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  • 特開-樹脂組成物および成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022127208
(43)【公開日】2022-08-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20220824BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220824BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K3/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021025223
(22)【出願日】2021-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】小林 政之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL001
4J002DL006
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD160
4J002GB00
4J002GC00
4J002GG00
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】 成形品としたときに、反りが生じにくく、かつ、成形収縮率に異方性が生じにくく、さらに、耐衝撃性に優れた樹脂組成物、および、成形品の提供。
【解決手段】 ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラーを110~200質量部含み、ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、強化フィラーが、断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレークであり、ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.1~4.7である樹脂組成物。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラーを110~200質量部含み、
前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、
前記強化フィラーが、断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレークであり、
前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.1~4.7である樹脂組成物。
【請求項2】
前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.7~4.7である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸および/またはセバシン酸を含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物を100mm×100mm×1mm厚さの成形品に成形したとき、前記成形品の反り量が0.40mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物;反り量とは、前記成形品を基準台に載せたときの、最も高い部分の高さと試験片の最も低い部分の高さの差をいう。
【請求項5】
前記樹脂組成物を4mm厚さのISO試験片に成形し、ISO-179に従ったノッチ付シャルピー衝撃強さが12.0kJ/m2以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物は、釣り具のリール部材に用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物および成形品に関する。特に、ポリアミド樹脂を用いた樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的物性その他の物理的および化学的特性に優れている。このため、車両部品、電気電子機器部品、その他の精密機器部品等に幅広く使用されている。また、ポリアミド樹脂から形成される成形品の機械的強度を強化するために、ポリアミド樹脂にガラス繊維等の強化フィラーを配合することも行われている。
具体的には、特許文献1には、(A)28.0~64.9質量%の少なくとも1種のポリアミド、(B)15.0~40.0質量%のガラス繊維、(C)15.0~35.0質量%の、粒子厚さが0.3~2.0μmの範囲内のガラスフレーク、(D)0.1~2.0質量%の熱安定剤、(E)0~5.0質量%の添加剤からなるポリアミド成形用組成物であって、成分(B)および(C)の合計が、成分(A)~(E)の合計に対して35.0~65.0質量%の範囲内であり、成分(A)~(E)の合計が100質量%であることを条件とする、前記ポリアミド成形用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-180280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の通り、強化フィラーは機械的強度を高めるために配合されるが、強化フィラーの種類によっては、成形品が薄肉成形品である場合などに、成形品に反りが生じたり、成形品の成形収縮率に異方性が生じてしまう。反りや異方性を抑制するためには、強化フィラーとしてガラスフレークを配合することが有益であるが、ガラスフレークを配合すると、耐衝撃性が劣ってしまう。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、成形品としたときに、反りが生じにくく、かつ、成形収縮率に異方性が生じにくく、さらに、耐衝撃性に優れた樹脂組成物、および、成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアミド樹脂として所定のポリアミド樹脂を用い、強化フィラーとして扁平ガラス繊維と所定のガラスフレークを所定の比率で配合することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラーを110~200質量部含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、前記強化フィラーが、断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレークであり、前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.1~4.7である樹脂組成物。
<2>前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.7~4.7である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3>前記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸が、アジピン酸および/またはセバシン酸を含む、<1>または<2>に記載の樹脂組成物。
<4>前記樹脂組成物を100mm×100mm×1mm厚さの成形品に成形したとき、前記成形品の反り量が0.40mm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の樹脂組成物;反り量とは、前記成形品を基準台に載せたときの、最も高い部分の高さと試験片の最も低い部分の高さの差をいう。
<5>前記樹脂組成物を4mm厚さのISO試験片に成形し、ISO-179に従ったノッチ付シャルピー衝撃強さが12.0kJ/m2以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<6>前記樹脂組成物は、釣り具のリール部材に用いられる、<1>~<5>のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載の樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、成形品としたときに、反りが生じにくく、かつ、成形収縮率に異方性が生じにくく、さらに、耐衝撃性に優れた樹脂組成物、および、成形品を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例における反りの高さを測定する方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書で示す規格が年度によって、測定方法等が異なる場合、特に述べない限り、2021年1月1日時点における規格に基づくものとする。
【0009】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラーを110~200質量部含み、前記ポリアミド樹脂が、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂を含み、前記強化フィラーが扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレークであり、前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.1~4.7であることを特徴とする。
このような構成とすることにより、成形品としたときに、反りが生じにくく、かつ、成形収縮率に異方性が生じにくく、かつ、耐衝撃性に優れた樹脂組成物が得られる。さらに、耐衝撃性以外の機械的強度にも優れた成形品が得られる。
すなわち、ポリアミド樹脂として、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(以下、「キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂」ということがある)を含むことにより、成形品の異方性を効果的に小さくし、反り量も小さくできる。さらに、得られる成形品の外観を良好なものとすることができる。
また、強化フィラーにおけるガラス繊維とガラスフレークの比率を適切に調整することにより、成形品の異方性を効果的に小さくし、反り量も小さくしつつ、耐衝撃性を向上させている。
以下、本実施形態の樹脂組成物の詳細について説明する。
【0010】
<ポリアミド樹脂>
本実施形態で用いるポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を含み、前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がメタキシリレンジアミンおよびパラキシリレンジアミンの少なくとも一方に由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂(キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂)を含む。キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を用いることにより、異方性が小さく、反り量が少ない成形品が得られる。さらに、樹脂がゆっくり硬化するため、外観に優れた成形品が得られる。
【0011】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が、キシリレンジアミンに由来する。
キシリレンジアミン由来の構成単位は、メタキシリレンジアミン由来の構成単位および/またはパラキシリレンジアミン由来の構成単位が好ましく、キシリレンジアミン由来の構成単位の60~100モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、40~0モル%がパラキシリレンジアミン由来の構成単位であることがより好ましい(ただし、合計が100モル%を超えることは無く、合計が90~100モル%であることが好ましい)。
【0012】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の原料ジアミン成分として用いることができるキシリレンジアミン以外のジアミンとしては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2-メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環式ジアミン、ビス(4-アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0013】
本実施形態で用いるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジカルボン酸由来の構成単位の、好ましくは75モル%以上、より好ましくは85モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、一層好ましくは99モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸(好ましくはアジピン酸および/またはセバシン酸)に由来する。
【0014】
炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数4~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることが好ましく、炭素数6~12のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸であることがより好ましい。
炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示でき、アジピン酸および/またはセバシン酸であることがさらに好ましく、セバシン酸であることが一層好ましい。炭素数が4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸は、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0015】
上記炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸以外のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、テレフタル酸、オルソフタル酸等のフタル酸化合物、1,2-ナフタレンジカルボン酸、1,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、1,6-ナフタレンジカルボン酸、1,7-ナフタレンジカルボン酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸といったナフタレンジカルボン酸の異性体等を例示することができ、1種または2種以上を混合して使用できる。
【0016】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、特に、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が炭素数4~20のα,ω-直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来し、キシリレンジアミン由来の構成単位の60モル%以上がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であるポリアミド樹脂が好ましい。
【0017】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい第一の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がアジピン酸に由来し、キシリレンジアミン由来の構成単位の60モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がメタキシリレンジアミンに由来する構成単位であるポリアミド樹脂である。
【0018】
キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂の好ましい第二の実施形態は、ジアミン由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がキシリレンジアミンに由来し、ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上(好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上)がセバシン酸に由来し、キシリレンジアミン由来の構成単位の60~90モル%がメタキシリレンジアミン由来の構成単位であり、40~10モル%がパラキシリレンジアミンに由来する構成単位であるポリアミド樹脂である。
本実施形態の樹脂組成物は、第二の実施形態のキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含むことが好ましい。
【0019】
なお、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位を主成分として構成されるが、これら以外の構成単位を完全に排除するものではなく、ε-カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類由来の構成単位を含んでいてもよいことは言うまでもない。ここで主成分とは、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を構成する構成単位のうち、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計数が全構成単位のうち最も多いことをいう。本実施形態では、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂における、ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位の合計は、全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましく、95モル%以上を占めることがより好ましい。
【0020】
本実施形態の樹脂組成物は、キシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。他のポリアミド樹脂は、脂肪族ポリアミド樹脂であっても、半芳香族ポリアミド樹脂であってもよく、脂肪族ポリアミド樹脂が好ましい。
脂肪族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド11、ポリアミド12等が例示され、ポリアミド66が好ましい。
半芳香族ポリアミド樹脂としては、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6I、ポリアミド9I、ポリアミド6T/6I、ポリアミド9T/9Iが例示される。
本実施形態の樹脂組成物におけるキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂以外のポリアミド樹脂の含有量は、ポリアミド樹脂全体を100質量部としたとき、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましい。前記他のポリアミド樹脂の含有量の下限値は0質量部であってもよい。
【0021】
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂を樹脂組成物の25質量%以上の割合で含むことが好ましく、30質量%以上の割合で含むことがより好ましく、35質量%以上の割合で含むことがさらに好ましく、40質量%以上であってもよい。また、ポリアミド樹脂の含有量の上限値としては、47質量%以下であることが好ましく、46質量%以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂は、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0022】
<強化フィラー>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、強化フィラーを110~200質量部含む。強化フィラーを含むことにより、得られる成形品の機械的強度を高めることができる。
前記強化フィラーの合計量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、120質量部以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。また、前記強化フィラーの合計量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、180質量部以下であることが好ましく、170質量部以下であることがより好ましく、160質量部以下であることがさらに好ましく、150質量部以下であることが一層好ましく、140質量部以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、表面外観により優れた成形品が得られる。
また、本実施形態の樹脂組成物における強化フィラー(断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレーク)の合計割合は、樹脂組成物の50質量%以上であることが好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の機械的強度がより向上する傾向にある。本実施形態の樹脂組成物における強化フィラーの合計割合は、70質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましく、60質量%以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、良好な表面外観を保ちつつ、より高い機械特性が得られる。
本実施形態の樹脂組成物は、強化フィラー(ガラス繊維およびガラスフレーク)をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0023】
本実施形態においては、強化フィラーは、断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレーク(以下、単に、「ガラスフレーク」と言うことがある)であり、ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークが1.1~4.7である。ガラス繊維とガラスフレークを併用することにより、成形品の反りおよび異方性を小さくできると共に、成形品の耐衝撃性を高めることができる。
前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークは、1.2以上であることが好ましく、1.4以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましく、用途によっては、3.0以上であることが一層好ましく、4.0以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、成形品の耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、前記ガラス繊維とガラスフレークの質量比である、ガラス繊維/ガラスフレークは、4.5以下であることが好ましく、用途によっては、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、成形品の反りおよび異方性をより小さくすることができる。
【0024】
<<ガラス繊維>>
本実施形態で用いるガラス繊維は、断面が扁平形状を有するガラス繊維である。このようなガラス繊維を用いることにより、得られる成形品の耐衝撃性を効果的に向上させることができる。さらに、得られる成形品の異方性を小さくできる傾向にある。また、得られる成形品の反りを小さくできる傾向にある。
【0025】
本実施形態におけるガラス繊維とは、ガラスを繊維状にしたものであり、プラスチックの強化材として用いられるガラス繊維が含まれる。本実施形態では、ガラス繊維は、より具体的には、1,000~10,000本のガラス繊維を集束し、所定の長さにカットされたチョップド形状のものが好ましい。
また、ガラス繊維の断面は、扁平形状である。扁平形状は、楕円形、長円形、長方形、長方形の両短辺に半円を合わせた形状、まゆ型等いずれの形状であってもよい。扁平率(ガラス繊維長軸/ガラス繊維短軸)は、2.5~10がより好ましく、3~10がさらに好ましく、3.1~6が特に好ましい。
【0026】
ガラス繊維は、一般的に供給されるEガラス(Electricalglass)、Cガラス(Chemical glass)、Aガラス(Alkali glass)、Sガラス(High strength glass)、Rガラス、Dガラスおよび耐アルカリガラス等のガラスを溶融紡糸して得られる繊維が用いられるが、ガラス繊維にできるものであれば使用可能であり、特に限定されない。本実施形態では、ガラス繊維がEガラスを含むことが好ましい。
【0027】
本実施形態で用いるガラス繊維は、例えば、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の付着量は、ガラス繊維の0.01~1質量%であることが好ましい。さらに必要に応じて、脂肪酸アミド化合物、シリコーンオイル等の潤滑剤、第4級アンモニウム塩等の帯電防止剤、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等の被膜形成能を有する樹脂、被膜形成能を有する樹脂と熱安定剤、難燃剤等の混合物で表面処理されたものを用いることもできる。
【0028】
<<ガラスフレーク>>
本実施形態で用いるガラスフレークは、厚み0.1~2.0μmのガラスフレークである。このようなガラスフレークを用いることにより、得られる成形品の耐衝撃性を効果的に向上させることができる。
ガラスフレークの厚みとは、平均厚みをいう。ガラスフレークの厚みは、好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.4μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、一層好ましくは0.6μm以上である。また、ガラスフレークの厚みは、好ましくは1.8μm以下、より好ましくは1.6μm以下、さらに好ましくは1.4μm以下、一層好ましくは1.2μm以下、より一層好ましくは1.0μm以下、さらに一層好ましくは0.8μm以下である。
ここで平均厚みは以下の方法で測定される。すなわち、走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、100枚以上のガラスフレークにつき、それぞれの厚さを測定し、その測定値を平均することにより求める。ガラスフレーク断面(厚さ面)が走査型電子顕微鏡の照射電子線軸に垂直になるように、走査型電子顕微鏡の試料台を試料台微動装置により調整する。
【0029】
上記のガラスフレークのガラス組成は、Aガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラス、RガラスおよびEガラス等に代表される各種のガラス組成が適用され、特に限定されない。
【0030】
<<他の強化フィラー>>
本実施形態の樹脂組成物は、断面が扁平形状を有するガラス繊維と厚み0.1~2.0μmのガラスフレーク以外の他の強化フィラーを含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、他の強化フィラーを実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、他の強化フィラーの含有量が、前記強化フィラーの配合量の10質量%以下であることをいい、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
尚、本実施形態における他の強化フィラーには、後述する核剤に相当するものは含まない趣旨である。
【0031】
<核剤>
本実施形態の樹脂組成物は、結晶化速度を調整するために、核剤を含んでいてもよい。核剤の種類は、特に、限定されるものではないが、タルク、窒化ホウ素、マイカ、カオリン、硫酸バリウム、窒化珪素および二硫化モリブデンが好ましく、タルクおよび窒化ホウ素がより好ましく、タルクがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物が核剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましい。前記含有量の上限は、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましく、4質量部以下であることが一層好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、核剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
<離型剤>
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を含んでいてもよい。
離型剤としては、例えば、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸の塩、脂肪族カルボン酸とアルコールとのエステル、脂肪族カルボン酸アミド、数平均分子量200~15,000の脂肪族炭化水素化合物、ポリシロキサン系シリコーンオイル、ワックスなどが挙げられる。
ワックスとしては、ポリオレフィンワックスまたはケトンワックス、アミドワックス、エステルワックス、パラフィンワックスが好ましく、ケトンワックスがより好ましい。
離型剤の詳細は、特開2017-115093号公報の段落0034~0039の記載、特開2018-184575号公報の段落0068~0091の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
本実施形態の樹脂組成物が離型剤を含む場合、その含有量は、ポリアミド樹脂100質量部に対し、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることがさらに好ましい。また、前記含有量は、5.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の樹脂組成物は、離型剤を、1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0034】
<その他の成分>
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。このような添加剤としては、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、滴下防止剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、耐候性改良剤、耐光性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。これらの成分は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの成分の含有量は、樹脂組成物の5質量%以下の範囲であることが好ましい。
なお、本実施形態の樹脂組成物は、各成分の合計が100質量%となるように、ポリアミド樹脂、強化フィラー、ならびに、必要に応じて配合される他の添加剤の含有量が調整される。本実施形態の樹脂組成物は、ポリアミド樹脂、強化フィラー、核剤、および、離型剤の合計が樹脂組成物の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることが好ましく、98質量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0035】
<樹脂組成物の物性>
本実施形態の曲げ特性に優れていることが好ましい。
具体的には、本実施形態の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ弾性率が10.0GPa以上であることが好ましく、14.0GPa以上であることがさらに好ましく、18.0GPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ弾性率の上限は、特に定めるものではないが、40.0GPa以下が実際的であり、35.0GPa以下であっても十分に要求性能を満たすものである。
本実施形態の樹脂組成物は、厚み4mmに成形したときの、ISO178に準拠した曲げ強さが330MPa以上であることが好ましく、340MPa以上であることがさらに好ましく、350MPa以上であることが一層好ましい。上記曲げ強度の上限は、特に定めるものではないが、例えば、500MPa以下、さらには450MPa以下が実際的である。
【0036】
本実施形態の樹脂組成物は耐衝撃性に優れていることが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を厚み4mmのISO試験片に成形し、ISO-179に従ったノッチ付シャルピー衝撃強さが12.0kJ/m2以上であることが好ましく、13.0kJ/m2以上であることがより好ましい。上記ノッチ付シャルピー衝撃強さの上限は、特に定めるものではないが、25.0kJ/m2以下が実際的であり、22.0kJ/m2以下であっても十分に要求性能を満たす。
【0037】
本実施形態の樹脂組成物は、反り量が小さいことが好ましい。具体的には、本実施形態の樹脂組成物を、100mm×100mm×1mm厚さの成形品に成形したとき、前記成形品の反り量が0.40mm以下であることが好ましく、0.39mm以下であることがより好ましい。前記反り量の下限値は特に定めるものでは無いが、0.10mm以上が実際的であり、0.25mm以上であっても十分に要求性能を満たす。
【0038】
<樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の樹脂組成物は、公知の熱可塑性樹脂組成物の製造方法によって製造できる。
本実施形態の樹脂組成物の製造方法の一実施形態として、ポリアミド樹脂に強化フィラーおよび必要に応じて配合される他の成分を配合して混練することが好ましい。このような樹脂組成物の一例として、ペレットが挙げられる。
具体的には、ポリアミド樹脂、強化フィラー、ならびに、必要に応じて配合されるその他の成分を、例えばタンブラーやヘンシェルミキサーなどの各種混合機を用い予め混合した後、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダーなどの混合機で溶融混練する方法が挙げられる。強化フィラーは、混練時に破砕するのを抑制するため、押出機の途中から供給することが好ましい。また、各成分から選ばれた2種以上の成分を予め混合、混練しておいてもよい。
【0039】
<成形品>
本実施形態の成形品は、本実施形態の樹脂組成物から形成される。
本実施形態の成形品の製造方法は、特に定めるものではない。
例えば、本実施形態の成形品は、各成分を溶融混練した後、直接に各種成形法で成形してもよいし、各成分を溶融混練してペレット化した後、再度、溶融して、各種成形法で成形してもよい。
【0040】
成形品を成形する方法としては、特に制限されず、従来公知の成形法を採用でき、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、異形押出法、トランスファー成形法、中空成形法、ガスアシスト中空成形法、ブロー成形法、押出ブロー成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、回転成形法、多層成形法、2色成形法、インサート成形法、サンドイッチ成形法、発泡成形法、加圧成形法等が挙げられる。
【0041】
本実施形態の成形品の形状としては、特に制限はなく、成形品の用途、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、板状、プレート状、ロッド状、シート状、フィルム状、円筒状、環状、円形状、楕円形状、歯車状、多角形形状、異形品、中空品、枠状、箱状、パネル状のもの等が挙げられる。
【0042】
本実施形態の成形品の利用分野については特に定めるものではなく、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、防衛および航空宇宙製品等に広く用いられる。
特に、本実施形態の成形品は、耐衝撃性が高く、かつ、低反りを達成しているため、高い耐衝撃性が求められる湾曲型の部材(例えば、筐体)に好ましく用いられる。湾曲型の部材とは、部材の少なくとも一部が曲面であるものや、部材の少なくとも一部がお椀型であるものなどを含む。湾曲型の筐体としては、釣り具のリール部材が例示される。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0044】
<ポリアミド樹脂>
MP10:M/P比=7:3、下記合成例に従って合成した。
MXD6:ポリメタキシリレンアジパミド、三菱ガス化学社製、MXナイロン#6000
PA66:東レ社製、CM3001-N
【0045】
<MP10の合成例(M/P比=7:3)>
セバシン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を撹拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)とメタキシリレンジアミン(三菱ガス化学社製)のモル比が3:7の混合ジアミンを、加圧(0.35MPa)下でジアミンとセバシン酸とのモル比が約1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を235℃まで上昇させた。滴下終了後、60分間反応継続し、分子量1,000以下の成分量を調整した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド樹脂(MP10、M/P=7:3)を得た。
【0046】
<ガラス繊維>
扁平GF:扁平断面を有するガラス繊維、Eガラス、日東紡績社製、CSG 3PA-810S、扁平率4
円形GF:円形断面を有するガラス繊維、数平均繊維径10.5±1.0μm、Eガラス、日本電気硝子社製、T-756H、扁平率1
【0047】
<ガラスフレーク>
厚み0.7μm:ガラスフレーク、日本板硝子社製、MEG160FY-M06
厚み5μm:ガラスフレーク、日本板硝子社製、フレカREFG313
【0048】
<核剤>
タルク:林化成社製、ミクロンホワイト5000S
【0049】
<離型剤>
CS8CP:モンタン酸カルシウム、日東化成工業社製
【0050】
実施例1~3、比較例1~10
<コンパウンド>
後述する下記表1~3に記載の樹脂組成物(ペレット)を製造した。
具体的には、後述する下記表1~3に示す各成分であって、ガラス繊維およびガラスフレーク以外の成分を表1~3に示す割合(単位は、質量部である)をそれぞれ秤量し、ドライブレンドした後、二軸押出機(芝浦機械社製、TEM26SS)のスクリュー根元から2軸スクリュー式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-W-1-MP)を用いて投入した。また、ガラス繊維およびガラスフレークについては振動式カセットウェイングフィーダ(クボタ社製、CE-V-1B-MP)を用いて押出機のサイドから上述の二軸押出機に投入し、樹脂成分等と溶融混練し、樹脂組成物を得た。二軸押出機の温度設定は、280℃とした。
【0051】
<曲げ強さおよび曲げ弾性率>
上記で得られたペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、ISO引張り試験片(4mm厚)を射出成形した。
ISO178に準拠して、上記ISO引張り試験片(4mm厚)を用いて、曲げ強さ(単位:MPa)および曲げ弾性率(単位:GPa)を測定した。結果を表1~表3に示す。
【0052】
<シャルピー衝撃強さ>
上記ISO引張り試験片(4mm厚)をJIS K7144に従ってノッチ付試験片に加工した。ノッチ付試験片について、ISO-179に従って、ノッチ付シャルピー衝撃強さ(単位:kJ/m2)を測定した。結果を表1~表3に示す。
【0053】
<成形収縮率異方性(TD/MD)>
上記で得られたペレットを、120℃で4時間乾燥させた後、日精樹脂工業社製NEX80IIIを用いて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、100mm×100mm×2mmの試験片を射出成形した。
得られた試験片の樹脂の流れ方向(MD)および流れと直交方向(TD)の寸法を測定し、金型の寸法から成形収縮率を算出し、TDの成形収縮率をMDの成形収縮率で割った値から成形収縮率の異方性を評価した。結果を表1~表3に示す。この方法で算出した値が1に近いほど、成形収縮率の異方性が小さく、寸法精度や低反り性に優れている。
【0054】
<反り量>
上記で得られた樹脂組成物(ペレット)を、120℃で4時間乾燥した後、射出成形機(日精樹脂工業社製NEX80III、)を用いて、反り量測定用試験片(100mm×100mm×1mm)を作製した。
成形に際し、シリンダー温度280℃、金型温度は、樹脂成分の主成分であるポリアミド樹脂の種類に応じて、130℃(MXD6)、110℃(MP10)、80℃(PA66)とした。
上記で得られた反り量測定用試験片(100mm×100mm×1mm)を基準台に載せ、最も高い部分の高さ(Max高さ、単位:mm)と試験片の最も低い部分の高さ(Min高さ、単位:mm)を、3次元形状測定機を用いて、それぞれ測定し、その差を算出した。具体的には、図1に示すように、基準台1の高さを0mmとし、試験片2を載せたときの、高さのうち、最も高い部分3と最も低い部分(通常試験片の端部)の差を反り4として測定した。
3次元形状測定機は、VR-3000/3200、キーエンス社製を用いた。結果を表1~表3に示す。
【0055】
<外観>
上記で得られたペレット上記ペレットを120℃で4時間乾燥させた後、射出成形機(日精樹脂工業社製、「NEX140III」)にて、シリンダー温度280℃、金型温度130℃の条件で、60mm×60mm×2mmの平板を射出成形した。5人の専門家が評価し、多数決で判断した
以下の通り評価した。
A:成形品表面に強化繊維の浮きが存在せず、表面光沢がある
B:上記以外、例えば、成形品表面に強化繊維の浮きがある
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
上記表1~3において、ガラス繊維と板状フィラーの比は、質量比である。
上記結果から明らかなとおり、本発明の樹脂組成物は、成形品に反りが生じにくく、かつ、成形品の成形収縮率に異方性が生じにくく、かつ、シャルピー衝撃強さや他の機械物性が高かった。さらに、外観にも優れていた。
これに対し、ポリアミド樹脂としてキシリレンジアミン系ポリアミド樹脂を含まない場合(比較例1)、異方性が大きくなり、また、反り量も大きかった。さらに、成形品の外観も劣っていた。
また、強化フィラーに占めるガラス繊維の配合量が少ない場合(比較例2~4、6)、シャルピー衝撃強さが低かった。
また、ガラス繊維が円形断面を有する場合(比較例5、6)、異方性が大きくなってしまった。さらに、シャルピー衝撃強さが低かった。
一方、ガラスフレークの厚みが厚い場合(比較例7、8)、シャルピー衝撃強さが低かった。
さらに、ガラスフレークを配合しない場合(比較例9)、反り量が多かった。
また、強化材の配合量そのものが少ない場合(比較例10)、機械的強度が不十分であった。
【符号の説明】
【0060】
1 基準台
2 試験片
3 高さの最も高い部分
4 反り
図1