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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022126986
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】小蓋洗浄装置、小蓋洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C10B 25/04 20060101AFI20220824BHJP
   C10B 43/08 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C10B25/04
C10B43/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024883
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】502369746
【氏名又は名称】住友重機械プロセス機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】若松 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 紘大
(72)【発明者】
【氏名】二井 大祐
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 義和
(72)【発明者】
【氏名】川戸 俊彦
(57)【要約】
【課題】本開示は、コークス炉の炉蓋の小蓋を確りと洗浄することが可能な小蓋洗浄装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【解決手段】ある小蓋洗浄装置100は、コークス炉の炉蓋1に設けられた小蓋口6を開閉可能な小蓋7を洗浄する装置であって、小蓋7を閉じた状態で、炉内側から小蓋7に高圧水を噴射する小蓋洗浄部10を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉の炉蓋に設けられた小蓋口を開閉可能な小蓋を洗浄する装置であって、
前記小蓋を閉じた状態で、炉内側から前記小蓋に高圧水を噴射する小蓋洗浄部を備える小蓋洗浄装置。
【請求項2】
前記小蓋洗浄部は、高圧水を噴射する複数の噴射ノズルを有する請求項1に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項3】
前記複数の噴射ノズルは、前記小蓋の長手方向に並べて配置される請求項2に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項4】
前記小蓋洗浄部は、前記小蓋口から前記小蓋側に進入して前記小蓋を洗浄する請求項1から3のいずれか1項に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項5】
前記小蓋洗浄部は、所定の期間、前記小蓋に最接近した位置で高圧水を噴射する状態を維持する請求項1から4のいずれか1項に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項6】
前記小蓋洗浄部は、前記炉蓋を洗浄するための炉蓋洗浄部に連動して移動する請求項1から5のいずれか1項に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項7】
前記小蓋洗浄部は、前記炉蓋洗浄部の前端よりも前に突き出た状態で前記小蓋を洗浄し、
前記炉蓋洗浄部は、前記炉蓋洗浄部が前記小蓋洗浄部の前端よりも突き出た状態で前記炉蓋を洗浄する請求項6に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項8】
前記小蓋洗浄部が高圧水を噴射するとき、前記炉蓋洗浄部は高圧水の噴射を停止し、
前記炉蓋洗浄部が高圧水を噴射するとき、前記小蓋洗浄部は高圧水の噴射を停止する請求項6または7に記載の小蓋洗浄装置。
【請求項9】
コークス炉の炉蓋に設けられた小蓋口を開閉可能な小蓋を洗浄する方法であって、
前記小蓋を閉じた状態で、炉内側から前記小蓋に高圧水を噴射することを含む小蓋洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小蓋洗浄装置および小蓋洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉の炉蓋の小蓋を洗浄する小蓋洗浄装置が知られている。本出願人は、特許文献1において小蓋洗浄装置を開示している。この装置は、コークス炉の炭化室内にレベラを挿入するために炉蓋の上部に設けられる小蓋を掃除する装置で、小蓋を開閉する小蓋開閉手段と、掃除対象部位に向けてノズル部から高圧水を噴射する水掃除手段とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-037452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、小蓋洗浄装置について以下の認識を得た。
コークス炉の炉蓋に設けられたレベラ挿入口を閉塞する小蓋は、タールやピッチなどの付着物を適時に除去することが望ましい。特許文献1に記載の小蓋洗浄装置は、炉蓋がコークス炉に装着された状態で小蓋の清掃を行う。この装置は、コークス炉に装着された状態の炉蓋について、小蓋開閉装置で小蓋を開き、開いた小蓋を高圧水で清掃し、清掃後に小蓋を閉じるように構成されている。
【0005】
この小蓋洗浄装置は、所定方向に並べられた多数の炭化炉の炉蓋それぞれの前に順に停止してその小蓋を開いて清掃を行う。この停止位置は、所定の位置を基準として炭化炉の窯ピッチに応じて設定されている。しかし、炉体の経年変化等により窯ピッチは一定ではないため、この停止位置は小蓋の中心位置とは必ずしも一致せず芯ずれを生じうる。芯ずれが大きくなると、小蓋を開閉できず、小蓋を清掃できないケースが生じうる。
【0006】
これらから、本発明者らは、特許文献1に記載の小蓋洗浄装置には、小蓋を確りと洗浄する観点で改善の余地があることを認識した。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、コークス炉の炉蓋の小蓋を確りと洗浄することが可能な小蓋洗浄装置の技術を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の小蓋洗浄装置は、コークス炉の炉蓋に設けられた小蓋口を開閉可能な小蓋を洗浄する装置であって、小蓋を閉じた状態で、炉内側から小蓋に高圧水を噴射する小蓋洗浄部を備える。
【0009】
本発明の別の態様は、小蓋洗浄方法である。この方法は、コークス炉の炉蓋に設けられた小蓋口を開閉可能な小蓋を洗浄する方法であって、小蓋を閉じた状態で、炉内側から小蓋に高圧水を噴射することを含む。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、コークス炉の炉蓋の小蓋を確りと洗浄することが可能な小蓋洗浄装置の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る小蓋洗浄装置を概略的に示す模式図である。
図2図1の小蓋洗浄装置の概略構成を示す側面図である。
図3図1の小蓋洗浄装置を示す平面図である。
図4図1の小蓋洗浄装置を示す平面図である。
図5図1の小蓋洗浄装置の第1状態を示す側面図である。
図6図1の小蓋洗浄装置の第2状態を示す側面図である。
図7図1の小蓋洗浄装置の第3状態を示す側面図である。
図8図1の小蓋洗浄装置の洗浄動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示を好適な実施形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0014】
また、共通点のある別々の構成要素には、名称の冒頭に「第1、第2」等と付して区別し、総称するときはこれらを省略する。第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
【0015】
[実施形態]
以下、図1を参照して、本開示の実施形態に係る小蓋洗浄装置100を説明する。説明の便宜上、図示のように、炉蓋の幅方向をX方向と、X方向に直交する水平な方向をY方向と、両者に直交する鉛直方向をZ方向とする。X方向を左右方向と、Y方向を前後方向と、Z方向を上下方向ということがある。このような方向の表記は小蓋洗浄装置100の姿勢を制限するものではなく、小蓋洗浄装置100は、任意の姿勢で使用されうる。
【0016】
小蓋洗浄装置100は、コークス炉2の炉蓋1に設けられた小蓋口6を開閉可能な小蓋7を洗浄するための洗浄装置である。炉蓋1は、コークス炉2の炭化室の炉開口3を開閉する構造体である。特に、小蓋洗浄装置100は、小蓋7に付着した粉塵やタールなどの付着物を除去する目的で使用される。粉塵やピッチなどの付着物が堆積すると、小蓋7を閉じた際の、気密性が低下して、炉外へのガス漏れや外気の流入などを生じるおそれがあるため、小蓋7は適時に洗浄されることが望ましい。以下、便宜的に、前後方向において、コークス炉2に装着されたときに炉蓋1の炉外に向く側を「炉外側」といい、その反対側を「炉内側」という。
【0017】
図1に示すように、炉蓋1は、炉開口3の正面を覆う炉蓋本体4と、煉瓦などで形成される断熱部5とを有する。炉蓋本体4は、左右及び上下に延在する壁状の部分である。断熱部5は、炉蓋本体4の炉内側の左右中央領域に設けられ、炉蓋本体4から炉内側に突出する。炉蓋本体4の断熱部5の左右両側にはガス道(不図示)と、炉蓋本体4の外周をシールするナイフエッジNE(図2図3を参照)とが設けられる。
【0018】
図1に示すように、小蓋口6は、炉蓋1の炉蓋本体4において、断熱部5の上方に設けられる。小蓋口6は、炉蓋1の炉蓋本体4を前後に貫通する筒状部60と、筒状部60の炉外側の開口である第1開口62と、筒状部60の炉内側の開口である第2開口64とを有する。第2開口64は、炉蓋1がコークス炉2に装着されたときに、炉内に面する。
【0019】
図1の例では、筒状部60は、内部に貫通路が設けられた略角筒状を有する。筒状部60の炉外側に突出した部分に第1開口62が設けられ、筒状部60の炉内側に突出した部分に第2開口64が設けられる。小蓋7は、例えば、炉蓋本体4の炉外側の第1開口62の側方に設けられたヒンジ機構79(図3を参照)によって回動可能に支持される。小蓋7は、回動することにより、小蓋口6の第1開口62を開いた開状態と、閉じた閉状態とを有する。図1において、右端の炉蓋1は開状態の小蓋7を示し、他の炉蓋1は閉状態の小蓋7を示す。
【0020】
例えば、小蓋口6は、開状態において、炉内のコークスを均すための均し棒(不図示)を通過させることができる。この状態で、均し棒によって炉内のコークスを均すことができる。
【0021】
上述のように、炉蓋1が炉開口3に装着された状態で小蓋7を開いて小蓋7を洗浄する方法では、小蓋7を確実に洗浄できない場合がある。そこで、本実施形態では、図1に示すように、小蓋7は、炉開口3から外された炉蓋1が小蓋洗浄装置100に対面する位置に移送された状態で洗浄される。特に、小蓋7は、閉状態で小蓋口6側から小蓋洗浄部10により洗浄される。
【0022】
図1に示すように、小蓋洗浄装置100は、炉蓋1を洗浄するための炉蓋洗浄部と組み合わせてセットとして使用できる。そのため、炉蓋洗浄部を含めて小蓋洗浄装置100と呼ぶことがある。炉蓋洗浄部は、例えば、炉蓋の上面、側面、下面の各面を洗浄する洗浄部を含む。この例では、小蓋洗浄部10は、炉蓋1の上面を洗浄するための上洗浄部30に連動して移動する。特に、この例の上洗浄部30は、炉蓋本体4の炉内側面42の小蓋口6の筒状部60の上側の部分である上部421を左右に移動しながら洗浄する。
【0023】
図1の例では、小蓋洗浄部10は、上洗浄部30、左洗浄部32、右洗浄部33および下洗浄部34と組み合わせされて、一体的な小蓋洗浄装置100を構成している。左洗浄部32は、上下に移動しながら、主に、炉内側面42の断熱部5の左側(図1に向かって左側)の部分である左部422を洗浄する。右洗浄部33は、上下に移動しながら、主に、炉内側面42の断熱部5の右側の部分である右部423を洗浄する。下洗浄部34は、左右に移動しながら、主に、炉内側面42の断熱部5の下側の部分である下部424を洗浄する。
【0024】
小蓋洗浄部10、上洗浄部30、左洗浄部32、右洗浄部33および下洗浄部34は、高圧水を噴射する噴射ノズルを備える。噴射ノズルは、噴射方向を回転させながら高圧水を噴射する。噴射ノズルには、配管を通じて、高圧水ポンプ等によって加圧された高圧水が供給される。
【0025】
また、左洗浄部32および右洗浄部33は、断熱部5の周囲の付着物を除去するための回転カッター35を有する。回転カッター35は、スクリューカッターと称されることがある。
【0026】
図2は、小蓋洗浄装置100の概略構成を示す側面図である。この図では、理解を容易にするため、左洗浄部32、右洗浄部33および下洗浄部34の記載を省いている。小蓋洗浄装置100は、小蓋洗浄部10と、上洗浄部30と、支柱50と、第1駆動機構51と、支持台52と、連結部53と、第2駆動機構55と、アーム部56とを備える。
【0027】
支柱50は、上洗浄部30と小蓋洗浄部10の各構成要素を支持する骨格体として機能する。図2では、支柱50は上下に延在する柱である例を示しているが、支柱50は各種フレームと組み合わされてもよい。第1駆動機構51は、支持台52を所定の方向に移動させる機構である。この例では、第1駆動機構51は、支柱50に固定的に支持されており、支持台52を前方向(炉蓋1に近づく方向)、後方向(炉蓋1から遠ざかる方向)および左右方向に移動させることができる。第1駆動機構51の駆動源としては、油圧、空圧等を用いる圧力シリンダや電動モータを採用できる。
【0028】
支持台52は、所定のスライダ機構(不図示)を介し、第1駆動機構51に、前後および左右にスライド可能に支持される。支持台52は、小蓋洗浄部10および上洗浄部30を支持するベースである。この例では、支持台52は、支持台52の本体に上洗浄部30を支持し、上洗浄部30の下方に小蓋洗浄部10を支持している。支持台52は、第1駆動機構51の駆動に基づいて、前後方向および左右方向に移動できる。
【0029】
連結部53は、支持台52と第2駆動機構55とを連結する機械要素である。この例では、連結部53は、先端側が基端側の下方に位置する下垂体である。連結部53は、基端側が支持台52に固定され、先端側が第2駆動機構55に固定されている。第2駆動機構55は、アーム部56を所定の方向に移動させる機構である。この例では、第2駆動機構55は、アーム部56を前後方向に移動させることができる。第2駆動機構55の駆動源としては、油圧、空圧等を用いる圧力シリンダや電動モータを採用できる。
【0030】
アーム部56は、所定のスライダ機構(不図示)を介し、第2駆動機構55に、前後にスライド可能に支持される。アーム部56は、小蓋洗浄部10を支持するベースとしても機能する。アーム部56は、第2駆動機構55の駆動に基づいて、小蓋洗浄部10を前後方向に移動できる。
【0031】
図3図4も参照する。図3図4は、小蓋洗浄装置100の概略構成を示す平面図である。これらの図では、理解を容易にするため、上洗浄部30の記載を省いている。この図では、小蓋口6の筒状部60の内部を透視して示している。図3は、支持台52が前進した状態で、アーム部56が後退した状態を示しており、小蓋洗浄部10は、小蓋口6に進入せず筒状部60の外部に位置する。図4は、支持台52が前進した状態で、アーム部56が前進した状態を示しており、小蓋洗浄部10は、小蓋口6に進入して筒状部60の内部に位置する。
【0032】
図3に示すように、左洗浄部32および右洗浄部33の噴射ノズル12は、平面視で、前側ほど互いに接近するように、前後方向に対して傾斜する方向に延在している。小蓋洗浄部10の噴射ノズル12は、平面視で前後方向に延在している。各噴射ノズル12は、延在方向に高圧水を噴射する。各噴射ノズル12の噴射角に制限はないが、この例では平面視で30°に設定されている。
【0033】
図3に示すように、アーム部56が後退した状態で、左洗浄部32および右洗浄部33の前端は、小蓋洗浄部10の前端よりも前側(炉蓋1に近い側)に位置する。図3に示す状態で、左洗浄部32および右洗浄部33は、上下に移動しながら、噴射ノズル12から左部422、右部423に高圧水WS3、WS4を噴射する。左洗浄部32および右洗浄部33は、高圧水WS3、WS4により、ナイフエッジNEも洗浄する。また、回転カッター35は、左洗浄部32、右洗浄部33と連動して上下に移動しながら回転し、断熱部5の側面の付着物を除去する。
【0034】
小蓋洗浄部10は、左洗浄部32および右洗浄部33が高圧水WS3、WS4を噴射しているときに高圧水WS1を噴射してもよいが、図3の例では噴射しない。この場合、高圧水を供給する供給源の供給能力を、両方を噴射する場合よりも小さくできる。
【0035】
図4に示すように、アーム部56が前進した状態で、左洗浄部32および右洗浄部33の前端は、小蓋洗浄部10の前端よりも後側(炉蓋1から遠い側)に位置する。図4に示す状態では、左洗浄部32および右洗浄部33は、高圧水WS3、WS4の噴射を停止する。この例では、小蓋洗浄部10は、左洗浄部32および右洗浄部33が高圧水WS3、WS4を噴射していないときに高圧水WS1を噴射する。なお、このように高圧水の噴射を切り替えるとき、これらの高圧水が重複して噴射される期間があってもよい。
【0036】
図5図6図7も参照する。図5図6図7は、小蓋洗浄装置100の概略構成を示す側面図である。この図では、小蓋口6の筒状部60の内部を透視して示している。図5図7は、支持台52が前進した状態で、アーム部56が後退した状態を示しており、小蓋洗浄部10は、小蓋口6に進入せず筒状部60の外部に位置する。図6は、支持台52が前進した状態で、アーム部56が前進した状態を示しており、小蓋洗浄部10は、小蓋口6に進入して筒状部60の内部に位置する。以下、図5に示す状態を第1状態、図6に示す状態を第2状態、図7に示す状態を第3状態ということがある。
【0037】
図5図6に示すように、小蓋洗浄部10は、複数(この例では2個)の噴射ノズル12を有する。この場合、小蓋洗浄部10の洗浄範囲を広くできる。複数の噴射ノズル12の配置は、特に限定されないが、この例では複数(2個)の噴射ノズル12は、小蓋7の長手方向である上下方向に並べて配置される。短手方向に並べる場合に比べて、洗浄範囲を広くできる。
【0038】
図5に示すように、上洗浄部30の噴射ノズル12は、側面視で、前後方向に対して前側が下がるように傾斜する方向に延在している。小蓋洗浄部10の噴射ノズル12は、側面視で前後方向に延在している。各噴射ノズル12は、延在方向に高圧水を噴射する。各噴射ノズル12の噴射角に制限はないが、この例では側面視で30°に設定されている。
【0039】
図5図7に示すように、アーム部56が後退した第1、第3状態で、上洗浄部30の前端は、小蓋洗浄部10の前端よりも前側に位置する。図6に示すように、アーム部56が前進した第2状態で、上洗浄部30の前端は、小蓋洗浄部10の前端よりも後側に位置する。
【0040】
図5に示すように、第1状態では、上洗浄部30は高圧水WS2を噴射しない。小蓋洗浄部10は、第1状態で高圧水WS1の噴射を開始し、徐々に前進して第2状態に至り、第2状態を所定時間維持し、第2状態から徐々に後進して第1状態に戻る。この間、小蓋洗浄部10は高圧水WS1の噴射を継続する。第1状態では、小蓋洗浄部10の高圧水WS1は、筒状部60の内壁および小蓋7の概ね全体に噴射される。この場合、広い範囲を洗浄できる。第2状態では、小蓋洗浄部10の高圧水WS1は、小蓋7の中央近傍に集中的に噴射される。この場合、高圧水WS1が強勢のまま小蓋7に当たるので、小蓋7を強力に洗浄できる。
【0041】
後進が完了したら、小蓋洗浄部10は、高圧水WS1の噴射を停止する。図6に示すように、小蓋洗浄部10は、上洗浄部30の前端よりも前に突き出た状態で小蓋7を洗浄する。小蓋洗浄部10が噴射するとき、上洗浄部30は噴射を停止する。なお、このように高圧水の噴射を切り替えるとき、これらの高圧水が重複して噴射される期間があってもよい。
【0042】
図7に示す第3状態では、上洗浄部30は、左右に移動しながら、噴射ノズル12から上部421に高圧水WS2を噴射する。上洗浄部30は、高圧水WS2により、ナイフエッジNEも洗浄する。第3状態で高圧水WS1を噴射してもよいが、この例では噴射しない。この場合、高圧水を供給する供給源の供給能力を、両方を噴射する場合よりも小さくできる。図7に示すように、上洗浄部30は、上洗浄部30が小蓋洗浄部10の前端よりも突き出た状態で炉蓋1を洗浄する。上洗浄部30が噴射するとき、小蓋洗浄部10は噴射を停止する。なお、このように高圧水の噴射を切り替えるとき、これらの高圧水が重複して噴射される期間があってもよい。
【0043】
以上のように構成された小蓋洗浄装置100の洗浄動作S110を説明する。図8は、洗浄動作S110を説明するフローチャートである。
【0044】
洗浄動作S110が開始されると、断熱部5を挟む位置まで左洗浄部32および右洗浄部33を前進させて、左部422、右部423を洗浄する(ステップS111)。このステップで、左洗浄部32、右洗浄部33は、上下に移動しながら、噴射ノズル12から左部422、右部423に高圧水WS3、WS4を噴射する(図3)。また、このステップで、回転カッター35は、回転して断熱部5の側面の付着物を除去する。
【0045】
左部422、右部423を洗浄したら、アーム部56を後退させた状態で支持台52を前進させ、小蓋洗浄部10および上洗浄部30を第1状態の位置に移動させる(ステップS112)。このステップで、小蓋洗浄部10は上洗浄部30に連動して移動する。
【0046】
次に、図5に示すように、小蓋洗浄部10の噴射ノズル12から高圧水WS1の噴射を開始する(ステップS113)。
【0047】
次に、高圧水WS1を噴射しながら小蓋洗浄部10を前進させる(ステップS114)。このステップで、小蓋洗浄部10は、小蓋口6から小蓋7側に進入して小蓋7を洗浄する。
【0048】
図6に示すように、小蓋洗浄部10が小蓋7に最接近したら、高圧水WS1を噴射しながらその位置を維持する(ステップS115)。このステップで、小蓋洗浄部10は、所定の期間、小蓋7に最接近した状態を維持する。この維持期間は、特に限定はないが、例えば、1秒以上で20秒以下の範囲であってもよく、この例では、5秒以上で15秒以下の範囲に設定されている。
【0049】
次に、高圧水WS1を噴射しながら小蓋洗浄部10を後進させる(ステップS116)。
【0050】
小蓋洗浄部10の後進が完了したら、図7に示すように、高圧水WS1の噴射を停止し、上洗浄部30は上部421を洗浄する(ステップS117)。このステップで、上洗浄部30は、左右に移動しながら、噴射ノズル12から上部421に高圧水WS2を噴射する。
【0051】
上部421を洗浄したら、洗浄動作S110は終了する。上記の各ステップはあくまでも一例であって、各種の変形が可能である。
【0052】
以上のように構成された小蓋洗浄装置100の特徴を説明する。小蓋洗浄装置100は、コークス炉2の炉蓋1に設けられた小蓋口6を開閉可能な小蓋7を洗浄する装置であって、小蓋7を閉じた状態で、小蓋口6側から小蓋7に高圧水を噴射する小蓋洗浄部10を備える。
【0053】
この構成によれば、小蓋7を閉じた状態で、小蓋口6側から小蓋7に高圧水を噴射するので、炉体の経年変化等により窯ピッチが変化しても、小蓋7を確りと洗浄できる小蓋洗浄装置を提供できる。
【0054】
なお、本実施形態に係る技術は、小蓋7を洗浄する方法に適用できる。この方法は、コークス炉2の炉蓋1に設けられた小蓋口6を開閉可能な小蓋7を洗浄する方法であって、小蓋7を閉じた状態で、小蓋口6側から小蓋7に高圧水を噴射することを含む。この方法によれば、本実施形態の小蓋洗浄装置100と同様の作用と効果を奏する。
【0055】
以上、本発明の実施形態の例について詳細に説明した。前述した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態の」「実施形態では」等との表記を付して説明しているが、そのような表記のない内容にも設計変更が許容される。
【0056】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0057】
(変形例)
実施形態の説明では、左部422、右部423を洗浄してから、小蓋洗浄部10が小蓋7を洗浄する例を示したが、各部の洗浄の順序は任意に設定できる。
【0058】
実施形態の説明では、小蓋洗浄装置100が、左洗浄部32、右洗浄部33および下洗浄部34と組合せされる例を示したが、これらの洗浄部と組合せされることは必須ではない。
【0059】
実施形態の説明では、小蓋洗浄部10は、スクレーパを備えていない例を示したが、小蓋洗浄部は、スクレーパを備えてもよい。
【0060】
上述の各変形例は実施形態と同様の作用、効果を奏する。
【0061】
上述した実施形態の構成要素と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0062】
1 炉蓋、 2 コークス炉、 6 小蓋口、 7 小蓋、 10 小蓋洗浄部、 12 噴射ノズル、 30 上洗浄部、 62 第1開口、 64 第2開口、 100 小蓋洗浄装置。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8