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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127147
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】研削方法及び研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20220824BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220824BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B24B7/04 A
H01L21/304 631
B24B49/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025126
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】391011102
【氏名又は名称】株式会社岡本工作機械製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】坂東 翼
(72)【発明者】
【氏名】山本 栄一
(72)【発明者】
【氏名】三井 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】本田 悠
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB93
3C034CA05
3C034CA22
3C034CB01
3C043BA03
3C043BA07
3C043CC04
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA13
5F057AA20
5F057BA19
5F057CA12
5F057CA31
5F057DA11
5F057FA42
5F057FA45
5F057GA12
5F057GA13
(57)【要約】
【課題】異種材料部が埋め込まれた基板を短時間で高精度に研削することができる研削方法及び研削装置を提供する。
【解決手段】主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部42が埋め込まれた基板40を回転させ、且つ研削といし3を回転させながらダウンフィードさせて基板40を研削といし3で研削加工する研削方法であって、研削加工中に基板30の加工面を画像センサ10で連続的に撮像し、画像センサ10によって得られた画像データから異種材料部42の露出量を解析し、異種材料部42が露出し始めた状態から異種材料部42の露出量が所定の設定値に達する段階まで研削加工を継続して実行する。これにより、従来技術のように異種材料部42の露出を検知するために研削加工の実行及び停止を繰り返すことなく、研削状況を正確に把握することができる。よって、異種材料部42が埋め込まれた基板40を短時間で効率良く高精度に研削することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を回転させ、且つ研削といしを回転させながらダウンフィードさせて前記基板を前記研削といしで研削加工する研削方法であって、
前記研削加工中に前記基板の加工面を画像センサで連続的に撮像し、前記画像センサによって得られた画像データから前記異種材料部の露出量を解析し、前記異種材料部が露出し始めた状態から前記異種材料部の前記露出量が所定の設定値に達する段階まで前記研削加工を継続して実行することを特徴とする研削方法。
【請求項2】
前記基板は樹脂基板であり、前記異種材料部は金属材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の研削方法。
【請求項3】
前記画像センサは、画像取得時間が1から100マイクロ秒であり、光源がスポットストロボ発生型であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の研削方法。
【請求項4】
主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を保持して回転する基板チャックと、
前記基板チャックに保持された前記基板に対向する研削といしを保持し前記基板チャックの回転軸から径方向にオフセットした位置を回転軸として回転する研削ヘッドと、
前記研削といしと前記基板が接近若しくは離間する方向に前記研削ヘッドまたは前記基板チャックを送る送り機構と、
回転する前記基板を回転する前記研削といしで研削する工程において前記基板の前記研削といしから離れた加工面を撮像する画像センサと、
前記画像センサで撮像された前記加工面の画像データから前記異種材料部の露出量を解析する画像解析装置と、を有し、
前記画像解析装置で解析された前記露出量に基づいて前記送り機構が制御され前記加工面から露出した前記異種材料部が研削されることを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削方法及び研削装置に関し、特に、異種材料が埋め込まれた基板を研削する研削方法及び研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体基板等の製造において、基板を構成する層の内部に主たる構成材料とは異なる材料から成る電極等が埋め込まれた基板を研削して薄化する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Si貫通電極(TSV:Through Silicon Via)が埋め込まれる絶縁分離Si基板を使用した半導体装置の製造方法において、Si支持基板を研削法等によって除去してSi貫通電極のCu膜を露出させることが開示されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、樹脂、金属及び半導体デバイスチップを含むFOPLP(Fan Out Panel Level Package)技術による大型の複合基板を研削する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-140162号公報
【特許文献2】特開2020-102481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来技術の基板研削方法及び装置は、加工時間を短縮して基板の生産効率を向上させるために改善すべき点があった。
【0007】
具体的には、基板を構成する層の主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を研削する工程において、異種材料部を全て露出させることが要求されることがある。例えば、モールド樹脂やシリコンウェーハ等の内部に銅電極(Cu Via)等が埋め込まれた基板を研削する工程では、銅電極等を全面露出させることが要求される。
【0008】
従来技術の研削方法では、研削加工が開始され、予め設定された終点厚みまで研削加工が実行された後、研削加工が停止してワークの回転が止められ、目視検査及び顕微鏡検査により加工面の銅電極の露出の確認が行われる。
また、接触式の厚み測定器で加工面の寸法を測定する方法は、基板の厚みを測定するために、研削加工を終了してワークの回転を停止する必要がある。
【0009】
目視検査または顕微鏡検査の結果、銅電極が全面露出していないと判定された場合、または、厚み測定器による測定の結果、基板の厚みが所定の寸法に達していないと判定された場合には、研削加工が再度実行される。
【0010】
極めて薄い基板に対して高精度な加工が求められる状況において、1回の研削加工で銅電極を全て露出させ、所定の寸法に仕上げることは困難である。そのため、上述の研削加工、測定、目視検査及び顕微鏡検査は、銅電極が全面露出して所定の目標寸法に達するまで繰り返し実行される。
【0011】
そのため、従来技術の研削は、研削加工の実行及び停止を繰り返す必要があり、研削加工の回数、測定回数及び検査回数が多く、加工時間の短縮が難しかった。このことが、基板の生産性を向上させる上で課題となっていた。
【0012】
特に、樹脂基板内にCu(銅)等の異種材料部が埋め込まれた構造の基板を研削加工する場合には、樹脂中に、例えば、球状のシリカ等のフィラーが50%以上と多く含まれていると、非接触の近赤外光で樹脂の厚みを測定することが困難であった。即ち、フィラーによって赤外光が散乱するため、基板表面と基板裏面からの赤外光の干渉波形を取ることができない。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異種材料部が埋め込まれた基板を短時間で高精度に研削することができる研削方法及び研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の研削方法は、主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を回転させ、且つ研削といしを回転させながらダウンフィードさせて前記基板を前記研削といしで研削加工する研削方法であって、前記研削加工中に前記基板の加工面を画像センサで連続的に撮像し、前記画像センサによって得られた画像データから前記異種材料部の露出量を解析し、前記異種材料部が露出し始めた状態から前記異種材料部の前記露出量が所定の設定値に達する段階まで前記研削加工を継続して実行することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の研削装置は、主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を保持して回転する基板チャックと、前記基板チャックに保持された前記基板に対向する研削といしを保持し前記基板チャックの回転軸から径方向にオフセットした位置を回転軸として回転する研削ヘッドと、前記研削といしと前記基板が接近若しくは離間する方向に前記研削ヘッドまたは前記基板チャックを送る送り機構と、回転する前記基板を回転する前記研削といしで研削する工程において前記基板の前記研削といしから離れた加工面を撮像する画像センサと、前記画像センサで撮像された前記加工面の画像データから前記異種材料部の露出量を解析する画像解析装置と、を有し、前記画像解析装置で解析された前記露出量に基づいて前記送り機構が制御され前記加工面から露出した前記異種材料部が研削されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の研削方法によれば、異種材料部が埋め込まれた基板を回転させ、且つ研削といしを回転させながらダウンフィードさせて、基板を研削といしで研削加工する研削方法であって、研削加工中に基板の加工面を画像センサで連続的に撮像し、画像センサによって得られた画像データから異種材料部の露出量を解析し、異種材料部が露出し始めた状態から異種材料部の露出量が所定の設定値に達する段階まで研削加工を継続して実行する。これにより、従来技術のように異種材料部の露出を検知するために研削加工を一旦終了することなく、研削状況を正確に把握することができる。よって、研削加工の実行及び停止を繰り返すことなく、異種材料部が埋め込まれた基板を短時間で効率良く高精度に研削することができる。
【0017】
また、本発明の研削方法によれば、前記基板は樹脂基板であり、前記異種材料部は金属材料を含んでも良い。本発明の研削方法は、このように金属材料が埋め込まれた樹脂基板を研削し、金属材料から成る異種材料部を高効率且つ高精度に露出させることができる。
【0018】
また、本発明の研削方法によれば、前記画像センサは、画像取得時間が1から100マイクロ秒であり、光源がスポットストロボ発生型であっても良い。このような構成により、研削加工中に露出する異種材料部を高精度に高速検出することができ、研削加工の実行及び停止を繰り返すことなく、基板の研削加工を短時間で効率良く実行することができる。
【0019】
また、本発明の研削装置によれば、主たる構成材料とは異なる材料から成る異種材料部が埋め込まれた基板を保持して回転する基板チャックと、基板チャックに保持された基板に対向する研削といしを保持し基板チャックの回転軸から径方向にオフセットした位置を回転軸として回転する研削ヘッドと、研削といしと基板が接近若しくは離間する方向に研削ヘッドまたは基板チャックを送る送り機構と、回転する基板を回転する研削といしで研削する工程において基板の研削といしから離れた加工面を撮像する画像センサと、画像センサで撮像された加工面の画像データから異種材料部の露出量を解析する画像解析装置と、を有し、画像解析装置で解析された露出量に基づいて送り機構が制御され加工面から露出した異種材料部が研削される。これにより、高精度な基板研削を短時間で効率良く実行することができ、基板の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る研削装置の概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る研削装置の画像センサの先端近傍を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る研削方法におけるワークの(A)研削加工前、(B)研削加工中、(C)研削加工後、の概略形態を示す図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る研削装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る研削装置1及びそれを用いた研削方法を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る研削装置1の概略構成を示す図である。
図1を参照して、研削装置1は、基板40の一主面を研削する加工に用いられる加工装置である。詳しくは、研削装置1は、異種材料から成る異種材料部42が埋め込まれている基板40の平面を研削して、基板40に埋め込まれている異種材料部42を露出させる工程に用いられる。
【0023】
研削装置1の加工対象となる基板40には、基板40の本体部41を構成する主たる材料とは異なる材料から成る異種材料部42が埋め込まれている。例えば、基板40は、樹脂材料等を主たる構成材料として構成される本体部41に、本体部41を構成する主たる材料とは異なるCu(銅)電極等の異種材料部42が埋め込まれている。
【0024】
研削装置1は、基板40を保持する基板チャック4と、研削といし3を保持する研削ヘッド2と、研削ヘッド2を送る図示しない送り機構と、基板40の加工面を撮像する画像センサ10と、画像センサ10の画像データから異種材料部42の露出量を解析する画像解析装置20と、を有する。
【0025】
基板チャック4は、基板40を吸着して保持するポーラスチャックである。基板チャック4は、略平板状の形態をなし、図示しない研削テーブルの上方に取り付けられている。基板チャック4は、例えば、真空チャックであり、基板チャック4には、基板チャック4内を負圧にして基板40を吸着するための図示しない真空ポンプ等が設けられている。
【0026】
基板チャック4が載置される研削テーブルは、図示しない駆動手段によって回転駆動される。これにより、基板チャック4は水平回転する。研削加工の際には、基板チャック4の上面に基板40が載置され、基板40は、基板チャック4と共に水平回転することになる。
【0027】
研削ヘッド2は、研削といし3を保持して回転させる機構である。研削ヘッド2は、その回転軸が基板チャック4の回転軸から径方向にオフセットした位置になるよう設けられてる。研削ヘッド2の下方には、基板チャック4に保持された基板40の上面に対向するよう研削といし3が保持される。
【0028】
研削といし3は、水平回転する基板40を上方から研削するカップホイール型研削といしである。研削といし3は、研削ヘッド2に保持され水平回転する略円盤状のカップホイールを有し、そのカップホイールの下部周縁近傍に略円形状に取り付けられている。
【0029】
図示を省略するが、送り機構は、例えば、ボールねじ等を有し、研削といし3と基板40が接近若しくは離間するよう研削ヘッド2を回転軸方向、即ち上下方向、に送る機構である。なお、送り機構は、基板40を上下方向に送るように基板チャック4側に設けられても良い。
【0030】
研削ヘッド2は、図示しない駆動手段に駆動されて水平回転すると共に、図示しない送り機構によって上下方向に送られる。即ち、研削といし3は、研削ヘッド2と共に水平回転しながら送り機構に送られて基板40に接近する方向若しくは離間する方向に移動する。基板40を研削する工程においては、基板チャック4の上面に吸着されて水平回転する基板40の上面に、水平回転する研削といし3の下部にある刃先が接触し、基板40が研削される。
【0031】
また、研削装置1は、研削水供給装置25と、研削水供給装置25に設けられた研削水供給ノズル26と、を有する。研削水供給装置25は、研削水供給ノズル26を介して、基板40と研削といし3との接触部分近傍に純水を供給する装置である。即ち、研削水供給装置25から純水が供給され、研削水供給ノズル26の噴出口から、基板40の上面と研削といし3の刃先との接触部分近傍に向かって純水が噴き付けられる。
【0032】
画像センサ10は、基板40の加工面を撮像する装置である。画像センサ10は、CCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)等の撮像素子を使用した撮像センサである。
【0033】
特に、回転する基板40の加工面を高速撮影し、異種材料部42を露出させる研削加工を可能とする高精度な画像データを取得するために、画像センサ10は、CMOSの撮像素子を利用したセンサが望ましい。
【0034】
また、図示を省略するが、画像センサ10は、基板40の撮像箇所近傍に光を照射する光源を有し、基板40からの反射光を受けて撮像を行う。このように強い光を発する光源を備えることにより、研削加工を実現するための高速且つ高精度な撮像が可能となる。
【0035】
画像センサ10は、基板チャック4に保持された基板40の上方であって、水平回転する基板40を水平回転する研削といし3で研削する工程において、研削といし3に接触しない位置に設けらえている。換言すれば、画像センサ10は、研削工程において、研削といし3から離れた位置に設けられており、研削といし3から離れた基板40の加工面を撮像する。
【0036】
画像解析装置20は、画像センサ10で撮像された基板40の加工面の画像データから異種材料部42の露出量を解析する装置である。画像解析装置20は、画像センサ10に接続されていると共に、研削装置1の研削加工を制御する図示しない制御装置に接続されている。
【0037】
画像解析装置20で解析された画像データは、制御装置に送られる。制御装置は、画像解析装置20で解析された露出量に基づいて、基板40を回転させる駆動手段、研削といし3を回転させる駆動手段、及び基板40と研削といし3とを相対移動させる送り機構を制御する。これにより、基板40の加工面から露出した異種材料部42が研削される。
【0038】
即ち、研削装置1は、研削加工中に基板40の加工面を画像センサ10で連続的に撮像し、異種材料部42が露出し始めた状態から異種材料部42の露出量が所定の設定値に達する段階まで研削加工を継続して実行する。
【0039】
研削装置1は、従来技術のように研削加工の実行及び停止を繰り返すことなく、基板40の高精度な連続研削加工を短時間で効率良く実行することができる。よって、研削装置1は、基板40の生産性を向上させることができる。
【0040】
研削装置1は、画像センサ10による撮像箇所近傍に純水を供給する撮像水供給装置19を有する。具体的には、画像センサ10の先端近傍は、ハウジング12に覆われており、ハウジング12には、撮像水供給装置19からの純水を供給する配管18が接続されている。このような構成により、配管18を介して撮像水供給装置19からハウジング12の内部に純水が供給される。なお、撮像水供給装置19は、前述の研削水供給装置25を兼ねても良い。
【0041】
図2は、研削装置1の画像センサ10の先端近傍を示す図である。
図2に示すように、画像センサ10の先端近傍、即ち撮像口11近傍は、ハウジング12に覆われている。研削加工時には、撮像口11近傍に、撮像水供給装置19(図1参照)からの純水が供給される。
【0042】
詳しくは、ハウジング12は、画像センサ10の撮像口11近傍を覆う内ハウジング13と、内ハウジング13を覆う外ハウジング15と、を有する。そして、内ハウジング13と外ハウジング15で挟まれた領域、即ち内ハウジング13の外側であって外ハウジング15の内側の領域が、純水の流路となる。
【0043】
撮像口11近傍の内ハウジング13には、図示しない光源から照射される光を透過すると共に、基板40の撮像箇所からの反射光を透過する撮像窓部14が形成されている。撮像窓部14は、撮像用の光を透過するが、液体が流通可能な開口ではない。撮像水供給装置19から供給される純水が、ハウジング12内から画像センサ10側に流れ込むことはない。
【0044】
よって、基板40の研削屑等が画像センサ10の撮像口11に付着することはなく、撮像性能の低下が抑制される。また、画像センサ10の素子や配線系等が純水に濡れて破損する恐れもない。
【0045】
外ハウジング15の下部には、ハウジング12内の純水を基板40に向けて流出させる水出口17が形成されている。即ち、研削加工においては、撮像水供給装置19からハウジング12内に供給された純水は、画像センサ10の撮像口11近傍、即ち内ハウジング13の撮像窓部14近傍、を通過して、基板40の撮像箇所近傍に流出する。
【0046】
上述の構成により、基板40の研削屑等が画像センサ10の撮像口11近傍に飛散することまたは流通することを防止することができる。例えば、金属材料から成る異種材料部42が埋め込まれた樹脂製の基板40を研削加工する場合であっても、硬い金属屑によって画像センサ10の撮像口11やハウジング12の撮像窓部14の傷つきを防ぐことができる。よって、研削屑等に起因する撮像精度の低下を抑制して高精度な撮像が可能となる。
【0047】
また、前述のとおり、画像センサ10は、基板40に光を照射する光源と、反射光を撮像するカメラと、を有する。画像センサ10の光源は、スポットストロボ発生型である。そして、画像センサ10のカメラは、画像取得時間、即ちシャッタースピードが、1から100マイクロ秒である。なお、画像センサ10の画像取得時間は、基板40の回転速度に同期して設定される。このような構成により、研削加工中に露出する異種材料部42を高精度に高速検出することができる。
【0048】
このように、研削装置1は、研削中に水平回転する基板40の加工面の画像を画像センサ10で高速度に連続的に取り込むことができる。例えば、基板40が約300mm角のFOPLP基板であり、その回転速度が約300rpmであっても、基板40の加工面を高精度に撮像することができる。
【0049】
そして、画像解析装置20によって、画像データの色彩及び画像パターンが高精度に解析され、異種材料部42の露出状況が正確に把握される。そして、研削装置1では、異種材料部42の露出量が、予め設定した目標値に達したら、研削加工が停止する。
【0050】
このように、研削装置1は、高速度に画像データを取り込む画像センサ10により、像流れのない高精度な画像データを収集できる。そのため、従来技術の研削装置1のように接触式センサで基板40の厚みを測定するために研削の開示及び停止が繰り返し行われることなく、加工目標位置の終点まで停止せずに連続して確実に研削することができる。
【0051】
また、ハウジング12の撮像窓部14は、基板40の加工面、即ち水平面、に対して傾斜するよう設けられている。具体的には、基板40の加工面に対する撮像窓部14の傾斜角度は、5から15度、好ましくは5から12度、最も好ましくは、5から10度である。
【0052】
このように撮像窓部14の傾斜角度が5度以上であることにより、撮像窓部14における乱反射を抑えることができ、画像データの正確性を向上させることができる。よって、高精度な画像データ取得が可能となり、高精度な研削加工が可能となる。
【0053】
他方、撮像窓部14の傾斜角度が15度を超えて大きくなると、屈折により光線の角度ずれが大きくなるので、撮像対象箇所からの離れが大きくなり、計測値に誤差が生じてしまう。そのため、上述した範囲内の傾斜角度が好適であり、その角度によって高精度な撮像データ取得が行われ、高精度な研削加工が実現する。
【0054】
なお、図示を省略するが、研削装置1は、画像センサ10の位置を調節するフォーカス機構と、画像センサ10の傾きを調整するチルト機構と、を備えている。フォーカス機構は、画像センサ10の光源、カメラ及び撮像窓部14の少なくとも1つの位置、具体的には基板40からの高さ、を微調整することができる。チルト機構は、画像センサ10の光源、カメラ及び撮像窓部14の少なくとも1つの傾き、即ち基板40の加工面に対する傾斜角度、を微調整することができる。このような構成により、画像センサ10は、高精度な撮像データを取得することができる。

【0055】
次に、図1ないし図3を参照して、研削装置1を用いた研削方法について詳細に説明する。
図3は、本発明の実施形態に係る研削方法におけるワーク近傍を示す図であり、図3(A)は研削加工前、図3(B)は研削加工中、図3(C)は研削加工後、の基板40の形態を模式的に示している。
【0056】
図3(A)に示すように、加工対象の基板40は、本体部41の内部に、本体部41を構成する主たる材料とは異なる材料から成る異種材料部42が埋め込まれている。即ち、少なくとも本体部41と、本体部41に埋め込まれた異種材料部42とは、異なる材料から構成されている。
【0057】
具体的には、研削装置1の加工対象となる基板40は、樹脂基板、半導体基板、絶縁性基板等であり、基板40の主たる構成材料は、各種樹脂、シリコン、SiC(炭化ケイ素)、砒化ガリウム、サファイヤ等である。
【0058】
研削装置1は、特に樹脂基板に対して優れた加工性能を発揮する。例えば、研削装置1は、モールド樹脂、金属及び半導体デバイスチップを含むFOPLP技術による大型の複合基板の研削に用いられる。
【0059】
また、研削装置1は、モールド樹脂を利用するその他の基板製造工程、例えば、FOWLP(Fan Out Wafer Level Package)、SiP(System In a Package)においても利用可能である。
【0060】
基板40を構成する主たる材料としては、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等の各種樹脂材料を採用し得る。また、樹脂基板としての基板40を構成する樹脂材料には、電気特性を改善するためのシリカフィラーが挿入されても良い。
基板40に埋め込まれた異種材料部42は、Cu、Au(金)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Pt(白金)等の金属材料から構成された電極等であっても良い。また、異種材料部42には、半導体材料や絶縁性材料等が含まれても良い。
【0061】
図1及び図3(A)を参照して、基板40の研削工程において、基板40は、基板チャック4の上面に保持され、駆動手段に駆動されて水平回転する。回転する基板40の加工面、即ち上面には、図示しない駆動手段に駆動され水平回転する研削といし3の刃先が当接し、研削といし3のダウンフィードにより基板40の加工面が研削される。
【0062】
研削加工中には、画像センサ10によって基板40の加工面が連続的に撮像される。そして、画像センサ10で得られた画像データは、画像解析装置20によって解析される。即ち、加工面の色彩情報及び画像パターン情報から異種材料部42の露出量が求められる。
【0063】
研削加工が行われると、基板40の上部の本体部41が研削され、図3(B)に示すように、異種材料部の露出が始まる。前述のとおり、画像センサ10で基板40の加工面が撮像され、画像解析装置20による画像データの解析により、異種材料部42の露出状況が正確に検知される。
【0064】
具体的には、基板40の加工面の画像データに、予め指定された色彩が検出されたら、その色彩パターンのセル数から異種材料部42の露出量が解析される。これにより異種材料部42の露出度が正確に求められる。
【0065】
そのため、本実施形態の研削方法では、従来技術の研削方法のように研削といし3による研削加工を一時停止して基板40の回転を止めて、接触式センサ等を利用して異種材料部42の基板40の厚みを測定する工程が不要である。
【0066】
そして、図3(C)に示す如く、全ての異種材料部42の上端が基板40から露出したら、画像解析装置20は、画像データの解析により、異種材料部42の露出量が設定された終了値に達したことを正確に検知する。
【0067】
具体的には、予め指定された色彩パターンのセル数が一定条件以上に達したら、画像解析装置20によって、異種材料部42の露出量が終了値に達したと判断される。
【0068】
そして、制御装置によって、研削といし3を基板40の加工面から離間する制御が行われ、次いで、研削といし3と基板40の回転を停止する制御が行われて、研削加工が終了する。
【0069】
このように、本実施形態に係る研削方法によれば、異種材料部42が露出し始めた状態から異種材料部42の露出量が所定の設定値に達する段階まで、研削加工が継続して行われる。即ち、基板40が、金属等の異種材料部42が埋め込まれた樹脂基板であっても、研削加工の実行及び停止を繰り返すことなく、生産性に優れる連続的で効率的な研削加工を行うことができる。
【0070】
次に、図4を参照して、実施形態を変形した例として、研削装置101について詳細に説明する。
図4は、研削装置101の概略構成を示す図である。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0071】
図4に示すように、研削装置101は、高圧水を供給する高圧水発生装置30と、高圧水発生装置30から供給された高圧水を研削といし3に噴き付ける高圧水ノズル31と、を有する。
【0072】
高圧水ノズル31は、研削加工時に基板40の加工面に接触していない研削といし3の下方近傍に設けられ、基板40の加工面に接触していない研削といし3の刃先に向かって高圧水を噴出する。
【0073】
高圧水ノズル31から噴出する高圧水の圧力は、3から20MPa、好ましくは、10から14MPaである。高圧水ノズル31から噴出する高圧水の噴出角は、5から20度が好ましく、更に好ましくは、8から12度である。
【0074】
また、高圧水ノズル31は、複数設けられても良い。また、高圧水ノズル31は、1から20mm/secの速度且つ1から10mmの揺動幅で揺動する機構を有しても良い。
【0075】
このような高圧水発生装置30及び高圧水ノズル31が設けられる構成は、樹脂製の基板40に金属材料から成る異種材料部42が埋め込まれているときに特に有効である。即ち、高圧水ノズル31から噴出される高圧水によって、研削といし3に付着した金属屑等を噴き剥がし、研削といし3の目詰まりを防止することができる。
【0076】
このように研削といし3の目詰まりを防止できることにより、連続した長時間の研削加工が可能となる。よって、高速撮像が可能な画像センサ10を利用して異種材料部42の露出状態を正確に検出し、連続した研削加工を行う構成との組み合わせにより、従来技術では不可能であった高効率且つ高精度な連続研削加工が実現する。
【0077】
また、本実施形態に係る研削方法は、従来のダイヤモンドバイトを用いたフライスカッタによる切削加工とは全く異なる加工方法である。本実施形態の研削方法によれば、フライスカッタによる切削加工では実現できない優れた加工性能が得られ、低コストで効率的且つ高平坦度の研削加工が可能である。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1、101 研削装置
2 研削ヘッド
3 研削といし
4 基板チャック
10 画像センサ
11 撮像口
12 ハウジング
13 内ハウジング
14 撮像窓部
15 外ハウジング
16 水入口
17 水出口
18 配管
19 撮像水供給装置
20 画像解析装置
25 研削水供給装置
26 研削水供給ノズル
30 高圧水発生装置
31 高圧水ノズル
40 基板
41 本体部
42 異種材料部
図1
図2
図3
図4