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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127197
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】酸性染毛料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20220824BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61K8/34
A61Q5/10
A61K8/37
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025202
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】柴田 愛実
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC151
4C083AC152
4C083AC171
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC302
4C083AC331
4C083AC371
4C083AC372
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC792
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD201
4C083AD202
4C083CC36
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE07
4C083EE26
(57)【要約】
【課題】本発明は、毛髪への染着性と剤の保存安定性に優れ、かつ、風乾後の毛髪の柔らかさにも優れる酸性染毛料組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の酸性染毛料組成物は、芳香族アルコール(A)0.5~12質量%と、無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2であるエステル油(B)と、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)0.3~1.5質量%と、高級アルコール(D)2~8質量%とを含み、前記芳香族アルコール(A)と前記エステル油(B)との質量比((B)/(A))が0.6~2である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アルコール(A)0.5~12質量%と、
無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2であるエステル油(B)と、
ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)0.3~1.5質量%と、
高級アルコール(D)2~8質量%とを含み、
前記芳香族アルコール(A)と前記エステル油(B)との質量比((B)/(A))が0.6~2である、酸性染毛料組成物。
【請求項2】
アルキルグルコシド(E)をさらに含む、請求項1に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項3】
前記芳香族アルコール(A)が、ベンジルアルコール、フェニルプロパノール、ベンジルオキシエタノール、およびフェノキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項4】
前記エステル油(B)が、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、アジピン酸ジエチルヘキシル、およびコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~3のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項5】
前記高級アルコール(D)が、炭素数14~22の高級アルコールである、請求項1~4のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物。
【請求項6】
剤型が乳液状またはクリーム状である、請求項1~5のいずれか一項に記載の酸性染毛料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性染毛料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性染毛料は、ヘアマニキュア、酸性カラーとも呼ばれる1剤式のカラー剤である。酸性染毛料は、一般に、染料、染料を毛髪内部に浸透させるための浸透剤、塗布に適した粘度にするための増粘剤が配合されている。
【0003】
これらの配合成分のうち、染料は水を溶媒とするのに対し、浸透剤はベンジルアルコール等の有機溶媒であることから、均一に混合しにくく、酸性染毛料の分離や凝集が起こりやすかった。特に、染着性の向上を目的として浸透剤の配合量を増やすと、酸性染毛料の保存安定性が低下することが問題となっていた。そのため、染着性の向上と保存安定性の向上とを両立させる技術検討が行われてきた。
【0004】
これまでの技術としては、例えば、界面活性剤を用いて浸透剤を水に高分散させる方法がある。この方法では、分散性が向上し、保存安定性は高まるものの、染着性が低下するという新たな問題が生じた。この問題に対応するために、特許文献1には、水を主体とする溶媒中に酸性染料と疎水性部分を有する染料浸透剤とを含み、酸性域のpHに調整された酸性染毛料組成物において、酸性染料を多量に配合しなくても、良好な染毛性を示す発明が開示されている。
特許文献2には、直接染料を含有する染毛料組成物において、高い染毛力を維持しながら、保存安定性を向上させた発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-81788号公報
【特許文献2】特開2010-105997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、染毛性は改善しているものの、保存安定性が満足な品質ではなかった。
特許文献2の技術では、保存安定性は改善しているものの、仕上がりの毛髪が硬く、きしみがあり、満足な品質ではなかった。
【0007】
本発明者は、染着性の向上と保存安定性の向上とを両立させる検討を行う中で、エタノールを多く配合して水と有機溶媒との混和性を高めつつ、染着性と保存安定性の向上を図った。しかし、この配合の場合では、染着性と保存安定性は向上するものの、従来より多くの増粘剤を配合しなければ、塗布に適した粘度とならなかった。また、剤に含まれる増粘剤が毛髪に多く残留してしまい、仕上がりの毛髪が硬くなったり、きしみが生じることもわかった。
【0008】
このようなことから、本発明は、毛髪への染着性と剤の保存安定性に優れ、かつ、風乾後の毛髪の柔らかさにも優れる酸性染毛料組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、以下の構成を有する酸性染毛料組成物は上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、例えば以下の[1]~[6]である。
【0010】
[1]芳香族アルコール(A)0.5~12質量%と、無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2であるエステル油(B)と、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)0.3~1.5質量%と、高級アルコール(D)2~8質量%とを含み、前記芳香族アルコール(A)と前記エステル油(B)との質量比((B)/(A))が0.6~2である、酸性染毛料組成物。
[2]アルキルグルコシド(E)をさらに含む、[1]に記載の酸性染毛料組成物。
[3]前記芳香族アルコール(A)が、ベンジルアルコール、フェニルプロパノール、ベンジルオキシエタノール、およびフェノキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の酸性染毛料組成物。
[4]前記エステル油(B)が、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、アジピン酸ジエチルヘキシル、およびコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[3]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[5]前記高級アルコール(D)が、炭素数14~22の高級アルコールである、[1]~[4]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
[6]剤型が乳液状またはクリーム状である、[1]~[5]のいずれかに記載の酸性染毛料組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、毛髪への染着性と剤の保存安定性に優れ、かつ、風乾後の毛髪の柔らかさにも優れる酸性染毛料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の酸性染毛料組成物について具体的に説明する。
<酸性染毛料組成物>
本発明の酸性染毛料組成物は、芳香族アルコール(A)0.5~12質量%と、無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2であるエステル油(B)と、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)0.3~1.5質量%と、高級アルコール(D)2~8質量%とを含み、前記芳香族アルコール(A)と前記エステル油(B)との質量比((B)/(A))が0.6~2である。
【0013】
<芳香族アルコール(A)>
本発明の酸性染毛料組成物は、芳香族アルコール(A)を0.5~12質量%、好ましくは3~10質量%含む。
【0014】
本発明の酸性染毛料組成物は、芳香族アルコール(A)を上記の量で含むことによって、染着性および均染性に優れ、保存安定性にも優れる。
芳香族アルコール(A)が前記下限量より少ないと、染着性および均染性が悪くなることがある。前記上限量より多いと、分離、凝集が起こり保存安定性が悪くなり、毛髪に均一に塗布することが困難な場合がある。
【0015】
芳香族アルコール(A)としては、例えば、ベンジルアルコール、フェニルプロパノール、ベンジルオキシエタノール、2-フェニルエチルアルコール、シンナミルアルコール、1-フェノキシ-2-プロパノール、フェニルジグリコール、α-メチルベンジルアルコール、ジメチルベンジルカルビノール、ベンジルオキシエタノール、フェノキシエタノール、フェノキシイソプロパノール、およびp-アニシルアルコールが挙げられる。これらの中でも、芳香族アルコール(A)が、ベンジルアルコール、フェニルプロパノール、ベンジルオキシエタノール、およびフェノキシエタノールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、染着性に特に優れることから、ベンジルアルコールがより好ましい。
芳香族アルコール(A)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0016】
<エステル油(B)>
本発明の酸性染毛料組成物は、無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2、好ましくは0.28~0.8であるエステル油(B)(以下、単に「成分(B)」とも記す。)を含む。
【0017】
本発明の酸性染毛料組成物は、前記芳香族アルコール(A)と前記成分(B)との質量比((B)/(A))が0.6~2、好ましくは0.8~2、より好ましくは0.8~1.5である。
【0018】
本発明において、有機性値、無機性値、IOB値とは、有機概念図(甲田善生 著、三共出版、1984年発行)に基づき求められる値である。具体的には、化合物の物理化学的物性について、主にファンデルワールス(Van Der Waals)力による物性の程度を有機性、主に電気的親和力による物性の程度を無機性と定義し、それぞれ値として表現されたものが有機性値(OVとも記す)、無機性値(IVとも記す)である。IOB値は、有機性と無機性とのバランスを示す指標として、IOB値=(無機性値)/(有機性値)で求めることができる。
【0019】
一般的には、IOB値が小さい化合物ほど疎水性の性質を示し、IOB値が大きい化合物ほど親水性の性質を示す化合物と考えられる。
成分(B)は、無機性値が100以上で、かつ、IOB値が0.28~1.2のエステル油であることによって、均染性および保存安定性に優れる。
【0020】
本発明の酸性染毛料組成物は、前記芳香族アルコール(A)と前記成分(B)との質量比((B)/(A))が上記の値であることによって、保存安定性に優れる。
成分(B)の無機性値が100未満であると、均染性が悪くなることがある。
前記芳香族アルコール(A)と前記成分(B)との質量比((B)/(A))が前記下限値より少ないと、均染性および保存安定性が悪くなることがある。
【0021】
成分(B)としては、例えば、セバシン酸ジエチル(OV=280、IV=120、IOB値=0.43)、コハク酸ジエトキシエチル(OV=240、IV=270、IOB値=1.13)、アジピン酸ジイソプロピル(OV=220、IV=120、IOB値=0.55)、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(OV=540、IV=180、IOB値=0.33)、アジピン酸ジエチルヘキシル(OV=420、IV=120、IOB値=0.29)、リンゴ酸ジイソステアリル(OV=780、IV=220、IOB値=0.28)、ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル(OV=510、IV=160、IOB値=0.31)、コハク酸ジ2-エチルヘキシル(OV=380、IV=120、IOB値=0.32)、ジカプリル酸プロピレングリコール(OV=370、IV=120、IOB値=0.32)、ジ2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール(OV=380、IV=240、IOB値=0.32)イソステアリン酸ポリグリセリル-2(OV=470、IV=380、IOB=0.81)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(OV=820、IV=340、IOB値=0.41)、乳酸オクチルドデシル(OV=450、IV=160、IOB=0.36)、セバシン酸ジイソプロピル(OV=300、IV=120、IOB値=0.40)、およびテトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(OV=680、IV=240、IOB値=0.35)が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、成分(B)が、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、アジピン酸ジエチルヘキシル、およびコハク酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、セバシン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、アジピン酸ジエチルヘキシルからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、乳化作用および保存安定性に特に優れ、安価であることから、成分(B)がセバシン酸ジエチルおよびトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリルからなる群より選択される少なくとも1種であることがさらに好ましい。
成分(B)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
<ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)>
本発明の酸性染毛料組成物は、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)を0.3~1.5質量%、好ましくは0.3~1.0質量%、より好ましくは0.5~0.9質量%含む。
【0024】
本発明の酸性染毛料組成物は、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)を上記の量で含むことによって、塗布性に優れる。
ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)が前記下限量より少ないと、保存安定性が悪く、塗布性および均染性が悪くなることがある。前記上限量より多いと、塗布性が悪くなる場合がある。
【0025】
<高級アルコール(D)>
本発明の酸性染毛料組成物は、高級アルコール(D)を2~8質量%、好ましくは2.5~6質量%、より好ましくは2.5~5.5質量%含む。
【0026】
高級アルコール(D)が前記下限量より少ないと、塗布性が悪くなることがある。前記上限量より多いと、分離、凝集が起こり保存安定性が悪くなり、塗布性および均染性が悪くなる傾向がある。また、すすぎ時および仕上がりの毛髪の柔らかさが低下する場合がある。
【0027】
高級アルコール(D)としては、例えば、炭素数14~22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基またはアルケニル基を有する1価の高級アルコールが挙げられる。高級アルコール(D)は、好ましくは炭素数が14~22、より好ましくは18~22の高級アルコールである。
高級アルコール(D)は、飽和アルコールであっても、不飽和アルコールであってもよいが、剤の安定性を付与する効果に優れることから飽和アルコールが好ましい。
【0028】
高級アルコール(D)として、具体的には、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、(C20-22)アルコール、ミリスチルアルコール、セタノール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、およびオレイルアルコールが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、高級アルコール(D)が、セテアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリルアルコール、および(C20-22)アルコールからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、毛髪の柔らかさに特に優れることから、高級アルコール(D)がベヘニルアルコールであることがさらに好ましい。
高級アルコール(D)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0030】
高級アルコール(D)として、ベヘニルアルコールと(C20-22)アルコールとを組み合わせて用いる場合には、ベヘニルアルコールと(C20-22)アルコールとの質量比((ベヘニルアルコール):((C20-22)アルコール))が1:0.8~1:3.5であることが、塗布に適した粘度となるため好ましい。
【0031】
<アルキルグルコシド(E)>
本発明の酸性染毛料組成物は、アルキルグルコシド(E)をさらに含むことが好ましい。
【0032】
本発明の酸性染毛料組成物は、アルキルグルコシド(E)を好ましくは0.3~1質量%含む。
本発明の酸性染毛料組成物は、アルキルグルコシド(E)を含むことで、より塗布性に優れるため好ましい。
【0033】
アルキルグルコシド(E)として、具体的には、アラキジルグルコシド、セテアリルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、セチルグルコシド、およびステアリルグルコシドが挙げられる。
【0034】
これらの中でも、アルキルグルコシド(E)が、アラキジルグルコシドおよびセテアリルグルコシドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、保存安定性に特に優れることから、アルキルグルコシド(E)がアラキジルグルコシドであることがさらに好ましい。
アルキルグルコシド(E)は、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0035】
<その他の成分>
本発明の酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分以外に、pH調整剤、界面活性剤、染料、保湿剤、生薬類、防腐剤、酸化防止剤、清涼剤、ビタミン類、タンパク質、香料、抗菌剤、増粘剤および色素等の添加剤を含有することができる。
【0036】
本発明の酸性染毛料組成物は、pH調整剤として、乳酸を用いることができる。
本発明の酸性染毛料組成物は、界面活性剤を用いる場合には、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤を用いることができ、例えば、セテス-150(セタノールのポリエチレングリコールエーテル)を用いることができる。
本発明の酸性染毛料組成物は、界面活性剤を用いる場合には、例えば、0.01~5質量%用いることができる。
【0037】
〔染料〕
本発明の酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、所望の染料を配合することができる。染料としては、例えば、酸性染料、HC染料、および塩基性染料が挙げられる。
【0038】
本発明の酸性染毛料組成物において、染料は、酸性で染色できることから、酸性染料、およびHC染料であることが好ましい。酸性染料は、医薬品等に使用することができるタール色素を定める省令(昭和41年厚生省令第30号)に記載されているタール色素中の酸性染料であることがより好ましい。
【0039】
酸性染料として、具体的には、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号(1)、赤色105号(1)、赤色106号、赤色201号、赤色230号(1)、赤色230号(2)、赤色231号、赤色232号、赤色227号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、黄色4号、黄色5号、黄色202号(1)、黄色202号(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号(1)、黄色406号、黄色407号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、緑色201号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、褐色201号、黒色401号が挙げられる。
【0040】
HC染料として、具体的には、HC青2、HC青6、HC青7、HC青8、HC橙1、HC橙2、HC橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤13、HC赤14、HC紫1、HC紫2、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、1-アミノ-2-メチル-6-ニトロベンゼン、1-アミノ-2-メチル-4-メチルアミノベンゼン、4-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-メチルベンゼン、1-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-4-アミノ、1-アミノ-2-ベンゼン(β-ヒドロキシプロピルアミノ)ベンゼン、1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-(3-ヒドトキシプロピルアミノ)ベンゼン、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールが挙げられる。
【0041】
塩基性染料として、具体的には、赤色213号、赤色214号、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14が挙げられる。
染料は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
〔天然色素〕
本発明の酸性染毛料組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、天然色素を含んでいてもよい。天然色素としては、古くから食用、化粧品などに利用されていたものが、安全性と色調の点から好ましく、例えば、化粧品原料基準、化粧品種別許可基準I~V、医薬部外品原料規格、食品添加物公定書などに記載されている天然色素を使用することができる。
【0043】
天然色素として、具体的には、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィル、パプリカ色素、ラック色素が好ましい。
天然色素は1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよく、上述の染料と天然色素とを組み合わせて用いてもよい。
【0044】
<酸性染毛料組成物の製造等>
本発明の酸性染毛料組成物は、上述した各成分を上述の量で使用する以外は、例えば公知の方法で、撹拌、混合、加熱、溶解、分散等することによって製造することができ、製造方法は特に限定されない。
本発明の酸性染毛料組成物は、1剤式であることが好ましい。
【0045】
〔剤型〕
本発明の酸性染毛料組成物の剤型は、特に限定されないが、例えば、乳液状、クリーム状、ジェル状、ローション状、液状、泡状が挙げられる。これらの中でも、剤型が乳液状またはクリーム状であることが好ましい。
本発明の酸性染毛料組成物は、噴射剤とともに用いることによりスプレー用組成物として用いることもできる。
【0046】
〔用途〕
本発明の酸性染毛料組成物は、毛髪に塗布またはスプレーして使用することができる。毛髪に塗布する場合は、適量をコームやハケで塗布することができる。毛髪に塗布した後は、必要に応じて20~50℃、好ましくは40℃で、1~30分間加温することが好ましい。
本発明の酸性染毛料組成物は、毛髪全体に用いることができ、毛髪の所定の部分、例えば白髪の部分に対する染色に用いることもできる。
【実施例0047】
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0048】
〔実施例1~37、比較例1~9〕
実施例、および比較例では、表1に記載の市販品を使用した。
【0049】
【表1】
【0050】
表2~表6に示す処方で各成分を混合して、酸性染毛料組成物を製造し、試料とした。表2~表6の処方の数値は、酸性染毛料組成物全体を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表しており、純分換算した値を示す。
【0051】
〔試験方法〕
10cmのブリーチ処理された人毛毛束(ビューラックス社製、BR-3-A)を水で濡らした後、タオルドライした。この人毛毛束1gに対して試料1gをハケで塗布し、塗布性について評価項目(1)の評価を行った。試料を塗布した毛束をラップで包み、40℃で15分間放置して染色した(染色処理)。染色処理した毛束を10%アルスコープDA-330S(東邦化学工業株式会社)水溶液で洗浄し、すすぎ時、タオルドライ後、および風乾後の毛束について、評価項目(2)、(3)、(4)の評価を行った。続いて、風乾後の毛束の均染性および染着性について、評価項目(5)、(6)の評価を行った。
試料の保存安定性については、評価項目(7)の評価を行った。
【0052】
〔評価方法〕
評価項目(1)~(5)では、10人の専門パネラー(美容師)が1人ずつ、評価基準に従って官能評価を行った。各評価項目につき10人の評価点の平均を算出し、平均点を以下のとおり評価した。
【0053】
・評価項目(1)
◎◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が4点以上である。
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上4点未満である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0054】
・評価項目(2)~(5)
◎:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が3.5点以上4点未満である。
○:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が2.5点以上3.5点未満である。
△:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点以上2.5点未満である。
×:10人の専門パネラー(美容師)の評価点の平均点が1.5点未満である。
【0055】
〔評価項目および評価基準〕
(1)塗布性
ハケで試料を取って毛束に塗布するときの、試料の塗布のしやすさについて評価した。
5点:ハケで非常に取りやすく、伸びや密着性が非常によく、容易に均一に塗布することができる
4点:ハケで取りやすく、伸びや密着性がよく、均一に塗布することができる
3点:ハケで取ることができ、伸びや密着性がややよい
2点:粘度がややゆるい、もしくはやや硬いため、ハケで取りにくく、均一な塗布は難しい
1点:たれ落ち、もしくは硬すぎるため、ハケに取って塗布することが非常に難しい
【0056】
(2)すすぎ時の柔らかさ
染色処理後、すすいでいる時の毛束の柔らかさについて、触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:やや硬い
1点:硬い
【0057】
(3)タオルドライ後のきしみ
染色処理後、タオルドライした毛束の手触りについて、触感で評価した。
4点:まったくきしみを感じず、なめらかである
3点:きしみを感じない
2点:ややきしみを感じる
1点:強いきしみを感じる
【0058】
(4)風乾後の柔らかさ
染色処理後、風乾した毛束の柔らかさについて、触感で評価した。
4点:非常に柔らかい
3点:柔らかい
2点:やや硬い
1点:硬い
【0059】
(5)均染性
染色処理後、風乾した毛束の染まり具合について、目視で評価した。
4点:ムラがなく、非常に均一に染色されている
3点:ほとんどムラがなく染色されている
2点:ややムラがある
1点:ムラがある
【0060】
(6)染着性
染色処理後、風乾した毛束の色について、分光測色計(SPECTRO PHOTOMETER NF555、日本電色工業株式会社、標準光源D65)を用いてL***表色系における値を計測した。
【0061】
あらかじめ、ブリーチ処理された人毛毛束についてL***表色系における値を計測しておき、染色前後における色差(ΔE)を式(I)によって算出した。ΔEは、下記の基準に従って評価した。ΔEの値が大きいほど、試料の染着性が優れることを意味する。
【0062】
【化1】
【0063】
1:ブリーチ処理された人毛毛束のL*
2:染色処理した後、風乾した毛束のL*
1:ブリーチ処理された人毛毛束のa*
2:染色処理した後、風乾した毛束のa*
1:ブリーチ処理された人毛毛束のb*
2:染色処理した後、風乾した毛束のb*
【0064】
◎:ΔEの値が45以上である。
○:ΔEの値が41以上45未満である。
△:ΔEの値が35以上41未満である。
×:ΔEの値が35未満である。
【0065】
(7)保存安定性
試料をポリエチレンテレフタラート容器(竹本容器株式会社製、PEPI-50)に40g入れ、45℃で1ヶ月保存した。保存後の試料について、分離の有無、染料の凝集状態を目視で評価した。
◎:分離、凝集が全くない
〇:分離、凝集がほとんどない
△:分離、凝集がややある
×:分離、凝集がある
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
実施例1~37で製造した酸性染毛料組成物は、(1)~(7)の評価項目において良好な結果となった。実施例36および37は、特に良好な結果となった。
本発明の酸性染毛料組成物は、毛髪への染着性と剤の保存安定性に優れ、かつ、風乾後の毛髪の柔らかさにも優れることがわかる。
【0072】
比較例1で製造した酸性染毛料組成物は、成分(A)の配合量が規定量より少ないため、均染性および染着性が悪かった。
比較例2で製造した酸性染毛料組成物は、成分(A)の配合量が規定量より多く、剤がゆるすぎてたれ落ちたため、塗布性が悪かった。また、保存安定性も悪かった。
【0073】
比較例3で製造した酸性染毛料組成物は、質量比((B)/(A))が規定値より低いため、保存安定性が悪かった。
比較例4で製造した酸性染毛料組成物は、成分(B)の無機性値が規定値より低いため、均染性および保存安定性が悪かった。
【0074】
比較例5で製造した酸性染毛料組成物は、成分(B)のIOB値が規定値より低いため、保存安定性が悪かった。
比較例6で製造した酸性染毛料組成物は、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)の配合量が規定量より少なく、剤がゆるすぎてたれ落ちたため、塗布性が悪かった。また、均染性、染着性、および保存安定性も悪かった。
【0075】
比較例7で製造した酸性染毛料組成物は、ポリアクリレートクロスポリマー-6(C)の配合量が規定量より多く、剤が硬すぎたため、塗布性が悪かった。また、すすぎ時および風乾後の柔らかさ、きしみ、均染性、および染着性も悪かった。
【0076】
比較例8で製造した酸性染毛料組成物は、高級アルコール(D)の配合量が規定量より少なく、剤がゆるすぎてたれ落ちたため、塗布性が悪かった。
比較例9で製造した酸性染毛料組成物は、高級アルコール(D)の配合量が規定量より多く、剤が硬すぎたため、塗布性が悪かった。また、すすぎ時および風乾後の柔らかさ、均染性、並びに保存安定性も悪かった。