(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126976
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】接合材、積層体及び電子機器
(51)【国際特許分類】
C08L 33/04 20060101AFI20220824BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220824BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C08L33/04
B32B27/30 A
C08L93/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024864
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】古園 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】高原 直己
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 遼
(72)【発明者】
【氏名】河内 史彦
(72)【発明者】
【氏名】ギジェルモ フェルナンデス
(72)【発明者】
【氏名】石川 栄作
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AK25B
4F100AK42A
4F100AK49A
4F100AT00A
4F100BA02
4F100CA02B
4F100CA16B
4F100EH46
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JK07
4F100JK07B
4F100JK12
4F100JL08B
4F100YY00B
4J002AF022
4J002BG041
4J002BG051
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】基材と接合材の積層体の接合材として使用した場合に基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつその積層体の耐屈曲性を向上させることができる接合材等を提供すること。
【解決手段】25℃において0.2GPa以上0.8GPaの貯蔵弾性率を有し且つ25μm未満の厚さを有する接合材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃において0.2GPa以上0.8GPa未満の貯蔵弾性率を有し且つ25μm未満の厚さを有する接合材。
【請求項2】
25℃における貯蔵弾性率が0.6GPa以下である請求項1に記載の接合材。
【請求項3】
25℃における貯蔵弾性率が0.4GPa以上である請求項1又は2に記載の接合材。
【請求項4】
20μm以下の厚さを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の接合材。
【請求項5】
7μm以上の厚さを有する請求項1~4のいずれか一項に記載の接合材。
【請求項6】
脂環式(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーの重合体と粘着性付与剤とを含み、前記モノマー中の前記脂環式(メタ)アクリルモノマーの含有率が40質量%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の接合材。
【請求項7】
前記重合体の前記モノマーが水酸基含有(メタ)アクリルモノマーをさらに含む、請求項6に記載の接合材。
【請求項8】
前記粘着性付与剤がロジン誘導体である、請求項6又は7に記載の接合材。
【請求項9】
基材と、
前記基材の一面に設けられる接合材とを備え、
前記接合材が、請求項1~8のいずれか一項に記載の接合材で構成される、積層体。
【請求項10】
折曲げ可能なシートを備え、前記シートが、表示パネルと、カバーウィンドウとを有する電子機器の前記カバーウィンドウに貼り付けるために用いられる、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
折曲げ可能なシートを備える電子機器であって、
前記シートが、
表示パネルと、
前記表示パネルに対向するように設けられるカバーウィンドウと、
前記カバーウィンドウのうち前記表示パネルと反対側の表面に貼り付けられる積層体とを有し、
前記積層体が請求項9に記載の積層体で構成され、
前記積層体の前記接合材が前記カバーウィンドウに接合されている、電子機器。
【請求項12】
前記カバーウィンドウがガラス基材で構成されている、請求項11に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合材、積層体及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電子機器の表示パネル(ディスプレイ)としては、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子や液晶表示素子などが知られている。近年、このような表示パネルとして、屈曲可能な表示パネルが提案されている。このような表示パネルを電子機器に適用する場合、表示パネルに対向する位置に設けられるカバーウィンドウとして、屈曲を可能とするために薄型のガラス板が用いられることがある。しかし、カバーウィンドウが薄型であるとカバーウィンドウの剛性が低下し、カバーウィンドウの衝撃耐性が低下することがある。そのため、薄型のカバーウィンドウの表面に、薄型のカバーウィンドウに接合される接合材とプラスチック製の基材とを含む積層体を貼り付けることが提案されている。例えば下記非特許文献1には、折曲げ可能なスマートフォンとして知られるGalaxy Z Flipが開示されており、このスマートフォンにおいては、30μm相当の超薄型ガラス板に、接着剤層とポリエチレンテレフタレート製基材とからなる積層体が貼り付けられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Samsung Display Introduces Foldable Display with Easily Bendable,Ultra-thin Glass”、2020年2月19日、[2021年1月18日検索]、インターネット<URL:https://news.samsung.com/us/samsung-utg-glass-foldable-display-easily-bendable-ultra-thin-glass/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の積層体は以下に示す課題を有していた。
【0005】
すなわち、上記特許文献1に記載の積層体は、耐屈曲性を向上させることができるものの、積層体における基材表面の硬度の点で改善の余地を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、基材と接合材の積層体の接合材として使用した場合に基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつその積層体の耐屈曲性を向上させることができる接合材、積層体及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため種々の検討を行った。まず、ガラス板上に接着剤層と基材とからなる積層体を貼り付けた場合、近年は、積層体の折り曲げによる周辺部材へのダメージを低減する観点から、接合材の貯蔵弾性率をできるだけ低くするべきであることが指摘されていた。これは、接合材の貯蔵弾性率を低くすることで、その接合材の両側にある基材及びガラス板における歪みが低減されるためである。そのため、本発明者らは、接合材の貯蔵弾性率については低く保持したまま接合材の厚さを小さくしてみたところ、積層体の基材の表面硬度がわずかながら改善することに気づいた。しかし、それでも基材の表面硬度はまだ不十分であった。そこで、本発明者らは、さらに鋭意研究を重ねた結果、意外なことに、接合材の厚さについては小さくしつつ、接合材の貯蔵弾性率を従来よりも大きい特定の範囲とすることで、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の一側面は、25℃において0.2GPa以上0.8GPa未満の貯蔵弾性率を有し且つ25μm未満の厚さを有する接合材である。
【0009】
本発明の接合材によれば、基材と接合材の積層体の接合材として使用した場合に、基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつその積層体の耐屈曲性を向上させることができる。
【0010】
上記接合材においては、25℃における貯蔵弾性率が0.6GPa以下であることが好ましい。
【0011】
この場合、接合材と基材との積層体の耐屈曲性をより向上させることができる。
【0012】
上記接合材においては、25℃における貯蔵弾性率が0.4GPa以上であることが好ましい。
【0013】
この場合、基材との積層体の基材の表面に対してより優れた硬度を付与できる。
【0014】
上記接合材は、20μm以下の厚さを有することが好ましい。
【0015】
この場合、接合材と基材との積層体の耐屈曲性をより向上させることができる。
【0016】
上記接合材は、7μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0017】
この場合、接合材と基材との積層体の耐屈曲性をより向上させることができる。
【0018】
上記接合材は、例えば脂環式(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーの重合体と粘着性付与剤とを含み、前記モノマー中の前記脂環式(メタ)アクリルモノマーの含有率が40質量%以上であってもよい。
【0019】
上記接合材においては、前記重合体の前記モノマーが水酸基含有(メタ)アクリルモノマーをさらに含んでもよい。
【0020】
この場合、ガラス基材に対する接合材の接合性を向上させることができるとともに、接合材の耐熱性を向上させることができ、接合材の高温環境下における接着信頼性をより向上させることができる。
【0021】
上記接合材において、前記粘着性付与剤は例えばロジン誘導体であってもよい。
【0022】
本発明の別の一側面は、基材と、前記基材の一面に設けられる接合材とを備え、前記接合材が、上述した接合材で構成される、積層体である。
【0023】
この積層体によれば、基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつ耐屈曲性を向上させることができる。
【0024】
本発明のさらに別の一側面は、折曲げ可能なシートを備え、前記シートが、表示パネルと、前記表示パネルに対向するように設けられるカバーウィンドウとを有する電子機器の前記カバーウィンドウに貼り付けるために用いられる積層体である。
【0025】
この積層体は、接合材を電子機器のシートにおけるカバーウィンドウに接合させることによって積層体をカバーウィンドウに貼り付けると、カバーウィンドウを保護することができる。また、積層体は、基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつ耐屈曲性を向上させることができる。このため、電子機器において、積層体をシートのカバーウィンドウに貼り付けて使用すると、シートが繰り返し折り曲げて使用されても、シートの折曲げ部分において、接合材と基材との間の剥離、積層体におけるバックリング(座屈)及びクラックの発生が抑制される。このため、シートの折曲げ部における視認性の悪化を抑制できる。また、積層体においては、基材表面の硬度が優れるため、電子機器において、積層体をシートのカバーウィンドウに貼り付けて使用すると、基材表面に傷が付きにくくなる。このため、傷による光散乱が抑制され、シートにおいて、光散乱による視認性の悪化も抑制できる。
【0026】
本発明のさらにまた別の一側面は、折曲げ可能なシートを備える電子機器であって、前記シートが、表示パネルと、前記表示パネルに対向するように設けられるカバーウィンドウと、前記カバーウィンドウのうち前記表示パネルと反対側の表面に貼り付けられる積層体とを有し、前記積層体が上述した積層体で構成され、前記積層体の前記接合材が前記カバーウィンドウに接合されている、電子機器である。
【0027】
この電子機器によれば、積層体の接合材がカバーウィンドウに接合された状態で積層体がカバーウィンドウに貼り付けられているため、カバーウィンドウが積層体によって保護される。また、積層体が、基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつ耐屈曲性を向上させることができる。このため、電子機器において、シートが繰り返し折り曲げて使用されても、シートの折曲げ部分において、接合材と基材との間の剥離、積層体におけるバックリング(座屈)及びクラックの発生が抑制される。このため、シートの折曲げ部における視認性の悪化を抑制できる。また、積層体においては、基材表面の硬度が優れるため、電子機器において、基材表面に傷が付きにくくなる。このため、傷による光散乱が抑制され、シートにおいて、光散乱による視認性の悪化も抑制できる。
【0028】
上記電子機器においては、前記カバーウィンドウがガラス基材で構成されていてもよい。
【0029】
この電子機器によれば、積層体において、カバーウィンドウに積層体の接合材が接合されているため、シートが繰り返し折り曲げて使用され、カバーウィンドウを構成するガラス基材が破損しても、ガラス基材の飛散が抑制される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、基材と接合材の積層体の接合材として使用した場合に基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつその積層体の耐屈曲性を向上させることができる接合材、積層体及び電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の電子機器の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0033】
<積層体>
まず、本発明の積層体について
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【0034】
図1に示すように、積層体100は、基材10と、基材10の表面11に設けられる接合材20とを備えている。接合材20は、25℃において0.2GPa以上0.8GPaの貯蔵弾性率を有し且つ25μm未満の厚さを有する。
【0035】
積層体100によれば、基材10の表面11に対して優れた硬度を付与でき、かつ耐屈曲性を向上させることができる。
【0036】
以下、基材10及び接合材20についてより詳細に説明する。
【0037】
(基材)
基材10は、接合材20を支持するものであれば特に限定されるものではない。基材10としては、例えばポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリウレタン樹脂などが挙げられる。ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリエチレンナフタレート(PEN)などが挙げられる。特に、透明性に優れる点から、カラーレス化したポリイミド樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0038】
基材10の厚さは特に制限されるものではないが、基材10の表面を傷付きにくくする観点からは、10μm以上であることが好ましい。但し、基材10を折り曲げやすくする観点からは、100μm以下であることが好ましく、75μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。
【0039】
(接合材)
接合材20は、25℃において0.2GPa以上0.8GPa未満の貯蔵弾性率を有し且つ25μm未満の厚さを有する。この場合、25℃における貯蔵弾性率(以下、単に「貯蔵弾性率」という)が0.2GPa未満である場合に比べて、積層体100における基材10の表面11の硬度をより向上させることができる。また、貯蔵弾性率が0.8GPa以上である場合に比べて、積層体100の耐屈曲性をより向上させることができる。さらに、接合材20の厚さが25μm以上である場合に比べて、基材10の表面硬度をより向上させることができ且つ積層体100の耐屈曲性をより向上させることができる。
【0040】
接合材20の貯蔵弾性率は、積層体100の耐屈曲性をより向上させる観点からは、0.7GPa以下であることが好ましく、0.6GPa以下であることがより好ましい。
【0041】
但し、接合材20の貯蔵弾性率は、基材10の表面11の硬度をより向上させる観点からは、0.3GPa以上であることが好ましく、0.4GPa以上であることがより好ましく、0.5GPa以上であることが特に好ましい。
【0042】
接合材20の厚さは、積層体100の耐屈曲性をより向上させる観点からは、20μm以下であることが好ましく、18μm以下であることがより好ましく、16μm以下であることが特に好ましい。
【0043】
但し、接合材20の厚さは、積層体100の耐屈曲性をより向上させる観点からは、7μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。
【0044】
接合材20は、主ポリマー及び添加剤を含む組成物、又はその組成物の架橋体で構成される。
【0045】
主ポリマーは、脂環式(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーの重合体で構成される。
【0046】
脂環式(メタ)アクリルモノマーは、脂環基を含むアルキル基を有するアクリルモノマーである。脂環式(メタ)アクリルモノマーの具体例としては、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、及び2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0047】
モノマー中の脂環式(メタ)アクリルモノマーの含有率は、40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。但し、上記モノマー中の脂環式(メタ)アクリルモノマーの含有率は、90質量%以下であることが好ましく、80質量%以下であることがより好ましい。
【0048】
上記モノマーは、脂環式(メタ)アクリルモノマー以外の(メタ)アクリルモノマー、すなわち、非脂環式(メタ)アクリルモノマーをさらに含んでいてもよい。この場合、接合材20にタック性を付与するとともに柔軟性を付与することができる。このような非脂環式(メタ)アクリルモノマーの例としては、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有アクリレート;及び、4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0049】
上記モノマーが水酸基含有(メタ)アクリルモノマーをさらに含む場合、ガラス基材に対する接合材20の接合性を向上させることができるとともに、接合材20の耐熱性を向上させることができ、接合材20の高温環境下における接着信頼性をより向上させることができる。
【0050】
上記モノマーは、上記アクリルモノマーに加えて、必要に応じて、非アクリルモノマー(例えばN-ビニルピロリドン)をさらに含んでいてもよい。
【0051】
添加剤は、粘着性付与剤を含む。粘着性付与剤は、基材10に対する接合性を向上させるとともに、接合材20の貯蔵弾性率を調整するために使用されるものである。
【0052】
粘着性付与樹脂の具体例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環式脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ロジン類が好ましい。ロジン類としては、淡色化を可能とするロジン誘導体が好ましい。この場合、積層体100を、電子機器のシートのカバーウィンドウに貼り付けて使用すると、表示パネルからの光が積層体100を通過しても、表示パネルの本来の色に基づく画像を視認することができる。
【0053】
添加剤は、必要に応じてさらに架橋剤及び触媒等を含んでいてもよい。
【0054】
添加剤が架橋剤を含む場合、高温(例えば85℃以上)の環境下における接合材20の接着信頼性を確保することができる。
【0055】
架橋剤の具体例としては、脂環式エポキシ系架橋剤及びイソシアネート系架橋剤が挙げられる。
【0056】
脂環式エポキシ系架橋剤の具体例としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなどが挙げられる。
【0057】
イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。これらの中でも、HDIが好ましく、HDI類としては、ビウレット、イソシアヌレート、アダクト及びアロファネートなどが挙げられる。この場合、高温あるいは厳しい気候状況などの環境による変色を防止することができる。
【0058】
触媒は、イソシアネート系架橋剤の反応を促進するためのウレタン化触媒に使用されるものである。
【0059】
このような触媒の具体例としては、金属塩触媒及びアミン化合物が挙げられるが、触媒は、これらに限定されるものではない。金属塩触媒の具体例としては、有機スズ等が挙げられる。アミン化合物の具体例としては、トリエチレンジアミン(TEDA)、N-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、トリエチルアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,3,5-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロトリアジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N-メチルジシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノ)-エチル-ピペラジン、トリブチルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン、ヘプタメチルテトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノシクロヘキシルアミン、ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、トリス(3-ジメチルアミノ)プロピルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン(DBU)、及び、その酸ブロック誘導体が挙げられる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0060】
<電子機器>
次に、本発明の電子機器の一実施形態について
図2を参照しながら説明する。
図2は、本発明の電子機器の一実施形態を示す断面図である。
【0061】
図2に示すように、電子機器200は、折曲げ可能なシート(以下、「フォルダブルシート」という)210を備えている。フォルダブルシート210は、表示パネル220と、偏光板230と、カバーウィンドウ240と、積層体100とをこの順に有している。このため、積層体100は、フォルダブルシート210の最外層として、カバーウィンドウ240のうち表示パネル220と反対側の表面に貼り付けられている。また、カバーウィンドウ240は、表示パネル220に対して偏光板230を介して対向するように設けられている。そして、積層体100の接合材20がカバーウィンドウ240に接合されている。なお、図示しないが、表示パネル220、偏光板230、及びカバーウィンドウ240は粘着剤によって接合されている。また、図示しないが、電子機器200は通常、ハウジングを備えている。
【0062】
この電子機器200によれば、フォルダブルシート210の最外層としての積層体100の接合材20がカバーウィンドウ240に接合された状態で積層体100がカバーウィンドウ240に貼り付けられている。このため、カバーウィンドウ240が積層体100によって保護される。また、積層体100が、基材10の表面11に対して優れた硬度を付与でき、かつ耐屈曲性を向上させることができる。このため、電子機器200において、フォルダブルシート210が繰り返し折り曲げて使用されても、フォルダブルシート210の折曲げ部Fにおいて、接合材20と基材10との間の剥離、積層体100におけるバックリング(座屈)及びクラックの発生が抑制される。このため、フォルダブルシート210の折曲げ部Fにおける視認性の悪化を抑制できる。また、積層体100においては、基材10の表面11の硬度が優れるため、電子機器200において、基材10の表面11に傷が付きにくくなる。このため、傷による光散乱が抑制され、フォルダブルシート210において、光散乱による視認性の悪化も抑制できる。
【0063】
表示パネル220の具体例としては、折曲げ可能な有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ及び液晶ディスプレイが挙げられる。
【0064】
カバーウィンドウ240は、ガラス基材、又はプラスチック基材(例えばポリイミド基材)であってもよい。カバーウィンドウ240がガラス基材であっても、カバーウィンドウ240には積層体100が貼り付けられているため、フォルダブルシート210が繰り返し折り曲げられ、カバーウィンドウ240が破損したとしても、カバーウィンドウ240の飛散が抑制される。
【0065】
カバーウィンドウ240の厚さは特に制限されるものではないが、フォルダブルシート210の屈曲性を向上させる観点からは、100μm以下であることが好ましい。
【0066】
但し、カバーウィンドウ240の厚さは、フォルダブルシート210の繰り返し屈曲によるカバーウィンドウ240の破損を抑制する観点からは、15μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。
【0067】
カバーウィンドウ240として、ガラス基材を用いる場合には、積層体100の接合材20に含まれる主ポリマーを形成するモノマーは水酸基含有(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。この場合、カバーウィンドウ240に対する接合材20の接合性を向上させることができるとともに、接合材20の耐熱性を向上させることができ、接合材20の高温環境下における接着信頼性をより向上させることができる。このため、電子機器200が高温環境下で使用されても、積層体100がカバーウィンドウ240から剥離しにくくなる。
【0068】
なお、フォルダブルシート210は、表示パネル220の裏面側に、表示パネル220側から順次、緩衝層250、第1金属層260及び第2金属層270をさらに有していてもよい。第2金属層270は例えば銅で構成される。また、図示しないが、表示パネル220、緩衝層250、第1金属層260、及び第2金属層270は互いに粘着剤によって接合されている。また、フォルダブルシート210は、偏光板230とカバーウィンドウ240との間に樹脂基材をさらに含んでいてもよい。この場合、カバーウィンドウ240がガラス基材であっても、樹脂基材によってカバーウィンドウ240が破損により飛散することが抑制される。
【0069】
電子機器200としては、携帯電話及び電子ペーパーなどが挙げられる。
【0070】
以下、本発明を、実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0072】
<接合材形成用塗工液の形成>
以下のようにして接合材形成用塗工液A~Qを形成した。
【0073】
まず、表1に示すモノマーを、表1に示す割合(単位:質量%)で混合して主ポリマー形成用のモノマーを調製し、このモノマー全質量が45質量部となるように、酢酸エチルとトルエンを4:1で調整した溶媒に希釈し、モノマー全質量100質量部に対して、0.8質量部の脂肪族系ジアシルパーオキサイド(商品名「パーロイルL」、日本油脂社製)を加えて、主ポリマー形成用のモノマーを重合させることによって主ポリマーを得た。なお、得られた主ポリマーの重量平均分子量は、表1に示されるA~IおよびL~Qは350,000、Jは340,000、Kは380,000であった。重量平均分子量は、以下の条件によるゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、標準ポリスチレンの検量線に基づく換算値として測定された。
装置:東ソー株式会社製 HLC-8320GPC
使用溶媒:THF
カラム:TSKgel Super Multipore HZ-M ×3
カラム温度:25℃
流量:1.0mL/分
表1に示されるモノマーとしては以下のモノマーを使用した。
<モノマー>
(脂環式(メタ)アクリルモノマー)
・ジシクロペンテニルアクリレート(商品名「FA-513AS」、昭和電工マテリアルズ株式会社製)
(非脂環式(メタ)アクリルモノマー)
・BA:n-ブチルアクリレート(株式会社日本触媒製)
・EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(株式会社日本触媒製)
・LA:ラウリルアクリレート(株式会社日本触媒製)
・GMA:グリシジルメタアクリレート
・HEMA:2-ヒドロキシエチルメタアクリレート(株式会社日本触媒製)
(非アクリルモノマー)
・NVP:N-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製)
【0074】
次に、前述で得られた主ポリマー溶液中に、主ポリマー100質量部に対して、架橋剤、粘着性付与剤及び触媒を、表1に示す配合割合(単位:質量部)で配合されるように加えた。こうして接合材形成用塗工液A~Qを得た。なお、主ポリマーに添加される架橋剤、粘着性付与剤及び触媒としては、以下の材料を使用した。
(架橋剤)
・脂環式エポキシ系架橋剤:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名「セロキサイド2021P(CEL-2021P)」、株式会社ダイセル製)
・イソシアネート系架橋剤:(商品名「AE-700」、旭化成ケミカルズ株式会社製)
(粘着性付与剤)
・ロジン誘導体1:商品名「KE-311」、荒川化学工業株式会社製
・ロジン誘導体2:商品名「KE-100」、荒川化学工業株式会社製
・ロジン誘導体3:商品名「KE-359」、荒川化学工業株式会社製
・ロジン誘導体4:商品名「SE10」、ハリマ化成株式会社製
・テルペン樹脂:商品名「YSレジンTO105」、ヤスハラケミカル株式会社製
・スチレン系樹脂:商品名「FTR-8100」、三井化学株式会社製
(触媒)
商品名「KS-1200A1」、共同薬品株式会社製
【0075】
(実施例1~24及び比較例1~14)
上記ようにして得られた塗工液A~Qを、表2~7に示す材料からなる厚さ50μmの基材の一面に塗布して塗膜を形成した。そして、塗膜を加熱により乾燥して基材の一面上に接合材を形成し、積層体を得た。
【0076】
なお、上記の基材としては、以下の材料を使用した。
(基材)
PET:ポリエチレンテレフタレート(東レ株式会社製)
CPI:透明ポリイミド樹脂(コーロン社製)
【0077】
(3)接合材の貯蔵弾性率の測定
上記のようにして得られた積層体における接合材の貯蔵弾性率を測定するために、測定用のサンプルを以下のようにして用意した。
【0078】
まず、厚さ700μmのガラス基板の一面に、2液性エポキシ樹脂(商品名「2082C」、スリーボンド社製)からなる接着剤を塗布した後、積層体を、基材をガラス基板側に向けた状態で貼り付けた。このとき、接着剤の厚さは10μm以下となるようにした。
【0079】
そして、ナノインデンター(製品名「TI980 トライボインデンター」、ブルカー株式会社製)を用いて接合材の貯蔵弾性率を測定した。
【0080】
具体的には、ナノインデンターの圧子の先端を接合材の表面に当ててから押し込んだ状態で貯蔵弾性率の測定を行った。貯蔵弾性率の測定は、接合材の表面上の10点について行い、これらの10点の測定値の平均値を貯蔵弾性率の値とした。結果を表2~7に示す。なお、測定条件は以下の通りとした。
(測定条件)
圧子:三角錐型圧子(バーコビッチ、先端:ダイヤモンド)
測定モード:nanoDMA
押込み深さ:800nm±200nm
印加振幅:1.5nm±0.5nm
印加周波数:200Hz
測定温度:25℃
測定点間の距離:20μm以上
【0081】
<耐屈曲性の評価>
実施例1~24及び比較例1~14の積層体について屈曲試験を行い、積層体の耐屈曲性を評価した。
【0082】
屈曲試験は以下のようにして行った。
まず積層体の接合材の上に、厚さ50μmの基材(実施例1~13及び比較例1~8についてはPETからなる基材、実施例14~24及び比較例9~14についてはCPIからなる基材)を、ハンドローラを用いて貼り付けて、10mm×50mmの寸法を有する評価用サンプルを用意した。そして、この評価用サンプルを、折曲げ部における曲率半径が2mmとなるように繰り返し20万回折り曲げ、その後の評価用サンプルの状態を観察した。そして、下記基準に基づいて積層体の耐屈曲性を評価した。結果を表2~7に示す。なお、表2~7において、「P」は接合材と基材との間で剥離が見られたこと、「B」は積層体においてバックリングが見られたこと、「C」は積層体においてクラックが見られたことを表す。
(評価基準)
OK:バックリング、剥離及びクラックのいずれも見られない
NG:バックリング、剥離及びクラックの少なくとも1つが見られる
【0083】
<基材表面の硬度の評価>
実施例1~24及び比較例1~14の積層体について、ASTM D3363-05に従って基材表面の鉛筆硬度を測定し、基材表面の硬度を評価した。
【0084】
基材表面の鉛筆硬度の測定は以下のようにして行った。
まず積層体を、厚さ1.1mmのガラス基板の上に載せた。このとき、積層体の接合材がガラス基板に接触するようにし、ハンドローラを用いて貼りつけた。一方、鉛筆(先端長:5mm)を用意した。そして、鉛筆の先端を基材の表面に当て、鉛筆を基材の表面に対して45°となるように傾けた状態で往復移動させた。このとき、測定条件は下記の通りとした。こうして、鉛筆の硬度を代えて同様の操作を繰り返し、表面に傷跡が残らない最も硬い鉛筆の硬度を基材の鉛筆硬度とした。結果を表2~7に示す。
(測定条件)
鉛筆の移動スピード:30mm/分
印加荷重:750g重量
スクラッチ長(鉛筆の移動量):15mm
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0085】
表2~7に示す結果より、実施例1~24ではいずれも、基材表面の鉛筆硬度が4Bよりも高い(硬い)という結果を示し、かつ積層体においてバックリング、剥離及びクラックのいずれも見られなかった。一方、比較例1~14では、基材表面の硬度が4B若しくはそれより低い(柔らかい)という結果を示すか、又は、積層体においてバックリング若しくは剥離が見られた。
【0086】
従って、本発明の接合材により、基材と接合材の積層体の接合材として使用した場合に基材の表面に対して優れた硬度を付与でき、かつその積層体の耐屈曲性を向上させることができることが確認された。