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特開2022-127065非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127065
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/058 20100101AFI20220824BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220824BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220824BHJP
   H01M 50/10 20210101ALI20220824BHJP
   H01M 50/528 20210101ALI20220824BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M2/02 J
H01M2/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024986
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 祐輔
【テーマコード(参考)】
5H011
5H029
5H043
5H050
【Fターム(参考)】
5H011AA01
5H011CC06
5H029AJ06
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029CJ22
5H029DJ05
5H029EJ04
5H043AA03
5H043BA17
5H043CA07
5H043HA22E
5H043JA01E
5H043KA12E
5H050AA12
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA20
5H050EA08
5H050FA15
5H050GA22
(57)【要約】
【課題】負荷特性に優れ、かつ、安定した導電接続を備えた非水電解質二次電池を提供する。
【解決手段】負極缶1と正極缶2とが絶縁封止されてなる外装体と、この外装体に収容され負極缶1及び正極缶2にそれぞれ電気的に接続する負極6及び正極8を含む電極構造体と、を備え、負極缶1と正極缶2の内面に、導電ペーストの固化体からなる接着層4を有し、負極6と正極8は、それぞれと電気的に接続する負極リードタブ5及び正極リードタブ7をさらに備え、負極リードタブ5及び正極リードタブ7はそれぞれ、負極缶1及び正極缶2と対向する面に導電性の炭素材料を含む負極接続部50及び正極接続部70を有し、接着層4と負極接続部50及び正極接続部70とが圧着状態で積層することで負極缶1及び正極缶2と負極リードタブ5及び正極リードタブ7とがそれぞれ電気的に接続している非水電解質二次電池100とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備え、
前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に、導電ペーストの固化体からなる接着層を有し、
前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、前記リードタブは、前記第一の容器と前記第二の容器のうち接続する側の容器と対向する面に、導電性の炭素材料を含む接続部を有し、
前記接着層と前記接続部とが圧着状態で積層することで前記容器と前記リードタブとが電気的に接続している
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電極は、金属製の集電箔と、前記集電箔上に形成された合剤層と、を有し、
前記合剤層は、活物質と、導電性の炭素材料からなる導電助剤とを含み、
前記リードタブは前記集電箔の延出部であり、前記接続部は前記リードタブ上に形成された前記合剤層である
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記容器の内面に凹凸部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、
前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に導電ペーストを塗布し固化させることにより、前記容器の内面に接着層を形成する工程と、
前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極と電気的に接続するリードタブ上に形成された、導電性の炭素材料を含む接続部を、前記接着層と重ね合わせて圧着させることで、前記容器と前記リードタブとを電気的に接続する工程と、を少なくとも備えている
ことを特徴とする非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項5】
金属製の集電箔上に合剤層を形成することで前記電極及び前記電極から延出する前記リードタブを作製する工程をさらに備え、
前記合剤層は、活物質と、導電性の炭素材料からなる導電助剤とを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記容器の内面に予め凹凸部を形成した後、前記容器の内面に接着層を形成することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の非水電解質二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
扁平円筒型の金属製容器に発電要素たる電極構造体が収容されてなる、いわゆるコイン型(ボタン型)の電池において、電極構造体として、平板状の正極、負極がセパレータを介して対向し、巻回、積層等により形成された電極群を用いる構成が知られている。(例えば、特許文献1参照。)このような電池は重負荷特性に優れており、大電流の供給が求められる小型電子機器のメイン電源として用いることができる。
このような電池の電極群を構成する正極及び負極としては、集電体としてアルミニウムや銅等の金属薄板を用いて、集電体上に活物質等が形成されたものが用いられる。そして、集電体の未塗工部と金属製の容器とを溶接により電気的に接続することで、コイン型(ボタン型)容器を外部端子として利用することができる。
【0003】
特許文献1には、集電体の露出面と金属ケース内底面との接続として、溶接に代えて導電性接着剤による導電接続を行うことが示されている。この場合、導電性接着剤の塗布面積全体が有効な導電接続をなしうることで、充放電による電極群の膨脹収縮があった場合でも重負荷放電時の導電接続を良好に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-289260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導電性接着剤を用いた導電接続では、接着後に導電性接着剤を乾燥及び固化させるプロセスを必要とする。そして、乾燥及び固化するまでの間、接続は弱いままであり、接続が外れないようにするための接続体の取り扱いが難しい。
本発明は上記の問題点に鑑み、負荷特性に優れ、かつ、安定した導電接続を備えた非水電解質二次電池を提供すること、及び、このような非水電解質二次電池を作業性良く作製することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における非水電解質二次電池は、第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備え、前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に、導電ペーストの固化体からなる接着層を有し、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極は、前記電極と電気的に接続するリードタブをさらに備え、前記リードタブは、前記第一の容器と前記第二の容器のうち接続する側の容器と対向する面に、導電性の炭素材料を含む接続部を有し、前記接着層と前記接続部とが圧着状態で積層することで前記容器と前記リードタブとが電気的に接続していることを特徴とする。
【0007】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、第一の容器と第二の容器とが絶縁封止されてなる外装体と、前記外装体に収容され前記第一の容器及び前記第二の容器にそれぞれ電気的に接続する第一の電極及び第二の電極を含む電極構造体と、を備えた非水電解質二次電池の製造方法であって、前記第一の容器と前記第二の容器の少なくとも一方の容器の内面に導電ペーストを塗布し固化させることにより、前記容器の内面に接着層を形成する工程と、前記第一の電極と前記第二の電極の少なくとも一方の電極と電気的に接続するリードタブ上に形成された、導電性の炭素材料を含む接続部を、前記接着層と重ね合わせて圧着させることで、前記容器と前記リードタブとを電気的に接続する工程と、を少なくとも備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、正極リードタブ及び負極リードタブの正極接続部及び負極接続部に形成された炭素材料を含む層と、正極缶及び負極缶の内面に形成された導電ペーストの固化体とが接触していることで、正極及び負極と正極缶及び負極缶とが電気的に接続している。このように炭素材料を含む層同士が圧着状態で接続することで、電極と容器との間の導電性が向上する。また、電池の充放電の際に、正極及び負極で構成される電極構造体が膨張や収縮したとしても、リードタブと容器との安定した接続状態を保持することができる。これにより、安定した導電接続を備え、負荷特性に優れた電池とすることができる。
【0009】
また、本発明によれば、正極リードタブ及び負極リードタブの正極接続部及び負極接続部に炭素材料を含む層を、また、正極缶及び負極缶の内面に導電ペーストの固化体を、それぞれ予め形成した後、リードタブと缶とを接触させることにより両者を電気的に接続している。これにより、未固化の導電ペースト(導電性接着剤)によりリードタブと缶とを接続してから導電ペーストを乾燥固化させる場合に比べて、作業性良く両者を接続することができる。
【0010】
本発明における非水電解質二次電池において、前記電極は、金属製の集電箔と、前記集電箔上に形成された合剤層と、を有し、前記合剤層は、活物質と、導電性の炭素材料からなる導電助剤とを含み、前記リードタブは前記集電箔の延出部であり、前記接続部は前記リードタブ上に形成された前記合剤層であることが好ましい態様である。
【0011】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、金属製の集電箔上に合剤層を形成することで前記電極及び前記電極から延出する前記リードタブを作製する工程をさらに備え、前記合剤層は、活物質と、導電性の炭素材料からなる導電助剤とを含むことが好ましい態様である。
【0012】
本発明によれば、正極及び負極を正極リードタブ及び負極リードタブとして用いることができる。これにより、より作業性良く電池を作製することができる。
【0013】
本発明における非水電解質二次電池は、前記容器の内面に凹凸部が形成されていることが好ましい態様である。
【0014】
本発明における非水電解質二次電池の製造方法は、前記容器の内面に予め凹凸部を形成した後、前記容器の内面に接着層を形成することが好ましい態様である。
【0015】
本発明によれば、缶内面の凹凸部により、缶とリードタブとの接触面積を増やすことができるため、電池の抵抗を低減することができる。これにより、負荷特性及び信頼性に特に優れた非水電解質二次電池とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、安定した導電接続を備え、負荷特性に優れた非水電解質二次電池を得ることができることに加えて、このような非水電解質二次電池を作業性良く作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態である非水電解質二次電池を説明するための概略断面図である。
図2】本発明の実施形態である非水電解質二次電池を構成する電極構造体を説明するための概略断面図である。
図3】本発明の実施形態の別の例である非水電解質二次電池を説明するための概略断面図である。
図4】本発明の実施形態のさらに別の例である非水電解質二次電池を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の非水電解質二次電池の各実施形態を挙げ、それぞれの構成について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
(非水電解質二次電池)
本実施形態における非水電解質二次電池の例について、図面を例に挙げて説明する。
図1(a)は、本実施形態の非水電解質二次電池100の各構成部材について説明するための、電極構造体10を外装体の内部に配置した状態を示す概略断面図である。また、図1(b)は、電池を封止した後の状態を示す概略断面図である。
【0020】
本実施形態における非水電解質二次電池100は、扁平円筒状の金属製の外装体に電極構造体が収容されてなる、いわゆるコイン型(ボタン型)の電池である。
より詳細には、図1(a)に示すように、一端が開口した扁平円筒状である金属製の第一の容器(負極缶1)と金属製の第二の容器(正極缶2)とが、絶縁性のガスケット3を介して絶縁配置されている。そして、負極缶1に正極缶2の開口部を重ね合わせて加締め封止することにより密閉され、内部に収容空間が形成された外装体とすることができる。
【0021】
そして、この収容空間内に電極構造体10が収容され、負極缶1及び正極缶2のそれぞれと電気的に接続することで電池が構成されている。電極構造体10は、第一の電極(負極6)と第二の電極(正極8)とがセパレータ9を介して対向した状態で一体化されている。
さらに、図示しないが、収容空間内には電解液が封入されている。
【0022】
電極構造体10は、シート状の負極6、正極8、及びセパレータ9を備える。この電極構造体10は、負極6と正極8とをセパレータ9を介して重ね合わせて、図1(a)に示す捲回構造のほか、捲回、積層、折畳等により容器に収容可能な形状に作製することができる。例えば捲回により電極構造体10を作製する場合には、正極8のシートの両面側にセパレータ9を挟み込んで、さらに負極6を重ね合わせて扁平に捲回することができる。
【0023】
ここで本実施形態では、電極構造体10を構成する負極6から負極リードタブ5が延出している。延出した負極リードタブ5は折り返され、電極構造体10と負極缶1との間の位置に配置されている。負極リードタブ5は、負極缶1の内面1aとの対向面に負極接続部50を備えている。この負極接続部50は導電性の炭素材料を含む材料から構成されている。また、負極缶1の内面1aには導電ペーストの固化体からなる接着層4が形成されている。
【0024】
同様に、電極構造体10を構成する正極8から正極リードタブ7が延出している。延出した正極リードタブ7は折り返され、電極構造体10と正極缶2との間の位置に配置されている。正極リードタブ7は、正極缶2の内面2aとの対向面に正極接続部70を備えている。この正極接続部70は導電性の炭素材料を含む材料から構成されている。また、正極缶2の内面2aには導電ペーストの固化体からなる接着層4が形成されている。
【0025】
図1(a)に示す上述の各部材は、電池の組立により、図1(b)に示すように、外装体の内部の収容空間に電極構造体10が収容される構造となる。このとき、負極接続部50と、内面1aに形成された接着層4とが圧接接続されている。これにより、電極構造体10と負極缶1とが電気的に接続している。また、正極接続部50と、内面2aに形成された接着層4とが圧接接続されている。これにより、電極構造体10と正極缶2とが電気的に接続している。
本実施形態では、後述する炭素材料が配合された導電ペーストの固化体からなる接着層4と、導電性の炭素材料を含んでいる負極接続部50若しくは正極接続部70とが圧接接続していることで、両者の電気的接続を良好なものとすることができる。また、接着層4、負極接続部50、正極接続部70のいずれも軟質な樹脂材料であり、これらの部材同士が接触しているので、電池の充放電の際に、正極8及び負極6で構成される電極構造体10が膨張や収縮したとしても、リードタブと容器との安定した接続状態を保持することができる。
【0026】
ここで、本実施形態の非水電解質二次電池を構成する電極構造体10の、特に負極接続部50、若しくは正極接続部70について、図面を用いて詳述する。図2では、負極6及び負極接続部50について説明しているが、正極8及び正極接続部70についても同様に、それぞれ、負極6及び負極接続部50に対応する配置となっている。
【0027】
図2は電極構造体10の負極リードタブ5付近の拡大断面図である。負極6は、負極集電体6aの両面に負極合剤6bが形成された構造を有している。図2(a)に示す例では、負極6の端部から負極集電体6aが巻回方向に延出し、さらに逆向きに延びることで、この負極集電体6aが負極リードタブ5となっている。そして、この負極集電体6aの一つの面に負極接続部50が形成されている。
この負極接続部50は導電性の炭素材料を含有している。具体的な態様として、例えば、導電性の炭素材料を樹脂及び有機溶剤に分散してなる導電ペーストを塗布して固化させることにより負極接続部50とすることができる。また、導電性の炭素材料を樹脂に分散させてシート状とした後、導電性接着剤を用いて負極集電体6aに接着することによっても負極接続部50を形成することができる。
また、図2(b)に示すように、導電性の炭素材料を含有する負極合剤6bが形成された負極集電体6aである負極6がそのまま延出することにより、負極合剤6bを負極接続部50としてもよい。
【0028】
また図示を省略するが、正極集電体の両面に正極合剤が形成されてなる正極8について、上述の負極6から延出する負極接続部50と同様に、正極集電体上に形成される正極接続部70や、正極合剤を有する正極8がそのまま延出してなる正極接続部70とすることができる。
【0029】
本実施形態における負極接続部50及び正極接続部70は、グラファイト、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の炭素材料が、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等からなる結着剤により固定してなる層から構成されている。
これらの負極接続部50及び正極接続部70は導電性の炭素材料を含有していることから導電性を備え、負極缶1と負極リードタブ5との間、あるいは、正極缶2と正極リードタブ7との間に介在して、これらを電気的に接続している。
【0030】
このような炭素材料を含む層はまた、炭素材料や結着剤以外の材料を含有していてもよい。例えば、負極リードタブ5が負極6の延出部である場合や、正極リードタブ7が正極8の延出部である場合、炭素材料を含む層は後述する電池の負極活物質に相当する材料を含有する負極合剤であってもよい。
【0031】
また、導電ペーストは、グラファイト等の炭素材料とフェノール樹脂等の樹脂の混合物であり、水等の溶媒に分散したペースト状で用いられる。本実施形態において、導電ペーストは負極缶1の内面1a、及び、正極缶2の内面2aに塗布された後、熱処理等の乾燥工程により固化された固化体として、負極缶1の内面1a及び正極缶2の内面2a上に形成されている。
【0032】
本実施形態では、上記のように形成された導電ペーストの固化体と、負極接続部50及び正極接続部70に形成された炭素材料を含む層とが圧接接続している。このように炭素材料を含む材料同士が接触することで、缶とリードタブとの導電性が良好なものとなる。また、軟質な樹脂材料同士の接触であるので、電池の充放電の際に、正極8及び負極6で構成される電極構造体10が膨張や収縮したとしても、缶とリードタブとの安定した接続状態を保持することができる。
【0033】
次に、本実施形態の別の例について、図3及び図4を例に挙げて説明する。図3では図1と同様に組立前の部材配置を説明する概略断面図(図3(a))と組立後の概略断面図(図3(b))を示す。図4では組立後の概略断面図を省略し、組立前の部材配置を説明する概略断面図のみ示す。なお、図3(b)においては説明のため接着層4の図示を省略する。また、図1に示す例と共通する構成については説明を省略する。
図3及び図4に示すように、本実施形態では、負極缶1の内面1a、及び、正極缶2の内面2aの少なくとも一方に凹凸部40が形成されていることが好ましい。この凹凸部40は、図3に示すように缶の内面に凸部が形成された態様、あるいは、図4に示すように缶の内面に凹部が形成された態様とすることができる。
このような凹凸部40を缶の内面上に形成することにより、缶とリードタブとの接触面積を増やすことができ、電池の内部抵抗を低減することができる。
【0034】
図3(a)に示すような、凹凸部40が凸部である場合には、負極缶1の内面1a、あるいは、正極缶2の内面2a上に金属製のメッシュを接着、溶接等により固定することにより凸部を形成することができる。また、炭素材料や金属粒子を含有したペーストを、点状、あるいは線状に塗布した後固化させることにより凸部を形成してもよい。
【0035】
また、図4に示すような、凹凸部40が凹部である場合には、負極缶1の内面1a、あるいは、正極缶2の内面2aの一部を削ることにより凹部を形成することができる。凹部の形成方法としては、例えば、切削や研磨、エッチング等を用いることができる。
さらに、上述の手法を組合せて、負極缶1の内面1a、あるいは、正極缶2の内面2aに凹部と凸部とを形成してもよい。
【0036】
図3及び図4に示す例では、負極缶1の内面1aあるいは正極缶2の内面2aに形成された凹凸部40上に、さらに、上述の導電ペーストの固化体からなる接着層4が形成されている。図3(b)の例に示すように、接着層4の形成された凹凸部40とリードタブの接続部との接触面積が増大することで、導電性が向上し、負荷特性に特に優れた電池とすることができる。
【0037】
本実施形態における非水電解質二次電池を構成する材料は公知のものを用いることができる。
負極缶1は、一端が開口した扁平円筒状に形成されている。また負極缶1は、図1図4に示すように、開口する側の端部に折り返しが形成されていてもよいし、多段円筒形状に形成されていてもよい。負極缶1は、ステンレス鋼板を絞り加工等することにより形成することができる。ステンレス鋼の材質としては、例えば、SUS316LやSUS329J4L、あるいはSUS304等を挙げることができる。また負極缶の材質として、例えば、ステンレス鋼に銅やニッケル等を圧着してなるクラッド材を用いてもよい。
【0038】
正極缶2は、一端が開口した扁平円筒状に形成されている。この正極缶2は、ステンレス鋼板を絞り加工等することにより形成することができる。ステンレス鋼の材質としては、例えば、SUS316LやSUS329J4L等を挙げることができる。
【0039】
ガスケット3は、環状に形成された絶縁性の部材からなり、負極缶1と正極缶2との間に介在し、両者を絶縁保持している。
ガスケット3の材質としては、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)、ポリエーテルニトリル樹脂(PEN)、ポリエーテルケトン樹脂(PEK)、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂(PES)、ポリアミノビスマレイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等のプラスチック樹脂を挙げることができる。
【0040】
また容器の封止性を向上させるために、負極缶1若しくは正極缶2とガスケット3との間に、さらにシール剤を配置してもよい。シール剤としては、例えば、アスファルト、エポキシ樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチルゴム系接着剤等を用いることができる。
【0041】
負極6は、負極活物質と導電助剤と結着剤とからなる負極合剤6bが、負極集電体6aに塗布形成されたものである。より具体的には、有機溶剤により希釈されペースト状とした負極合剤を負極集電体6aに塗工した後、負極集電体6aを乾燥させ有機溶剤を除去することによって負極6を得ることができる。
【0042】
負極集電体6aは、厚みが100μm以下の金属薄膜であり、金属として銅やアルミニウム等を用いることができる。負極リードタブ5は、負極集電体6aが延出してなる金属薄膜で構成されている。また負極リードタブ5は、負極集電体6aの延出部に銅、ニッケル、アルミニウム等を溶接等により取り付けたものであってもよい。
【0043】
負極活物質は、非水電解質二次電池に用いられる公知の材料を用いることができる。負極活物質としては、例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、グラファイト等の炭素材料、SiO(0<x<2)で表される酸化珪素、チタン酸リチウム(LiTi12)、Si、WO、WO、Li-Al合金等、種々の材料を挙げることができる。
【0044】
負極合剤6bに含まれる導電助剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、グラファイト等の炭素質材料を用いることができる。また、導電助剤として上記のうちの1種を単独として用いることができるほか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
負極合剤6bに含まれる結着剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることができる。また、結着剤として上記のうちの1種を単独として用いることができるほか、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
正極8は、正極活物質と導電助剤と結着剤とからなる正極合剤8bが、正極集電体8aに塗布形成されたものである。より具体的には、有機溶剤により希釈されペースト状とした正極合剤8bを正極集電体8aに塗工した後、正極集電体8aを乾燥させ有機溶剤を除去することによって正極8を得ることができる。
【0047】
正極集電体8aは、厚みが100μm以下の金属薄膜であり、金属としてアルミニウム等を用いることができる。正極リードタブ7は、正極集電体8aが延出してなる金属薄膜で構成されている。また正極リードタブ7は、正極集電体8aの延出部にアルミニウム等を溶接等により取り付けたものであってもよい。
【0048】
正極活物質は、非水電解質二次電池に用いられる公知の材料を用いることができる。正極活物質としては、例えば、リチウムマンガン酸化物、モリブデン酸化物、リチウム鉄リン酸化合物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、バナジウム酸化物等、種々の材料を挙げることができる。
【0049】
正極合剤8bに含まれる導電助剤及び結着剤としては、上述した、負極合剤6bに含まれる導電助剤及び結着剤として挙げた種々の材料を用いることができる。
【0050】
セパレータ9は、リチウムイオンを通す特性を有する部材である。セパレータ9は、例えば、ポリオレフィン製の樹脂ポーラスフィルムやガラス製不織布、樹脂製不織布、セルロース繊維の積層体等により形成されている。
【0051】
電解液は、非水溶媒に支持塩が溶解してなる非水電解質を用いることができる。
非水溶媒としては、環状カーボネート、鎖状カーボネート、鎖状エーテル等、種々の化合物を用いることができる。これらは例えば、γ-ブチロラクトン(GBL)、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルフォーメイト、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、ジメチルフォルムアミド(DMF)、グライム、スルホラン、アセトニトリル等の有機溶媒の単独又は混合溶媒とすることができる。また、支持塩としては、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(SOF)2等を採用することができる。
【0052】
支持塩としては、例えば、例えば、LiClO、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiN(SOF)等を採用することができる。また、支持塩としてイオン液体を用いてもよい。
【0053】
また、これらの溶媒及び支持塩に加えて、種々の添加剤を加えることができる。
さらに、電解液に替えて、これらの非水電解液を高吸液性多孔質高分子に含浸吸蔵させたゲル電解質、ポリエチレンオキシドやポリフォスファゼン架橋体等の高分子に前記リチウム塩を固溶させた高分子固体電解質、あるいはLiN、LiI等の無機固体電解質を用いることもできる。
【0054】
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において種々の態様とすることができる。
例えば、本実施形態では、容器としてコイン型(ボタン型)を例に挙げた。これに限られず、正極缶と負極缶とが互いに絶縁された状態で封止され、負極リードタブ5や正極リードタブ7と電気的に接続している構造であればよく、例えば平板状の正極缶と負極缶とがガラスやセラミック製の円筒状の絶縁部材を挟み込む構造の外装体であってもよい。また形状についてもコイン型(ボタン型)に限らず、例えば矩形状の外装体としてもよい。
【0055】
また、負極リードタブ5及び正極リードタブ7は負極6及び正極8の延出部である必要は必ずしもなく、別体のリードタブが溶接等により電極に取り付けられた構造としてもよい。
【0056】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0057】
(非水電解質二次電池の製造方法)
次に、本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法について説明する。
本実施形態の非水電解質二次電池の製造方法は、正極と負極とを組合せて電極構造体を作製する工程と、電極構造体を正極缶及び負極缶と接続する工程と、負極缶を正極缶に加締め封止して電池とする工程と、を主要な工程とするものである。
【0058】
まず、正極と負極とを組合せて電極構造体を作製する工程について説明する。はじめに、シート状のセパレータ9を2枚折にしてシート状の正極8を挟み込む。次いで、セパレータ9に挟み込まれた正極8の上に負極6を重ね合わせることで、セパレータ9を介して正極8と負極6とが対向する積層体となる。この積層体を扁平に捲回することで、非水電解質二次電池100の電極構造体10とすることができる。
【0059】
電極構造体10は、上述のような捲回のほか、積層や折畳といった種々の方法で、外装体の内部に収容可能な形状とすることができる。
【0060】
ここで、負極6と正極8のそれぞれについて、一部分をセパレータ9からはみ出すように配置する。このはみ出した負極6と正極8をそれぞれ負極リードタブ5と正極リードタブ7とする。負極リードタブ5と正極リードタブ7は、互いに重ならないように、電極構造体10の上下に分けて配置する。
【0061】
次に、電極構造体を正極缶及び負極缶と接続する工程について説明する。
はじめに、負極缶1の内面1a及び正極缶2の内面2aにエッチングを施し凹部を形成することにより凹凸部40を形成する。次いで、グラファイトとフェノール樹脂との混合物である導電ペーストを、この内面1a及び内面2aの位置に塗布し、乾燥させることによりペーストを固化させ、接着層4とする。
ここで、凹凸部40を形成する場合には、上述のように、凹部の形成の他に凸部の形成により行ってもよい。
次いで、正極缶2の内面2a上に、正極リードタブ7の正極接続部70が正極缶2の内面2aと対向するようにして電極構造体10を載置する。さらに、電解液を正極缶2内に注液した後、ガスケット3が取り付けられた負極缶1を上部から正極缶2に重ね合わせるように配置し押し込む。このとき、負極リードタブ5の負極接続部50が負極缶1の内面1aと対向する配置となる。
【0062】
そして、正極缶2の開口部を負極缶1側に傾けるようにして電池を加締め封止する。これにより、正極缶2の内面2aに形成された接着層4と正極接続部70とが圧接接続され、かつ、凹凸部40が正極接続部70に食い込む状態となる。また、負極缶1の内面1aに形成された接着層4と負極接続部50とが圧接接続され、かつ、凹凸部40が負極接続部50に食い込む状態となる。このようにして、正極8と正極缶2とが、負極6と負極缶1とが、それぞれ電気的に接続することで、非水電解質二次電池100が組み立てられる。
【符号の説明】
【0063】
100・・・ 非水電解質二次電池
1・・・ 負極缶
1a・・・ 負極缶の内面
2・・・ 正極缶
2a・・・ 正極缶の内面
3・・・ ガスケット
4・・・ 接着層
40・・・ 凹凸部
5・・・ 負極リードタブ
50・・・ 負極接続部
6・・・ 負極
7・・・ 正極リードタブ
70・・・ 正極接続部
8・・・ 正極
9・・・ セパレータ
10・・・ 電極構造体
図1
図2
図3
図4