発明者は、比較例の円筒形電池と、実施例の円筒形電池で、巻回電極体の真円度の測定と、充放電サイクル特性の測定を行った。測定は、比較例の円筒形電池及び実施例の円筒形電池とも、5つのサンプルに対して行った。
【0044】
<比較例の電極>
正負極集電体に合剤層を間欠塗布した正負極板を作成し、その非塗布部に集電リードを溶接した。比較例の負極としては、
図4a、
図4bを用いて説明した非塗布部を巻き終わり側端部に形成したものを用い、負極リードをその非塗布部に接合した。また、比較例の正極としては、
図10a、及び
図10bに示す正極を用いた。
【0045】
図10aは、厚さ方向の一方側から見た比較例の正極211の側面図であり、
図10bは、幅方向の一方側から見た比較例の正極211の平面図である。
図10a及び
図10bに示すように、比較例の正極211は、厚さ方向両側における長手方向の両端部以外の部分に非塗布部288を設けた。そして、一方側面237の非塗布部288のみに正極リード220を接合した。そして、正極リード220及び両側の非塗布部288上に保護テープ277,278を取り付けた。また、正極合剤層245は、LiCoO
2(コバルト酸リチウム):AB(アセチレンブラック):PVDF=100:1:1にNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を適量加えたものを用いて形成した。比較例の負極としては、
図4a、
図4bに示す負極を用いた。負極合剤層は、天然黒鉛:SBR(スチレンブタジエンゴム):CMC(カルボキシメチルセルロース)=100:1:1に水を適量加えたものを用いて形成した。
【0046】
<実施例の電極>
実施例の負極としては、比較例の負極と同一のものを用いた。また、実施例の正極としては、
図3a、
図3bを用いて説明した正極を用いた。また、正極は、
図5~
図9を用いて説明した手順で製造した。正極合剤層の材料と、負極合剤層の材料は、比較例の正負極と同一のものを用いた。なお、比較例の負極、及び実施例の負極の両方で、負極集電体の巻き終わり側の端部に非塗布部を設けて、その非塗布部に負極リードを接合した構造を採用した理由は、巻回電極体において負極リードが接合されている負極部分が、最外周に位置することになるため、巻回電極体の真円度に殆ど影響を与えることがないためである。
【0047】
<比較例の円筒形電池>
作製した比較例の正負極とポリエチレン製のセパレータを渦巻状に巻回することにより、巻回電極体を作製した。作製した巻回電極体の上下に絶縁板をそれぞれ配置し、巻回電極体を外装体に収容した後に、負極リードを外装体の底部に溶接した。外装体の開口部にプレスで溝入部を形成し、ガスケットを溝入部の上部に収容、正極リードに封口体を溶接して、110℃環境下で150分間熱処理を行って熱処理を行い、外装体の内部に非水電解液を注液した。非水電界液はエチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比でEC:EMC:DMC=3:3:4となるように混合した混合溶媒に、LiPF6を1モル/Lとなるように添加し作製した。その後、外装体の開口部を、ガスケットを介して封口体をかしめるように封口して、円筒形非水電解質二次電池を作製した。
【0048】
<実施例の円筒形電池>
比較例の円筒形電池との比較で、比較例の正負極を実施例の正負極に取り換えた点のみが異なるようにして、円筒形非水電解質二次電池を作製した。
【0049】
[測定方法]
<巻回電極体の真円度測定>
比較例の円筒形電池、及び実施例の円筒形電池に関し、出来上がった巻回電極体を、インジケーターを用いて最大径、最小径を測定した。
【0050】
<充放電サイクル特性測定>
比較例の円筒形電池、及び実施例の円筒形電池に関し、出来上がった電池を、電源と電子負荷から成る装置にて充放電サイクルを行った。充電条件と放電条件は、次に示すものを採用した。試験は、各電池に関し、容量が、初期容量から60%の容量まで劣化したときのサイクル数を測定することで行った。
充電: CC-CV; 0.5C-4.2V(1/50Ccut)
放電: CC; 1.0C to 2.5Vcut
【0051】
[測定結果]
巻回電極体の真円度測定に関し、次の表1の結果を得た。なお、表1の、単位は、mmである。
【表1】
【0052】
また、充放電サイクル特性測定に関し、次の表2の結果を得た。
【表2】
【0053】
なお、表1で最大-最小の項目は、最大径と最小径の差を示し、σは、標準偏差を示している。表1に示すように、比較例の巻回電極体では、最大径と最小径の差の平均が0.4mmとなっているのに対し、実施例の巻回電極体では、最大径と最小径の差の平均が0.1mmになっており、実施例の巻回電極体の方が、比較例の巻回電極体よりも真円度が格段に高いことを確認できた。また、表2に示すように、比較例の電池のサイクル数の平均が1020となっているのに対し、実施例の電池のサイクル数の平均は1500となっている。このことから、実施例の電池を作製すれば、比較例の電池に対して寿命を1.5倍以上格段に延ばすことができることを確認できた。本発明者は、この理由を、実施例の電池では、巻回電極体の真円度が高くなっているため、巻回電極体内の場所によらず、巻回電極体内に均一な張力がかかり易くなって、電池完成後の充放電による正負極の反応の局所的な不均一性を抑制できたためであると推察している。
【0054】
[本開示の円筒形電池の必須の構成と、その作用効果]
以上、本開示の円筒形電池10は、正極(第1極)11と負極12(第2極)がセパレータ13を介して巻回された巻回電極体14と、正極リード(第1極リード)20とを備える。また、正極11が、正極リード20が接合されたリード接合部37a,38aを含む帯状の正極集電体36を有する。また、正極11が、正極集電体36の厚さ方向の少なくとも一方側に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に設けられると共に、該一方側に位置する正極リード20上に設けられる一方側第1部分41aと正極集電体36の厚さ方向の一方側面37上に設けられる一方側第2部分41bとを含む正極合剤層45(一方側正極合剤層41及び他方側正極合剤層42)を有する。
【0055】
第1極に合剤層を設けない非塗布部を設けて、その非塗布部に第1極リードを接合した場合、
図10a、
図10bに示すように、短絡防止のために、非塗布部に接合された第1極リード上に絶縁テープを配置しなければならない。よって、第1極の長手方向において、第1極リードが位置する箇所の厚さが、第1極リードが位置しない箇所の厚さよりも厚くなり易く、帯状の第1極の厚さをその長手方向位置によらず均一にし難い。
【0056】
これに対し、本開示によれば、正極合剤層45が、少なくとも一方側において正極リード20上に設けられる部分を含むように、長手方向に延在すると共に連続的かつ一体に設けられるので、帯状の正極11の厚さをその長手方向位置によらず均一にし易い。よって、巻回電極体14に局所的な歪みが生じ難く、電池完成後の充放電による正極11及び負極12の局所的な反応の不均一性を抑制でき、容量劣化を抑制できる。また、正極リード20上に設けられる正極合剤層45の一方側第1部分41aを用いた発電が可能になるので、電池容量を大きくできる。
【0057】
また、本開示の電池の製造方法は、帯状の正極集電体(第1極集電体)36の少なくとも一方側面37に正極リード20を接合し、その後、ペースト状の正極スラリー(第1極合剤スラリー)を、正極集電体36の厚さ方向の一方側に、正極リード20上に設けられる一方側第1部分41aと一方側面37上に設けられる一方側第2部分41bとを含むと共に、長手方向に延在するように連続的かつ一体に塗布する。
【0058】
本開示によれば、正極11及び負極12の局所的な反応の不均一性を抑制でき、容量劣化を抑制できる円筒形電池10を製造できる。
【0059】
[採用すると好ましい円筒形電池の構成と、その作用効果]
また、円筒形電池10は、巻回電極体14を収容する有底筒状の外装缶16と、外装缶16の開口を塞ぐ封口体17とを備えてもよい。また、正極リード20が、一方側面37における長手方向の両端部以外の箇所に接合されていてもよい。
【0060】
円筒形電池の場合、電極の厚さが不均一になって、巻回電極体における平面視の形状が真円形状から大きくずれると、巻回電極体を外装缶に円滑に挿入しにくくなる。また、電極の厚さが不均一になって、巻回電極体に均一に張力がかからない状態になると、特に、電池完成後の充放電による正負極の反応の不均一性が顕著なものとなり、容量劣化が進行し易い。
【0061】
これに対し、上記の構成の円筒形電池10によれば、正極11の厚さを長手方向の位置に拠らず一定に近づけ易くて、巻回電極体14を真円に近づけ易い。よって、巻回電極体14を外装缶16に円滑に挿入し易く、充放電に基づく容量劣化も大きく抑制できる。
【0062】
また、正極集電体36の上記一方側に位置する部分に関し、正極合剤層45の厚さが、正極リード20の厚さよりも厚く、一方側第1部分41aの密度が、一方側第2部分41bの密度に略等しくてもよい。そして、正極集電体36の上記一方側に位置する部分に関し、一方側第1部分41aの厚さと正極リード20の厚さを足した厚さが、一方側第2部分41bの厚さに略等しくなっていてもよい。
【0063】
上記の構成によれば、正極11の厚さがその長手方向位置に拠らず略一定となる。したがって、円筒形電池10の巻回電極体14を更に真円に近づけ易くなるので、巻回電極体14を外装缶16に更に円滑に挿入し易く、充放電に基づく容量劣化の抑制効果も顕著なものにできる。
【0064】
また、正極リード20における正極11側の部分が、第1端部20aと第2端部20bに二股に分岐していて、第1端部20aが正極集電体36の一方側面37に接合されると共に、第2端部20bが正極集電体36の厚さ方向の他方側面38に接合されてもよい。また、正極合剤層45が、正極集電体36の一方側に設けられる一方側正極合剤層41と、正極集電体36の厚さ方向の他方側に設けられる他方側正極合剤層42とを有してもよい。
【0065】
本開示の電池の場合、第1極リード上に合剤層を形成する構造上、第1極リードの厚さを合剤層において第1極集電体上に設けられる第2部分の厚さよりも薄くした方が第1極の厚さを一定の厚さに近づけ易くて好ましい。よって、第1極リードの厚さが薄くなり易く、第1極リードの剛性が低くなり易い。
【0066】
これに対し、上記の構成によれば、正極合剤層45を、正極集電体36の厚さ方向の両側に設ける。また、正極リード20における正極11側の部分が、第1端部20aと第2端部20bに二股に分岐していて、第1端部20aが正極集電体36の一方側面37に接合され、第2端部20bが他方側面38に接合される。よって、円筒形電池10の容量を大きくできるだけでなく、正極合剤層45よりも薄い正極リード20を使用している中で、正極リード20としての体積をある程度保持する事により、内部抵抗の低下も抑制できる。また、正極リード20の正極11側の剛性を上げることもできるので、正極リード20の損傷も抑制できる。
【0067】
また、本開示の電池の製造方法において、2つの正極リード20を用意してもよい。また、正極合剤スラリーを塗布する前に、2つの正極リード20が一方側面37の幅方向に間隔をおいて対向している状態で、2つの正極リード20を一方側面37に接合してもよい。また、一方側第1部分41aは、2つの正極リードのうちの一方の正極リード20上に設けられた正極合剤スラリーの一部分と、2つの正極リード20のうちの他方の正極リード上に設けられた正極合剤スラリーの他の一部分とを含んでもよい。また、正極合剤スラリーを塗布した後に、正極合剤スラリーが塗布された正極集電体36を、2つの正極リード20を分離するように幅方向における2つの正極リード20の間を長手方向に略平行にスリットしてもよい。
【0068】
上記の構成によれば、正極集電体に1つの正極リードを接合した後に、正極合剤層を塗布する方法との比較で、2倍の正極11を製造することができ、円筒形電池10の量産性を向上させることができる。
【0069】
なお、本開示は、上記実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項およびその均等な範囲において種々の改良や変更が可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態では、第1極が、正極11である場合について説明した。しかし、第1極は、負極でもよい。また、電池が円筒形電池10である場合について説明した。しかし、電池は、偏平形の巻回電極体を備える角形電池や、偏平形の巻回電極体を備えるパウチ形電池でもよい。
【0071】
また、第1極が正極11であって、正極リード20上に正極合剤層45の一部を設ける一方、負極リード21上には、負極合剤層52を設けない場合について説明した。しかし、
図11、すなわち、変形例の負極112における
図4bに対応する断面図に示すように、負極リード121上に負極合剤層152が存在する構成でもよく、正極11と負極112の両方とも、正極リード20,負極リード121上に正極合剤層45,負極合剤層152の一部が存在する構成でもよい。
【0072】
また、正極リード及び負極リードの少なくとも一方上に合剤層を形成する場合において、その正極リード及び負極リードの少なくとも一方は、電極の長手方向の両端部以外の箇所に接合されてもよく、電極の長手方向の端部に接合されてもよい。また、
図12、すなわち、変形例の正極111における
図3bに対応する断面図に示すように、正極リード(負極リードでもよい)120は、二股構造でなくてもよく、正極集電体(負極集電体でもよい)145の一方側面137のみに接合されてもよい。また、本開示では、合剤層は、電極の厚さ方向の一方側のみに形成されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 円筒形電池、 11,111 正極、 12,112 負極、 13 セパレータ、 14 巻回電極体、 15 電池ケース、 16 外装缶、 17 封口体、 20 正極リード、 20a 第1端部、 20b 第2端部、 21,121 負極リード、 36 正極集電体、 37,137 一方側面、 37a,38a リード接合部、 38 他方側面、 39 保護テープ、 41 一方側正極合剤層、 41a 一方側第1部分、 41b 一方側第2部分、 42 他方側正極合剤層、 42a 他方側第1部分、 42b 他方側第2部分、 45 正極合剤層、 47 第1部分、 48 第2部分、 50 負極、 51 負極集電体、 52,152 負極合剤層。