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特開2022-126983加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126983
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20220824BHJP
   G01P 21/00 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
G01P21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024875
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】518018986
【氏名又は名称】三菱重工エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】川内 章央
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 耕作
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA02
5H161BB17
5H161DD50
5H161FF07
(57)【要約】
【課題】位置を精度良く特定することができる加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】加速度監視装置は、軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得する取得部と、軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形を記憶する記憶部と、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する監視部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得する取得部と、
前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形を記憶する記憶部と、
前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する監視部と
を備える加速度監視装置。
【請求項2】
前記加速度値は、前記基準加速度波形が含む所定のピーク値に対応するピーク値である
請求項1に記載の加速度監視装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記基準加速度波形を、前記軌道上の複数の走行レーン毎に複数記憶し、
前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記走行レーン毎の各前記基準加速度波形に対応させた各加速度波形である各前記非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各前記基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで前記走行レーンを特定する走行レーン特定部をさらに備え、
前記監視部は、特定された前記走行レーンの前記基準加速度波形に対応するように前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮した前記非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する
請求項1または2に記載の加速度監視装置。
【請求項4】
前記車両は、車体と、台車と、前記車体と前記台車間に設けられた緩衝装置とを備えるものであり、
前記計測加速度波形は、前記車体に取り付けられた第1加速度センサで計測された第1計測加速度波形と、前記台車に取り付けられた第2加速度センサで計測された第2計測加速度波形とを含み、
前記基準加速度波形は、前記第1加速度センサに対応する前記走行レーン毎の第1基準加速度波形と、前記第2加速度センサに対応する前記走行レーン毎の第2基準加速度波形と含み、
前記走行レーン特定部は、前記第1計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記走行レーン毎の各前記第1基準加速度波形に対応させた各前記非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各前記第1基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで前記走行レーンを特定する
請求項3に記載の加速度監視装置。
【請求項5】
前記監視部は、さらに、第1の前記車両で計測された前記計測加速度波形に対応する前記非線形伸縮計測加速度波形の所定の区間毎の前記加速度値が前記区間毎の所定の閾値を超える場合、第2の前記車両で計測された前記計測加速度波形に対応する前記非線形伸縮計測加速度波形の前記区間毎の前記加速度値と前記区間毎の閾値との比較結果に基づき、前記第1の車両に異常があるのか、または、前記軌道に異常があるのかを判定する
請求項1から4のいずれか1項に記載の加速度監視装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得し、
時間軸を非線形伸縮することで前記基準加速度波形に対応させられた前記計測加速度波形以外の前記計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超える場合、前記位置特定情報に基づいて前記閾値を超えた加速度値の発生位置を特定する位置特定部を
さらに備える請求項1から4のいずれか1項に記載の加速度監視装置。
【請求項7】
前記位置特定情報は、前記車両の速度に対応した情報であり、
前記位置特定部は、直近の前記着目領域の位置を基準として前記速度の積分値に基づいて前記発生位置を特定する
請求項6に記載の加速度監視装置。
【請求項8】
前記取得部は、前記計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得し、
前記走行レーン特定部が前記走行レーンを特定できない場合に、前記計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超えたとき、その加速度値と前記位置特定情報に基づく発生位置を対応づけて記録する記録部をさらに備える
請求項3または4に記載の加速度監視装置。
【請求項9】
軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得するステップと、
前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形、に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視するステップと
を含む加速度監視方法。
【請求項10】
軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得するステップと、
前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形、に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視するステップと
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に加速度計を取り付け、走行中の加速度データを取得し、車両および軌道の状態モニタリングする場合、車両の位置を精度良く特定することが求められる。特許文献1には、列車位置特定方法の一例が記載されている。特許文献1に記載されている列車位置特定方法は、曲率の測定データを取得するステップと、曲率の記憶データのうち曲率の測定データとの乖離度が最小になる部分を抽出し、抽出された部分と曲率の測定データとの乖離度を乖離度の最小値として取得するステップと、乖離度の最小値が閾値以下の場合、列車の位置を、乖離度が最小になる部分における距離位置に基づいて特定し、乖離度の最小値が閾値を超えた場合、列車の位置を、車軸回転数より得られた走行速度から算出された走行距離に基づいて特定するステップと、を有する。すなわち、特許文献1に記載されている列車位置特定方法では、曲率の記憶データと曲率の測定データとの照合が容易な区間では曲率の照合結果に基づいて位置が特定され、容易でない区間では車軸回転速度に基づいて位置が特定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-19333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に記載されている列車位置特定方法を用いて位置を特定する場合、曲率の照合結果に基づいて位置の特定が容易でない区間では車軸回転速度に基づいて位置が特定される。このため、曲率の照合結果に基づいて位置の特定が容易でない区間では、例えば、車軸の1回転当たりの距離の誤差や、車輪の滑り等によって、車軸回転速度の積分からでは正確な位置を把握することが難しい場合に、位置を精度良く特定することができないことがあるという課題があった。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、位置を精度良く特定することができる加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る加速度監視装置は、軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得する取得部と、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形を記憶する記憶部と、前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する監視部とを備える。
【0007】
本開示に係る加速度監視方法は、軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得するステップと、前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形、に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視するステップとを含む。
【0008】
本開示に係るプログラムは、軌道を走行する車両で計測された加速度波形である計測加速度波形を取得するステップと、前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形、に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムによれば、位置を精度良く特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の構成例を説明するためのブロック図である。
図2図1に示す車両3(車両3a~3c)における加速度センサ32(加速度センサ32a~32c)の設置例を示す側面図である。
図3】本開示の実施形態に係る軌道の構成例を模式的に示す平面図である。
図4図1に示す基準加速度波形データベース261の構成例を示す模式図である。
図5図1に示す計測加速度波形データベース263の構成例を示す模式図である。
図6】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。
図7図1に示す監視結果データベース265の構成例を示す模式図である。
図8】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図9】本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示す他のフローチャートである。
図10】本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。
図11】本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図12】本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図13】本開示の第4実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。
図14】本開示の第4実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図15】本開示の第5実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。
図16】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図である。
図17】本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図(比較例)である。
図18】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態に係る加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムについて説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0012】
<第1実施形態>
以下、図1図9図16および図17を参照して、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置、加速度監視方法およびプログラムについて説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置の構成例を説明するためのブロック図である。図2は、図1に示す車両3(車両3a~3c)における加速度センサ32(加速度センサ32a~32c)の設置例を模式的に示す側面図である。図3は、本開示の実施形態に係る軌道T1の構成例を模式的に示す平面図である。図4は、図1に示す基準加速度波形データベース261の構成例を示す模式図である。図5は、図1に示す計測加速度波形データベース263の構成例を示す模式図である。図6は、本開示の実施形態に係る加速度監視装置の動作例を説明するための模式図である。図7は、図1に示す監視結果データベース265の構成例を示す模式図である。図8は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置2の動作例を示すフローチャートである。図9は、本開示の第1実施形態に係る加速度監視装置2の動作例を示す他のフローチャートである。図16図17は、本開示の実施形態に係る加速度監視装置の作用効果を説明するための波形図である。
【0013】
(加速度監視装置2の構成)
図1に示すように加速度監視装置2は、例えばゴムタイヤ式新交通システム(AGT:Automated Guideway Transit)1の一要素として構成される。図1に示すゴムタイヤ式新交通システム1は、例えば、加速度監視装置2と、複数の車両3と、複数の地上装置4と、運行管理装置5とを備える。
【0014】
運行管理装置5は、複数の車両3からなる複数の列車の運行を制御する装置であって、地上装置4を介して車両3との間で所定の制御信号を送受信する。地上装置4は、例えば、運行監視装置5と車両3との間の通信を中継する。
【0015】
なお、本実施形態では、車両3は、一例として図3に示す軌道T1を走行するものとする。軌道T1は、走行方向が定められた2つの走行レーンDL1と走行レーンDL2を有する。また、軌道T1には、駅ST1と、駅ST2が設けられている。この場合、駅ST1から駅ST2までが1つの区間SEC1である。また、軌道T1は、軌道T1の一部の領域である着目領域RI1と着目領域RI2が予め定義されている。本実施形態において着目領域とはその領域で発生する加速度が監視対象となる領域であり、図2に示す例では、着目領域RI1と着目領域RI2は、エキスパンションジョイントEJ1とエキスパンションジョイントEJ2とそれぞれを囲む領域である。軌道T1では、エキスパンションジョイント等の段差や、図示していない分岐位置では、比較的大きな加速度が発生する。
【0016】
図1に示すように、車両3は、車上装置31と、1または複数の加速度センサ32と、位置情報取得装置33とを備える。車上装置31は、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、制御部311と、記憶部312と、通信部313とを備える。
【0017】
車上装置31において、制御部311は、通信部313が地上装置4を介して運行管理装置5から受信した制御信号に基づき、車両3が備える図示していないモータ等の動力源や操舵装置、乗降装置等を自動で制御するとともに、加速度センサ32が検知した加速度を所定のサンプリング周期で取得して記憶部313に記憶し、所定のタイミングで地上装置4を介して運行管理装置5へ通信部313によって送信したり、位置特定情報取得装置33が特定した位置特定情報を所定のサンプリング周期で取得して記憶部313に記憶し、所定のタイミングで地上装置4を介して運行管理装置5へ通信部313によって送信したりする。車上装置31は、例えば、駅と駅との間の1区間において取得した加速度センサ32の出力の時系列データと位置特定情報取得装置33の出力の時系列データを、駅到着時に地上装置4を介して運行管理装置5へまとめて送信する。ただし、加速度データと位置特定情報の送信タイミングはこの場合に限定されない。
【0018】
加速度センサ33は、例えば3軸の加速度を検知して検知した結果を制御部311へ出力する。位置特定情報取得装置33は、車両3の位置を特定するための情報を取得して制御部311へ出力する。位置特定情報取得装置33は、例えば、車両3が備えるタイヤ302(図2)の回転速度に応じた信号を取得して車両3の速度を表す信号を位置特定情報として出力したり、全地球測位システム(GPS)の人工衛星が発する電波を受信することで求められた現在位置を表す緯度と経度を取得して、位置特定情報として出力したりする。
【0019】
加速度センサ32は、例えば図2に加速度センサ32a~32cとして示すように、列車30を構成する車両3a~3cにそれぞれ複数取り付けることができる。図2に示す例では、各車両3a~3cが備える各2個の台車303にそれぞれ加速度センサ32aと加速度センサ32cが取り付けられていて、各車体301に加速度センサ32bが取り付けられている。この場合、加速度センサ32a~32cは、例えば、前後、左右、および上下の3軸の加速度を検知して検知した加速度を表す信号を出力する。ただし、計測する加速度は、3方向すべてでなくても任意の1方向または2方向としてもよい。なお、台車303は、ゴムタイヤ302を回動可能に支持するとともに、空気ばね等の緩衝装置304を介して車体301に取り付けられている。また、図2に示す例では、車両3aに車上装置31と位置特定情報取得装置33が設けられている。
【0020】
一方、加速度監視装置2は、例えば、コンピュータとそのコンピュータの周辺装置や周辺回路等から構成され、コンピュータ等のハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせから構成される機能的構成として、制御部21と、通信部22と、取得部23と、監視部24と、データベース管理部25と、記憶部26とを備える。
【0021】
また、記憶部26は、基準加速度波形データベース261と、複数の基準加速度波形ファイル262と、計測加速度波形データベース263と、複数の計測加速度波形ファイル264と、監視結果データベース265とを記憶する。
【0022】
基準加速度波形データベース261は、例えば標準的な車両3で各着目領域(着目領域RI1、着目領域RI2等)で計測された加速度波形であって、監視対象とする各車両3で新たに計測された加速度波形である計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形に関する情報を管理するための情報である。図4は、基準加速度波形データベース261の構成例を示す。図4に示す基準加速度波形データベース261は、着目領域識別符号と、車両識別符号と、区間識別符号と、走行レーン識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向と、基準加速度波形ファイル名とを対応づけて記憶する。着目領域識別符号は、図3に示す着目領域を一意に識別する符号である。車両識別符号は、基準加速度波形を計測した車両3を一意に識別する符号である。区間識別符号は、着目領域が位置する区間を一意に識別する符号である。走行レーン識別符号は、計測した車両3が走行した走行レーンを一意に識別する符号である。加速度センサ識別符号は、計測した加速度センサ32を一意にあるいは車両3毎に識別する符号である。計測位置は、緩衝装置304(ばね)より車体側(ばね上)なのか台車側(ばね下)なのかを示す。計測方向は、加速度の方向が、上下方向なのか前後方向なのか左右方向なのかを示す。基準加速度波形ファイル名は、基準加速度波形を表す基準加速度ファイル262の名称である。図4に示す基準加速度波形データベース261の行C1は、例えば、図3に示す着目領域RI1で計測された基準加速度波形AWB1(ファイル名「FB001」)に対応する。また、図4に示す基準加速度波形データベース261の行C2は、例えば、図3に示す着目領域RI2で計測された基準加速度波形AWB2(ファイル名「FB201」)に対応する。
【0023】
基準加速度波形ファイル262は、各着目領域RI1、RI2等で計測された基準加速度波形を表すファイルである。
【0024】
計測加速度波形データベース263は、例えば監視対象の各車両3で区間毎(区間SEC1等毎)に計測された加速度波形である計測加速度波形に関する情報を管理するための情報である。図5は、計測加速度波形データベース263の構成例を示す。図5に示す計測加速度波形データベース263は、計測日時(年月日時分秒)と、車両識別符号と、区間識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向と、計測加速度波形ファイル名とを対応づけて記憶する。車両識別符号と、区間識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測位置と、計測方向は、基準加速度波形データベース261の各項目と同一である。計測加速度波形ファイル名は、計測加速度波形を表す計測加速度ファイル264の名称である。例えば、図6に示す区間SEC1で計測された計測加速度波形AWM1を表すファイルの名称「FM001」である。
【0025】
計測加速度波形ファイル263は、監視対象の車両3で計測された計測加速度波形を表すファイルである。
【0026】
監視結果データベース265は、各着目領域(着目領域RI1、着目領域RI2等)について新たに計測された計測加速度波形に基づく加速度値(ピーク値、実効値等)の監視結果(あるいは評価結果)をまとめた情報である。図7は、監視結果データベース265の構成例を示す。図7に示す監視結果データベース265は、着目領域識別符号と、走行レーン識別符号と、車両識別符号と、計測日時と、加速度センサ識別符号と、計測方向と、監視結果とを対応づけて記憶する。着目領域識別符号と、走行レーン識別符号と、車両識別符号と、区間識別符号と、加速度センサ識別符号と、計測方向は、基準加速度波形データベース261の各項目と同一である。監視結果は、この例では、着目領域で計測された、正ピーク値と、負ピーク値と、実効値である。
【0027】
制御部21は、各部22~26を制御する。通信部22は、制御部21(あるいは取得部23)の指示に従って、例えば、運行管理装置5から車両3で計測された加速度の時系列データである加速度波形(加速度の時系列データ)(計測加速度波形等)を例えば区間SEC1毎に受信する。ただし、通信部22は、制御部21(あるいは取得部23)の指示に従って、例えば、車両3から、車両3で計測された加速度波形を例えば区間SEC1毎に直接受信してもよい。図6は計測加速度波形AWM1の例を示す。制御部21(あるいは取得部23)は、例えば、運行管理装置5から、計測加速度波形AWM1(を示すデータを含むファイル)を取得し、記憶部26に計測加速波形ファイル264として記憶するとともに、記憶した計測加速波形ファイル264についての情報を計測加速度波形データベース263に登録する。なお、制御部21(あるいは取得部23)は、運行管理装置5から、計測加速度波形AWM1を取得する際に、計測加速度波形AWM1の計測日時、計測した車両3の識別符号、計測した区間SEC1の識別符号、計測した加速度センサ32の識別符号、加速度の方向を示す情報や、計測加速度波形AWM1に対応する位置特定情報の時系列データを取得することができる。
【0028】
取得部23は、例えば記憶部26から(あるいは車両3から)、監視(評価)しようとする、軌道T1を走行する車両3で計測された加速度波形である計測加速度波形(計測得加速度波形ファイル264)を取得する。
【0029】
監視部24は、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する。
【0030】
監視部24は、まず、モニタリングの対象とする計測加速度波形(例えば図6に示す計測加速度波形AWM1)の時間軸を非線形に伸縮させ、基準となる加速度波形である基準加速度波形(例えば図3に示す基準加速度波形AWB1や基準加速度波形AWB2)とのマッチング(対応づけ;2つの時系列データ間の距離の最短化)を行うことで、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形(例えば図6の非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cや非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2c)を得る。非線形伸縮を実施して波形同士の相関係数を高くする手法としては、DP(Dynamic Programming)マッチング(動的計画法によるマッチング手法)や動的タイムワーピング等の手法がある。なお、非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cは、計測加速度波形AWM1の一部である加速度波形AWM1P1の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形AWB1に対応させた加速度波形である。また、非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2cは、計測加速度波形AWM1の一部の加速度波形AWM1P2の時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形AWB2に対応させた加速度波形である。
【0031】
監視部24は、次に、非線形伸縮計測加速度波形(例えば図6の非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cや非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2c)の加速度値を監視(評価)する。監視部24は、例えば、図6に示す非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1cの正のピーク値P11の最大値、負のピーク値P12の最大値や実効値を求めて、監視結果データベース265に登録したり、図6に示す非線形伸縮計測加速度波形AWM1P2cの正のピーク値P21の最大値、負のピーク値P22の最大値や実効値を求めて、監視結果データベース265に登録する。あるいは、監視部24は、例えば、基準加速度波形AWB1や基準加速度波形AWB2と比較したり、同一の車両3あるいは他の車両3の計測加速度波形と比較したり、所定の閾値等と比較したりすることで、異常の有無を判定する。
【0032】
また、データベース管理部25は、例えば操作者の所定の入力操作に応じて、基準加速度波形データベース261を構築あるいは変更したり、監視結果データベース265に登録されているデータを検索したり、表示したり、印刷したりする。
【0033】
(加速度監視装置2の動作例)
次に、図8および図9を参照して、図1に示す加速度監視装置2の動作例について説明する。図8は、基準加速度波形データベース261を作成する処理の例を示す。図9は、計測加速度波形の監視の際の処理の例を示す。
【0034】
図8に示すように、基準加速度波形データベース261を構築する際には、まず、通信部22や取得部23を用いて、例えば、車両3からオフライン(あるいは運行管理装置5等を介してオンラインで)、車両、走行レーン、計測位置/方向ごとの基準加速度波形を取得する(ステップS101)。次に、データベース管理部25を用いて、加速度波形のピーク発生位置と着目領域との対応づけを行う(ステップS102)。そして、データベース管理部25を用いて、基準加速度波形をデータベース化する(ステップS103)。
【0035】
また、図9に示すように、計測加速度波形を監視する際には、監視部24を用いて、基準加速度波形データベース261の複数の基準加速度波形と、取得した計測加速度波形のDPマッチングを行い(ステップS201)、計測加速度波形が含む着目領域に対応する加速度波形を特定し、加速度値の監視による異常検知を実行する(ステップS202)。
【0036】
(第1実施形態の補足説明、作用・効果等)
本実施形態では、予め基準となる加速度波形を設定しておく。加速度は3軸(前後・左右・上下)のどの方向でもよい。加速度波形は並進方向の加速度とする。例えば上下加速度の場合は、エキスパンションジョイント位置などで大きな加速度が発生するが、基準となる加速度波形について、ピーク加速度の発生タイミングと、エキスパンションジョイント位置の対応を予め取っておく。そして、モニタリングの対象とする波形の時間軸を非線形に伸縮させ、基準となる加速度波形とのマッチングを行う。
【0037】
対象とする波形の時間軸を非線形伸縮することで、基準の波形とピーク位置を自動でほぼ合わせることが可能である。エキスパンションジョイントなど、加速度ピークが発生する位置での加速度の経過モニタリングが容易となる。
【0038】
また、ヨー角速度のような軌道の曲率に依存するようなデータではなく、軌道に存在するエキスパンションジョイントや分岐、ガイドレール継目等で必ず発生する加速度の特徴を基にモニタリングすることで、直線区間等、曲率が0の区間であっても、高精度に加速度ピーク位置の特定が可能である。
【0039】
すなわち、本実施形態によれば、GPSや車両の速度情報等を用いず、基準加速度波形との比較のみで、軌道の特徴的な位置でのピーク加速度の抽出が容易に可能であり、位置を精度良く特定することができる。
【0040】
なお、車両に加速度計を取り付け、走行中の加速度データを取得し、車両および軌道の状態モニタリングを実施する場合、軌道において、エキスパンションジョイント等の段差や、分岐位置では、衝撃的な加速度が発生する。その加速度を常時モニタリングすることで、エキスパンションジョイントの状態をモニタリングすることが可能である。加速度データから対象とするエキスパンションジョイント位置での加速度を評価しようとした場合、位置情報を取得する必要があるが、速度データからの積分では、タイヤ径の誤差や、タイヤの滑り等によって、正確な位置を把握することが難しい。軌道に数多くの地上子を設置して位置推定精度を向上させる場合、コスト増となる。GPSデータを用いる場合、駅などの天井がある区間での位置推定精度が低下する。加速度の時間波形について、時間を前後させるのみで比較した場合、あるピーク位置での加速度を合わせても、車両走行のばらつき等により、他位置でのピーク値を評価するのが難しい。また、ヨー角速度のデータを用いて、軌道のカーブ位置の特徴などから、位置の特定する場合、直線走行区間においては、マップ情報では、発生するヨー角速度は0となるため、直線区間が長い場合は正確な位置の判断が困難と考えられる。本実施形態によれば、並進加速度を用いて位置を特定することができるので、これらの課題を解決し、精度良く位置(着目領域)を特定することができる。
【0041】
なお、図16図17は、同じ車両で同じ軌道および速度条件で10回走行した場合の加速度波形の例を示す。図16は、10回のうちの1回の波形を基準加速度波形としてDPマッチングを行った場合の基準加速度波形と非線形伸縮計測加速度波形の拡大波形を示し、図17は、56秒付近の加速度ピークで10回分の波形を合わせた場合の56秒付近と64.4秒付近の拡大波形を示す。図17に示す例では、ある加速度ピーク位置のタイミングが合うように調整しても、他の加速度ピーク発生位置のタイミングがずれるため、評価に時間を要することになる。一方、DPマッチングを行った場合には、図16に示すように加速度ピーク発生位置が精度良く対応づけられている。
【0042】
<第2実施形態>
図10図11を参照して、本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置2a(第1実施形態の加速度監視装置2に対応)について説明する。図10は、本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。図11は、本開示の第2実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。図10に示す第2実施形態に係る加速度監視装置2aは、図1に示す第1実施形態の加速度監視装置2と比較して、あらたに、走行レーン特定部27を備えていることが異なる。走行レーン特定部27は、計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで走行レーン毎の各基準加速度波形に対応させた各加速度波形である各非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで走行レーンを特定する。また、監視部24は、特定された走行レーンの基準加速度波形に対応するように計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮した非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する。
【0043】
なお、第2実施形態において、車両3は、車体301と、台車303と、車体301と台車303間に設けられた緩衝装置304とを備えるものであり、計測加速度波形は、車体301に取り付けられたばね上の加速度センサ32b(第1加速度センサ)で計測された第1計測加速度波形と、台車303に取り付けられた加速度センサ32aおよび32c(第2加速度センサ)で計測された第2計測加速度波形とを含む。また、基準加速度波形は、第1加速度センサに対応する走行レーン毎の第1基準加速度波形と、第2加速度センサに対応する走行レーン毎の第2基準加速度波形と含む。そして、走行レーン特定部27は、第1計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで走行レーン毎の各第1基準加速度波形に対応させた各非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各第1基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで走行レーンを特定するようにしてもよい。
【0044】
また、図11に示すように、第2実施形態に係る加速度監視装置2aでは、計測加速度波形の取得(ステップS301)、基準加速度波形データベース261のばね上基準加速度波形と、取得したばね上計測加速度波形のDPマッチング(ステップS302)、相関係数による走行レーンの特定(ステップS303)の流れで、走行レーンを特定することができる。この場合、計測加速度波形については、走行レーンを特定するための情報が不要になる。そして、走行レーンの特定結果に基づいて、基準加速度波形データベース261の基準加速度波形と、取得した計測加速度波形のDPマッチング(ステップS304)と、加速度値の監視による異常検知(ステップS305)を実行することができる。
【0045】
第2実施形態においては、車両、走行レーン、計測位置/方向ごとの基準加速度波形を予め取得した上で、加速度波形のピーク発生位置との対応付けを実施し、基準加速度波形データベース261を構築しておく。加速度波形は並進方向の加速度とする。データベース化した基準となる加速度波形それぞれに対して、取得した加速度データの時間軸の非線形伸縮(第1実施形態と同様)を実施した上で、相関係数を比較する。相関係数が最も高くなる基準となる加速度波形が走行している区間および走行レーンが、取得した加速度データが走行している区間および走行レーンと判定する。
【0046】
なお、対象とする加速度波形に高周波数成分が含まれている場合、取得しているサンプリング周波数によっては、波形のピーク値が捉えられず、同じ走行区間であっても、相関係数が低くなる可能性がある。この対策として、ばね上(AGTの場合は空気ばね通過後の車体)加速度や、高周波数成分をカットした加速度波形同士で分析を実施することが望ましい。
【0047】
走行レーンが特定できた後は、ばね上加速度のみでなく、ばね下加速度についても時間軸の非線形伸縮を行い、基準加速度波形で発生していたピーク加速度の比較・評価を行うことができる。
【0048】
以上のように、第2実施形態によれば、GPSや車両の速度情報等を用いず、加速度波形の特徴のみから、対象とする加速度データが取得された区間や走行レーンを特定することができる。
【0049】
<第3実施形態>
図12を参照して、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置2a(構成は第2実施形態と同一で監視部24の動作が一部異なる)について説明する。図12は、本開示の第3実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。第3実施形態において、監視部24は、第1の車両3で計測された計測加速度波形に対応する非線形伸縮計測加速度波形の所定の区間毎の加速度値が区間毎の所定の閾値を超える場合、第2の車両で計測された計測加速度波形に対応する非線形伸縮計測加速度波形の区間毎の加速度値と区間毎の閾値との比較結果に基づき、第1の車両に異常があるのか、または、軌道に異常があるのかを判定する。
【0050】
図12に示すように、第3実施形態では、加速度監視装置2aにおいて、取得部23が走行レーン特定部27が特定した走行レーンの各区間の計測加速度波形を取得し(ステップS401)、監視部24が、特定した走行レーンの区間ごとの最大値および実効値を評価し(ステップS402)、他車両での区間ごとの最大値および実効値の評価結果と比較し(ステップS403)、そして、ある車両のみ最大値もしくは実効値が相対的に大である場合(ステップS404で「YES」の場合)、ある車両で異常発生したと判定し(ステップS405)、ある車両のみ最大値が相対的に大ではなく、かつ、実効値が相対的に大ではない場合(ステップS404で「NO」の場合)、対象区間で軌道に異常発生したと判定する(ステップS406)。
【0051】
軌道のエキスパンションジョイント位置等の評価は、第1および第2実施形態による分析で容易となるが、着目していない位置での路面凹凸の増加や、車両自体の異常の評価ができない。これに対し、第3実施形態では、駅間の区間ごとの加速度絶対値の最大値や、実効値が閾値以上となっていないかの評価も実施することができる。これにより、想定していた位置以外に大きな加速度が発生していないか等をモニタリングすることが可能となる。
【0052】
また、計測した加速度の加速度や実効値について、同区間を走行している他の車両の加速度とも比較し、比率が設定した閾値以上となっていれば、その車両で異常が発生していたものと判断することができる。
【0053】
以上、第3実施形態によれば、エキスパンションジョイントなど、軌道の特徴的な位置のみでなく、想定していない位置での加速度が悪化していないかも評価可能とする。また、異なる車両の加速度同士を比較することで、軌道と車両のどちらに異常が発生しているかを判別可能となる。
【0054】
<第4実施形態>
図13図14を参照して、本開示の第4実施形態に係る加速度監視装置2b(第2実施形態の加速度監視装置2aに対応)について説明する。図13は、本開示の第4実施形態に係る加速度監視装置の構成例を示すブロック図である。図14は、本開示の第4実施形態に係る加速度監視装置の動作例を示すフローチャートである。図13に示す第4実施形態に係る加速度監視装置2bは、図10に示す第2実施形態の加速度監視装置2aと比較して、あらたに、位置特定部28と記録部29を備えている点と、記憶部26が、計測加速度波形ファイル264に対応する位置特定情報ファイル266と、閾値超え加速度データベース267を記憶する点と、取得部23b(取得部23に対応する)が、車両3から位置特定情報を取得して、位置特定情報ファイル266として記憶部26に記憶したり、記憶部26から位置特定情報ファイル266を読み出して取得したりする点と、監視部24b(監視部24に対応する)が、着目領域以外の加速度値についてさらに監視(評価)する点が異なる。
【0055】
第4実施形態において、取得部23bは、計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得する。また、位置特定部28は、時間軸を非線形伸縮することで基準加速度波形に対応させられた計測加速度波形以外の計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超える場合、位置特定情報に基づいて閾値を超えた加速度値の発生位置を特定する。そして、記録部29は、閾値を超えた加速度値の発生位置を加速度値の値とともに閾値超え加速度データベース267に記録する。閾値超え加速度データベース267は、例えば、計測日時と、発生位置と加速度値を対応づける情報である。
【0056】
なお、位置特定情報が車両3の速度に対応した情報である場合、位置特定部28は、直近の着目領域の位置を基準として速度の積分値に基づいて発生位置を特定することができる。
【0057】
図14に示すように、第4実施形態では、監視部24bが、着目位置以外で閾値以上の加速度発生有無を評価し(ステップS501)、発生していた場合(ステップS502で「YES」の場合)、位置特定部28が、位置特定情報によって位置を特定し(ステップS503)、記録部29が、位置と加速度値等を記録する(ステップS504)。
【0058】
第3実施形態では、軌道のエキスパンションジョイント位置等、注目していた位置以外で大きな加速度が発生した場合、位置の特定ができない。そこで、第4実施形態では、例えば、駅間にて、エキスパンションジョイント位置等のモニタリング対象としている位置±閾値[m]以上離れた位置において、ある閾値以上の加速度が発生した場合、その瞬間のGPS位置等、既存のシステムで取得している手法による位置特定情報によって、位置を特定できるようにする。位置特定手法としては、GPSの他に、車両速度の積分によって求める手法がある。
【0059】
また、DPマッチングによって特定しているピーク位置と、該当の加速度が発生している位置間の速度データの積分によって位置を求めることも可能である。DPマッチングで特定しているピーク位置と、該当の加速度が発生している位置が近い場合、駅スタート位置からの速度積分に比べて、高精度で位置の特定が可能。計算に用いる速度は、車両のシステムから取得するか、車両前後方向の加速度(DC成分を含む)を積分することで算出してもよい。
【0060】
第4実施形態によれば、エキスパンションジョイントなど、軌道の特徴的な位置のみでなく、想定していない位置での加速度が悪化した場合、その位置の特定を行うことができる。
【0061】
<第5実施形態>
図15を参照して、本開示の第5実施形態に係る加速度監視装置2b(図13)について説明する。図15は、本開示の第5実施形態に係る加速度監視装置2bの動作例を示すフローチャートである。図15に示す第5実施形態に係る動作例では、第4実施形態と比較して、監視部24bの動作が一部異なる。すなわち、図15に示すように、第5実施形態では監視部24bが、走行レーンが特定できたか否かを判定し(ステップS601)、走行レーンが特定できていない場合(ステップS601で「NO」の場合)、閾値以上の加速度発生有無を評価し(ステップS602)、発生していた場合(ステップS603で「YES」の場合)、位置特定部28が、位置特定情報によって位置を特定し(ステップS604)、記録部29が、位置と加速度値等を閾値超え加速度データベース267に記録する(ステップS604)。
【0062】
第5実施形態では、取得部23bは、計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得する。また、記録部29は、走行レーン特定部27が走行レーンを特定できない場合に、計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超えたとき、その加速度値と位置特定情報に基づく発生位置を対応づけて閾値超え加速度データベース267に記録する。
【0063】
第2~第4実施形態のフローにおいて、DPマッチング後の相関係数による走行レーンの特定の際、軌道の状態が大きく変化している場合は、DPマッチングを行っても、データベースとしている基準加速度波形と傾向が大きくことなり、走行レーンの特定ができないことが発生する可能性がある。またデータベース化を行っていない走行レーンや区間を走行したデータを分析する際も、走行レーンの特定ができない。そこで、第5実施形態では、走行レーンが特定できない場合は、予め設定した閾値以上の加速度が発生した位置について、第4実施形態と同じように、既存の位置特定手法によって位置情報を取得する。
【0064】
第5実施形態によれば、DPマッチングによる走行レーンの特定ができない場合は、既存の位置特定手法(GPS等)によって、加速度が大きい位置の位置情報を取得することができる。
【0065】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、第1~第5の実施形態における各構成および作用は、適宜、他の実施形態の構成および作用と組み合わせたり、代替したりすることができる。また、計測加速度波形の監視や評価は、例えば、運行時に区間毎に行ってもよいし、毎日の運行終了時にまとめて行ってもよい。
【0066】
〈コンピュータ構成〉
図18は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の加速度監視装置2、2a、2b等は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。
【0067】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0068】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0069】
<付記>
各実施形態に記載の加速度監視装置2、2a、2bは、例えば以下のように把握される。
【0070】
(1)第1の態様に係る加速度監視装置2、2a、2bは、軌道T1を走行する車両3で計測された加速度波形である計測加速度波形AWM1を取得する取得部23と、前記軌道の一部の領域である予め定めた着目領域RI1、RI2について前記計測加速度波形に対して基準となる加速度波形である基準加速度波形AWB1、AWB2を記憶する記憶部26と、前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記基準加速度波形に対応させた加速度波形である非線形伸縮計測加速度波形AWM1P1c、AWM1P2cの加速度値を監視する監視部23bとを備える。本態様、および以下の各態様によれば、着目領域に係る位置を精度良く特定することができる。
【0071】
(2)第2の態様に係る加速度監視装置2、2a、2bは、(1)の加速度監視装置2、2a、2bであって、前記加速度値は、前記基準加速度波形が含む所定のピーク値に対応するピーク値である。
【0072】
(3)第3の態様に係る加速度監視装置2a、2bは、(1)または(2)の加速度監視装置2a、2bであって、前記記憶部26は、前記基準加速度波形を、前記軌道上の複数の走行レーン毎に複数記憶し、前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記走行レーン毎の各前記基準加速度波形に対応させた各加速度波形である各前記非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各前記基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで前記走行レーンを特定する走行レーン特定部27をさらに備え、前記監視部24、24bは、特定された前記走行レーンの前記基準加速度波形に対応するように前記計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮した前記非線形伸縮計測加速度波形の加速度値を監視する。本態様によれば、計測加速度波形の走行レーンをあらかじめ特定しなくてよい。
【0073】
(4)第4の態様に係る加速度監視装置2a、2bは、(3)の加速度監視装置2a、2bであって、前記車両3は、車体301と、台車303と、前記車体301と前記台車303間に設けられた緩衝装置304とを備えるものであり、前記計測加速度波形は、前記車体301に取り付けられた第1加速度センサ32bで計測された第1計測加速度波形と、前記台車303に取り付けられた第2加速度センサ32a、32cで計測された第2計測加速度波形とを含み、前記基準加速度波形は、前記第1加速度センサに対応する前記走行レーン毎の第1基準加速度波形と、前記第2加速度センサに対応する前記走行レーン毎の第2基準加速度波形と含み、前記走行レーン特定部27は、前記第1計測加速度波形の時間軸を非線形伸縮することで前記走行レーン毎の各前記第1基準加速度波形に対応させた各前記非線形伸縮計測加速度波形と、対応する各前記第1基準加速度波形と、の各相関係数を比較することで前記走行レーンを特定する。
【0074】
(5)第5の態様に係る加速度監視装置2、2a、2bは、(1)~(4)の加速度監視装置2、2a、2bであって、前記監視部24、24bは、さらに、第1の前記車両で計測された前記計測加速度波形に対応する前記非線形伸縮計測加速度波形の所定の区間毎の前記加速度値が前記区間毎の所定の閾値を超える場合、第2の前記車両で計測された前記計測加速度波形に対応する前記非線形伸縮計測加速度波形の前記区間毎の前記加速度値と前記区間毎の閾値との比較結果に基づき、前記第1の車両に異常があるのか、または、前記軌道に異常があるのかを判定する。
【0075】
(6)第6の態様に係る加速度監視装置2bは、(1)~(4)の加速度監視装置2bであって、前記取得部23は、前記計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得し、時間軸を非線形伸縮することで前記基準加速度波形に対応させられた前記計測加速度波形以外の前記計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超える場合、前記位置特定情報に基づいて前記閾値を超えた加速度値の発生位置を特定する位置特定部27をさらに備える。
【0076】
(7)第7の態様に係る加速度監視装置2bは、(6)の加速度監視装置2bであって、前記位置特定情報は、前記車両の速度に対応した情報であり、前記位置特定部は、直近の前記着目領域の位置を基準として前記速度の積分値に基づいて前記発生位置を特定する。
【0077】
(8)第8の態様に係る加速度監視装置2bは、(3)または(4)の加速度監視装置2bであって、前記取得部23bは、前記計測加速度波形に対応づけられた位置特定情報をさらに取得し、前記走行レーン特定部が前記走行レーンを特定できない場合に、前記計測加速度波形の加速度値が所定の閾値を超えたとき、その加速度値と前記位置特定情報に基づく発生位置を対応づけて記録する記録部29をさらに備える。
【符号の説明】
【0078】
1…ゴムタイヤ式新交通システム、2、2a、2b…加速度監視装置、3、3a、3b、3c…車両、23、23b…取得部、24、24b…監視部、26…記憶部、27…走行レーン特定部、28…位置特定部、29…記録部、32…加速度センサ、33…位置特定情報取得部、301…車体、303…台車、304…緩衝装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18