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特開2022-127072植物栽培システム、植物栽培方法、植物搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127072
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】植物栽培システム、植物栽培方法、植物搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/04 20060101AFI20220824BHJP
   A01G 31/00 20180101ALI20220824BHJP
   A01G 31/06 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A01G31/04 A
A01G31/00 612
A01G31/06
A01G31/00 601B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021024995
(22)【出願日】2021-02-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-15
(71)【出願人】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 寧
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA33
2B314MA38
2B314MA39
2B314NA33
2B314NA37
2B314NC37
2B314ND32
2B314PB08
2B314PB44
2B314PB64
2B314PD07
2B314PD37
2B314PD51
2B314PD63
(57)【要約】
【課題】従来よりも低コスト化を実現できる技術を提供する。
【解決手段】植物に対して所定の処理を施す液肥供給装置20、光照射装置30、及び差圧冷却装置40と、植物を栽培可能に収容する栽培収容部を液肥供給装置20、光照射装置30、及び差圧冷却装置40へ搬送する栽培移動ユニット10及び管理装置50とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に対して所定の処理を施す処理部と、
前記植物を栽培可能に収容する栽培収容部を前記処理部へ搬送する搬送部と、
を備えることを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記搬送部は、
前記栽培収容部を支持する支持部と、
前記支持部と連結し、前記処理部までの経路に関する経路情報に基づいて移動することで該支持部を搬送する移動体と
を備えることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記栽培収容部の植物に対して該植物の成長を促進するための液肥を供給する液肥供給部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記栽培収容部は、上下方向に複数あり、
前記搬送部は、前記液肥供給部と接続し、供給された液肥を前記複数の栽培収容部に循環させる液肥循環部
を備えることを特徴とする請求項3記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記液肥循環部は、上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給することにより該栽培収容部から下段の栽培収容部に液肥が供給され、該栽培収容部から液肥を回収することにより再び上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給する液肥循環を行う水撃ポンプである
ことを特徴とする請求項4記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記栽培収容部の植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部
を備えることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される複数の明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを巡ることにより前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節する
ことを特徴とする請求項6記載の植物栽培システム。
【請求項8】
前記処理部は、前記栽培収容部の温度環境を調整する環境調整部
を更に備えることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれか一項記載の植物栽培システム。
【請求項9】
前記環境調整部は、
冷却室と、
前記冷却室内に配置され、内部に画成された空間と外部とを連通する複数の通気孔が形成される負圧室と、
前記負圧室に設けられて前記空間内を負圧にするファンと
を備え、
前記搬送部は、前記栽培収容部を前記負圧室外部において前記通気孔に近接させることにより前記栽培収容部の温度環境を調整する
ことを特徴とする請求項8記載の植物栽培システム。
【請求項10】
植物に対して所定の処理を施す処理部に、前記植物を栽培可能に収容する栽培収容部を搬送することを特徴とする植物栽培方法。
【請求項11】
植物を栽培可能に収容する栽培収容部と、
前記植物に対して所定の処理が施される処理エリアに、前記栽培収容部を搬送する搬送部と
を備えることを特徴とする植物搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、野菜や果物等の植物を栽培、特に屋内において水耕栽培を行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜や果物、花等の植物を効率よく生産する方法として、衛生的にも室内環境が管理された栽培室内に、植物が植えられた栽培ベッドを配置し、高密度な環境で植物を生産する植物工場が広く知られている。
【0003】
このような植物工場としては、特許文献1に記載の完全制御型栽培式植物工場が知られている。この植物工場では、平面視において互いに重なるように、複数の栽培ベッドが多段配置されており、各栽培ベッドには、植物が栽培される培地が保持されており、各栽培ベッドの上方には、培地で栽培されている植物に照射される光の光源として、蛍光ランプと、植物の生育促進に有効な波長の光を放射する発光ダイオードとが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-118957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、低コスト化を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、植物に対して所定の処理を施す処理部と、前記植物を栽培可能に収容する栽培収容部を前記処理部へ搬送する搬送部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る植物栽培システムの構成を示す概略図である。
図2】栽培移動ユニットの概略側面図である。
図3】栽培移動ユニットの概略正面図である。
図4】栽培移動ユニットとの連結前の状態にある液肥供給装置を示す概略側面図である。
図5】栽培移動ユニットとの連結後の状態にある液肥供給装置を示す概略側面図である。
図6】栽培移動ユニットへの光照射前の状態にある光照射装置を示す概略側面図である。
図7】栽培移動ユニットへの光照射状態にある光照射装置を示す概略側面図である。
図8】光照射装置による栽培移動ユニットへの光照射方法を説明するための概略平面図である。
図9】光照射装置による栽培移動ユニットへの光照射方法を説明するための概略平面図である。
図10】光照射装置による栽培移動ユニットへの光照射方法を説明するための概略平面図である。
図11】光照射エリアにおける光照射装置の配置例を示す概略平面図である。
図12】差圧冷却装置を示す概略側面図である。
図13】差圧冷却装置に栽培移動ユニットが収容された状態を示す概略側面図である。
図14】管理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図15】管理装置の機能構成を示す機能ブロック図である。
図16】移動体のハードウェア構成を示すブロック図である。
図17】移動体の機能構成を示す機能ブロック図である。
図18】実施形態に係る植物栽培システムの動作を示すフローチャートである。
図19】光照射処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態においては、水耕栽培を行う植物工場に本発明に係る植物栽培システムを適用した場合を例にとり説明を行う。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0010】
(全体構成)
本実施形態に係る植物栽培システムの全体構成について説明する。図1は、本実施形態に係る植物栽培システムの構成を示す概略図である。図1に示されるように本実施形態に係る植物栽培システム1は、植物工場内に設置される。植物栽培システム1は、レタス等の葉菜類や果物、貝割れ大根、ハーブ、モヤシなど、水耕栽培に適した植物を栽培可能に収容すると共に自律走行可能な栽培移動ユニット10と、液肥供給エリア2に設置された液肥供給装置20と、光照射エリア3に設置された光照射装置30と、環境調整エリア4に設置された差圧冷却装置40と、管理装置50とを備える。また、植物工場内には植物を収穫等する収穫エリア6と植物を後述する栽培ベッド110に定植等する準備エリア7とが設けられている。植物栽培システム1は、管理装置50により栽培移動ユニット10を上述した各エリアに移動させることにより、植物に対する所定の処理を施して生育し、収穫する工程を繰り返すものである。以下、上述した各構成について説明する。
【0011】
(栽培移動ユニット10)
栽培移動ユニット10について詳細に説明する。図2及び図3は、栽培移動ユニットの概略側面図及び正面図である。なお、ここでは栽培移動ユニット10の液肥循環部120が設けられている側を正面としている。
【0012】
栽培移動ユニット10は、植物工場の規模にもよるが数十~数百単位で植物栽培システムに組み込まれており、図2及ぶ図3に示されるように、それぞれが全体として前後方向に延在する直方体状に形成されている。栽培移動ユニット10は、植物Hが定植された栽培ベッド110と、栽培ベッド110に液肥(培養液)Lを供給する液肥循環部120と、栽培ベッド110を移動搬送する移動体130とを備える。栽培ベッド110は、多段ラック111における上下複数段の棚に設置されることで上下方向に複数積層された状態となっている。栽培ベッド110は、前後方向に延在する箱状物であり、その内部には液肥Lが貯留され、当該液肥L上に発泡スチロール等からなる栽培パネル112が浮遊する形で載置されている。
【0013】
栽培パネル112には互いに一定距離離間する不図示の複数の孔が形成されており、これらの孔それぞれに植物Hが定植されてその根が液肥L内に浸されている。これにより植物Hは液肥Lより栄養を得て生育することとなる。なお、栽培パネル112は着脱自在であり、植物Hの種類や発育状況に応じて適宜取り換えることができる。栽培ベッド110には、栽培ベッド110周囲環境の温度、例えば栽培パネル112上方の温度を測定する温度センサ113が設けられている。この温度センサ113により測定された環境温度(以後、測定温度と称する)は、管理装置50に送信される。
【0014】
液肥循環部120は、多段ラック111に取り付けられており、上下方向に延在して先端が最上段の栽培ベッド110に連通する供給管121と連結され、この供給管121を介して上段の栽培ベッド110に液肥Lを供給する。上下の栽培ベッド110間は、それぞれ供給管122が連通して上段から下段へ液肥Lが落水する形で供給可能にされており、最下段の栽培ベッド110には液肥循環部120に連通する供給管123が設けられている。したがって、液肥Lは液肥循環部120から最上段の栽培ベッド110に供給されると、上段から下段にかけて流動し、再び液肥循環部120に供給される。液肥Lが供給された液肥循環部120は再び当該液肥Lを最上段の栽培ベッド110に供給し、液肥Lが常に循環する環境が構築されている。
【0015】
このような液肥循環は、電動のポンプ又は、無電力で実現することがランニングコストの面からみても好ましい。このような無電力での液肥循環を行うものとしては、流入管、排水管、排水弁、揚水弁(逆止弁)、及び圧力容器を有する水撃ポンプが挙げられる。
【0016】
水撃ポンプを利用した液肥循環部120の液肥Lの循環を簡単に説明する。液肥循環部120は、液肥供給装置20から液肥Lが流入管に圧送供給されることにより、内部に液肥Lが流入する。すると、流入管と連結された排水管の排水口へ向かう液肥Lの圧力によって排水弁が閉鎖され、これにより、排水管内で水撃(ウォーターハンマー)による圧力波を発生させることができる。この圧力波は、圧力容器と排水管との間に設けられた揚水弁を通過して圧力容器内に侵入し、圧力容器内の空気を圧縮する。排水口側へ向かう液肥Lの圧力が低下すると共に、排水管内での圧力が低下すると、圧力容器内で圧縮された空気が、元の体積まで膨張して水面を押し下げ、揚水弁により液肥Lが排水管へ流入せず、加圧されて揚水管(供給管121)へ流入する。流入した液肥Lは各栽培ベッド110、供給管122,123を通って再び流入管に流入する。
【0017】
また、揚水弁が閉まると、揚水弁より排水管側の液肥Lは流入管へ戻り、排水管内の圧力が低下して、静水圧に対する排水弁の開放が生じ、再び流入管から排水管内へ液肥Lが流入して水撃を発生させる。このように水撃を繰り返し発生させ、供給管121及び上段の栽培ベッド110への液肥Lの無電力圧送、下段の栽培ベッド110への液肥Lの重力圧送が可能となる。
【0018】
移動体130は、多段ラック111の下部に着脱自在に取り付けられてこれを支持する方形箱状に形成されており、下部四隅に設けられた4つの車輪131を回転駆動することにより植物工場内の各エリアを移動する。本実施形態に係る移動体130は、AGV(Automatic Guided Vehicle)、即ち自律型の移動ロボットであり、前進及び後退の他、旋回や斜め方向への移動も可能であることが好ましい。また、移動体130は、不図示の蓄電池(バッテリ)を搭載し、バッテリに蓄積された電力を用いて動作する。移動体130の具体的な装置構成及び機能構成については後に詳述する。
【0019】
(液肥供給エリア2及び液肥供給装置20)
図4は栽培移動ユニットとの連結前の状態にある液肥供給装置を示す概略側面図であり、図5はその連結後の状態を示す。図4及び図5に示される符号Fは植物工場の床面を示す。液肥供給装置20は液肥供給エリア2内に複数設置されており、図4及び図5に示されるように、液肥Lを貯留する貯留槽201と、液肥Lを噴出するノズル202と、ノズル202に貯留槽201の液肥Lを供給するポンプ203とを備える。ノズル202は栽培移動ユニット10が接近するのみで液肥循環部120に対して、具体的にはその流入管に対して連結可能となっており、連結した状態においてポンプ203が作動し、液肥Lの液肥循環部120への供給が行われる。この時、液肥循環部120からは古い液肥Lが排出され、液肥供給装置20の不図示の回収容器に回収されるようにすることが好ましい。
【0020】
ポンプ203は、本実施形態においては管理装置50と通信可能に無線または有線接続されており、管理装置50の作動制御信号に応じてON/OFF制御がなされる。液肥循環部120とノズル202との連結有無は、栽培移動ユニット10の移動体130が送信する、目標位置(目的の装置の位置)に到着したことを示す到着信号により管理装置50が認識できる。
【0021】
なお、上記の到着信号は、液肥供給装置20が不図示のセンサによりノズル202と液肥循環部120との連結を検知するようにし、検知後に管理装置50に送信されるようにしてもよい。また、個々の液肥供給装置20が貯留槽201を有していてもよく、1つの貯留槽201を複数の液肥供給装置20が共有するようにしてもよい。
【0022】
(光照射エリア3及び光照射装置30)
図6は栽培移動ユニットへの光照射前の状態にある光照射装置を示す概略側面図であり、図7はその光照射状態を示す。図8図10は光照射装置による栽培移動ユニットへの光照射方法を説明するための概略平面図である。図11は、光照射エリアにおける光照射装置の配置例を示す概略平面図である。
【0023】
光照射装置30は光照射エリア3内に複数設置されており、図6及び図7に示されるように、複数の光源301を備える。光源301は、所定波長の光を照射することにより植物Hの生育を促進させるものであり、LEDライトを用いることが好ましい。本実施形態においては、光源301は常に光を照射し続ける設定となっている。光源301は、図6に示されるように、一方向に沿って水平に延在するよう突出して形成されている。本実施形態において栽培ベッド110は4段重ねとなっているため、光源301も同様に上下に4段設けられている。
【0024】
図6及び図7に示されるように、光照射装置30は、栽培移動ユニット10が光照射装置30に接近し、光源301が多段ラック111の隙間、具体的には栽培ベッド110上方に挿通されることで下方に近接する栽培ベッド110の植物Hに対して光を照射できる。また、図8に示されるように、光照射装置30は、その延在方向に対して水平に直交する幅方向において、複数(図では3本)が互いに近接しており、この互いに近接する複数の光源301が1つの栽培ベッド110上に位置することができる。これにより光源301は、下方に位置する栽培ベッド110に対して一様に略同光量の光を照射することができる。
【0025】
また、図8に示されるように、光照射装置30は、光源301が幅方向において複数近接してなる組が2つ設けられ、それらの間には光源301が設けられていない空間が画成される。本実施形態においては、幅方向において光源301により光が照射される領域を明期領域A1と称し、光源301がなく光が照射されない領域を暗期領域A2と称して以後説明を行う。
【0026】
本実施形態における栽培ベッド110に定植された植物Hは、1日16時間の明期と8時間の暗期とにより生育される。したがって3つの栽培移動ユニット10が1日に明期領域A1-1,A1-2と暗期領域A2とを順番に巡ることにより、それぞれの1日当たりの光照射時間(16時間)を満足するように調節することができる。
【0027】
具体的には、図8に示されるように栽培移動ユニット10Aが明期領域A1-1に、栽培移動ユニット10Bが明期領域A1-2に、栽培移動ユニット10Cが暗期領域A2に位置付けられて8時間経過させる。次に、図9に示されるように、栽培移動ユニット10Aが移動せず、栽培移動ユニット10Bが暗期領域A2に、栽培移動ユニット10Cが明期領域A1-2に位置付けられて8時間経過させる。その後、図10に示されるように、栽培移動ユニット10Aが暗期領域A2に、栽培移動ユニット10Bが明期領域A1-1に、栽培移動ユニット10Cが移動せず、8時間経過させる。以上により、各栽培移動ユニット10の植物Hに対して1日当たりの光照射時間を照射することができる。なお、栽培移動ユニット10A,10B,10Cの光照射パターンを、それぞれパターンA,B,Cとし称することとする。
【0028】
なお、光照射装置30は、図11に示されるように、光源301先端が互いに対向するように2つの光照射装置30が鏡像配置されることで1つの単位ユニットを形成し、この単位ユニットが光源エリア3内に複数設置されるようにするとよい。これにより、栽培移動ユニット10の移動通路を単位ユニット内で共用でき、工場内スペースの有効利用が可能となる。
【0029】
(環境調整エリア4及び差圧冷却装置40)
図12は、差圧冷却装置を示す概略側面図であり、図13は、差圧冷却装置に栽培移動ユニットが収容された状態を示す概略側面図である。説明上、図12及び図13においては、冷却室と負圧部とが縦断面で示されている。
【0030】
差圧冷却装置40は、環境調整エリア4に複数設置されており、図12に示されるように、冷蔵室や冷凍室である冷却室4Aと、冷却室4A内に設けられた負圧部41及び冷却器42とを備える。負圧部41は、その冷却室4A入口側(以後前方側と称する)上部に傾斜面を有する箱状の筐体411を有する。筐体411は、内部に差圧空間412と収容空間413とが画成されており、これら空間は断面L字状の隔壁414により分断されている。また、筐体411の前方壁部には栽培移動ユニット10の出入り口となる開口415が形成されており、開口415は収容空間413に連通して栽培移動ユニット10の少なくとも一部を収容空間413内に収容可能に形成される。隔壁414における垂直壁部には、差圧空間412と収容空間413とを連通する通気孔416が複数穿設されている。なお、隔壁414は多孔性のフィルタ等により構成してもよい。
【0031】
筐体411の正面側に形成された傾斜面にはファン417が設けられており、負圧空間412内の空気を負圧部41外に排出することにより負圧空間412に負圧を生じさせる。ファン417は傾斜面に設置されることにより冷却器42に向けて空気を排出することができる。この空気の排出により、冷却器42を抜けた冷気は図13に示されるように流動することとなる。ファン417は、本実施形態においては管理装置50と通信可能に無線または有線接続されており、管理装置50の作動制御信号に応じてON/OFF制御がなされる。
【0032】
冷却器42は、常時稼動され冷却室4A内を冷却するものであり、例えばファン417から排出(送風)される空気を冷媒との熱交換等により冷却する。冷却器42により冷却された空気、即ち冷気は図13の矢印に示されるように流動することとなる。冷却器42は、植物Hが育つ適正温度に冷却室4A内を保つことができ、植物Hの品種に応じて適正温度が変わる場合があることから、温度調節が可変なものが好ましい。
【0033】
栽培移動ユニット10が図13に示されるように収容空間413に位置付けられると、ファン417が駆動し、負圧空間412が負圧となる。当該負圧が生じると収容空間413から冷却室4A内の冷気が通気孔416を介して負圧空間412へ流入するための、栽培ベッド110、栽培パネル112、及び植物Hをも冷気の流動に曝すことができる。
【0034】
なお、培移動ユニット10が収容空間413に位置付けられたか否かは、栽培移動ユニット10の移動体130が送信する到着信号により管理装置50が認識できる。上記の到着信号は、差圧冷却装置40が不図示のセンサにより栽培移動ユニット10が収容空間413に位置付けられたか否かを検知するようにし、検知後に管理装置50に送信されるようにしてもよい。
【0035】
(収穫エリア6)
収穫エリア6は、図1に示されるように複数の作業者Pが配置されており、生育を終えた植物Hを有する栽培移動ユニット10が移動され植物Hが収穫されるエリアである。収穫エリア6は、環境調節エリア4等と仕切られた有人なクリーンエリアであることが好ましい。収穫エリア6では、植物Hの収穫の他、トリミングや梱包、予冷、出荷等を作業がなされる。栽培移動ユニット10は、作業者Pの作業範囲内、例えば作業台に隣接するように移動されることが好ましく、これにより作業者Pが移動することなく作業を行うことができる。したがって、従来のような固定された栽培ベッドの植物を収穫するために作業者Pが移動する場合と比較して作業効率を各段に向上させることができる。また、収穫エリア6は、作業者Pに対する適切な温度湿度環境とすることができるため、植物工場全体が冷却されるような従来と比較して作業環境を改善でき作業効率の悪化を低減することができる。
【0036】
(準備エリア7)
準備エリア7は、図1に示されるように複数の作業者Pが配置されており、収穫エリア6において作業者Pにより植物Hが収穫された栽培移動ユニット10が移動するエリアである。当該栽培移動ユニット10は、この準備エリア7では、作業者Pにより栽培ベッド110や栽培パネル112等のユニット殺菌、洗浄が行われる。また、予め播種、育苗が行われた苗が植物Hとして栽培パネル112に定植され、洗浄を終えた栽培ベッド110に設置されることにより再び植物Hを有する栽培移動ユニット10となる。当該栽培移動ユニット10は液肥供給エリア2へ移動され、液肥供給がなされることとなる。
【0037】
(管理装置50)
図14は管理装置のハードウェア構成を示すブロック図であり、図15はその機能ブロック図である。図14に示されるように、管理装置50は、CPU(Central Processing Unit)51と、RAM(Random Access Memory)52と、記憶装置53と、入出力I/F(Interface)54と、通信I/F55とを備える。
【0038】
CPU51及びRAM52は、協働することにより、後述する各種機能を実現する。記憶装置53は、地図情報531や各種機能の実行に係る各種データを記憶する。地図情報531は植物工場における液肥供給エリア2、光照射エリア3、環境調整エリア4、収穫エリア6、準備エリア7等の各エリアの位置情報と、各エリアに設置された各種装置の位置情報と、工場内における通路情報とを少なくとも含む。入出力I/F54は、作業者Pに各エリアにおける装置の稼働状況や、栽培移動ユニット10の位置及び温度環境、植物Hの生育日数といった生育状況等を表示すると共に作業者Pの操作を受け付けるインターフェイスであり、例えばタッチパネルディスプレイ、マウス、キーボード等である。通信I/F25は、移動体130や、液肥供給装置20、差圧冷却装置40等と通信するためのインターフェイスである。
【0039】
また、管理装置50は、図15に示されるように、CPU51及びRAM52により実現される機能として、取得部501と、判定部502と、生成部503と、送信部504とを備える。取得部501は、移動体130からの到着信号や測定温度等を取得する。判定部502は、管理装置50内の処理における各種判定を行う。生成部503は、判定部502の判定結果と地図情報531とに基づいて、目標位置となるエリア及び/又は装置までの経路を示す経路情報を生成する。送信部504は、判定部502の判定結果等に基づいて栽培移動ユニット10の移動体130や液肥供給装置20、差圧冷却装置40等に各種制御信号を送信する。
【0040】
(移動体130)
図16は移動体のハードウェア構成を示すブロック図であり、図17はその機能ブロック図である。図16に示されるように、移動体130は、CPU132と、RAM133と、記憶装置134と、入出力I/F(Interface)135と、通信I/F136と、駆動部137と、センサ類138と、車輪131とを備える。なお、説明上、ここではバッテリが省略されている。
【0041】
CPU132及びRAM133は、協働することにより、後述する各種機能を実現する。記憶装置134は、各種機能の実行に係る各種データを記憶する。入出力I/F135は、駆動部137に対する移動制御信号の送信やセンサ類138からの検知情報の取得を行うためのインターフェイスである。通信I/F136は、管理装置50と無線通信するためのインターフェイスである。駆動部137は車輪131の角度変更及び回転駆動を行うものであり、例えばモータ等が挙げられる。センサ類138は、移動体130の移動や自己位置推定、自己姿勢推定等において用いられるセンサである。
【0042】
本実施形態においては、センサ類138としてLiDAR(Light Detection And Ranging,Laser Imaging Detection And Ranging)等のレーザレーダ、ジャイロセンサ、加速度センサを有し、SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術を用いて移動体130が自己位置、自己姿勢の推定を行い自律走行することとする。移動体130は、管理装置50からの経路情報を移動制御信号と共に取得し、これとセンサ類138の検知結果とに基づいて自律走行を行う。なお、自己位置推定等には、SLAM技術の他に、デッドレコニング、GPSなどのGNSS(Global Navigation Satellite System)等の技術を用いることができる。また、植物工場の床面に、その位置を示す2次元コードやマーカ、移動体130の経路を示す磁気テープや光学テープを付し、移動体130がこれらを検知するセンサ(磁気センサやカメラ等)をセンサ類138として有して自己の位置を認識するようにしてもよい。磁気テープや光学テープを床面に付す場合は、移動体130は常にそのテープを検知しつつテープ上を移動することとなる。
【0043】
また、移動体130は、図17に示されるように、CPU132及びRAM133により実現される機能として、取得部1301と、走行部1302と、送信部1303とを備える。取得部1301は、管理装置50からの経路情報や移動制御信号を取得する。走行部1302は、経路情報に基づいて移動体130を走行させる、なお、走行部1302は、SLAM技術により、例えばレーザレーダにより検知された障害物(他の栽培移動ユニット10等)を避けるよう経路情報を適宜更新する。送信部1303は、定期的に温度センサ113からの測定温度を取得し、これを取得毎に管理装置50へ送信する。また、送信部1303は、自己位置が経路情報に含まれる目標位置に達した場合、到着信号を管理装置50へ送信する。
【0044】
(システム動作)
次に、本実施形態に係る植物栽培システム1の動作について詳細に説明する。図18は、本実施形態に係る植物栽培システムの動作を示すフローチャートである。なお、本フローは管理装置50の処理に着目したものであり、栽培移動ユニット10等の植物栽培システム1の他の装置の動作については、本フローの説明時に随時説明する。本フローは、制御対象となる複数の栽培移動ユニット10毎に、所定の周期で実行されるものであり、また管理装置50は予め栽培移動ユニット10の初期位置、即ち播種/育苗を終えて苗が定植された状態にある液肥L未供給状態の栽培移動ユニット10の位置を予め記憶しているものとする。また、予め作業者には、作業者個人を識別するためのID情報が付されており、ID情報を纏めた作業者IDリストが記憶装置53に予め記憶され、当該ID情報により示される作業者の配置位置が地図情報531に含まれていることとする。また、各エリアの装置についてもID情報が付され、当該ID情報を纏めた装置IDリストが記憶装置53に予め記憶され、当該ID情報により示される装置の配置位置が地図情報531に含まれていることとする。
【0045】
図18に示されるように、先ず判定部502は、制御対象となる栽培移動ユニット10が所定の液肥供給条件を満たしているか否かを判定する(S101)。ここでの液肥供給条件とは、液肥Lの供給の目安となる時間範囲を示す。例えば「直前の液肥Lの供給から24時間以上経過」等である。当然、播種/育苗を終えて苗が定植された状態にある液肥L未供給状態の栽培移動ユニット10が対象である場合は、液肥供給条件を満たすこととなる。この時間範囲は、植物Hや液肥Lの種類に応じて適宜設定することが好ましい。
【0046】
液肥供給条件を満たすと判定された場合(S101,YES)、生成部503は、複数ある液肥供給装置20から使用されておらず、且つ対象の栽培移動ユニット10の位置に対して最も近い装置を装置IDリスト及び地図情報531に基づいて選択し(S102)、当該選択した装置までの経路情報を地図情報531に基づいて生成する(S103)。ここで選択された装置は、以後使用中と認識され、後述する停止制御信号を送信するまで選択不可の状態となる。経路情報生成後、送信部504は経路情報と共に栽培移動ユニット10を当該経路情報に従って移動させる移動制御信号を栽培移動ユニット10へ送信する(S104)。送信後、判定部502は、取得部501が到着信号を栽培移動ユニット10から取得したか否かの判定を行い(S105)、到着信号が取得されていなければ(S105,NO)再度ステップS105の判定処理へ移行する。なお、到着信号には移動体130を固有に示すID情報が含まれており、これにより管理装置50は到着信号と移動体130、延いては栽培移動ユニット10とを紐付けることができる。
【0047】
一方、移動制御信号送信後、移動体130の取得部1301は当該移動制御信号を取得し、これに応じて走行部1302が経路情報に基づいて移動体130、即ち栽培移動ユニット10を移動させる。そして経路情報に含まれる目標位置にまで栽培移動ユニット10が移動した場合、換言すればノズル202と液肥循環部120とが連結した場合、移動体130の送信部1303は到着信号を管理装置50へ送信する。
【0048】
取得部501が到着信号を取得すると(S105,YES)、送信部504は液肥供給装置20へ、つまりポンプ203へ作動制御信号を送信する(S106)。この作動制御信号送信時及び/又は到着信号取得時から計時が開始され、その位置に栽培移動ユニット10がどの程度の時間滞在しているかが記憶され、これは後述する光照射処理においても同様である。作動制御信号を受けた液肥供給装置20は、ポンプ203が作動されて液肥循環部120に液肥Lが供給されると共に、古い液肥Lが排出される。所定時間後、管理装置50の送信部504は、液肥Lの供給を停止するための停止制御信号を液肥供給装置20のポンプ203に送信し(S107)、再度ステップS101の判定処理へ移行する。
【0049】
一方、ステップS101の判定処理において液肥Lが供給されたばかり等で液肥供給条件を満たさないと判定された場合(S101,NO)、判定部502は、所定の温度条件を満たすか否かを判定する(S108)。ここでの温度条件とは、取得された測定温度の上限値であり、当該上限値はそれ以上の温度となると植物Hの生育が損なわれる温度数値である。この温度数値は植物Hの種類に応じて適宜設定することが好ましい。
【0050】
温度条件を満たさないと判定された場合(S108,NO)、例えば光照射による温度上昇等により栽培ベッド110の温度環境が悪化したと判断され、環境調整エリア4の差圧冷却装置40を対象としたステップS102~ステップS107の処理が実行される。装置選択対象が差圧冷却装置40であり、生成される経路情報が選択された差圧冷却装置40に関するものであり、作動制御信号、停止制御信号の対象がファン417である以外は液肥供給装置20の場合と同様であるため、ここでのステップS102~ステップS107の処理の詳細な説明は省略する。
【0051】
一方、ステップS108の判定処理において温度条件を満たすと判定された場合(S108,YES)、栽培ベッド110の温度環境は良好であると認識され、判定部502は、植物Hの栽培期間が終了したか否かを判定する(S109)。判定部502は、植物Hの生育時間を計時しており、この計時時間が予め定められた栽培期間を超えるか否かにより植物Hの栽培期間が終了したか否かを判定する。
【0052】
植物Hの栽培期間が終了したと判定された場合(S109,YES)、生成部503は、収穫エリア6の空いている作業者P、即ち未選択または最も選択した時刻が早い作業者Pを作業者ID情報に基づいて選択し(S110)、当該選択した作業者Pの位置までの経路情報を地図情報531に基づいて生成する(S111)。なお、選択された作業者は、作業の重複が生じないように所定時間経過するまで選択不可とされる。生成後、送信部504は経路情報と共に栽培移動ユニット10を当該経路情報に従って移動させる移動制御信号を送信する(S112)。送信後、判定部502は、取得部501が到着信号を取得したか否かの判定を行い(S113)、到着信号が取得されていなければ(S113,NO)再度ステップS105の判定処理へ移行し、取得されれば(S113,YES)本フローは終了となる。
【0053】
一方、ステップS109において植物Hの栽培期間が終了していないと判定された場合(S109,NO)、植物Hに対して光を照射する光照射処理が実行される(S114)。
【0054】
次に、本実施形態に係る光照射処理ついて詳細に説明する。図19は、光照射処理を示すフローチャートである。図19に示されるように、先ず、管理装置50の判定部502は、対象の栽培移動ユニット10に光照射パターンA~Cのいずれかが選択済みであるか否かを判定する(S201)。光照射パターンが選択済みでないと判定された場合(S201,NO)、生成部503は、複数ある光照射装置30から明期領域A1-1,A1-2及び暗期領域A2(図8図10参照)のうちいずれかが使用されていない装置を装置IDリストに基づいて選択し(S202)、当該選択した装置において光照射パターンA~Cのうち使用されていないパターンを選択し(S203)、明期領域A1-1,A1-2及び暗期領域A2のうち使用されていない領域を選択する(S204)。
【0055】
次に生成部503は、選択した領域までの経路情報を地図情報531に基づいて生成する(S205)。生成後、送信部504は経路情報と共に栽培移動ユニット10を当該経路情報に従って移動させる移動制御信号を送信する(S206)。送信後、判定部502は、取得部501が到着信号を取得したか否かの判定を行い(S206)、到着信号が取得されていなければ(S206,NO)再度ステップS206の判定処理へ移行する。
【0056】
取得部501が到着信号を取得すると(S206,YES)、判定部502は、現在選択中の領域、即ち現在位置している領域の経過時間が所定の領域時間を経過したか否かを判定する(S208)。ここでの所定の領域時間は、明期及び暗期領域毎に異なる時間であり、上述したように本実施形態においては1日あたり明期16時間、暗期8時間である。したがって明期領域A1-1、A1-2、及び暗期領域A2における領域時間は、それぞれ8時間となる。なお、到着信号に含まれる栽培移動ユニット10(移動体130)のID情報は、選択した光照射装置30、選択した光照射パターン、選択した明期領域または暗期領域と対応付けられて記憶装置53に記憶されることとする。
【0057】
現在位置している領域の経過時間が所定の領域時間を経過したと判定された場合(S208,YES)、再度ステップS204の処理へ移行し、明期領域A1-1,A1-2及び暗期領域A2のうち自身に選択されていない領域を、自己の光照射パターンに基づいて選択する。一方、現在位置している領域の経過時間が所定の領域時間を経過していないと判定された場合(S208,NO)、その領域の待機が維持されて本フローは終了となる。
【0058】
また、ステップS201の処理において、光照射パターンが選択済みであると判定された場合(S201,YES)、判定部502は、光照射エリア3から他のエリア(液肥供給エリア2や環境調整エリア4等)に移動しているか否かを判定する(S209)。他のエリアに移動していると判定された場合(S209,YES)、途中で抜けた明期領域または暗期領域に戻るよう、再度ステップS205の処理へ移行する。一方、他のエリアに移動していないと判定された場合(S209,NO)、再度ステップS208の判定処理へ移行する。
【0059】
以上に説明した本実施形態によれば、栽培ベッド110上に個別に光源を設ける必要が無く、また複数の栽培ベッド110が位置する空間を全て冷却する必要もないため、設備の簡素化と共に、人件費、電力費等の維持費の低減が可能であり低コスト化を実現できる。また、作業者Pは収穫エリア6、準備エリア7のみに配置することができるため、液肥供給エリア2、光照射エリア3、環境調整エリア4を完全に無人化することができるため、極めて衛生的であると共に衛生管理の簡易化も実現できる。また、無人化することで作業者Pに負荷が加わる環境での生育も可能となる。このような衛生的な環境によれば植物Hの無洗浄の出荷も可能であり無洗浄野菜栽培システムを構築することができる。また、低コスト化や衛生環境の向上により人工光型植物工場自体の収益性の向上も図れる。
【0060】
また、栽培移動ユニット10毎に液肥Lの供給頻度や種類、温度及び光照射環境を可変とすることができるため、植物Hの品種による栽培環境の細分化、品種の増加を実現でき、2次代謝物の変化を考慮した生育も可能、例えばストレス、光、液肥不足等を生じさせることによる味や成分変化も可能となる。
【0061】
また、液肥供給装置20によれば、複数の液肥供給装置20の貯留槽201に植物Hの品種に応じた異なる液肥Lを貯留させることができ、植物Hの品種に応じた配合管理が可能である。また、液肥Lの殺菌管理やバブリング、入れ替え、自化中毒の抑制が容易であり、清掃手間の低減や設備の簡略化もできる。
【0062】
また、光照射装置30によれば、1日に必要な光の照射時間に基づいた明期領域A1-1,A1-2、暗期領域A2を設定することで少量の光源301で複数の栽培移動ユニット10に対して適切に光照射を行うことができる。
【0063】
また、差圧冷却装置40によれば、栽培ベッド110の複数の植物Hの葉の細部にまで良好に冷気を供給することができ、栽培ベッド110の温湿度管理が可能となると共に空気のよどみの除去や蒸散の制御も可能となる。更に、カビ抑制や2次代謝物の制御も可能である。
【0064】
なお、本実施形態においては光照射装置30に暗期領域A2を設けたが、暗期領域A2を設けず明期領域のみとし、暗期領域に相当する領域を光照射エリア3に隣接させるようにしてもよい。このようにすることで、暗期領域において栽培移動ユニット10を詰めて配置することができるため、光照射エリア3の縮小と共に当該エリア内の通路を削減でき、植物工場の省スペース化を実現できる。
【0065】
また、本実施形態においては、管理装置50と移動体130とが異なる装置であると説明したが、管理装置50の機能を移動体130に持たせてもよい。また、本実施形態においては、多段ラック111を移動体130が支持している形態を説明したが、これらが別体として構成されていてもよい。例えば、多段ラック111の四隅の脚部下面にキャスタを設け、移動体130がこの多段ラック111を移動可能に多段ラック111と連結することで各エリアに搬送するようにしてもよい。例えば、移動体130が多段ラック111の下方中央で多段ラック111の四隅の脚部にアームを介して連結し、多段ラック111と一体的に移動する形態や、移動体130が液肥循環部120下方に位置して多段ラック111と連結し牽引する形でこれを移動させる形態等が考えられる。また、牽引の形態では、多段ラック111が各エリア内で適切な姿勢となるよう、各エリア内の少なくとも各装置近辺には床面にキャスタを案内可能なガイドが設けられていることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態においては、栽培ベッド120を4段であると説明したが、これに限定するものではなく、5段以上、または3段以下等としてもよい。なお、光源301は栽培ベッド120の段数に合わせて適宜上下段数を可変とできるよう光照射装置30を構成することが好ましい。
【0067】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0068】
1 植物栽培システム
10 栽培移動ユニット(搬送部、植物搬送装置)
110 栽培ベッド(栽培収容部)
120 液肥循環部
130 移動体(搬送部)
2 液肥供給エリア(処理エリア)
20 液肥供給装置(液肥供給部)
3 光照射エリア(処理エリア)
30 光照射装置(光照射部)
4 環境調整エリア(処理エリア)
4A 冷却室
40 差圧冷却装置(環境調整部)
41 負圧部(負圧室)
416 通気孔
417 ファン
50 管理装置(搬送部、植物搬送装置)
6 収穫エリア(処理エリア)
7 準備エリア(処理エリア)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2021-10-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有する処理部と、
記栽培収容部を前記処理部へ搬送する搬送部と
を備え
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節する
ことを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記搬送部は、
前記栽培収容部を支持する支持部と、
前記支持部と連結し、前記処理部までの経路に関する経路情報に基づいて移動することで該支持部を搬送する移動体と
を備えることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記栽培収容部の植物に対して該植物の成長を促進するための液肥を供給する液肥供給部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記栽培収容部は、上下方向に複数あり、
前記搬送部は、前記液肥供給部と接続し、供給された液肥を前記複数の栽培収容部に循環させる液肥循環部
を備えることを特徴とする請求項3記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記液肥循環部は、上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給することにより該栽培収容部から下段の栽培収容部に液肥が供給され、該栽培収容部から液肥を回収することにより再び上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給する液肥循環を行う水撃ポンプである
ことを特徴とする請求項4記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記栽培収容部の温度環境を調整する環境調整部
を更に備えることを特徴とする請求項1~請求項のいずれか一項記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記環境調整部は、
冷却室と、
前記冷却室内に配置され、内部に画成された空間と外部とを連通する複数の通気孔が形成される負圧室と、
前記負圧室に設けられて前記空間内を負圧にするファンと
を備え、
前記搬送部は、前記栽培収容部を前記負圧室外部において前記通気孔に近接させることにより前記栽培収容部の温度環境を調整する
ことを特徴とする請求項記載の植物栽培システム。
【請求項8】
栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有する処理部に、前記栽培収容部を搬送部により搬送し、
前記搬送部が前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節する
ことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項9】
植物を栽培可能に収容する栽培収容部と、
前記栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有する処理エリアに、前記栽培収容部を搬送する搬送部と
を備え
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節する
ことを特徴とする植物搬送装置。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有し、無人の領域内に設けられた処理部と、
複数の前記栽培収容部をそれぞれ前記処理部へ搬送する、互いに独立して前記領域内を自律走行可能な複数の搬送部と
前記搬送部の状態を判定する判定部と、
前記搬送部を管理する管理部と
を備え、
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節し、
前記判定部は、前記明期領域及び暗期領域のいずれか一方の領域に待機する前記搬送部の待機時間が、該領域に対応する所定の時間経過したか否かを判定し、
前記管理部は、前記判定部により前記所定の時間経過したと判定された場合、前記一方の領域に待機する搬送部を前記明期領域及び暗期領域のいずれか他方の領域へ移動させる
ことを特徴とする植物栽培システム。
【請求項2】
前記搬送部は、
前記栽培収容部を支持する支持部と、
前記支持部と連結し、前記処理部までの経路に関する経路情報に基づいて移動することで該支持部を搬送する移動体と
前記判定部による判定結果に基づいて前記経路情報を生成する生成部と
を備えることを特徴とする請求項1記載の植物栽培システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記栽培収容部の植物に対して該植物の成長を促進するための液肥を供給する液肥供給部
を備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の植物栽培システム。
【請求項4】
前記栽培収容部は、上下方向に複数あり、
前記搬送部は、前記液肥供給部と接続し、供給された液肥を前記複数の栽培収容部に循環させる液肥循環部
を備えることを特徴とする請求項3記載の植物栽培システム。
【請求項5】
前記液肥循環部は、上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給することにより該栽培収容部から下段の栽培収容部に液肥が供給され、該栽培収容部から液肥を回収することにより再び上段の前記栽培収容部に対して液肥を供給する液肥循環を行う水撃ポンプである
ことを特徴とする請求項4記載の植物栽培システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記栽培収容部の温度環境を調整する環境調整部
を更に備えることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項記載の植物栽培システム。
【請求項7】
前記環境調整部は、
冷却室と、
前記冷却室内に配置され、内部に画成された空間と外部とを連通する複数の通気孔が形成される負圧室と、
前記負圧室に設けられて前記空間内を負圧にするファンと
を備え、
前記搬送部は、前記栽培収容部を前記負圧室外部において前記通気孔に近接させることにより前記栽培収容部の温度環境を調整する
ことを特徴とする請求項6記載の植物栽培システム。
【請求項8】
栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有し、無人の領域内に設けられた処理部に、互いに独立して前記領域内を自律走行可能な複数の搬送部により、複数の前記栽培収容部のそれぞれを個別に搬送し、
前記光照射部により光が照射される明期領域と前記光照射部がない暗期領域とのいずれか一方の領域に待機する前記搬送部の待機時間が、該領域に対応する所定の時間経過したか否かを、前記搬送部の状態を判定する判定部により判定し、
前記判定部により前記所定の時間経過したと判定された場合、前記一方の領域に待機する搬送部を前記明期領域及び暗期領域のいずれか他方の領域へ移動させる信号を、該搬送部を管理する管理部により該搬送部に送信し、
前記搬送部が前記明期領域と、前記暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節する
ことを特徴とする植物栽培方法。
【請求項9】
植物を栽培可能に収容する栽培収容部と、
前記栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有する、無人の領域内に設けられた処理に、前記栽培収容部を搬送する前記領域内を自律走行可能な搬送部と
前記搬送部を管理する管理部から信号を取得する取得部と
を備え、
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節し、
前記取得部は、前記明期領域及び暗期領域のいずれか一方の領域に待機する待機時間が、該領域に対応する所定の時間経過したと前記搬送部の状態を判定する判定部により判定された場合、前記管理部から前記明期領域及び暗期領域のいずれか他方の領域への移動を示す信号を取得し、
前記搬送部は、該信号に基づいて前記他方の領域へ移動する
ことを特徴とする植物搬送装置。
【請求項10】
栽培収容部に収容された植物に対して該植物の成長を促進するための光を照射する光照射部を有する処理部と、
前記栽培収容部を前記処理部へ搬送する搬送部と
を備え、
前記搬送部は、前記光照射部により光が照射される明期領域と、前記光照射部がない暗期領域とを前記栽培収容部と共に巡ることにより、前記栽培収容部の植物に対する光照射時間を調節し、
前記処理部は、前記栽培収容部の温度環境を調整する環境調整部を更に備え、
前記環境調整部は、
冷却室と、
前記冷却室内に配置され、内部に画成された空間と外部とを連通する複数の通気孔が形成される負圧室と、
前記負圧室に設けられて前記空間内を負圧にするファンと
を備え、
前記搬送部は、前記栽培収容部を前記負圧室外部において前記通気孔に近接させることにより前記栽培収容部の温度環境を調整する
ことを特徴とする植物栽培システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0055
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0055】
次に生成部503は、選択した領域までの経路情報を地図情報531に基づいて生成する(S205)。生成後、送信部504は経路情報と共に栽培移動ユニット10を当該経路情報に従って移動させる移動制御信号を送信する(S206)。送信後、判定部502は、取得部501が到着信号を取得したか否かの判定を行い(S20)、到着信号が取得されていなければ(S20,NO)再度ステップS20の判定処理へ移行する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
取得部501が到着信号を取得すると(S20,YES)、判定部502は、現在選択中の領域、即ち現在位置している領域の経過時間が所定の領域時間を経過したか否かを判定する(S208)。ここでの所定の領域時間は、明期及び暗期領域毎に異なる時間であり、上述したように本実施形態においては1日あたり明期16時間、暗期8時間である。したがって明期領域A1-1、A1-2、及び暗期領域A2における領域時間は、それぞれ8時間となる。なお、到着信号に含まれる栽培移動ユニット10(移動体130)のID情報は、選択した光照射装置30、選択した光照射パターン、選択した明期領域または暗期領域と対応付けられて記憶装置53に記憶されることとする。