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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127207
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】ベシクル分散物及び化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/04 20060101AFI20220824BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/55 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20220824BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220824BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220824BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/34
A61K8/63
A61K8/55
A61K8/92
A61K8/39
A61K8/86
A61K8/37
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025221
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】397063833
【氏名又は名称】株式会社シーボン
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 愛梨花
(72)【発明者】
【氏名】稲川 大地
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA032
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB051
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC431
4C083AC432
4C083AD092
4C083AD282
4C083AD332
4C083AD352
4C083AD392
4C083AD452
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD532
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD621
4C083AD622
4C083AD632
4C083BB11
4C083CC04
4C083CC05
4C083DD39
4C083EE01
4C083EE06
(57)【要約】
【課題】機能性油剤を含む油性成分を含有しながらも、安定性、使用感に優れるベシクル分散物及びベシクル分散物を含有する化粧料を提供する。
【解決手段】ベシクル分散物は、(A)水、(B)3重量%以上のペンチレングリコール、
(C)0.55重量%以上0.9重量%以下のレシチン及びフィトステロールズを含む化合物、(D)油剤、及び(E)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルを含む、ベシクル分散物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水、
(B)3重量%以上のペンチレングリコール、
(C)0.55重量%以上0.9重量%以下のレシチン及びフィトステロールズを含む化合物、
(D)機能性油剤、及び
(E)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリル
を含む、ベシクル分散物。
【請求項2】
成分(E)として、HLBが10以上である親水性のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルを含む、請求項1に記載のベシクル分散物。
【請求項3】
成分(E)としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いる場合には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油はPEG-60水添ヒマシ油である、請求項1又は2のいずれかに記載のベシクル分散物。
【請求項4】
成分(E)としてイソステアリン酸ポリグリセリルを用いる場合には、イソステアリン酸ポリグリセリルはイソステアリン酸ポリグリセリル-10である、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベシクル分散物。
【請求項5】
前記機能性油剤はアスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する化合物であり、
アスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する化合物は0.4重量%以下で含有される、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のベシクル分散物。
【請求項6】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルは0.75重量%以上2.5重量%以下で含有される、請求項1乃至5のいずれか1項に記載のベシクル分散物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のベシクル分散物を含む化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベシクル分散物と、当該ベシクル分散物を含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
ベシクルは、両親媒性の脂質や界面活性剤等が形成する二分子膜から成る小胞体のことである。ベシクルの特徴は水溶性物質、及び油溶性物質を内包できることであり、薬剤等の担体としてドラッグデリバリーシステム等に利用されてきた。
【0003】
化粧料等では、皮膚への効能を求めてアスタキサンチンやトコフェロール等の油溶性の薬剤が配合されるが、これら油溶性物質は、化粧水等に配合した場合、濁りを生じて美観が損なわれたり、分散安定性が低く経時で分離したりする等、安定性に課題があった。
【0004】
これらの課題を解決すべく、特許文献1では、浸透感、べたつきがない、塗布後の肌が柔らかい等の効果実感、安定性に優れる、半透明又は透明な化粧料の開発について開示されている。
【0005】
しかし、特許文献1で提案されている態様をもってしても、機能性油剤を含む油性成分を含有しながらも、安定性、使用感に優れるベシクル分散物を得るのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-136934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、機能性油剤を含む油性成分を含有しながらも、安定性、使用感に優れるベシクル分散物及びベシクル分散物を含有する化粧料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるベシクル分散物は、
(A)水、
(B)3重量%以上のペンチレングリコール、
(C)0.55重量%以上0.9重量%以下のレシチン及びフィトステロールズを含む化合物、
(D)機能性油剤、及び
(E)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリル
を含んでもよい。
【0009】
本発明によるベシクル分散物において、
成分(E)として、HLBが10以上である親水性のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルを含んでもよい。
【0010】
本発明によるベシクル分散物において、
成分(E)としてポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いる場合には、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油はPEG-60水添ヒマシ油であってもよい。
【0011】
本発明によるベシクル分散物において、
成分(E)としてイソステアリン酸ポリグリセリルを用いる場合には、イソステアリン酸ポリグリセリルはイソステアリン酸ポリグリセリル-10であってもよい。
【0012】
本発明によるベシクル分散物において、
前記油剤はアスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する化合物であり、
アスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する化合物は0.4重量%以下で含有されてもよい。
【0013】
本発明によるベシクル分散物において、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルは0.75重量%以上2.5重量%以下で含有されてもよい。
【0014】
本発明による化粧料は、
前述したベシクル分散物を含む化粧料を含有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、機能性油剤を含む油性成分を含有しながらも、安定性、使用感に優れるベシクル分散物や、ベシクル分散物を含有する化粧料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態のベシクル分散物は、水、ペンチレングリコール、両親媒性物質としてのレシチン及びフィトステロールズを含む化合物、油剤、及び界面活性剤としてのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油又はイソステアリン酸ポリグリセリルを含んでもよい。
【0017】
ベシクル分散物において、ペンチレングリコールは3重量%以上で含有されてもよく、好ましくは4重量%以上で含有され、さらに好ましくは5重量%以上で含有される。ペンチレングリコールの含有量が少なくなると調剤後の透明性や経時安定性に問題が生じ得る。ペンチレングリコールの上限値としては60重量%を挙げることができ、より限定するのであれば50重量%と挙げることができる。なお、粒子が細かい場合には透明性が高くなり、他方、粒子が大きくなると透明性が低くなる。本実施の形態では、多量の油剤を含みながらも透明性を確保でき、細かな粒子を実現できている点で優れたものとなっている。このように細かな粒子を実現することで、皮膚への高い浸透性を実現できることになる。
【0018】
ベシクル分散物において、レシチン及びフィトステロールズを含む化合物は0.55重量%以上で含有されてもよく、好ましくは0.6重量%以上で含有される。ベシクル分散物において、レシチン及びフィトステロールズを含む化合物は0.9重量%以下で含有されてもよく、好ましくは0.8重量%以下で含有される。レシチン及びフィトステロールズを含む化合物の含有量が少なすぎる場合及び多すぎる場合には経時安定性に問題が生じ得る。また、レシチン及びフィトステロールズを含む化合物の含有量が多すぎる場合には透明性が劣ることにもなり得る。
【0019】
ベシクル分散物において、機能性物質を含有する油剤(機能性油剤)は0.5重量%未満で含有されてもよい。機能性物質として機能すれば問題ないことから、下限は特に限定されないが、一例として挙げるのであれば、機能性物質を含有する油剤(機能性油剤)は0.01重量%以上で含有される。油剤としては、エステル油、炭化水素油、シリコーン油、動植物油脂等を挙げることができる。エステル油としては、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸エチルヘキシル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸エチルヘキシル、ステアリン酸イソトリデシル、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソブチル、トリエチルヘキサノイン、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステルを挙げることができる。炭化水素油としては、スクワラン、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、パラフィンワックス、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等を挙げることができる。
【0020】
機能性物質を含有する油剤(機能性油剤)がアスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含有する化合物である場合には0.4重量%以下で含有されることが好ましく、0.3重量%以下で含有されることがさらに好ましい。油剤が多くなりすぎると経時安定性に問題が生じ得る。アスタキサンチンは機能性物質の一例であり、特に限定されるものではない。機能性物質としては、アスタキサンチンではなくトコフェロール、セラミド等を用いてもよい。機能性物質としては、β-カロテン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテイン等のカロテノイドや、レチノールやトコトリエノール等の油溶性ビタミンとその誘導体や、コエンザイムQ10等のユビキノン、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル等のUV防御剤、イソフラボンやアントシアニン、クロロゲン酸、フェルラ酸、没食子酸、プロアントシアニジン等のポリフェノール、香料、植物エキス、タンパク質、セラミド等のスフィンゴ脂質等を用いることもできる。
【0021】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が含有される場合には、ベシクル分散物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は0.75重量%以上で含有されることが好ましく、1.0重量%以上で含有されることがさらに好ましい。また、ベシクル分散物において、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油は2.5重量%以下で含有されることが好ましく、2.3重量%以下で含有されることがさらに好ましく、2.0重量%以下で含有されることがさらにより好ましい。
【0022】
イソステアリン酸ポリグリセリルが含有される場合には、ベシクル分散物において、イソステアリン酸ポリグリセリルは0.75重量%以上で含有されることが好ましく、1.0重量%以上で含有されることがさらに好ましい。また、ベシクル分散物において、イソステアリン酸ポリグリセリルは2.5重量%以下で含有されることが好ましく、2.3重量%以下で含有されることがさらに好ましく、2.0重量%以下で含有されることがさらにより好ましい。
【0023】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油やイソステアリン酸ポリグリセリルの含有量が少なくなり過ぎると経時安定性に問題が生じ得る。また、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油やイソステアリン酸ポリグリセリルの含有量が多くなり過ぎると経時安定性に問題が生じ得るし、透明性が劣ることにもなり得る。
【0024】
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としてはHLBが10以上である親水性のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を用いることが好ましい。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油として水添ヒマシ油を用いてもよく、PEG-30水添ヒマシ油、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-70水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油等を用いてもよい。但し、PEG-60水添ヒマシ油を用いることが好ましい。イソステアリン酸ポリグリセリルとしてはHLBが10以上である親水性のあるイソステアリン酸ポリグリセリルを用いてもよい。イソステアリン酸ポリグリセリルとしてはイソステアリン酸ポリグリセリル-5、イソステアリン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-7、イソステアリン酸ポリグリセリル-8、イソステアリン酸ポリグリセリル-9、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-20等を用いてもよい。但し、イソステアリン酸ポリグリセリル-10を用いることが好ましい。
【0025】
本実施の形態による化粧料は、添加剤等の成分を含有してもよい。このような添加剤としては、増粘剤、界面活性剤、保存剤、pH調整剤、キレート剤、安定剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、分散剤、香料、酸化防止剤、植物抽出液、ビタミン類、アミノ酸等を挙げることができる。
【0026】
[実施例及び比較例]
次に実施例及び比較例について説明する。
【0027】
実施例及び比較例におけるベシクル分散物は以下のようにして準備した。
【0028】
まず、D成分(トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル)及びE成分(PEG-60水添ヒマシ油、イソステアリン酸ポリグリセリル-10、PEG-20ソルビタンココエート又はステアリン酸ポリグリセリル-10)を75℃~85℃で加熱混合し、均一な第1溶液を調整した。
【0029】
また、B成分(ペンチレングリコール又はBG)及びC成分(水添レシチン及びフィトステロールズを含む化合物又は水添レシチン及びコレステロールを含む化合物)を75℃~85℃で加熱混合し、均一な第2溶液を調整した。
【0030】
次に、第1溶液を第2溶液に撹拌しながら加え、75℃~85℃で加熱混合し、均一な第3溶液を調製した。
【0031】
次に、75℃~85℃に加熱した精製水に撹拌しながら第3溶液を加え、75℃~85℃で加熱混合した。その後、当該溶液を室温まで撹拌しながら冷却し、ベシクル分散物を得た。
【0032】
B成分及びC成分を含む溶液に、D成分及びE成分を加え、75℃~85℃で均一になるまで混合した。その後、室温まで冷却した。
【0033】
実施例及び比較例で用いた評価方法は下記のとおりである。なお、通常、ベシクル分散物を調製する際には、高圧ホモジナイザーや超音波分散機等の高いエネルギーを与えられる特殊な設備を用いるが、本発明の実施例によるベシクル分散物では、ホモミキサーでも微細なベシクルを得ることができたことは非常に有益な結果である。
(調製直後の透明性の評価方法)
容量70mLの透明ガラス容器に密封し室温20℃~25℃で静置した状態で、ガラス容器後方に文字を印刷した紙を置き、それを水平方向から目視したとき、その文字がはっきりと見えるか否かで評価した。
3:文字がはっきりと読める
2:文字がややぼやけて見える
1:文字がぼやけて読みにくい
【0034】
(経時安定性評価方法)
透明ガラス容器に密閉し、温度一定条件で静置。初期からの変化の度合いを目視観察により評価した。
◎:透明度に初期からの変化がほとんどなく、分離や沈殿が見られない。
○:やや透明度の低下がみられる。または分離や沈殿等がわずかにみられる。もしくはその両方。
△:明らかな透明度の低下がみられる。または分離や沈殿が多い。あるいはその両方。
×:著しい透明度の低下がみられる。または分離や沈殿の程度が大きい。あるいはその両方。
【0035】
(浸透感の評価方法)
専門パネラー5名により、顔に規定量1.5mL塗布した際の浸透感を5段階(非常に感じる:5、まあ感じる:4、普通:3、あまり感じない:2、感じない:1)で採点した。そのスコアを平均し、4段階で評価した。
◎:4.5以上
○:3.5以上4.5未満
△:2.5以上3.5未満
×:2.5未満
【0036】
下記表1で示すとおり、ペンチレングリコールを5重量%以上で含有する場合には、透明性、経時安定性及び浸透感で問題がないことを確認できた。特に5重量%以上10重量%以下では5℃という低温における経時安定性でも優れたものを示すことを確認できた。なお、冬の風呂場といった低温になる状況でも安定性を保てる点は有益である。また、夏場の厚い状況でも安定性を保てる点は有益である。
【表1】
【0037】
下記表2で示すとおり、BGでは、ペンチレングリコールを用いた場合のような効果を得ることはできなかった。特に5℃という低温における経時安定性や透明性では、ペンチレングリコールを用いた場合と比較して劣ることを確認できた。なお、BGを含む場合でも、ペンチレングリコールを用いることで、優れた効果を得ることも確認できた(実施例6参照)。
【表2】
【0038】
下記表3で示すとおり、水添レシチン及びフィトステロールズを含む化合物を0.6重量%以上0.8重量%以下で含有する場合には、透明性、経時安定性及び浸透感で問題がないことを確認できた。他方、水添レシチン及びフィトステロールズを含む化合の含有量が0.5重量%以下になると低温での経時安定性に問題が生じること、またレシチン及びフィトステロールズを含む化合の含有量が1重量%以上になると常温(25℃)及び低温での経時安定性に問題が生じることを確認できた。
【表3】
【0039】
下記表4で示すとおり、油剤の一例であるアスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含む化合物を0.5重量%以上で含有した場合には低温での経時安定性に問題が生じることを確認できた。また、水添レシチン及びフィトステロールズを含む化合物ではなく、水添レシチン及びコレステロールを含む化合物を用いた場合には、アスタキサンチン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルを含む化合物の含有量が0.2重量%の場合でも低温での経時安定性に問題が生じることを確認できた。
【表4】
【0040】
下記表5で示すとおり、PEG-60水添ヒマシ油の含有量を0.5重量%以下にした場合及び3重量%以上にした場合には、低温での経時安定性に問題が生じることを確認できた。また、PEG-60水添ヒマシ油の代わりにイソステアリン酸ポリグリセリル-10を用いた場合でも問題がないことを確認できた。他方、PEG-60水添ヒマシ油の代わりにPEG-20ソルビタンココエートやステアリン酸ポリグリセリル-10を用いた場合には、常温及び低温での経時安定性に問題が生じることを確認できた。
【表5】
【0041】
実施例及び比較例で用いた原料名は以下のとおりである。
(B成分について)
ペンチレングリコール 原料名:Hydrolite(登録商標) 5 green (シムライズ株式会社)
BG 原料名:1,3ブチレングリコール(13BGUK) (株式会社ダイセル)
(C成分について)
水添レシチン:フィトステロールズ 原料名:Phytopresome (日本精化株式会社)
なお、水添レシチン:フィトステロールズは85.7:14.3となっている。
水添レシチン:コレステロール 原料名:Presome CS2-101 (日本精化株式会社)
なお、水添レシチン:コレステロールは80:20となっている。
水添レシチンとステロール類は個別に配合してもよいし、事前に均一に混合しておいたものを使用してもよい。
(D成分について)
アスタキサンチン:トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル 原料名:Astax-ST (株式会社マリン大王)
なお、アスタキサンチン:トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルは5:95となっている。
アスタキサンチンとトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルは個別に配合してもよいし、事前に均一に混合しておいたものを使用してもよい。
(E成分について)
PEG-60水添ヒマシ油 原料名:エマノーンCH-60(K)(花王株式会社)
イソステアリン酸ポリグリセリル-10 原料名:Sフェイス10G-IS(阪本薬品工業株式会社)
PEG-20ソルビタンココエート 原料名:レオドールスーパー TW-L120(花王株式会社)
ステアリン酸ポリグリセリル-10 原料名:Decaglyn 1-SV(日本サーファクタント工業株式会社)
【0042】
本実施の形態によるベシクル分散物は化粧料に含有されて利用できる。その含有量は100重量%であってもよく、ベシクル分散物からなる化粧料も提供できる。また下限値も特に限定されないが、例えば0.01重量%であってもよく、0.1重量%以上、1重量%以上であってもよい。一例として、下記では、化粧料の処方例を示す。ベシクル分散物としては、例えば実施例1によるものを用いることができる。
【0043】
(化粧水)
【0044】
(美容液)
【0045】
(クリーム)
【0046】
上述した実施の形態及び実施例の記載は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎない。また、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張及び変更することもできる。