(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012712
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】デッキ昇降装置
(51)【国際特許分類】
B61B 1/02 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B61B1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114740
(22)【出願日】2020-07-02
(71)【出願人】
【識別番号】507045409
【氏名又は名称】宇野 孝二
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝二
【テーマコード(参考)】
3D101
【Fターム(参考)】
3D101AD03
(57)【要約】
【課題】プラットホームに車両が停車する際に、車両の乗降口とプラットホームとの隙間を埋める。
【解決手段】車両Tの乗降口T1とプラットホームPとの間の隙間Sをデッキ部材2で埋めるデッキ昇降装置1である。デッキ部材2と可動上部板3との間に、可動上部板3に対しデッキ部材2を前後左右に調整可能に支持する支持手段4を設ける。デッキ部材2と可動上部板3とを結合機構5によって前後左右に調整可能に結合する。可動上部板3に昇降手段6を結合し、可動上部板3を昇降させることで、デッキ部材2を、隙間Sを埋める作動位置と、隙間Sを開放する待避位置との間で移動させる。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駅で車両が停車した際に、車両の乗降口とプラットホームとの間の隙間を、デッキ部材で埋めるデッキ昇降装置であって、
前記デッキ部材と可動上部板との間に設けられ、前記デッキ部材を、前記可動上部板に対し前後左右に調整可能に支持する支持手段と、
前記可動上部板と前記デッキ部材とを前後左右に調整可能に結合する結合機構と、
前記可動上部板に連係され、前記デッキ部材が前記隙間を埋める作動位置と、前記デッキ部材が前記隙間を開放する待避位置との間で、前記可動上部板を移動させる昇降手段とを備える、ことを特徴とするデッキ昇降装置。
【請求項2】
前記支持手段は、前記可動上部板の上側に設けられた球体受け座と、前記球体受け座の上に球体を挟んで設けられる球体乗り座とを備え、
前記球体乗り座の上側に前記デッキ部材が設けられている、請求項1記載のデッキ昇降装置。
【請求項3】
前記結合機構は、デッキ上板の長手方向の中央部に設けた中間板を挟んだ両側であって、そしてデッキ上板の短手方向に設けた支持板の前記支持手段の中心を通る支持板を挟んだ両側に、第1及び第2結合金具を有し、前記各結合金具は、上端部が前記デッキ部材に回転可能に連結される一方、下端部が前記可動上部板に前後左右に調整可能に連結されている、請求項1または2記載のデッキ昇降装置。
【請求項4】
前記デッキ部材は、前記プラットホームに沿って延びるデッキ上板と、前記デッキ上板の下側に設けられ前記デッキ上板の長手方向に延びるホーム側縦板及び車両側縦板と、前記ホーム側縦板及び前記車両側縦板の外側に設けられるパイプとを有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のデッキ昇降装置。
【請求項5】
前記昇降手段は、
前記可動上部板に結合される第1可動筒状柱部材と、
前記第1可動筒状柱部材が移動可能に挿入される第1筒状部材と、
前記第1可動筒状柱部材及び前記第1筒状部材の周囲に密封状態で配置される第1伸縮ベローズと、
前記伸縮ベローズの上側部分の周囲を覆う第1伸縮ベローズ保護筒状体と、
地上に設けられ前記プラットホーム側に移動可能である可動基板と、
前記第1筒状部材の内部空間を通じて前記第1可動筒状柱部材の下端部と前記可動基板とを結合し、前記第1可動筒状柱部材を前記第1筒状部材内に収納される方向に付勢する第1スプリングと、
前記第1筒状部材内への流体圧の付与により前記第1可動筒状柱部材を前記第1筒状部材内から突出させる流体圧付与手段とを備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のデッキ昇降装置。
【請求項6】
前記第1可動筒状柱部材の移動量を規制する第1規制手段と、前記第1可動筒状柱部材の移動時における衝撃を緩和する第1緩衝手段をさらに備え、
前記第1規制手段は、前記第1伸縮ベローズ保護筒状体と、前記第1筒状部材との間に第1規制ロッドを設け、前記第1規制ロッドの外周に前記第1スプリングの張力を緩和させる規制スプリングを配し,
前記第1緩衝手段は、前記第1規制ロッドに設けられている、請求項5記載のデッキ昇降装置。
【請求項7】
前記プラットホームの下部に収納凹部が形成され、
前記デッキ部材が前記隙間を開放するとき、前記デッキ部材を前記収納凹部内に待避させる待避手段をさらに備える、請求項5又は6に記載のデッキ昇降装置。
【請求項8】
前記待避手段は、
前記第1筒状部材に固縛される第2可動筒状柱部材と、
前記第2可動筒状柱部材が移動可能に挿入される第2筒状部材と、
前記第2可動筒状柱部材及び前記第2筒状部材の周囲に配置される第2伸縮ベローズと、
前記第2伸縮ベローズの先端部分の周囲を覆う第2伸縮ベローズ保護筒状体と、
前記プラットホームの前記収納凹部内に固定されるハウジングと、
前記第2筒状部材の内部空間を通じて前記第2可動筒状柱部材の後端部と前記ハウジングの後端部とを結合し、前記第2可動筒状柱部材を前記第2筒状部材内に収納される方向に付勢する第2スプリングとを備え、
前記流体圧付与手段は、前記第1筒状部材内への流体圧の付与の際に、前記第2可動筒状柱部材内へも流体圧を付与し、前記第2可動筒状柱部材を前記第2筒状部材内から突出させるものである、請求項7記載のデッキ昇降装置。
【請求項9】
前記第2可動筒状柱部材の移動量を規制する第2規制手段と、前記第2可動筒状柱部材の移動時における衝撃を緩和する第2緩衝手段をさらに備え、
前記第2規制手段は、前記第2可動筒柱部材と、前記ハウジングとの間に設けられ、前記第2緩衝手段は第2規制ロッドに設けられている、請求項8記載のデッキ昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の駅において、車両が停車し、乗客が乗降する際に、車両(鉄道車両)の乗降口とプラットホームとの間の隙間を埋めるデッキ昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道の駅において、複数の車両が連結された列車が到着したとき、直線状の軌道においては、各車両とプラットホームとの間には大きな隙間は生じない。一方、軌道が弧を描いていると、列車の外側に位置するプラットホームでは各車両の中央部に近い出入口においてプラットホームとの間に大きな隙間が生まれ、列車の内側に位置するプラットホームでは各車両の前後両端部に近い出入口においてプラットホームとの間に大きな隙間が生まれる。
【0003】
上記のように車両とプラットホームとの間に生まれる隙間を埋めるために、プラットホーム下に固定された減速機付電動機の回転運動を、クランクおよびコネクチングロッドからなるリンク機構により、可動踏板を、ヒンジを中心として旋回運動させ、その結果、プラットホームに到着した車両とプラットホームの先端間との隙間を埋め、乗客の軌道への転落を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。同様に、プラットホームを改造して、隙間調整装置や補助ステップ装置を設けることも提案されている(例えば、特許文献2,3,4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-212257号公報
【特許文献2】特開2006-224821号公報
【特許文献3】特開2006-298068号公報
【特許文献4】実開昭60-170259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が傾いて停車している場合には、車両とプラットホームとの間には、前記隙間だけでなく、段差も生じているので、特許文献1~4の技術では、十分に対応することができない。また、特許文献1~4の技術では、設置には、プラットホームについて大幅な改装工事が必要である。
【0006】
本発明は、駅で車両が停車した際に、車両とプラットホームとの隙間を埋め、車両とプラットホームに段差がある場合も含めて、安全な乗降を実現するデッキ昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、駅で車両が停車した際に、車両の乗降口とプラットホームとの間の隙間を、デッキ部材で埋めるデッキ昇降装置であって、前記デッキ部材と可動上部板との間に設けられ、前記デッキ部材を、前記可動上部板に対し前後左右に調整可能に支持する支持手段と、前記可動上部板と前記デッキ部材とを前後左右に調整可能に結合する結合機構と、前記可動上部板に連係され、前記デッキ部材が前記隙間を埋める作動位置と、前記デッキ部材が前記隙間を開放する待避位置との間で、前記可動上部板を移動させる昇降手段とを備える、ことを特徴とするものである。
【0008】
このようにすれば、車両がプラットホームに停止することなく通過する場合には、デッキ部材は昇降手段によって待避位置とされ、車両の乗降口とプラットホームとの間の隙間を開放し、車両の走行を妨げることが回避される。車両がプラットホームに停車する場合には、デッキ部材は昇降手段によって作動位置とされ、車両の乗降口とプラットホームとの間の隙間が埋められ、乗降客が、前記隙間を通じて落下するのが防止される。また、デッキ部材は可動上部板に対し前後左右上下に調整可能に支持されているので、デッキ部材が前後左右上下に動き、デッキ部材の上面姿勢が調整され、乗降客が乗降しやすくなる。
【0009】
よって、乗降客の乗降時には、車両の乗降口とプラットホームとの間の隙間がデッキ部材によって埋められるので、車両とプラットホームとの間に段差がある場合も含めて、安全に乗降することができる。また、車両やプラットホームについての、大幅な改装工事も特に必要としない。
【0010】
この場合、請求項2に記載のように、前記支持手段は、前記可動上部板の上側に設けられた球体受け座と、前記球体受け座の上に球体を挟んで設けられる球体乗り座とを備え、前記球体乗り座の上側に前記デッキ部材が設けられている、ことが望ましい。
【0011】
請求項3に記載のように、前記結合機構は、デッキ上板の長手方向の中央部に設けた中間板を挟んだ両側であって、そしてデッキ上板の短手方向に設けた支持板の前記支持手段の中心を通る支持板を挟んだ両側に、第1及び第2結合金具を有し、前記各結合金具は、上端部が前記デッキ部材に回転可能に連結される一方、下端部が前記可動上部板に前後左右に調整可能に連結されている、ことが望ましい。
【0012】
請求項4に記載のように、前記デッキ部材は、前記プラットホームに沿って延びるデッキ上板と、前記デッキ上板の下側に設けられ前記デッキ上板の長手方向に延びるホーム側縦板及び車両側縦板と、前記ホーム側縦板及び前記車両側縦板の外側に設けられるパイプとを有する、ことが望ましい。
【0013】
請求項5に記載のように、前記昇降手段は、前記可動上部板に結合される第1可動筒状柱部材と、前記第1可動筒状柱部材が移動可能に挿入される第1筒状部材と、前記第1可動筒状柱部材及び前記第1筒状部材の周囲に密封状態で配置される第1伸縮ベローズと、 前記第1伸縮ベローズの上側部分の周囲を覆う第1伸縮ベローズ保護筒状体と、地上に設けられ前記プラットホーム側に移動可能である可動基板と、前記第1筒状部材の内部空間を通じて前記第1可動筒状柱部材の下端部と前記可動基板とを結合し、前記第1可動筒状柱部材を前記第1筒状部材内に収納される方向に付勢する第1スプリングと、前記第1筒状部材内への流体圧の付与により前記第1可動筒状柱部材を前記第1筒状部材内から突出させる流体圧付与手段とを備える、ことが望ましい。ここで、第1伸縮ベローズの素材としては、金属のほか、ゴム、合成樹脂などが用いられる。流体圧には、気体圧、液体圧が含まれる。
【0014】
請求項6に記載のように、前記第1可動筒状柱部材の移動量を規制する第1規制手段と、前記第1可動筒状柱部材の移動時における衝撃を緩和する第1緩衝手段をさらに備え、前記第1規制手段は、前記第1伸縮ベローズ保護筒状体と、前記第1筒状部材との間に第1規制ロッドを設け、前記第1規制ロッドの外周に前記第1スプリングの張力を緩和させる規制スプリングを配し、前記第1緩衝手段は、前記第1規制ロッドに設けられている、ことが望ましい。
【0015】
請求項7に記載のように、前記プラットホームの下部に収納凹部が形成され、前記デッキ部材が前記隙間を開放するとき、前記デッキ部材を前記収納凹部内に待避させる待避手段をさらに備える、ことが望ましい。
【0016】
請求項8に記載のように、前記待避手段は、前記第1筒状部材に固縛される第2可動筒状柱部材と、前記第2可動筒状柱部材が移動可能に挿入される第2筒状部材と、前記第2可動筒状柱部材及び前記第2筒状部材の周囲に配置される第2伸縮ベローズと、前記第2伸縮ベローズの先端部分の周囲を覆う第2伸縮ベローズ保護筒状体と、前記プラットホームの前記収納凹部内に固定されるハウジングと、前記第2筒状部材の内部空間を通じて前記第2可動筒状柱部材の後端部と前記ハウジングの後端部とを結合し、前記第2可動筒状柱部材を前記第2筒状部材内に収納される方向に付勢する第2スプリングとを備え、前記流体圧付与手段は、前記第1筒状部材内への流体圧の付与の際に、前記第2筒状部材内へも流体圧を付与し、前記第2可動筒状柱部材を前記第2筒状部材内から突出させるものである、ことが望ましい。ここでも、第2伸縮ベローズの素材としては、金属のほか、ゴム、合成樹脂などが用いられる。流体圧には、気体圧、液体圧が含まれる。
【0017】
この場合、請求項9に記載のように、前記第2可動筒状柱部材の移動量を規制する第2規制手段と、前記第2可動筒状柱部材の移動時における衝撃を緩和する第2緩衝手段をさらに備え、前記第2規制手段は、前記第2可動筒状柱部材と、前記ハウジングとの間に設けられ、前記第2緩衝手段は第2規制ロッドに設けられている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、乗降客の乗降時において、車両とプラットホームとの間の隙間を埋めるようにし、デッキ部材を可動上部板に対し前後左右上下に調整可能に支持しているので、車両とプラットホームとの間に段差がある場合も含めて、乗降客について安全な乗降を確保することができる。また、車両やプラットホームについての大幅な改装工事も特に必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るデッキ昇降装置の一実施の形態を示す平面図である。
【
図17】車両とデッキ昇降装置との関係を示す平面図である。
【
図18】別の実施の形態の作動状態を示す断面図である。
【
図19】前記別の実施の形態の待避状態を示す断面図である。
【
図20】さらに別の実施の形態の作動状態を示す断面図である。
【
図21】前記さらに別の実施の形態の待避状態を示す断面図である。
【
図22】他の実施の形態の作動状態を示す断面図である。
【
図23】前記他の実施の形態の待避状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態を説明する。
【0021】
図1は本発明に係るデッキ昇降装置の一実施の形態を示す平面図、
図2は同正面図、
図3は同左側面図である。
【0022】
図1~
図3に示すように、1はデッキ昇降装置で、デッキ昇降装置1は、車両Tが線路R上を車輪T2が転動して通過する際は
図15に示すように待避し、車両Tが停車した場合は
図16に示すように作動位置にあり、
図17のように、その車両Tの乗降口T1とプラットホームPとの間に生じる隙間Sを、デッキ部材2によって埋めるものである。
【0023】
このデッキ昇降装置1は、可動上部板3と、デッキ部材2と可動上部板3との間に設けられる支持手段4と、結合機構5と、昇降手段6と、待避手段7と、第1及び第2規制手段8,9と、第1及び第2緩衝手段10,11とを備える。支持手段4は、デッキ部材2を、可動上部板3に対し前後左右に調整可能に支持するものである。結合機構5は、可動上部板3とデッキ部材2とを前後(傾斜)左右(勾配)に調整可能に結合している。昇降手段6は、可動上部板3に結合されたデッキ部材2を、停車している車両TとプラットホームPの前縁との間でほぼ鉛直方向において昇降させることで、デッキ部材2を、隙間Sを埋める作動位置(
図16参照)と、隙間Sを開放する待避位置(
図15参照)との間で移動させるものである。待避手段7は、デッキ部材2が隙間Sを開放するとき、デッキ部材2をプラットホームPの下部の収納凹部P0内に待避させるものである。
【0024】
第1規制手段8は、規制筒部材75を用いて、デッキ部材2の鉛直方向の移動、すなわち待避位置(
図15参照)と作動位置(
図16参照)との間での移動を規制するものである。第1緩衝手段10は、前記鉛直方向の移動を規制するときに、規制筒部材75が上部ストッパー72及び下部ストッパー73(緩衝材を含む)に衝突するので、その規制衝突時の衝撃を緩和するためのものである。つまり、上部ストッパー72及び下部ストッパー73はデッキ部材2の鉛直方向の移動と、その際の衝撃を緩和する機能を併せ持つ。
【0025】
第2規制手段9は、第2可動筒状柱部材81を用いて、昇降手段6の水平方向の移動すなわち作動位置(
図16参照)と待避位置(
図15参照)との間での移動を規制するものである。第2緩衝手段11は、前記水平方向の移動を規制するときに、第2可動筒状柱部材81が左側ストッパー93及び右側ストッパー94(緩衝材を含む)に衝突するので、その規制衝突時の衝撃を緩和するためのものである。つまり、左側ストッパー93及び右側ストッパー94はデッキ部材2の水平方向の移動と、その際の衝撃を緩和する機能を併せ持つ。
【0026】
これら作動位置と待避位置との間でデッキ部材2を移動させる操作は、例えば、車両T及び/又はプラットホームPに、車両TとプラットホームPの相対速度を検出する速度センサー(検出手段)を設け、その速度センサーによって、車両Tの到着や出発を検出することで自動的に行われる。
【0027】
デッキ部材2は、
図4~
図9に示すように、プラットホームPに沿って延びるデッキ上板21を有し、車両側よりもホーム側が低くなるように傾斜している。また、デッキ部材2は、デッキ上板21に加えて、デッキ上板21の下(裏)側に設けられデッキ上板21の長手方向に延びる中間板22及びホーム側縦板23と車両側縦板24とを備え、これらホーム側縦板23及び車両側縦板24の外側にパイプ26、27が設けられている。ホーム側縦板23と車両側縦板24との間でデッキ上板21の下側には、デッキ上板21の長手方向に対し直交する方向に支持板25が設けられている。ここで、デッキ上板21の幅は、車両Tのドア幅T1より大きくなっている。また、パイプ26,27は、例えばゴムホースなどの弾性材料で形成され、緩衝材としての役割とデッキ部材2の水平方向の動きを抑える役割とを併せ持つ。なお、デッキ部材2は、
図4~
図9では、車両側よりもホーム側が低くなるようにしているが、逆に車両側よりもホーム側が高くなるようにすることもできる。また、プラットホームPとの隙間Sが狭く、デッキ上板21の幅を小さくする必要がある場合には、デッキ部材2は適宜変更可能で、例えば、中間板22を省略したり、支持板25が付いていても、それに第1及び第2結合金具41,42が連結されず、第1及び第2結合金具41,42の上端部が支持板以外に連結したりすることができる。
【0028】
支持手段4は、
図6に示すように、昇降手段6の頂部である可動上部板3の上に設けられた筒状の球体受け座31と、球体受け座31の上に球体32を挟んで前後左右に調整可能に設けられる筒状の球体乗り座33とを備える。そして、球体乗り座33の上側にデッキ部材2が設けられている。
【0029】
結合機構5は、
図1、
図3、
図5、及び
図8に示すように、デッキ上板21の長手方向の中央部に設けた中間板22を挟んだ両側であって、そしてデッキ上板21の短手方向に設けた支持板25の支持手段4の中心を通る支持板25を挟んだ両側に、つまり、支持手段4が設けられている部分を挟んで、第1及び第2結合金具41,42を有する。各結合金具41,42は、上端部が中間板22に回転可能に連結される一方、下端部が可動上部板3に前後左右に調整可能に連結されている。つまり、結合機構5は、中間板22の有無にかかわらず、中間板相当又は/及び支持板25を挟んで設けることができる。
【0030】
昇降手段6は、
図2、
図3、
図6、
図7及び
図10、
図11,
図13、
図14に示すように、可動上部板3に結合される第1可動筒状柱部材51と、第1可動筒状柱部材51が移動可能に挿入される第1筒状部材52と、第1可動筒状柱部材51及び第1筒状部材52の周囲に密封性を確保して配置される第1伸縮ベローズ55とを備える。第1伸縮ベローズ55の上側部分は、周囲が第1伸縮ベローズ保護筒状体58によって覆われ、第1伸縮ベローズ保護筒状体58の上部に第1伸縮ベローズ保護筒状体取付板59が設けられている。そして、第1伸縮ベローズ保護筒状体取付板59が、可動上部板3に対し第1伸縮ベローズ55の第1伸縮ベローズ上部取付板56を挟んで取付けられ、ベローズ伸縮の際、伸縮ベローズ55の振れが防止されるようになっている。なお、地上には、プラットホームP側に水平方向に移動可能である可動基板62が設けられ、この可動基板62と第1可動筒状柱部材51の下端部とが第1スプリング61にて、第1筒状部材52の内部空間を通じて結合されている。この第1スプリング61は、第1可動筒状柱部材51を、第1筒状部材52内に収納される方向(鉛直方向)に付勢するものである。第1筒状部材52は、空気供給穴52aを介して空気圧を付与する空気圧付与手段に連係され、第1筒状部材52内への、空気供給穴52aを通じての空気の供給により第1可動筒状柱部材51を、第1筒状部材52内から突出させる空気圧が空気圧付与手段によって付与されるようになっている。
【0031】
なお、第1伸縮ベローズ55は、作動位置では自由長側となるように取付けられ、作動位置では反力は小さいが、待避位置では縮められており、上向きの力が作用する。よって、待避位置での第1スプリング61には、それに打ち勝つ力が必要である。一方、待避位置から作動位置に移るときには、第1伸縮ベローズ55の反力が減少し、第1スプリング61のスプリング力が増大することになるので、それを打ち消す空気圧を付与する必要がある。
【0032】
第1伸縮ベローズ55の下方は、第1筒状部材52の途中に設けた第1筒状部材中間板53に、第1伸縮ベローズ下部取付板57で取り付けられ、第1伸縮ベローズ55の上方は、可動上部板3に、第1伸縮ベローズ上部取付板56で取り付けられる。
【0033】
デッキ上板21の移動量を鉛直方向において規制する第1規制手段8として、上部突出片60と下部突出片54の間に第1規制ロッド71を縣架し、第1規制ロッド71の上部は上部ストッパー72を、第1規制ロッド71の下部は下部ストッパー73をそれぞれ備え、第1可動筒状柱部材51の昇降範囲(移動範囲)を規制している(
図6、
図7参照)。なお、第1可動筒状柱部材51は第1伸縮ベローズ55に内包され見えないので、その位置を把握するために、規制筒部材75を設けている。規制筒部材75は、第1可動筒状柱部材51と同じ長さで、上部に規制筒部材取付板76を有し、この制筒部材取付板76を上部突出片60に固縛している。上部突出片60と下部ストッパー73との間であって第1規制ロッド71の外周に規制スプリング74を設け、第1スプリング61の張力を緩和させている(デッキ部材2の耐荷重を大きく得ることができる)。また、上部ストッパー72と下部ストッパー73の間隔を調整することによって、可動基板62からデッキ上板21までの高さを調整できる構造にもなっている。
【0034】
第1筒状部材52には、デッキ部材2を含めて昇降手段6を水平方向に移動させる待避手段7が連結されている。待避手段7は、基本的には昇降手段と同様な構造で、第1筒状部材52に固縛される第2可動筒状柱部材81と、第2可動筒状柱部材81が移動可能に挿入される第2筒状部材84と、第2可動筒状柱部材81及び第2筒状部材84の周囲に配置される第2伸縮ベローズ86と、第2伸縮ベローズ86の先端部分の周囲を覆い第2伸縮ベローズ86の振れを防止する第2伸縮ベローズ保護筒状体89とを有する。なお、第2伸縮ベローズ86は、第2伸縮ベローズ86の左側は第2伸縮ベローズ左側取付板87で第2可動筒状柱部材中間板82に固縛し、第2伸縮ベローズ86の右側は第2伸縮ベローズ右側取付板88で第2筒状部材中間板85に固縛される。
【0035】
待避手段7は、プラットホームPの下部の取付穴P1を利用するので、プラットホームPの取付穴P1にはめ込まれているハウジング91と、第2筒状部材84の内部空間を通じてハウジング91底部と第2可動筒状柱部材81の後端部とを結合し、第2可動筒状柱部材81を、第2筒状部材84内に収納される方向(水平方向)に付勢する第2スプリング90とを備える。そして、前述した空気圧付与手段によって、第2可動筒状柱部材81内への、空気供給穴81aを通じての空気の供給により第2可動筒状柱部材81を第2筒状部材84内から突出させる空気圧を付与する。第2可動筒状柱部材81と第2筒状部材84との内部空間とは相互に連通している。第2可動筒状柱部材81は、第1筒状部材52と第2筒状部材84の組付性や保守性から、第1筒状部材52に対し、二股状の連結部83を介して分割可能かつ回転可能に結合され、デッキ部材2が、停車中の車両Tに対し直交方向において結合状態を調整することができる。
【0036】
前述した空気圧付与手段によって、作動位置になる際には待避手段7による水平方向の伸びが昇降手段6による鉛直方向での伸長よりわずかに先行し、待避位置になる際には昇降手段6による鉛直方向での収縮が待避手段7による水平方向の収縮よりわずかに先行するようになっている。なお、昇降手段6と同様に、第2可動筒状柱部材81の移動量を規制する第2規制手段9として、第2可動筒状柱部材中間板82とハウジング91(固縛側)の間に第2規制ロッド92を縣架し、第2規制ロッド92の左側には左側ストッパー93、第2規制ロッド92の途中に右側ストッパー94を備えて、第2可動筒状柱部材81の移動を規制している(
図6、
図7参照)。また、第2緩衝手段11は、左側ストッパー93の右側に装着されるゴムなどの緩衝材と、右側ストッパー94の左側に装着されるゴムなどの緩衝材とを有し、昇降手段6の移動を規制する際の衝撃を和らげるようにしている。
【0037】
可動基板62は、第1筒状部材52の下端部に結合され、下側にプラットホームP側への移動を補助する複数の円柱ころ64を収納する枠部63を有する。また、可動基板62は、プラットホーム側への移動を案内する平面視コ字形状のガイド部材65にはめ込まれている。これによって、第2可動筒状柱部材81の進退によって、円柱ころ64が転動して可動基板62がガイド部材65に案内されつつ、プラットホームP側に移動する。
【0038】
このように、可動基板62は、線路RとプラットホームPとの間に配置され、デッキ昇降装置1を、プラットホームP下部の収納凹部P0内に移動させる構造となっているので、車両やプラットホームについての大幅な改装工事も特に必要としない。
【0039】
本発明に係るデッキ昇降装置は以上のような基本構造を有し、これを使用するにあたっては、具体的に説明していないが、デッキ昇降装置1を自動的に動作させるために、速度センサーや配線及び操作盤、並びに空気供給のためのコンプレッサー、電磁開閉弁やそれらを繋ぐ配管などの付属設備が設けられている。
【0040】
例えば、車両T及び/又はプラットホームPに、車両TとプラットホームPの相対速度を検出する速度センサーを設け、車両TとプラットホームPの相対速度が小さくなったことを検出すると、昇降手段6に空気が送られ、デッキ部材2が作動位置(
図16参照)まで上昇し、車両Tの乗降口T1とプラットホームPとの間の隙間Sを埋める。一方、前記速度センサーが車両TとプラットホームPの相対速度が生じ始めたことを検出すると、昇降手段6から空気が抜かれて、デッキ部材2が、前記作動位置よりも低い位置である待避位置(
図15参照)まで下降する。
【0041】
前記実施の形態は、速度センサーを検出手段として、空気を駆動源として用いる場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、加速度センサーを検出手段として、油圧、水圧などの流体圧及び/又はアキュームレーターを駆動源として用いることもできる。
【0042】
また、前記実施の形態では、デッキ昇降装置1が2台であるが、2台に限らず、そのほかの台数でもよいのはもちろんである。
【0043】
前述した実施の形態では、規制筒部材75の移動量を鉛直方向において規制する第1規制手段8を構成する規制筒部材75内に規制スプリング74を設けているが、
図18及び
図19に示す第1規制手段8Aのように、規制スプリング74を省略することも可能である。
【0044】
前述した実施の形態では、第1伸縮ベローズ55においては、作動位置を第1伸縮ベローズ55の自由長側にしているが、
図20及び21に示すように、待避位置を自由長側にすることによって、第1スプリング61を省略することも可能である。同様に、第2伸縮ベローズ86においても、作動位置を第2伸縮ベローズ86の自由長側にしているが、
図20及び21に示すように、待避位置を第2伸縮ベローズ86の自由長側にすることによって、第2スプリング90を省略することも可能である。
【0045】
また、
図22及び
図23に示すように、支持手段4Aが下部板100を有するようにして、可動上部板3と下部板100(支持手段4A)との間に拡管部材101を設け、支持手段4A(球面受け座31)の中心軸を第1可動筒状柱部材51の中心軸よりもプラットホームP側にずらせることで、待避手段7を省くことができる。この場合、下側になるほど径が大きく中心軸がプラットホームPに近づく拡管部材101を利用しているので、昇降の安定性は確保される。
【0046】
さらに、待避手段7において、第2筒状部材84に対する第2可動筒状柱部材81の移動安定性を高めるために、例えば、ハウジング91の内側に、第2可動筒状柱部材中間板82と第2筒状部材中間板85とを支持しつつ移動を案内するガイドレール95(丸棒)を3本、120度間隔で設けることも可能であるが、第2筒状部材84に対する第2可動筒状柱部材81の移動安定性があれば、待避手段の構造は、前述した実施の形態のものに制限されない。
【0047】
前記実施の形態では、流体圧として空気圧を利用して、可動筒状柱部材51,81を移動させているが、液圧を利用して移動させることもできる。その場合には、液体を用いるので、空気溜りができるのを防止するために、液体を下から供給し、上から排出することが必要になる。その場合、昇降手段6の場合は、可動部分の上部(例えば、可動上部板3)に液体排出口を設けることになる。また、待避手段7の場合は、第2可動筒状柱部材中間板82の頂部辺りに液体排出口が設けられることになる。
【符号の説明】
【0048】
1 デッキ昇降装置
2 デッキ部材
3 可動上部板
4 支持手段
4A 他の実施の形態の支持手段
5 結合機構
6 昇降手段
7 待避手段
8 第1規制手段
8A 別の実施形態の第1規制手段
9 第2規制手段
10 第1緩衝手段
11 第2緩衝手段
21 デッキ上板
22 中間板
23 ホーム側縦板
24 車両側縦板
25 支持板
26,27 パイプ
31 球体受け座
32 球体
33 球体乗り座
41 第1結合金具
42 第2結合金具
51 第1可動筒状柱部材
52 第1筒状部材
52a 空気供給穴
53 第1筒状部材中間板
54 下部突出片
55 第1伸縮ベローズ
56 第1伸縮ベローズ上部取付板
57 第1伸縮ベローズ下部取付板
58 第1伸縮ベローズ保護筒状体
59 第1伸縮ベローズ保護筒状体取付板
60 上側突出片
61 第1スプリング
62 可動基板
63 枠部
64 円柱ころ
65 ガイド部材
71 第1規制ロッド
72 上部ストッパー(緩衝材含む)(第1緩衝手段)
73 下部ストッパー(緩衝材含む)(第1緩衝手段)
74 規制スプリング
75 規制筒部材
76 規制筒部材取付板
81 第2可動筒状柱部材
81a 空気供給穴
82 第2可動筒状柱部材中間板
83 二股状の連結部
84 第2筒状部材
85 第2筒状部材中間板
86 第2伸縮ベローズ
87 第2伸縮ベローズ左側取付板
88 第2伸縮ベローズ右側取付板
89 第2伸縮ベローズ保護筒状体
90 第2スプリング
91 ハウジング
92 第2規制ロッド
93 左側ストッパー(緩衝材含む)(第2緩衝手段)
94 右側ストッパー(緩衝材含む)(第2緩衝手段)
100 下部板
101 拡管部材
P プラットホーム
P0 収納凹部
P1 取付穴
R 軌道
T 車両
T1 乗降口
T2 車輪
S 隙間