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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127062
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】台所用の食器洗剤シート
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/262 20060101AFI20220824BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20220824BHJP
   D06M 13/184 20060101ALI20220824BHJP
   D06M 13/388 20060101ALI20220824BHJP
   D06M 101/06 20060101ALN20220824BHJP
【FI】
D06M13/262
D06M15/59
D06M13/184
D06M13/388
D06M101:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024981
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】514003005
【氏名又は名称】株式会社九州フラワーサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】田中 正文
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB05
4L033BA11
4L033BA16
4L033BA29
4L033BA67
4L033CA55
(57)【要約】
【課題】この発明では洗剤自体を使い捨てのシートに含浸させてその取扱いと洗浄作業とを簡便化にすることができると共に、樹脂容器のような保管時の空間を要することがなくシート状洗剤であることから使用後の廃棄ができると共にコットン素材であるから廃棄しても環境衛生に悪影響を及ぼすこともなく洗剤の取扱いや保管に格段の利便性を上げることができる台所用の食器洗剤シートを提供せんとするものである。
【解決手段】この発明は一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体に食器洗剤を含浸させてなる台所用の食器洗剤シートに係る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体に食器洗剤を含浸させてなる台所用の食器洗剤シート。
【請求項2】
食器洗剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸などの界面活性剤やアルキルアミンオキシドなどの界面活性剤やエタノール、ポリリジン等のアルコール製剤などのうちから一種或いは二種以上を使用したことを特徴とする請求項1に記載の台所用の食器洗剤シート。
【請求項3】
シート本体は空気貯留空間を密集させた表面多孔性の使い捨てのコットン素材としたことを特徴とする請求項1、2に記載の台所用の食器洗剤シート。
【請求項4】
シート本体は略円形状或いは方形状としたことを特徴とする請求項1~3に記載の台所用の食器洗剤シート。
【請求項5】
含浸する食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させたことを特徴とする請求項1~4に記載の台所用の食器洗剤シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、台所用の食器洗剤シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、台所用の食器洗剤としてはボトルに収納された液体洗剤が使用されている。
【0003】
洗剤の成分については食器に付着した食べかすの種類に応じて油性成分除去用の洗剤であったり、飯滓等の澱粉質の食べかすを容易に溶解しやすい洗剤成分であったり、洗浄する食品滓の成分に応じてそれぞれ液体洗剤の種類を変えて樹脂容器に収納している。
【0004】
従って、台所には数種類の洗剤容器が用意されシンクを中心とした台所空間を占拠している。
【0005】
更には、一般に洗剤はスポンジなどの媒体を介して食器を洗浄するものであるために食器洗浄後には媒体のスポンジを再度洗浄して菌の除去をするなどの衛生管理もしなければならない等の煩雑さがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007―161739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように台所における食器洗剤の実態は一般に狭い台所空間に必ず数種類の洗剤収納樹脂容器が揃えられ食器洗浄の用途に応じて樹脂容器を選択して食器洗浄作業を行っており、更には自動食洗器は占拠空間がさらに大となる欠点があった。
【0008】
従って、かかる食器洗浄剤の占拠する空間が調理空間を圧迫し調理作業にその分支障を生じると共に、容器から液体洗剤を抽出する作業も容器を把持しながらの押し出し動作をしなければならず煩雑であり食器洗浄作業の効率化にも逆行するものでもあった。
【0009】
更には、従来の食器洗浄にはスポンジに洗剤を含浸させて水で泡立てて洗浄するものであるために洗浄作業後にはスポンジを再度洗浄して菌の付着をなくす等食器洗浄後の煩雑な作業の一つとなっていた。
【0010】
この発明では洗剤自体を使い捨てのシートに含浸させてその取扱いと洗浄作業とを簡便化にすることができると共に、樹脂容器のような保管時の空間を要することがなくシート状洗剤であることから使用後の廃棄ができると共にコットン素材であるから廃棄しても環境衛生に悪影響を及ぼすこともなく洗剤の取扱いや保管に格段の利便性を上げることができる台所用の食器洗剤シートを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体に食器洗剤を含浸させてなる台所用の食器洗剤シートに関する。
【0012】
また、食器洗剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸などの界面活性剤やアルキルアミンオキシドなどの界面活性剤やエタノール、ポリリジン等のアルコール製剤などのうちから一種或いは二種以上を使用したことを特徴とする。
【0013】
また、シート本体は空気貯留空間を密集させた表面多孔性の使い捨てのコットン素材としたことを特徴とする。
【0014】
また、シート本体は略円形状或いは方形状としたことを特徴とする。
【0015】
また、含浸する食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させたたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体に食器洗剤を含浸させたことにより、食器用洗剤やスポンジをシンク周りに配置する必要がなくなる。その結果、調理空間を可及的に広く確保することができる。また、スポンジに食器用洗剤を抽出する作業も不要となり、食器洗浄作業時における煩雑な作業を省略できる。
【0017】
また、食器洗剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸などの界面活性剤やアルキルアミンオキシドなどの界面活性剤やエタノール、ポリリジン等のアルコール製剤などのうちから一種或いは二種以上を使用しても良い。このような構成により、食器や調理器具などに付着した油性成分を効率的に除去することができる。また、これら成分を含ませた食器洗剤シートによれば、抗菌効果を発揮させることが可能である。従って、食器や調理器具などの汚損部分の洗い残しを原因とするヌメリや食中毒を防ぐ効果も期待できる。
【0018】
また、シート本体は空気貯留空間を密集させた表面多孔性の使い捨てのコットン素材としたことにより、本食器洗剤シートに水を含ませて食器等をこすれば、この動作に応じて、シート本体表面の空気貯留空間の閉開が繰り返され、シート本体から食器洗剤が滲出して空気を抱き込みつつ良好な泡立ちを実現することができる。
【0019】
しかも、このような表面構造は、指の表面の微細な凹凸との間で摩擦が働くため、食器洗い中に洗剤で滑りやすい状態となったシートを滑り落としてしまうことを防止できる。また、汚れとの接触面積が大きくなるため、食器表面の汚れをより堅実に絡めとることができる。
【0020】
シート本体は略円形状或いは方形状としたことにより、食器や調理器具の内底の形状に合わせて使用できる食器洗剤シートを提供することができる。これにより、洗浄しにくい内底隅部も確実にこすりながら洗浄することができる。
【0021】
さらに、このような食器洗剤シートによれば、複数枚を積層して引き出しや箱に保管することができる。これにより、調理空間を広く確保しながらも、必要な際に取り出して使用できるため、食器洗浄作業を効率よく行うことができる。
【0022】
含浸する食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させたことにより、安全性の高い抗菌機能を備えた食器洗剤シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態にかかる食器洗剤シートの全体構造と使用方法を説明する図である。
図2】本実施形態にかかる食器洗剤シートの製造方法を示すブロック図である。
図3】本実施形態にかかる紡績糸の構成を説明する図である。
図4】本実施形態にかかるシート本体の構造を説明する断面図である。
図5】本実施形態にかかる紡績糸の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の要旨は、一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体に食器洗剤を含浸させてなる台所用の食器洗剤シートに関する。
【0025】
食器洗剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸などの界面活性剤やアルキルアミンオキシドなどの界面活性剤やエタノール、ポリリジン等のアルコール製剤などのうちから一種或いは二種以上を使用したことを特徴とする。
【0026】
シート本体は空気貯留空間を密集させた表面多孔性の使い捨てのコットン素材としたことを特徴とする。
【0027】
また、シート本体は略円形状或いは方形状としたことを特徴とする。
【0028】
また、含浸する食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させたことを特徴とする。
【0029】
本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。図1に本発明の台所用の食器洗剤シートAの外形図を示す。
【0030】
図1に示すように本発明の台所用の食器洗剤シートAは一定面積と一定形状を有する使い捨てのコットン素材からなるシート本体10に食器洗剤を含浸させてなる。
【0031】
形状としては略円形や略方形としており、略円形は円形の底の深い茶碗などの食器内部を洗浄する際に食器の内側に略円形の食器洗剤シートAを張り付け状態で収納して水と共に擦って泡立てして洗浄する。
【0032】
食器洗剤としてはアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、脂肪酸などの界面活性剤やアルキルアミンオキシドなどの界面活性剤やエタノール、ポリリジン等のアルコール製剤などのうちから一種或いは二種以上を使用する。これらの食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させる。
【0033】
また、シート本体10は空気貯留空間24を密集させた表面多孔性の使い捨てのコットン素材とした。すなわち、目の粗いコットン素材を使用することにより内部に空気貯留空間24を可及的に多く形成して含浸洗剤の可及的泡立ち機能を向上して洗浄機能の向上を図っている。
【0034】
なお、必要に応じてシート本体10は約数ミリ径の孔を多数穿設しておき空気の含有機能を増すと共に泡立ち機能も向上する。
【0035】
使い捨てのシート本体10の厚みは50μm~100μmとする場合や100μm~500μmとする場合や500μm~1000μmとする等の肉厚に各種のものがあり、食器付着の食物滓の種類や付着状況に応じて厚みの異なるシート本体10から適時選択して使用することができるように構成している。
【0036】
従って、各種厚みのシート本体10の食器洗剤シートAは洗浄対象物Bの状況に応じて選択することができるように数種類の厚みの異なるシート本体10を揃えておく。
【0037】
なお、これらのシート本体10は、図1(a)に示すように、積層して所定のケースCに収納して上部開口から一枚ずつ引き出し自在となるように構成しておく。例えばティッシュペーパの引き出し構造のように各シート本体10を互い違いに二つ折りして重ねて上面のシート本体10を引き出すごとにその下のシート本体10がケースCの開口部から飛び出して次のシート本体10の引き出しが可能な形態とすることにより台所空間で効率的に食器洗剤シートAの保管と取り出しができることになる。
【0038】
また、含浸する食器洗剤には茶葉のエキス成分を混入させ抗菌機能を保持させたことを特徴とする。従って、洗浄後の食器の殺菌抗菌機能も果たしうることになり簡単なシート本体10による食器の汚損除去に伴い食器の殺菌抗菌処理もできることになりその後の食器保管の衛生管理も容易になる。
【0039】
実際の洗浄においては、図1(b)に示すように、予め本発明のシート本体10を水に浸して水を含浸させてその状態で食器の汚損部分に押し当て擦ることにより泡立ちを生起しながら汚損部分の洗浄を行う。
【0040】
スポンジに洗剤を含浸させて擦る作業に比較してシート状であるために食器の汚損部分にシート本体10を密着させた際に手指先の指平でシート本体10を押さえて擦りながら移動させることになるために食器洗浄作業を指感触で感じながら行うことができる。従って、汚損部分を圧迫除去する作業が正確にかつ指感触で行えるため短時間で正確に食器洗浄が行える効果がある。
【0041】
食器洗浄後、食器洗剤シートAは、図1(c)に示すように、そのまま廃棄することができる。コットン素材であるために環境衛生上も支障がなく使用の利便性を各段に向上することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る食器洗剤シートの製造方法について図2を参照して説明する。なお、図2は本実施形態に係る食器洗剤シートAの製造方法を示す。
【0043】
本実施形態に係る食器洗剤シートAの製造方法について説明する。食器洗剤シートAの製造方法は、図2に示すように、シート本体の製造工程と、食器洗剤の調製工程と、シート本体に食器洗剤を含浸させる工程と、食器洗剤を乾燥させてシート本体にコーティングする工程とを有することを特徴としている。
【0044】
本実施形態におけるシート本体の製造工程は、コットンを原料として紡績糸を構成し、この紡績糸を織って所定の面積と形状とを備えたシート本体10を製造する工程である。
【0045】
コットンは優れた保温機能と保湿機能とを備えている。これらの機能は、コットンの繊維が扁平状で所々が捩じれている所謂「天然撚り」と呼ばれる形状であることや、繊維の内部が中空状であることに起因している。繊維の捩じれ形状は、表面積を大きくするために十分量の液状洗剤を表面に保持することができる。また中空部にも液状洗剤が入り込んで保持されることとなる。このような構造の繊維よりなる食器洗剤シートAは、濡らして使用すれば表面の洗剤と中空部の洗剤とが時間差で浸出してくることになるために、長時間に亘って洗浄作用を維持することが可能となる。
【0046】
本発明は、上述したコットンの繊維構造が食器洗剤を可及的に多く保持できると共に長時間に亘って洗浄効果を維持できる特徴を有する点に着目したものである。またコットンを原料とする紡績糸は水に濡れれば強度を増す特徴を備えるため、濡らして使用しても破損する虞がない。換言すれば、シート本体10の素材は、食器洗剤を多く保持可能であると共に長時間に亘って洗剤を浸出させる構造を備え、しかも使用時に破損しなければコットン以外の天然繊維や化学繊維を採用することができる。
【0047】
なお、シート本体10の原料とするコットンには、紡績する前に脱脂処理を施してもよい。脱脂処理を施すことにより、後の工程で含浸させる食器洗剤に含まれる界面活性剤とコットン繊維中の油脂との反応を抑制できる。したがって、このような工程を施せば、食器洗剤の界面活性剤の喪失による洗浄作用の低下がないために、食器洗剤の洗浄作用を高く維持した食器洗剤シートAを得ることができる。
【0048】
また、食器洗剤が界面活性剤を含まない場合であれば、コットンの繊維に含まれる油脂が液体洗剤を弾くことがないため、繊維の中空部の隅にまで食器洗剤を早く含侵させることができる。これにより、食器洗剤シートAの製造時間を短縮することが可能となる。
【0049】
さらに、コットンには漂白処理を施してもよい。特にコットンを過酸化水素などの弱酸性の薬剤で漂白すれば、コットン繊維の表面構造が荒れてザラついた触感となる。したがって、このような処理を施したコットンを原料とすれば、シート本体10表面のザラつきが食器の汚れを絡めとり、食器洗剤が化学的に汚れを除去する食器洗剤シートAを提供することができる。
【0050】
またコットンには染色処理を施すことができる。これにより、シート本体10の色に応じて含浸させる食器洗剤の種類を変えれば、複数種類の食器洗剤シートAの中から所望する機能を発揮するものを間違うことなく選択して使用できる。
【0051】
ここで紡績について簡単に説明すると、紡績とはコットンやウールなどの短い繊維の束を撚って糸を形成することである。撚り方としては、甘撚り、普通撚り、強撚りの三種が知られている。甘撚りとは、糸1mあたり約300回以下の撚り数(300個の撚り部14)の撚り方であり、普通撚りとは、糸1mあたり約500~600回の撚り数(500~600個の撚り部14)の撚り方であり、強撚りとは、糸1mあたり約800回以上の撚り数(800個以上の撚り部14)の撚り方を指す。
【0052】
かかる撚り数の違いは、最終的に製造される織物(シート本体10)の物性に影響を与える。すなわち、シート本体10の製造において使用する紡績糸11を所定の甘撚りとすることにより食器洗剤をより多く保持でき、また、食器等の汚れを効率的に吸着できるという特徴が発揮される。
【0053】
また、紡績を繰り返すことにより、紡績糸11の太さや物性を調整することができる。すなわち、コットン繊維を弛緩した甘撚りとした片撚り撚糸(構成糸12)を構成し、2本の片撚り撚糸(構成糸12)を撚り合わせて1本の紡績糸11を構成することができる。さらにこの紡績糸11を経糸11aおよび緯糸11bとして織成すれば、シート本体10を得ることができる。なお、シート本体10は、平織の布であっても良いが、パイル織とすることもできる。
【0054】
シート本体10は、図3の下半部に示すように、本実施形態では紡績糸11を2本の構成糸12にて構成されているため、撚りを解すと構成糸12aと、構成糸12bとに分けられる。
【0055】
また、それぞれの構成糸12a、12bは、図3の上半部に示すように、複数本の副構成糸13(本実施形態では2本の副構成糸13a、13b)に撚りをかけることで構成している。
【0056】
本実施形態においてシート本体10を構成する紡績糸11は、図3の下半部に示すように、複数本(本実施形態では2本)の構成糸12(構成糸12a、12b)を左撚りに撚って構成している。さらに、構成糸12aは副構成糸13a、13bを右撚りにて構成したものとし、構成糸12bは副構成糸13a、13bを左撚りにて構成したものとしている。附言すると、シート本体10を構成する紡績糸11は、副構成糸13a、13bに対し紡績糸11とは逆方向の撚りを施した構成糸12aと、副構成糸13a、13bに対し紡績糸11(経糸11aおよび緯糸11b)と同じ方向の撚りを施した構成糸12bとを甘撚りとした混合撚糸としている。
【0057】
このように、構成糸12aの撚り方向と構成糸12bの撚り方向とを真逆に構成した混合撚糸(紡績糸11)は、図5(a)に示すように、隣接する撚り部14の間で4本の副構成糸13からなる間隙を広く保持した構造となっている。これは、右撚りの構成糸12aと左撚りの構成糸12bとを左撚りの紡績糸11に撚った為、左撚り側にトルクが偏心することに起因している。
【0058】
そして、このような構成を備えた紡績糸11(経糸11aおよび緯糸11b)を織ることで、シート本体10を柔軟なものとすることができ、食器洗剤を担持しやすくなる。
【0059】
紡績糸11の太さは、製造するシート本体10の厚みに応じて変えることができる。具体的には、少人数分の食器洗浄用の薄い食器洗剤シートAを製造する場合には紡績糸を細くし、多人数分の食器洗浄用の厚い食器洗剤シートAを製造する場合には紡績糸を太くする。このように紡績糸の太さを変えれば、シート本体10の厚みを調整すると共に食器洗剤の含有量を調整することが可能となる。
【0060】
また、シート本体10は、紡績糸11(経糸11aおよび緯糸11b)よりなる織布であるため高い強度を備えている。これにより、食器や調理器具にシート本体10を力強く擦っても、シート本体10の繊維密度が低下することによる洗浄機能の悪化および破損を防ぐことができる。シート本体10の織り方は、紡績糸が使用時に解れなければ公知の織り方を採用することができる。具体的には、平織、斜文織、朱子織などから採用することができる。
【0061】
シート本体10は、糸の太さや撚り部14の数が異なる経糸11aと緯糸11bとを採用することによって表面に粗い凹凸面を形成してもよい。このような構成によれば、食器洗浄時に凸部で汚れを削り落とし凹部でその汚れを掻き取ることができるため、洗浄効果の高い食器洗浄シートを提供することができる。また経糸11aと緯糸11bとをそれぞれ異なる色に染めた紡績糸を採用すれば、意匠性を高めた食器洗剤シートAを提供することもできる。
【0062】
さらにシート本体10をパイル織とすれば、高い洗浄機能を付与することができる。すなわち、パイル21によってシート本体10の表面積が増加するため、より多量の食器洗剤を保持することが可能となる。しかも、摩擦によって食器汚れを除去しやすい食器洗剤シートAを提供することができる。
【0063】
図4は、本実施形態に係る食器洗剤シートAのシート状キャリアとして使用可能なパイル織のシート本体10の断面を示した模式図である。図4に示すようにシート本体10は、経糸11aおよび緯糸11bからなるベース生地15を備えており、このベース生地15の目部からパイル糸20をループ状に突出させることで複数のパイル21が形成されている。
【0064】
パイル糸20は、先に説明したシート本体10を構成する紡績糸11(経糸11aおよび緯糸11b)と同じ混合撚糸とすることができる。このように、パイル糸20をも混合撚糸とすることにより、パイル糸20の表面には極めて微小な産毛状のケバが植生する構造(以下、微毛植生構造ともいう。)が出現する。この微毛植生構造によれば、食器洗剤を担持する上で有利なのは勿論のこと、表面積が大きくなることで食器等に付着した汚れの吸着を良好に行うことができる。
【0065】
特にパイル糸20において撚り方を緊締した状態ではなく、弛緩状態の甘撚りとしたことにより、パイル21のループ部22で撚糸がやや解かれることでより多くの量の食器洗剤を繊維の間隙に保持することができる。更には、隣接するパイル間が均等に整順した並びとなって緻密なパイル地となりパイル形態の安定性、すなわちパイル先端が軟らかく解れた状態を保持し、食器等の汚れの吸着が大面積により極めて効率的に行われる。
【0066】
本実施形態においてパイル21の長さは、パイル毎に撚り部23を2個以上備えるように調整している。具体的には、図5(b)に示すように、仮に1m当たりの撚り回数を約300回の片撚りとした場合においては、10mmの長さの糸に2回以上の撚り(2個の撚り部23)が形成されるため、約5mmの高さのパイル地においては1個のパイル21に最大で2個以上の撚り部が存在することになる。
【0067】
これにより、コットンの繊維間には、図5(b)に示すように所定の間隙が形成されてこの間隙においてコットン繊維表面に微細な産毛状の植生状態が現出する。すなわち、各パイル21の撚り部23間に微細な立て毛が密集することとなり、洗剤の泡立ちはもちろん、汚れの吸着を促進する。
【0068】
また、パイル21の内側には微小な空間(以下、空気貯留空間24ともいう。)が形成される。このような空気貯留空間24は、後の工程で含浸させる食器洗剤を隣接する糸の間に多く保持することを可能とする。また、食器洗剤シートAを濡らして使用する際には空気を抱き込みつつ良好な泡立ちを実現するはたらきがある。
【0069】
可及的に多くの空気貯留空間24を設けるには、表面構造の粗い繊維や、甘撚りした片撚り撚糸をパイル糸20に採用することが望ましい。特に、甘撚りして形成した片撚り撚糸は、ループ状にした際に繊維同士がループの外方に広がって、空気を貯留するための間隙を可及的に多く形成することができる(図5(b)を参照。)。
【0070】
またシート本体10の厚みを調整するために、経糸或いは緯糸の延伸方向に引っ張って引き伸ばしたり、シート本体10をローラーの間を通して圧力で伸ばしたりすることもできる。
【0071】
シート本体10を引き伸ばせば、引き伸ばされた方向に延びる紡績糸は、引き伸ばされた方向と垂直方向に伸びる紡績糸と比較して繊維密度が低くなる。しかし、繊維が短いコットンを原料とする紡績糸は、引き伸ばされることによって撚りが解れ、表面に繊維の毛羽立ちを無数に形成することになる。この毛羽立ちがシート本体10の表面積を大きくする。したがって、シート本体10は紡績糸を織って構成すると共に引き伸ばすことによって以下の効果を生起する。すなわち、紡績糸を織ることによって引き伸ばしによる強度への影響を可及的に低くし、表面積を増加させることによって後の工程でコーティングする食器洗剤の量を増加させることができる。しかも食器を洗浄する際には、シート本体10の毛羽立ちが汚れを絡めとることによって高い洗浄効果を得ることができる。
【0072】
さらにシート本体10には、所定間隔に孔を設ける加工を施すことができる。具体的には、本実施形態に係る食器洗剤シートAの製造においては、紡績糸を織って形成したシート本体10を孔あけ治具とローラーとの間に連続的に通過させ、シート本体10の表面に錐状の孔あけ針を押圧して孔を形成する工程を備えることもできる。
【0073】
孔あけ治具およびローラーは互いに平行に配設されている。孔あけ治具には、回転軸に連動する複数枚の歯車が固定されている。歯車の外縁部には、多数の孔あけ針が設けられている。
【0074】
孔あけ針をシート本体10の表面に押圧することによって、漸次縮径する孔が形成されることになる。このような構造の孔は、シート本体10に無数の繊維密度のムラを形成する。したがって、繊維密度のムラをシート本体10に形成することにより以下の効果を奏する。すなわち、繊維密度の高い部分は、シート本体10の強度維持に寄与すると共に食器洗剤を多く保持する機能を果たす。繊維密度の低い部分は、空気貯留空間24を形成して泡立ちを良くしたり毛羽立ちやすくなるために、汚れを除去する機能を高めることができる。
【0075】
食器洗剤の調製工程は、食器の汚れを落とすことを目的とする洗剤や、細菌の除去や増殖抑制を目的とする溶剤を1種類或いは2種類以上混合させて液状の食器洗剤を調製する工程である。
【0076】
混合させる洗剤は、食器洗剤シートAの目的に合わせて自由に選択することができる。具体的には、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、長鎖脂肪酸塩、溶剤などから自由に選択することができる。
【0077】
また、食器洗剤には補助剤を加えることもできる。具体的には、香料、着色料、酵素、除菌剤、抗菌剤、研磨剤、漂白剤などを加えることができる。
【0078】
補助剤の一例としては、茶葉エキスを採用することができる。茶葉エキスに含まれるカテキンは、除菌作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、解毒作用および消臭作用を有することが知られている。したがって、食器洗剤に茶葉エキスを添加することによって、食器に残留する食中毒の原因となる細菌や毒素を除去することができる。また、臭いの強い食材を使用した後の食器であっても、その臭いを除去することもできる。
【0079】
シート本体に食器洗剤を含侵させる工程は、調製した食器洗剤にシート本体10を浸漬して、シート本体10の繊維の内部にまで食器洗剤を含ませる工程である。
【0080】
食器洗剤にシート本体10を浸漬させる時間は、食器洗剤の粘度や含有する各種成分の濃度、シート本体10の素材や厚み等に応じて選択することができ、シート本体10を構成する繊維の隅々にまで食器洗剤を含浸させることができれば特に限定されない。
【0081】
食器洗剤を乾燥させてシート本体10にコーティングする工程は、シート本体10を構成するコットンの繊維の表面および中空部に食器洗剤を残留させる工程である。具体的には、アルコール類を含まない食器洗剤をコーティングする場合であれば、食器洗剤中の液状成分を揮発させ、固形化させた食器洗剤を残留させる。またアルコール類を含む食器洗剤をコーティングする場合であれば、グリセリンや水溶性高分子ポリマーを添加して、ゲル様にした食器洗剤を残留させる。
【0082】
食器洗剤中の液状成分を揮発させる方法は、シート本体10を構成する繊維の内部まで液状成分を揮発させることができれば公知の方法を採用することができ、例えば自然乾燥や真空乾燥などを採用することができる。また、温風乾燥や赤外線乾燥などの加温による乾燥方法を採用することも可能ではあるが、食器洗剤に含有される成分の機能を消失しない温度に設定することが好ましい。
【0083】
なお、シート本体10に食器洗剤を含侵させる工程と食器洗剤を乾燥させてシート本体10にコーティングする工程とは、必要に応じて複数回繰り返すこともできる。このような食器洗剤の塗り重ねは、食器を洗浄するのに十分な量の食器洗剤をシート本体10に保持させることができる。
【0084】
食器洗剤の塗り重ねを行う場合、シート本体10に食器洗剤を含侵させる工程毎に食器洗剤の種類(含有成分)を変えることもできる。具体的には、最初に比較的に弱い界面活性剤と肌の保湿成分とを含んだ食器洗剤をコーティングし、次に強い界面活性剤を含んだ食器洗剤をコーティングすることもできる。このような食器洗剤シートであれば、最初は食器の汚れを強力に落とす界面活性剤が滲出し、時間の経過と共に肌を保護する成分が浸出する食器洗剤シートAを提供できる。
【0085】
このように、食器洗剤シートAの製造方法について説明したが、この製造方法に順序に限定されるものではなく、異なる工程を経て食器洗剤シートAを製造してもよい。要するに、一定面積と一定形状を有する使い捨て素材からなるシート本体10に食器洗剤を含侵させてなる食器洗剤シートAを製造できればよい。例えば、紡績糸の製造工程と、食器洗剤の調製工程と、紡績糸に食器洗剤を含侵させる工程と、紡績糸を織って食器洗剤シートを製造する工程とよりなる製造方法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0086】
A 食器洗剤シート
B 洗浄対象物
C ケース
10 シート本体
11 紡績糸
11a 経糸
11b 緯糸
12 構成糸
13 副構成糸
14 撚り部
15 ベース生地
16 孔
20 パイル糸
21 パイル
22 ループ部
23 撚り部
24 空気貯留空間
図1
図2
図3
図4
図5