(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127046
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】塗布方法および塗布装置
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20220824BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20220824BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20220824BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05C5/00 101
B05C11/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024964
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】313004403
【氏名又は名称】株式会社フジシール
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】羽田 繁
(72)【発明者】
【氏名】堀川 嗣人
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC74
4D075AC88
4D075AC91
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA06
4D075EA35
4F041AA02
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA22
4F041BA34
4F041BA52
4F042AA02
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA08
4F042BA12
4F042CB07
(57)【要約】
【課題】ビード塗布の際の薬剤の糸引き現象を抑えることができる塗布方法および塗布装置を提供する。
【解決手段】塗布方法は、薬剤5を吐出するための出口2を有するノズル1が、対象物3の表面4から一定の距離を隔てて表面4に対向するように位置決めされ、かつ、ノズル1が薬剤5を吐出し続けている状態で、表面4に平行な方向に、表面4をノズル1に対して相対的に移動させる工程と、前記移動させる工程の後で、ノズル1からの薬剤5の吐出を停止する工程と、前記吐出を停止する工程の後で、出口2を第1部材に当接させる工程と、前記当接させる工程の後で、出口2を前記第1部材から離隔させる工程とを含む。前記第1部材は、対象物3であってもよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を吐出するための出口を有するノズルが、対象物の表面から一定の距離を隔てて前記表面に対向するように位置決めされ、かつ、前記ノズルが前記薬剤を吐出し続けている状態で、前記表面に平行な方向に、前記表面を前記ノズルに対して相対的に移動させる工程と、
前記移動させる工程の後で、前記ノズルからの前記薬剤の吐出を停止する工程と、
前記吐出を停止する工程の後で、前記出口を第1部材に当接させる工程と、
前記当接させる工程の後で、前記出口を前記第1部材から離隔させる工程とを含む、塗布方法。
【請求項2】
前記第1部材は、前記対象物である、請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記当接させる工程から前記離隔させる工程までの間、前記ノズルを、前記表面に平行な方向での前記表面の相対的な移動に追従させる、請求項1または2に記載の塗布方法。
【請求項4】
薬剤を吐出するための出口を有し、前記薬剤の吐出の有無を切替可能なノズルと、
前記ノズルの対象物の表面に対する相対的な位置を規定する位置決め機構と、
前記表面に平行な方向に、前記表面を前記ノズルに対して相対的に移動させるための移動機構と、
前記ノズルにおける前記薬剤の吐出の有無および前記位置決め機構を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記表面から一定の距離を隔てて前記表面に対向するように前記ノズルを配置した状態で、前記ノズルが前記薬剤を吐出する状態とし、
前記ノズルが前記薬剤を吐出し続けている状態で、前記移動機構の働きにより前記表面を前記ノズルに対して相対的に移動させたのちに、
前記ノズルからの前記薬剤の吐出を停止させ、
前記薬剤の吐出が止まっている状態で、前記出口を第1部材に当接させたのちに、前記出口を前記第1部材から離隔させるように、制御する、塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布方法および塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接着剤などの薬剤の一般的な塗布方法のひとつとして、ビード塗布が知られている。たとえば接着剤をビード塗布する場合、「ホットメルト」と呼ばれる状態の接着剤をノズルから吐出して対象物に塗布する。ノズルは、接着剤の吐出の有無を切り換えるバルブを備える。対象物に対するノズルの高さは一定として、対象物をノズルに対して相対的に移動させつつ、バルブの開閉を切り換えることによって、対象物の表面のうちの所望の範囲に接着剤を塗布していた。
【0003】
安定して塗布するための技術が、特開2012-71244号公報(特許文献1)に記載されている。塗布の開始位置および終了位置において、塗布状況を改善するための技術が特開2002-113411号公報(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-71244号公報
【特許文献2】特開2002-113411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接着剤をビード塗布する場合においては、ノズルのバルブを閉じることによって接着剤の吐出を停止していても、通常、ノズルの先端には、粘性がある状態の接着剤が残留している。この残留した接着剤が糸を引いた状態となる場合がある。接着剤が糸を引くと、不所望な箇所に接着剤が付着してしまい外観を悪化させるので、糸引き現象はなるべく抑えることが望まれる。
【0006】
これは、接着剤に限らず、ある程度の粘性を有する他の薬剤をビード塗布する場合においても、同様に問題となることである。
【0007】
そこで、本発明は、ビード塗布の際の薬剤の糸引き現象を抑えることができる塗布方法および塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に基づく塗布方法は、薬剤を吐出するための出口を有するノズルが、対象物の表面から一定の距離を隔てて上記表面に対向するように位置決めされ、かつ、上記ノズルが上記薬剤を吐出し続けている状態で、上記表面に平行な方向に、上記表面を上記ノズルに対して相対的に移動させる工程と、上記移動させる工程の後で、上記ノズルからの上記薬剤の吐出を停止する工程と、上記吐出を停止する工程の後で、上記出口を第1部材に当接させる工程と、上記当接させる工程の後で、上記出口を上記第1部材から離隔させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薬剤の吐出を停止した後でノズルの出口が第1部材に当接するので、ビード塗布の際の薬剤の糸引き現象を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に基づく実施の形態1における塗布方法のフローチャートである。
【
図2】本発明に基づく実施の形態1における塗布方法の第1の説明図である。
【
図3】本発明に基づく実施の形態1における塗布方法の第1の説明図である。
【
図4】本発明に基づく実施の形態1における塗布方法で見られる塗布装置のノズルの出口の軌跡を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
明細書および特許請求の範囲において登場する「薬剤」は、接着剤の上位概念である。「薬剤」は、「接着剤」を含み、接着剤以外の種類の薬剤も含む。
【0012】
(実施の形態1)
(塗布方法)
図1~
図4を参照して、本発明に基づく実施の形態1における塗布方法について説明する。この塗布方法のフローチャートを
図1に示す。
【0013】
本実施の形態における塗布方法では、薬剤を吐出するための出口を有するノズルが、対象物の表面から一定の距離を隔てて前記表面に対向するように位置決めされ、かつ、前記ノズルが前記薬剤を吐出し続けている状態で、前記表面に平行な方向に、前記表面を前記ノズルに対して相対的に移動させる工程S1と、前記移動させる工程S1の後で、前記ノズルからの前記薬剤の吐出を停止する工程S2と、前記吐出を停止する工程S2の後で、前記出口を第1部材に当接させる工程S3と、前記当接させる工程S3の後で、前記出口を前記第1部材から離隔させる工程S4とを含む。
【0014】
工程S1を行なう様子を
図2に示す。
図2では、塗布装置101を用いてこの塗布方法が実施される様子が示されている。塗布装置101は、ノズル1を備える。ノズル1は、薬剤を吐出するための出口2を有する。
図2では、対象物3の表面4に対する塗布が行なわれている。出口2から薬剤5が吐出されている。薬剤5は、たとえば接着剤であってもよい。工程S1としては、ノズル1が薬剤5を吐出し続けている状態で、表面4に平行な方向に、表面4をノズル1に対して相対的に移動させている。ここでいう「相対的に移動」とは、表面4が静止した状態でノズル1を移動させてもよく、ノズル1が静止した状態で表面4を移動させてもよいが、
図2に示した例では、ノズル1は静止しており、表面4が矢印91の向きに移動している。塗布装置101の詳細については、後述する。
【0015】
工程S2では、制御部33からの指示によって、ノズル1からの薬剤5の吐出が停止される。ノズル1の内部に開閉機構が設けられていて、この開閉機構の状態を制御部33によって決定するものであってもよい。すなわち、工程S1では開状態であった開閉機構が閉状態に切り換えられることによって薬剤5の吐出が停止されるものであってもよい。
【0016】
工程S3では、
図3に示すように、ノズル1の出口2が第1部材に当接させられる。ここで示す例では、「第1部材」とは、薬剤5が塗布されるべき対象物3である。第1部材は、対象物3とは別に用意された何らかの部材であってもよいが、本実施の形態で示すように対象物3そのものを第1部材として利用してもよい。
【0017】
工程S4では、ノズル1の出口2は、対象物3の表面4から離隔する。
【0018】
(ノズルの出口の軌跡)
ここまでの動作を、出口2の軌跡に注目して表示したものが、
図4である。この図では、上段において出口2の軌跡を表示し、下段において、表面4に形成される薬剤5のビードを表示している。表面4は矢印91の向きに一定速度で移動する。
図4の上段では、表面4を基準として相対的に見たときの出口2の軌跡を実線の折れ線で表示している。
図4において左向きの矢印と共に記載された数字は、表面4における基準位置11からの水平方向の距離をmm単位で表す。
【0019】
図4に示した例では、薬剤5を2ヶ所にビード状に塗布している。作業後には表面4に薬剤5a,5bが配置されている。薬剤5a,5bは、それぞれ所望の位置において所望の長さだけ形成される。ここでは、一例として、薬剤5aより薬剤5bの方が長く形成される。
【0020】
ノズル1は、開閉可能なバルブを有する。このバルブが開状態であれば、薬剤が一定のペースで出口2から吐出され続ける。点P1は、表面4からたとえば高さ2.5mmの位置にある。表面4は矢印91の向きに移動している。出口2が点P1に達したときに、ノズル1のバルブは開状態となる。こうして工程S1が始まる。点P2に至ったときにノズル1のバルブは閉状態に切り替わる。こうして、薬剤5の吐出は停止する。これが工程S2である。
【0021】
所望の距離だけ薬剤を吐出した後、ノズル1は、降下する。この降下に伴い、出口2は、点P2から点P3へと移動する。点P3において出口2の高さは0となっている。すなわち、出口2は、対象物3の表面4に当接している。このように出口2を対象物3に当接させる動きが、工程S3である。その後、ノズル1は上昇する。その結果、出口2は、対象物3の表面4から離隔する。すなわち、出口2は、点P3から点P4へと移動する。点P4は、表面4からの高さがたとえば2.5mmである。出口2の点P3から点P4への移動が工程S4である。点P4は、ノズル1の退避モードに相当する。こうして、薬剤5aの塗布が完了する。
【0022】
さらに、薬剤5bを塗布するために、再び工程S1~S4が繰り返される。まず、ノズル1の出口2は、点P4から移動して点P5に至る。ここで示す例では、点P4から点P5にかけて、ノズル1は同じ高さを維持したまま水平方向に移動しているが、もし点P4の高さが点P5の高さと異なる場合には、必要に応じて高さ方向の移動も行なわれてから点P5に至る。点P5において、ノズル1のバルブは開状態に切り替わる。これにより薬剤の吐出が開始される。この状態で、点P6に至るまで表面4が相対的な移動を続ける。これが工程S1である。出口2が点P6に達したときに、工程S2として、バルブは閉状態に切り替わる。出口2は、点P7へと移動する。点P7において出口2の高さは0となっている。すなわち、出口2は、対象物3の表面4に当接している。このように出口2を対象物3に当接させる動きは、工程S3である。その後、工程S4として、出口2は表面4から離隔する。こうして、薬剤5bの塗布が完了する。
【0023】
(作用・効果)
本実施の形態では、工程S2の後に工程S3を含んでいるので、ノズル1の出口2が第1部材に当接することによって、薬剤の糸引き現象を抑えることができる。
【0024】
本実施の形態で示したように、第1部材は、対象物3であることが好ましい。こうすれば、他の部材を用意する必要がなく、出口2の移動距離を短く抑えることができるので、好ましい。
【0025】
なお、当接させる工程S3から離隔させる工程S4までの間、ノズル1を、表面4に平行な方向での表面4の相対的な移動に追従させることが好ましい。すなわち、ノズル1の出口2が点P3に達したときに、表面4の矢印91に沿った平行移動と同期するように、ノズル1も矢印P2に沿ってわずかな距離だけ移動させる。その結果、出口1と表面4とは相対的な位置関係を変化させないままでいる時間がわずかに存在するようになる。このようにすることによって、より効果的に薬剤の糸引き現象を抑えることができる。
図4の上段では、相対的な移動を表現しているのであり、ノズル1と表面4とが同期して移動している間は、相対的な位置関係は変化していないので、この間の動きは、長さを有する線としては、表れてこない。
図4の上段においては、ノズル1と表面4とが同期して移動している間は、1つの点に相当する。出口2が点P3にいる間に、そのような同期した動きがなされる。
【0026】
(塗布装置)
図2を参照して、実施の形態1で用いられた塗布装置101について説明する。
【0027】
塗布装置101は、薬剤5を吐出するための出口2を有し、薬剤5の吐出の有無を切替可能なノズル1と、ノズル1の対象物3の表面4に対する相対的な位置を規定する位置決め機構31と、表面4に平行な方向に、表面4をノズル1に対して相対的に移動させるための移動機構32と、ノズル1における薬剤5の吐出の有無および位置決め機構31を制御する制御部33とを備える。制御部33は、表面4から一定の距離を隔てて表面4に対向するようにノズル1を配置した状態で、ノズル1が薬剤5を吐出する状態とし、ノズル1が薬剤5を吐出し続けている状態で、移動機構32の働きにより表面4をノズル1に対して相対的に移動させたのちに、ノズル1からの薬剤5の吐出を停止させ、薬剤5の吐出が止まっている状態で、出口2を第1部材に当接させたのちに、出口2を第1部材から離隔させるように、制御する。位置決め機構31は、ノズル1の高さを調整する機構を含む。移動機構32は、対象物3を載せて水平方向に移動するコンベアまたはテーブルのような構造を含んでいてよい。制御部33は、コンピュータによって実現することができる。
【0028】
このような塗布装置101では、薬剤5の吐出を停止させた後でノズル1の出口2が第1部材に当接するように制御されるので、薬剤の糸引き現象を抑えることができる。
【0029】
対象物3の表面4に配置された薬剤5がたとえば接着剤である場合には、他の何らかの物が、薬剤5を介して表面4に押し当てられれば、その結果、その物と対象物3とを接着することができる。
【0030】
なお、本発明は、特に粘性のある薬剤を扱う場合に好適である。ここでいう薬剤としては、たとえば接着剤が挙げられる。
【0031】
なお、上記実施の形態のうち複数を適宜組み合わせて採用してもよい。
【0032】
なお、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0033】
1 ノズル、2 出口、3 対象物、4 表面、5,5a,5b 薬剤、11 基準位置、31 位置決め機構、32 移動機構、33 制御部、91,92 矢印、101 接着剤塗布装置。