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特開2022-127137無線通信システム、無線通信方法、無線通信装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127137
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信方法、無線通信装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/14 20180101AFI20220824BHJP
   H04W 4/38 20180101ALI20220824BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20220824BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H04W76/14
H04W4/38
H04W92/18
G06F13/00 520R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025101
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】中脇 望
【テーマコード(参考)】
5B084
5K067
【Fターム(参考)】
5B084AA02
5B084AB50
5B084BA09
5B084BB19
5B084CA07
5B084CD09
5B084CD24
5B084DB02
5B084DC05
5B084DC07
5B084DC19
5K067BB27
5K067DD17
5K067EE02
5K067GG06
(57)【要約】
【課題】情報端末に複数のデータ転送用アプリケーションがインストールされている場合に通信競合が発生しないようにする。
【解決手段】この発明の一態様は、情報端末である第2の装置において複数のデータ転送用アプリケーションが通信権取得要求を送信すると、センシング装置である第1の装置は、上記各通信権取得要求に含まれるアプリケーション固有識別情報と、予め記憶された調停条件とに基づいて、要求元の各アプリケーションに対する通信の許否を判定し、その判定結果とアプリケーション固有識別情報とを含む応答を第2の装置に返送する。これに対し第2の装置は、上記応答に含まれる通信の許否の判定結果にもとに各アプリケーションについて通信権獲得の成否を判定し、通信権の獲得に成功したアプリケーションにより伝送対象データの転送処理を実行する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを備える無線通信システムであって、
前記第2の装置は、
前記複数のアプリケーションがそれぞれ前記第1の装置に対し通信を要求する際に、前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報を含む通信権取得要求を生成し送信する要求送信処理部を備え、
前記第1の装置は、
前記第2の装置から複数の前記通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記固有識別情報と、予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定する通信調停処理部と、
前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成し、前記第2の装置へ返送する応答処理部と
を備え、
前記第2の装置は、
前記第1の装置から返送された前記応答に含まれる前記許否の判定結果を表す情報と前記固有識別情報とに基づいて、前記複数のアプリケーションの各々について通信権の獲得の成否を判定する判定処理部と、
前記成否の判定結果に基づいて、前記複数のアプリケーションのうち前記通信権の獲得に成功したアプリケーションにより前記伝送対象データの前記転送処理を実行するデータ転送処理部と
を備える無線通信システム。
【請求項2】
伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを具備する無線通信システムにおいて、前記第1の装置として使用される無線通信装置であって、
前記第2の装置から複数の通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報と、予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定する通信調停処理部と、
前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成し、前記第2の装置へ返送する応答処理部と
を備える無線通信装置。
【請求項3】
前記通信調停処理部は、前記調停条件として先着順を定義し、前記第2の装置から前記複数の通信権取得要求を受信した場合に、受信順序が最も早い通信権取得要求に対応するアプリケーションに対し通信を許可する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記通信調停処理部は、前記調停条件として前記複数のアプリケーションに対する優先度を定義し、前記第2の装置から前記複数の通信権取得要求を受信した場合に、前記優先度の最も高いアプリケーションに対し通信を許可する、請求項2に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記許否の判定結果を表す情報に基づいて当該判定結果の表示情報を生成し、当該表示情報を前記無線通信装置が備える表示部に表示させる表示処理部を、さらに備える請求項2乃至4のいずれかに記載の無線通信装置。
【請求項6】
伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを具備し、前記第1の装置が、前記第2の装置から複数の通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報と予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定し、前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成して前記第2の装置へ返送する機能を備える無線通信システムにおいて、前記第2の装置として使用される無線通信装置であって、
前記通信権取得要求の送信に対し、前記第1の装置から返送された前記応答に含まれる前記許否の判定結果を表す情報と前記固有識別情報とに基づいて、前記複数のアプリケーションのそれぞれについて通信権獲得の成否を判定する成否判定処理部と、
前記成否の判定結果に基づいて、前記複数のアプリケーションのうち通信権の獲得に成功したアプリケーションにより前記伝送対象データの前記転送処理を実行するデータ転送処理部と
を備える無線通信装置。
【請求項7】
前記成否の判定結果を表す情報に基づいて前記判定結果を表示するための表示情報を生成し、当該表示情報を前記無線通信装置が備える表示部に表示させる表示処理部を、さらに備える請求項6に記載の無線通信装置。
【請求項8】
伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを備える無線通信システムが実行する無線通信方法であって、
前記第2の装置が、前記複数のアプリケーションがそれぞれ前記第1の装置に対し通信を要求する際に、前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報を含む通信権取得要求を生成し送信する過程と、
前記第1の装置が、前記第2の装置から複数の前記通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記固有識別情報と、予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定する過程と、
前記第1の装置が、前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成し、前記第2の装置へ返送する過程と、
前記第2の装置が、前記第1の装置から返送された前記応答に含まれる前記許否の判定結果を表す情報と前記固有識別情報とに基づいて、前記複数のアプリケーションの各々について通信権の獲得の成否を判定する過程と、
前記第2の装置が、前記成否の判定結果に基づいて、前記複数のアプリケーションのうち前記通信権の獲得に成功したアプリケーションにより前記伝送対象データの前記転送処理を実行する過程と
を備える無線通信方法。
【請求項9】
請求項2乃至5のいずれかに記載の無線通信装置が備える前記各処理部による処理を、前記無線通信装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【請求項10】
請求項6または7に記載の無線通信装置が備える前記各処理部による処理を、前記無線通信装置が備えるプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の無線通信装置間でデータを伝送する無線通信システムと、このシステムで使用される無線通信方法、無線通信装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、血圧計等のセンシング装置により測定されたセンシングデータをサーバ装置等の管理装置に転送する方式として、センシング装置からスマートフォン等の情報端末へBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信技術を使用してセンシングデータを送信し、情報端末が上記センシングデータを移動通信ネットワークを介してサーバ等の管理装置へ転送する方式が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
この種のデータ転送方式は、例えば情報端末が備えるデータ転送用のアプリケーションが生成する通信権取得要求を、情報端末のOS(Operating System)がセンシング装置へ送信し、センシング装置から返送される応答をOSが受信して上記データ転送用のアプリケーションに通知し、以後データ転送用のアプリケーションがセンシング装置との間でセンシングデータの受信処理を実行することで実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-123144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のデータ転送方式には以下のような課題があった。すなわち、近年ユーザの健康管理を行うサービスが種々出現し、ユーザは所望のサービスを選択してその管理サーバに自身のセンシングデータを送信して健康管理を依頼するケースが増えている。このサービスを利用する場合、ユーザは自身の情報端末に、利用先のサービスが提供するデータ転送用アプリケーションをインストールし、センシングデータの転送を可能にする。
【0006】
しかしながら、例えばユーザが複数のサービスを選択した場合のように、情報端末に複数のデータ転送用アプリケーションがインストールされると、次のような不具合が発生するおそれがある。すなわち、上記複数のデータ転送用アプリケーションから同一期間に通信権取得要求が発生されると、これらの通信権取得要求が情報端末のOSからそのままセンシング装置へ送信され、センシング装置から返送される各応答が情報端末のOSにより受信されてそのまま要求元のデータ転送用アプリケーションに通知される。このとき、各データ転送用アプリケーションは、通知された応答が自身への応答か否かを判別することができないため、それぞれセンシングデータを受信するための処理を実行しようとし、その結果センシング装置において通信の競合が発生する。このため、場合によってはセンシング装置において意図しないデータアクセスが実行され、これによりデータ破損等が引き起こされる場合がある。
【0007】
この発明は、情報端末に複数のデータ転送用アプリケーションがインストールされている場合に通信の競合が発生しないようにする技術を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明に係る第1の態様は、伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを備える無線通信システムに関するもので、前記第1の装置は、通信調停処理部と、応答処理部とを備え、前記第2の装置は、要求送信処理部と、成否判定処理部と、データ転送処理部とを備える。
【0009】
要求送信処理部は、前記複数のアプリケーションがそれぞれ前記第1の装置に対し通信を要求する際に、前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報を含む通信権取得要求を生成し送信する。通信調停処理部は、前記第2の装置から複数の前記通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記固有識別情報と、予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定する。応答処理部は、前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成し、前記第2の装置へ返送する。成否判定処理部は、前記第1の装置から返送された前記応答に含まれる前記許否の判定結果を表す情報と前記固有識別情報とに基づいて、前記複数のアプリケーションの各々について通信権獲得の成否を判定する。データ転送処理部は、前記成否の判定結果に基づいて、前記複数のアプリケーションのうち通信権の獲得に成功したアプリケーションにより前記伝送対象データの前記転送処理を実行する。
【0010】
この発明の第1の態様によれば、第2の装置において複数のアプリケーションが通信権取得要求を送信すると、第1の装置では上記各通信権取得要求に含まれるアプリケーション固有識別情報と調停条件とに基づいて要求元の各アプリケーションに対する通信の許否が判定され、その判定結果とアプリケーション固有識別情報とを含む応答が第2の装置に返送される。これに対し第2の装置では、上記応答に含まれる通信の許否の判定結果にもとに各アプリケーションについて通信権獲得の成否が判定され、通信権の獲得に成功したアプリケーションにより伝送対象データの転送処理が実行される。
【0011】
従って、例えば第2の装置において複数のアプリケーションが同一期間に通信権取得要求を送信したとしても、第1の装置は、調停条件に基づいて上記通信権取得要求を送信した各アプリケーションに対する通信の許否を判定してその判定結果を応答する。このため、要求元の各アプリケーションは、上記応答の内容に従い、通信が許可されたアプリケーションのみが伝送対象データの転送処理を行うことになり、これにより第1の装置における通信の競合は回避される。従って、第1の装置において意図しないデータアクセスが行われてデータ破損等を引き起こす心配はなくなり、これによりシステムの信頼性を高めることができる。
【0012】
この発明の第2の態様は、伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを具備する無線通信システムにおいて、前記第1の装置として使用される無線通信装置に関するもので、無線通信装置は、通信調停処理部と、応答処理部とを備えている。通信調停処理部は、前記第2の装置から複数の通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報と、予め設定された調停条件とに基づいて、要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定する。応答処理部は、前記許否の判定結果を表す情報と対応する前記固有識別情報とを含む応答を生成し、前記第2の装置へ返送する。
【0013】
この発明の第2の態様によれば、第2の装置の複数のアプリケーションが同一期間に通信権取得要求を送信したとしても、この複数の通信権取得要求に対し第1の装置で調停処理が行われて、その結果が要求元の各アプリケーションに通知される。このため、第2の装置では通信が許可されたアプリケーションのみにより伝送対象データの転送処理が行われることになる。このため、第1の装置における通信の競合の発生は回避され、これにより意図しないデータアクセスによるデータ破損等が発生する心配はなくなり、第1の装置は安定性の高いデータ転送処理を行うことができる。
【0014】
この発明の第3の態様は、前記通信調停処理部が、前記調停条件として先着順を定義し、前記第2の装置から複数の通信権取得要求を受信した場合に、受信順序が最も早い通信権取得要求に対応するアプリケーションに対し通信を許可するようにしたものである。
【0015】
この発明の第3の態様によれば、第2の装置の複数のアプリケーションから同一期間にそれぞれ通信権取得要求が送信された場合に、上記各アプリケーションに対し先着順に通信が許可される。このため、第2の装置に複数のアプリケーションがインストールされている場合に、これらのアプリケーションに対し公平に通信権を付与することが可能となる。
【0016】
この発明の第4の態様は、前記通信調停処理部が、前記調停条件として前記複数のアプリケーションに対する優先度を定義し、前記第2の装置から前記複数の通信権取得要求を受信した場合に、前記優先度の最も高いアプリケーションに対し通信を許可するようにしたものである。
【0017】
この発明の第4の態様によれば、前記第2の装置の複数のアプリケーションから同一期間にそれぞれ通信権取得要求が送信された場合に、優先度が高く設定されたアプリケーションに対し優先的に通信が許可される。このため、例えばユーザが指定した優先度の高いアプリケーションによるデータ転送を優先的に行うことが可能となる。
【0018】
この発明に係る装置の第5の態様は、第1の装置に表示処理部をさらに設け、この表示処理部により、前記許否の判定結果を表示するための表示情報を生成して表示部に表示させるようにしたものである。
【0019】
この発明の第5の態様によれば、例えばユーザは、第1の装置において、第2の装置のいずれのアプリケーションによりデータ転送が行われているかを確認することが可能となる。
【0020】
この発明に係る装置の第6の態様は、伝送対象データを生成する第1の装置と、データ転送処理を行う複数のアプリケーションを備え当該複数のアプリケーションの制御の下で前記第1の装置との間で前記伝送対象データの転送処理を行う第2の装置とを具備し、前記第1の装置が、前記第2の装置から複数の通信権取得要求を受信した場合に、当該各通信権取得要求に含まれる前記複数のアプリケーションの各々の固有識別情報と予め設定された調停条件とに基づいて要求元の前記複数のアプリケーションに対する通信の許否を判定し、前記許否の判定結果を表す情報と対応する固有識別情報とを含む応答を生成して前記第2の装置へ返送する機能を備える無線通信システムにおいて、前記第2の装置として使用される無線通信装置に関するもので、無線通信装置は、成否判定処理部と、データ転送処理部とを備えている。成否判定処理部は、前記通信権取得要求の送信に対し、前記第1の装置から返送された前記応答に含まれる前記許否の判定結果を表す情報と前記固有識別情報とに基づいて、前記複数のアプリケーションのそれぞれについて通信権獲得の成否を判定する。データ転送処理部は、前記成否の判定結果に基づいて前記複数のアプリケーションのうち通信権の獲得に成功したアプリケーションにより伝送対象データの転送処理を実行する。
【0021】
この発明の第6の態様によれば、第2の装置の各アプリケーションでは、通信権の取得要求に対し第1の装置から返送される応答の内容により通信権獲得の成否が判定され、通信権の獲得に成功したアプリケーションのみによりデータ転送処理が実行される。このため、第1の装置における通信の競合の発生は回避され、これによりデータ破損等が引き起こされる心配はなくなり安定性の高いデータ転送処理を実現できる。
【0022】
この発明の第7の態様は、第2の装置に表示処理部をさらに備え、この表示処理部により、前記成否の判定結果を表す表示情報を生成して前記表示部に表示させるようにしたものである。
【0023】
この発明の第7の態様によれば、第2の装置において、複数のアプリケーションのうちいずれのアプリケーションが選択されているかをユーザが確認することができる。
【発明の効果】
【0024】
すなわちこの発明によれば、情報端末に複数のデータ転送用アプリケーションがインストールされている場合に通信競合が発生しないようにする技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
図2図2は、図1に示したシステムにおいて第1の装置として使用されるセンシング装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示したシステムにおいて第1の装置として使用されるセンシング装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図4図4は、図1に示したシステムにおいて第2の装置として使用される情報端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
図5図5は、図1に示したシステムにおいて第2の装置として使用される情報端末のソフトウェア構成を示すブロック図である。
図6図6は、図3に示したセンシング装置の制御部が実行するセンシングデータ送信処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示した処理手順のうち調停処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図8図8は、図5に示した情報端末の制御部が実行するセンシングデータ受信処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。
図9A図9Aは、図3および図5に示したセンシング装置と情報端末との間で実行されるデータ転送処理の前半部分の手順を示すシーケンス図である。
図9B図9Bは、図3および図5に示したセンシング装置と情報端末との間で実行されるデータ転送処理の後半部分の手順を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照してこの発明に係わる実施形態を説明する。
【0027】
[一実施形態]
(構成例)
(1)システム
図1は、この発明の一実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示す図である。
一実施形態に係る無線通信システムは、第1の装置として機能するセンシング装置SDと、第2の装置として機能する情報端末UTとを備える。そして、センシング装置SDにより測定されたセンシングデータを、近距離無線通信技術の一つである例えばBluetooth(登録商標)を使用して情報端末UTへ転送する。情報端末UTは、上記センシングデータをネットワークNWを介してサーバ装置SVへ転送する。
【0028】
なお、この例では、センシング装置SDと情報端末UTとの間の無線通信方式として、Bluetoothのうちバージョン4.0により定義されるBLE(Bluetooth Low Energy)を使用する。BLEを使用すると、従前の仕様に比べて消費電力をさらに少なくすることが可能であり、特にBLEアドバタイジングと呼ばれる片方向通信を利用すると、より高い低消費電力化が期待できる。
【0029】
ネットワークNWは、例えばインターネットとこのインターネットにアクセスするためのアクセスネットワークとを含む。アクセスネットワークとしては、例えば4Gまたは5G規格を採用する移動無線通信ネットワークや無線LAN(Local Area Network)等が用いられるが、その限りではない。
【0030】
サーバ装置SVは、例えば医療保健機関または健康情報のサービス事業者等が運営するクラウドコンピュータまたはWebコンピュータからなり、ユーザのセンシングデータを収集してユーザの健康管理を行う。なお、図1では簡単のためサーバ装置SVを1つのみ図示しているが、ユーザの健康管理を行うサービス事業者が複数ある場合には、それぞれのサービス事業者が運用する複数のサーバ装置が設けられる。
【0031】
(2)装置
(2-1)センシング装置SD
図2および図3は、それぞれセンシング装置SDのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
【0032】
センシング装置SDは、例えば血圧計からなり、制御ユニット1と、センシングユニット2と、BLE通信モジュール3と、入力部4aおよび表示部4bとを備えている。
【0033】
センシングユニット2は、制御ユニット1の制御の下で例えば血圧データを含むセンシングデータの測定動作を行い、測定されたセンシングデータを制御ユニット1へ出力する。なお、センシングユニット2は、血圧データ以外に、脈拍数や心電波形、血糖値、活動量、ストレス度等に係るその他のバイタルデータを単独または複合して測定するデバイスであってもよい。
【0034】
BLE通信モジュール3は、上記情報端末UTとの間で、BLEの規格で定義された通信プロトコルに従い無線制御信号およびデータの送受信を行う。なお、BLE通信モジュール3は、センシング装置SDに内蔵されるものに限らず、付属の通信用アダプタとして外設されるものであってもよく、また独立して使用されるIoT機器やルータ、セットトップボックス(Set Top Box:STB)が備える通信モジュールであってもよい。
【0035】
制御ユニット1は、例えば中央処理ユニット(Central Processing Unit:CPU)等のハードウェアプロセッサを使用した制御部11を備える。なお、制御部11は、暗号化処理等を行うためにDSP(Digital Signal Processor)を備えていてもよい。
【0036】
上記制御部11には、バス17を介して、プログラム記憶部12およびデータ記憶部13を有する記憶ユニットと、センサインタフェース(以後インタフェースをI/Fと記載する)14と、通信I/F15と、入出力I/F16が接続される。
【0037】
センサI/F14は、制御部11の制御の下、センシングユニット2の動作に係る各種制御信号の授受、およびセンシングユニット2から出力されるセンシングデータを受け取って制御部11に渡す処理を行う。通信I/F15は、制御部11の制御の下、BLE通信モジュール3の動作に係る各種制御信号の授受と、制御部11により生成されるパケットをBLE通信モジュール3へ出力する処理を行う。
【0038】
プログラム記憶部12は、例えば、記憶媒体としてHDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成したもので、OS(Operating System)等のミドルウェアに加えて、一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0039】
データ記憶部13は、例えば、記憶媒体として、SSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリとを組み合わせたもので、一実施形態を実施するために必要な主たる記憶部として、センシングデータ記憶部131と、調停情報記憶部132とを備えている。
【0040】
センシングデータ記憶部131は、センシングユニット2により測定されたセンシングデータを、その測定日時を表す情報等と紐付けた状態で記憶するために使用される。
【0041】
調停情報記憶部132は、BLE無線リンクを接続する過程で情報端末UTから複数の通信権取得要求が送られた場合に、これらの要求に対する通信の調停を行うための調停条件を記憶する。調停条件としては、この例では「先着順」または「優先度」が定義されるが、これらに限るものではない。また調停情報記憶部132は、上記複数の通信権取得要求に対する調停結果を表す情報も保存する。
【0042】
なお、データ記憶部13は、制御部11の各種処理の過程で生成されるデータを一時保持する記憶領域も備える。
【0043】
制御部11は、一実施形態を実施するために必要な主たる機能として、センシング制御部111と、BLE通信制御部112と、通信調停処理部113と、センシングデータ送信処理部114とを備える。これらの制御部および処理部111~114は、何れもプログラム記憶部12に格納されたプログラムを制御部11のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0044】
センシング制御部111は、入力部4aにおいて血圧データを含むバイタルデータの測定動作のトリガとなる操作が行われた場合に、センサI/F14を介してセンシングユニット2を起動する。そして、センシングユニット2により測定されたセンシングデータをセンサI/F14を介して取り込み、取り込んだ上記センシングデータを、測定日時を表す情報を対応付けてセンシングデータ記憶部131に記憶させる処理を行う。
【0045】
BLE通信制御部112は、BLE通信方式で規定された通信プロトコルに従い、情報端末UTとの間でBLEのアドバタイジングおよび接続シーケンスを実行して、情報端末UTとの間にBLEの無線リンクを確立する一連の処理を実行する。
【0046】
通信調停処理部113は、上記BLEアドバタイジングの過程で情報端末UTから、後述する複数のデータ転送用アプリケーションによる複数の通信権取得要求が送られた場合に、調停情報記憶部132に記憶された調停条件に基づいて上記複数の通信権取得要求を送信した上記各アプリケーションに対する通信の調停を行う。そして、調停結果を表す情報と、上記通信権取得要求に含まれている要求元のデータ転送用アプリケーションの固有識別情報(以後アプリIDと称する)とを含む応答情報を生成し、生成された上記応答情報をBLE通信制御部112から返送させる処理を行う。また通信調停処理部113は、上記調停結果を表す情報を調停情報記憶部132に保存させる。
【0047】
センシングデータ送信処理部114は、上記BLE通信制御部112により情報端末UTとの間にBLEの無線リンクが確立された状態で、センシングデータ記憶部131から未送信のセンシングデータを読み出し、当該センシングデータを通信I/F15を介してBLE通信モジュール3へ出力し、BLE通信モジュール3から送信させる処理を行う。
【0048】
(2-2)情報端末UT
図4および図5は、それぞれ情報端末UTのハードウェア構成およびソフトウェア構成を示すブロック図である。
【0049】
情報端末UTは、例えばユーザが所有するスマートフォンからなる。なお、情報端末UTとしては、ユーザが所有するものであれば、他にタブレット型端末やウェアラブル型端末、ノート型のパーソナルコンピュータ等が用いられてもよい。
【0050】
情報端末UTは、制御ユニット5と、BLE通信モジュール6と、移動無線通信モジュール7と、入出力デバイス8とを備える。
【0051】
BLE通信モジュール6は、上記センシング装置SDとの間で、BLEの規格で定義された通信プロトコルに従い無線制御信号およびデータの送受信を行う。
【0052】
移動無線通信モジュール7は、移動通信ネットワークにより定義される無線アクセス方式および通信プロトコルを使用して、ネットワークNWを介してサーバ装置SVとの間でデータの送受信を行う。無線アクセス方式としては、例えばLong Time Evolution(LTE)(登録商標)、4Gまたは5Gが使用される。
【0053】
入出力デバイス8は、例えば液晶又は有機ELを用いた表示デバイスの表示画面上に、感圧方式または静電容量方式を採用したタッチ式入力シートを重ねて配置したもので、各種操作データの入力および表示データの表示を行うために使用される。
【0054】
制御ユニット5は、中央処理ユニット等のハードウェアプロセッサを使用した制御部51を備える。この制御部51には、バス57を介して、プログラム記憶部52およびデータ記憶部53を有する記憶ユニットと、通信I/F54,55および入出力I/F56が接続される。
【0055】
通信I/F54は、センシング装置SDとの間にBLEの無線リンクを確立する過程で、制御部51とBLE通信モジュール6との間で授受される各種信号の受け渡しまたは変換等の処理を行う。
【0056】
入出力I/F56は、上記入出力デバイス8において入力された操作データを取り込んで制御部51に渡すと共に、制御部51から出力された各種表示情報を上記入出力デバイス8へ出力し表示させる。
【0057】
プログラム記憶部52は、例えば、記憶媒体としてSSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、ROM等の不揮発性メモリとを組み合わせて構成されたもので、OS等のミドルウェアに加えて、一実施形態に係る各種制御処理を実行するために必要なプログラムを格納する。
【0058】
このプログラムの中には、健康管理サービスを提供する複数の事業者(センシング装置SDのメーカ等が含まれていてもよい)が提供するデータ転送用の複数のアプリケーションが含まれる。この例では、2つのデータ転送用アプリケーション(以後アプリA、アプリBと称する)がインストールされているものとして説明を行う。
【0059】
データ記憶部53は、例えば、記憶媒体として、SSD等の随時書込みおよび読出しが可能な不揮発性メモリと、RAM等の揮発性メモリと組み合わせたもので、一実施形態を実施するために必要な主たる記憶部として、センシングデータ記憶部531を備えている。センシングデータ記憶部531は、センシング装置SDから送られたセンシングデータを記憶するために使用される。なお、センシングデータ記憶部531は、アプリAおよびアプリBの各々について設けられてもよい。また、データ記憶部53は、制御部51の各種処理の過程で生成されるデータを一時保持する記憶領域も備える。
【0060】
制御部51は、プラットフォーム511と、第1のデータ転送処理部512と、第2のデータ転送処理部513とを備えている。これらの処理部511~513は、何れもプログラム記憶部52に格納されたOSおよびアプリケーションプログラムを、制御部51のハードウェアプロセッサに実行させることにより実現される。
【0061】
プラットフォーム511は、OSにより実行されるもので、BLE通信方式で規定される通信プロトコルに従い、センシング装置SDに対するスキャン、センシング装置SDからのBLEのアドバタイズの受信、およびBLEの接続シーケンスに係る各種要求および応答等の送受信処理を実行し、センシング装置SDとの間にBLEの無線リンクを確立するまでの一連の処理を行う。
【0062】
第1のデータ転送処理部512は、上記アプリAを実行することで動作するもので、センシング装置SDからセンシングデータを取得するための一連のデータ転送処理を行う。例えば、プラットフォーム511に対し、スキャンの実行、アドバタイズの受信、接続要求の送信、接続シーケンスの実行、通信権取得要求の送信とそれに対する応答情報の受信を行わせる。このとき、上記接続要求には上記アプリAのアプリIDが挿入される。
【0063】
次に第1のデータ転送処理部512は、受信された上記応答情報に含まれる調停結果およびアプリIDに基づいてアプリAに対する通信権獲得の成否を判定する。そして、通信権の獲得に成功した場合に、センシング装置SDとの間に確立される無線リンクを介してセンシングデータを受信し、受信されたセンシングデータをセンシングデータ記憶部531に記憶させる。
【0064】
また第1のデータ転送処理部512は、記憶された上記センシングデータのサーバ装置SVへの転送タイミングを監視し、転送タイミングになると、上記センシングデータ記憶部531から未送信のセンシングデータを読み出し、読み出された上記センシングデータを通信I/F55を介して移動無線通信モジュール7へ出力する。そして、上記センシングデータを、移動通信ネットワークで規定される通信プロトコルに従い、移動無線通信モジュール7からネットワークNWを介してサーバ装置SVに向け送信させる処理を行う。
【0065】
第2のデータ転送処理部513は、上記アプリBを実行することで動作するもので、センシング装置SDからセンシングデータを取得するための一連のデータ転送処理を行う。その処理手順と処理内容は、アプリAを実行する上記第1のデータ転送処理部512の処理と同一である。
【0066】
(動作例)
次に、以上のように構成された無線通信システムの動作例を説明する。
図6および図7はセンシング装置SDの制御部11による処理手順と処理内容を、また図8は情報端末UTの制御部51による処理手順と処理内容をそれぞれ示すフローチャートである。また、図9A,9Bはセンシング装置SDと情報端末UTとの間におけるデータ転送処理の動作手順を示すシーケンス図である。
【0067】
(1)情報端末UTにおけるデータ転送用アプリケーションの起動
情報端末UTの制御部51は、図8に示すステップS30においてアプリケーションの起動を監視している。この状態で、例えばユーザが入出力デバイス8においてアプリAおよびアプリBの起動操作を行うか、またはサービス事業者のサーバ装置SVからアプリA,Bの起動要求が受信されると、情報端末UTの制御部51はアプリA,Bを起動する。以後、アプリA,Bは情報端末UTにインストールされている他の各種アプリケーションに対しバックグラウンドで動作する。
【0068】
アプリA,Bを実行するデータ転送処理部512,513はいずれも、起動すると先ずステップS31において、プラットフォーム511に対しスキャン要求を与える。この結果、以後プラットフォーム511は、センシング装置SDに対するBLEのアドバタイズの間欠的なスキャン動作を開始する。なお、このときプラットフォーム511は、アプリA,Bの両方からスキャン要求を受信するが、図9Aに示すように先に受信したスキャン要求に応じてスキャン動作を実行する。
【0069】
(2)センシング装置SDにおけるセンシング動作
センシング装置SDにおいて、被測定者であるユーザがセンシングのための操作を行ったとする。このときの操作としては、例えば入力部4aに設けられた測定ボタンの押下が挙げられるが、ユーザが腕や手首等の被測定部位にカフを装着する操作等であってもよい。
【0070】
センシング装置SDの制御部11は、上記操作をステップS10により検知すると、センシング制御部111の制御の下、ステップS11においてセンシングユニット2を起動させる。そして、センシングユニット2により測定され出力されたセンシングデータを、ステップS12によりセンサI/F14を介して取得し、取得されたセンシングデータを、測定日時を表す情報を付加した後にセンシングデータ記憶部131に記憶させる。センシング制御部111は、上記1回のセンシング動作が終了すると、ステップS13においてセンシング動作が終了したか否かを判定する。そして、被測定者が測定ボタンを再度押下した場合には、ステップS11に戻って上記センシング動作を繰り返し実行する。
【0071】
なお、この例では、センシングデータとして、収縮期血圧(Systolic Blood Pressure)、拡張期血圧(Diastolic Blood Pressure)および脈拍数を表すデータが取得されるが、センシングデータには、脈拍数や心電波形、血糖値、活動量、ストレス度等に係るその他のバイタルデータが単独または複合して含まれていてもよい。
【0072】
(3)センシングデータの転送
(3-1)BLEのアドバタイジングおよび接続シーケンスの実行
センシング装置SDの制御部11は、上記ステップS13においてセンシング動作が終了したと判定すると、BLE通信制御部112の制御の下、ステップS14において例えば一定の時間間隔で間欠的にBLEのアドバタイズの送信を開始する。
【0073】
これに対し情報端末UTの制御部51は、ステップS32において、プラットフォーム511により上記BLEのアドバタイズを受信すると、第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513がステップS33において接続要求をそれぞれ生成し、プラットフォーム511へ出力する。
【0074】
プラットフォーム511は、上記接続要求を通信I/F54を介してBLE通信モジュール6へ出力する。この結果、BLE通信モジュール6からセンシング装置SDに向け上記接続要求が送信される。なお、このときプラットフォーム511は、第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513からそれぞれ接続要求が発生した場合、先に発生した接続要求のみをセンシング装置SDへ送信する。
【0075】
センシング装置SDの制御部11は、上記アドバタイズの送信期間中にステップS15において情報端末UTから上記接続要求を受信すると、BLE通信制御部112の制御の下、ステップS16によりBLEの接続シーケンスを実行する。
【0076】
またこのとき、情報端末UTのプラットフォーム511も、上記接続要求の送信後にステップS34において上記センシング装置SDとの間でBLEの接続シーケンスを実行する。そして、上記BLEの接続シーケンスによりセンシング装置SDとの間が接続されると、プラットフォーム511は、上記接続要求の送信元となる第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513に対しそれぞれ接続完了を通知する。
【0077】
(3-2)通信権取得要求の送信
上記接続完了通知をステップS35により受け取ると、第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513は、ステップS36において通信権取得要求を生成する。このとき、上記各通信権取得要求にはそれぞれ要求元のアプリA,BのアプリIDが挿入される。
【0078】
そして、第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513は、生成された上記通信権取得要求をプラットフォーム511に渡す。プラットフォーム511は、上記各通信権取得要求をBLE通信モジュール6からセンシング装置SDに向けそれぞれ送信する。
【0079】
(3-3)通信の調停処理
これに対し、センシング装置SDの制御部11は、ステップS17において上記通信権取得要求を受信すると、ステップS18に移行する。そして、通信調停処理部113の制御の下、上記通信権取得要求に対する通信の調停処理を以下のように実行する。
【0080】
図7は、この通信の調停処理の処理手順と処理内容を示すフローチャートである。すなわち、通信調停処理部113は、先ずステップS181により、情報端末UTから一定時間(例えば1秒またはそれ未満)内に送られた通信権取得要求が一つであるかまたは複数であるかを判定する。この判定の結果、一つであれば、当該要求に対し無条件に通信を許可する。そして、ステップS182において、上記通信を許可する旨の情報と、受信された上記通信権取得要求に含まれるアプリIDとを含む応答情報を生成し、生成された上記応答情報をステップS186によりBLE通信モジュール3から情報端末UTに向け送信させる。
【0081】
一方、上記したように情報端末UTから上記一定時間内に2つの通信権取得要求が受信されたとする。この場合通信調停処理部113は、調停情報記憶部132から調停条件を読み出す。そして、読み出された上記調停条件に基づいて、上記2つの通信権取得要求についてそれぞれ通信の許否を判定する。
【0082】
通信の許否の判定手法には、例えば「先着順」と、「優先度順」の2つの手法が考えられる。これらはいずれも調停条件により定義される。
【0083】
先ず「先着順」は、受信された順序が早い方の通信権取得要求に対し通信を許可し、受信順序が遅い方の通信権取得要求に対しては許否するものである。この場合、通信調停処理部113は、図7に例示するように、ステップS183により受信順が早い方の通信権取得要求を選択し、選択されたこの通信権取得要求に対しステップS184において、通信の許可(OK)を示すフラグ情報とアプリIDとを挿入した応答情報を生成する。一方、受信順が遅い方の通信権取得要求に対しては、ステップS185において、通信の許否(NG)を示すフラグ情報とアプリIDとを挿入した応答情報を生成する。そして、生成された上記各応答情報を、ステップS186によりBLE通信モジュール3から情報端末UTに向け送信する。
【0084】
これに対し「優先度順」は、例えば情報端末UTにおいて、ユーザがアプリA,Bに対し予め設定した優先度に従い判定するもので、優先度が高い方のアプリケーションに対応する通信権取得要求に対し通信を許可し、優先度が低い方のアプリケーションに対応する通信権取得要求に対しては一旦許否する。なお、通信権取得要求の送信元がアプリAであるかBであるかの判定は、通信権取得要求に含まれるアプリIDをもとに行われる。
【0085】
この場合も通信調停処理部113は、上記許否の判定結果、つまり許可(OK)または許否(NG)を示すフラグ情報と、要求元のアプリケーションのアプリIDとを含む応答情報を、上記通信権取得要求毎に生成し、生成された各応答情報をBLE通信モジュール3から情報端末UTに向け送信する。
【0086】
情報端末UTのプラットフォーム511は、上記センシング装置SDから送信された上記各応答情報をBLE通信モジュール3を介して受信すると、受信された各応答情報を第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513に渡す。このとき、プラットフォーム511は、各応答情報の宛先を識別する機能を有していないので、受信された各応答情報を第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513の両方に通知する。
【0087】
情報端末UTの第1のデータ転送処理部512および第2のデータ転送処理部513は、上記各応答情報を受信すると、ステップS38において、これらの応答情報に含まれるアプリIDをもとにいずれの応答情報が自己のアプリケーション宛ての応答情報であるかを判定する。そして、この自己宛の応答情報に含まれるフラグ情報をもとに、通信権獲得の成否を判定する。以後、通信権の獲得に成功した第1のデータ転送処理部512または第2のデータ転送処理部513により、センシングデータの受信動作が実行される。
【0088】
(3-4)センシングデータの転送
センシング装置SDの制御部11は、上記調停処理を終了すると、センシングデータ送信処理部114の制御の下、ステップS19において、センシングデータ記憶部131からセンシングデータを読み出す。そして、読み出された上記センシングデータを、BLE通信モジュール3から情報端末UTとの間に確立された無線リンクを介して情報端末UTへ転送する。
【0089】
これに対し情報端末UTの第1および第2のデータ転送処理部512,513のうち、通信権の獲得に成功したデータ転送処理部、例えばアプリAに対応する第1のデータ転送処理部512は、センシング装置SDとの間に確立されたBLEの無線リンクを介して、上記センシング装置SDからセンシングデータを受信し、受信されたセンシングデータをセンシングデータ記憶部531に記憶させる。そして、センシングデータの受信完了をステップS40で検出すると、第1のデータ転送処理部512はステップS41により切断要求をセンシング装置SDへ送信し、処理を終了する。
【0090】
(3-5)通信待機中のアプリケーションがある場合
センシング装置SDの制御部11は、通信調停処理部113による通信の許否の判定結果を表す情報、例えば通信を拒否した通信権取得要求を、通信待機情報として調停情報記憶部132に保存する。BLE通信制御部112は、センシングデータの送信後に、情報端末UTから送信される切断要求をステップS20により受信すると、続いてステップS21において、調停情報記憶部132に保存されている通信待機情報をもとに、待機中の通信権取得要求の有無を判定する。そして、待機中の通信権取得要求がある場合には、ステップS14に戻り、ステップS14~ステップS20により処理を再度実行する。
【0091】
一方、情報端末UTの制御部51は、上記第1のデータ転送処理部512が、ステップS41により切断要求を送信してデータ転送処理を終了すると、続いてステップS41において、待機中のデータ転送用アプリケーションの有無を判定する。この判定の結果、待機中のデータ転送用アプリケーションがある場合には、情報端末UTの制御部51はステップS31に戻って、ステップS31~ステップS41による処理を再度実行する。
【0092】
例えば、先に述べた例では、アプリBが通信待機中となっているため、第2のデータ転送処理部513の制御の下、上記ステップS31~ステップS41によりセンシング装置SDからセンシングデータを受信するための処理を実行する。図9Bはその処理シーケンスを示す図である。
【0093】
(作用・効果)
以上述べたように一実施形態では、情報端末UTにインストールされた2つのデータ転送用のアプリA,Bの制御の下で、センシング装置SDから情報端末UTへセンシングデータを転送する処理を行う際に、上記アプリA,BがそのアプリIDを含む通信権取得要求をセンシング装置SDへ送信する。これに対しセンシング装置SDは、情報端末UTから上記各アプリA,Bによる通信権取得要求をそれぞれ受信した場合に、予め記憶されている調停条件に基づいて、上記各アプリA,Bについて通信の許否を判定する。そして、その判定結果を表す情報と、上記通信権取得要求に含まれるアプリIDとを含む応答情報を生成して情報端末UTへ返送する。情報端末UTの上記各アプリA,Bは、受信された上記応答情報に基づいて通信権獲得の成否を判定し、通信権の獲得に成功したアプリAまたはBがセンシング装置SDからセンシングデータを受信する処理を行うようにしている。
【0094】
従って、例えば情報端末UTにおいて、アプリA,Bが同一期間に通信権取得要求を送信したとしても、センシング装置SDにより上記各通信権取得要求に対する調停処理が行われ、その結果が応答情報により情報端末UTに通知される。このため、要求元の各アプリA,Bは通信権の獲得に成功したアプリのみがセンシングデータの転送処理を行うことになり、センシング装置SDにおける通信の競合は回避される。従って、センシング装置SDにおいて意図しないデータアクセスが行われてデータ破損等を引き起こす心配はなくなり、これによりデータ転送処理に対する信頼性を高めることができる。
【0095】
また一実施形態では、調停条件として先着順を定義し、受信順序が最も早い通信権取得要求に対し通信を許可するようにしている。このため、情報端末UTにインストールされているアプリA,Bに対し公平に通信権を付与することが可能となる。
【0096】
一方、調停条件としてアプリA,Bに対し優先度を定義してもよく、この場合には例えばユーザが指定した優先度の高いアプリによるデータ転送を優先的に行うことが可能となる。
【0097】
さらに一実施形態では、センシング装置SDにおいて調停結果を表す情報として通信を拒否したアプリBからの通信権取得要求を調停情報として保存し、かつ情報端末UTにおいては通信権獲得の成否の判定結果を表す情報を保存している。そして、通信が許可されたアプリAによるデータ転送終了後に、上記各保存情報に基づいて引き続きBLEアドバタイジングおよび接続シーケンスを行い、さらに上記アプリBによるデータ転送処理を実行するようにしている。このため、アプリAによるデータ転送処理終了後に、自動的にアプリBによるデータ転送処理を実行し、起動中のすべてのアプリによるデータ転送処理を完了することができる。
【0098】
[変形例]
センシング装置SDにおいて、通信権取得要求に対する調停結果を表す表示情報を生成して表示部4bに表示するようにしてもよい。また情報端末UTにおいて、通信権の獲得の成否を表す表示情報を生成して入出力デバイス8の表示部に表示するようにしてもよい。このようにすると、ユーザはセンシング装置SDにおいても、また情報端末UTにおいても、センシングデータ転送処理中のアプリケーションを確認することが可能となる。
【0099】
また、上記例では情報端末UTは、アプリA,Bの一方がデータ転送を終了すると切断要求を送信する場合について述べた。しかし、他の例として情報端末UTは切断要求を送信せずに、以下のような通信処理により待機中のアプリに通信処理を行わせることが可能である。
【0100】
すなわち、例えばいまアプリA,Bが通信権獲得要求を送信し、これに対しセンシング装置SDがアプリAに対し(OK)、アプリBに対し(NG)の通信権獲得応答を返送したとする。この場合、情報端末UTはアプリAがデータ転送を実行し、アプリBは待機状態となる。そして、アプリAがデータ転送を終了すると、情報端末UTは通信権開放要求を送信する。このとき通信権開放要求には、アプリAのIDが挿入される。
【0101】
これに対しセンシング装置SDは、上記アプリAのIDが挿入された通信権開放要求を受信すると、アプリAのIDを含む通信権開放応答を返送する。情報端末UTは、上記アプリAのIDを含む通信権開放応答によりアプリAが通信権を開放したことを確認すると、再度通信権獲得要求をセンシング装置SDに向け送信する。このような処理手順によっても、アプリA,Bは両方ともデータ転送を完了することができる。
【0102】
[その他の実施形態]
一実施形態では、第1の装置として血圧計を用いた場合を例にとって説明したが、第1の装置は血圧データ以外のバイタルデータを測定するデバイスであってもよく、さらにはバイタルデータ以外に温度や湿度、気圧等の環境データを測定するデバイスや、排気ガス等の大気汚染に係る物質や水質、振動、騒音等を測定するデバイスであってもよい。
【0103】
その他、データ転送用アプリケーションの数、第1の装置および第2の装置の種類とその構成、処理手順および処理内容、伝送対象データの種類やデータ構造などについても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施可能である。
【0104】
以上、この発明の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。つまり、本発明の実施にあたって、実施形態に応じた具体的構成が適宜採用されてもよい。
【0105】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0106】
SD…センシング装置
UT…情報端末
NW…ネットワーク
SV…サーバ装置
1,5…制御ユニット
2…センシングユニット
3,6…BLE通信モジュール
4a…入力部
4b…表示部
7…移動無線通信モジュール
8…入出力デバイス
11,51…制御部
12,52…プログラム記憶部
13,53…データ記憶部
14…センサI/F
15,54,55…通信I/F
16,56…入出力I/F
111…センシング制御部
112…BLE通信制御部
113…通信調停処理部
114…センシングデータ送信処理部
131,531…センシングデータ記憶部
132…調停情報記憶部
511…プラットフォーム(OS)
512…第1のデータ転送処理部(アプリA)
513…第2のデータ転送処理部(アプリB)
514…センシングデータ転送処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B