(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127015
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】めっき部品の製造方法、めっき方法及びめっき処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 18/31 20060101AFI20220824BHJP
C23C 18/20 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
C23C18/31 A
C23C18/20 Z
C23C18/31 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024924
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】505246848
【氏名又は名称】株式会社豊光社
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】麓 政俊
(72)【発明者】
【氏名】石井 春美
【テーマコード(参考)】
4K022
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA33
4K022AA37
4K022BA08
4K022CA01
4K022CA03
4K022CA06
4K022CA07
4K022CA17
4K022CA22
4K022DA01
4K022DB14
4K022EA01
4K022EA02
(57)【要約】
【課題】外面及び貫通孔にめっきを形成できるめっき部品の製造方法、めっき方法及びめっき処理装置を提供する。
【解決手段】めっき部品の製造方法は、貫通孔204が形成された部品20の端部にチューブ124bを接続する第1の工程と、チューブ124bが接続された部品20をめっき液に浸漬する第2の工程と、チューブ124bを介してめっき液を貫通孔204に送りながら、部品20をめっき処理する第3の工程と、めっき処理された部品20の端部を切断する第4の工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された部品の端部にチューブを接続する第1の工程と、
前記チューブが接続された前記部品をめっき液に浸漬する第2の工程と、
前記チューブを介して前記めっき液を前記貫通孔に送りながら、前記部品をめっき処理する第3の工程と、
めっき処理された前記部品の端部を切断する第4の工程と、を含むめっき部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のめっき部品の製造方法であって、
前記部品が、筒状の部品であり、
前記チューブが、前記部品の端部に接続されるめっき部品の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のめっき部品の製造方法であって、
前記部品の端部が、前記チューブに挿入されるめっき部品の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載のめっき部品の製造方法であって、
前記第3の工程にて、前記部品が浸かった前記めっき液が撹拌されるめっき部品の製造方法。
【請求項5】
貫通孔が形成された部品の該貫通孔にチューブを接続する接続工程と、
前記チューブが接続された前記部品をめっき液に浸漬するとともに、前記チューブを介して前記めっき液を前記貫通孔に送りながらめっき処理するめっき処理工程と、を含むめっき方法。
【請求項6】
請求項5記載のめっき方法において、
前記めっき処理工程の前に、
前記部品の全体を予め決められた処理液に浸漬し、前記貫通孔の内部に、強制的に前記処理液を流す前処理工程を含むめっき方法。
【請求項7】
貫通孔が形成された部品が浸かるめっき液を貯めるめっき槽と、
前記部品が浸かっている前記めっき液を前記貫通孔の内部を通って循環させる移送部と、を備えためっき処理装置。
【請求項8】
請求項7記載のめっき処理装置において、
前記移送部が、前記めっき液を移送するポンプと、
前記部品の貫通孔に接続され、前記ポンプによって移送される前記めっき液が流れるチューブと、を有するめっき処理装置。
【請求項9】
請求項8記載のめっき処理装置において、
前記部品が、筒状の部品であり、
前記チューブが、前記部品の端部に接続されるめっき処理装置。
【請求項10】
請求項9記載のめっき処理装置において、
前記部品の端部が、前記チューブに挿入されるめっき処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき部品の製造方法、めっき方法及びめっき処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建築物等に水道管等として使用される銅又は銅合金管の内面に均一な錫めっきを施す銅又は銅合金管内面への錫めっき方法が記載されている。
この銅又は銅合金管内面への錫めっき方法は、銅又は銅合金管の一方の管端からめっき前処理液を通流させる工程と、錫イオン濃度が0.01乃至0.5mol/リットルである置換型及び/又は還元型の無電解めっき液を40乃至80℃の温度で0.2乃至2.5m/秒の流速で通流させる工程とを有し、前記めっき液を通流開始後、全通流時間の1/10乃至3/4が経過した時点でめっき液の通流方向を逆転させることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、外面及び貫通孔にめっきを形成できるめっき部品の製造方法、めっき方法及びめっき処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、貫通孔が形成された部品の端部にチューブを接続する第1の工程と、前記チューブが接続された前記部品をめっき液に浸漬する第2の工程と、前記チューブを介して前記めっき液を前記貫通孔に送りながら、前記部品をめっき処理する第3の工程と、めっき処理された前記部品の端部を切断する第4の工程と、を含むめっき部品の製造方法である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のめっき部品の製造方法であって、前記部品が、筒状の部品であり、前記チューブが、前記部品の端部に接続される。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のめっき部品の製造方法であって、前記部品の端部が、前記チューブに挿入される。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載のめっき部品の製造方法であって、前記第3の工程にて、前記部品が浸かった前記めっき液が撹拌される。
【0009】
請求項5に記載の発明は、貫通孔が形成された部品の該貫通孔にチューブを接続する接続工程と、前記チューブが接続された前記部品をめっき液に浸漬するとともに、前記チューブを介して前記めっき液を前記貫通孔に送りながらめっき処理するめっき処理工程と、を含むめっき方法である。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載のめっき方法において、前記めっき処理工程の前に、前記部品の全体を予め決められた処理液に浸漬し、前記貫通孔の内部に、強制的に前記処理液を流す前処理工程を含む。
【0011】
請求項7に記載の発明は、貫通孔が形成された部品が浸かるめっき液を貯めるめっき槽と、前記部品が浸かっている前記めっき液を前記貫通孔の内部を通って循環させる移送部と、を備えためっき処理装置である。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載のめっき処理装置において、前記移送部が、前記めっき液を移送するポンプと、前記部品の貫通孔に接続され、前記ポンプによって移送される前記めっき液が流れるチューブと、を有する。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項8記載のめっき処理装置において、前記部品が、筒状の部品であり、前記チューブが、前記部品の端部に接続される。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項9記載のめっき処理装置において、前記部品の端部が、前記チューブに挿入される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外面及び貫通孔にめっきを形成できるめっき部品の製造方法、めっき方法及びめっき処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るめっき処理装置の構成図である。
【
図2】(A)、(B)は、それぞれ、同めっき処理装置によってめっきされる筒状部品の端面図及び側面図である。
【
図3】同めっき処理装置を使用した筒状部品のめっき方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
本発明の一実施の形態に係るめっき処理装置10(
図1参照)は、
図2(A)及び
図2(B)に示す筒状部品20の外周面202及び中空部となる貫通孔204の面(筒状部品20の内周面)に無電解めっきを形成できる。
以下、「無電解めっき」は、単に「めっき」という場合がある。
【0018】
無電解めっきが形成される筒状部品20の材質は、フッ素系樹脂であり、例えば、内径が1.0~1.5mm、外径が4.0~10.0mm、長さが100~200mmである。
ただし、各寸法は限定されるものではない。また、めっき処理装置10によってめっきされる部品は、筒状部品20に限定されるものではなく、筒状部品20に代えて、貫通した任意の径の孔が形成された任意の部品であってもよい。具体例を挙げると、貫通孔が形成された、外形が板状やブロック状の部品であってもよい。更に、めっき処理される部品の材質もフッ素系樹脂に限定されるものではない。
【0019】
めっき処理装置10は、
図1に示すように、めっき槽110及び移送部120を備えている。
めっき槽110は、めっき液が貯められる。このめっき液には、筒状部品20が浸漬される。
めっき槽110には、めっき液を撹拌する撹拌機(不図示)が設けられている。
【0020】
移送部120は、ポンプ122、チューブ124a、124b及び流量制御部130を有し、筒状部品20が浸かっているめっき液を貫通孔204の内部を通って循環させることができる。
ポンプ122は、めっき液を移送することができる。
ポンプ122は、めっき液中で使用される水中ポンプであってもよい。
【0021】
チューブ124a及びチューブ124bは、その内部をめっき液が流れる。チューブ124a及びチューブ124bは、それぞれ樹脂製であり、可撓性を有し屈曲可能となっている。
チューブ124aの一端部は、めっき液の内部に浸かり、他端部は、ポンプ122の吸込口に接続される。従って、ポンプ122に吸い込まれるめっき液が、チューブ124aの内部を流れる。
チューブ124bの一端部は、流量制御部130に接続され、他端部は、筒状部品20の一端部に接続される。チューブ124bと筒状部品20とは、チューブ124bの他端部に筒状部品20の一端部が押し込まれて挿入されることによって接続される。
従って、ポンプ122によって吐出されためっき液が、チューブ124bを通って、筒状部品20の貫通孔204の内部を流れる。
【0022】
なお、チューブ124a及びチューブ124bは、それぞれめっき液に浸食されることがなければ、任意の材質でよく、めっき液を筒状部品20の貫通孔204を通って循環させることができれば、必ずしも可撓性を有していなくてもよい。
また、チューブ124bと筒状部品20とは、ポンプ122によって移送されるめっき液を貫通孔204に流すことができるように接続できればよく、チューブ124bの他端部に筒状部品20の一端部が押し込まれて接続されることに代えて、例えば接続部品(不図示)を介して接続されてもよい。
更に、ポンプ122の吸込口と吐出口とが反対に設けられ、
図1に示す矢印の方向とは反対方向にめっき液が流れてもよい。
【0023】
流量制御部130は、ポンプ122の吐出口に接続され、筒状部品20の貫通孔204に流れるめっき液の流量を制御できる。
流量制御部130は、流量調整弁である。ただし、流量制御部130は、流量調整弁に代えて、ポンプ122の回転数を制御する制御装置としてもよい。
【0024】
次に、めっき処理装置10によるフッ素系樹脂製の筒状部品20のめっき方法(めっき部品の製造方法)について説明する。筒状部品20は、
図3に示すように、工程P1-1~P5-3に従ってめっきされる。ただし、可能な場合には、各工程は、順番を入れ替えて実施されてもよいし、並行して実施されてもよい。
【0025】
まず、筒状部品を洗浄するための洗浄工程P1-1、P1-2が行われる。
【0026】
(工程P1-1)
筒状部品20を超音波洗浄する。
図4に示すように、超音波洗浄器60の洗浄槽にアセトン(処理液としての有機溶剤の一例)を入れるとともに、シリンジ50に接続チューブ62を介して筒状部品20の端部を接続する。
その後、超音波洗浄器60を稼働させた状態で筒状部品20の全体を洗浄槽のアセトンに浸漬し、プランジャ64を進退させる。その結果、筒状部品20の貫通孔204にアセトンが強制的に流され、外周面202のみならず貫通孔204(内周面)も超音波洗浄される。
【0027】
(工程P1-2)
超音波洗浄器60の洗浄槽から筒状部品20を引き上げて乾燥させる。
筒状部品20の貫通孔204(内周面)は、プランジャ64を進退させて強制的にエアを通すことによって乾燥させる。
【0028】
続いて、無電解めっきのための第1の前処理工程P2-1~P2-3が行われる。
【0029】
(工程P2-1)
前工程P1-2にて処理した筒状部品20に対し、金属ナトリウムによる処理を行う。
容器に金属ナトリウム溶液を入れ、筒状部品20の全体を浸漬した状態で、外周面202が着色するまでプランジャ64を進退させる。その結果、筒状部品20の貫通孔204の内部に金属ナトリウム溶液が強制的に流され、外周面202のみならず貫通孔204(内周面)も金属ナトリウムによって処理される。
なお、少なくとも本工程においては、接続チューブ62の材質は、ポリエチレン又はポリプロピレンとすることが好ましい。
【0030】
(工程P2-2)
前工程P2-1にて処理した筒状部品20を洗浄する。
容器にエタノール溶液(有機溶剤の一例)を入れ、筒状部品20の全体を浸漬した状態で、プランジャ64を進退させる。その結果、筒状部品20の貫通孔204にエタノール溶液が強制的に流され、外周面202のみならず貫通孔204(内周面)も洗浄される。
【0031】
(工程P2-3)
前工程P2-2にて処理した筒状部品20をエタノールにて超音波洗浄する。
具体的な方法の説明については、洗浄に用いる有機溶剤が相違する点を除いて工程P1-1における超音波洗浄と同様であるので割愛する。
【0032】
続いて、無電解めっきのための第2の前処理工程P3-1、P3-2が行われる。
以降の工程において、洗浄液や有機溶剤(それぞれ処理液の一例)を用いて筒状部品20の外周面202及び内周面に対して行う処理は、前述の工程P2-2と同様に、筒状部品20の全体を浸漬した状態で、プランジャ64を進退させるものであるため、この内容について繰り返して記載することは割愛する。なお、以降の工程において、シリンジ50と筒状部品20とを接続する接続チューブ62の材質は、シリコンに変更される。
【0033】
(工程P3-1)
前工程P2-3にて処理した筒状部品20に対し、シランカップリング剤による処理を行う。
【0034】
(工程P3-2)
接続チューブ62から前工程P3-1にて処理した筒状部品20を取り外し、取り外した筒状部品20を熱処理する。
熱処理後、筒状部品20を再び接続チューブ62に取り付ける。
【0035】
続いて、無電解めっきのための第3の前処理工程P4-1~P4-7が行われる。
(工程P4-1)
前工程P3-2にて処理した筒状部品20に対してプレディップ処理する。
【0036】
(工程P4-2)
前工程P4-1にて処理した筒状部品20に対してキャタリスト処理する。
【0037】
(工程P4-3)
前工程P4-2にて処理した筒状部品20を洗浄する。使用する洗浄液は、例えば水である。
【0038】
(工程P4-4)
前工程P4-3にて処理した筒状部品20に対し、1段目のアクセラレータ処理を行う。
【0039】
(工程P4-5)
前工程P4-4に続いて、2段目のアクセラレータ処理を行う。
【0040】
(工程P4-6)
前工程P4-5にて処理した筒状部品20を洗浄する。使用する洗浄液は、例えば水である。
【0041】
(工程P4-7)
接続チューブ62から前工程P4-6にて処理した筒状部品20を取り外し、取り外した筒状部品20を熱処理する。
【0042】
続いて、無電解めっき処理する工程を含む工程P5-1~P5-3が行われる。
(工程P5-1)
図1に示すめっき処理装置10のチューブ124bに、前工程P4-7にて処理された筒状部品20の一端部のみを挿入して接続する(第1の工程又は接続工程の一例)。
次に、チューブ124bが接続された筒状部品20をめっき槽110の内部のめっき液に浸漬する(第2の工程の一例)。めっき液は、例えば銅めっき液である。
最後に、ポンプ122を運転し、チューブ124bを介してめっき液を貫通孔204に送りながら筒状部品20をめっき処理する(第3の工程又はめっき処理工程の一例)。その際、撹拌機(不図示)によって、めっき槽の内部のめっき液が撹拌されることが好ましい。めっき液が撹拌されながらめっき処理されることにより、撹拌されない場合と比較して、筒状部品20の外周面202と貫通孔204(内周面)に形成されるめっき厚が不均一となることが抑制される。
本工程により、筒状部品20の外周面202及び貫通孔204(内周面)には、厚みが例えば2μm以上のめっきが形成される。
【0043】
(工程P5-2)
前工程P5-1にて処理した筒状部品20を洗浄する。使用する洗浄液は、例えば水である。
【0044】
(工程P5-3)
前工程P5-2にて処理した筒状部品20を予め決められた処理温度及び処理時間にてアニール処理する。
【0045】
その後、チューブ124bから筒状部品20を取り外す。チューブ124bが接続されていた端部(筒状部品20のチューブ124bとの接触部分)には、めっきが形成されないため、この部分を切断して取り除く(第4の工程の一例)。
本工程により、外周面202及び貫通孔204(内周面)にめっき処理された筒状部品20が製造される。
【0046】
このように、本実施の形態に係る筒状部品20のめっき方法によれば、筒状部品20の全体を浸漬させためっき液を貫通孔204に強制的に流すので、外周面202及び貫通孔204にめっきを形成できる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
【符号の説明】
【0048】
10 めっき処理装置
20 筒状部品
50 シリンジ
60 超音波洗浄器
62 接続チューブ
64 プランジャ
110 めっき槽
120 移送部
122 ポンプ
124a、124b チューブ
130 流量制御部
202 外周面
204 貫通孔