(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127148
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ソレノイド
(51)【国際特許分類】
H01F 7/06 20060101AFI20220824BHJP
H01F 5/02 20060101ALI20220824BHJP
H01F 7/122 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
H01F7/06 G
H01F5/02 B
H01F5/02 G
H01F7/122 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025127
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】000185248
【氏名又は名称】小倉クラッチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】横塚 貴志
(72)【発明者】
【氏名】高橋 常仁
(72)【発明者】
【氏名】丹治 慎一郎
【テーマコード(参考)】
5E048
【Fターム(参考)】
5E048AC06
5E048AD02
5E048CB03
5E048CB05
(57)【要約】
【課題】コイルボビン組立体の小型化を図りながら、コイルのワイヤどうしを絶縁する構造を備えることにより、ソレノイド単体で結線が完結されるソレノイドを提供する。
【解決手段】第1のコイルボビン31および第2のコイルボビン32と、第1のコイルおよび第2のコイル34,35、永久磁石を有し両コイルボビンの中空部内に軸線方向へ移動自在に配置された移動体とを備える。第1のコイルボビン31は、第1の突起41を有し、第2のコイルボビン32は、第2の突起51を有する。第1の突起41は、第1の溝を有し、第2の突起51は、第1の溝に嵌合するように形成されかつ第2の溝を有する。第1の突起41と第2の突起51の嵌合部は、複数の仕切壁によって仕切られた複数の通し穴61~64を有する。第1および第2のコイルを形成するワイヤの端部46a,46b,54a,54bがそれぞれ通し穴61~64に通される。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコイルボビンと、
前記第1のコイルボビンと軸線方向に隣り合うように並ぶ第2のコイルボビンと、
前記第1のコイルボビンに巻回された第1のコイルと、
前記第2のコイルボビンに巻回された第2のコイルと、
永久磁石を有し、前記第1および第2のコイルボビンの中空部内に軸線方向へ移動自在に配置された移動体とを備え、
前記第1のコイルボビンは、周方向の一部から前記軸線方向において前記第2のコイルボビンとは反対の方向に突出する第1の突起を有し、
前記第2のコイルボビンは、周方向の一部であって前記第1の突起と周方向において同一の位置から前記第1の突起と同方向に突出する第2の突起を有し、
前記第1の突起は、前記第1のコイルボビンの径方向の外側に向けて開放される状態で前記軸線方向に延びる第1の溝を有し、
前記第2の突起は、前記第1の溝に嵌合するように形成され、かつ前記第2のコイルボビンの径方向の内側に向けて開放される状態で前記軸線方向に延びる第2の溝を有し、
前記第1の突起と前記第2の突起の嵌合部は、
前記第1の溝の側壁および第2の溝の側壁を含む複数の仕切壁によって仕切られた複数の通し穴を有し、
前記第1のコイルを形成するワイヤの両端部と、前記第2のコイルを形成するワイヤの両端部とがそれぞれ前記通し穴に通されていることを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
請求項1記載のソレノイドにおいて、
前記第1のコイルを形成するワイヤの両端部と、前記第2のコイルを形成するワイヤの両端部とにはそれぞれ端子ピンが接続され、
前記第1の突起および前記第2の突起と、前記複数の端子ピンは、前記複数の端子ピンの一部を給電用のピンとするコネクタのハウジングに埋設されていることを特徴とするソレノイド。
【請求項3】
請求項2記載のソレノイドにおいて、
さらに、前記第1のコイルボビンと前記第2のコイルボビンとを収容する環状のケースを備え、
前記コネクタのハウジングは、前記ケースに密着して前記ケースから前記第1の突起と同方向に突出する成型品であることを特徴とするソレノイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を有する移動体を磁力のみで一方と他方とに移動させるソレノイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、永久磁石を有する移動体を磁力のみで一方と他方とに移動させるソレノイドとしては、例えば
図16および
図17に示すように構成されたものがある。
図16,17に示すソレノイド1は、環状の移動体2を軸線方向の一方と他方とに移動させるもので、移動体2を収容する環状のステータ3を備えている。移動体2には、複数の永久磁石(図示せず)が周方向に並ぶ状態で取付けられている。この移動体2は、軸心部を貫通する支軸(図示せず)に軸線方向へ移動自在に支持されている。
【0003】
ステータ3は、移動体2の軸線方向に並ぶ第1のコイル4と第2のコイル5とを有している。これらの第1および第2のコイル4,5は、一方のコイルが移動体の永久磁石を吸引するとともに、他方のコイルが移動体の永久磁石と反発するように構成されている。第1のコイル4は第1のコイルボビン6に巻回されている。第2のコイル5は第2のコイルボビン7に巻回されている。
【0004】
第1のコイル5を形成するワイヤの両端部と、第2のコイル5を形成するワイヤの両端部とにはそれぞれリード線8が接続されている。これらのリード線8は、それぞれ第1、第2のコイルボビン6,7から径方向の外側に導出されている。このソレノイド1は、リード線8がコイルボビン6,7から導出されている状態で出荷される。リード線8は、ソレノイド1が動力機器等の取付装置に組付けられるときに給電回路等の端子に結線される。
【0005】
ところで、軸線方向に並ぶ二つのコイルボビン6,7は、例えば特許文献1にも開示されている。特許文献1に記載された第1のコイルボビン6と第2のコイルボビン7は、
図18に示すように、それぞれ端子台9,10を備えている。端子台9,10には、複数の端子ピン11が埋設されている。端子ピン11の基端部には、コイルを形成するワイヤの端部が絡げて接続される。
二つのコイルボビン6,7のうち、軸線方向の一方に位置する第1のコイルボビン6の端子台9は、第2のコイルボビン7とは反対方向に突出している。第2のコイルボビン7の端子台10は、第1のコイルボビン6の端子台9と同方向に延びており、第1のコイルボビン6の端子台9とは第1のコイルボビン6の周方向に隣り合うように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図16および
図17に示す従来のソレノイド1においては、製品の状態で二つのコイル4,5の結線が完結していないために、取付装置側で結線スペースが必要である。二つのコイル4,5を直列に接続するような場合は、リード線8どうしを結線する必要があり、極性が一意に決まらない。このため、ソレノイド単体でコイル4,5のワイヤどうしの絶縁を確保しつつ結線を行うことが要請されている。
【0008】
このような不具合は、特許文献1に記載されているように各コイルボビンにそれぞれ端子台9,10を設けることによりある程度は解消することができる。
しかし、特許文献1に開示されている二つの端子台9,10は、コイルボビン6,7の周方向に並ぶように設けられているから、コイルボビン組立体が大型になるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、コイルボビン組立体の小型化を図りながら、コイルのワイヤどうしを絶縁する構造を備えることにより、ソレノイド単体で結線が完結されるソレノイドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明に係るソレノイドは、第1のコイルボビンと、前記第1のコイルボビンと軸線方向に隣り合うように並ぶ第2のコイルボビンと、前記第1のコイルボビンに巻回された第1のコイルと、前記第2のコイルボビンに巻回された第2のコイルと、永久磁石を有し、前記第1および第2のコイルボビンの中空部内に軸線方向へ移動自在に配置された移動体とを備え、前記第1のコイルボビンは、周方向の一部から前記軸線方向において前記第2のコイルボビンとは反対の方向に突出する第1の突起を有し、前記第2のコイルボビンは、周方向の一部であって前記第1の突起と周方向において同一の位置から前記第1の突起と同方向に突出する第2の突起を有し、前記第1の突起は、前記第1のコイルボビンの径方向の外側に向けて開放される状態で前記軸線方向に延びる第1の溝を有し、前記第2の突起は、前記第1の溝に嵌合するように形成され、かつ前記第2のコイルボビンの径方向の内側に向けて開放される状態で前記軸線方向に延びる第2の溝を有し、前記第1の突起と前記第2の突起の嵌合部は、前記第1の溝の側壁および第2の溝の側壁を含む複数の仕切壁によって仕切られた複数の通し穴を有し、前記第1のコイルを形成するワイヤの両端部と、前記第2のコイルを形成するワイヤの両端部とがそれぞれ前記通し穴に通されているものである。
【0011】
本発明は、前記ソレノイドにおいて、前記第1のコイルを形成するワイヤの両端部と、前記第2のコイルを形成するワイヤの両端部とにはそれぞれ端子ピンが接続され、前記第1の突起および第2の突起と、前記複数の端子ピンは、前記複数の端子ピンの一部を給電用のピンとするコネクタのハウジングに埋設されていてもよい。
【0012】
本発明は、前記ソレノイドにおいて、さらに、前記第1のコイルボビンと前記第2のコイルボビンとを収容する環状のケースを備え、前記コネクタのハウジングは、前記ケースに密着して前記ケースから前記第1の突起と同方向に突出する成型品であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、第1の突起と第2の突起とが第1のコイルボビンの周方向において同一の位置に配置される。また、第1の溝に第2の突起が嵌合しているから、第1および第2の突起は第1のコイルボビンの径方向において同一の位置に配置される。このため、第1のコイルボビンと第2のコイルボビンとからなるコイルボビン組立体に第1の突起と第2の突起をコンパクトに設けることができる。
【0014】
第1および第2のコイルのワイヤは、個別に通し穴に通されることにより他のワイヤとは絶縁されるから、第1の突起と第2の突起とによってワイヤどうしを絶縁する絶縁構造が構成される。
したがって、コイルボビン組立体の小型化を図りながら、コイルのワイヤどうしを絶縁する構造を備えているから、ソレノイド単体で結線が完結されるソレノイドを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明に係るソレノイドの斜視図である。
【
図2】
図2は、ソレノイドの一部を破断して示す斜視断面図である。
【
図5】
図5は、コイルボビン組立体の分解斜視図である。
【
図6】
図6は、コイルボビン組立体の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、コイルボビン組立体の正面図である。
【
図14】
図14は、コネクタのハウジングを破断して示す要部の斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るソレノイドの一実施の形態を
図1~
図15を参照して詳細に説明する。
図1に示すソレノイド21は、図示していない電気自動車の変速機やディスコネクト等に使用されるもので、円環状に形成された移動体22と、移動体22を囲むステータ23などを備えている。以下において、ソレノイド21の各部品を説明するうえで方向を示すにあたっては、移動体22の軸線方向の一方(
図1においては斜め左下方)をソレノイド21の前方とし、この方向とは反対の方向を後方として行う。
【0017】
移動体22は、
図8に示すように、複数の環状の部材を組み合わせて構成されている。移動体22を構成する複数の環状の部材とは、
図8において最も左側に描かれている前板と、この前板24に隣り合うように描かれているホルダー25と、ホルダー25の隣に描かれている永久磁石リング26と、永久磁石リング26の隣に描かれている後板27である。
永久磁石リング26は、円弧状に形成された複数の永久磁石28を環状に並べたもので、前板24と後板27とに挟まれた状態で保持されている。永久磁石28の保持は、
図3に示すように、前板24に設けられた凸部24aと、後板27に設けられた凸部27aとが永久磁石28の切り欠き28aに挿入されることによって行われている。凸部24a,27aは、
図8に示すように、前板24と後板27の周方向に一定の間隔をおいて並ぶように設けられている。
【0018】
ホルダー25は、
図3に示すように、永久磁石リング26の内周部に嵌合する大径部25aと、前板24および後板27の内周部に嵌合する小径部25bとを有し、図示していないボルトによって前板24と後板27とに挟まれた状態で締結されている。このボルトは、前板24に穿設された複数の貫通穴24b(
図8参照)と、ホルダー15に穿設された複数の貫通穴25cと、後板27に穿設された複数の貫通穴27bとに通されている。
ホルダー25の中心部には、支軸29(
図3参照)に軸線方向へ移動自在に嵌合するスプライン30(
図1および
図2参照)が形成されている。スプライン30が支軸29に嵌合することにより、移動体22がステータ23の中空部内に軸線方向へ移動自在に配置される。
【0019】
ステータ23は、
図2~
図4に示すように、移動体22の径方向の外側に位置する第1のコイルボビン31および第2のコイルボビン32と、これらの第1および第2のコイルボビン31,32を収容する環状のケース33とを備えている。第1のコイルボビン31には第1のコイル34(
図3および
図4参照)が巻回されている。第2のコイルボビン32には第2のコイル35が巻回されている。
図3の破断位置は、
図7中にIII-III線で示す位置である。
【0020】
第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32は、
図5および
図6に示すように、それぞれ前後方向の両端に位置する一対の環状側壁31a,31b,32a,32bと、これらの環状側壁の内周部どうしを接続する円筒状の底壁31c,32cとを有し、移動体22と同一軸線上で前後方向に並べられている。すなわち、第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32は、軸線方向に隣り合うように並んでいる。
【0021】
第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32との間には、センターコア36が配置されている。センターコア36は、磁性材の板によって正面視C字状(
図4参照)に形成されている。
第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32のうち、前側に位置する第1のコイルボビン31は、
図5および
図6に示すように、周方向の一部に第1の突起41を有している。第1の突起41は、前側の環状側壁31aに一体成形によって一体に形成されており、第1のコイルボビン31の周方向の一部から前方(軸線方向において第2のコイルボビン32とは反対の方向)に突出している。この第1の突起41は、
図9に示すように第1の溝42を有している。
【0022】
第1の溝42は、第1のコイルボビン31の径方向の外側に向けて開放される状態で、第1の突起41の後端から前端まで軸線方向に延びている。
図4および
図5に示すように、第1の溝42の後方に位置する後側の環状側壁31bとセンターコア36とには、それぞれ切り欠き43,44が形成されている。これらの切り欠き43,44の形成幅(周方向の幅)は、第1の溝42の溝幅より広い。
【0023】
第1のコイルボビン31の後側の環状側壁31bには、
図6に示すように、第1のコイルボビン31の接線方向に延びる溝45が形成されている。この溝45は、第1のコイル34となるマグネットワイヤ(以下、単にワイヤという)46を第1のコイルボビン31に巻き始める際にワイヤ46の固定側端部を通すための溝で、後側の環状側壁31bに突設された突条47の中に形成されている。この突条47は、第1のコイルボビン31にセンターコア36を重ねるときに
図7に示すようにセンターコア36の切り欠き48の中に収容される。
【0024】
第1の突起41には、
図9に示すように、第1のコイル34を形成するワイヤ46の巻始めとなる一端部46aと、巻終わりとなる他端部46bとが通されている。これらのワイヤ46は、第1の溝42の2箇所の隅部分に形成された凹部49に通されている。凹部49は、第1の溝42内に開口する状態で第1の突起41の後端から前端まで延びている。
第1の突起41における第1の溝42より径方向の内側には、3つの穴50が形成されている。これらの穴50は、第1の突起41の前端に開口し、後方に延びている。
【0025】
第2のコイルボビン32は、
図5および
図6に示すように、周方向の一部に第2の突起51を有している。第2の突起51は、前側の環状側壁32aに一体成形によって一体に形成されており、第2のコイルボビン32の周方向の一部から前方(軸線方向において第1のコイルボビン31に向かう方向)に突出している。この第2の突起51は、第2のコイルボビン32が第1のコイルボビン31にセンターコア36を介して接続された状態で、
図10に示すように、センターコア36の切り欠き44と、第1のコイルボビン31の後側の環状側壁31bの切り欠き43とを通って第1の溝42に嵌合するように形成されている。第1の溝42に第2の突起51が嵌合することにより、第1のコイルボビン31と、センターコア36と、第2のコイルボビン32とからなるコイルボビン組立体52(
図7参照)が形成される。
【0026】
また、第2の突起51は、
図9に示すように第2の溝53を有している。第2の溝53は、第2のコイルボビン32の径方向の内側に向けて開放される状態で、第2の突起51の後端から前端まで軸線方向に延びている。この実施の形態による第2の溝53は、溝幅方向(第2のコイルボビン32の周方向)の中央部に突壁53aを有している。突壁53aは、第2の突起51の後端から前端まで延びており、第2の溝53の中を
図9において右側と左側とに仕切っている。この第2の溝53の両側部に、第2のコイル35を形成するマグネットワイヤ(以下、単にワイヤという)54(
図9参照)の巻始めとなる一端部54aと、巻終わりとなる他端部54bとが通されている。
【0027】
第2のコイルボビン32の前側の環状側壁32aには、
図5に示すように、第2のコイルボビン32の接線方向に延びる突条55が形成されている。この突条55の中には溝56(
図6参照)が形成されている。この溝56は、第2のコイル35となるワイヤ54を第2のコイルボビン32に巻き始める際にワイヤ54の固定側端部を通す溝である。この突条55は、第2のコイルボビン32がセンターコア36を介して第1のコイルボビン31に接続された状態でセンターコア36の切り欠き48の中に収容される。
【0028】
第2のコイルボビン32を第1のコイルボビン31に接続してコイルボビン組立体52を形成するときは、
図10に示すように第1の突起41の第1の溝42に第2の突起51を嵌合させる。第1の突起41と第2の突起51の嵌合部57には4つの通し穴61~64が形成される。これらの複数の通し穴61~64のうち、両側の2つの通し穴61,64は、第1の溝42の隅部に形成されている凹部49の開口が第2の突起51によって塞がれることにより形成されている。すなわち、両側の2つの通し穴61,64は、第1の溝42の一対の側壁65,66と、第2の溝53の一対の側壁67,68とによって形成されている。内側の2つの通し穴62,63は、第2の溝53の両側壁67,68、底壁69および突壁53aと、第1の溝42の底壁70とによって形成されている。すなわち4つの通し穴61~64は、第1の溝42の側壁65,66および底壁70と、第2の溝53の側壁67,68、底壁69および突壁53aなどの複数の仕切壁によって仕切られている。
【0029】
4つの通し穴61~64のうち両側の2つの通し穴61,64には、
図11に示すように、第1のコイルボビン31にワイヤ46を巻き付けた後にワイヤ46の一端部46aと他端部46bとが通される。内側の2つの通し穴62,63には、第2のコイルボビン32にワイヤ54を巻き付けた後に、ワイヤ54の一端部54aと他端部54bが通される。これらのワイヤ46,54には、
図12に示すように、第1~第3の端子ピン71~73が接続される。
【0030】
第1のコイル34のワイヤ46の一端部46aには、
図12において最も左に位置する第1の端子ピン71が接続される。第2のコイル35のワイヤ54の他端部54bには、3つの端子ピンのうち中央に位置する第2の端子ピン72が接続される。第3の端子ピン73には、第1のコイル34のワイヤ46の他端部46bと、第2のコイル35のワイヤ54の一端部54aとが接続される。この実施の形態による第1および第2のコイル34,35は、通電時に極性が逆となるように構成されているとともに、互いに直列に接続されている。第3の端子ピン73は、第1のコイル34と第2のコイル35とを直列に接続する接続端子として機能する。
【0031】
第1および第2の端子ピン71,72は、それぞれ給電用のピンとして使用できるように構成されており、
図13(A),(B)に示すように、棒状の接触部71a,72aと、ワイヤ46,54を通す貫通孔71b,72bと、アンカー部71c,72cとを有している。接触部71a,72aは、図示していない雌型のソケットの接触子に挿入される。
第3の端子ピン73は、
図13(C)に示すように、2本のワイヤ46,54を通す2つの貫通孔73a,73bと、アンカー部73cとを有している。第3の端子ピン73には、他の回路を接続するための接触部は設けられていない。
第1~第3の端子ピン71~73とワイヤ46,54との接続は、ワイヤ46,54を貫通孔71b,72b,73a,73bに通して半田付けすることにより行われる。
第1~第3の端子ピン71~73のアンカー部71c,72c,73cは、第1の突起41の穴50に圧入される。アンカー部71c,72c,73cが穴50に圧入されることにより、第1~第3の端子ピン71~73が第1の突起41に固定される。
【0032】
コイルボビン組立体52は、ケース33の切り欠き75(
図4参照)に第1および第2の突起41,51を通してケース33の中に収容される。ケース33は、
図3に示すように、コイルボビン組立体52を前方と径方向の外側とから覆うケース本体76と、コイルボビン組立体52を後方から覆う蓋体77とによって構成されている。コイルボビン組立体52のケース33への固定は、ケース本体76の前面から前方に突出する第1および第2の突起41,51と第1~第3の端子ピン71~73を、コネクタ81(
図1参照)のハウジング82にインサート成型によって埋設することにより行っている。この成型を行った後にケース33の蓋体77がケース本体76に固定される。
【0033】
コネクタ81は、図示していない給電用のソケットに接続されるものである。このコネクタ81のハウジング82は、第1の突起41および第2の突起51と、第1~第3の端子ピン71~73とがインサート成型により埋設された成型品である。ハウジング82を成型するインサート成型は、ケース33の前面33aが型の一部になるように行われる。成型時には、第1および第2の端子ピン71,72の接触部71a,72aが型内に隠される。
【0034】
このように成型されたハウジング82は、
図14および
図15(A)~(D)に示すように、ケース33の前面33aに密着してケース33から第1の突起41と同方向に突出する基部83と、第1および第2の端子ピン71,72の接触部71a,72aが露出するように基部83の先端部に設けられた筒部84とを有している。
図15(A)はハウジング82の平面図、
図15(B)はハウジング82の横断面図、
図15(C)は、ハウジング82の正面図、
図15(D)はハウジング82の縦断面図である。
図15(B)の破断位置は
図15(C)中にB-B線で示す位置であり、
図15(D)の破断位置は
図15(C)中にD-Dで示す位置である。
図15(B)および
図15(D)は第1および第2の突起41,51と第1~第3の端子ピン71~73とが埋設されている部分を空洞として状態で描いてある。
【0035】
基部83は、第1および第2の突起41,51と、第1~第3の端子ピン71~73を4方向から覆うように成型されている。ここでいう4方向とは、第1のコイルボビン31の径方向の2方向と、周方向の2方向である。
また、基部83は、
図14に示すように、ケース33の前面33aに沿って延びる円弧状の腕83aを有している。腕83aには、
図15(A),(B)に示すように、突起85が後方に突出するように設けられている。突起85は、成型時にハウジング82の材料となるプラスチック材料がケース33の穴86(
図4参照)の中で固化したものである。
【0036】
次に、ステータ23を組み立てる手順を説明する。先ず、第1のコイルボビン31に第1のコイル34を巻回するとともに、第2のコイルボビン32に第2のコイル35を巻回する。このとき、第1のコイル34を形成するワイヤ46の両端部は、第1の突起41の第1の溝42内に通す。第2のコイル35を形成するワイヤ54の両端部は、第2の突起51の第2の溝53内に通す。
【0037】
そして、第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32との間にセンターコア36を挟んだ状態で第1の溝42に第2の突起51を嵌合させ、コイルボビン組立体52を形成する。その後、第1の突起41に第1~第3の端子ピン71~73を取付け、これらの第1~第3の端子ピン71~73にワイヤ46,54の端部を接続する。
このように結線が終了した後、コイルボビン組立体52をケース本体76内に挿入し、第1および第2の突起41,51および第1~第3の端子ピン71~73をケース本体76の前方に突出させる。そして、コイルボビン組立体52およびケース本体76を図示していない成型装置に装填し、第1および第2の突起41,51と第1~第3の端子ピン71~73とがインサート成型されるようにケース本体76にコネクタ81のハウジング82を成型する。成型後、ケース本体76を成型装置から取り出し、ケース本体76に蓋体77を固着させる。蓋体77が取付けられることにより、ステータ23が完成する。
【0038】
このように形成されたステータ23においては、第1の突起41と第2の突起51とが第1のコイルボビン31の周方向において同一の位置に配置される。また、第1の溝42に第2の突起51が嵌合しているから、第1および第2の突起41,51は第1のコイルボビン31の径方向において同一の位置に配置される。このため、第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32とからなるコイルボビン組立体52に第1の突起41と第2の突起51をコンパクトに設けることができる。
【0039】
第1および第2のコイル34,35のワイヤ46,54は、個別に通し穴61~64に通されることにより他のワイヤとは絶縁される。このため、第1の突起41と第2の突起51とによってワイヤどうしを絶縁する絶縁構造が構成される。
したがって、この実施の形態によれば、コイルボビン組立体の小型化を図りながら、コイルのワイヤどうしを絶縁する構造を備えたソレノイドを実現することができる。
【0040】
この実施の形態による第1のコイル34を形成するワイヤ46の両端部と、第2のコイル35を形成するワイヤ54の両端部とにはそれぞれ端子ピン(第1~第3の端子ピン71~73)が接続されている。
第1の突起41および第2の突起51と、複数の端子ピン71~73は、複数の端子ピンの一部(第1および第2の端子ピン71,72)を給電用のピンとするコネクタ81のハウジング82に埋設されている。
このため、第1および第2のコイル34,35の結線をステータ23の製造過程で実施することができ、第1および第2のコイル34,35の極性を固定することができる。
したがって、ソレノイド単体で結線が完結されるソレノイドを提供することができる。
【0041】
この実施の形態によるソレノイド21は、第1のコイルボビン31と第2のコイルボビン32とを収容する環状のケース33を備えている。コネクタ81のハウジング82は、ケース33に密着してケース33から第1の突起41と同方向に突出する成型品である。
このため、コネクタ81内に直列結線部が埋め込まれ、省スペース化と絶縁性の確保とを実現することができる。
【符号の説明】
【0042】
21…ソレノイド、22…移動体、28…永久磁石、31…第1のコイルボビン、32…第2のコイルボビン、33…ケース、34…第1のコイル、35…第2のコイル、41…第1の突起、42…第1の溝、46,54…ワイヤ、51…第2の突起、53…第2の溝、57…嵌合部、61~64…通し穴、65,66,67,68…側壁、69,70…底壁、71…第1の端子ピン、72…第2の端子ピン、73…第3の端子ピン、81…コネクタ、82…ハウジング。