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特開2022-127063非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
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  • 特開-非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127063
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220824BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20220824BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M2/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024984
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ03
5H029DJ05
5H043AA19
5H043BA17
5H043CA07
5H043HA07E
5H043JA01E
(57)【要約】
【課題】安定した導電接続を保持し、電気的特性のバラつきが抑制された非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】負極缶11と正極缶12とが絶縁封止されてなる外装体10と、外装体10に収容され負極缶11及び正極缶12にそれぞれ電気的に接続する負極312及び正極322を含む電極構造体30と、を備え、負極312は負極リードタブ311と電気的に接続し、正極322は正極リードタブ321と電気的に接続し、負極缶11と正極缶12の少なくとも一方の内面に形成された凹凸部20と、負極リードタブ311及び正極リードタブ321のうち対応する少なくとも一方のリードタブとが、圧接により固相接合している非水電解質二次電池とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備え、
前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、
前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に形成された凹凸部と前記リードタブとが圧接により固相接合している
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記凹凸部が、鋭利な先端を有する凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記凹凸部が、先端に滑面を有する凸部を備えることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記凸部が導電ペーストの固化体である請求項2又は3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記凸部が金属製のメッシュである請求項2又は3に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記リードタブは、前記凹凸部と前記電極構造体との間の平面位置に複数層配置されていることを特徴とする請求項1-5のいずれか一項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、
前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に形成された凹凸部と前記リードタブとを圧接接続する
ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記容器の内面の一部を除去することにより前記凹凸部を形成することを特徴とする請求項7に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項9】
エッチング、切削、プレス加工から選ばれる少なくとも1種の方法により前記凹凸部を形成することを特徴とする請求項8に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項10】
前記容器の内面に凸部を固定することにより前記凹凸部を形成することを特徴とする請求項7に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項11】
前記凸部が導電ペーストの固化体である請求項10に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項12】
前記凸部が金属製のメッシュである請求項10に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平円筒状の金属製の外装体に発電要素たる電極構造体が収容されてなる、いわゆるコイン形の非水電解質二次電池は、ウェアラブル機器や補聴器などの小型機器の電源として用いることができる。小型機器の用途では、電池容量ならびに充放電電流を大きくすることが電池には求められる。この要求特性に応じ、電池内で対向している電極同士の面積を大きくするために、一対の帯状の電極を帯状のセパレータを介して対向させた状態で捲回することで電極構造体を形成し、その電極構造体を外装体に収めた電池構造が知られている。
【0003】
この電池構造においては、電極を構成する集電体の露出部、あるいは、集電体と一体化されたリードタブといった接続部材が、外装体と接続することで、電極と外装体とが電気的に接続し、外装体が電池の外部端子として機能している。このような電極と一体となった集電体(あるいはリードタブ)と外装体との接続には、超音波溶接や抵抗溶接といった溶接技術が用いられている。
溶接を行う場合、集電体の肉薄化による強度の低下や溶接時の熱による脆化での溶接不良によって、また集電体と溶接接触子(超音波溶接での超音波ホーン、抵抗溶接での溶接電極)の間に活物質等の異物が介在することによって、溶接が困難になることがある。このような溶接における問題の解決のために、導電性接着剤を使用した導電接続が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-289260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような導電性接着剤を使用する場合、ペースト状の接着剤を介してリードタブと外装体とを接着させた後、乾燥等により導電性接着剤を硬化させることで両者を固定する。この場合、導電性接着剤の硬化が完了するまでの間はリードタブと外装体との接続が弱いままとなる。電極とリードタブが一体となるような電極構造体と、外装体の構成要素である負極缶あるいは正極缶との接続において、導電性接着剤の硬化が完了するまでの接続が弱い状態では、組立等の取り扱い時に動かせない構成要素が多く、作業時の動作の自由度が低下する。
負極缶あるいは正極缶のいずれか一方と電極構造体とを、あらかじめ接続し導電性接着剤が硬化した状態とした場合でも、電極構造体と一方の缶との接続物自体がその嵩高さにより、他方の缶との接続作業を妨害する。そのため、作業時の動作の制限が増え、作業速度が低下するといった問題がある。
【0006】
また、缶の内面にあらかじめ導電性接着剤を塗布し、硬化させた後に、その缶内に電極構造体を封入する場合、充放電での捲回電極の膨張収縮に応じてリードタブと缶との接触状態が変化するため、安定した導電接続状態を常に保つことが出来ず、電気的特性のバラつきの要因となってしまうといった問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑み、安定した導電接続を保持し、電気的特性のバラつきが抑制された非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における非水電解質二次電池は、第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備え、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の内面に形成された凹凸部と前記リードタブとが圧接により固相接合していることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、非水電解質二次電池の缶の内面に形成した凹凸部を介してリードタブと缶とが圧接接続による固相接合により導電接続されている。この導電接続は、充放電による電極の膨張収縮等の内部変化による接続状態の変化を抑制することができる。したがって、安定した導電接続を保持し、電気的特性のバラつきが抑制された非水電解質二次電池とすることができる。
【0010】
本発明における非水電解質二次電池には、前記凹凸部が、鋭利な先端を有する凸部を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、凸部が鋭利な先端を有する形状の場合、凸部がリードタブを容易に貫通することができる。これにより、リードタブの新たな界面が露出し、リードタブと容器との間の接触抵抗を低減できる。
【0012】
本発明における非水電解質二次電池は、前記凹凸部が、先端に滑面を有する凸部を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、凸部が例えば平坦といった先端に滑面を有する形状の場合、リードタブの凹凸を抑制することができるため、電極構造体の変形を防止することができる。これにより、電池の内部短絡を防止することができる。
【0014】
本発明における非水電解質二次電池は、前記凸部が導電ペーストの固化体であることがより好ましい。
本発明における非水電解質二次電池は、前記凸部が金属製のメッシュであることがより好ましい。
【0015】
本発明によれば、所望の凹凸形状とすることができる。
【0016】
本発明における非水電解質二次電池において、前記リードタブは、前記凹凸部と前記電極構造体との間の平面位置に複数層配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、リードタブが缶の内面に形成された凹凸部と電極構造体との間で2層以上積層された構造となっている。これにより、その積層構造において凹凸を吸収することで電池の内部短絡を防止することができる。
【0018】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の内面に形成された凹凸部と前記リードタブとを圧接接続することを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、非水電解質二次電池の導電接続を缶の内面に形成した凹凸部を用いた圧接接続により行うことで、外装体の絶縁封止と導電接続を同時に行うことができる。これにより、缶とリードタブの接続強度を高めることができる。加えて、第一、第二それぞれの容器と電極構造体とを順次接続する場合における構成要素同士の干渉といった取り扱い時の動作の制限が少なくなることで、導電接続に伴う作業をする際の動作の自由度が向上する。さらに、作業工数を削減することが可能なため、効率よく組立作業を行うことができる。
【0020】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、前記容器の内面の一部を除去することにより前記凹凸部を形成することを特徴とする。
また、本発明における非水電解質二次電池の製造方法において、エッチング、切削、プレス加工から選ばれる少なくとも1種の方法により前記凹凸部を形成することがより好ましい。
【0021】
本発明によれば、部品点数を少なくでき、缶とリードタブとが直接接触することができる。
【0022】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、前記容器の内面に凸部を固定することにより前記凹凸部を形成することを特徴とする。
また、本発明における非水電解質二次電池の製造方法において、前記凸部が導電ペーストの固化体であることがより好ましい。
さらにまた、本発明における非水電解質二次電池の製造方法において、前記凸部が金属製のメッシュであることがより好ましい。
【0023】
本発明によれば、所望の凹凸形状を容易に形成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、缶とリードタブとが缶の内面に形成された凹凸部により圧接接続されることで、リードタブが凹凸部に合わせて変形し、リードタブと缶との接触面積が増大するため、充放電等による電極構造体の形状変化の影響を受けにくい安定した導電接続を有する非水電解質二次電池を提供することができる。
また、本発明によれば、缶とリードタブとを封止時に圧接接続することで、製造時の作業性の良い非水電解質二次電池の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態の非水電解質二次電池について構成部材を絶縁封止する前の状態を説明する概略断面図である。
図2】本発明の実施形態の非水電解質二次電池を説明する概略断面図である。
図3】本発明の実施形態の非水電解質二次電池の外装体における凹凸部を説明する拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態の別の例であるリードタブを積層構造にした場合の非水電解質二次電池について構成部材を絶縁封止する前の状態を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態である非水電解質二次電池の例を挙げ、その構成について図1図4を参照しながら詳述する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更し表示している。
【0027】
本実施形態の非水電解質二次電池1は、いわゆるコイン(ボタン)型の電池である。図1に示すように、この非水電解質二次電池1は、薄型(扁平型)の外装体10と、この外装体10に収容される電極構造体30とを備えている。
外装体10は、有底円筒状の金属製の第二の容器(正極缶12)と、正極缶12の開口部を塞ぐ有蓋円筒状の蓋状(ハット状)の金属製の第一の容器(負極缶11)と、正極缶12の内周面に沿って設けられたガスケット13を備えている。また、電極構造体30は、第一の電極(負極体31)と第二の電極(正極体32)とセパレータ33とを備えている。
【0028】
図2に示すように、外装体10は、負極缶11の外側にガスケット13を介し正極缶12が絶縁配置されてなるものである。この外装体10内には、正極缶12と負極缶11とに囲まれた収容空間が形成されている。この収容空間に電極構造体30が収容され、更に後述する電解液(図示せず)が充填されている。
【0029】
このようなコイン(ボタン)型の非水電解質二次電池1は、外径がφ3~20mmの大きさであり、高さが1~5mm程度の扁平円筒状に形成されている。本実施形態は以下に示すような電極と容器との接続の態様を有していれば、このようなコイン(ボタン)型に限られず、薄型、角型といった種々の金属ケースの電池にも適用することができる。電池サイズの一例として、コイン型非水電解質二次電池の一般的なサイズである920サイズ(外径φ9.5mm×高さ2.0mm)を挙げることができる。
【0030】
外装体10を構成する負極缶11は、上述したように、有蓋円筒状(ハット状)に構成され、その先端部が、開口部から正極缶12に入り込むように構成される。このような負極缶11の材質としては、従来公知のステンレス鋼が挙げられ、例えば、SUS316LやSUS329JL、あるいは、SUS304-BA等を用いることができる。また、負極缶22には、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等を圧接してなるクラッド材を用いることもできる。
負極缶11は、先端部が折り返し形状とされているが、これには限定されず、例えば、金属板材の端面が先端部とされた、折り返し形状を有しない形状としてもよい。
【0031】
正極缶12は、上述したように、有底円筒状に構成され、平面視で円形の開口部を有する。このような正極缶12の材質としては、負極缶11の材質と同様、従来公知のものを何ら制限無く用いることができ、例えば、SUS316LやSUS329JL、あるいは、NAS64等のステンレス鋼が挙げられる。
【0032】
図2に示すように、負極缶11と正極缶12とは、ガスケット13を介在させた状態で、正極缶12の開口部の周縁を負極缶11側にかしめることで固定され、非水電解質二次電池1を、収容空間が形成された状態で密封保持する。このため、正極缶12の最大内径は、負極缶11の最大外径よりも大きい寸法とされている。
【0033】
なお、負極缶11や正極缶12に用いられる金属板材の板厚は、一般に0.1~0.3mm程度であり、例えば、正極缶12や負極缶22の全体における平均板厚で0.20mm程度として構成することができる。
【0034】
電極構造体30は、シート状の負極体31、正極体32およびセパレータ33を備え、負極体31と正極体32とが互い違いに積層され一体化してなる電極体である。具体的に、電極構造体30は、セパレータ33を介して負極体31と正極体32とを重ね合わせて扁平に捲回されることにより形成されている。セパレータ33は、負極体31および正極体32の層間の全体に配置され、負極体31と正極体32とを絶縁している。
電極構造体30はまた、図2に示すように捲回により一体化することができるほか、積層や折畳といった種々の方法により一体化することができる。
【0035】
負極体31は、金属材料により形成された負極集電箔と、負極集電箔に塗工された負極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。負極集電箔は、例えば銅やステンレス等の金属箔により形成されている。負極活物質は、例えば、シリコン酸化物やグラファイト、ハードカーボン、チタン酸リチウム、LiAl等である。
【0036】
負極体31の外周側の端部には、負極リードタブ311が接続されている。負極リードタブ311は、上述した負極缶11の凹凸部20を介して電気的に接続される部分である。負極リードタブ311は、最外周に配置される負極312から負極長手方向に沿って延出している。負極リードタブ311は、負極体31の負極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0037】
正極体32は、金属材料により形成された正極集電箔と、正極集電箔に塗工された正極活物質と、を備えた1枚のシート状の部材である。正極集電箔は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属箔により形成されている。正極活物質は、例えば、コバルト酸リチウムやチタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のように、リチウムと遷移金属とを含む複合酸化物である。
【0038】
正極体32の外周側の端部には、正極リードタブ321が接続されている。正極リードタブ321は、上述した正極缶12の凹凸部20を介して電気的に接続される部分である。正極リードタブ321は、最外周に配置される正極322から正極長手方向に沿って延出している。正極リードタブ321は、正極体32の正極集電箔と同一部材により一体的に形成されている。
【0039】
また、本実施形態の非水電解質二次電池1においては、負極312が、負極リードタブ311を介して負極缶11の内面に電気的に接続され、正極322が、正極リードタブ321を介して正極缶12の内面に電気的に接続されている。
負極リードタブ311及び正極リードタブ321は、上述したように、負極集電箔や正極集電箔と同一部材から構成されている。これらは負極集電箔や正極集電箔の延出部であってもよいし、別体のリードタブが溶接等により集電箔に固定されたものでもよい。また必要に応じて別材料のリードタブを用いてもよい。
【0040】
ここで、本実施形態では、負極缶11の内面に凹凸部20が形成されている。そして、負極リードタブ311は、負極缶11の内面に対向する面が負極缶11の内面の凹凸部20と圧接により固相接合している。これにより、負極缶11と電極構造体30とが電気的に接続している。
また同様に、正極缶12の内面に凹凸部20が形成されている。そして、正極リードタブ321は、正極缶12の内面に対向する面が正極缶12の内面の凹凸部20と圧接により固相接合している。これにより、正極缶12と電極構造体30とが電気的に接続している。
このように、負極缶11及び正極缶12と負極リードタブ311及び正極リードタブ321とがそれぞれ、缶の内面に形成された凹凸部20により圧接接続することで、負極リードタブ311及び正極リードタブ321が凹凸部20の形状に合わせて変形し、それぞれの接続による接触面積が増大する。したがって、製造時の作業性が良く、充放電等による電極構造体の形状変化の影響を受けにくい安定した導電接続を実現できる。
【0041】
凹凸部20は、例えば図1に示すような凸部から構成されてもよい。また凹凸部20は、負極缶11又は正極缶12の内面に形成された凹部から構成されてもよい。凹凸部20が凸部からなる場合の例を図3に示す。具体的には例えば、図3(a)に示すように、凹凸部20の凸部20aが鋭利な先端を有する形状とすることができる。この場合、凹凸部20が負極リードタブ311又は正極リードタブ321に圧接し貫通することで、リードタブに新たな界面が露出する。この露出面と凹凸部20との接触により、接触抵抗が大きく低減する。
【0042】
また、図3(b)に示すように、凹凸部20の凸部20bが平坦な先端を有していてもよい。この場合、負極リードタブ311及び正極リードタブ321に圧接しても、負極リードタブ311及び正極リードタブ321の変形を抑制することができ、ショートリスクを低減することができる。凸部20bの先端は平坦な形状のほか、例えば半球面といった曲面等の滑面であってもよい。
【0043】
凹凸部20が凸部からなる場合には、種々の方法により凸部を形成することができる。このうち負極缶11又は正極缶12の内面に凸部を固定することにより凹凸部を形成する場合には、所望の形状の凸部を形成することができ好ましい。この凸部は金属、あるいは炭素材料等の導電性を有する材料から形成されている。具体的には例えば、導電ペーストの固化体や金属製のメッシュを凸部として用いることができる。導電ペーストの固化体を凸部として用いる場合には、粘度を適宜調整した導電ペーストを缶の底面に点状に塗布した後、加熱乾燥により導電ペーストの固化体を得ることができる。また、金属製のメッシュは、缶に導電ペーストを用いて接着する、あるいは溶接する、といった方法により固定することができる。
【0044】
凹凸部20が負極缶11又は正極缶12の凹部からなる場合には、缶内面の一部を除去することにより凹凸部20を形成することができる。凹凸部20の形成は種々の方法で行うことができ、例えばエッチング、切削、プレス加工から選ばれる少なくとも1種の方法により行うことができる。このように凹凸部20を凹部から構成する場合、部品点数を少なくでき、缶とリードタブとが直接接触することができる点において好ましい態様である。
【0045】
本実施形態において、図1及び図2に示す例では、負極リードタブ311及び正極リードタブ321が負極体31及び正極体32からそれぞれ延出した後一度折り返されている。本実施形態はこれに限られず、図4に示すように、負極リードタブ311若しくは正極リードタブ321を複数回折り返して凹凸部20と電極構造体30との間に配置してもよい。このように、負極リードタブ311若しくは正極リードタブ321が複数層配置されることで、凹凸部20の形状を吸収することができ、電極構造体30の内部短絡を防止することができることから好ましい態様である。このような複数層のリードタブは、負極リードタブ311若しくは正極リードタブ321のいずれかであってもよいし、両方であってもよい。
【0046】
また、本実施形態において、負極缶11と正極缶12の両方に凹凸部20の形成がなされているが、これには限定せず、どちらか一方にのみ凹凸部20を形成した場合においても、本発明を適応することができる。
【0047】
ガスケット13は、図1図2図4に示すように、正極缶12の内周面に沿って円環状に形成され、その環状溝の内部に負極缶11の先端部が配置される。
【0048】
このようなガスケット13の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック樹脂が挙げられる。
【0049】
また、ガスケット13の環状溝の内側面には、さらに、シール剤を塗布してもよい。このようなシール剤としては、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。また、シール剤は、環状溝の内部に塗布した後、乾燥させて用いる。
【0050】
なお、ガスケット13は、負極缶11や正極缶12との間に挟まれ、その少なくとも一部が圧縮された状態となるが、この際の圧縮率は特に限定されず、非水電解質二次電池1の内部を確実に封止でき、且つ、ガスケット13に破断が生じない範囲とすればよい。
【0051】
セパレータ33は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ33は、例えばポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体等により形成されている。
【0052】
電解液は、非水溶媒に支持塩が溶解してなる非水電解質を用いることができる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エーテル等、種々の化合物を用いることができる。これらは例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルフォーメイト、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、ジメチルフォルムアミド(DMF)、グライム、スルホラン、アセトニトリル等の有機溶媒の単独又は混合溶媒とすることができる。また、支持塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(SOF)等を採用することができる。
【0053】
支持塩としては、例えば、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(SOF)等を採用することができる。また、支持塩としてイオン液体を用いてもよい。
【0054】
また、これらの溶媒及び支持塩に加えて、種々の添加剤を加えることができる。
さらに、電解液に替えて、これらの非水電解液を高吸液性多孔質高分子に含浸吸蔵させたゲル電解質、ポリエチレンオキシドやポリフォスファゼン架橋体等の高分子に前記リチウム塩を固溶させた高分子固体電解質、あるいはLiN、LiI等の無機固体電解質を用いることもできる。
【0055】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において種々の態様とすることができる。
【0056】
次に、本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法は、第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に形成された凹凸部と前記リードタブとを圧接接続することを特徴としている。
より具体的には、第一の容器と第二の容器の少なくとも一方の内面に凹凸部を形成する工程と、電極構造体を作製する工程と、前記第一の容器と前記第二の容器とで形成される収容空間に前記電極構造体を収容する工程と、前記第一の容器と前記第二の容器とを密封封止して前記凹凸部と前記電極構造体のリードタブとを圧接接続する工程と、を少なくとも備えている。
【0057】
容器(負極缶及び正極缶)の内面に凹凸部を形成する工程は、容器の内面に凸部を形成する工程と、凹部を形成する工程のいずれであってもよい。容器の内面に凸部を形成する工程の場合、例えば上述したように、容器の内面に導電ペーストを塗布し乾燥固化させる、あるいは、金属製メッシュを容器の内面に溶接、あるいは、導電性接着剤により接着する、といった方法を用いることができる。
また、容器の内面に凹部を形成する工程の場合、例えばエッチング、切削、プレス加工といった方法により、容器の内面の一部を除去することにより行うことができる。
【0058】
電極構造体を作製する工程は、シート状の負極体31と、シート状の正極体32とを、シート状のセパレータ33を挟むように積み重ねた後、捲回、積層、折畳、といった種々の方法により一体化することで電極構造体30を得るものである。
ここで、負極体31は、金属箔からなる負極集電体(負極集電箔)上に、スラリー状の負極合剤を塗工し乾燥することで得られる。同様に正極体32は、金属箔からなる正極集電体(正極集電箔)上に、スラリー状の正極合剤を塗工し乾燥することで得られる。負極合剤及び正極合剤は、負極活物質及び正極活物質を、それぞれ、グラファイト等からなる導電助剤と樹脂製の結着剤と混合し、さらに有機溶剤からなる溶媒に分散させて得ることができる。また、負極合剤の替わりに、箔状のリチウム金属やリチウム合金を負極集電箔に貼り付けることにより負極体31を形成してもよい。
さらに、負極集電箔、正極集電箔の未塗工部を電極構造体30から延出させることにより、負極リードタブ311及び正極リードタブ321とすることができる。また、負極集電箔及び正極集電箔の未塗工部にそれぞれ別体のリードタブを溶接してもよい。
【0059】
電極構造体を収容する工程は、図1及び図2に示すようなコイン型(ボタン型)電池の場合、例えば次のようにして行う。
まず、上述の工程で得られた電極構造体30から延出した負極リードタブ311及び正極リードタブ321を、それぞれ負極缶11及び正極缶12の凹凸部20に対向するような位置になるよう折り返した後、負極缶11と正極缶12の間の位置となるように電極構造体30を配置する。このときガスケット13はあらかじめ負極缶11に組み込んでおく。
さらに、電解液を負極缶11と正極缶12の少なくとも一方に注入した後、負極缶11を正極缶12に収容する。
【0060】
第一の容器と第二の容器とを密封封止する工程は、例えば図2に示すようなコイン型(ボタン型)電池の場合、上述した電極構造体を収容する工程の後、負極缶11と正極缶12とがガスケット13を介して絶縁配置されている状態で、正極缶12の開口部の周縁を負極缶11側にかしめることにより行う。このようにして電池を密封封止することにより、収容されている電極構造体30を電池の厚み方向から加圧することになる。これにより、リードタブ(負極リードタブ311若しくは正極リードタブ321)と凹凸部20とが圧接接続し、両者の導電接続を安定なものとすることができる。
リードタブと凹凸部20との圧接接続は、コイン型電池の製造におけるかしめ封口のほか、電極構造体30に対し加圧可能な外装体の構造であれば、密封封止により実現することができる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・ 非水電解質二次電池
10・・・ 外装体
11・・・ 負極缶
12・・・ 正極缶
13・・・ ガスケット
20・・・ 凹凸部
20a、20b・・・ 凸部先端
30・・・電極構造体
31・・・負極体
311・・・ 負極リードタブ
312・・・ 負極
32・・・正極体
321・・・ 正極リードタブ
322・・・ 正極
33・・・ セパレータ
図1
図2
図3
図4