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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127030
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】地図表示システム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20220824BHJP
   G08G 1/0969 20060101ALI20220824BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20220824BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/0969
G09B29/10 A
G09B29/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024943
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】村木 雄二
(72)【発明者】
【氏名】西村 夏来
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン アスティール
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ランカン
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ ピルレ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル プロニエ
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰貴
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HC08
2C032HD03
2C032HD07
2C032HD16
2C032HD23
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB20
2F129BB22
2F129CC06
2F129DD21
2F129DD24
2F129EE02
2F129EE22
2F129EE52
2F129EE58
2F129EE81
2F129HH12
2F129HH25
5H181AA01
5H181FF05
5H181FF22
5H181FF24
5H181FF27
5H181FF32
(57)【要約】
【課題】利用者がある地域に進入する前に、当該地域に対応した情報を利用者に案内することが可能な技術の提供。
【解決手段】車両の現在地を取得する現在地取得部と、前記車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得部と、地図情報を取得する地図情報取得部と、前記現在地および前記地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への前記車両の進入を検知する進入検知部と、前記車両の前記第1の地域内への進入が検知された場合、前記第1の地域に関する情報と、前記第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で前記走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、を案内する案内部と、を備える地図表示システムが構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地を取得する現在地取得部と、
前記車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得部と、
地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記現在地および前記地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への前記車両の進入を検知する進入検知部と、
前記車両の前記第1の地域内への進入が検知された場合、
前記第1の地域に関する情報と、
前記第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で前記走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、
を案内する案内部と、
を備える地図表示システム。
【請求項2】
前記情報は、走行規制情報である、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項3】
前記案内部は、
前記走行規制情報が示す規制に従うために必要な行為を案内する、
請求項2に記載の地図表示システム。
【請求項4】
前記案内部は、
前記行為を行うための施設を案内する、
請求項3に記載の地図表示システム。
【請求項5】
前記情報は、交通情報である、
請求項1に記載の地図表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地域に対応した情報を案内する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の現在位置が運転者の住んでいる地域と異なるときに、特殊な走行ルールがあれば、その特殊な走行ルールを表示装置に表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-122281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、車両が特殊な走行ルールが存在する地域に進入しなければ,特殊な走行ルールが案内されない。従って、当該地域に進入する前に、特殊な走行ルールに対する対応を実施することが困難であった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、利用者がある地域に進入する前に、当該地域に対応した情報を利用者に案内できる可能性を高めることが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、地図表示システムは、車両の現在地を取得する現在地取得部と、車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得部と、地図情報を取得する地図情報取得部と、現在地および地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への車両の進入を検知する進入検知部と、車両の第1の地域内への進入が検知された場合、第1の地域に関する情報と、第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、を案内する案内部と、を備える。
【0006】
すなわち、地図表示システムにおいては、第1の地域内への車両の進入をトリガにして、第1の地域に関する情報に加え、走行予定である第2の地域に関する情報も案内する。従って、車両に搭乗した利用者が第2の地域に進入する前に、当該第2の地域に対応した情報を利用者に案内できる可能性を高めることができる。このため、利用者は、第2の地域に進入する前に、当該情報に応じた行為を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】地図表示システムを含むナビゲーションシステムのブロック図である。
図2】案内処理のフローチャートである。
図3】地図および案内の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(2)案内処理:
(3)他の実施形態:
【0009】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる地図表示システムを含むナビゲーションシステム10の構成を示すブロック図である。ナビゲーションシステム10は、車両に備えられており、CPU,RAM,ROM等を備える制御部20、記録媒体30を備えている。ナビゲーションシステム10は、記録媒体30やROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行することができる。記録媒体30には、予め地図情報30aおよび走行規制情報30bが記録されている。
【0010】
地図情報30aは、車両の位置や案内対象の施設の特定に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ,ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ,ノード同士の連結を示すリンクデータ,道路やその周辺に存在する地物の位置等を示す地物データ,地域の境界を示すポリゴンデータ等を含んでいる。なお、リンクデータは交差点を端点とする道路区間を示すデータであり、道路属性等の各種の情報が対応づけられる。
【0011】
地物データは、各種の地物を示す情報であり、当該地物には施設が含まれている。施設を示す地物データには、施設の属性を示す情報が含まれている。施設の属性には、店舗、公共施設など、施設の種類を示す情報が含まれている。本実施形態においては、走行規制を遵守するために利用者が準備すべき装備を販売する店舗に対して、当該装備を示す情報が対応づけられている。
【0012】
ポリゴンデータは、地域の境界を示す多角形を示す情報であり、例えば、多角形の頂点を示す座標と、当該頂点を結ぶ多角形で囲まれる地域の属性とを示す情報である。属性は、地域を複数の種類の分類で分類した結果を示しており、本実施形態においては、国の分類(第1の分類)と、各国の中に存在する都市の分類(第2の分類)とによってポリゴンデータが構成される。すなわち、国境を示すポリゴンデータには国境で囲まれる国の名称が対応づけられ、都市の境界を示すポリゴンデータには境界で区画されに囲まれる都市の名称が対応づけられている。なお、地域の境界を示すための情報の態様は、ポリゴンデータに限定されない。例えば、地域の境界を通る道路区間や地域の境界に相当するノードに対して、境界であることを示す情報や境界で区画される国や都市を示す情報を対応づける構成等であっても良い。
【0013】
走行規制情報30bは、道路区間において適用される走行規制を示す情報である。走行規制情報30bは、種々の規制を含み得る。本実施形態においては、車両に課される規制と、車両に搭乗する利用者が遵守すべき規制とが走行規制情報30bに含まれている。車両に課される規制は、例えば、速度規制や排ガス規制等が該当する。排ガス規制は、例えば、単位距離の走行において車両から排出される排ガスに含まれる特定の物質の量の上限等によって定義される。本実施形態においては、規制の内容を示す情報に対して、規制が適用される地域(国名または都市名の少なくとも一方)が対応づけられて走行規制情報30bが定義される。
【0014】
車両に搭乗する利用者が遵守すべき規制は、例えば、各種の証明の準備や各種の装備の準備が必要であるという規制等が該当する。より具体的には、例えば、証明書としてのステッカーの提示義務が挙げられる。当該提示義務は、特定の地域に車両で進入する場合には、特定の車両であることを示すステッカーをフロントガラス等に貼り付ける義務である。特定の車両は、例えば、排気ガスに含まれる有害物質の量が基準より少ない方式の動力を使用する車両等が該当する。この規制の場合、ステッカーをフロントガラス等に貼る等の行為が必要であることを示す情報に対して、規制が適用される地域(国名または都市名の少なくとも一方)が対応づけられて走行規制情報30bが定義される。
【0015】
また、車両に搭乗する利用者が遵守すべき規制は他にも種々の規制が挙げられる。例えば、走行する際に各種の装備が必要である場合、必要な装備を示す情報が走行規制情報30bであり、リンクデータに対して対応づけられる。この規制の場合、装備を準備する等の行為が必要であることを示す情報に対して、規制が適用される地域(国名または都市名の少なくとも一方)が対応づけられて走行規制情報30bが定義される。なお、装備としては、各種の装備が想定され、例えば、消火器等の安全装備や、ライトバルブ等の消耗品等が挙げられる。
【0016】
本実施形態における車両は、GNSS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44とを備えている。GNSS受信部41は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ42およびジャイロセンサ43等は、車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両の出発地と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発地と走行軌跡とに基づいて特定された車両の現在位置がGNSS受信部41の出力信号に基づいて補正される。
【0017】
ユーザI/F部44は、利用者の指示を入力し、また、利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル方式のディスプレイやスイッチ等やスピーカー等を備えている。すなわち、ユーザI/F部44は画像の表示部や音声の出力部、利用者指示の入力部を備えている。
【0018】
制御部20は、図示しないナビゲーションプログラムの機能により、車両に搭乗する利用者に対して走行予定経路を指示する経路案内を行うことが可能である。さらに本実施形態において制御部20は、当該ナビゲーションプログラムの機能として、ユーザI/F部44のディスプレイに地図を表示する機能を実行可能であり、当該地図表示とともに走行規制情報30bを表示することが可能である。
【0019】
当該表示は地図表示プログラム21によって実現される。地図表示プログラム21が実行されると、制御部20は、現在地取得部21a、走行予定経路取得部21b、地図情報取得部21c、進入検知部21d、案内部21eとして機能する。現在地取得部21aは、車両の現在地を取得する機能である。制御部20は、現在地取得部21aの機能により、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力情報に基づいて車両の現在地を取得する。
【0020】
走行予定経路取得部21bは、車両の走行予定経路を取得する機能である。制御部20は、走行予定経路取得部21bの機能によりユーザI/F部44の入力部を介して利用者による目的地の入力を受け付け、車両の現在位置から目的地までの走行予定経路を探索する。探索は、種々の手法によって実施されてよい。例えば、地図情報30aのリンクデータが示す道路区間に対してコストが対応づけられており、出発地から目的地までの経路を構成する道路区間のコストの和が最小になるように経路探索を行うアルゴリズム等によって経路探索処理が実行されることで探索が行われる。走行予定経路が探索され、車両の走行が開始されると、制御部20は、ユーザI/F部44を制御し、表示部に表示された地図上で当該走行予定経路を示し、また、直進以外の方向に進行する交差点の手前で進行方向を示す音声を出力部に出力させる。
【0021】
地図情報取得部21cは、地図情報を取得する機能である。制御部20は、現在地を含む地図を所定の縮尺でユーザI/F部44の表示部に表示させるための情報を地図情報30aから取得する。また、制御部20は、地図情報30aに含まれるポリゴンデータ等を取得することが可能である。
【0022】
進入検知部21dは、現在地および地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への車両の進入を検知する機能である。本実施形態において、第1の分類は国の分類である。このため、本実施形態において、制御部20は、進入検知部21dの機能により、車両が国境を通過した場合に第1の地域内に車両が進入したことを検知する。
【0023】
具体的には、制御部20は、地図情報30aに基づいて現在地が存在する道路区間を特定する。また、制御部20は、地図情報30aのポリゴンデータを参照し、現在地が存在する道路区間が国の境界と重なるか否か判定する。現在地が存在する道路区間が国の境界と重なる場合、制御部20は、ポリゴンデータに基づいて国境を特定し、現在地と国境とを比較する。そして、制御部20は、現在地が国境を通過した場合に新たな国(第1の地域)に進入したことを検知する。なお、進入の検知は種々の態様で実施されてよく、現在地が存在する道路区間が国の境界と重なる場合に、進入が検知されたとみなされても良いし、当該道路区間から退出した場合に、進入が検知されたとみなされても良い。
【0024】
案内部21eは、ユーザI/F部44の表示部に各種の案内を表示させる機能である。本実施形態においては、当該案内の中に、地域に関する案内が含まれている。地域に関する案内を行う場合、制御部20は、第1の地域に関する情報と、第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、を案内する。
【0025】
本実施形態において制御部20は、車両の第1の地域内への進入、すなわち、国境の越境の検知をトリガにして、各地域に対応づけられた走行規制情報30bを案内する。すなわち、車両が国境を通過した場合、制御部20は、案内部21eの機能により、進入した国で課される走行規制情報30bと、当該国に存在する都市であって走行予定経路が存在する都市で課される走行規制情報30bとを案内する。このため、制御部20は、地図情報30aのポリゴンデータを参照し、進入した国を特定する。そして、制御部20は、走行規制情報30bを参照し、進入した国に対応づけられた走行規制を特定する。
【0026】
さらに、制御部20は、走行予定経路を構成する道路区間を特定し、走行規制情報30bが対応づけられた都市に属する道路区間が存在する場合、走行規制情報30bに基づいて当該都市および走行規制を特定する。そして、制御部20は、ユーザI/F部44を制御し、車両の現在地が存在する国と当該国で適用される走行規制情報30bと、走行予定経路が存在する都市と当該都市で適用される走行規制情報30bとを、表示させる。
【0027】
以上のような本実施形態によれば、利用者は、国境を通過して異なる国に進入すると、進入した国で遵守すべき走行規制を認識することができる。さらに、走行予定経路が存在する都市で遵守すべき走行規制を認識することができる。当該都市で遵守すべき走行規制の案内は、車両が国境を通過した場合に実施されるため、当該都市に進入する前に、当該都市に対応した走行規制を利用者に案内できる可能性を高めることが可能である。従って、利用者は、都市に進入する前に、当該走行規制に応じた行為を行うことが可能になる。
【0028】
(2)案内処理:
図2は、案内処理のフローチャートである。図3は、案内例を示す図である。図3は、ユーザI/F部44の表示部における表示例を示している。本表示例においては、右側に車両の現在地Cを含む地図M、左側に走行規制の案内Gが表示されている。また、地図においては、実線で道路を示し、破線で国境を示し、一点鎖線で都市の境界を示している。但し、道路と重ねて示されている太い実線は車両の走行予定経路である。
【0029】
本実施形態において、案内処理は、一定期間毎(例えば、ディスプレイへの地図の描画に同期するタイミング)に実行される。案内処理が開始されると、制御部20は、現在地取得部21aの機能により、現在地を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、GNSS受信部41,車速センサ42,ジャイロセンサ43の出力情報に基づいて、車両の現在地を取得する。
【0030】
次に、制御部20は、車両が国境を通過したか否かを判定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、地図情報取得部21cおよび進入検知部21dの機能により、地図情報30aに基づいて現在地が存在する道路区間を特定する。また、制御部20は、地図情報30aのポリゴンデータを参照して現在地周辺の国境を特定し、国境と重なる道路区間を特定する。そして、制御部20は、現在地が存在する道路区間が国境と重なる道路区間である場合、現在地と国境とを比較し、現在地が国境の一方側から反対側に移動した場合に、車両が国境を通過したと判定する。図3に示す例において、車両の現在地Cは、A国とB国との国境をA国側からB国側に越境した直後である。この場合、制御部20は、ステップS105において車両が国境を通過したと判定する。
【0031】
ステップS105において、車両が国境を通過したと判定されない場合、制御部20は、案内処理を終了する。一方、ステップS105において、車両が国境を通過したと判定された場合、制御部20は、走行予定経路取得部21bの機能により、経路案内中であるか否かを判定する(ステップS110)。すなわち、走行予定経路が探索された状態で車両の走行が開始されると、制御部20は、走行予定経路を指示する経路案内を実行する。ステップS110において制御部20は、当該経路案内を実行中であるか否かを判定する。図3に示す例においては、車両の現在地Cより前方の走行予定経路が太い実線で示されており、経路案内中である。この場合、制御部20は、ステップS110において経路案内中であると判定する。
【0032】
ステップS110において、経路案内中であると判定されない場合、制御部20は、案内処理を終了する。すなわち、経路案内中ではない場合、走行予定経路が特定されていないため、走行予定経路が属する都市が特定できないとみなし、制御部20は、走行規制情報30bの案内を行わない。なお、この場合であっても、国境通過後に進入した国で遵守すべき走行規制情報30bが案内されても良い。
【0033】
ステップS110において、経路案内中であると判定された場合、制御部20は、案内部21eの機能により、国境通過後の最初の道路区間を処理対象に設定する(ステップS115)。すなわち、制御部20は、ステップS120~S140のループ処理において、目的地までの走行予定経路を構成する道路区間のそれぞれを、現在地から近い順に処理対象として処理を繰り返す。そこで、制御部20は、まず、走行予定経路上で車両が現在地の次に走行する予定の道路区間を特定し、処理対象に設定する。
【0034】
次に、制御部20は、案内部21eの機能により、処理対象の道路区間が、走行規制のある都市に属する道路区間であるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、地図情報30aに基づいて処理対象の道路区間が属する都市を特定し、当該都市に対応づけられた走行規制情報30bが存在するか否か判定する。当該都市に対応づけられた走行規制情報30bが存在すると判定された場合、制御部20は、処理対象の道路区間が、走行規制のある都市に属する道路区間であると判定する。
【0035】
ステップS120において、処理対象の道路区間が、走行規制のある都市に属する道路区間であると判定された場合、制御部20は、処理対象の道路区間が属する都市が表示リストに未登録であるか否か判定する(ステップS125)。すなわち、本実施形態においては、ステップS120~S140のループ処理において、走行規制情報30bを案内すべき都市が、表示リストに順次登録されることによって表示対象の都市を決定していく。
【0036】
そこで、制御部20は、処理対象の道路区間が属する都市が表示リストに未登録であると判定された場合、案内部21eの機能により道路区間が属する都市を表示リストに登録する(ステップS130)。一方、ステップS120において、処理対象の道路区間が、走行規制のある都市に属する道路区間であると判定されない場合、または、ステップS125において、処理対象の道路区間が属する都市が表示リストに未登録であると判定されない場合、制御部20は、ステップS130をスキップする。
【0037】
ステップS130が実行された場合、または、スキップされた場合、制御部20は、案内部21eの機能により、処理対象の道路区間が最後または国境であるか判定する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、走行予定経路を構成する道路区間を現在地側から目的地側に向かって順次処理対象にしていく。このため、目的地に達する道路区間は走行予定経路の最後の道路区間であり、当該道路区間を処理対象としてステップS120~S130が実行されると、次の道路区間は存在しない。そこで、制御部20は、走行予定経路に基づいて、処理対象の道路区間が最後の道路区間であるか否か判定する。さらに、本実施形態においては、国境の通過を案内のトリガにしているため、走行予定経路上で再度国境を越える場合には、国境を超える前までの道路区間を処理対象とする。このため、制御部20は、処理対象の道路区間が国境と重なるか否か判定する。
【0038】
以上の判定により、処理対象の道路区間が最後または国境のいずれにも該当しないと判定された場合、制御部20は、案内部21eの機能により、次の道路区間を処理対象の道路区間に設定する(ステップS140)。すなわち、制御部20は、走行予定経路において、現在の処理対象の道路区間の次に接続された道路区間を、新たな処理対象の道路区間に設定する。ステップS140が実行されると、制御部20は、ステップS120以降の処理を繰り返す。
【0039】
一方、ステップS135において、処理対象の道路区間が最後または国境の少なくとも一方に該当すると判定された場合、制御部20は、案内部21eの機能により、進入した国および表示されたリストに登録された都市の走行規制を案内する(ステップS145)。すなわち、制御部20は、走行規制情報30bを参照し、ステップS105において進入したと判定された国に対応づけられた走行規制の内容を取得する。また、制御部20は、走行規制情報30bを参照し、表示リストに登録された都市に対応づけられた走行規制の内容を取得する。そして、制御部20は、取得された走行規制と地域とを対応づけてユーザI/F部44の表示部に表示させる。
【0040】
図3に示す例においては、B国における走行規制情報30bが存在し、B国内の都市であるa市、c市、b市、d市における走行規制情報30bが存在することが想定されている。この場合、ステップS120~S140の処理過程において、車両の現在地Cより前方の道路区間が順次処理対象となって、表示リストへの都市の登録が順次実行される。最初に処理対象となる道路区間は、現在地の次の道路区間であり、a市に属する。従って、当該道路区間を処理対象とする処理によってa市が表示リストに登録される。
【0041】
また、走行予定経路に沿って順次処理対象の道路区間が前方に移動していくが、a市に属する道路区間が処理対象となっている状態の場合に、表示リストに変化はない。一方、処理対象の道路区間がd市に属する状態になるとd市が表示リストに登録される。同様に、処理対象の道路区間がb市に属する状態になるとb市が表示リストに登録される。c市においても走行規制は存在するが、走行予定経路がc市内に存在しないため、c市は表示リストに登録されない。
【0042】
このような登録がされた状態でステップS145が実行されると、図3の左側に示すように、走行規制が案内される。本実施形態においては、地域とその地域における走行規制とが対応づけられた状態で案内される。具体的には、現在地が属する国における走行規制が存在する場合、制御部20は、当該国と走行規制とを対応づけて表示する。図3においては、B国内で走行する際にステッカーの提示が必要であることが表示されている。
【0043】
また、表示リストに都市が登録されている場合、制御部20は、表示リストでの登録順に都市と走行規制とを対応づけて表示する。表示リストへの登録順は、走行予定経路の走行順序に相当するため、本実施形態においては、走行予定経路での走行順に走行規制のある都市が表示され、さらに、走行規制が対応づけられて表示される。
【0044】
図3においては、a市において排ガス規制が存在し、d市内を走行する際には消火器を車両に積載することが必要であるという規制が存在し、b市内を走行する際には替えのライトバルブが必要であるという規制が存在することが示されている。d市、b市における規制の表示は、装備の準備が必要であることを示しているため、当該表示は走行規制情報30bが示す規制に従うために必要な行為の案内である。従って、当該案内に基づいて、利用者は、走行規制を遵守するために必要な行為を知ることができる。例えば、車両に消火器が積載されていない場合、利用者はd市に進入する前に消火器を購入する必要があると認識することができる。
【0045】
本実施形態において、さらに、制御部20は、案内部21eの機能により、走行規制情報30bが示す規制に従うために必要な行為を行うための施設を案内する。図3に示す例において、当該施設は、走行規制を遵守するために必要な装備を購入可能な店舗であり、消火器を購入可能な店舗をS1、替えバルブを購入可能な店舗をS2として示している。また、図3においては、地図Mに店舗S1,S2の位置がアイコンによって表示され、案内Gには走行規制の案内に対して店舗S1,S2のアイコンが併記されている。
【0046】
このような表示を行うため、制御部20は、案内Gに表示すべき走行規制を特定し、当該表示すべき走行規制に、装備の準備が必要であるという規制が含まれる場合、地図情報30aの地物データを参照し、当該装備を示す情報が対応づけられた店舗を特定する。さらに、制御部20は、特定された店舗の中から、走行規制が存在する都市よりも手前の領域(当該都市と現在地との間の走行予定経路から既定範囲の領域)に存在する店舗を特定する。
【0047】
そして、制御部20は、特定された店舗の地物データに基づいて店舗の位置を特定し、ユーザI/F部44の表示部を制御し、地図M内の該当する位置に店舗を示すアイコンを表示させる。さらに、案内G内の走行規制の案内の表示位置に対応づけて同一のアイコンを表示させる。この構成によれば、利用者は、走行規制を遵守するために必要な行為を行うべき店舗の位置を容易に認識することができる。従って、利用者は、走行規制が存在する都市に進入する前に、装備を購入するなどの行為を行うことが可能である。
【0048】
(3)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、走行予定経路が属する地域の走行規制を当該地域に進入する前に案内する限りにおいて、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、地図表示システムは、車両等に搭載された装置であっても良いし、可搬型の端末によって実現される装置であっても良いし、複数の装置(例えば、クライアントとサーバ)によって実現されるシステムであっても良い。
【0049】
地図表示システムを構成する現在地取得部21a、走行予定経路取得部21b、地図情報取得部21c、進入検知部21d、案内部21eの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していてもよい。このような構成としては、種々の構成が想定される。例えば、ナビゲーションシステムがサーバに対して通信を介して要求を行うことによって地図の描画結果や経路探索結果等が取得される構成等であってもよい。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0050】
走行予定経路取得部は、車両の走行予定経路を取得することができればよい。走行予定経路は、上述のように、利用者が設定した目的地までの経路として探索された経路であっても良いし、推定された経路であっても良い。経路の推定は、種々の手法で実施されてよく、例えば、車両の現在地から道なりに走行する道路が経路であると推定する構成等を採用可能である。道なりに走行する道路は、種々の手法で特定されて良く、例えば、同一属性の道路や、交差点での進行方向が直進に最も近い道路が道なりであるとみなされる構成等を採用可能である。
【0051】
進入検知部は、現在地および地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への車両の進入を検知することができればよい。すなわち、地図情報には、各道路が属する地域を示す情報が含まれており、複数の種類の分類で地域が定義される。進入の検知は、進入したことの検知であっても良いし、近い将来に進入する予定であることの検知であっても良い。後者としては、走行を継続した場合に第1の地域内に進入することが確定する、または、推定される状態の検知であっても良い。
【0052】
案内部は、車両の第1の地域内への進入が検知された場合、第1の地域に関する情報と、第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、を案内することができればよい。すなわち、案内部は、広域の分類である第1の地域内への進入をトリガにして、広い地域に関する情報とともに、走行予定経路が通るより狭い地域に関する情報を案内する。
【0053】
第1の地域に関する情報と、第2の地域に関する情報は、それぞれの地域に対応づけられた情報であれば良い。従って、上述の実施形態のような走行規制情報以外にも種々の情報であって良い。どのような情報であっても、利用者は第2の地域に到達する前に、第2の地域に関する情報を認識することができる。
【0054】
さらに、第1の地域に関する情報と、第2の地域に関する情報は、車両の走行に関する情報であることが好ましく、上述の実施形態のような走行規制情報に限定されない。例えば、これらの情報が交通情報である構成等が採用されてもよい。交通情報としては、種々の情報が挙げられ、例えば、渋滞情報や工事の情報が挙げられる。この場合、例えば、第1の地域に関する情報としては、ホリデーシーズンであることにより、他の時期より第1の地域全体で渋滞が増加していることを示す情報等が挙げられる。第2の地域に関する情報としては、走行予定経路に含まれる道路の渋滞情報が挙げられる。
【0055】
この構成は、例えば、上述の図1に示すナビゲーションシステム10が通信部を備え、当該通信部を介して交通情報を取得可能である構成によって実現可能である。すなわち、制御部20が進入検知部21dの機能によって進入を検知した場合に、制御部20が案内部21eの機能によって通信部を介して第1の地域および第2の地域の交通情報を取得し、案内する構成等によって実現可能である。この構成によれば、利用者は、第1の地域全体の走行に際して注意すべき交通情報と、走行予定経路の走行に際して注意すべき交通情報とを把握することができる。
【0056】
第2の分類は、第1の地域をより細分化するための分類であれば良い。すなわち、第22の地域は、少なくとも一部が第1の地域内に存在する地域であり、第1の地域より狭い地域である。このような分類としては、例えば、行政区分が挙げられる。具体的には、上述の実施形態のように、第1の分類が国の分類であり、第2の分類が都市の分類である例が挙げられる。むろん、分類は他の分類であって良く、例えば、第1の分類が県や州の分類であり、第2の分類が都市の分類である構成等であっても良い。また、第1の分類が国よりも広域の分類(例えば、EU圏等)であり、第2の分類が国である構成等であっても良い。
【0057】
さらに、案内のトリガは、種々のトリガであって良く、国境沿いにある都市についても都市への進入前に情報を案内するようにトリガが設定されていても良い。例えば、国境沿いにある都市から既定距離手前の地点になった場合に情報が案内される構成等であっても良い。図3に示す例であれば、少なくともa市の走行規制情報30bについては、A国の国境を通過する前に案内されても良い。
【0058】
さらに、本発明のように走行予定経路が属する地域の走行規制を当該地域に進入する前に案内する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…ナビゲーションシステム、20…制御部、21…地図表示プログラム、21a…現在地取得部、21b…走行予定経路取得部、21c…地図情報取得部、21d…進入検知部、21e…案内部、30…記録媒体、30a…地図情報、30b…走行規制情報、41…GNSS受信部、42…車速センサ、43…ジャイロセンサ、44…ユーザI/F部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在地を取得する現在地取得部と、
前記車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得部と、
地図情報を取得する地図情報取得部と、
前記現在地および前記地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への前記車両の進入を検知する進入検知部と、
前記車両の前記第1の地域内への進入が検知された場合、
前記第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で前記走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、
を案内する案内部と、
を備える地図表示システム。
【請求項2】
前記情報は、走行規制情報である、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項3】
前記案内部は、
前記走行規制情報が示す規制に従うために必要な行為を案内する、
請求項2に記載の地図表示システム。
【請求項4】
前記案内部は、
前記行為を行うための施設を案内する、
請求項3に記載の地図表示システム。
【請求項5】
前記施設は、
前記規制が存在する地域より手前に存在する、
請求項4に記載の地図表示システム。
【請求項6】
前記情報は、交通情報である、
請求項1に記載の地図表示システム。
【請求項7】
前記車両の前記第1の地域内への進入の検知は、
前記車両が前記第1の地域内に進入したことの検知である、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項8】
前記案内部は、
前記第1の地域の境界沿いに存在する前記第2の地域に関する前記情報を、前記車両が前記第2の地域に進入する前に案内する、
請求項7に記載の地図表示システム。
【請求項9】
前記車両の前記第1の地域内への進入の検知は、
前記車両が前記第1の地域内に進入する予定であることの検知である、
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項10】
前記案内部は、
前記車両の進入が検知された前記第1の地域内に含まれ、かつ、前記走行予定経路が存在する前記第2の地域に関する前記情報の全てを同時に案内する、
請求項1~請求項9のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項11】
前記案内部は、
前記第1の地域に関する前記情報を案内する、
請求項1~請求項10のいずれか一項に記載の地図表示システム。
【請求項12】
前記案内部は、
前記車両の進入が検知された前記第1の地域に関する前記情報の全てと、
前記車両の進入が検知された前記第1の地域内に含まれ、かつ、前記走行予定経路が存在する前記第2の地域に関する前記情報の全てと、
を同時に案内する、
請求項11に記載の地図表示システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
上記の目的を達成するため、地図表示システムは、車両の現在地を取得する現在地取得部と、車両の走行予定経路を取得する走行予定経路取得部と、地図情報を取得する地図情報取得部と、現在地および地図情報に基づいて、第1の分類によって分類された第1の地域内への車両の進入を検知する進入検知部と、車両の第1の地域内への進入が検知された場合、第1の地域を細分化するための第2の分類によって分類された地域の中で走行予定経路が存在する地域である第2の地域に関する情報と、を案内する案内部と、を備える。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
すなわち、地図表示システムにおいては、第1の地域内への車両の進入をトリガにして、走行予定である第2の地域に関する情報案内する。従って、車両に搭乗した利用者が第2の地域に進入する前に、当該第2の地域に対応した情報を利用者に案内できる可能性を高めることができる。このため、利用者は、第2の地域に進入する前に、当該情報に応じた行為を行うことが可能になる。