(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127201
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23P 15/40 20060101AFI20220824BHJP
B26D 1/28 20060101ALI20220824BHJP
B26D 1/14 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
B23P15/40 Z
B26D1/28 B
B26D1/14 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025210
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】593077250
【氏名又は名称】ナシモト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】梨本 俊晴
【テーマコード(参考)】
3C027
【Fターム(参考)】
3C027MM02
3C027MM14
(57)【要約】
【課題】自生作用を生じさせる高硬度層と低硬度層とを接触摩耗面(切断面)に容易に形成でき、またこの境界部の硬度が徐々に硬度低下するように形成することでたとえば切断面の摩耗が進んでも高硬度層が薄板状に鋭利化することも抑制でき、自生作用による切れ味の持続性の向上のみならず強度の持続性も向上させることが容易な作業用板(切断用板)の製造方法を提供すること。
【解決手段】基板1(刃板1)の一側板面に、レーザー焼き入れ加工を施して高硬度層2と低硬度層3とを形成するとともに、接触縁部の接触摩耗面4(切断面4)にこの高硬度層2と低硬度層3とが現出する板形状に形成する(切断用板などの)作業用板の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に接触縁部を移動接触または打撃接触させて対象物を切断、破断、撹拌または耕うんする基板1を形成する板素材に、レーザー焼き入れ加工を施して一側板面に高硬度層を形成することで板断面方向にこの高硬度層とこれより柔らかい低硬度層とを形成するとともに、前記接触縁部の前記対象物に接して摩耗する接触摩耗面に、前記高硬度層と前記低硬度層とが現出する板形状に前記基板を形成することを特徴とする切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項2】
前記対象物に前記接触縁部である刃縁部を相対的に回転接触させて対象物を切断する前記基板を形成する前記板素材の一側板面に、前記レーザー焼き入れ加工を施して一側板面に前記高硬度層を形成することで板断面方向にこの高硬度層とこれより柔らかい前記低硬度層とを形成するとともに、前記接触縁部の前記対象物に接して摩耗する前記接触摩耗面である切断面に、前記高硬度層と前記低硬度層とが現出する板形状に前記基板を形成することを特徴とする請求項1記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項3】
前記レーザー焼き入れ加工により硬化した前記高硬度層の先端板端面とこれより柔らかい前記低硬度層の先端板端面とで前記接触摩耗面が形成され、且つこの高硬度層の表面方向が前記対象物に対して移動させる方向と平行となる板形状に前記基板を形成することを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項4】
前記高硬度層の先端板端面と前記低硬度層の先端板端面とで前記接触摩耗面が形成され、且つこの高硬度層の表面方向が前記対象物に対して移動させる方向と角度をなす前記板形状に形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項5】
前記基板を形成する板素材の一側板面に、前記レーザー焼き入れ加工を施して前記高硬度層を形成することで、板断面方向にこの高硬度層とこれより硬度の低い前記低硬度層3とを並設形成するとともに、この板断面方向の硬度が一側板面から板断面方向に徐々に低くなり前記低硬度層の硬度に変化する硬度分布となる前記接触縁部に形成することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自生作用により切れ味が持続するいわゆるメンテナンスフリーの回転草刈刃や回転ドラムに付設するドラムカッター(わら切り刃)、収穫機械刃(コンバイン)などの切断用板、その他対象物を破断、撹拌または耕うんする打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、回転草刈刃などの切断用板を例にとれば、草刈作業中に木、硬土、石などの障害物に接触することも多いため、短期間で基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)は摩耗し切れ味が低下してしまうが、これを解決するため、材質を変えたり、厚くしたり、刃縁部を替え刃式にしたりしていたが、重くなったりコスト高となったり、その解決は十分でなかったことに鑑み、出願人は自生作用が生じて刃縁部が摩耗しても切れ味がさほど低下しないいわばメンテナンスフリーの画期的な回転草刈刃を開発した(特許文献1実公平5-30598号)。
【0003】
すなわち、硬い材料と柔らかい材料とを張り合わせたクラッド材で回転刃板の刃縁部を形成するとともに、たとえばこの硬い材料側を下にしてこの回転刃板の刃縁部(外周縁部)を上向きに傾斜させてその先端を水平面に加工し刃縁部の切断面(接触摩耗面)を形成することで、この切断面(接触摩耗面)に硬い材料の先端板端面と柔らかい材料の先端板端面が現出するように形成して、使用を繰り返すことで徐々に柔らかい材料が摩耗しても硬い材料の先端板端面は摩耗しにくいだけでなく、柔らかい材料の先端板端面の摩耗により新しい切断面が生じるとともに、硬い材料の先端板端面は、薄い板形状でこれが徐々に板状に摩耗突出してゆくことになるため切れ味はさほど低下しない自生作用が生じる切断刃を開発した。
【0004】
言い換えると、柔らかい材料の摩耗がむしろ刃縁部の鋭利性を高めるともいえる形状に摩耗していく自生作用が生じ、切れ味が持続するいわゆるメンテナンスフリーの画期的な切断刃を開発した。
【0005】
しかし、この出願人の発明(考案)は、硬い材料と柔らかい材料とを張り合わせたクラッド材を用いて実現したものであるため、クラッド材がまだまだ高価でありコスト高となり、また前記自生作用も柔らかい材料の摩耗が進むと比較的短期に硬い材料が前述したように薄板状に長く突出した状態(薄板状に鋭利化した状態)となってしまうため、この自生作用により切れ味が持続できても破損し易いなど強度の低下が早く、この強度の持続性に改善の余地があり更なる開発が続けられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を見出し、ついにこれを解決したもので、接触縁部の接触摩耗面に現出させる硬い層、すなわち摩耗による自生作用によってたとえば接触縁部(たとえば刃縁部)の本性能(たとえば切れ味)を持続させるための高硬度層をレーザー焼き入れ加工により形成することで、クラッド材を用いることに比して安価にして簡単に製作可能な製法となり、しかもこのレーザー焼き入れ加工により高硬度層を形成することにより、これより柔らかい低硬度層をも同時に形成でき、さらにたとえばこの層の境界深度の設定あるいは徐々に硬度が低下するように形成することも容易な製法となるため、この設定調整により前記自生作用により低硬度層の摩耗が進んでも高硬度層が薄板状に鋭利化することが抑制でき、自生作用による接触縁部(たとえば刃縁部)の本性能(たとえば切れ味)の持続性の向上のみならず強度の持続性も容易に向上させることができる極めて実用性に優れた画期的な切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
対象物に接触縁部を移動接触または打撃接触させて対象物を切断、破断、撹拌または耕うんする基板1を形成する板素材に、レーザー焼き入れ加工を施して一側板面に高硬度層2を形成することで板断面方向にこの高硬度層2とこれより柔らかい低硬度層3とを形成するとともに、前記接触縁部の前記対象物に接して摩耗する接触摩耗面4に、前記高硬度層2と前記低硬度層3とが現出する板形状に前記基板1を形成することを特徴とする切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0010】
また前記対象物に前記接触縁部である刃縁部を相対的に回転接触させて対象物を切断する前記基板1を形成する前記板素材の一側板面に、前記レーザー焼き入れ加工を施して一側板面に前記高硬度層2を形成することで板断面方向にこの高硬度層2とこれより柔らかい前記低硬度層3とを形成するとともに、前記接触縁部の前記対象物に接して摩耗する前記接触摩耗面4である切断面4に、前記高硬度層2と前記低硬度層3とが現出する板形状に前記基板1を形成することを特徴とする請求項1記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0011】
また前記レーザー焼き入れ加工により硬化した前記高硬度層2の先端板端面とこれより柔らかい前記低硬度層3の先端板端面とで前記接触摩耗面4が形成され、且つこの高硬度層2の表面方向が前記対象物に対して移動させる方向と平行となる板形状に前記基板1を形成することを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0012】
また前記高硬度層2の先端板端面と前記低硬度層3の先端板端面とで前記接触摩耗面4が形成され、且つこの高硬度層2の表面方向が前記対象物に対して移動させる方向と角度をなす前記板形状に形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0013】
また前記基板1を形成する板素材の一側板面に、前記レーザー焼き入れ加工を施して前記高硬度層2を形成することで、板断面方向にこの高硬度層2とこれより硬度の低い前記低硬度層3とを並設形成するとともに、この板断面方向の硬度が一側板面から板断面方向に徐々に低くなり前記低硬度層3の硬度に変化する硬度分布となる前記接触縁部に形成することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、接触縁部の接触摩耗面に現出させる硬い層、すなわち摩耗による自生作用によってたとえば接触縁部(たとえば刃縁部)の本性能(たとえば切れ味)を持続させるための高硬度層をレーザー焼き入れ加工により形成することで、クラッド材を用いることに比して安価にして簡単に製作可能な製法となり、しかもこのレーザー焼き入れ加工により高硬度層を形成することにより、これより柔らかい低硬度層をも同時に形成でき、さらにたとえばこの層の境界深度の設定あるいは徐々に硬度が低下するように形成することも容易な製法となるため、この設定調整により前記自生作用により低硬度層の摩耗が進んでも高硬度層が薄板状に鋭利化することが抑制でき、自生作用による接触縁部(たとえば刃縁部)の本性能(たとえば切れ味)の持続性の向上のみならず強度の持続性も容易に向上させることができる極めて実用性に優れた画期的な切断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1の作業用板(切断用板)の基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)を示す説明断面図である。
【
図2】実施例1の作業用板(切断用板)の基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)の説明断面図と板断面方向の硬度分布を示す説明図である。
【
図3】実施例1の作業用板(切断用板)の基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)の説明断面図である。
【
図4】実施例1の切断用板(回転草刈刃)の平面図である。
【
図5】実施例1の切断用板(回転草刈刃)の底面図である。
【
図6】実施例1の切断用板(回転草刈刃)の使用状態の説明断面図である。
【
図7】実施例1の作業用板(切断用板)の基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)の接触摩耗面(切断面)の摩耗進行を示す従来例との比較説明断面図である。
【
図8】実施例2の作業用板(切断用板)の基板(刃板)の接触縁部(刃縁部)を両刃タイプとした説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0017】
対象物に接触縁部を移動接触または打撃接触させて対象物を切断、破断、撹拌または耕うんする基板1を形成する板素材に、レーザー焼き入れ加工を施して一側板面に高硬度層2を形成することで板断面方向にこの高硬度層2とこれより柔らかい低硬度層3とを形成する。
【0018】
たとえば切断対象物に接触縁部である刃縁部を相対的に回転接触させて切断対象物を切断する基板1である刃板1を形成する板素材の一側表面に、レーザー焼き入れ加工を施してこの一側板面に高硬度層2(硬化層)を形成して、この高硬度層2と板断面方向に並設するように、この高硬度層2より柔らかい焼き入れ硬化されない低硬度層3(このレーザー焼き入れにより硬化されない未硬化層3)を形成する。
【0019】
本発明は、この作業用板の基板1の板断面方向に高硬度層2と低硬度層3とを形成するとともに、対象物に接して摩耗する接触縁部たとえば刃縁部の接触摩耗面4たとえば切断面4に、この基板1(たとえば刃板1)の板断面方向に並設形成される前記高硬度層2と前記低硬度層3との板端面が現出する板形状(接触縁部)となるように形成する。
【0020】
たとえば、所定の出力に調整設定した半導体レーザー発振器から発振されるレーザーを板素材の片側表面に照射してレーザー焼き入れ加工(処理)することで、この板素材の片側面を硬化させて高硬度層2を形成するとともに、反対側に硬化されない前記低硬度層3を形成して、この高硬度層2の先端板端面と低硬度層3の先端板端面とが前記接触摩耗面4に現出するように、且つこの高硬度層2の表面方向がたとえば回転しながら対象物へ接近移動あるいは進行移動方向と平行となるあるいはこの方向に対して所定角度をなす前記板形状(接触縁部)に加工形成する。
【0021】
すなわち接触縁部の接触摩耗面4に現出させる高硬度層3(硬化層)をレーザー焼き入れ加工により形成することで、クラッド材を用いる従来例に比して安価にして簡単に製作可能となる。
【0022】
しかもこの高硬度層2の形成により、これより柔らかい層となる低硬度層2も同時に形成でき、たとえば
図2に示すように、このレーザー焼き入れ加工により硬化する高硬度層2の深度(形成範囲や位置)を設定しあるいは徐々にこの高硬度層2(硬化層2)から低硬度層3(未硬化層3)へと硬度が変化する硬度分布となる板断面構造とすることで、(たとえば
図7に示すように)前記自生作用により低硬度層3の摩耗が高硬度層2に比べて進んでも、接触摩耗面4の板断面方向の硬度は従来例の張り合わせのクラッド材のように急激に変化しないように構成することが容易に実現できるため、たとえば摩耗により早期に高硬度層2の先端部分だけが薄板状に長く突出する(鋭利化する)ことが抑制されて、この自生作用による本性能(たとえば切断の場合は切れ味)の持続性の向上のみならず強度の持続性も向上する極めて実用性に優れた画期的な切断用板などの作業用板を容易にして安価に実現できることとなる。
【実施例0023】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、切断対象物に接触縁部である刃縁部を相対的に回転接触させて切断対象物に接近移動させて切込みこの切断対象物を切断する基板1である回転刃板1を形成する板素材の一側板面に、所定出力に調整した半導体レーザー発振器によりレーザーを照射してレーザー焼き入れ加工を施し、この一側板面に所定深さまで硬化させた高硬度層2を形成することで、この板断面方向にこの高硬度層2とこれより柔らかいレーザー焼き入れにより硬化されない未硬化による低硬度層3とを並設形成するとともに、この刃板1を加工して前記刃縁部の前記切断対象物に接して摩耗する切断面4に、この高硬度層2と低硬度層3とが現出するように形成している。
【0025】
すなわち、本実施例では、
図1に示すように、前記レーザー焼き入れ加工により硬化した前記高硬度層2の先端板端面とこれより柔らかい前記低硬度層3の先端板端面とで前記接触摩耗面4である切断面4が形成され、且つこの高硬度層2の表面方向が切断方向と平行となる前記刃板形状に形成している。
【0026】
具体的には、本実施例では、前記刃板1を形成する板素材の一側板面に、前記レーザー焼き入れ加工を施して前記高硬度層2を形成することで、板断面方向にこの高硬度層2とこれより硬度の低い前記低硬度層3とを並設形成するとともに、
図2に示すようにこの板断面方向の硬度が一側板面から板断面方向に徐々に低くなり前記低硬度層2の硬度に変化する硬度分布となる刃縁部に形成している。
【0027】
したがって、このようにレーザー焼き入れ加工により硬化させて一側面に高硬度層2の形成により、反対側に硬化しないことによりこれより柔らかい層となる未硬化による低硬度層2も同時に形成でき、たとえばこの半導体レーザーによる焼き入れの出力調整、たとえば板素材の材質や板厚に応じて半導体レーザーの周波数や電圧などを調整設定して硬化させる深度を調整して高硬度層2の深度(形成範囲や位置)を設定し、さらに
図2に示すように徐々にこの高硬度層2(硬化層2)から低硬度層3(未硬化層3)へと硬度が変化する硬度分布となる板断面構造となるように調整することで、
図7に示すように前記自生作用により低硬度層3の摩耗が高硬度層2に比べて進んでも、切断面4の板断面方向の硬度は従来例の張り合わせのクラッド材のように急激に変化せず、この
図7に示すように摩耗により早期に高硬度層2部分だけが薄板状に長く突出する(鋭利化する)ことが抑制されることとなり、この自生作用による刃縁部の切れ味の持続性の向上のみならず強度の持続性も向上する極めて実用性に優れた切断刃を容易にして安価に実現できることとなる。
【0028】
さらに説明すれば、本実施例では
図2に示すように、SK材硬度25HRCの板素材の一側面(下側となる片側表面)にレーザー焼き入れ加工を施して、刃板1の刃縁部下側に硬度60HRC程度まで硬化した高硬度層2を形成する。これによりこの高硬度層2と硬度25HRCの低硬度層3とが板断面方向に並設するように形成され、その各先端板端面が切断面4に現出し、この板断面方向の硬度分布が
図2に示すように徐々に低下する、すなわち高硬度層2と低硬度層3の境界部では従来例のクラッド材の場合と異なり硬度が急激に変化せずに比較的緩やかに硬度が変化するように形成する構成としている。
【0029】
言い換えると、本実施例ではレーザー焼き入れ加工による硬化処理によって、高硬度層2と低硬度層3を形成するだけでなく、このレーザー焼き入れの出力調整によりこの境界部では硬度が徐々に変化する硬度分布となるように形成している。
【0030】
したがって、本実施例では、レーザー焼き入れ加工により容易にこのような硬度分布に形成することが実現でき、これにより
図7に示すように、使用により刃縁部の切断面4の摩耗が進んでも高硬度層3が早期に板状に摩耗突出しない構成を容易に実現している。
【0031】
なお、この焼き入れ前の板素材は、本実施例に限らず予め熱処理して硬度を高めた調整材(熱処理済み材)を用いてもよいし、浸炭材などの表面処理済み材などを用いてもよい。すなわちレーザー焼き入れにより硬化しない所定深度以上の低硬化層3自体が、すでに前処理によりある程度硬化している場合や、レーザー焼き入れにより硬化させる高硬度層2の表面がすでに前処理されていてもよい。
尚、本発明は、実施例1、2に限られるものではなく、利器の切断用板や農具の耕うん用板その他様々な用途に用いる作業用板に本発明は適用可能であり、その用途に応じて各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。